JP3215096U - 練り込み型帯電防止剤を含む合成繊維材料からなるモノフィラメント及びこれを用いた繊維製品 - Google Patents

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Abstract

【課題】特定構造の絶縁体高分子材料用帯電防止剤を練り込み、優れた帯電防止性能を有する合成繊維材料からなるモノフィラメント及びこれを用いた繊維製品を提供する。【解決手段】特定構造の半極性有機ホウ素化合物(ドナー成分)と塩基性窒素化合物(アクセプター成分)とを混合溶融し反応させて得られるドナー・アクセプター系分子化合物からなる絶縁体高分子材料用帯電防止剤を練り込んだ合成繊維材料を用いてモノフィラメント4とする。【選択図】図2

Description

本考案は、特定構造の絶縁体高分子材料用帯電防止剤を練り込み型帯電防止剤として用いた合成繊維材料に関する。
界面活性剤をプラスチック成型品や合成繊維製品の原料中に予め混合することにより、長期間に亘って帯電防止性能を持続させることを目指した内部練り込み型帯電防止剤の研究は古くから行われてきたが(例えば、非特許文献1参照)、それらの対象部表面で発生する帯電荷を瞬時に漏洩、消滅させる程に十分な性能のものは得られていなかった。
そこで、本考案者は、従来技術の問題点を解決すべく、ドナー・アクセプターハイブリッド系内部練り込み型帯電防止剤について研究し出願したが(特許文献1参照)、なお、性能に不十分な点があった。
そして更に研究を続けた結果、上記先願における問題を解決した画期的な絶縁体高分子材料用帯電防止剤の開発に成功し特許を取得した(特許文献2参照)。
上記特許発明に係るドナー・アクセプター系分子化合物型帯電防止剤は、少量混合するだけで、確実に再現性良く且つ持続性を持って絶縁体高分子材料の帯電を防止できる。
また、絶縁体高分子材料からなる成形品に発生する静電気を、成形品の表面と内部の双方で連続して効率よく消滅させる機能を有するので、成形に用いる絶縁体高分子材料に少量混合するだけでよく、非常に簡便かつ経済的である。
特開2011−079918号公報 特許第5734491号公報
浜中博義著、日本化粧品技術者連合会会誌、 "合成樹脂用帯電防止剤"、p28(1971)
本考案は、特定構造の絶縁体高分子材料用帯電防止剤を練り込み型帯電防止剤として用いた、従来よりも遥かに優れた帯電防止性能を有する合成繊維材料の提供を目的とする。
上記課題は、次の1)〜3)の考案によって解決される。
1) 下記一般式(1)の上段の半極性有機ホウ素化合物(ドナー成分)と下段の塩基性窒素化合物(アクセプター成分)とを混合溶融し反応させて得られる下記一般式(1)で表されるドナー・アクセプター系分子化合物からなる絶縁体高分子材料用帯電防止剤を練り込んだ合成繊維からなる帯電防止性能を有する合成繊維材料。
上記式中、R1、R2は、それぞれ独立に、CH(CH16−CO−OCH、又はHOCHで、かつ少なくとも一方がCH(CH16−CO−OCHであり、R3、R4は、それぞれ独立に、CH、C、HOCH、HOC、又はHOCHCH(CH)であり、R5はC、又はCである。
2) 前記合成繊維が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリ−2−フッ化ビニリデンの何れかからなる1)記載の帯電防止性能を有する合成繊維材料。
3) 前記合成繊維が不織布の形態である1)又は2)記載の帯電防止性能を有する合成繊維材料。
本考案によれば、特定構造の絶縁体高分子材料用帯電防止剤からなる練り込み型帯電防止剤を用いることにより、合成繊維に固有で有効な帯電荷漏洩機能を新たに付与できるので、従来よりも遥かに優れた帯電防止性能を有する合成繊維材料を提供できる。
また、この合成繊維材料は、それ自体が帯電しないだけでなく、合成繊維材料に接触する絶縁体樹脂製品に発生する電荷を引き付けて漏洩し、一体化した状態で静電気障害を軽減する作用を有するので、応用用途が非常に広く、産業上極めて有用である。
本考案の合成繊維材料の内部構造を示す模式図。 本考案の合成繊維材料を用いたジャケット用生地の内部構造を示す模式断面図。 本考案の合成繊維材料を用いた縫いぐるみ製品の内部構造を示す模式断面図。 本考案の合成繊維材料を帯電荷漏洩用の網袋として用いた例を示す模式図。 本考案の合成繊維材料を巻き付けたポリテトラフルオロエチレン製円筒を示す模式図。
以下、上記本考案について詳しく説明する。
本考案で用いるドナー・アクセプター系分子化合物からなる絶縁体高分子材料用帯電防止剤は、前記特許文献2の特許に係るもの(以下、帯電防止剤Aという)である。しかしながら、前記特許明細書では、主に帯電防止剤Aを成形用樹脂の内部練り込み型帯電防止剤として用いた場合について説明しており、合成繊維に関する記述は十分でなかった。
そこで、本考案では、帯電防止剤Aを練り込み型帯電防止剤として用いた合成繊維材料について出願することにしたものである。
ここで、帯電防止剤Aの基本的事項について説明するが、詳細は特許文献2に記載されている。
帯電防止剤Aは、前記一般式(1)の上段の半極性有機ホウ素化合物部分をドナー成分とし、前記一般式(1)の下段の塩基性窒素化合物部分をアクセプター成分とし、両者をモル比約1:1で反応させたドナー・アクセプター系分子化合物からなる。
なお、前記ドナー成分の、「δ+」は分子内の共有結合中に極性が存在していることを示し、(+)は酸素原子の電子供与性が強くなっていることを示し、(−)はホウ素原子の電子吸引性が強くなっていることを示し、「→」は電子が引き付けられる経路を示し、「---」は原子間結合力が弱められた状態を示す。
