JP3197548B1 - 割岩装置および該装置を用いた心抜き工法 - Google Patents

割岩装置および該装置を用いた心抜き工法

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JP3197548B1 JP2001078156A JP2001078156A JP3197548B1 JP 3197548 B1 JP3197548 B1 JP 3197548B1 JP 2001078156 A JP2001078156 A JP 2001078156A JP 2001078156 A JP2001078156 A JP 2001078156A JP 3197548 B1 JP3197548 B1 JP 3197548B1
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昭男 神島
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Abstract

【要約】 【課題】 岩盤表面から所定の削孔形成方向に削孔が形
成された岩盤に対し、その削孔の内壁面から岩盤表面に
向けて亀裂を与えて岩盤を割岩することができる小型の
割岩装置、および該装置を用いた心抜き工程を提供す
る。 【解決手段】 各可動片51の当接部位512を引抜方
向(−X)と鋭角をなす方向で、かつ岩盤表面RSに向
けて移動させることによって削孔1の内壁面11に圧力
を与え、亀裂CRを岩盤Rに形成している。また、亀裂
形成のために可動片51を移動させるのにあたって、各
可動片51の移動を第2楔部材6と第1楔部材3とで制
御しているため、削孔1の内壁面11近傍にて可動片5
1の移動経路を制御するための特別の構成を必要とせ
ず、装置の小型化が可能とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、岩盤表面から所
定の削孔形成方向に削孔が形成された岩盤に対し、その
削孔の内壁面から前記岩盤表面に向けて亀裂を与えて前
記岩盤を割岩する割岩装置、および該装置を用いた心抜
き工法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】岩盤掘削作業を効率的に行うためには、
できるだけ自由面を多くすることが望ましい。そこで、
従来より心抜き発破を行い、心抜き部分を順次切り広げ
る工法が採用されている。なお、この明細書では、岩盤
に心抜き部分を形成する作業を「心抜き作業」と称して
いる。
【0003】しかしながら、市街地近辺での岩盤掘削作
業では、基本的に発破を使用することが極めて困難であ
ることから、本願発明者は発破を用いずに効率良く心抜
き作業を行うことができる工法を発明した(特許第31
17969号)。この心抜き工法では、削岩機によって
岩盤に削孔を形成した後、その削孔の内壁面から前記岩
盤表面に向けて亀裂を形成し、さらにその亀裂が形成さ
れた岩盤表面部を破砕することによって心抜き部分を形
成している。
【0004】この心抜き工法で用いられている割岩装置
では、特許第3117969号の特許掲載公報に記載さ
れているように、その先端側を削孔に挿入可能な中空状
の本体が設けられている。この本体の側部に開口部が形
成されるとともに、各開口部に対応して本体の内部に可
動片が配設されている。また、各可動片の後端面は楔部
材のテーパ部に摺接可能な形状に仕上げられており、本
体の長手方向に楔部材が移動するのに応じて開口部に対
して可動片が進退移動可能となっている。そして、楔部
材を駆動すると、その楔部材の移動に伴って可動片の先
端部が本体の開口部から突出して削孔の内壁面に圧力を
与えて岩盤に亀裂を形成する。特に、この装置では、可
動片の進退経路は本体の長手方向(楔部材の移動方向)
に対して鋭角を形成しており、削孔の内壁面から岩盤表
面に向けて亀裂を形成し、岩盤表面部を割岩している。
【0005】このように、この割岩装置によれば、可動
片の先端部を岩盤表面に向けた状態で可動片の進退経路
