JP3211674U - 手術用鋏 - Google Patents
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Abstract
【課題】内視鏡的乳頭切開術を行う際に十二指腸乳頭部の切開すべき位置まで鋏部を適切に案内することができる手術用鋏を提供する。【解決手段】鋏部1を案内するためのガイドワイヤー5と操作ワイヤー6とが挿通されている手術用鋏であり、鋏部1が、基片2と、鋏片3と、開閉機構部と、取付軸4とを有しており、基片2は、第1の刃部2aを有しているとともに、その内部にはガイドワイヤー5を挿通するためのガイドワイヤー収容部2bが設けられており、鋏片3は、第2の刃部3aを有しており、操作ワイヤー6によって鋏片3の基端部に駆動力を付与されて、その先端部が基片2に対して開閉操作され、開閉機構部は、進退部と、リンク片15bとからなり、取付軸4は、基片2に対して鋏片3の基端部を取り付けるための回動軸であって、基片2に対して鋏片3を片開きで開閉可能に連結している。【選択図】図6
Description
本考案は、内視鏡スコープに設けられている鉗子孔に挿通させて使用し、病変組織等の生体組織に剪断力を付与して把持しながら切開する手術用鋏に関し、特に内視鏡的乳頭切開術(Endoscopic Sphincterotomy[略称EST])において用いるための手術用鋏に関する。
まず、総胆管結石(Y)について、図1に基づいて説明すると、胆汁は、肝臓(D)で生成され、胆嚢(E)に一時蓄えられるとともに濃縮された後、総胆管(F)を通って、十二指腸(C)へと流出する。胆石(X)は、胆汁に含まれるコレステロールやビリルビン等が結晶化又は沈殿して固形化するものである。胆石が胆嚢(E)にあるときは胆嚢結石と呼び、胆石が肝臓(D)内の胆管にあるときは肝内結石と呼ぶが、胆石が総胆管(F)内で形成されたり、あるいは胆嚢(E)内で形成された結石が総胆管(F)内へと流出したりすることもあり、これらを総胆管結石(Y)と呼んでいる。
図1に図示するように、上記のような総胆管結石(Y)が総胆管(F)を塞いでしまうことで胆管閉塞を生じ、患者は上腹部の痛み、吐き気、食欲不振等といった各種の症状を呈するが、総胆管結石(Y)が総胆管(F)に嵌り込んでいない場合は患者に何らの症状も見受けられないこともある。しかしながら、総胆管結石(Y)が総胆管(F)を塞いでしまうと、大腸菌等の細菌が感染して総胆管(F)に炎症を生じさせ、患者は発熱、悪寒、黄疸、褐色尿等といった各種の症状を呈し、胆管炎を生じる。また、細菌が血液中に拡がると敗血症を生じ、意識障害等を伴って患者を死に至らしめることもある。
更に、図1に図示するように、総胆管(F)の十二指腸(C)側の出口には膵臓(H)で生成された膵液を十二指腸(C)へと流出させるための膵管(I)も合流しているため、総胆管(F)の十二指腸側(C)の出口にある突起即ち十二指腸乳頭部(G)に総胆管結石(Y)が嵌り込むと、膵臓(H)に炎症を生じさせ、急性膵炎を発症することもある。
そこで、図2に図示するように、従来、上記の総胆管結石(Y)を除去する際の手術方法の1つとして、内視鏡的乳頭切開術が行われている。この手術方法を説明すると、まず、手術医等の術者は、患者の口腔から、食道(A)、胃(B)を介して十二指腸(C)まで内視鏡スコープ(P)を挿入し、内視鏡スコープ(P)の先端から総胆管(F)内へとカテーテルを挿入して造影剤を注入し、総胆管(F)の内部形状等を観察する。次に、術者は、内視鏡スコープ(P)の先端部に備えられている内視鏡レンズ(P1)を通じて内視鏡システム本体に備えられている手術用モニターに映し出される映像を視認しながら、内視鏡レンズ(P1)の近傍にある鉗子孔(P2)から総胆管(F)内へとガイドワイヤー(R)によって案内しながらEST用ナイフ(Q)を挿入し、これを弓状にしならせて刃部をケースから露出させ、十二指腸乳頭部(G)に刃部を当てて適当な深さに切開し、総胆管結石(Y)を取り出せるように総胆管(F)の十二指腸(C)側の出口を切り広げる。ここで、総胆管結石(Y)が大きい場合には、回収し易いようにこれを砕石用バスケット等の各種の砕石具を使用して破砕することもある。そして、術者は、上記のようにして切り広げられた十二指腸乳頭部(G)から手術用バスケット等の専用処置具を総胆管(F)内に挿入して、総胆管結石(Y)を総胆管(F)から回収し除去するのである。