前記ドナー成分は、炭素数17の直鎖型飽和炭化水素基を1〜2個有し、結晶状態での半極性結合原子団の占有面積が最小になるようにグリセリン残基に限定する必要がある。
また、前記アクセプター成分は、N−置換基の1個が、アミド結合を介して炭素数17の直鎖型飽和炭化水素基が末端に結合した基で、残りの2個のN−置換基が炭素数1〜3の炭化水素基又はヒドロキシ炭化水素基である三級アミンとする必要がある。
ドナー成分やアクセプター成分が前記構造要件を満たさない場合には、構造が類似していても本発明の効果を得ることはできない。
また、前記一般式(1)のドナー・アクセプター系分子化合物は、絶縁体高分子材料と混合する前に、予めドナー成分とアクセプター成分をモル比約1:1で混合溶融して反応させることにより作製しておく必要がある。予め反応させることなく、絶縁体高分子材料にドナー成分とアクセプター成分を別々に混合しただけでは、混合物中で両成分が反応しないために、前記分子化合物が形成されず、本発明の効果を得ることはできない。また、両成分の混合比は1:1に近いほど好ましく、1:1からあまり外れると、分子化合物が十分に形成されないため、本発明の効果は得られない。混合比の限界は1:0.8又は0.8:1程度である。
前記ドナー成分の半極性有機ホウ素化合物部分は、グリセリン2モルに対しホウ酸1モルを反応させ、2:1型の完全エステル化物(トリエステル化物)を作るか、又はグリセリン2モルに対し低級アルコールのホウ酸トリエステル1モルを反応させて、2:1型の完全エステル化物(トリエステル化物)を作った後、生成物中に残存する1〜2個のアルコール性OH基に対し、直鎖ステアリン酸又は低級アルコールの直鎖ステアリン酸エステルを用いて、エステル化反応又はエステル交換反応を行うことにより合成できる。これらの一連の反応の反応温度は、常圧で50〜250℃が適切であり、特に触媒を用いる必要はない。
また、別法として、予め準備した中間原料のグリセリルモノステアレート2モルに対しホウ酸又は低級アルコールのホウ酸トリエステル1モルを反応させ、2:1型のホウ酸完全エステル化物(トリエステル化物)を合成してもよい。その場合の反応温度は、常圧で100〜200℃が適切であり、特に触媒を用いる必要はない。
前記アクセプター成分の三級アミン部分は、炭素数1〜3の炭化水素基で置換された三級アミノ基と一級アミノ基が、炭素数2〜3のアルキレン基で連結されたジアミン1モルに、直鎖ステアリン酸若しくは低級アルコールの直鎖ステアリン酸エステル1モルを反応させてアミド化させるか、又は、一級アミノ基と直鎖ステアリルアミド基が、炭素数2〜3のアルキレン基で連結されたジアミン1モルを、ホルムアルデヒド、エチレンオキシド若しくはプロピレンオキシドを2モル反応させることにより合成できる。アミド化反応の温度は常圧で100〜230℃が適切であり、触媒を用いる必要はない。
また、三級アミノ基とするための三級化反応の温度は、常圧で100〜150℃が適切であり、触媒を使用する必要はない。
続いて、固体状の上記半極性有機ホウ素化合物と固体状の上記三級アミンを、加熱下で撹拌混合し、相互溶解した時点で加熱操作を止めて撹拌下に両成分を接触させ続け、発熱が見られた時点で撹拌を停止し、次いで冷却固化させることにより、帯電防止剤Aが得られる。
本考案では、帯電防止剤Aを合成繊維材料の練り込み型帯電防止剤として用いる。
図1に、本考案の合成繊維材料の内部構造を模式的に示すが、従来技術に比べて非常に少量の帯電防止剤Aを使用すればよいため、細い実線で示した合成繊維からなるマトリックス中に、帯電防止剤Aが単分散に近い形で安定して存在する構造となる。そして、この構造により、効率よく帯電荷を漏洩させることができ、再現性や持続性にも優れたものとなる。なお、合成繊維材料に練り込む帯電防止剤Aの量は、合成繊維材料の種類、用途、使用方法等に応じて変化するため一義的に特定することはできないが、帯電防止剤Aを練り込んだ合成繊維材料、又はこれを用いた応用製品において、所望の箇所の帯電荷を確実に漏洩、消滅させることができる量を適宜選択すればよい。
本考案の合成繊維材料に用いる樹脂としては、以下のようなものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
a) ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、オレフィン系エラストマー、
ポリシクロオレフィン(COP)、ポリエチレン・ポリプロピレン共重合体
b) ポリ−2−フッ化ビニリデン(PVDF)
c) ポリ塩化ビニル(PVC)
d) ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)
また、本考案の合成繊維材料を用いた製品としては、一般衣料用布地製品、不織布製品、内岱用繊維製品、クッション用綿類製品、一般室内や車両室内外装用の繊維製品などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
更に、前述したように、本考案の合成繊維材料は、それ自体が帯電しないだけでなく、合成繊維材料に接触する絶縁体樹脂製品に発生する電荷を引き付けて漏洩し、且つ、静電気障害を軽減する作用を有する。したがってポリ−4−フッ化エチレンのような帯電防止剤Aを練り込むことが難しい樹脂からなる物品であっても、該物品の表面に本考案の合成繊維材料からなるシートを貼り付けるなどして接触させれば、前記物品の帯電防止を行うことができる。このように本考案の合成繊維材料は、使用方法を工夫すれば応用用途は無数にあると考えられるので、産業上極めて有用である。
