JP3215309B2 - 顆粒球マクロファージコロニー刺激因子の製造方法 - Google Patents

顆粒球マクロファージコロニー刺激因子の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、安全で毒性及び副
作用がなく、免疫機能の低下及び腫瘍の治療に優れた効
果を有する顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(G
M−CSF)の製造方法及び顆粒球マクロファージコロ
ニー刺激因子誘導剤に関する。
【0002】
【従来の技術】顆粒球マクロファージコロニー刺激因子
(以下、GM−CSFともいう。)は造血系のサイトカ
インの一種であるコロニー刺激因子(CSF)の一種で
あり、前駆細胞から顆粒球やマクロファージの分化・増
殖を促進する因子である。
【0003】GM−CSFはマイトジェンや抗原などで
刺激されたT細胞ばかりでなくインターロイキン1(I
L−1)や、腫瘍壊死因子(TNF)で刺激された腺維
芽細胞や内皮細胞によっても生産される。GM−CSF
の生物活性は、骨髄で好中球、マクロファージ、好酸球
またはその混合したコロニーを形成させることである。
しかし、赤芽球や巨核球を含むコロニーの形成も促進さ
せることが知られており、IL−3とともに多種類の前
駆細胞に作用できるものと考えられている。このGM−
CSFの分化促進作用は濃度依存的で、低濃度ではマク
ロファージコロニーを、中程度では顆粒球と好酸球、高
濃度で巨核球コロニーを形成させる。
【0004】また、GM−CSFによって、末梢血中の
好中球が活性化されることが知られるようになった。す
なわち、好中球の活性化酸素の発生を促進し、抗体依存
性細胞傷害作用を高める。さらに、マクロファージ/単
球にもGM−CSFが作用し、IL−1やTNFの産
生、分泌を促進し、マクロファージのがん細胞キラー活
性を高める。
【0005】GM−CSFは、骨髄芽球が関わる疾患の
治療に主として用いられる。例えば、エイズ患者の白血
球減少症や再生不良性貧血、リンパ系悪性腫瘍患者の骨
髄移植に伴う白血球減少症などがある。また、悪性腫瘍
に対する放射線治療や化学療法後の血球減少症に対して
も用いられている。GM−CSFは、顆粒球やマクロフ
ァージ系のみならず、赤血球系および巨核球系前駆細胞
にも作用して、それらの分化・増殖を調節しているの
で、骨髄異形成性症候群(myelodysplastic syndrome,
MDS)の治療に対しても、GM−CSFの効果が期待
されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、ヒトのリン
パ球から分泌される天然型の顆粒球マクロファージコロ
ニー刺激因子(GM−CSF)を大量に取得できる効率
的な方法と、すぐれた顆粒球マクロファージコロニー刺
激因子誘導剤を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
の本発明は、健康な人から採取した血液から分離される
リンパ球を特別の誘導剤の存在下で培養し、大量に分泌
された顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−
CSF)を回収することからなるGM−CSFの生産方
法に関する。
【0008】より詳細には、本発明は、健康人の血液中
のリンパ球をCMP(Calboxy methyl-Pachyymaran、以
下CMPという)を主として含有する誘導剤、又は、場
合によってさらに他の誘導剤をも含有する複合誘導剤の
存在下に培養することにより、大量に分泌されるGM−
CSFを採取することを特徴とするGM−CSFの製造
方法に関するものである。
【0009】本発明は、誘導剤としてCMPを含有する
ものを使用することを特徴とする上記GM−CSFの製
造方法に関する。
【0010】また、本発明は、前記誘導剤を使用した培
養を、培養液中のリンパ球濃度を5×106 〜8×10
6 個/m1に調製して行うことを特徴とするGM−CS
Fの製造方法に関するものである。さらに、本発明は、
前記誘導剤を添加して行われる培養を20〜200時
間、好ましくは、少なくとも168時間実施し、ついで
培養液からGM−CSF含有上澄液を採取し、濾過精製
することを特徴とするGM−CSFの製造方法に関す
る。
【0011】また、本発明は、CMPからなる顆粒球マ
クロファージコロニー刺激因子の誘導剤に関する。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明のGM−CSFの製
造方法について詳細に説明する。本発明において使用さ
