JP3205424B2 - 環状成形品の成形方法および環状成形品 - Google Patents

環状成形品の成形方法および環状成形品

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JP3205424B2 JP9543993A JP9543993A JP3205424B2 JP 3205424 B2 JP3205424 B2 JP 3205424B2 JP 9543993 A JP9543993 A JP 9543993A JP 9543993 A JP9543993 A JP 9543993A JP 3205424 B2 JP3205424 B2 JP 3205424B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、たとえばプーリー,ギ
ヤ等の動力伝達用部品の成形方法およびその成形品に関
する。
【0002】
【従来の技術】従来のこの種の環状成形品は、たとえば
図3に示すようなものがある。すなわち、この環状成形
品100は、円筒状の金具101と、金具101の外周
面より全周的に径方向外方に延びる樹脂製で円環状の外
向きフランジ部102とから成る金具インサート樹脂成
形品で、型成形により成形されたものである。
【0003】この環状成形品100は、図3に示すよう
に応力分布Pが成形後のヒートサイクルによる外向きフ
ランジ部102の樹脂収縮により金具101との境界面
が最大となる引張応力を生じる。したがって、外向きフ
ランジ部102の強度が低下する成形時のウェルドを回
避する必要がある。
【0004】そこで、図4に示すようなディスク状の注
入口109を採用した型により上記環状成形品100を
成形する。この成形型103は、上型104と下型10
5との合せ面間にキャビティ106が形成されており、
下型105には金具101を装着するための中心軸線上
に突出する突出部107が設けられ、その突出部107
によりキャビティ106が円環状になっている。そし
て、上型104の、下型105の突出部107と対向す
る部分に、円環状のキャビティ106内に溶融材料であ
る樹脂108を注入するためのディスク状の注入口10
9が設けられている。
【0005】このように構成された成形型103の円環
状のキャビティ106内に、ディスク状の注入口109
を介して樹脂108を注入し、環状成形品100を成形
する。
【0006】しかしながら、上記した成形方法の場合に
は、金具101を円筒状のままで成形すると、注入した
際の樹脂圧Pp により金具101の内周への樹脂廻りを
生じることになる。そこで、樹脂廻りを防止するため、
金具101を断面略コ字状にする必要があり、さらに成
形後金具101の閉塞部および注入口109の部分の樹
脂108部(図中点線部)を切削により削除する必要が
あることからコスト高となる。
【0007】そこで、このコスト高を回避するために図
5に示す注入ゲートとしてのピンポイントゲート110
を採用した成形型103Aにより成形する成形方法があ
る。
【0008】この成形方法は、成形型103Aの上型1
04Aを、上記成形型103の上型104においてディ
スク状の注入口109をなくし、その部分が下型105
の突出部107の端面と当接するようになっており、樹
脂108を注入するための注入ゲートとしてのピンポイ
ントゲート110を円環状のキャビティ106の位置に
おける円周上に同一ピッチ円直径上で同一ピッチに複数
(本従来例では5個)設けたものとし、そのピンポイン
トゲート110を介して円環状のキャビティ106内に
樹脂108を注入して環状成形品100を成形する。
【0009】このように、円環状のキャビティ106内
に樹脂108を注入することができるので、金具100
を断面略コ字状とすることがなくなり、それに伴って成
形後の切削工程もなくなる。したがってコストの低減化
が図れる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】ところが、成形時各ピ
ンポイントゲート110により樹脂108をキャビティ
106内に注入すると、樹脂108の流れが図6に示す
ようにそれぞれ周方向に流れていくため各ピンポイント
ゲート110のほぼ中間に径方向に向かうウェルド11
1(図中点線部)が発生する。そのことにより、局部的
に強度が低下し、上記ウェルド111の発生応力により
ウェルド111に沿ったクラックが発生する。
【0011】本発明は上記した従来技術の課題を解決す
るためになされたもので、その目的とするところは、ウ
ェルドの発生を防止することにより強度の向上を図り、
クラックの発生を防止し得る成形方法およびその成形品
