JP3214190B2 - 非接触式膜厚測定器 - Google Patents

非接触式膜厚測定器

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JP3214190B2 JP26181093A JP26181093A JP3214190B2 JP 3214190 B2 JP3214190 B2 JP 3214190B2 JP 26181093 A JP26181093 A JP 26181093A JP 26181093 A JP26181093 A JP 26181093A JP 3214190 B2 JP3214190 B2 JP 3214190B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、導電体上に被覆された
絶縁物の厚さを測定する非接触式膜厚測定器に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、導電性基体、例えば金属基体
上に被覆された絶縁性被膜の膜厚を正確に測定するため
の種々の技術が公知であり、特に非接触式に膜厚測定を
行う装置として、特開平1−136009号公報に開示
された「非接触式膜厚測定器」や特開平1−14390
8号公報に開示された「薄膜厚測定器」が知られてい
る。
【0003】上述した2つの公報に開示された各膜厚測
定器は、いずれも基本原理は同じであり、導電性基体ま
での距離を基体上に発生する渦電流を利用することによ
り電磁式センサで測定するとともに、絶縁性被膜までの
距離を投光部と受光部とを有する光学式センサで測定す
る。そして、これらの各測定値の差から膜厚を求める。
【0004】これらの膜厚測定器を用いることにより、
測定対象物に触れることなく、しかも測定対象物を破壊
することなく膜厚測定を行うことができるというもので
ある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上述した非
接触式膜厚測定器および薄膜厚測定器のそれぞれは、概
して測定精度が低く、高精度な非接触測定が行えないと
いう問題があった。そのため、被測定膜厚が厚い場合や
低い測定精度でも充分な場合に限り使用されていた。従
って、例えば自動車の塗装工程においてその塗装膜厚を
測定するような場合には、1μm程度の測定精度が必要
であり、上述した従来の膜厚測定器では対応できなかっ
た。
【0006】上述した従来の膜厚測定器における測定精
度が低い主な理由は、電磁式センサと光学式センサとい
う2種のセンサの動作原理,機能,性能が異なるため
に、測定範囲,測定距離,分解能・精度などが大きく異
なっていることにある。このため、膜厚測定器全体の精
度は、低い性能を有するセンサの精度により制限される
ことになる。
【0007】例えば、光学式センサとして三角測量式の
ものが周知でありよく用いられるが、被測定物である絶
縁物までの距離、つまりその表面までの距離を正確に測
定するには、照射されたレーザ光のうち表面反射するレ
ーザ光のみを選択的に受光するタイプ(以下、このよう
に投光系と受光系が被測定面の法線に対し対称の角度で
配置されていている正反射光学系にあるものを「正反射
タイプ」という。)の光学式センサである必要がある。
ところが、一般的に用いられている光学式センサのほと
んどはこのタイプではなく、絶縁物表面の法線上に投光
系を配置し、この法線と一定の角度を有する方向に受光
系を配置している。このため、絶縁物の表面下に潜り込
んだビームスポットを受光・検出しており、表面までの
距離を正確に測定していないため、測定精度が低くなっ
ていた。
【0008】また、上述した正反射タイプの光学式セン
サであっても、被測定物表面までの距離を高精度に測定
するには重大な問題がある。すなわち、光学式センサに
用いられるレーザからのビーム光の出射方向が変動する
ことにより、被測定物表面上に照射されるスポット位置
が変動し、これにより出力変動つまり測定距離のばらつ
きが生じていた。このことは、サブミクロン以下の分解
能が要求される高精度な測定を行う場合になって初めて
無視できない問題となって明らかになったものであり、
それ以前は問題点という認識すら無かったことである。
【0009】一方、電磁式センサの一つである渦電流セ
ンサでは、センサの先端が測定範囲の基準点となってお
りこの基準点における電磁場の状態を検出している。従
って、非接触式で使う場合には被測定物である絶縁物及
び導電体から離さなければならず、どうしても測定範囲
が大きくなってしまう。このことは、センサ出力のS/
N比を低減させ、測定分解能及び測定精度の低下を引き
起こす。
【0010】非接触式の渦電流センサに関するこれらの
欠点をを改善する方法としては、ノイズを徹底的に排除
するとともに測定距離と出力の関係を厳密に把握するこ
とも考えられる。しかし、1μm以下の測定精度を有
し、実用に耐えうる高精度な膜厚測定を実現するために
は、このような対策をもってしても十分でないことが明
らかになった。
【0011】以上より、従来の膜厚測定器では、塗装直
後のウェット膜厚等を再現性良く、しかも高精度に測定
することができず、このような測定が可能な非接触式か
つ非破壊式の膜厚測定器が望まれていた。
【0012】本発明は、このような従来の課題に鑑みな
されたものであり、高い精度で測定することができる非
接触式膜厚測定器を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段および作用】
第1発明 [構成]上述した課題を解決するために、請求項1の発
明は、投光部と受光部とを含んでおり、導体上の絶縁物
表面における光の反射を利用して前記絶縁物表面までの
距離を測定する光学式センサと、前記導体に発生する渦
電流を利用して前記導体までの距離を測定する渦電流セ
ンサと、前記光学式センサによって測定される距離と前
記渦電流センサとによって測定される距離との差から前
記絶縁物の膜厚を算出する膜厚算出手段とを備える非接
触式膜厚測定器において、前記光学式センサの投光部
