JP3216899U - エンジンの筒内圧調整装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】筒内圧の上昇を抑制し、かつ、ピストンの温度の影響を受けにくいエンジンの筒内圧調整装置を提供する。【解決手段】筒内圧調整装置51は、レシプロエンジンの燃焼行程における燃焼室21の筒内圧を調整する。筒内圧調整装置51は、ピストン20に接続されるコネクティングロッド小端2を有する第一部材4と、第一部材4に嵌り合い、クランクシャフト40に接続されるコネクティングロッド大端3を有する第二部材6と、第一部材4と第二部材6との間に設けられたバネ5とを備える。バネ5のバネ力によって筒内圧を調整する。【選択図】図2
Description
本考案は、エンジンの筒内圧調整装置に関し、より特定的には、コネクティングロッドに関連するエンジンの筒内調整装置に関するものである。
従来のエンジンの筒内圧調整装置は、たとえば特開平6−17665号公報(特許文献1)に開示されている。
特許文献1では、ピストンはインナーピストンと、インナーピストンの外側に嵌合するアウターピストンとを有する。インナーピストンがコネクティングロッドに接続される。アウターピストンが燃焼室に向かい合う。インナーピストンはアウターピストンに対してスライド可能に配置される。アウターピストンはシリンダライナに嵌り合う。
インナーピストンとアウターピストンとの間に皿バネが挿入されている。アウターピストンがインナーピストンに近づく方向に移動すると、インナーピストンとアウターピストン間の皿バネが圧縮される。
筒内圧(燃焼室内の圧力)に応じてピストンの見かけのヤング率が変化する。即ち、筒内圧が設定圧力よりも高くなると筒内圧によりアウターピストンがインナーピストンに近づく方向に移動する。このとき、皿バネが圧縮される。アウターピストンがインナーピストン側に移動することで、筒内の体積が増加し、筒内圧の上昇を抑制することができる。
しかしながら、熱負荷の高いピストン内にバネを挿入するため、バネの耐久性が問題となる。ピストン内は高温部分であるために耐熱性のある材料が必要である。たとえば、バネ鋼(SUP)は製造時に焼入れがされるが、高温のピストン内でバネ鋼が高温になると、冷却されて焼きなましされるため、バネ鋼の組織が変化する。
インナーピストンおよびアウターピストンの間に設けられる皿バネは熱膨張して、温度によって皿バネのバネ定数が変化する。また、ピストン自体も熱膨張するため寸法が変化してしまう。このため、ピストンの冷間時と高温時とでは皿バネのバネ定数が異なったり、ピストン内部の寸法が異なったりするため、運転条件によって設定圧力が異なる可能性がある。
そこで、この考案は上記の課題を解決するためになされたものであり、筒内圧の上昇を抑制し、かつ、ピストンの温度の影響を受けにくいエンジンの筒内圧調整装置を提供することを目的とするものである。
この考案に従ったエンジンの筒内圧調整装置は、レシプロエンジンの燃焼行程における燃焼室の筒内圧を調整する、エンジンの筒内圧調整装置であって、ピストンに接続されるコネクティングロッド小端を有する第一部材と、第一部材に嵌り合い、クランクシャフトに接続されるコネクティングロッド大端を有する第二部材と、第一部材と第二部材との間に設けられ、コネクティングロッド小端から加えられる力によって変位するバネとを備え、バネのバネ力によって筒内圧を調整する。
このように構成された筒内圧の調整装置においては、コネクティングロッド大端とコネクティングロッド小端との間に設けられたバネによって筒内圧を調整することができる。その結果、筒内圧の上昇抑制することができる。さらに、バネはコネクティングロッド小端とコネクティングロッド大端との間に設けられるため、バネがピストン内部に設けられる場合と比較してピストンの温度の影響をバネが受けにくくなる。これにより、バネの組織構造がピストンの熱によって変化することを防止できる。ピストン内にバネを設けた従来技術と比較してバネが熱膨張しにくくなるため、ピストンの冷間時と高温時とでもバネ定数が変化せず、設定圧力安定する。
さらに、ピストンは従来と同様の構造とすることができるため、ピストンの質量が増加することが無い。バネには第一部材およびピストンが接続されるため、バネにアウターピストンのみが接続される従来技術と比較して、バネに接続される部材の質量が大きくなる。その結果、ピストンが単周期で振動する、いわゆるハンチングを抑制することができる。