れるリンパ球は、健康人から採取した血液から得られる
白血球から分離されたものである。採取した血液からの
リンパ球の分離は、血液から遠心分離により白血球を採
取し、これを4倍に稀釈したPBS(比重1.077)
をリンパ球のバッファーにしてリンパ球を分離する。
【0013】分離したリンパ球をPBS(pH7.4)
で2回洗浄し、次いで培養液で1回洗浄する方法等、当
業者に良く知られている方法を任意に採択して行われ
る。リンパ球の分離は採血から48時間以内に行われる
のが好ましい。その際、生きているリンパ球の濃度は9
0%以上であることが好ましい。リンパ球の培養液中に
おける濃度は、培養液1ml中にリンパ球からなる細胞
数が(5〜8)×106 個となるように調製されて培養
される。
【0014】本発明においてリンパ球の培養に使用され
る誘導剤は、主な成分として、フージャンシャミング菌
類研究所(FuJian Shanming Fungi Institute)より入
手したCMP(Calboxy methyl-Pachyymaran)を主成分
として含有する誘導剤であり、場合によって他の誘導剤
をも含有する誘導剤から構成される複合誘導剤として培
養液中に添加される。
【0015】リンパ球の培養に使用される培養液として
は公知の種々の培養液が使用でき、また、これらに抗菌
性物質などを添加して調製した改変培養液も使用するこ
とができる。例えば、アメリカGIBCO社製の「RP
MI 1640」培養液に、5%のAB型血液の血清と
適当量のカナマイシン等を加えた改変細胞培養液等が使
用できる。β−ラクタム等の抗生物質の使用は好ましく
ない。
【0016】培養液中に添加される誘導剤の量は通常、
60μg/ml以上で使用することが好ましい。添加量
の上限は特にないが、100μg/mlを越えて添加し
てもより以上の効果は望めない。しかし、60μg/m
lに満たないと、誘導効果が不十分となる場合がある。
【0017】本発明の方法は、前記の培養液を用いて、
培養液1ml中にリンパ球数が(5〜8)×106 個に
なるように調製した後に培養をおこなうものである。培
養は、リンパ球濃度を調製した培養液を、温度37℃で
振動させながら約12時間〜15時間培養した後、前記
の誘導剤を添加し、さらに温度37℃で約40時間〜1
週間振動させながら培養し、ついで分泌されたGM−C
SFを含有する上澄を採取することによって行われる。
【0018】上記培養によって得られた培養液の上澄中
には、分泌されたGM−CSFが存在するので、ろ過上
澄液を使用して無菌実験、発熱性試験、毒性試験及び安
全性試験に加えて、HBsAg、HCV、HIV検出が
行われる。
【0019】得られた上澄液に対する各試験は次のよう
な方法で行われる。 無菌試験:『バイオ製品の無菌実験の規程』に従って行
う。グルコース肉汁、改良マーチン傾斜培地及び通常傾
斜培地の三種類の培地各2本で、それぞれ0.5ml/
本の上澄液を植えつけ、37℃或いは27℃で7〜10
日間培養し、菌の成育がなければ合格とする。
【0020】発熱性試験:1988年11月に決定した
「全国バイオ製品発熱性試験の改訂規程」に従って行
う。体重1.7〜2.5キロのウサギ(3匹)の静脈に
上澄液を注射する。注射する量はヒトの体重1キロ当た
りの臨床最大使用量の3倍で、3匹のいずれも注射した
後の体温が最初の体温より0.8℃を上回ってはならな
い。また、3匹の体温の上昇した合計が1.8℃を越え
てはならない。合計が1.8℃以下の場合に合格とす
る。
【0021】安全性試験:3匹のモルモット(体重35
0〜400グラム)の腹側の皮下に5mlのGM−CS
Fを注射し、7日間観察する。動物の健康状態が良好で
注射した局部に赤い腫れ、壊死が見られない場合、及び
体重の低下が見られなければ合格となる。この条件を満
たせない場合、5匹のモルモットで再度実験を行う。検
定の基準は上述通り。
【0022】マウスの毒性試験:実験用マウス(体重1
8〜20グラム)5匹の腹腔内(或いは尾静脈)にGM
−CSFを0.5ml注射する。30分間は動物に明ら
かな異常反応が現れてはならない。7日間観察した結
果、動物が健康状態が良好で合計体重が増えているもの
は合格とする。もしこの条件が満たされていない場合、
10匹の実験用マウスで、再度実験を行う。判定の基準
は上述通り。
【0023】力価の測定:骨髄CFU−GM半固体寒天
培養法を採用。リンパ球分離バッファ(比重1.07
7)で正常ヒトの骨髄のMNCを分離し、十分に洗った
後、小牛血清20%、ヒトAB型血清10%を含有する
1640培地で細胞濃度を調製する。40℃前後で溶解
している3%寒天と適当な比率で24穴プレートに注入
する。その細胞濃度を2×106 細胞/mlとし、全て