は、前記絶縁物に対して光を照射するレーザ光源と、前
記レーザ光源から入射された光の中の所定の固有モード
の光のみを通過させ、前記絶縁物表面に向け出射する光
ファイバと、を含むことを特徴とする。
【0014】上述した構成を有する請求項1に係る非接
触式膜厚測定器は、従来の膜厚測定器がレーザからのビ
ーム光の出射方向が変動することにより、被測定物表面
上に照射されるスポット位置が変動して測定距離のばら
つきが生じていた点に着目し、この点を改善したもので
ある。
【0015】すなわち、レーザから出射するビーム光の
変動そのものを無くすことは原理的に不可能であるた
め、結局、投光系の出射端からのビーム光の位置変動を
制御するようにしたものである。具体的には、通常は光
通信などで光を伝達するために用いられている光ファイ
バを利用し、その幾何学的構造に起因する光の閉じ込め
作用により所定の固有モード(導波モード)の光のみを
通過させることによって、出射ビーム光の位置変動を低
減し、これにより測定精度を上げようというものであ
る。
【0016】上述した構成において、光ファイバは、シ
ングルモード光ファイバを用いることが望ましく、その
長さは例えば数100mm程度とすることができる。
【0017】また、膜厚算出手段は、最も簡単な場合に
は、導体までの距離から絶縁物までの距離を減算するこ
とにより、絶縁物の膜厚を求めることができる。 [作用]請求項1の発明は以上の構成からなり、次に、
その作用を説明する。
【0018】光学式センサの投光部において、レーザ光
源から光を照射すると、この照射された光は光ファイバ
を通った後絶縁物に向けて一定の入射角θをなすように
出射される。
【0019】例えば、光ファイバの一方端である入射端
近傍にマイクロレンズからなる投光レンズを設け、他方
端である出射端近傍に同様にマイクロレンズからなる受
光レンズを設ける。これにより、レーザ光源から照射さ
れた光が投光レンズによりほぼ一定に集光されて光ファ
イバの入射端に入射され、光ファイバ内を伝送された後
に光ファイバの出射端から出射される。さらに、出射さ
れた光が受光レンズによって平行ビームとなって絶縁物
表面に入力角θで照射され、ごく狭い範囲のスポットを
形成する。
【0020】このスポット部分で反射された光は、その
後受光部に入射され、受光部内の位置検出器上に結像が
生じる。このようにして生じた結像の位置に基づいて、
三角測量の原理により絶縁物までの距離が求められる。
【0021】特に、上述した投光部に所定の固有モード
のみの光を通過させるシングルモードの光ファイバを用
いることにより、ある固有モード以外の光は伝送される
途中において減衰し、所定の固有モードの光のみが通過
してその出射端から絶縁物に向けて照射されることにな
る。このため、出射光の重心位置が光ファイバの中心に
一致するため出射方向が安定し、絶縁物上に生じる照射
スポットの光量重心も安定し、受光部内の位置検出器上
に結像するスポット重心も安定することになり、この像
に基づいて絶縁物表面までの距離が求められる。
【0022】一方、渦電流センサを用いることにより、
導体上に発生する渦電流を利用して導体表面までの距離
が求められる。
【0023】膜厚算出手段は、このようにして求めた2
つの距離に基づいて、最も簡単な場合には、導体までの
距離から絶縁物までの距離を減算することにより、絶縁
物の膜圧を算出する。 [発明の効果]以上説明したように、請求項1の発明に
よれば、投光部に所定の固有モードの光のみを通過させ
る光ファイバを含み、レーザ光源から照射した光をこの
光ファイバ内を通した後に絶縁物に向け出射させること
により、この出射光の出射方向の変動を防止して、正確
に絶縁物表面までの距離を測定することができる。従っ
て、この正確な絶縁物表面までの距離に基づいて、絶縁
物の膜厚を高い精度で測定することができる。
【0024】他の発明 [構成] また、上述した課題を解決するために、他の第1の発明
は、導体上の絶縁物表面における光の反射を利用して前
記絶縁物表面までの距離を測定する光学式センサと、前
記導体に発生する渦電流を利用して前記導体までの距離
を測定する渦電流センサと、前記渦電流センサの温度を
検出する温度センサと、前記渦電流センサを加熱するヒ
ータと前記温度センサによって検出される前記渦電流セ
ンサの温度を前記ヒータによる加熱を行うことにより一
定に維持する温度制御手段と、前記光学式センサによっ
て測定される距離と前記渦電流センサとによって測定さ
れる距離との差から前記絶縁物の膜厚を算出する膜厚算
出手段と、を備え、前記渦電流センサの温度を制御して
温度ドリフトを防止しながら、前記絶縁物の膜厚測定を
行うことを特徴とする。
【0025】また、他の第2の発明は、前記他の第1
発明において、前記温度制御手段による前記渦電流セン
サの温度調整は、前記ヒータに対する通電を断続するこ
とにより行い、前記渦電流センサによる距離の測定は、
前記ヒータに対する通電が中断したときに行うことを特
徴とする。
【0026】また、他の第3の発明は、導体上の絶縁物
表面における光の反射を利用して前記絶縁物表面までの
距離を測定する光学式センサと、前記導体に発生する渦
電流を利用して前記導体までの距離を測定する渦電流セ
ンサと、前記渦電流センサの温度を検出する温度センサ
と、前記渦電流センサを加熱するヒータと前記温度セン
サによって検出される前記渦電流センサの温度を、前記
ヒータに交流電流を流して加熱することにより一定に維
持する温度制御手段と、前記渦電流センサの出力に現れ
る前記ヒータの電流周波数成分を除去する周波数成分除
去手段と、前記光学式センサによって測定される距離
と、前記周波数成分除去手段によってヒータ電流の周波
数成分が除去された前記渦電流センサの出力に基づいて
測定される距離との差から前記絶縁物の膜厚を算出する
膜厚算出手段と、を備え、前記渦電流センサの温度を制
御することにより温度ドリフトを防止することを特徴と
する。
【0027】また、他の第4の発明は、前記他の第1〜
第3の発明において、前記ヒータは、発熱用導体を1箇
所あるいは複数箇所で折り返すことにより、あるいは偶
