JP3204664U - 真空脱ガス装置の浸漬管 - Google Patents

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Abstract

【課題】芯金の赤熱状態化を抑制し、芯金の長寿命化、ひいては浸漬管の長寿命化を図るのに有利な真空脱ガス装置の浸漬管を提供することを課題とする。【解決手段】真空脱ガス装置に用いられる浸漬管であって、芯金2と、縦向きの溶湯通路を形成する芯金2の内周側、芯金2の外周側、および芯金2の下側に配置された筒状の耐火物層とを備えている。芯金2の表面にはスタッド57が固定されておりこの表面には塗布モルタル層57mが形成され、塗布モルタル層57mは10ミリメートル以内の厚さを持ち、スタッド57と耐火物層との間に挟持されている。【選択図】図4

Description

本考案は真空脱ガス装置の浸漬管に関する。
従来、真空脱ガス装置に用いられる浸漬管が提供されている(特許文献1)。この浸漬管は、縦方向に沿った中心軸線の回りに巡らされた筒形状をなす芯金と、中心軸線を通過する縦向きの溶湯通路を形成するように芯金に被覆された耐火物層とを備えている。これによれば、使用時には、高温の溶湯が溶湯通路を通過するため、浸漬管は高温に晒される。更に、浸漬管は浸漬管の下方の溶湯から受熱するため、かかる意味においても、浸漬管は高温に晒される。このため、芯金が赤熱状態となり、芯金の長寿命化、ひいては浸漬管の長寿命化には限界があった。特に、耐火物層として、マグネシア−カーボン等のようにカーボンを含む耐火物材料が近年用いられつつある。このようにカーボンを含む耐火物材料が用いられる場合には、伝熱性が高まり均熱化に有利である利点が得られるものの、金属溶湯やれんがからの熱伝導性および熱輻射性が高くなり、芯金が赤熱状態となり易く、芯金の長寿命化、ひいては浸漬管の長寿命化には限界があった。
特開2005−226092号公報
本考案は上記した実情に鑑みてなされたものであり、芯金の赤熱状態化を抑制し、芯金の長寿命化、ひいては長寿命化を図るのに有利な真空脱ガス装置の浸漬管を提供することを課題とする。
本考案は、真空脱ガス装置に用いられる浸漬管であって、芯金と、縦向きの溶湯通路を形成する前記芯金の内周側、前記芯金の外周側、および前記芯金の下側に配置された耐火物層とを備えており、前記芯金の表面にはスタッドが固定されており前記スタッドの表面には塗布モルタル層が形成され、前記塗布モルタル層は前記スタッドと前記耐火物層との間に挟持されていることを特徴とする。また 前記芯金の表面のうちの少なくとも一部表面には塗布モルタル層を積層し、前記塗布モルタル層は前記芯金と前記耐火物層との間に挟持されているものとすることが好ましい。このため、使用中に耐火物を介して伝達される熱あるいは亀裂等も塗布モルタル層を介して芯金に伝達されることになり、それだけ芯金の損傷が抑制される。
塗布モルタル層は耐熱補強繊維を含むものであることが望ましい。すなわち塗布モルタル層は繊維で補強された強度の高いものであるのが好ましい。これにより、耐火物に生じた亀裂が塗布モルタル層で止まる機能が高くなる。塗布モルタル層は、キャスタブルで形成された耐火物よりもより断熱性が高いことが好ましい。
さらには、塗布モルタル層の厚みは芯金の厚みよりも薄いものであるのが望ましい。塗布モルタル層の厚みを薄くできると、芯金や耐火物層の厚みが確保される。塗布モルタル層は芯金の表面のうちの少なくとも一部に形成されても、形成されている表面の芯金の部分の温度上昇等の損傷を抑制する。芯金の部分で最も温度上昇が高く損傷されやすいと思われる部分は、溶湯に浸漬される浸漬管の下方部分に埋設されている部分である。従って、塗布モルタル層は芯金の表面のうちの少なくとも下方部分に形成されるのが好ましい。