ところが、上記の手術方法では、術者が内視鏡レンズ(P1)を通じて映し出される映像を視認することで十二指腸乳頭部(G)を切開しているところ、特に内視鏡レンズ(P1)の視野に死角が生じてしまうと、切開すべき位置を十分に確認することができないままEST用ナイフ(Q)によって十二指腸乳頭部(G)を切開することになる。特に、患者が高齢者の場合は、臓器の壁が一部突出する憩室を生じることが多いため、憩室によって臓器の形状が変わってしまうことにより、このような問題の発生する可能性が一層高くなる。また、EST用ナイフ(Q)は術者がこれを操作することが難しく、不適切な位置を誤って切開してしまうことにつながっていた。更に、上記のような各種の臓器がその内容物を移動させるべく収縮する運動である蠕動運動が生じると切開すべき位置も動いてしまい、不適切な位置を誤って切開してしまうことにつながっていた。
上記のように、術者が十二指腸乳頭部(G)を適切な深さで切開することができず、十二指腸乳頭部(G)の切開が浅過ぎたり短か過ぎたりすると、総胆管(F)の十二指腸(C)側の出口を十分に切り広げることができず、速やかに総胆管結石(Y)を取り出せなくなったり、あるいは嵌頓して取り出せなくなったりして、ひいては外科的開腹術による総胆管結石(Y)の除去に至るおそれもある。反対に、十二指腸乳頭部(G)の切開が深過ぎると、内部の血管まで切断してしまい大出血を引き起こしたり、後腹膜まで穿孔したりするおそれがある。
また、EST用ナイフ(Q)によって十二指腸乳頭部(G)を切開すると、当然のことながらその切り口から出血することになるが、切開する位置が不適切である等のため大量に出血することになると、本来は低侵襲な内視鏡的乳頭切開術であるにも拘らず、それが高侵襲なものになってしまうことになる。そのため、術者がEST用ナイフ(Q)によって十二指腸乳頭部(G)を切開することには、その安全性ないし確実性に問題があった。
ここで、内視鏡スコープに設けられている鉗子孔に挿通させて使用し、生体組織に剪断力を付与して把持しながら切開する手術用鋏が提案されてきた。このような手術用鋏としては、例えば、体内に挿入される可撓管と、前記可撓管に挿通された操作線と、前記操作線の先端部に配置され回動軸により互いに開閉可能に軸支された一対の鋏片を備える処置部と、前記可撓管の基端部に付設され前記操作線を操作して前記一対の鋏片を開閉する操作部とを有する手術用鋏(例えば、下記の特許文献1を参照)、あるいは内視鏡の鉗子孔に挿入して用いられて生体組織を切開する内視鏡用鋏であって、互いに対向して重ね合わされ、重ね方向に延在する回動軸により開閉可能に軸支されているとともに、前記生体組織を把持して切開する刃部をそれぞれ有する一対の鋏片と、前記鋏片の基端部に駆動力を付与して前記鋏片の先端部を開閉操作する操作ワイヤとを備える手術用鋏(例えば、下記の特許文献2を参照)が提案されている。
また、先端と後端と長手軸とを有するシースと、前記シース内に進退自在に設けられた操作ワイヤと、前記シース先端から前記長手軸先端方向に延在する第一の把持部と、前記操作ワイヤに接続され、前記操作ワイヤを前記シースに対して進退操作することで、基端側を回転中心として、前記第一の把持部に近接する方向および離間する方向に移動可能な第二の把持部と、前記第一の把持部上であって前記第二の把持部と対向する面に設けられた第一の電極と、前記第一の把持部の先端から所定距離基端側へ後退した位置を回動中心として前記第二の把持部を片開きさせる開閉機構を備え、前記開閉機構は、前記回動中心を中心に前記第二の把持部を前記第一の把持部に対して鈍角になる開き角で片開きさせる内視鏡用高周波処置具(例えば、下記の特許文献3を参照。)も提案されている。