数本の発熱用導体を組み合わせて用いることにより、隣
接する前記発熱用導体を通電電流の向きが反対になるよ
うに配置して用いることを特徴とする。
【0028】上述した他の第1〜第4の発明は、渦電流
センサが使われる環境、特に周囲の僅かな温度変動が高
精度測定に悪影響をもたらす支配的な要因であることに
着目し、これらの点を改善したものである。
【0029】そもそも渦電流センサは、内蔵されたコイ
ルに高周波電流を与え、導電体との距離に応じた磁界及
び電界の変化をコイルのインダクタンスの変化として検
出するものであって電磁気的に非常に敏感なものであ
る。従って、渦電流センサ近傍にヒータを配置するとい
った電磁気的に影響を与えることは好ましくないとされ
ていた。ところが、温度変動による悪影響を防止して高
精度化を実現するには、渦電流センサに対して積極的に
温度制御を施さなければならず、しかも、渦電流センサ
本来の動作や機能を保たなければならないという相反す
る要求を満たす必要があった。このために種々の実験・
検討を行った結果、いくつかの手法により上記相反する
要求を満たすことができることが判明した。
【0030】一つの方法は、渦電流センサ(例えば渦電
流センサ内の測定プローブ部のみ、あるいは測定プロー
ブ部とこの測定プローブ部の出力電圧を増幅するアンプ
部の両方)にヒータを配置し、ヒータ電流をオンオフす
ることにより、渦電流センサを常温よりも高い一定温度
に保つようにする。そして、ヒータ電流オフ時を捕らえ
て測定信号の取り込みを行う方法である。
【0031】他の方法は、同様に渦電流センサにヒータ
を配置し、ヒータ電流としてある一定の周波数の交流電
流を流す。この交流電流の振幅を制御することにより、
渦電流センサを常温よりも高い一定温度に保つようにす
る。そして、渦電流センサの処理回路部にヒータ電流の
周波数成分を除去する回路を付加する方法である。但
し、この手法においてヒータ電流振幅の急激な変調を行
う場合には、ヒータ電流に含まれる周波数帯域が広くな
ることを考慮し、渦電流センサのプローブ部に付加され
る高周波電界の帯域が干渉しないように、ヒータ電流の
周波数を設定する必要がある。
【0032】さらに他の方法は、ヒータ線(発熱用導
体)折り返すことにより通電電流の向きが反対となるよ
うにヒータを配置し、あるいは通電電流の向きが反対と
なるように偶数本のヒータ線を対にして配置することに
より、ヒータ電流によって生じる磁界を軽減する方法で
ある。この方法は、上述した2つの方法と併用しても良
い。
【0033】また、渦電流センサの測定プローブにヒー
タ線を巻く場合、ヒータ線は導電体であるために、密に
巻きすぎると渦電流センサの感度を低下するので注意が
必要である。 [作用]前記他の第1〜第4 の発明は以上の構成からなり、次
に、その作用を説明する。
【0034】前記他の第1の発明の非接触式膜厚測定器
では、渦電流センサの温度を検出するために温度センサ
が設けられており、温度制御手段によってこの検出した
温度を監視する。そして、渦電流センサが所定の設定温
度より低い場合には渦電流センサに装着されているヒー
タに通電し、設定温度に達したら通電を停止することに
より、渦電流センサが一定温度に制御される。
【0035】このようにして一定温度に制御された渦電
流センサにより、例えば測定プローブ内のコイルのイン
ダクタンスを検出して導体までの距離を測定する。この
コイルのインダクタンスは、導体までの距離が一定でも
温度が変化するとコイル形状が変化してしまう。従っ
て、本発明では渦電流センサを一定温度に制御しながら
検出信号の取り込みを行っている。
【0036】前記他の第2の発明の非接触式膜厚測定器
では、上述した請求項2の温度制御手段による温度調整
をヒータに対する通電を断続することにより行ってお
り、ヒータに対する通電を中断したときのタイミングで
渦電流センサによる検出動作を行っている。上述したよ
うに、測定プローブ内のコイルのインダクタンスは、導
体までの距離が一定でも温度が変化するとコイル形状が
変化してしまうが、導体までの距離と温度が一定でもヒ
ータへの通電による電磁障害を受けた場合には変化して
しまう。従って、本発明では渦電流センサを一定温度に
制御するとともに、ヒータへの通電を中断したタイミン
グで検出信号の取り込みを行っている。
【0037】前記他の第3の発明の非接触式膜厚測定器
では、渦電流センサに装着されているヒータに交流電流
を流すことにより加熱を行っており、温度制御手段は、
この交流電流の振幅(すなわちヒータに印加する交流電
圧の振幅)を現在の渦電流センサの温度と設定温度との
差に応じて制御することにより、渦電流センサが一定温
度に制御されるようになっている。
【0038】本発明では、このようにヒータ電流として
振幅変調したある一定の周波数の交流電流を流している
ため、渦電流センサの検出出力にも同じ周波数成分が現
れ、この周波数成分を周波数成分除去手段によって除去
することにより、電磁障害のない良好な検出結果を得て
いる。
【0039】但し、ヒータ電流に含まれる周波数帯域
が、渦電流センサプローブに付加している高周波電圧の
帯域と干渉した場合には、ヒータ電流に含まれる周波数
成分のみを良好に除去できないため、このような干渉が
生じないようにヒータの通電電流の周波数を決定する必
要がある。
【0040】前記他の第4の発明の非接触式膜厚測定器
では、上述したヒータの発熱用導体を折り返すことによ
り、あるいは偶数本を対にして組み合わせて用いること
により、隣接する発熱用導体の通電の向きが反対にな
る。従って、電流値が同じ強度で逆向きの2本の発熱用
導体を束ねることにより、お互いが発生する磁界が打ち
消し合う。 [発明の効果] 以上説明したように、前記他の第1〜第4の発明によれ
ば、ヒータで加熱することにより渦電流センサを一定温
度に保っており、温度ドリフトを防止することにより、
正確に導体までの距離を測定することができる。
【0041】また、ヒータ加熱を中断した際に測定を行
うことにより、あるいは、ヒータ通電電流により現れる
周波数成分を後に除去することにより、あるいは、ヒー