塗布モルタル層を質量比で100%とするとき、塗布モルタル層は耐熱補強繊維を1〜30%含むことが好ましい。耐熱補強繊維には、人造鉱物繊維、天然鉱物繊維、合成繊維等がある。人造鉱物繊維はガラス、岩石等を溶融し繊維状に加工したものであり、主に、グラスウール、ロックウール、スラグウール、ガラス長繊維等が挙げられる。ロックウールは主原料に岩石を用いるものをいい、耐熱性が良好である。スラグウールはスラグから作るものをいう。ガラス長繊維は、真っ直ぐな円柱状であり、直径が3〜20マイクロメートルである。天然鉱物繊維は天然に産出する繊維状の鉱物であり、主に、ワラストナイト、セピオライト、アタパルジャイト等が挙げられる。ワラストナイトは、基本構造が無限の珪素−酸素鎖(SiO)であり、カルシウム・カチオンがこの長い鎖を繋いでおり、珪灰石(カルシウム珪酸塩)と呼ばれ、SiOおよびCaOを主要成分としている。ワラストナイトは、形状は針状で、へき開性があり、耐熱性に優れており、熱膨張率が小さい。セピオライトはマグネシウム珪酸塩であり、微細孔をもつ。アタパルジャイトは基本的にはマグネシウム珪酸塩であり、マグネシウムがアルミニウムまたは鉄に置換したものである。アタパルジャイトは中空針状であり、耐熱性が良好である。
本考案によれば、埋設スタッドに塗布モルタル層が被覆されている。この場合、埋設スタッドにおける熱劣化が抑制され、埋設スタッドの本来の機能を長期にわたり維持させることができる。埋設スタッドと共に芯金の表面に塗布モルタル層を被覆することにより、浸漬管の使用時において、芯金の赤熱状態化等の損傷を抑制し、芯金の長寿命化、ひいては浸漬管の長寿命化を図るのに有利である。すなわち、芯金に被覆された塗布モルタル層は、耐火物層と芯金とを離し、芯金の劣化を抑制でき、芯金の耐久性を高め、芯金を保護できる。このため耐火物層の材質選択の幅が広くなり、例えば耐火物層の材質を、高い断熱性をもつ耐火物材料よりも、高い耐食性をもつ耐火物材料を優先できる等が可能となる。
参考形態1に係り、浸漬管を示す断面図である。 参考形態2に係り、浸漬管の半分を示す断面図である。 実施形態1に係り、浸漬管を示す断面図である。 断熱モルタル層が被覆されたスタッドの係合部付近の断面図である。 参考形態3に係り、浸漬管が搭載された真空脱ガス装置の断面図である。 参考形態3に係り、下部槽付近の断面図である。 参考形態4に係り、浸漬管の半分を示す断面図である。 試験例に係り、加熱時間と試験温度との関係を示すグラフである。
(参考形態1)
図1は参考形態1の概念を示す。本参考形態は、真空脱ガス装置に用いられる浸漬管1に適用されている。浸漬管1は、縦方向に沿った中心軸線1pの回りに同軸的に巡らされた筒形状をなす芯金2と、中心軸線1pを通過する縦向きの溶湯通路30を形成する耐火物層3とを備えている。
図1に示すように、耐火物層3は筒状をなしており、中心軸線1pを通過する縦向きの溶湯通路30を形成するように芯金2の内周側、芯金2の外周側、および、芯金2の下側に配置されている。芯金2は、筒形状をなす芯筒27と、芯筒27の内側において径内方向に突設されたアーム状またはフランジ状の突設された支持部26とをもつ。
芯金2の芯筒27は、筒形状の内表面20および筒形状の外表面22と、軸端面23とをもつ。芯金2の上端部には、リング形状をなす固定フランジ部24が主として径外方向に向けて突設されている。芯金2は金属(例えば炭素鋼、合金鋼)で形成されている。芯金2は耐火物層3の芯体として機能する。更に、浸漬管1の使用時(真空脱ガス処理時)には溶湯通路30側は減圧される。このため、芯金2の芯筒27は、中心軸線1pの回りの周方向に連続する金属で形成されており、厚み方向において外気遮断性を有しており、浸漬管1の外周側に存在する外気を溶湯通路30側に吸い込むことを抑制する吸気抑制機能を有する。
上記した耐火物層3は、中心軸線1pを1周するように内表面20の内周側に筒形状に配置された定形れんが層31と、外表面22の外周側に配置された外側耐火物層32と、内表面20および外表面22の下部側に配置された底側耐火物層33とを有する。底側耐火物層33は下面33dをもつ。