好ましくは、第一部材には凹部が設けられており、その凹部に第二部材が嵌り合う。この場合、第一部材と第二部材とが嵌り合う部分では第一部材が大径となるため、第一部材の質量が増加する。その結果、第一部材およびピストンの合計の質量を大きくしてハンチングを抑制できる。
好ましくは、第二部材にはオイル通路が設けられており、コネクティングロッド大端から供給されたオイルをオイル通路が凹部へ送る。この場合、凹部へオイルが送られるため、凹部内にオイルが溜まりやすくなる。第一部材が第二部材に対して振動する場合には凹部内のオイルを攪拌する必要があり、オイルがダンパ効果を有する。その結果、ハンチングを防止できる。
この考案に従えば、筒内圧の上昇を抑制し、かつ、ピストンの温度の影響を受けにくいエンジンの筒内圧調整装置を提供することができる。
以下、各実施形態に係る筒内圧調整装置について図を参照して説明する。以下の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
(実施の形態1)
(構成)
図1は、実施の形態1に従った筒内圧調整装置51の模式図である。図1で示すようにコネクティングロッド1は、コネクティングロッド小端2を有する第一部材4と、コネクティングロッド大端3とを有する第二部材6とを有する。
(構成)
図1は、実施の形態1に従った筒内圧調整装置51の模式図である。図1で示すようにコネクティングロッド1は、コネクティングロッド小端2を有する第一部材4と、コネクティングロッド大端3とを有する第二部材6とを有する。
コネクティングロッド小端2にはピストンが回動可能に取り付けられる。コネクティングロッド大端3は分割構造とされており、クランクシャフトと係合する。シリンダライナ内においてピストンが往復運動をし、この往復運動がコネクティングロッド小端2に伝達される。コネクティングロッド1により往復運動が回転運動に変換されて、コネクティングロッド大端3はクランクシャフトと共に回転する。
第一部材4は矢印1bで示す長手方向に延びるように構成されている。第一部材4は制御室13を有している。制御室13は筒状に形成されている。制御室13内にバネ5が配置されている。第一部材4の端部が爪部9である。爪部9は内側に延びるように構成されている。第一部材4の筒状部分14に制御室13が形成されている。筒状部分14の先端に爪部9が設けられている。
第二部材6は矢印1bで示す長手方向に延びるように構成されている。第二部材6の先端部7に隣接するように環状の溝8が設けられている。溝8に爪部9が嵌り合うことで溝8に爪部9が係合している。爪部9は少なくとも2つ設けられている。さらに多くの爪部9が設けられてもよい。
爪部9の厚みが溝8の厚みよりも小さいため、爪部9および第一部材4は第二部材6に対して矢印1bで示す長手方向に移動することが可能である。第一部材4が移動することで第一部材4と第二部材6との距離が変化すると、第一部材4および第二部材6間に設けられたバネ5が伸縮する。バネ5は圧縮された状態で制御室13に封入されている。そのため、所定の力{(バネ5の自然長−制御室13内でのバネ5の長さ)×バネ定数}を超える力がコネクティングロッド小端2に加わると、この力でバネ5を圧縮することができる。所定の力以下力がコネクティングロッド小端2に加わった場合には、バネ5を圧縮することができない。
制御室13には、コネクティングロッド大端3および第二部材6からオイルが供給される。第一部材4が第二部材6に対して移動するときには制御室13内のオイルが移動の抵抗となるため、オイルがダンパ1aとして機能する。
第一部材4、バネ5、および第二部材6が筒内圧調整装置51を構成する。コネクティングロッド小端2に接続されるピストンが燃焼室の一部分を構成するため、燃焼室の圧力がピストンを経由してコネクティングロッド小端2に伝わる。コネクティングロッド小端2に伝わる力が所定値を超えるとバネ5が圧縮されてコネクティングロッド小端2およびピストンがコネクティングロッド大端3に近づく方向に移動する。これにより燃焼室の体積が大きくなり、筒内圧の上昇を抑制できる。
図2は、エンジン10内で用いられる実施の形態1に従った筒内圧調整装置51の模式図である。エンジン10は、シリンダライナ30、シリンダライナ30に嵌合するピストン20、ピストン20に接続されるコネクティングロッド1、コネクティングロッド1に接続される。