タの発熱用導体同士を互いに発生する磁界を打ち消すよ
うに配置することにより、ヒータ通電による電磁障害を
防止して、正確に導体までの距離を測定することができ
る。
【0042】この結果、正確な導体までの距離に基づい
て、絶縁物の膜厚を高い精度で測定することができる。
【0043】
【実施例】以下、図面に基づいて本発明の一実施例につ
いて詳細に説明する。
【0044】図1は、本発明を適用した一実施例の非接
触式膜厚測定器の全体構成を示す図である。
【0045】本実施例は、光学式センサの投光部に半導
体レーザ(LD)と光ファイバとを有し、渦電流センサ
およびアンプにヒータを配してアクティブな温度制御を
行うことにより、非接触・非破壊型の高精度測定を可能
にしたことに特徴がある。
【0046】図1に示す本実施例の非接触式膜厚測定器
は、基体100上に被覆された被膜110の膜厚を高精
度に測定するものである。基体100は導体により形成
されており、被膜110は絶縁体により形成されてい
る。
【0047】この非接触式膜厚測定器は、プローブケー
ス10内に収納固定された渦電流センサプローブ12及
び光学式センサプローブ14と、これらの各プローブか
ら出力される検出信号に基づいて基体100までの距離
Da及び被膜110までの距離Dbを算出するとともに
被膜110の膜厚Dを算出する信号処理部16と、信号
処理部16による算出結果を表示する表示部18とを含
んで構成されている。
【0048】上述した信号処理部16は、渦電流センサ
プローブ12から出力される検出信号Sa を増幅するア
ンプ20を含んでおり、このアンプ20と渦電流センサ
プローブ12とが室温より高い一定温度に制御されるよ
うになっている。
【0049】この温度制御を行うために、ヒータ及び温
度センサを含む2つの温度制御装置22,24が設けら
れており、一方の温度制御装置22が渦電流センサプロ
ーブ12を覆うように配置され、他方の温度制御装置2
4がアンプ20を覆うように配置されている。
【0050】光学式センサプローブ14は、三角測量の
原理を用いることにより被膜110までの距離を測定す
るためのものであり、正反射構造を有する投光部26と
受光部28とを含んでいる。
【0051】一般に、表面反射光と内部拡散光の光強度
を比べると、表面反射光の方が圧倒的に大きい。例え
ば、自動車の外板塗装のように光沢を有する塗膜面で
は、内部拡散光より表面反射光の方が40dBも大きく
なる。それに加え、正反射光強度は被膜の色にほとんど
左右されないため、正反射構成の光学式センサでは、被
膜の色による補正や調整を必要とせずに正確に表面の位
置を測定することができる利点があり、このため本実施
例の光学式センサプローブ14も正反射構成としたもの
である。なお、この光学式センサプローブ14の詳細な
構成については後述する。
【0052】本実施例の非接触式膜厚測定器はこのよう
な構成を有しており、上述したプローブケース10を基
体100及び被膜110に向け隔離的に対向配置するこ
とにより、渦電流センサプローブ12を用いて基体10
0の表面までの距離Daが測定される。また、光学式セ
ンサプローブ14を用いて被膜110の表面までの距離
Dbが測定される。両センサプローブ12,14から出
力される各測定信号Sa及びSbは、ともに信号処理部
16へ向け出力される。
【0053】信号処理部16は、各プローブ12,14
から入力される信号SaおよびSbに基づいて上述した
2つの距離Da,Dbを演算し、さらにこれらの値に基
づいて被膜110の膜厚Dを演算し、その演算結果を測
定信号Sdとして外部及び表示部18に向け出力する。
このように、外部に信号Sdを出力することにより、こ
の測定信号Sdに基づいて塗装ラインの自動制御を行っ
たり、その他各種用途に広く用いることが可能になる。
【0054】表示部18は、信号処理部16から入力さ
れる測定信号Sdに基づき、被膜110の膜厚測定結果
を表示する。また、信号処理部16において膜厚の測定
値が要求される許容範囲に入っているか否かを判断する
ようにすれば、表示部18からこの許容範囲内にあるか
否かを同時に表示することも可能であり、許容範囲を外
れた場合の対策を即座に行うこともできる。
【0055】図2は、上述した光学式センサプローブ1
4の詳細な構成を示す図である。同図に示すように、光
学式センサプローブ14は、投光部26と受光部28と
を正反射構造に配置して形成されている。
【0056】また、図3は本実施例の投光系の概略を示
す図であり、図4は一般的な光学式三角測量を行う従来
の投光系を示す図である。
【0057】本実施例の投光部26は、光源となるレー
ザダイオード(LD)30と、光を伝搬する光ファイバ
34と、光ファイバ34の入射端及び出射端に設けられ
る2つのレンズ32,36とを含んで構成される。
【0058】図3に概略を示した本実施例の投光系にお
いては、LD30から照射される光は、レンズ32によ
って集光され、光ファイバ34に導かれる。このように
して光ファイバ34に入射された光は光ファイバ34内
を伝搬し、出射光が光ファイバ32の出射端に配置され
たレンズ36によって平行光線となる。
【0059】図3に示した投光系では、LD30の出射
光の中心位置変動は、光ファイバ34の入射端でのスポ
ット変動となるが、レンズによる結像系の倍率を等倍程
度にしておけば、光ファイバ34への結合効率にもほと
んど影響を与えない。
【0060】また、光ファイバ34内を伝搬する光波
は、光ファイバ34の固有モード群の重ね合わせとして
伝搬する。固有モード群に一致しない光波成分は、光フ
ァイバ34を伝搬することができず、途中で光ファイバ
34の外に放射される。この固有モード群に一致しない
導波モードを一般に漏れモードと呼ぶ。ほとんどの漏れ
モードが光ファイバ34の外へ放射されるには、ある程
度光ファイバ34を長くする必要がある。例えば、光フ
ァイバ34の構造等によって異なるが、一般に、数10
0mm程度の長さがあれば充分である。また、各固有モ
ードの光波については、光ファイバ34の長手方向に垂