確かに、上記の従来技術に係る手術用鋏を用いれば、該鋏部によって挟み込まれている箇所を切開することになるため、術者は内視鏡スコープ(P)の先端部に備えられている内視鏡レンズ(P1)を通じて内視鏡システム本体に備えられている手術用モニターに映し出される映像を視認するだけでなく、該鋏部によって切開される位置を直感的に把握することができる。また、該鋏部によって挟み込まれている箇所を切開することになるため、不適切な位置を誤って切開してしまうことも少ない。更に、該鋏部によって挟み込まれているため、蠕動運動により切開すべき位置が動いたとしても、不適切な位置を誤って切開してしまうことを防止できる。
そして、上記の従来技術に係る手術用鋏を用いれば、第二の把持部が常に切開方向に向いて配置されるため、切開時に生体組織の切開方向が組織深層(筋層)方向に向けられそうになると、第二の把持部が生体組織からの反力を受けてこれが阻止されるため、局所的に突起した生体組織を切開する場合に、突起した生体組織を周囲の生体組織と平行方向に切開でき、切開のコントロール性を向上できるため、生体組織を安全にかつ適切な深さで切開することができる(例えば、上記の特許文献3を参照。)。また、このような手術用鋏を用いれば、高周波電圧を印加することによって、切開するのと同時に切り開いた箇所を焼灼して凝固させることによって出血を防止することができる(例えば、上記の特許文献3を参照。)。
しかしながら、上記の従来技術に係る手術用鋏は、十二指腸乳頭部(G)の切開すべき位置まで該鋏部を適切に案内するための仕組みを有していないため、必ずしも前述のような内視鏡的乳頭切開術に用いるために適した構造とはなっていなかったという問題があった。
そこで、本考案が解決しようとする第1の課題は、内視鏡スコープ(P)に設けられている鉗子孔(P2)に挿通させて使用し、生体組織に剪断力を付与して把持しながら切開する手術用鋏につき、十二指腸乳頭部(G)の切開すべき位置まで該鋏部を適切に案内することができる内視鏡的乳頭切開術用の手術用鋏を提供することにある。
また、上記の手術用鋏における鋏部は、高周波電圧によって印加されているところ、術者が誤って切開する対象ではない生体組織に接触させた際に、患者に火傷を負わせてしまうおそれがあった。
そこで、本考案が解決しようとする第2の課題は、内視鏡スコープ(P)に設けられている鉗子孔(P2)に挿通させて使用し、生体組織に剪断力を付与して把持しながら切開する手術用鋏につき、術者が切開する対象でない生体組織に該鋏部を接触させた際も、患者に火傷を負わせてしまうおそれを低減することができる内視鏡的乳頭切開術用の手術用鋏を提供することにある。
本考案は、上記の各課題を解決するために提案されたものであり、以下の構成を有するものである。以下では、本考案の構成を理解することを補助するために、本願に添付した図面に表示した番号及び符号をあわせて記載する。
請求項1に係る手術用鋏(10)は、内視鏡スコープ(P)に設けられている鉗子孔(P2)に挿通させて使用し、生体組織に剪断力を付与して把持しながら切開する内視鏡的乳頭切開術用の手術用鋏であって、術者が所望する位置に鋏部(1)を案内するためのガイドワイヤー(5)と操作ワイヤー(6)とが手術用鋏(10)を形成する挿入部(12)内に挿通されているモノポーラ型の手術用鋏であり、挿入部(12)の先端部に配設される鋏部(1)が、基片(2)と、鋏片(3)と、開閉機構部(15)と、取付軸(4)とを有しており、基片(2)は、棒状の部材であって、その外面に導電性を有する第1の刃部(2a)を有しているとともに、その内部には基片(2)の長さ方向の全長に亘ってガイドワイヤー(5)を挿通するためのガイドワイヤー収容部(2b)が設けられており、鋏片(3)は、棒状の部材であって、これを基片(2)に対して閉じた状態にした際に第1の刃部(2a)に対向する位置の外面に導電性を有する第2の刃部(3a)を有しており、操作ワイヤー(6)によって鋏片(3)の基端部に駆動力を付与されて、その先端部が基片(2)に対して開閉操作され、開閉機構部(15)は、進退部(15a)と、リンク片(15b)とからなり、操作ワイヤー(6)の鋏部(1)側には進退部(15a)が一体的に連結されており、進退部(15a)にはリンク片(15b)が回動可能に連結されていて、リンク片(15b)には鋏片(3)の基端部が回動可能に連結されており、取付軸(4)は、基片(2)に対して鋏片(3)の基端部を取り付けるための回動軸であって、基片(2)に対して鋏片(3)を片開きで開閉可能に連結している。