を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明にあっては、上型と下型の合せ面間に形成さ
れた円環状で中空のキャビティ内に、上型,下型のどち
らか一方のキャビティ位置における円周上に設けられる
複数の注入ゲートを介して溶融材料を注入し、環状成形
品を成形する成形方法において、前記複数の注入ゲート
が複数の異なる直径の円周上に配置される複数の注入ゲ
ート群によって構成され、該複数の注入ゲート群の注入
ゲートが位相角度を有して配置されることを特徴とす
る。
【0013】そして、上型と下型の合せ面間に形成され
た円環状で中空のキャビティ内に、上型,下型のどちら
か一方のキャビティ位置における円周上に設けられる複
数の注入ゲートを介して溶融材料を注入して成形された
環状成形品において、前記複数の注入ゲートが複数の異
なる直径の円周上に配置される複数の注入ゲート群によ
って構成され、該複数の注入ゲート群の注入ゲートが位
相角度を有して配置されて成形されたことを特徴とす
る。
【0014】
【作用】上記構成の環状成形方法および環状成形品にあ
っては、複数の注入ゲート群が複数の異なる直径の円周
上に配置され、そして複数の注入ゲート群の注入ゲート
が位相角度を有して形成される複数の注入ゲートを介し
てキャビティ内に溶融材料を注入し、成形することか
ら、円環上のキャビティ内における溶融材料の周方向の
流れにより発生しようとするウェルドは、位相角度を有
して形成されている注入ゲートから注入される溶融材料
の流れにより上記ウェルドが寸断され、環状成形品のそ
の部分の強度が向上する。したがってクラックが発生す
ることもない。
【0015】
【実施例】以下に本発明を図示の実施例に基づいて説明
する。図1(a)は本発明の一実施例に係る環状成形品
の成形方法において使用される成形型を示しており、図
1(b)は本発明の一実施例に係る成形方法により成形
された完成品、すなわち環状成形品を示している。
【0016】まず、図1(b)に示す環状成形品につい
て説明する。この環状成形品1(以下、成形品とい
う。)は、プーリ,ギヤ等の動力伝達用部品であり、円
筒状の金具2と、金具2の外周面より全周的に径方向外
方に延びる樹脂製で円環状の外向きフランジ部3とから
構成されている金具インサート樹脂成形品である。
【0017】次に、上記成形品1の成形方法について説
明する。まず、この成形方法において使用される成形型
4について説明する。この成形型4は、上型5と下型6
とから構成されている。下型6は型I61と型II62
とからなっており、型I61は型II62の径方向ほぼ
中央部に設けられた穴63内に嵌合されている。そして
型I61には、金具2を装着するための型I61の中心
軸線上に突出部64が設けられており、また型II62
は凹溝形状になっている。
【0018】そして、上型5の端面は下型6の型I61
の突出部64の端面および型II62の端面と当接し、
それら合せ面間により円環状のキャビティ7が形成され
ている。
【0019】また、上型5には円周上に複数の注入ゲー
ト8が円周上に設けられている。この複数の注入ゲート
8は、2種類のピッチ円直径で円周上に所望のピッチ
で、2種類の注入ゲート群がそれぞれ配置されており、
外径側の注入ゲート群を注入ゲートA81,内径側の注
入ゲート群を注入ゲートB82とし、各ピッチ円直径で
の注入ゲート81,82の数は同一(本実施例では5個
ずつ)とする。
【0020】さらに、注入ゲートA81と注入ゲートB
82は位相角度を有しており、互いにピッチ角度ずら
し、角度的に中間に配置している。
【0021】そして、注入ゲート8は、ランナ9とピン
ポイントゲート10とから構成されている。
【0022】以下に、上記構成の成形型4による成形方
法について説明する。まず、金具2を型I61の突出部
64に装着し、上型5と下型6とを合せ、円環状のキャ
ビティ7を形成する。そして、そのキャビティ7内に各
注入ゲート8を介して溶融材料である樹脂11を注入し
て成形品1を成形する。
【0023】上記構成の環状成形品の成形方法および環
状成形品にあっては、2種類のピッチ円直径で円周上に
それぞれのピッチ円直径においてキャビティ7内に樹脂
11を注入するための注入ゲートA81,注入ゲートB
82を設け、それら注入ゲートA81,注入ゲートB8
2は位相角度を有していることから、それら注入ゲート
A,B81,82から樹脂11をキャビティ7内に注入
すると、図2に示すように注入ゲートB82からの樹脂
11の周方向の流れにより発生しようとするウェルドW
は、注入ゲートA81からの樹脂11の流れによりウェ
ルドWが寸断される。したがって、環状成形品において
はその部分の強度が向上し、クラックが発生しなくな