以下、実施例及び比較例を示して本考案を更に具体的に説明するが、本考案はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、例中の「部」及び「%」は「重量部」及び「重量%」である。
実施例1
1V値0.75のポリエチレンテレフタレート樹脂100部に対し、下記〔化2〕のドナー・アクセプター系分子化合物を0.8部添加して成形用ペレットを製造し、260〜265℃で押出成形してモノフィラメントを製造した後、これを3〜5cmに切断した。
次いで、厚さ0.1mmの帯電防止剤無添加ポリエステル布製の表地、厚さ0.1mmの帯電防止剤無添加ポリアミド布製の裏地及び両者に挟まれた空間部(空気層)からなるジャケット用生地の空間部に、前記切断したモノフィラメントを充填し、帯電防止性能を有するジャケット用生地を製造した。
図2にその内部構造の模式断面図を示すが、1が表地、2が裏地、3が空間部(空気層)、4がモノフィラメント(本考案に係る合成繊維材料に相当)である。
次いで、表地及び裏地の表面を、23℃、50%RHの条件下で300gの加重を掛けて綿布で20回繰り返し摩擦した後、4mm四方の大きさの紙片を1cmの距離まで近づけたが、両面共に、紙片の静電吸着現象は見られなかった。
次に、JISL1094に準拠し、表地及び裏地の表面に10kVの電圧を30秒印加して2kVまで強制帯電させた状態からの放電性(強制帯電荷減衰特性)を調べたところ、両面共に10秒以内で帯電荷が0Vまで完全減衰(0Vまで減衰)した。
実施例2
1V値0.70のポリエチレンテレフタレート樹脂100部に対し、下記〔化3〕のドナー・アクセプター系分子化合物を1.5部添加して成形用ペレットを製造し、260〜265℃で押出成形してモノフィラメントを製造した後、これを3〜5cmに切断した。
次いで、実施例1の場合と同じ表地、裏地及び空間部(空気層)からなるジャケット用生地の空間部に、前記切断したモノフィラメントを充填し、帯電防止性能を有するジャケット用生地を製造した。
次いで、実施例1と同様にして、綿布による摩擦帯電性の程度を調べたが、両面共に、紙片の静電吸着現象は見られなかった。
また、実施例1と同様にして行ったJISL1094に準拠した強制帯電荷減衰特性においても、両面共に10秒以内に帯電荷が0Vまで完全減衰した。
実施例3〜6
実施例1における〔化2〕のドナー・アクセプター系分子化合物に代えて下記〔化4〕〜〔化6〕の各ドナー・アクセプター系分子化合物を下記〔表1〕に示す割合で用いた点以外は、実施例1と同様にして、実施例3〜5に係る帯電防止性能を有するジャケット用生地を製造した。
また、前記〔化2〕の化合物と下記〔化7〕のドナー・アクセプター系分子化合物を、下記〔表1〕に示す割合で用いた点以外は、実施例1と同様にして、実施例6に係る帯電防止性能を有するジャケット用生地を製造した。
次いで、実施例1と同様にして、各ジャケット用生地について綿布による摩擦帯電性の程度、及びJISL1094に準拠した強制帯電荷減衰特性を調べた。
結果を纏めて〔表1〕に示すが、実施例1と同様に良好な帯電防止効果が得られることが分かった。
比較例1
実施例1で用いた帯電防止性能を有するモノフィラメントに代えて、ドナー・アクセプター系分子化合物を添加しない(帯電防止性能を有しない)ポリエチレンテレフタレートのモノフィラメントを3〜5cmに切断したものを用いた点以外は、実施例1と同様にして比較例1のジャケット用生地を製造した。
次いで、実施例1と同様にして、上記ジャケット用生地について綿布による摩擦帯電性の程度、及びJISL1094に準拠した強制帯電荷減衰特性を調べた。
結果を〔表2〕に示すが、表地と裏地の両面共に紙片の静電吸着現象が見られ、また、3分経過しても帯電荷は完全減衰しなかった。
比較例2
実施例1で用いた帯電防止性能を有するモノフィラメントに代えて、表面塗布型帯電防止剤のN−(2−ヒドロキシエチル)−N,N−ジメチル−N−ステアロイルアミドプロピルアンモニウムナイトレートの1%エチルアルコール溶液により表面低効率を10Ω/nとしたポリエチレンテレフタレート綿を用いた点以外は、実施例1と同様にして比較例2のジャケット用生地を製造した。
次いで、実施例1と同様にして、上記ジャケット用生地について綿布による摩擦帯電性の程度、及びJISL1094に準拠した強制帯電荷減衰特性を調べた。
結果を〔表2〕に示すが、表地と裏地の両面共に紙片の静電吸着現象が見られ、また、3分経過しても帯電荷は完全減衰しなかった。
実施例7
1V値0.75のポリエチレンテレフタレート樹脂100部に対し前記〔化2〕のドナー・アクセプター系分子化合物を1部添加して成形用ペレットを製造し、260〜265℃で押出成形してモノフィラメントを製造した後、これを1〜1.5cmに切断した。
次いで、帯電防止剤無添加のポリエチレンテレフタレートを用い、最表面をボア生地で作製した重さ80gのラッコの縫いぐるみ中に、前記切断したモノフィラメントを綿状にしたものを120g充填して帯電防止性能を有する縫いぐるみ製品を製造した。その内部構造の模式断面図を図3に示すが、5はボア生地、6はモノフィラメントの綿状物、7は内部空間である。
次いで、縫いぐるみ製品の表面について、実施例1と同様にして綿布による摩擦帯電性の程度を調べたが、紙片の吸着現象は見られなかった。