請求項2に係る手術用鋏(10)は、請求項1に記載した手術用鋏であって、基片(2)の内の第1の刃部(2a)を除く外面の全部又は一部及び/又は鋏片(3)の内の第2の刃部(3a)を除く外面の全部又は一部に電気絶縁性を具備させる。
本考案に係る手術用鋏(10)の構造は、上記の通りの構成であるから、以下のような効果を奏することができる。
まず、請求項1に記載した手術用鋏(10)は、基片(2)の内部にその長さ方向の全長に亘ってガイドワイヤー収容部(2b)が設けられており、ここにガイドワイヤー(5)を挿通することができるため、総胆管(F)内へと挿入したガイドワイヤー(5)に沿って十二指腸乳頭部(G)の切開すべき位置まで鋏部(1)を適切に案内することができる。
従って、請求項1に記載した手術用鋏は、内視鏡スコープ(P)に設けられている鉗子孔(P2)に挿通させて使用し、生体組織に剪断力を付与して把持しながら切開する手術用鋏につき、十二指腸乳頭部(G)の切開すべき位置まで該鋏部を適切に案内することができる内視鏡的乳頭切開術用の手術用鋏を提供するという本考案の第1の課題を解決することができる。
また、請求項2に記載した手術用鋏(10)は、基片(2)において通電する第一の刃部(2a)を除く外面の全部又は一部及び/又は鋏片(3)において通電する第二の刃部(3a)を除く外面の全部又は一部が電気絶縁性を具備させている。
従って、請求項2に記載した手術用鋏は、内視鏡スコープ(P)に設けられている鉗子孔(P2)に挿通させて使用し、生体組織に剪断力を付与して把持しながら切開する手術用鋏につき、術者が誤って切開する対象でない生体組織に該鋏部を接触させてしまった際も、患者に火傷を負わせてしまうおそれを低減することができる内視鏡的乳頭切開術用の手術用鋏を提供するという本考案が解決しようとする第2の課題も解決することができる。
もちろん、請求項1又は2に記載した手術用鋏(10)を用いれば、鋏部(1)によって挟み込まれている箇所を切開することになるため、術者は内視鏡スコープ(P)の先端部に備えられている内視鏡レンズ(P1)を通じて内視鏡システム本体に備えられている手術用モニターに映し出される映像を視認するだけでなく、鋏部(1)によって切開される位置を直感的に把握することができる。また、鋏部(1)によって挟み込まれている箇所を切開することになるため、不適切な位置を誤って切開してしまうことも少ない。更に、鋏部(1)によって挟み込まれているため、蠕動運動により切開すべき位置が動いたとしても、不適切な位置を誤って切開してしまうことを防止できる。そして、鋏部(1)の構造を用いれば、導電性を有する第一の刃部(2a)と導電性を有する第二の刃部(3a)に高周波電圧を印加することによって、切開するのと同時に切り開いた箇所を焼灼して凝固させることによって出血を防止することができる。
まず、本考案の一実施形態に係る手術用鋏(10)の構造について添付図面に基づいて説明する。
手術用鋏(10)は、図3に図示するように、内視鏡スコープ(P)に設けられている鉗子孔(P2)に挿通させて使用し、生体組織に剪断力を付与して把持しながら切開する手術用鋏であって、特に内視鏡的乳頭切開術において用いるための手術用鋏であり、操作部(11)と、挿入部(12)と、高周波発生装置(13)とを備えている。