図1から理解できるように、定形れんが層31の内周部31iと底側耐火物層33の内周部33iとは、高温の溶湯(例えば溶鋼)が通過する溶湯通路30を形成する。外側耐火物層32は、流動性をもつキャスタブル材料を流しこんで乾燥固化させたキャスタブル層とされている。底側耐火物層33は、流動性をもつキャスタブル材料を流しこんで乾燥固化させたキャスタブル層とされている。芯金2と定形れんが層31との間にも、第2キャスタブル層320が装填されている。
図1に示すように、芯金2の内表面20、外表面22および軸端面23には、塗布モルタル層8が積層されている。塗布モルタル層8は、芯金2の内表面20に被覆された内側塗布モルタル層8iと、芯金2の外表面22に被覆された外側塗布モルタル層8pと、芯金2の軸端面23に被覆された軸端面塗布モルタル層8mとをもつ。従って径方向で見ると、内側塗布モルタル層8iと、芯金2の外表面22に被覆された外側塗布モルタル層8pとが2重に積層されている。
内側塗布モルタル層8iは10ミリメートル以内(例えば1〜7ミリメートル)の厚さをもち、芯金2の内表面20と第2キャスタブル層320との間に介在されている。外側塗布モルタル層8pは10ミリメートル以内(例えば1〜7ミリメートル)の厚さをもち、芯金2の外表面22と外側耐火物層32との間に介在されている。軸端面塗布モルタル層8mは10ミリメートル以内(例えば1〜7ミリメートル)の厚さをもち、芯金2の軸端面23と底側耐火物層33との間に挟持されている。上記した塗布モルタル層8i,8p,8mの厚みは10ミリメートル以内の厚さをもつ。
塗布モルタル層8i,8p,8mの厚みは、それぞれ芯金2の厚みよりも薄い。この場合、装置全体の大型化を抑制しつつ、耐火物層3の厚みが確保される。乾燥後の塗布モルタル層8を質量比で100%とするとき、塗布モルタル層8はセメント(ポルトランドセメント)を40〜60%、結晶性シリカを10〜20%、耐熱補強繊維を1〜20%含む。このような組成をもつ断熱モルタル材料に水を適宜混合した混合物を塗布して形成できる。耐熱補強繊維の長さは10〜3000マイクロメートル、100〜2000マイクロメートルとされているが、これらに限定されるものではない。耐熱補強繊維には人造鉱物繊維および天然鉱物繊維等がある。人造鉱物繊維はグラスウール、ロックウール、スラグウール、ガラス長繊維等が挙げられる。天然鉱物繊維は天然に産出する繊維状の鉱物であり、主に、ワラストナイト、セピオライト、アタパルジャイト等が挙げられる。耐熱補強繊維は耐熱性を確保させつつ、効果的な微小な多数の断熱空気層の群を形成することができる。断熱空気層の群は、塗布モルタル層8i,8p,8mにおける断熱性を高めるのに貢献できる。
本参考形態によれば、浸漬管の使用時において、高い断熱性をもつ塗布モルタル層8i,8p,8mは、径内方向および径外方向等において、溶湯通路30を流れる高温の金属溶湯からの熱輻射や熱伝導を抑え、芯金2の赤熱状態化を抑制する。これにより芯金2の長寿命化、ひいては浸漬管1の長寿命化を図るのに有利となる。図1に示すように、塗布モルタル層8i,8p,8mは、耐火物層3の外側耐火物層32,キャスタブル層320,底側耐火物層33で覆われているため、塗布モルタル層8i,8p,8mの脱落は防止されている。支持部26についても塗布モルタル層を被覆させることが好ましい。
ところで、耐火物層3を構成する耐火材料(定形れんが層31)として、マグネシア−カーボン等のように粉末状のカーボンを含む耐火材料が近年用いられつつある。このようにカーボンを含む耐火材料が耐火物層3として用いられる場合には、耐火物層3における伝熱性が高まる。この場合、耐火物層3の均熱化に有利である利点が得られるものの、金属溶湯やれんがからの熱伝導性および熱輻射性が高くなる。結果として、芯金2が赤熱状態となり、芯金2の長寿命化、ひいては浸漬管1の長寿命化には限界がある。しかしながら本参考形態によれば、高い断熱性をもつ塗布モルタル層8i,8p,8mは、高温の金属溶湯からの熱輻射や熱伝導を抑え、芯金2の赤熱状態化を抑制するため、芯金2の長寿命化、ひいては浸漬管の長寿命化を図るのに有利となる。