また、縫いぐるみ製品を、温度15〜25℃、湿度20〜55%RHの範囲で変動する縦3m、横6m、高さ3.5mの窓開き部屋に6ヶ月間静置したが、塵芥吸着による黒染みは全く見られなかった。
実施例8
実施例7における〔化2〕のドナー・アクセプター系分子化合物1部に代えて、下記〔化8〕ドナー・アクセプター系分子化合物を1.2部用いた点以外は、実施例7と同様にして、帯電防止性能を有する縫いぐるみ製品を製造した。
次いで、縫いぐるみ製品の表面について、実施例1と同様にして綿布による摩擦帯電性の程度を調べたが、紙片の吸着現象は見られなかった。
比較例3
実施例7で用いたモノフィラメントに代えて、高分子型帯電防止剤のポリ(10)オキシエチレンアジペートを6%混有させたポリエチレンテレフタレート綿120gを用いた点以外は、実施例7と同様にして縫いぐるみ製品を製造し、綿布による摩擦帯電性の程度を調べたが、紙片の吸着が多くあり、帯電防止効果は見られなかった。
実施例9
ポリプロピレン樹脂99部に前記〔化2〕のドナー・アクセプター系帯電防止剤を1部添加し、185〜190℃で押出成形して製造した、太さ0.15mmのモノフィラメントを交叉編みし、縦10cm、横13cmの網袋を製造した。
次いで、該網袋に、外径3mm、内径1mm、厚さ0.2mmのシリコーン樹脂製パッキン30個を入れた後、帯電防止剤無添加の縦11cm、横15cm、厚さ0.1mmの透明低密度ポリエチレン(LDPE)製袋に入れて密封した。
図4にその概要を示すが、8はモノフィラメントを交叉編みした網袋、9はシリコーン樹脂製パッキン、10は透明LDPE製袋、11は網袋の内部空間、12は透明LDPE製袋の内部空間である。
次いで、LDPE袋を上下に激しく100回振とうし、シリコーン樹脂製パッキン同士及び該パッキンと前記網袋との間に摩擦を生じさせた。
また、別の試験として、最外部のLDPE袋の表面を、300gの加重を掛けて綿布で30回強制摩擦した後、1cm離れた距離に置いた縦4mm、横4mmの紙片について、静電吸着現象が生じるかどうかを観察した。
その結果、最内部のシリコーン樹脂パッキン同士の静電吸着は起こらず、最外部のLDPE袋の表面への紙片の静電吸着も無く、網袋を形成するモノフィラメントの有する帯電荷漏洩特性が、これに接触する絶縁体にまで及ぶことが確認された。
比較例4
実施例9で用いたモノフィラメントに代えて、ポリプロピレン樹脂95部に界面活性剤型帯電防止剤のグリセリルモノステアレートを3部添加し、185〜190℃で押出成形して製造した太さ0.15mmのモノフィラメントを用いた点以外は、実施例9と同様にして網袋を製造し、シリコーン樹脂製パッキン30個を投入し、LDPE袋に入れて密封した。
次いで実施例9と同様にLDPE袋を上下に激しく100回振とうする操作を行った。
その結果、最内部のシリコーン樹脂製パッキン同士の静電吸着、及び最外部のLDPE袋表面への紙片付着が生じ、帯電防止効果は不十分であった。
実施例10
ポリ(2−フッ化ビニリデン)樹脂に、前記〔化2〕のドナー・アクセプター系分子化合物型帯電防止剤を1%練り込んで押出成形し、太さ0.15mmのモノフィラメントを製造した。次いで、該モノフィラメントを、外径8cm、内径7.7cm、長さ30cmのポリテトラフルオロエチレン製円筒の表面に厚みが1.5mmになるまで巻き付けた。
図5にその概要を示すが、13はポリテトラフルオロエチレン製円筒、14はモノフィラメント、15は円筒の内部空間である。
次いで、上記モノフィラメントによる円筒の内部空間の帯電防止効果を確認するため、前記円筒の内部空間に、直径2.5mmの帯電させた発泡スチロールを30個投入して、30回、縦に激しく振とうしたが、前記円筒の内壁への静電吸着は全く起こらなかった。
以上、本考案の合成繊維材料の代表的な実施例を示したが、本考案の合成繊維材料を用いると、通常の練り込み型帯電防止剤を用いた場合に絶縁障害となる空気の共存下でも問題なく帯電防止効果が得られるので、応用用途が非常に広く、産業上極めて有用である。
また、上記実施例9では本考案に係るモノフィラメントを網袋として用いた例を示したが、例えば、該モノフィラメントで網地を作製し、列車の窓の遮光具や座席下の小物入れなどに使うと、静電気が生じやすい送風環境下でも確実に帯電を防止することができる。なお、一般に、列車や乗用車の遮光具には、15%程度の大量の帯電防止剤を練り込んだポリプロピレン樹脂が用いられているが、帯電防止効果は十分とは言えない。
また、従来のポリ(2−フッ化ビニリデン)樹脂製品は非常に帯電性が高く、取り扱いが面倒であるが、上記実施例10で示した本考案に係るポリ(2−フッ化ビニリデン)樹脂のモノフィラメントは帯電防止性能が非常に優れているので、例えば製造現場で巻き取り操作を行う際に、連続的に空気層と接触しても帯電せず、作業性が著しく向上する。
1 表地
2 裏地
3 空間部(空気層)
4 モノフィラメント
5 ボア生地
6 モノフィラメントの綿状物
7 内部空間
8 モノフィラメントを交叉編みした網袋
9 シリコーン樹脂製パッキン
10 透明LDPE製袋
11 網袋の内部空間
12 透明LDPE製袋の内部空間
13 ポリテトラフルオロエチレン製円筒
14 円筒に巻き付けたモノフィラメント
15 円筒の内部空間
本考案は、特定構造の絶縁体高分子材料用帯電防止剤を練り込み型帯電防止剤として含む合成繊維材料からなるモノフィラメント及びこれを用いた繊維製品に関する。