直な成分の光強度分布は、光ファイバの長手方向位置に
よらず一定となる。
【0061】図5は、3種類の固有モードを例にとり、
上述した垂直方向成分の強度分布を示す図である。同図
に示すように、光ファイバ34中を伝搬する光波の導波
モードの強度分布は中心対称であり、重心位置はどれも
光ファイバの中心Oに一致する。従って、固有モードの
異なる複数種類の光波の重ね合わせで表される光波の光
強度重心位置も常に光ファイバ中心に位置する。すなわ
ち、光ファイバ34の出射端における光強度重心位置は
光ファイバ34の中心に位置し変動しない。その結果、
測定対象物120上の照射スポット位置中心は、LD出
射中心位置の変動に全く影響されず、安定したものとな
る。
【0062】しかし、光ファイバ34として複数の固有
モードを有するマルチモード光ファイバを用いると、入
射時に結合される各固有モードのパワーの比率が変化し
たり、外乱等により光ファイバ内で固有モード間の変換
が生じる。その結果、光ファイバの出射端において、光
強度重心位置は変化しなくとも、光強度分布自体が変化
してしまう。実際に図2に示す受光部28によって反射
光を検出する際には、光スポットの重心位置を求めるた
め、光強度分布の変動は原理的には出力に影響を与えな
い。但し、位置検出器としてPSD(Position Sensiti
ve Device )を用いた場合には、PSDの有する非線形
性などによって誤差を生じることが考えられるため、こ
の場合にはマルチモード光ファイバの使用は好ましくな
い。
【0063】一方、光ファイバとして固有モードを1つ
しか有しないシングルモード光ファイバを用いた場合に
は、光ファイバの出射端の光強度分布は、重心位置だけ
でなくそのプロファイル(輪郭形状)も一定に保たれる
ことから、PSDの非線形性にも影響されずに正しい出
力が得られる。従って、本実施例で用いる光ファイバ3
4は、特にシングルモード光ファイバとすることが好ま
しい。
【0064】また、光ファイバ34の出射端に設けられ
たレンズ36は、光ファイバ34の出射端に接して配置
可能なセルフォックレンズを使用するのが便利であり、
しかもこのように出射端に接して配置した場合には出射
端近傍での光の漏れが少なく集光効率も良い。
【0065】ところで、図4に示す従来の投光系におい
ては、LD30の出射光はレンズ31により、平行光線
となるか、あるいは測定対象物120上の測定範囲の中
心位置で集光されるようになっている。一般に、LD出
射光は大きな広がり角を有するため、LD30とレンズ
31との距離Laは数mm以下に近接して置かれる。そ
れに対し、レンズ31と測定対象物120の距離Lbは
大きいため、拡大光学系になっているのが普通である。
一般にLD30の出射開口の大きさは、厚さが1μm以
下、幅が数μmであり、LD出射光の中心位置は数nm
程度は変動している。例えば、LD30とレンズ31と
の距離Laが1mmで、レンズ31と測定対象物120
の距離Lbが50mmであった場合には、LD出射光の
中心位置が数nm程度変動することにより、測定対象物
上では0.1μmのスポット変動となって現れる。従っ
て、図4のような従来の投光系ではサブμmの高分解能
測定を達成することは困難であった。
【0066】また、図2に示した本実施例の受光部28
は、被覆110からの反射光を全反射するミラー38
と、このミラー38によって全反射された光を集光する
レンズ40と、フィルタ42と、結像の位置を検出する
位置検出器44とを含んで構成される。
【0067】この受光部28は、上述した投光部26か
らの正反射光を受光するように配置されている。被膜1
10から入射される反射光は、ミラー38によって所定
の方向に向け全反射され、レンズ40及びフィルタ42
を通過した後位置検出器44上に投射される。被膜11
0と位置検出器44とは、レンズ40を挟んで結像位置
に配置してある。従って、被膜110の測定対象面が傾
いていても、その正反射光がレンズ40の開口内にある
限り位置検出器44上のスポット位置(結像位置)は変
動しないため、被膜110の測定対象面の傾きに影響さ
れずに、正確な表面位置の測定が可能となる。
【0068】位置検出器44上に形成される結像位置と
被膜110の反射位置、すなわち被膜110までの距離
とは1対1に対応しており、位置検出器44による検出
結果は、光学式センサプローブ14の出力信号Sbとし
て信号処理部16に入力され、信号処理部16において
光学式センサプローブ14の先端から被膜110の表面
までの距離Dbが算出される。
【0069】また、位置検出器44とレンズ40との間
に波長選択用のフィルタ42を介在させることにより、
LD30から照射される光の波長成分のみを選択的に透
過させることが可能となる。これにより、光源であるL
D30の出力が比較的小さくても、外乱光の影響を受け
ずに精度の高い測定を行うことが可能となる。
【0070】図6は、温度ドリフトの影響を除去するた
めに渦電流センサプローブ12を覆うように設けられた
温度制御装置22の詳細構成を示す図である。
【0071】同図に示す温度制御装置22は、渦電流セ
ンサプローブ12を加熱するヒータ46と、渦電流セン
サプローブ12の温度を検出する温度センサ48と、ヒ
ータ46に通電を行う直流電源50と、ヒータ46に対
する通電をオンオフするリレー52と、渦電流センサプ
ローブ12の温度を一定に保つための制御を行う温度調
整器54とを含んで構成されている。
【0072】温度調整器54は、渦電流センサプローブ
12の温度を温度センサ48で監視している。渦電流セ
ンサプローブ12の温度が設定温度より低い場合には、
リレー52内のリレーコイルに通電することによりリレ
ー接点をオン状態にしてヒータ46に通電を行う。そし
て、設定温度に達した場合には、ヒータ46に対する通
電を停止する。このようにして、渦電流センサプローブ
12が一定温度に制御される。
【0073】また、上述したリレー52からは、あるい
は温度調整器54からはレリー52内のリレー接点のオ
ンオフ状態を示すオンオフ信号Skを出力しており、こ
のオンオフ信号Skを渦電流センサプローブ12の出力