の穴に0.25mlずつ加える。実験中は陰性対照(成
長刺激剤を加えていない培地)を設け、陽性対照穴に異
なる濃度に希釈した異なる力価を有するGM−CSF標
準品を加える。試験穴に濃度の異なるサンプルを加え
る。それぞれのグループに3セットづつ設け、水蒸気飽
和条件下、37℃、5%CO2 の条件で7〜14日間培
養し、結果を観察する。細胞数が50個以上となれば1
コロニーとする。その(コロニーの数/2×106
胞)を計算し、標準品と比較し測定用試薬のGM−CS
Fの含有量(U/ml)を計算する。500,000U
/ml以上を合格とする。
【0024】HBsAg(Hepatis B sur
face antigen:B型肝炎表面抗原)の検
出:ELISA(Enzymilinked immu
nosorbant assay)法により、測定結果
が陰性のものを合格とする。
【0025】HCV(Hepatis C Viru
s:C型肝炎ウイルス)の検出:ELISA法により、
HCVAb(HCV抗体)を測定し、陰性のものを合格
とする。
【0026】HIV(Human immunodef
iciency Virus:エイズウイルス)の検
出:QWB実験(Protein stress te
st)或いはPA凝集反応法により測定し、陰性のもの
を合格とする。
【0027】これらの試験に合格した目的物に保護剤
(防腐剤・アルブミン)を加え、凍結乾燥して製品とす
ることができる。この作業は『凍結乾燥するヒトの血漿
製造及び検定規程』に従って行われる。得られた製品
は、次の基準を満たさなければならない。
【0028】外観と性質:凍結乾燥した製品は、白色ま
たはクリーム色の粉末で、水を加え溶解した場合に透明
の液体となり、攪拌しても溶けない顆粒がないものに限
られる。液体は明りの下で澄んだ透明となり、沈殿物が
ないこと、またアンプルは密封でき、ひび割れや漏れが
ないものを合格とする。
【0029】水分測定:『バイオ製品の化学検定規程』
に基づき、Phixiushi水分測定法により凍結乾
燥製品の水分を測定する。水分が3%以下のものを合格
とする。
【0030】PH値:PH値は6.5〜7.5
【0031】無菌試験:前記試験方法と同じ。
【0032】発熱性試験:前記試験方法と同じ。
【0033】安全性試験:前記試験方法と同じ。
【0034】マウス毒性試験:前記試験方法と同じ。
【0035】力価測定:前記試験方法と同じ。
【0036】HBsAg,HCV,HIV検出:前記試
験方法と同じ。
【0037】
【実施例】以下に、実施例にしたがって本発明をより詳
細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定される
ものではない。
【0038】細胞源:体外の白血球は、市の血液センタ
ーから供与を受けた、B型、C型肝炎及びそのキャリア
のテストに陰性である健康人の血液から採取した。 試験細胞:われわれの研究所の血液疾患研究部門から、
正常人の骨髄サンプルの供与を受けた。
【0039】誘導剤:フージャンシャミング菌類研究所
(FuJian Shanming Fungi Institute)より入手したC
MP(Calboxymethyl-Pachyymaran)を使用した。
地:GIBCO社製の培養液「RPMI 1640」
に、5%AB型血清、適量のヘパリンカルシウムグルコ
ース酸(heparin calcium gluco
se acid)及びカナマイシンを加えて調製した。
【0040】誘導方法:まず、採取した血液から遠心分
離により血漿を分離し、4倍に希釈したPBS(比重
1.077)を用いて白血球を回収し、pH7.4のP
BSで2度洗い、さらに培養液で洗った後、細胞を計数
し、培養液を用いて細胞濃度を8×106 /mlに調整
した。これを、一夜振とう培養したのち、誘導剤を添加
してさらに培養を続けた。
【0041】上記の培養方法で7日間(168時間)培
養したのち、培養液の上澄液を回収し、濾過してバクテ
リアを取り除き、無菌試験、発熱性試験、安全性試験、
毒性試験、HBsAg、HcAb、HIVの各試験を前
記したGM−CSF製造規定にしたがって行い、全ての
試験に陰性(−)であるものについてスーパーフィルタ
ーで濾過し、濃縮した。
【0042】上記の培養方法で得られた3セットのGM
−CSF(1)、GM−CSF(2)及びGM−CSF
(3)について、製品としての移送、貯蔵安定性を付与
するために、保護剤として3%マンニトールと0.5%
アルブミンを加えたのち、前記試験規定にしたがって試
験を行った。比較のために、3セットのGM−CSF
(1)、GM−CSF(2)及びGM−CSF(3)の