本考案者が実施した試験例によれば、塗布モルタル層8i,8p,8mが芯金2に積層されていない場合には、72chの実施回数で芯金2の全体には酸化された被膜が発生していた。しかしながら塗布モルタル層8i,8p,8mが芯金2に積層されている場合には、108chの実施回数であっても芯金2には酸化された被膜がさほど発生していなかった。更に、芯金2の芯筒27に被覆された塗布モルタル層8i,8p,8mは、高い断熱性を持ち、芯金2の芯筒27の熱劣化を長期にわたり抑制でき、芯金2の耐久性を高め、芯金2を長期にわたり保護できる。このため耐火物層3の外側耐火物層32,キャスタブル層320,底側耐火物層33の材質を選択するにあたり、高い断熱性をもつ耐火物材料よりも、高い耐食性をもつ耐火物材料を優先できる。
(参考形態2)
図2は参考形態2に係り、浸漬管の半分を示す断面図である。本参考形態は前記した参考形態1の塗布モルタル層8を芯金2の下方部分のみに設けたものである。この下方部分は、浸漬管が溶湯に漬けられて使用される時の溶湯の上に形成されるスラグラインSの位置を上端としている。浸漬管は使用時、スラグラインSまでの下方部分が高温の溶湯に漬かっており、その下方部分は高温に加熱される。塗布モルタル層8はその熱を遮り、浸漬管の下方部分の温度上昇を抑制する。
(実施形態1)
図3および図4は実施形態1を示す。本実施形態は前記した参考形態1と基本的には同様の構成および同様の効果を奏する。更に、芯金2の芯筒27の外表面22には、Vスタッド状の係合部57が複数個溶接または取付具等で固定されている。係合部57には塗布モルタル層57mが被覆されている。このように塗布モルタル層57mが被覆されている係合部57は、外側耐火物層32に埋設されている。これにより外側耐火物層32の脱落が抑制されている。塗布モルタル層57mが被覆されている係合部57は、高温の金属溶湯からの熱輻射や熱伝導が抑えられるため、係合部27の赤熱状態化が抑制される。これにより係合部27の熱劣化が抑制される。従って、係合部27が外側耐火物層32の脱落を抑制する効果が長期にわたり維持される。
(参考形態3)
図5および図6は参考形態3を示す。本参考形態は前記した参考形態1と基本的には同様の構成および同様の効果を奏する。真空脱ガス装置は還流式であり、高真空状態に維持される上部槽100と、下部槽110と、2個一対の浸漬管1R,1Lとを有する。操業時には、浸漬管1R,1Lが取鍋200にセットされる。この状態で、容器としての取鍋200の溶湯230(溶鋼)は、一方の浸漬管1L(上昇管)の溶湯通路30を上昇し、他方の浸漬管1R(下降管)の溶湯通路30を下降して取鍋200に戻るように溶湯230が還流される。このように浸漬管1R,1Lを介して取鍋200内の溶湯を還流させることにより、取鍋200内の溶湯の脱ガスが進行する。溶湯から排出されガスは矢印W方向に排出される。
真空脱ガス装置において、図6に示すように、下部槽110には、浸漬管1R,1Lの上方に位置するように、芯金として機能する敷き部鉄皮6が設けられている。敷き部鉄皮6は金属(例えば炭素鋼または合金鋼)製であり、縦壁60aおよび横壁60bをもつ内側部位60と、内側部位60に連設されている外側部位62とを有する。外側部位62は、縦壁62aおよび拡開壁62bを有する。敷き部鉄皮6は、複数の定形れんがで形成された定形れんが層65およびキャスタブル層67で被覆されている。
従来では、使用時には、金属溶湯の熱影響を受けて、芯金である敷き部鉄皮6は赤熱状態とされる。ここで、マグネシア−カーボン等のように、カーボンを含む耐火材料が耐火物層3として用いられる場合には、定形れんが層65およびキャスタブル層67における伝熱性が高まり、定形れんが層65およびキャスタブル層67の均熱化に有利である利点が得られるものの、金属溶湯やれんがからの熱伝導性および熱輻射性が高くなり、敷き部鉄皮6を構成する内側部位60および外側部位62が赤熱状態となり、敷き部鉄皮6の長寿命化には限界がある。