操作部(11)は、図3に図示するように、操作ワイヤー(6)が挿通された軸部(11a)と、軸部(11a)の基端部に設けられた指掛リング(11b)と、操作ワイヤー(6)の基端が連結されて軸部(11a)に対して進退移動するスライダー(11c)とを備えており、操作ワイヤー(6)は軸部(11a)に対して摺動可能に挿通されている。
挿入部(12)は、図3に図示するように、操作部(11)から延設される部位であり、ガイドワイヤー(5)と操作ワイヤー(6)をシース(12a)内に挿通させる。シース(12a)は、例えばフッ素樹脂で形成された棒状の部材のような可撓性のある長尺の部材で形成されている。もっとも、ガイドワイヤー(5)を備えていれば、これに沿って十二指腸乳頭部(G)の切開すべき位置まで鋏部(1)を適切に案内することができるとともに、操作ワイヤー(6)を備えていれば、鋏片(3)の基端部に駆動力を付与して、その先端部を基片(2)に対して開閉操作することができるため、シース(12a)がなくても特に支障はない。尚、ガイドワイヤー(5)と操作ワイヤー(6)をシース(12a)内に挿通させる際は、図4ないし6に図示するように、別個に収容部を形成して、それぞれに挿通させるのが好適である。
操作ワイヤー(6)は、例えば、耐食性にも優れた導電性のあるステンレス鋼によって形成されたワイヤー部材の外周面をフッ素樹脂、ダイヤモンドライクカーボン、酸化チタン系ないしシリコン系等のセラミック材料といった各種の電気絶縁性を有する材料からなるコーティング層で覆って電気絶縁性を具備させた部材を用いることができる。
高周波発生装置(13)は、図3に図示するように、操作ワイヤー(6)を介して第1の刃部(2a)および第2の刃部(3a)に印加する高周波電圧を生じさせる高周波発生装置である。高周波発生装置(13)は、電気ケーブルを介して操作部(11)内で操作ワイヤー(6)と接続されているとともに、電気ケーブルを介して操作部(11)内で操作ワイヤー(6)と接続している患者の体表皮に当接される対局電極(14)と接続されている。
術者は、指掛リング(11b)に親指を挿入し、スライダー(11c)を他の2本の指で軸部(11a)の長手方向に沿って進退駆動させる。そうすると、操作ワイヤー(6)は操作部(11)に対して前進又は後退する。操作ワイヤー(6)はシース(12a)に対して進退可能に挿通されているため、スライダー(11c)の進退に連動して操作ワイヤー(6)の先端部はシース(12a)に対して前進または後退する。
手術用鋏(10)における鋏部(1)の構造は、挿入部(12)の先端部に配設される鋏部(1)の構造であって、図4ないし6に図示するように、基片(2)と、鋏片(3)と、開閉機構部(15)と、取付軸(4)とからなる。
基片(2)は、図4ないし6に図示するように、棒状の部材であって、例えば耐食性にも優れたステンレス鋼といった導電性のある材料で形成する。基片(2)は、その外面に導電性を有する第一の刃部(2a)を有しているとともに、その内部には基片(2)の長さ方向の全長に亘って術者が所望する位置に鋏部(1)を案内するためのガイドワイヤー(5)を挿通するためのガイドワイヤー収容部(2b)が設けられている。
基片(2)の内の第一の刃部(2a)を除く外面の全部又は一部は、例えば電気絶縁性を有するコーティング層を形成する等して電気絶縁性を具備させている。あるいは、基片(2)を酸化アルミニウムや二酸化ジルコニウムといったセラミック材料やポリテトラフルオロエチレン等の樹脂材料等の電気絶縁性のある材料で形成し、第一の刃部(2a)のみを導電性のある材料で形成してもよい。
鋏片(3)は、図4ないし6に図示するように、棒状の部材であって、基片(2)と同様に、例えば耐食性にも優れたステンレス鋼といった導電性のある材料で形成する。鋏片(3)は、それを基片(2)に対して閉じた状態にした際に、第一の刃部(2a)に対向する位置の外面に導電性を有する第二の刃部(3a)を有しており、操作ワイヤー(6)によって鋏片(3)の基端部に駆動力を付与されて、その先端部が基片(2)に対して開閉操作される。