Saとともに上述した信号処理部16に送っている。
【0074】信号処理部16は、入力されるオンオフ信
号Skに基づいてリレー52のリレー接点がオン状態か
らオフ状態に変わる時点、すなわちヒータ46に対する
通電が中断したタイミングを判断し、その後渦電流セン
サプローブ12の出力Saを取り込んでアンプ20によ
る増幅を行う。これにより、ヒータ電流が流れていない
ときに信号Saを取り込むことになるため、渦電流セン
サプローブ12によって測定される基体100までの距
離は、ヒータ電流による電磁障害を受けることはなく、
高精度に測定することができる。
【0075】また、信号処理部16内のアンプ20を一
定温度に制御するために設けられた温度制御装置24も
上述した温度制御装置22と同じ構成を有しており、ア
ンプ20を一定温度に保っている。但し、アンプ20の
動作が周辺の電磁場により影響を受けず、温度を一定に
保つことにより常に安定した動作が行われる場合には、
ヒータに対する通電を中断したタイミングで動作させる
必要はない。
【0076】なお、渦電流センサプローブ12を冷却し
て室温より低い一定温度に保った場合にも温度ドリフト
の発生を防止することができる。しかし、この場合には
プローブケース10等の結露を防止するための手段を講
じる必要がある。
【0077】図7は、渦電流センサプローブ12を覆う
ように設けられた温度制御装置22の他の例を示す図で
ある。
【0078】同図に示す温度制御装置22は、ヒータ4
6と温度センサ48の他、ヒータ46に所定の交流電流
を通電する交流電源56と、特定の周波数帯域の信号の
みを除去するためのフィルタ回路58と、渦電流センサ
プローブ12の温度を一定に保つための制御を行う温度
調整器60とを含んで構成されている。
【0079】温度調整器60は、渦電流センサプローブ
12の温度を温度センサ48で監視している。そして、
渦電流センサプローブ12の温度が設定温度より低い場
合にはヒータ46に流す交流電流の振幅を大きく、設定
温度に達した場合にはヒータ46に流す交流電流の振幅
を小さく制御することにより、渦電流センサプローブ1
2が一定温度に制御される。
【0080】このように、ヒータ電流として一定周波数
の交流電流を流すと、渦電流センサプローブ12内のコ
イルのインダクタンスが変化し、渦電流センサプローブ
12の出力Saにはヒータ電流と同じ周波数成分が現れ
る。フィルタ回路58は、渦電流センサプローブ12の
出力からこの周波数成分のみを除去するためのものであ
り、フィルタ回路58を介した信号Saが信号処理部1
6内のアンプ20に入力される。
【0081】なお、信号処理部16内のアンプ20を一
定温度に制御するために設けられた温度制御装置24も
図7に示した温度制御装置22と同じ構成とすることが
できる。但し、アンプ20の動作が周辺の電磁場により
影響を受けず、温度を一定に保つことにより常に安定し
た動作が行われる場合には、フィルタ58を省略するこ
とができる。また、温度制御装置24のみを図6に示す
構成とすることもできる。
【0082】図8は、渦電流センサプローブ12に装着
するヒータの配置を工夫することにより、渦電流センサ
プローブ12に及ぼす電磁障害を軽減する場合の構成を
示す図である。同図に示す構成は、図6あるいは図7に
示す構成とともに用いることができる他、単独で用いる
ことができる。
【0083】図8に示すヒータ46は、1本の発熱用導
体64を渦電流センサプローブ12の外周に巻き込むこ
とにより形成されている。具体的には、1本の発熱用導
体64を中央部Aで折り返し、この折り返された2本の
発熱用導体64を一対にして渦電流センサプローブ12
に巻き付けてある。このように発熱用導体64を巻き付
けることにより、ヒータ46に流れる電流が図8に示す
矢印方向に流れるため、隣接する発熱用導体64によっ
て生じる磁界が互いに打ち消し合う。従って、渦電流セ
ンサプローブ12の出力Saに対する電磁障害を軽減す
ることができる。
【0084】このように、本実施例の非接触式膜厚測定
器は、投光部26に光ファイバ34を用いており、これ
により被膜110上に生じる照射スポットの中心は、L
D出射中心位置の変動に全く影響されず、安定したもの
となる。従って、光学式センサプローブ14の出力に基
づいて信号処理部16によって算出される被膜110ま
での距離Dbも誤差の少ない精度の高いものとなる。
【0085】また、上述した光ファイバ34をシングル
モード光ファイバとすることにより、光ファイバ34の
出射端の光強度分布を重心位置だけでなくその輪郭形状
も一定に保つことができることから、光ファイバ34か
らの出射光をさらに安定させることができ、さらに高い
測定精度を実現することができる。
【0086】また、光学式センサプローブ14の投光部
26に光ファイバ34を用いることにより、その可とう
性から測定装置の光源であるLD30の配置に自由度を
持たせることができるため、例えばプローブケース10
の小型化や非接触式膜厚測定器の設計が容易になるとい
った効果もある。
【0087】また、本実施例の非接触式膜厚測定器は、
渦電流センサプローブ12に対する電磁障害をなくすた
めに以下の方法を用いている。
【0088】(1) ヒータ46に直流電流を流すことによ
り渦電流センサプローブ12の温度を一定に保つととも
に、ヒータ46に対する通電を中断した後に基体100
までの距離を測定する。
【0089】(2) ヒータ46に一定周波数の交流電流を
流し、この交流電流の振幅を可変に制御することにより
渦電流センサプローブ12の温度を一定に保つととも
に、渦電流センサプローブ12の出力信号からヒータ電
流の周波数成分のみを除去した信号に基づいて基体10
0までの距離を測定する。
【0090】(3) ヒータ46を形成する発熱用導体64
を折り返すことにより、隣接する発熱用導体64に流れ
る電流の向きを反対にし、発生する磁界が互いに打ち消
し合うようにする。
【0091】これらの方法により渦電流センサプローブ
12の温度を一定に保つとともに、ヒータ46の通電電