コネクティングロッド1の両端がコネクティングロッド小端2およびコネクティングロッド大端3である。コネクティングロッド小端2にピストン20が係合している。ピストン20はシリンダライナ30に嵌合している。ピストン20はシリンダライナ30内で往復運動をする。コネクティングロッド大端3にクランクシャフト40が接続されている。
ピストン20およびシリンダライナ30で囲まれた空間が燃焼室21である。燃焼室では燃料が燃焼し、その際の体積膨張が燃焼圧となって矢印11で示す向きおよび大きさの力をピストン20およびコネクティングロッド小端2に加える。
コネクティングロッド1の第一部材4と第二部材6との間にバネ5が設けられている。バネ5は圧縮されているため、矢印12で示す方向および大きさの力を第一部材4に加える。
矢印11で示す力と矢印12で示す力は、互いに反対向きであるため、矢印11で示す力の大きさが矢印12で示す力の大きさよりも大きくなるとバネ5を圧縮することができる。バネ5が圧縮されるとピストン20が下方向へ移動するため燃焼室21の体積が拡張する。その結果、筒内圧の上昇を抑制することができる。
筒内圧調整装置51は、レシプロエンジンの燃焼行程における燃焼室21の筒内圧を調整する。筒内圧調整装置51は、ピストン20に接続されるコネクティングロッド小端2を有する第一部材4と、第一部材4に嵌り合い、クランクシャフト40に接続されるコネクティングロッド大端3を有する第二部材6と、第一部材4と第二部材6との間に設けられたバネ5とを備える。バネ5のバネ力によって筒内圧を調整する。第一部材4には凹部としての制御室13が設けられており、その制御室13に第二部材が嵌り合う。
図3は、実施の形態1に従った筒内圧調整装置51の内部構造を詳細に示す図である。図3で示すように、第二部材6には矢印1bで示す長手方向に延びるオイル孔61が設けられている。オイル孔61は制御室13に到達している。
コネクティングロッド大端3からオイル孔61にオイルが供給される。供給されたオイルはオイル孔61を経由して制御室13に到達する。制御室13内のオイルは、バネ5および、爪部9と溝8との接触部分を潤滑および冷却する。
バネ5は、たとえばコイルバネで構成される。バネ5が複数設けられていてもよい。複数設ける場合には、小径バネの外側に大径バネを設けてもよい。なお、バネ5はコイルバネに限られず、板バネであってもよい。
溝8の厚みLが爪部9の厚みtよりも大きいので、その差(L−t)だけ第一部材4は第二部材6に対して移動することができる。第二部材6に対する第一部材4の移動量を大きくするためには溝8の厚みLを大きくするか、爪部9の厚みを小さくするか、のいずれかの方法がある。爪部9の厚みを小さくすると剛性が低下するため、溝8の厚みを大きくすることが好ましい。
図4は、図3中の矢印IVで示す方向から見た先端部7の平面図である。図5は、図3中の矢印Vで示す方向から見た第一部材4の底面図である。図4で示すように、先端部7の一部には切欠71が設けられている。先端部7の中心にはオイル孔61が設けられている。
図5で示すように、環状の筒状部分14に2つの爪部9が互いに対向するように配置されている。2つの爪部9と2つの切欠71は互いに対応する位置に配置されており、切欠71に爪部9が嵌合可能である。
筒内圧調整装置51の組立時には、制御室13内にバネ5を配置した状態で切欠71に爪部9を嵌合させる。この状態でバネ5を圧縮して溝8内に爪部9を入れる。その後爪部9を切欠71に対して回転させ、爪部9が切欠71に嵌合しないようにする。これにより図3で示す筒内圧調整装置51を組み立てることができる。切欠71が存在することで切欠71から制御室13内のオイルが漏れる可能性があるが、たとえば組立終了後に切欠71にキャップを設けることでオイルの漏れを防止できる。
図6は、筒内圧を調圧しない場合のクランク角と筒内圧との関係を示すグラフである。直噴式のディーゼルにおいて燃料の噴射量を三種類(噴射量小、中、大)として、燃料を筒内で燃焼させてクランク角に応じて筒内圧がどのように変化するかを測定した。図1から3で示す筒内圧調整装置51は、筒内圧を調圧しない図6のディーゼルエンジンのコネクティングロッド1には、設けられていない。
図6で示すように、噴射量小(二点鎖線)、噴射量中(一点鎖線)、噴射量大(実線)における筒内圧はクランク角によって変化する。上死点付近で最大圧となる。点線はエンジンの許容筒内圧である。噴射量大および噴射量中では、筒内圧がエンジン許容筒内圧を超過していることが分かる。