る。
【0024】このようなウェルドWの寸断現象から、各
注入ゲートA,B81,82のピッチ円直径は極力金具
2径に近づけることが好ましい。
【0025】そこで、以下に本発明に係る本実施例の環
状成形品がどれくらい強度が向上したか従来技術と比較
実験を行ったので、その内容について説明する。
【0026】この実験は、試験条件:(−40℃×2Hr
s)+(165℃×2Hrs)のヒートショック試験で行わ
れ、サイクル数:100,試験成形品数:n=10であ
る。この実験結果を下記の表1に示す。
【0027】
【表1】 表1から明らかなように、従来技術においては100サ
イクルで破損なしの成形品が6個であるのに対し本発明
に係る本実施例の方は100サイクル試験を行って10
個全て破損がなかった。このことから確実に強度アップ
が図れたことがわかる。
【0028】尚、上記実施例では複数の直径の異なる複
数の注入ゲート群81,82の配置を2種類としたがこ
れ以上でも良く、これら注入ゲートが位相角度を有して
いれば同様に適用することができる。
【0029】また、溶融材料として樹脂11を用いたも
のを例にとって説明したが、特に樹脂に限るものではな
く成形しようとする環状成形品の材質によって決まるも
のである。
【0030】
【発明の効果】本発明は、以上の構成および作用を有す
るもので、複数の注入ゲート群が複数の異なる直径の円
周上に配置され、そして複数の注入ゲート群の注入ゲー
トが位相角度を有して形成される複数の注入ゲートを介
してキャビティ内に溶融材料を注入し、成形するので、
円環上のキャビティ内における溶融材料の周方向の流れ
により発生しようとするウェルドは、位相角度を有して
形成されている注入ゲートから注入される溶融材料の流
れにより上記ウェルドが寸断され、環状成形品のその部
分の強度が向上する。したがってクラックが発生するこ
ともない。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)は本発明の一実施例に係る環状成形
品の成形方法に使用される成形型の要部縦断面図および
環状成形品の縦断面図であり、同図(b)は同図(a)
の成形型により成形された環状成形品の正面図である。
【図2】図2は図1(a)のキャビティ内における樹脂
の流れを示す要部模式図である。
【図3】図3は従来の環状成形品の正面図である。
【図4】図4は従来の環状成形品の成形方法に使用され
る成形型の要部半縦断面図および環状成形品の半縦断面
図である。
【図5】図5(a)は従来の他の環状成形品の成形方法
に使用される成形型の要部半縦断面図および環状成形品
の半縦断面図であり、同図(b)は同図(a)の成形型
により成形された環状成形品の半正面図である。
【図6】図6は図5(a)のキャビティ内における樹脂
の流れを示す要部模式図である。
【符号の説明】
1 環状成形品 2 金具 3 外向きフランジ部 4 成形型 5 上型 6 下型 61 型I 62 型II 63 穴 64 突出部 7 キャビティ 8 注入ゲート 81 注入ゲートA(注入ゲート群) 82 注入ゲートB(注入ゲート群) 9 ランナ 10 ピンポイントゲート 11 樹脂
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B29C 45/00 - 45/84 B29C 33/00 - 33/76

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 上型と下型の合せ面間に形成された円環
    状で中空のキャビティ内に、上型,下型のどちらか一方
    のキャビティ位置における円周上に設けられる複数の注
    入ゲートを介して溶融材料を注入し、環状成形品を成形
    する成形方法において、 前記複数の注入ゲートが複数の異なる直径の円周上に配
    置される複数の注入ゲート群によって構成され、該複数
    の注入ゲート群の注入ゲートが位相角度を有して配置さ
    れることを特徴とする環状成形品の成形方法。
  2. 【請求項2】 上型と下型の合せ面間に形成された円環
    状で中空のキャビティ内に、上型,下型のどちらか一方
    のキャビティ位置における円周上に設けられる複数の注
    入ゲートを介して溶融材料を注入して成形された環状成
    形品において、 前記複数の注入ゲートが複数の異なる直径の円周上に配
    置される複数の注入ゲート群によって構成され、該複数
    の注入ゲート群の注入ゲートが位相角度を有して配置さ
    れて成形されたことを特徴とする環状成形品。
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