流により生じる電磁障害をなくすことができ、渦電流セ
ンサプローブ12の出力に基づいて信号処理部16によ
って算出される基体100までの距離Daも誤差の少な
い精度の高いものとなる。
【0092】このように本実施例によれば、基体100
及び被膜110までの距離Da,Dbを高い精度で測定
することができ、これら基づいて算出される被膜110
の膜厚Dの値も高い精度で求めることができる。
【0093】次に、本実施例の非接触式膜厚測定器を用
いて、自動車鋼板の平板サンプル上の塗装膜厚測定を実
際に行った結果の一例を説明する。
【0094】図9は、塗装被膜測定装置の構成を示す図
である。
【0095】同図に示す塗装被膜測定装置は、図1に示
した本実施例の非接触式膜厚測定器にZ軸ステージ70
とコンピュータ72とを加えて構成されており、温度制
御装置22としては図6に示した構成を有する場合が示
されている。
【0096】Z軸ステージ70は、図1に示したプロー
ブケース10を垂直方向に移動させるものであり、下端
近傍に取り付け固定された塗板130とプローブケース
10内の渦電流センサプローブ12及び光学式センサプ
ローブ14の各先端との距離を固定する。また、この固
定された距離はコンピュータ72からの指示により任意
に変えることができる。
【0097】コンピュータ72は、信号処理部16に接
続されており、Z軸ステージ70に取り付けられたプロ
ーブケース10を垂直方向に移動させる指示を行うとも
に、塗装被膜の膜厚計算を行う。なお、信号処理部16
において膜厚計算まで行う場合には、このコンピュータ
72によってプローブケース10の垂直位置のみを制御
すればよい。
【0098】図9に示した塗装被膜測定装置において、
光学式センサプローブ14は図2に示した構成を有して
いる。そして、LD30のLD発振波長は830nm
で、出力は2mWとする。また、光ファイバ34はコア
径がφ6μm、クラッド径がφ125μm、長さが1m
のシングルモードファイバを用い、ファイバ出射端にセ
ルフォックレンズ36を配置した。実際に塗板130上
での照射スポットサイズを測定したところ約φ0.2m
mであった。また、受光部28の結像倍率は約3倍であ
る。
【0099】なお、この光学式センサプローブ14によ
る測定範囲は7.5±0.5mmであり、光学式センサ
プローブ14の先端から塗板130の導体表面までの距
離がこの範囲にある場合に限り高分解能測定が可能とな
る。
【0100】また、渦電流センサプローブ12は、図6
に構成を示した温度制御装置22により一定温度40±
0.1℃に保たれている。40℃付近での温度ドリフト
を測定したところ最大0.24μm/℃であったことか
ら、温度制御下における渦電流センサプローブ12の温
度ドリフトは0.024μm以下であり、測定結果に全
く影響しない。
【0101】なお、この渦電流センサプローブ12によ
る測定範囲は、低分解能測定の場合は0〜10mmであ
り、高分解能測定の場合は7.5±0.5mmである。
【0102】信号処理部16は、渦電流センサプローブ
14の出力に基づいて塗板130表面までの距離を求
め、低分解能出力Dcと高分解能出力Daをコンピュー
タ72に向け出力する。実際には、渦電流センサプロー
ブ12の出力信号をカットオフ周波数10Hzのフィル
タを通してS/N比を上げることにより、高分解能出力
Daを得ている。また、信号処理部16は、光学式セン
サプローブ12の出力に基づいて塗板130の鋼板表面
までの距離を求め、高分解能出力Dbをコンピュータ7
2に向け出力する。
【0103】測定は次のようにして行った。
【0104】まず、渦電流センサプローブ12の出力を
信号処理部16で処理した低分解能出力Scをコンピュ
ータ72でモニタしながら、渦電流センサプローブ12
及び光学式センサプローブ14の高分解能測定範囲
(7.5±0.5mm)までZ軸ステージ70を駆動
し、プローブケース10を移動させる。
【0105】プローブケース10を高分解能測定範囲に
移動したら、Z軸ステージ70を固定し測定を開始す
る。図6に示した温度制御装置22のリレー52の立ち
下がり信号Skをトリガ信号にして、信号処理部16
は、渦電流センサプローブ12の出力に基づく高分解能
出力Daと光学式センサプローブ14の出力に基づく高
分解能出力Dbと求める。コンピュータ72は、これら
2つの高分解能出力Da,Dbを同時に取り込み、所定
の演算処理を行って膜厚Dを求め、内蔵されたディスプ
レイ上に表示する。
【0106】以下、コンピュータ内の演算処理について
付け加える。μmオーダーの高精度測定のためには、渦
電流センサプローブ12を用いた測定原理による距離と
出力の非線形性と、光学式センサプローブ14内のレン
ズの収差や位置検出器44による距離と出力の非線形性
は無視できない。そのため、予め求めておいた校正曲線
と両センサプローブの出力から、塗板130の下地鋼板
までの距離Daと塗膜表面までの距離Dbを換算した。
【0107】較正曲線の測定は、塗膜のない鋼板あるい
は膜厚の既知である塗板を対象にして、コンピュータ7
2でZ軸ステージ70を制御し、プローブケース10と
塗板との距離を一定間隔づつ変えていって、2つの高分
解能出力Da,Dbを測定することにより行った。この
測定結果に基づいて、測定点以外を補間することにより
校正曲線の全体を求めることができる。
【0108】このように、容易に較正曲線を測定できる
ことは望ましいことである。渦電流センサプローブ12
の出力は、塗板130の厚さや曲率、材質によって左右
される。従って、より正確な測定を行うには、予め、塗
料を塗布する前の下地鋼板を用いて較正曲線を算出して
おき、塗料を塗布後に膜厚を測定することが望ましい。
こうすることにより、鋼板の厚さや曲率、材質の違いに
よる影響を補正し、真に正確な膜厚を測定することがで
きる。
【0109】また、複数層の塗膜が重ね塗りされる場合
において、その内の1層の膜厚を測定することも可能で
ある。例えば、2層の塗膜の上の層の膜厚を測定したい
場合には、1層目を塗布した塗板を用いて較正曲線を算
出し、2層目塗布後に膜厚を測定すれば、正確に2層目