図7は、筒内圧を調圧した場合のクランク角と筒内圧との関係を示すグラフである。直噴式のディーゼルにおいて燃料の噴射量を三種類(噴射量小、中、大)として、燃料を筒内で燃焼させてクランク角に応じて筒内圧がどのように変化するかを測定した。図1から3で示す筒内圧調整装置51は、筒内圧を調圧する図7のディーゼルエンジンのコネクティングロッド1に設けられている。{(バネ5の自然長−制御室13内でのバネ5の長さ)×バネ定数}が(エンジン許容筒内圧)×(ピストンの頂面の往復運動方向への投影面積)となるように、すなわち筒内圧がエンジン許容筒内圧を超えるとバネ5が縮むようにバネ定数およびバネ5の自然長などを調整した。
図7で示すように、噴射量小(二点鎖線)、噴射量中(一点鎖線)、噴射量大(実線)における筒内圧はクランク角によって変化する。図6との相違は、筒内圧がエンジン許容筒内圧をわずかに超えるとバネ5が縮むため燃焼室21の体積が大きくなり、筒内圧が上昇しない。その結果、筒内圧がエンジン許容筒内圧を超えない。点線はエンジンの許容筒内圧である。
図8は、噴射量中および噴射量大におけるクランク角とバネ5の変位との関係を示すグラフである。噴射量大の場合には、筒内圧が大きく変化するので、バネ5が大きく変位する。これに対して、噴射量中の場合には筒内圧の変化が小さいため、バネ5の変位も小さい。
(効果1:筒内圧の上昇抑制)
図6で示すようにエンジン許容筒内圧を超える場合には、これに耐えうるようにエンジンを補強する必要があり、コストおよび質量が増加する。さらに高い筒内圧に耐えるように各部(たとえばピストンリング)の摩擦を大きくする必要があった。これに対して、図7および8で示すように、実施の形態1に従った筒内圧調整装置51を設けることで、筒内圧がエンジン許容筒内圧を超えようとするとバネ5が変位するため燃焼室21の体積が増加する。その結果、筒内圧がエンジン許容筒内圧を超えないため、エンジンを補強する必要がない。これにより、エンジンを軽量化することができる。さらに、各部の摩擦を小さくすることができる。その結果、燃費を向上させることができる。
図6で示すようにエンジン許容筒内圧を超える場合には、これに耐えうるようにエンジンを補強する必要があり、コストおよび質量が増加する。さらに高い筒内圧に耐えるように各部(たとえばピストンリング)の摩擦を大きくする必要があった。これに対して、図7および8で示すように、実施の形態1に従った筒内圧調整装置51を設けることで、筒内圧がエンジン許容筒内圧を超えようとするとバネ5が変位するため燃焼室21の体積が増加する。その結果、筒内圧がエンジン許容筒内圧を超えないため、エンジンを補強する必要がない。これにより、エンジンを軽量化することができる。さらに、各部の摩擦を小さくすることができる。その結果、燃費を向上させることができる。
(効果2:高トルク化)
図9は、ディーゼルエンジンにおける噴射量とトルクとの関係を示すグラフである。図10は、ディーゼルエンジンにおける噴射量と筒内の最大圧との関係を示すグラフである。
図9は、ディーゼルエンジンにおける噴射量とトルクとの関係を示すグラフである。図10は、ディーゼルエンジンにおける噴射量と筒内の最大圧との関係を示すグラフである。
図9における「調圧なし」は図6の噴射量小および噴射量中に従って筒内圧調整装置51が設けられていないエンジンにおいて燃料を噴射した場合の噴射量とエンジンのトルクとの関係を示す。図10における「調圧なし」は図6の噴射量小および噴射量中に従って筒内圧調整装置51が設けられていないエンジンにおいて燃料を噴射した場合の噴射量と筒内の最大圧との関係を示す。点線はエンジンが許容する筒内圧を示す。
図9における「調圧あり」は図7の噴射量小、噴射量中および噴射量大に従って筒内圧調整装置51が設けられたエンジンにおいて燃料を噴射した場合の噴射量とエンジンのトルクとの関係を示す。図10における「調圧あり」は図7の噴射量小、噴射量中および噴射量大に従って筒内圧調整装置51が設けられたエンジンにおいて燃料を噴射した場合の噴射量と筒内の最大圧との関係を示す。
図9および図10で示されるように、筒内圧調整装置51を設けることで、噴射量大であっても筒内の最大圧はエンジンの許容筒内圧を超えることが無い。その結果、噴射量に応じた高いトルクを発生させることができる。筒内圧調整装置51を設けない場合は噴射量を大きくするとエンジン許容筒内圧を超えるため噴射量を大きくすることができない。
(効果3:特開平6−17665号公報との対比)