界面活性剤をプラスチック成型品や合成繊維製品の原料中に予め混合することにより、長期間に亘って帯電防止性能を持続させることを目指した内部練り込み型帯電防止剤の研究は古くから行われてきたが(例えば、非特許文献1参照)、それらの対象部表面で発生する帯電荷を瞬時に漏洩、消滅させる程に十分な性能のものは得られていなかった。
そこで、本考案者は、従来技術の問題点を解決すべく、ドナー・アクセプターハイブリッド系内部練り込み型帯電防止剤について研究し出願したが(特許文献1参照)、なお、性能に不十分な点があった。
そして更に研究を続けた結果、上記先願における問題を解決した画期的な絶縁体高分子材料用帯電防止剤の開発に成功し特許を取得した(特許文献2参照)。
上記特許発明に係るドナー・アクセプター系分子化合物型帯電防止剤は、少量混合するだけで、確実に再現性良く且つ持続性を持って絶縁体高分子材料の帯電を防止できる。
また、絶縁体高分子材料からなる成形品に発生する静電気を、成形品の表面と内部の双方で連続して効率よく消滅させる機能を有するので、成形に用いる絶縁体高分子材料に少量混合するだけでよく、非常に簡便かつ経済的である。
特開2011−079918号公報 特許第5734491号公報
浜中博義著、日本化粧品技術者連合会会誌、 "合成樹脂用帯電防止剤"、p28(1971)
本考案は、特定構造の絶縁体高分子材料用帯電防止剤を練り込み型帯電防止剤として含む、従来よりも遥かに優れた帯電防止性能を有する合成繊維材料からなるモノフィラメント及びこれを用いた繊維製品の提供を目的とする。
上記課題は、次の1)〜3)の考案によって解決される。
1)下記一般式(1)の上段の半極性有機ホウ素化合物(ドナー成分)と下段の塩基性窒素化合物(アクセプター成分)とを混合溶融し反応させて得られる下記一般式(1)で表されるドナー・アクセプター系分子化合物からなる絶縁体高分子材料用帯電防止剤を練り込んだ帯電防止性能を有する合成繊維材料からなるモノフィラメント
上記式中、R1、R2は、それぞれ独立に、CH(CH16−CO−OCH、又はHOCHで、かつ少なくとも一方がCH(CH16−CO−OCHであり、R3、R4は、それぞれ独立に、CH、C、HOCH、HOC、又はHOCHCH(CH)であり、R5はC、又はCである。
2) 前記合成繊維材料に用いる樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリ−2−フッ化ビニリデンの何れかである1)記載のモノフィラメント
3) 1)又は2)記載のモノフィラメントを用いた繊維製品
本考案によれば、特定構造の絶縁体高分子材料用帯電防止剤からなる練り込み型帯電防止剤を用いることにより、合成繊維に固有で有効な帯電荷漏洩機能を新たに付与できるので、従来よりも遥かに優れた帯電防止性能を有する合成繊維材料を用いたモノフィラメント及びこれを用いた繊維製品を提供できる。
また、本考案のモノフィラメントは、それ自体が帯電しないだけでなく、モノフィラメントに接触する絶縁体樹脂製品に発生する電荷を引き付けて漏洩し、一体化した状態で静電気障害を軽減する作用を有するので、応用用途が非常に広く産業上極めて有用である。
本考案のモノフィラメントの内部構造を示す模式図。 本考案のモノフィラメントを用いたジャケット用生地の内部構造を示す模式断面図。 本考案のモノフィラメントを用いた縫いぐるみ製品の内部構造を示す模式断面図。 本考案のモノフィラメントを帯電荷漏洩用の網袋として用いた例を示す模式図。 本考案のモノフィラメントを巻き付けたポリテトラフルオロエチレン製円筒を示す模式図。
以下、上記本考案について詳しく説明する。
本考案で用いるドナー・アクセプター系分子化合物からなる絶縁体高分子材料用帯電防止剤は、前記特許文献2の特許に係るもの(以下、帯電防止剤Aという)である。しかしながら、前記特許明細書では、主に帯電防止剤Aを成形用樹脂の内部練り込み型帯電防止剤として用いた場合について説明しており、合成繊維に関する記述は十分でなかった。
そこで、本考案では、帯電防止剤Aを練り込み型帯電防止剤として用いた合成繊維材料からなるモノフィラメント及びこれを用いた繊維製品について出願することにした。
ここで、帯電防止剤Aの基本的事項について説明するが、詳細は特許文献2に記載されている。
帯電防止剤Aは、前記一般式(1)の上段の半極性有機ホウ素化合物部分をドナー成分とし、前記一般式(1)の下段の塩基性窒素化合物部分をアクセプター成分とし、両者をモル比約1:1で反応させたドナー・アクセプター系分子化合物からなる。
なお、前記ドナー成分の、「δ+」は分子内の共有結合中に極性が存在していることを示し、(+)は酸素原子の電子供与性が強くなっていることを示し、(−)はホウ素原子の電子吸引性が強くなっていることを示し、「→」は電子が引き付けられる経路を示し、「---」は原子間結合力が弱められた状態を示す。
前記ドナー成分は、炭素数17の直鎖型飽和炭化水素基を1〜2個有し、結晶状態での半極性結合原子団の占有面積が最小になるようにグリセリン残基に限定する必要がある。
また、前記アクセプター成分は、N−置換基の1個が、アミド結合を介して炭素数17の直鎖型飽和炭化水素基が末端に結合した基で、残りの2個のN−置換基が炭素数1〜3の炭化水素基又はヒドロキシ炭化水素基である三級アミンとする必要がある。
ドナー成分やアクセプター成分が前記構造要件を満たさない場合には、構造が類似していても本発明の効果を得ることはできない。