しかしながら本参考形態によれば、図6に示すように、高い断熱性をもつ塗布モルタル層8は敷き部鉄皮6の外側部位62の内面62iに積層されている。更に、塗布モルタル層8は敷き部鉄皮6の内側部位60の内面60iに積層されている。塗布モルタル層8は、キャスタブル高温の金属溶湯からの熱輻射や熱伝導を抑え、敷き部鉄皮6を構成する内側部位60および外側部位62の赤熱状態化を抑制するため、これらの熱劣化を抑制し、敷き部鉄皮6の長寿命化を図るのに有利となる。
なお本参考形態では、塗布モルタル層8は敷き部鉄皮6の外側部位62の外面62pおよび内側部位60の外面60pには積層されていない。但し、これに限らず、塗布モルタル層8は敷き部鉄皮6の外側部位62の外面62pに積層されていても良い。塗布モルタル層8は敷き部鉄皮6の内側部位60の外面60pに積層されていても良い。
(参考形態4)
図7は参考形態4を示す。本参考形態は前記した参考形態1と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有する。図7は中心軸線1pの右半分のみを図示しており、中心軸線1pの左半分は省略されているが、中心軸線1pを介して対称形状をなす。本実施形態は、真空脱ガス装置に用いられる浸漬管1に適用されている。浸漬管1は、縦方向に沿った中心軸線1pの回りに巡らされた筒形状をなす芯金2と、中心軸線1pを通過する縦向きの溶湯通路30を形成する耐火物層3とを備えている。
耐火物層3は筒状をなしており、中心軸線1pを通過する縦向きの溶湯通路30を形成するように芯金2の内周側、芯金2の外周側、および、芯金2の下側に配置されている。芯金2は、互いに同軸的な筒形状の内側芯金22iと筒形状の外側芯金22pと、内側芯金22iおよび外側芯金22pの上端部を溶接またはボルト締結等で固定するリング形状をなす固定フランジ部24と、定形れんが層31の下部を支えるように芯金2の内側芯金22iにおいて径内方向に突設されたアーム状またはフランジ状の支持部26とを備えている。なお、支持部26は内側芯金22iの下端20dよりも上方に位置する。
図7に示すように、芯金2は金属(例えば炭素鋼、合金鋼)で形成されている。芯金2は、耐火物層3の芯体として機能する。更に、浸漬管1の使用時(真空脱ガス処理時)には溶湯通路30側は減圧される。このため、周方向に連続する金属で形成された芯金2は外気遮断性を有しており、浸漬管の外周側に存在する外気を溶湯通路30側に吸い込むことを抑制する吸気抑制機能とを有する。従って、耐火物層3は、内側芯金22iの内周側に筒形状に配置された定形れんが層31と、外側芯金22pの外周側に配置された外側耐火物層32と、内側芯金22iおよび外側芯金22pの下部側に配置された底側耐火物層33とを有する。底側耐火物層33は下面33dをもつ。
図7から理解できるように、定形れんが層31の内周部31iと底側耐火物層33の内周部33iとは、高温の溶湯(例えば溶鋼)が通過する溶湯通路30を形成する。外側耐火物層32は、流動性をもつキャスタブル材料を流しこんで乾燥固化させたキャスタブル層とされている。底側耐火物層33は、流動性をもつキャスタブル材料を流しこんで乾燥固化させたキャスタブル層とされている。内側芯金22iと外側芯金22pとの間にも、第2キャスタブル層320が装填されている。内側芯金22iの内周面と耐火れんが層31の外周面との間にも、第3キャスタブル層330が装填されている。
図7に示すように、芯金2はY形の埋設スタッド5を有する。埋設スタッド5は、耐火物層3の底側耐火物層33の下部に埋設されている。埋設スタッド5は、芯金2の径内方向(矢印D方向)に指向する共に溶湯通路30に向けて突設するように芯金2の外側芯金22pの下部に溶接またはボルト締結などにより固定されており、底側耐火物層33の耐火物部分と係合するように設定されている。具体的には、埋設スタッド5は金属製(例えば炭素鋼または合金鋼)であり、長さLAを有する棒状部材50と、係合部53とを有する。棒状部材50は、筒形状をなす芯金2の径内方向(矢印D方向)に向けて指向する共に溶湯通路30に向けて突出するように、外側芯金22pの下部22dに固定されている。係合部53は、棒状部材50の先端部(径内方向に向く端部)に形成されたV形状またはU形状をなすように係合子53a,53cを有する。棒状部材50は長さLAを有するため、埋設スタッド5の係合部53を芯金2の内周部から内径方向に向けて離間させることができ、寸法DA(図1参照)を確保しつつ係合部53を底側耐火物層33の内周部33iに近づけることができる。