製造において細胞源として使用された白血球のそれぞれ
について、誘導剤を添加せずに培養した培養液の上澄液
をスーパーフィルターで濾過し、3%マンニトールと
0.5%アルブミンを加えたのち同様の試験を行った。
結果を表1に示す。
【0043】
【表1】 ──────────────────────────────────── ヒトの血液のリンパ球により生産されるGM−CSFの3組の試験結果 ──────────────────────────────────── 試験番号 GM−CSF(1) GM−CSF(2) GM−CSF(3) ──────────────────────────────────── 細胞数 (×10,000/ml) 586 505 590 外観 ピンク ピンク ピンク PH値 7.5 7.5 7.5 透明性 透 明 透 明 透 明 無菌試験 陰 性 陰 性 陰 性 発熱性試験 陰 性 陰 性 陰 性 毒性試験 陰 性 陰 性 陰 性 安全性試験 陰 性 陰 性 陰 性 毒性試験 陰 性 陰 性 陰 性 安全性試験 陰 性 陰 性 陰 性 HbsAg試験 陰 性 陰 性 陰 性 HcVAb試験 陰 性 陰 性 陰 性 HIV試験 陰 性 陰 性 陰 性 誘導剤無添加培養液 の力価(U/ml) 24300 43800 35120 誘導剤添加培養液 の力価(U/ml) 82836.8 80716.8 87040 ────────────────────────────────────
【0044】表1の結果によれば、我々の方法、即ち主
としてCMP(漢方薬の有効成分である。)からなる誘
導剤の強力な誘導による培養方法は、高い力価を有する
GM−CSFを製造することができ、筋肉注射の水準品
として多数の臨床試験に使用し得る品質のGM−CSF
を製造することができることがわかる。
【0045】つぎに、前記の誘導剤を添加した培養方法
において、培養時間と生成GM−CSFの力価の関係を
見るために、培養時間48時間、72時間、120時間
及び168時間(7日)における培養液の力価の比較を
行った。結果を表2に示す。
【0046】
【表2】 ────────────────────────────────── CMPにより誘導されたリンパ球により生成されたGM−CSF力価 ────────────────────────────────── 培養時間(時間) GM−CSF(U/ml) ────────────────────────────────── 48 51 72 4032 120 4096 168(7日) 87449.6 ────────────────────────────────────
【0047】表2から、CMPによって誘導されたリン
パ球が48時間後にGM−CSFの生産をはじめ、そし
て168時間後に80.000以上U/ml以上とな
り、最高値に達する。それ故、CMPによる誘導培養
は、168時間程度が最適であることが分かる。
【0048】(削除)
【0049】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
健康人から採取したリンパ球より、CMPを主成分とす
る誘導剤を使用して、高品質のGM−CSFを大量に生
産することができる。また、本発明の方法によってえら
れるGM−CSFは、筋肉注射の水準品として多数の臨
床試験に使用し得る品質のGM−CSFを製造すること
ができるものである。さらに、本発明の方法で得られる
GM−CSFはヒト意外の蛋白質を含有しておらず、副
作用も少ない。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特表 平10−510147(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12P 21/00 - 21/02 C07K 14/535 C12N 5/00 - 5/28 BIOSIS(DIALOG) WPI(DIALOG)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 健康人の血液中の白血球から分離したリ
    ンパ球を、CPを主成分とした誘導剤を添加した培養
    液中で培養することを特徴とする顆粒球マクロファージ
    コロニー刺激因子の製造方法。
  2. 【請求項2】 上記培養は、168時間以上行うことを
    特徴とする請求項1記載の顆粒球マクロファージコロニ
    ー刺激因子の製造方法。
  3. 【請求項3】Pを主成分とした顆粒球マクロファ
    ージコロニー刺激因子用誘導剤。
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