特開平6−17665号公報に記載のピストンではインナーピストンとアウターピストンとの間に皿バネが挿入され、インナーピストンがアウターピストンに近づく方向に移動すると、インナーピストンとアウターピストン間の皿バネが圧縮される。しかしながらピストンは高温になるため皿バネの特性が温度により変化して、所望の性能を発揮できない可能性がある。これに対して実施の形態1の考案では、ピストンよりも低温のコネクティングロッド1に筒内圧調整装置51を設けているため、ピストンの温度の影響を受けることなく筒内圧を確実に調整することができる。
特開平6−17665号公報に記載のピストンではインナーピストンとアウターピストンとの間に皿バネが挿入され、インナーピストンがアウターピストンに近づく方向に移動すると、インナーピストンとアウターピストン間の皿バネが圧縮される。しかしながらピストンは高温になるため皿バネの特性が温度により変化して、所望の性能を発揮できない可能性がある。これに対して実施の形態1の考案では、ピストンよりも低温のコネクティングロッド1に筒内圧調整装置51を設けているため、ピストンの温度の影響を受けることなく筒内圧を確実に調整することができる。
特開平6−17665号公報に記載のピストンでは、ピストンの強度および剛性を確保するためにピストンを薄肉化できず、質量が増加する。これに対して実施の形態1では従来のピストンを用いることができるため軽量化を図ることができる。
皿バネのみを設けるとピストンの変位がハンチングしてアウターピストンがインナーピストンに対して短周期で振動する。その結果、音および振動性能が悪化し、信頼性が低下する。これに対して、実施の形態1では、バネ5の上側に第一部材4、コネクティングロッド小端2およびピストン20が設けられるため、バネ5の上側の質量が大きくなる。その結果、ピストン20のハンチングを防止することができる。さらに、制御室13にオイルが存在するため、オイルがダンパとして機能するためハンチングを防止できる。さらに、第一部材4の制御室13に第二部材6の先端部7が嵌り合うため、第一部材4が大径となる。その結果、第一部材4の質量が増加してハンチングを防止できる。
(効果4:特開2010−230000号公報との対比)
特開2010−230000号公報では、内燃機関の燃焼室で発生する燃焼圧力を、ピストンで受けてピストンピンに連結されたコネクティングロッドを介して、クランクシャフトへ駆動力として伝達する内燃機関において、コネクティングロッドに潤滑油の弾性を利用した機構を具備することにより、燃焼圧力の上昇を抑制することが可能になり、火花点火機関を低負荷時に圧縮比を高くして、高負荷時にノッキングを回避すると共に、圧縮着火機関の摩擦損失を低減して、内燃機関の効率を向上させることができる。しかしながら、特開2010−230000号公報の内燃機関では潤滑油の弾性を利用した機構であるため、潤滑油の状態(たとえば潤滑油の量、潤滑油の成分)によって燃焼圧力の上昇を抑制する機能が異なり、運転条件によって最大筒内圧がばらつくという問題がある。これに対して実施の形態1ではバネ5によって最大筒内圧を制御しているため、安定して最大筒内圧が決定される。特開2010−230000号公報の方法ではオイルのみで筒内圧を調整するため十分に筒内圧を調整することができず、燃費が悪化するおそれがある。
特開2010−230000号公報では、内燃機関の燃焼室で発生する燃焼圧力を、ピストンで受けてピストンピンに連結されたコネクティングロッドを介して、クランクシャフトへ駆動力として伝達する内燃機関において、コネクティングロッドに潤滑油の弾性を利用した機構を具備することにより、燃焼圧力の上昇を抑制することが可能になり、火花点火機関を低負荷時に圧縮比を高くして、高負荷時にノッキングを回避すると共に、圧縮着火機関の摩擦損失を低減して、内燃機関の効率を向上させることができる。しかしながら、特開2010−230000号公報の内燃機関では潤滑油の弾性を利用した機構であるため、潤滑油の状態(たとえば潤滑油の量、潤滑油の成分)によって燃焼圧力の上昇を抑制する機能が異なり、運転条件によって最大筒内圧がばらつくという問題がある。これに対して実施の形態1ではバネ5によって最大筒内圧を制御しているため、安定して最大筒内圧が決定される。特開2010−230000号公報の方法ではオイルのみで筒内圧を調整するため十分に筒内圧を調整することができず、燃費が悪化するおそれがある。
(実施の形態2)