また、前記一般式(1)のドナー・アクセプター系分子化合物は、絶縁体高分子材料と混合する前に、予めドナー成分とアクセプター成分をモル比約1:1で混合溶融して反応させることにより作製しておく必要がある。予め反応させることなく、絶縁体高分子材料にドナー成分とアクセプター成分を別々に混合しただけでは、混合物中で両成分が反応しないために、前記分子化合物が形成されず、本発明の効果を得ることはできない。また、両成分の混合比は1:1に近いほど好ましく、1:1からあまり外れると、分子化合物が十分に形成されないため、本発明の効果は得られない。混合比の限界は1:0.8又は0.8:1程度である。
前記ドナー成分の半極性有機ホウ素化合物部分は、グリセリン2モルに対しホウ酸1モルを反応させ、2:1型の完全エステル化物(トリエステル化物)を作るか、又はグリセリン2モルに対し低級アルコールのホウ酸トリエステル1モルを反応させて、2:1型の完全エステル化物(トリエステル化物)を作った後、生成物中に残存する1〜2個のアルコール性OH基に対し、直鎖ステアリン酸又は低級アルコールの直鎖ステアリン酸エステルを用いて、エステル化反応又はエステル交換反応を行うことにより合成できる。これらの一連の反応の反応温度は、常圧で50〜250℃が適切であり、特に触媒を用いる必要はない。
また、別法として、予め準備した中間原料のグリセリルモノステアレート2モルに対しホウ酸又は低級アルコールのホウ酸トリエステル1モルを反応させ、2:1型のホウ酸完全エステル化物(トリエステル化物)を合成してもよい。その場合の反応温度は、常圧で100〜200℃が適切であり、特に触媒を用いる必要はない。
前記アクセプター成分の三級アミン部分は、炭素数1〜3の炭化水素基で置換された三級アミノ基と一級アミノ基が、炭素数2〜3のアルキレン基で連結されたジアミン1モルに、直鎖ステアリン酸若しくは低級アルコールの直鎖ステアリン酸エステル1モルを反応させてアミド化させるか、又は、一級アミノ基と直鎖ステアリルアミド基が、炭素数2〜3のアルキレン基で連結されたジアミン1モルを、ホルムアルデヒド、エチレンオキシド若しくはプロピレンオキシドを2モル反応させることにより合成できる。アミド化反応の温度は常圧で100〜230℃が適切であり、触媒を用いる必要はない。
また、三級アミノ基とするための三級化反応の温度は、常圧で100〜150℃が適切であり、触媒を使用する必要はない。
続いて、固体状の上記半極性有機ホウ素化合物と固体状の上記三級アミンを、加熱下で撹拌混合し、相互溶解した時点で加熱操作を止めて撹拌下に両成分を接触させ続け、発熱が見られた時点で撹拌を停止し、次いで冷却固化させることにより、帯電防止剤Aが得られる。
本考案では、帯電防止剤Aを合成繊維材料の練り込み型帯電防止剤として用いる。
図1に、本考案のモノフィラメントの内部構造を模式的に示すが、従来技術に比べて非常に少量の帯電防止剤Aを使用すればよいため、細い実線で示した合成繊維からなるマトリックス中に、帯電防止剤Aが単分散に近い形で安定して存在する構造となる。そして、この構造により、効率よく帯電荷を漏洩させることができ、再現性や持続性にも優れたものとなる。なお、合成繊維材料に練り込む帯電防止剤Aの量は、合成繊維材料の種類、用途、使用方法等に応じて変化するため一義的に特定することはできないが、帯電防止剤Aを練り込んだ合成繊維材料からなるモノフィラメント又はこれを用いた繊維製品において、所望の箇所の帯電荷を確実に漏洩、消滅させることができる量を適宜選択すればよい。
本考案に係る合成繊維材料に用いる樹脂としては、以下のようなものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
a) ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、オレフィン系エラストマー、
ポリシクロオレフィン(COP)、ポリエチレン・ポリプロピレン共重合体
b) ポリ−2−フッ化ビニリデン(PVDF)
c) ポリ塩化ビニル(PVC)
d) ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)
また、本考案のモノフィラメントを用いた繊維製品としては、一般衣料用布地製品、不織布製品、内岱用繊維製品、クッション用綿類製品、一般室内や車両室内外装用の繊維製品などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
更に、前述したように、本考案のモノフィラメントは、それ自体が帯電しないだけでなく、モノフィラメントに接触する絶縁体樹脂製品に発生する電荷を引き付けて漏洩し、且つ、静電気障害を軽減する作用を有する。したがってポリ−4−フッ化エチレンのような帯電防止剤Aを練り込むことが難しい樹脂からなる物品であっても、該物品の表面に本考案のモノフィラメントを用いたシートを貼り付けるなどして接触させれば、前記物品の帯電防止を行うことができる。このように本考案のモノフィラメントは、使用方法を工夫すれば応用用途は無数にあると考えられるので、産業上極めて有用である。
以下、実施例及び比較例を示して本考案を更に具体的に説明するが、本考案はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、例中の「部」及び「%」は「重量部」及び「重量%」である。
実施例1
1V値0.75のポリエチレンテレフタレート樹脂100部に対し、下記〔化2〕のドナー・アクセプター系分子化合物を0.8部添加して成形用ペレットを製造し、260〜265℃で押出成形してモノフィラメントを製造した後、これを3〜5cmに切断した。