鋏片(3)の内の第二の刃部(3a)を除く外面の全部又は一部は、例えば、前記のような各種の電気絶縁性を有する材料からなるコーティング層を形成する等して電気絶縁性を具備させている。あるいは、鋏片(3)を上記のような電気絶縁性のある材料で形成し、第二の刃部(3a)のみを導電性のある材料で形成してもよい。
取付軸(4)は、基片(2)に鋏片(3)の基端部を取り付けるための回動軸であって、基片(2)に対して鋏片(3)を片開きで開閉可能に連結している。
開閉機構部(15)は、図4及び5に図示するように、進退部(15a)と、リンク片(15b)とから構成されている。即ち、操作ワイヤー(6)の鋏部(1)側には進退部(15a)が一体的に連結されており、進退部(15a)にはリンク片(15b)が回動可能に連結されていて、リンク片(15b)には鋏片(3)の基端部が回動可能に連結されている。そうすると、操作ワイヤー(6)及び進退部(15a)が操作部(11)側に牽引されると、リンク片(15b)及び鋏片(3)は略直線状になり、鋏片(3)の先端部は基片(2)に対して閉鎖状態になる。他方、操作ワイヤー(6)および進退部(15a)が鋏部(1)側に押し出されると、リンク片(15b)が取付軸(4)に接近して鋏片(3)を駆動し、鋏片(3)の先端部は基片(2)に対して開放状態になるのである。
保持枠(12b)は、筒状の部材であって、基片(2)の操作部(11)側の端部がその内部に収容され固定されているとともに、操作ワイヤー(6)の鋏部(1)側の端部と進退部(15a)がその内部に進退可能に収容されている。保持枠(12b)は、その操作部(11)側がシース(12a)の鋏部(1)側端部に取り付けられている。
以上が、本考案の一実施形態に係る手術用鋏(10)の構造についての説明である。次に、本考案の一実施形態に係る手術用鋏(10)の使用態様について添付図面に基づいて説明する。
内視鏡スコープ(P)は、従来技術に係る公知の内視鏡スコープであり、図示するように、その先端部の周面に内視鏡レンズ(P1)が取り付けられているとともに、内視鏡レンズ(P1)の近傍には鉗子孔(P2)が設けられており、手術用鋏(10)を出し入れできる構造になっている。尚、内視鏡スコープ(P)には、他にも水や空気等を送り出すためのノズル、患者の体内を照らすためのライト、及び各種の処置具を出し入れするための処置具出入口等も併せて設けられていてもよい。
術者は、図7及び8に図示するように、内視鏡レンズ(P1)を通じて手術用モニターに映し出される映像を視認しながら、患者の口腔から、食道(A)、胃(B)を介して十二指腸(C)まで内視鏡スコープ(P)を挿入し、鉗子孔(P2)から総胆管(F)内へとカテーテルを挿入して造影剤を注入して、総胆管(F)の内部形状等を観察する。
次に、術者は、ガイドワイヤー(5)を内視鏡スコープ(P)内に挿入し、鉗子孔(P2)から伸長させて総胆管(F)内へと挿入する。そして、術者は、ガイドワイヤー収容部(2a)内にガイドワイヤー(5)を挿通させた後、内視鏡スコープ(P)内に挿入部(12)を挿入し、ガイドワイヤー(5)によって切開すべき位置へと適切に案内しながら、総胆管(F)内へと基片(2)に対して鋏片(3)の先端部を閉鎖したまま鋏部(1)を挿入する。
鋏部(1)が切開すべき位置に到達したならば、術者は、操作部(11)を操作して、基片(2)に対して鋏片(3)の先端部を開放して、第1の刃部(2a)と第2の刃部(3a)とによって十二指腸乳頭部(G)の切開を所望する位置を挟み、剪断力を付与して把持する。そして、術者は、操作ワイヤー(6)を介して、第1の刃部(2a)と第2の刃部(3a)に高周波電圧を印加し、第1の刃部(2a)と第2の刃部(3a)とによって挟み込んでいる箇所を切開し、総胆管(F)の十二指腸(C)側の出口を切り広げる。
この時、術者は内視鏡スコープ(P)の先端部に備えられている内視鏡レンズ(P1)を通じて内視鏡システム本体に備えられている手術用モニターに映し出される映像を視認するだけでなく、第一の刃部(2a)と第二の刃部(3a)とによって切開される位置を直感的に把握することができる。また、第一の刃部(2a)と第二の刃部(3a)とによって挟み込まれている箇所を切開することになるため、不適切な位置を誤って切開してしまうことも少ない。更に、第一の刃部(2a)と第二の刃部(3a)とによって挟み込まれているため、蠕動運動により切開すべき位置が動いたとしても、不適切な位置を誤って切開してしまうことを防止できる。