図7は、中心軸線1pに沿った方向で切断した縦断面を示す。この図において係合子53a,53cは視認される。棒状部材50は水平方向に沿って延びている。係合部53は底側耐火物層33に係合するため、熱膨張で芯金2が径外方向(図7に示す矢印F方向)
に広がろうとしても、その広がりを抑制できる。なお、芯金2の外側芯金22pの外周部のほぼ全域には、Vスタッドからなる複数個の第2係合部57が溶接等で固定されている。第2係合部57は、外側耐火物層32に埋設されており、その脱落を抑制する。埋設スタッド5は、中心軸線1pの回りを1周するように周方向において間隔を隔てて、芯金2の内周側において複数個配置されている。
以上説明したように本参考形態によれば、埋設スタッド5はY形状をなしており、芯金2の径内方向(矢印D方向)に指向する共に溶湯通路30に向けて突出するように芯金2の外側芯金22pの下部に固定された棒状部材50と、棒状部材50の先端部(径内方向に向く端部)に形成されたV形状またはU形状をなす係合部53とを有する。棒状部材50は長さLAを有しつつ、水平方向に沿って延びている。係合部53は、底側耐火物層33のうち芯金2よりも内周側に存在する耐火物部分33xに係合して、抵抗体として機能する。このため、熱膨張により芯金2がこれらの径外方向(図1に示す矢印F方向)に広がろうとしても、その広がりを抑制できる。
浸漬管1の使用時において、熱膨張等の影響で芯金2がこれらの径外方向(図1に示す矢印F方向)に開く傾向が抑制される。よって、耐火物層3、特に底側耐火物層33に亀裂が発生することを抑制させるのに有利となる。なお係合部53はV形状またはU形状に限定されず、T形状としても良い。
さて本参考形態によれば、芯金2は筒形状の内側芯金20iと筒形状の外側芯金22pとで同軸的に形成されている。内側芯金20iの内表面20および外表面22、更に軸端面には、塗布モルタル層8が積層されている。外側芯金22pの内表面20および外表面22、更に軸端面23には、塗布モルタル層8が積層されている。塗布モルタル層8は10ミリメートル以内の厚さをもつ。殊に、塗布モルタル層8は6ミリメートル以内の薄い厚さをもつ。塗布モルタル層8の厚みは、それぞれ内側芯金20iの厚みおよび外側芯金22pの厚みよりも薄い。この場合、装置全体の小型化を抑制しつつ、耐火物層3の厚みが確保され易い。塗布モルタル層8を質量比で100%とするとき、塗布モルタル層8はセメント(ポルトランドセメント)を40〜60%、結晶性シリカを10〜20%、耐熱補強繊維を1〜20%含む。耐熱補強繊維には、人造鉱物繊維、天然鉱物繊維等がある。人造鉱物繊維はグラスウール、ロックウール、スラグウール、ガラス長繊維等が挙げられる。天然鉱物繊維は天然に産出する繊維状の鉱物であり、主に、ワラストナイト、セピオライト、アタパルジャイト等が挙げられる。耐熱補強繊維は耐熱性を確保させつつ断熱空気層を形成し易い。
本参考形態によれば、浸漬管の使用時において、高い断熱性をもつ塗布モルタル層8は、径内方向および径外方向等において、溶湯通路30を流れる高温の金属溶湯からの熱輻射や熱伝導を抑え、内側芯金20iおよび外側芯金22pの赤熱状態化を抑制する。これにより内側芯金20iおよび外側芯金22pの熱劣化を抑え、これらの長寿命化、ひいては浸漬管の長寿命化を図るのに有利となる。
必要に応じて、係合部53および埋設スタッド5に塗布モルタル層を被覆させることもできる。この場合、係合部53および埋設スタッド5における熱劣化が抑制され、係合部53および埋設スタッド5の本来の機能を長期にわたり維持させることができる。