の膜厚のみを測定することができる。
【0110】なお、本発明は上述した実施例に限定され
るものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実
施が可能である。
【0111】例えば、上述した実施例においては、基体
100上に形成された1層の被膜110の膜厚を測定す
る場合、あるいは校正曲線を用いることにより複数層の
内の1層の膜厚のみを測定する場合を説明したが、基体
100上に積層された複数層の絶縁被膜の各膜厚を測定
することもできる。この場合には、それぞれの層が積層
された直後に膜厚を測定し、それぞれの測定結果を減算
することにより各層の膜厚を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した一実施例の非接触式膜厚測定
器の全体構成を示す図である。
【図2】光学式センサプローブの詳細な構成を示す図で
ある。
【図3】本実施例の投光系の概略を示す図である。
【図4】一般的な光学式三角測量を行う従来の投光系を
示す図である。
【図5】光ファイバ内の3種類の固有モードの強度分布
を示す図である。
【図6】温度ドリフトの影響を除去するために渦電流セ
ンサプローブを覆うように設けられた温度制御装置の詳
細構成を示す図である。
【図7】温度制御装置の他の例を示す図である。
【図8】渦電流センサプローブに装着するヒータの配置
を工夫することにより電磁障害を軽減する場合の構成を
示す図である。
【図9】本実施例の非接触式膜厚測定器が適用される塗
装被膜測定装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
10 プローブケース 12 渦電流センサプローブ 14 光学式センサプローブ 16 信号処理部 22,24 温度制御装置 26 投光部 28 受光部 30 レーザダイオード(LD) 34 光ファイバ 44 位置検出器 46 ヒータ 48 温度センサ 54 温度調整器 58 フィルタ回路
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平1−136009(JP,A) 実開 平5−52702(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01B 21/00 - 21/32 G01B 7/00 - 7/34 102 G01B 11/00 - 11/30 102

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 投光部と受光部とを含んでおり、導体上
    の絶縁物表面における光の反射を利用して前記絶縁物表
    面までの距離を測定する光学式センサと、 前記導体に発生する渦電流を利用して前記導体までの距
    離を測定する渦電流センサと、 前記光学式センサによって測定される距離と前記渦電流
    センサとによって測定される距離との差から前記絶縁物
    の膜厚を算出する膜厚算出手段とを備える非接触式膜厚
    測定器において、 前記光学式センサの投光部は、 前記絶縁物に対して光を照射するレーザ光源と、 前記レーザ光源から入射された光の中の所定の導波モー
    ドの光のみを通過させ、前記絶縁物表面に向け出射する
    光ファイバと、 を含むことを特徴とする非接触式膜厚測定器。
  2. 【請求項2】 導体上の絶縁物表面における光の反射を
    利用して前記絶縁物表面までの距離を測定する光学式セ
    ンサと、 前記導体に発生する渦電流を利用して前記導体までの距
    離を測定する渦電流センサと、 前記渦電流センサの温度を検出する温度センサと、 前記渦電流センサを加熱するヒータと前記温度センサに
    よって検出される前記渦電流センサの温度を前記ヒータ
    による加熱を行うことにより一定に維持する温度制御手
    段と、 前記光学式センサによって測定される距離と前記渦電流
    センサとによって測定される距離との差から前記絶縁物
    の膜厚を算出する膜厚算出手段と、 を備え、前記渦電流センサの温度を制御して温度ドリフ
    トを防止しながら、前記絶縁物の膜厚測定を行い、 前記温度制御手段による前記渦電流センサの温度調整
    は、前記ヒータに対する通電を断続することにより行
    い、前記渦電流センサによる距離の測定は、前記ヒータに対
    する通電が中断したときに行う ことを特徴とする非接触
    式膜厚測定器。
  3. 【請求項3】 導体上の絶縁物表面における光の反射
    を利用して前記絶縁物表面までの距離を測定する光学式
    センサと、 前記導体に発生する渦電流を利用して前記導体までの距
    離を測定する渦電流センサと、 前記渦電流センサの温度を検出する温度センサと、 前記渦電流センサを加熱するヒータと前記温度センサに
    よって検出される前記渦電流センサの温度を、前記ヒー
    タに交流電流を流して加熱することにより一定に維持す
    る温度制御手段と、 前記渦電流センサの出力に現れる前記ヒータの電流周波
    数成分を除去する周波数成分除去手段と、 前記光学式センサによって測定される距離と、前記周波
    数成分除去手段によってヒータ電流の周波数成分が除去
    された前記渦電流センサの出力に基づいて測定される距
    離との差から前記絶縁物の膜厚を算出する膜厚算出手段
    と、 を備え、前記渦電流センサの温度を制御することにより
    温度ドリフトを防止することを特徴とする非接触式膜厚
    測定器。
  4. 【請求項4】 請求項2または3において、 前記ヒータは、発熱用導体を1箇所あるいは複数箇所で
    折り返すことにより、あるいは偶数本の発熱用導体を組
    み合わせて用いることにより、隣接する前記発熱用導体
    を通電電流の向きが反対になるように配置して用いるこ
    とを特徴とする非接触式膜厚測定器。
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