図11は、実施の形態2に従った筒内圧調整装置51の模式図である。図11で示すように、実施の形態2に従った筒内圧調整装置51はコネクティングロッド大端3側に設けられる。コネクティングロッド大端3にはクランクシャフトに挿入される環状部材102が存在する。環状部材102の外周でコネクティングロッド大端3の内側にバネ101が設けられている。
図11は、実施の形態2に従った筒内圧調整装置51の模式図である。図11で示すように、実施の形態2に従った筒内圧調整装置51はコネクティングロッド大端3側に設けられる。コネクティングロッド大端3にはクランクシャフトに挿入される環状部材102が存在する。環状部材102の外周でコネクティングロッド大端3の内側にバネ101が設けられている。
コネクティングロッド1は実施の形態1では上下分割構造とされていたが、実施の形態2では分割構造とされておらず、一体形状である。コネクティングロッド1は図示しないコネクティングロッド小端を有する。コネクティングロッド小端はピストンに回動可能に接続されている。
ピストンを経由してコネクティングロッド1に燃焼時の圧力が加わると、この圧力がバネ101に伝達される。バネ101が伸縮することでコネクティングロッド1が矢印1cで示す下方向に移動する。その結果、ピストンがコネクティングロッド大端3側に移動するため、燃焼室の体積が増加し、筒内圧を調整することができる。
以上、実施の形態について説明したが、上記の開示内容はすべての点で例示であって制限的なものではない。本考案の技術的範囲は実用新案登録請求の範囲によって示され、実用新案登録請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
この考案は、たとえばレシプロエンジンにおいて用いることができる。
1 コネクティングロッド、1a ダンパ、2 コネクティングロッド小端、3 コネクティングロッド大端、4 第一部材、5,101 バネ、6 第二部材、7 先端部、8 溝、9 爪部、10 エンジン、13 制御室、14 筒状部分、20 ピストン、21 燃焼室、30 シリンダライナ、40 クランクシャフト、51 筒内圧調整装置、61 オイル孔、71 切欠、102 環状部材。
Claims (3)
- レシプロエンジンの燃焼行程における燃焼室の筒内圧を調整する、エンジンの筒内圧調整装置であって、
ピストンに接続されるコネクティングロッド小端を有する第一部材と、
前記第一部材に嵌り合い、クランクシャフトに接続されるコネクティングロッド大端を有する第二部材と、
前記第一部材と前記第二部材との間に設けられ、前記コネクティングロッド小端から加えられる力によって変位するバネとを備え、
前記バネのバネ力によって筒内圧を調整する、エンジンの筒内圧調整装置。 - 前記第一部材には凹部が設けられており、前記凹部に前記第二部材が嵌り合う、請求項1に記載のエンジンの筒内圧調整装置。
- 前記第二部材にはオイル通路が設けられており、前記コネクティングロッド大端から供給されたオイルを前記オイル通路が前記凹部へ送る、請求項2に記載のエンジンの筒内圧調整装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2018001446U JP3216899U (ja) | 2018-04-19 | 2018-04-19 | エンジンの筒内圧調整装置 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN109826705A (zh) * | 2019-02-28 | 2019-05-31 | 吕建伟 | 延迟点火式高效发动机 |
-
2018
- 2018-04-19 JP JP2018001446U patent/JP3216899U/ja active Active
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN109826705A (zh) * | 2019-02-28 | 2019-05-31 | 吕建伟 | 延迟点火式高效发动机 |
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Legal Events
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---|---|---|---|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
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