ところで、耐火物層3を構成する耐火材料として、マグネシア−カーボン等のように粉末状のカーボンを含む耐火材料が用いられている場合であっても、高い断熱性をもつ塗布モルタル層8は、高温の金属溶湯からの熱輻射や熱伝導を抑え、芯金2の赤熱状態化を抑制するため、芯金2の長寿命化、ひいては浸漬管の長寿命化を図るのに有利となる。
(試験例)
図8は試験例を示す。材質は炭素鋼(SS400)で、その厚みは16ミリメートルの金属製の平板の一方の表面に、塗布モルタル層をこて塗りにより塗布して形成したものを試験した。ここで、塗布モルタル層の全体を質量比で100%とするとき、塗布モルタル層は、セメント(ポルトランドセメント)を50〜70%、結晶性シリカを16〜18%、耐熱補強繊維を8〜10%含むものとした。耐熱補強繊維としては、アスペクト比が3〜7、繊維径が0.1〜10マイクロメートルのワラストナイト(メタ珪酸カルシウム,白色)を用いた。化学組成としては、質量比で、SiOが41%、CaOが40%、Alが3.5%、Feが1.0%、MgOが0.8%、SOが2.3%、Ig.Lossが10%であった。
塗布モルタル層8の熱伝導率λの実側値は、70℃において、0.155[kcal/mhr.℃]であった。
試験は、塗布モルタル層の無い、炭素鋼(SS400)で厚さ16ミリメートルの平板からなる試験片と、この平板に上記した塗布モルタル層を塗布した厚さ2mmの塗布試験片と、厚さ6mmの塗布試験片とを用いた。塗布モルタルの無い試験片での試験は、一方の表面をバーナにより1000℃に加熱させた状態で、他方の表面の温度を温度計で測定して試験温度とした。塗布モルタルの形成された試験片での試験は、各試験片の塗布モルタル層一方の表面をバーナにより1000℃に加熱させた状態で、試験片の他方の塗布モルタル層の無い表面の温度を温度計で測定して試験温度とした。試験結果を図8に示す。図8において、×印は塗布モルタル層の無い芯金のみを示す。○印は塗布モルタル層(2ミリメートル)を示す。△印は塗布モルタル層(6ミリメートル)を示す。図8に示す試験結果から明らかなように、加熱時間が長くなったとき、塗布モルタル層が積層されていないときには800℃程度に昇温される。これに対して塗布モルタル層(2ミリメートル)が積層されている場合には500〜600℃程度に抑えられる。塗布モルタル層(6ミリメートル)が積層されている場合には200〜300℃程度に抑えられる。このため塗布モルタル層の厚みは2ミリメートル〜10ミリメートル程度、2ミリメートル〜6ミリメートル程度が好ましい。
(その他)本考案は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。
1は浸漬管、1pは中心軸線、2は芯金、20は内表面、22は外表面、23は軸端面、3は耐火物層、30は溶湯通路、31は定形れんが層、32は外側耐火物層、33は底側耐火物層、8は塗布モルタル層を示す。

Claims (5)

  1. 真空脱ガス装置に用いられる浸漬管であって、芯金と、縦向きの溶湯通路を形成する前記芯金の内周側、前記芯金の外周側、および前記芯金の下側に配置された耐火物層とを備えており、
    前記芯金の表面にはスタッドが固定されており前記スタッドの表面には塗布モルタル層が形成され、前記塗布モルタル層は前記スタッドと前記耐火物層との間に挟持されていることを特徴とする真空脱ガス装置の浸漬管。
  2. 前記芯金の表面には前記塗布モルタル層が積層され、前記塗布モルタル層は前記芯金と前記耐火物層との間に挟持されている請求項1記載の真空脱ガス装置の浸漬管。
  3. 前記塗布モルタル層は耐熱補強繊維を含む請求項1又は2に記載の真空脱ガス装置の浸漬管。
  4. 前記塗布モルタル層は断熱モルタルである請求項1〜3の一項に記載の真空脱ガス装置の浸漬管。
  5. 前記塗布モルタル層の厚みは前記芯金の厚みよりも薄い請求項1〜4の一項に記載の真空脱ガス装置の浸漬管。
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