よって、術者は、その表層のみならず、切開すべき位置を十分に確認した上で、十二指腸乳頭部(G)を切開することができる。そうすると、十二指腸乳頭部(G)の切開が浅過ぎたり短か過ぎたりして、総胆管(F)の十二指腸(C)側の出口を十分に切り広げることができず、速やかに総胆管結石(Y)を取り出せなくなったり、あるいは嵌頓して取り出せなくなることはなく、あるいは十二指腸乳頭部(G)の切開が深過ぎて、内部の血管まで切断してしまい大出血を引き起こしたり、後腹膜まで穿孔したりするおそれもなくなるため、十二指腸乳頭部(G)を切開する際の安全性ないし確実性を高めることができる。そして、このことは手術時間の短縮等にもつながるため、ひいては術者の労力の負担及び患者の体力の負担を軽減することにもつながるのである。
もちろん、鋏部(1)は、上記のような構造であるから、導電性を有する第一の刃部(2a)と導電性を有する第二の刃部(3a)に高周波電圧を印加することによって、十二指腸乳頭部(G)を切開するのと同時に切り開いた箇所を焼灼して凝固させることによって出血を防止することができる。
また、基片(2)において通電する第一の刃部(2a)を除く外面の全部又は一部及び/又は鋏片(3)において通電する第二の刃部(3a)を除く外面の全部又は一部に電気絶縁性を具備させているため、術者が誤って切開する対象でない生体組織に鋏部(1)を接触させてしまった際も、患者に火傷を負わせてしまうおそれを低減することができる。
術者は、基片(2)に対して鋏片(3)の先端部を閉鎖して、鋏部(1)、挿入部(12)、及びガイドワイヤー(5)を内視鏡スコープ(P)の内部から脱出させる。そして、総胆管結石(Y)が大きい場合には回収し易いようにこれを砕石用バスケット等の各種の破石具を使用して破砕した上で、上記のようにして切り広げられた十二指腸乳頭部(G)から手術用バスケット等の専用処置具を総胆管(F)内に挿入し、総胆管結石(Y)を回収して総胆管(F)の内部から除去する。
1 鋏部
2 基片
2a 第1の刃部
2b ガイドワイヤー収容部
3 鋏片
3a 第2の刃部
4 取付軸
5 ガイドワイヤー
6 操作ワイヤー
10 手術用鋏
11 操作部
11a 軸部
11b 指掛けリング
11c スライダー
12 挿入部
12a シース
12b 保持枠
13 高周波発生装置
14 対局電極
15 開閉機構部
15a 進退部
15b リンク片
A 食道
B 胃
C 十二指腸
D 肝臓
E 胆嚢
F 総胆管
G 十二指腸乳頭部
H 膵臓
I 膵管
P 内視鏡スコープ
P1 内視鏡レンズ
P2 鉗子孔
Q EST用ナイフ
R ガイドワイヤー
X 胆石
Y 総胆管結石
2 基片
2a 第1の刃部
2b ガイドワイヤー収容部
3 鋏片
3a 第2の刃部
4 取付軸
5 ガイドワイヤー
6 操作ワイヤー
10 手術用鋏
11 操作部
11a 軸部
11b 指掛けリング
11c スライダー
12 挿入部
12a シース
12b 保持枠
13 高周波発生装置
14 対局電極
15 開閉機構部
15a 進退部
15b リンク片
A 食道
B 胃
C 十二指腸
D 肝臓
E 胆嚢
F 総胆管
G 十二指腸乳頭部
H 膵臓
I 膵管
P 内視鏡スコープ
P1 内視鏡レンズ
P2 鉗子孔
Q EST用ナイフ
R ガイドワイヤー
X 胆石
Y 総胆管結石
Claims (2)