次いで、厚さ0.1mmの帯電防止剤無添加ポリエステル布製の表地、厚さ0.1mmの帯電防止剤無添加ポリアミド布製の裏地及び両者に挟まれた空間部(空気層)からなるジャケット用生地の空間部に、前記切断したモノフィラメントを充填し、帯電防止性能を有するジャケット用生地を製造した。
図2にその内部構造の模式断面図を示すが、1が表地、2が裏地、3が空間部(空気層)、4がモノフィラメント(本考案に係る合成繊維材料に相当)である。
次いで、表地及び裏地の表面を、23℃、50%RHの条件下で300gの加重を掛けて綿布で20回繰り返し摩擦した後、4mm四方の大きさの紙片を1cmの距離まで近づけたが、両面共に、紙片の静電吸着現象は見られなかった。
次に、JISL1094に準拠し、表地及び裏地の表面に10kVの電圧を30秒印加して2kVまで強制帯電させた状態からの放電性(強制帯電荷減衰特性)を調べたところ、両面共に10秒以内で帯電荷が0Vまで完全減衰(0Vまで減衰)した。
実施例2
1V値0.70のポリエチレンテレフタレート樹脂100部に対し、下記〔化3〕のドナー・アクセプター系分子化合物を1.5部添加して成形用ペレットを製造し、260〜265℃で押出成形してモノフィラメントを製造した後、これを3〜5cmに切断した。
次いで、実施例1の場合と同じ表地、裏地及び空間部(空気層)からなるジャケット用生地の空間部に、前記切断したモノフィラメントを充填し、帯電防止性能を有するジャケット用生地を製造した。
次いで、実施例1と同様にして、綿布による摩擦帯電性の程度を調べたが、両面共に、紙片の静電吸着現象は見られなかった。
また、実施例1と同様にして行ったJISL1094に準拠した強制帯電荷減衰特性においても、両面共に10秒以内に帯電荷が0Vまで完全減衰した。
実施例3〜6
実施例1における〔化2〕のドナー・アクセプター系分子化合物に代えて下記〔化4〕〜〔化6〕の各ドナー・アクセプター系分子化合物を下記〔表1〕に示す割合で用いた点以外は、実施例1と同様にして、実施例3〜5に係る帯電防止性能を有するジャケット用生地を製造した。
また、前記〔化2〕の化合物と下記〔化7〕のドナー・アクセプター系分子化合物を、下記〔表1〕に示す割合で用いた点以外は、実施例1と同様にして、実施例6に係る帯電防止性能を有するジャケット用生地を製造した。
次いで、実施例1と同様にして、各ジャケット用生地について綿布による摩擦帯電性の程度、及びJISL1094に準拠した強制帯電荷減衰特性を調べた。
結果を纏めて〔表1〕に示すが、実施例1と同様に良好な帯電防止効果が得られることが分かった。
比較例1
実施例1で用いた帯電防止性能を有するモノフィラメントに代えて、ドナー・アクセプター系分子化合物を添加しない(帯電防止性能を有しない)ポリエチレンテレフタレートのモノフィラメントを3〜5cmに切断したものを用いた点以外は、実施例1と同様にして比較例1のジャケット用生地を製造した。
次いで、実施例1と同様にして、上記ジャケット用生地について綿布による摩擦帯電性の程度、及びJISL1094に準拠した強制帯電荷減衰特性を調べた。
結果を〔表2〕に示すが、表地と裏地の両面共に紙片の静電吸着現象が見られ、また、3分経過しても帯電荷は完全減衰しなかった。
比較例2
実施例1で用いた帯電防止性能を有するモノフィラメントに代えて、表面塗布型帯電防止剤のN−(2−ヒドロキシエチル)−N,N−ジメチル−N−ステアロイルアミドプロピルアンモニウムナイトレートの1%エチルアルコール溶液により表面低効率を10Ω/nとしたポリエチレンテレフタレート綿を用いた点以外は、実施例1と同様にして比較例2のジャケット用生地を製造した。
次いで、実施例1と同様にして、上記ジャケット用生地について綿布による摩擦帯電性の程度、及びJISL1094に準拠した強制帯電荷減衰特性を調べた。
結果を〔表2〕に示すが、表地と裏地の両面共に紙片の静電吸着現象が見られ、また、3分経過しても帯電荷は完全減衰しなかった。
実施例7
1V値0.75のポリエチレンテレフタレート樹脂100部に対し前記〔化2〕のドナー・アクセプター系分子化合物を1部添加して成形用ペレットを製造し、260〜265℃で押出成形してモノフィラメントを製造した後、これを1〜1.5cmに切断した。
次いで、帯電防止剤無添加のポリエチレンテレフタレートを用い、最表面をボア生地で作製した重さ80gのラッコの縫いぐるみ中に、前記切断したモノフィラメントを綿状にしたものを120g充填して帯電防止性能を有する縫いぐるみ製品を製造した。その内部構造の模式断面図を図3に示すが、5はボア生地、6はモノフィラメントの綿状物、7は内部空間である。
次いで、縫いぐるみ製品の表面について、実施例1と同様にして綿布による摩擦帯電性の程度を調べたが、紙片の吸着現象は見られなかった。
また、縫いぐるみ製品を、温度15〜25℃、湿度20〜55%RHの範囲で変動する縦3m、横6m、高さ3.5mの窓開き部屋に6ヶ月間静置したが、塵芥吸着による黒染みは全く見られなかった。
実施例8
実施例7における〔化2〕のドナー・アクセプター系分子化合物1部に代えて、下記〔化8〕ドナー・アクセプター系分子化合物を1.2部用いた点以外は、実施例7と同様にして、帯電防止性能を有する縫いぐるみ製品を製造した。
次いで、縫いぐるみ製品の表面について、実施例1と同様にして綿布による摩擦帯電性の程度を調べたが、紙片の吸着現象は見られなかった。
比較例3
実施例7で用いたモノフィラメントに代えて、高分子型帯電防止剤のポリ(10)オキシエチレンアジペートを6%混有させたポリエチレンテレフタレート綿120gを用いた点以外は、実施例7と同様にして縫いぐるみ製品を製造し、綿布による摩擦帯電性の程度を調べたが、紙片の吸着が多くあり、帯電防止効果は見られなかった。