- 内視鏡スコープに設けられている鉗子孔に挿通させて使用し、生体組織に剪断力を付与して把持しながら切開する内視鏡的乳頭切開術用の手術用鋏であって、術者が所望する位置に鋏部を案内するためのガイドワイヤーと操作ワイヤーとが該手術用鋏を形成する挿入部内に挿通されているモノポーラ型の手術用鋏であり、該挿入部の先端部に配設される該鋏部が、基片と、鋏片と、開閉機構部と、取付軸とを有しており、該基片は、棒状の部材であって、その外面に導電性を有する第1の刃部を有しているとともに、その内部には該基片の長さ方向の全長に亘って該ガイドワイヤーを挿通するためのガイドワイヤー収容部が設けられており、該鋏片は、棒状の部材であって、これを該基片に対して閉じた状態にした際に該第1の刃部に対向する位置の外面に導電性を有する第2の刃部を有しており、該操作ワイヤーによって該鋏片の基端部に駆動力を付与されて、その先端部が該基片に対して開閉操作され、該開閉機構部は、進退部と、リンク片とからなり、該操作ワイヤーの鋏部側には該進退部が一体的に連結されており、該進退部には該リンク片が回動可能に連結されていて、該リンク片には該鋏片の基端部が回動可能に連結されており、該取付軸は、該基片に対して該鋏片の基端部を取り付けるための回動軸であって、該基片に対して該鋏片を片開きで開閉可能に連結していることを特徴とする手術用鋏。
- 請求項1に記載した手術用鋏であって、前記基片の内の前記第1の刃部を除く外面の全部又は一部及び/又は前記鋏片の内の前記第2の刃部を除く外面の全部又は一部に電気絶縁性を具備させることを特徴とする手術用鋏。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2017002204U JP3211674U (ja) | 2017-05-18 | 2017-05-18 | 手術用鋏 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2017002204U JP3211674U (ja) | 2017-05-18 | 2017-05-18 | 手術用鋏 |
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Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
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Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP3211674U true JP3211674U (ja) | 2017-07-27 |
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ID=59384474
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2017002204U Expired - Fee Related JP3211674U (ja) | 2017-05-18 | 2017-05-18 | 手術用鋏 |
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JP (1) | JP3211674U (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2020103354A (ja) * | 2018-12-26 | 2020-07-09 | 小林 真 | 内視鏡用処置具 |
-
2017
- 2017-05-18 JP JP2017002204U patent/JP3211674U/ja not_active Expired - Fee Related
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2020103354A (ja) * | 2018-12-26 | 2020-07-09 | 小林 真 | 内視鏡用処置具 |
JP7190240B2 (ja) | 2018-12-26 | 2022-12-15 | 真 小林 | 内視鏡用処置具 |
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