実施例9
ポリプロピレン樹脂99部に前記〔化2〕のドナー・アクセプター系帯電防止剤を1部添加し、185〜190℃で押出成形して製造した、太さ0.15mmのモノフィラメントを交叉編みし、縦10cm、横13cmの網袋を製造した。
次いで、該網袋に、外径3mm、内径1mm、厚さ0.2mmのシリコーン樹脂製パッキン30個を入れた後、帯電防止剤無添加の縦11cm、横15cm、厚さ0.1mmの透明低密度ポリエチレン(LDPE)製袋に入れて密封した。
図4にその概要を示すが、8はモノフィラメントを交叉編みした網袋、9はシリコーン樹脂製パッキン、10は透明LDPE製袋、11は網袋の内部空間、12は透明LDPE製袋の内部空間である。
次いで、LDPE袋を上下に激しく100回振とうし、シリコーン樹脂製パッキン同士及び該パッキンと前記網袋との間に摩擦を生じさせた。
また、別の試験として、最外部のLDPE袋の表面を、300gの加重を掛けて綿布で30回強制摩擦した後、1cm離れた距離に置いた縦4mm、横4mmの紙片について、静電吸着現象が生じるかどうかを観察した。
その結果、最内部のシリコーン樹脂パッキン同士の静電吸着は起こらず、最外部のLDPE袋の表面への紙片の静電吸着も無く、網袋を形成するモノフィラメントの有する帯電荷漏洩特性が、これに接触する絶縁体にまで及ぶことが確認された。
比較例4
実施例9で用いたモノフィラメントに代えて、ポリプロピレン樹脂95部に界面活性剤型帯電防止剤のグリセリルモノステアレートを3部添加し、185〜190℃で押出成形して製造した太さ0.15mmのモノフィラメントを用いた点以外は、実施例9と同様にして網袋を製造し、シリコーン樹脂製パッキン30個を投入し、LDPE袋に入れて密封した。
次いで実施例9と同様にLDPE袋を上下に激しく100回振とうする操作を行った。
その結果、最内部のシリコーン樹脂製パッキン同士の静電吸着、及び最外部のLDPE袋表面への紙片付着が生じ、帯電防止効果は不十分であった。
実施例10
ポリ(2−フッ化ビニリデン)樹脂に、前記〔化2〕のドナー・アクセプター系分子化合物型帯電防止剤を1%練り込んで押出成形し、太さ0.15mmのモノフィラメントを製造した。次いで、該モノフィラメントを、外径8cm、内径7.7cm、長さ30cmのポリテトラフルオロエチレン製円筒の表面に厚みが1.5mmになるまで巻き付けた。
図5にその概要を示すが、13はポリテトラフルオロエチレン製円筒、14はモノフィラメント、15は円筒の内部空間である。
次いで、上記モノフィラメントによる円筒の内部空間の帯電防止効果を確認するため、前記円筒の内部空間に、直径2.5mmの帯電させた発泡スチロールを30個投入して、30回、縦に激しく振とうしたが、前記円筒の内壁への静電吸着は全く起こらなかった。
以上、代表的な実施例を示したが、本考案のモノフィラメントを用いると、通常の練り込み型帯電防止剤を用いた場合に絶縁障害となる空気の共存下でも問題なく帯電防止効果が得られるので、応用用途が非常に広く、産業上極めて有用である。
また、上記実施例9では本考案モノフィラメントを網袋として用いた例を示したが、例えば、該モノフィラメントで網地を作製し、列車の窓の遮光具や座席下の小物入れなどに使うと静電気が生じやすい送風環境下でも確実に帯電を防止することができる。なお、一般に、列車や乗用車の遮光具には、15%程度の大量の帯電防止剤を練り込んだポリプロピレン樹脂が用いられているが、帯電防止効果は十分とは言えない。
また、従来のポリ(2−フッ化ビニリデン)樹脂製品は非常に帯電性が高く、取り扱いが面倒であるが、上記実施例10で示した本考案ポリ(2−フッ化ビニリデン)樹脂のモノフィラメントは帯電防止性能が非常に優れているので、例えば製造現場で巻き取り操作を行う際に、連続的に空気層と接触しても帯電せず、作業性が著しく向上する。
1 表地
2 裏地
3 空間部(空気層)
4 モノフィラメント
5 ボア生地
6 モノフィラメントの綿状物
7 内部空間
8 モノフィラメントを交叉編みした網袋
9 シリコーン樹脂製パッキン
10 透明LDPE製袋
11 網袋の内部空間
12 透明LDPE製袋の内部空間
13 ポリテトラフルオロエチレン製円筒
14 円筒に巻き付けたモノフィラメント
15 円筒の内部空間

Claims (3)

  1. 下記一般式(1)の上段の半極性有機ホウ素化合物(ドナー成分)と下段の塩基性窒素化合物(アクセプター成分)とを混合溶融し反応させて得られる下記一般式(1)で表されるドナー・アクセプター系分子化合物からなる絶縁体高分子材料用帯電防止剤を練り込んだ合成繊維からなる帯電防止性能を有する合成繊維材料。
    上記式中、R1、R2は、それぞれ独立に、CH(CH16−CO−OCH、又はHOCHで、かつ少なくとも一方がCH(CH16−CO−OCHであり、R3、R4は、それぞれ独立に、CH、C、HOCH、HOC、又はHOCHCH(CH)であり、R5はC、又はCである。
  2. 前記合成繊維が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリ−2−フッ化ビニリデンの何れかからなる請求項1記載の帯電防止性能を有する合成繊維材料。
  3. 前記合成繊維が不織布の形態である請求項1又は2記載の帯電防止性能を有する合成繊維材料。
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