が本体の長手方向、つまり削孔形成方向と鋭角を形成す
るように構成されているため、可動片の先端部は岩盤表
面に向けて移動し、削孔の内壁面から岩盤表面に向けて
亀裂を与えて岩盤を割岩することができる。そして、こ
のように予め削孔の周囲に岩盤表面に向かう亀裂を形成
しておくことで、削孔周囲の岩盤表面部分の破砕を容易
に行うことが可能となっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、心抜き作業
を行うにあたっては削孔を形成する必要があるが、上記
割岩装置を用いて心抜き作業を行う場合、比較的大口径
の削孔を予め形成する必要がある。というのも、上記割
岩装置においては、可動片の進退経路が本体の長手方
向、つまり削孔形成方向と鋭角を形成するように、可動
片の進退経路を形成するために本体を用意し、さらにそ
の本体内部に可動片、楔部材、ならびに該楔部材を駆動
するための駆動手段(油圧ジャッキ)を配設しているの
で、割岩装置の小型化、特に削孔形成方向と直交する面
内における装置サイズの小型化には限界があるからであ
る。
【0007】したがって、上記割岩装置を用いて心抜き
作業を行うためには、割岩装置の本体を挿入可能な比較
的大口径の削孔を形成する必要があり、大型の削岩機を
準備する必要があった。その結果、大型の削岩機を導入
可能な作業現場でしか上記割岩装置および該装置を用い
た心抜き工程を実施することができない。
【0008】そこで、大型の削岩機を用いることなく、
比較的小口径、例えば直径100mm程度の削孔を形成
しただけで心抜き作業を行うことができる技術が要望さ
れている。なんとなれば、このような小口径の削孔につ
いては、現場作業員がハンドリング可能な小型の削岩機
を用いて岩盤に削孔を形成することができるため、上記
技術が実現できれば、大型の削岩機を導入可能な作業現
場はもとより、このような大型削岩機を導入不可能な作
業現場においても心抜き作業を短時間で、しかも低コス
トで行うことができるからである。
【0009】この発明は上記課題に鑑みなされたもので
あり、岩盤表面から所定の削孔形成方向に削孔が形成さ
れた岩盤に対し、その削孔の内壁面から前記岩盤表面に
向けて亀裂を与えて前記岩盤を割岩することができる小
型の割岩装置、および該装置を用いた心抜き工程を提供
することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】この発明にかかる割岩装
置は、岩盤表面から所定の削孔形成方向に削孔が形成さ
れた岩盤に対し、その削孔の内壁面から岩盤表面に向け
て亀裂を与えて岩盤を割岩する割岩装置であって、上記
目的を達成するため、削孔に挿入可能な鋼棒と、鋼棒の
先端側から後端側に向かうにしたがって外径が減少する
第1傾斜面を有し、その第1傾斜面を削孔の開口に向け
た状態で鋼棒の先端部に取り付けられた第1楔部材と、
鋼棒の先端側から後端側に向かうにしたがって外径が増
大する第2傾斜面を有し、その第2傾斜面を第1楔部材
に向けた状態で鋼棒に沿って移動自在となっている第2
楔部材と、削孔内で第1楔部材と第2楔部材との間に配
置され、その一方端面が第1傾斜面上をその傾斜方向に
沿って摺動可能となっている一方、その他方端部の一部
が当接部位として削孔の内壁面と当接するとともに、そ
の他方端部の他の部位が第2傾斜面と係合可能となって
いる可動片を少なくとも1つ以上有する可動手段と、鋼
棒を削孔形成方向に沿って駆動する駆動手段とを備え、
駆動手段により鋼棒を削孔から引抜く方向に移動させる
ことにより第1楔部材が前記引抜方向に移動するのに伴
って可動片が第1傾斜面に沿って摺動し、当接部位が引
抜方向と鋭角をなす方向で、かつ岩盤表面に向けて移動
して削孔の内壁面に圧力を与え、亀裂を岩盤に形成する
(請求項1)。
【0011】このように構成された発明では、削孔内に
おいて可動片の一方端側ではその一方端面が第1楔部材
の第1傾斜面上を摺動可能となっており、他方端側では
他方端部の当接部位が削孔の内壁面に当接するととも
に、他の部位が第2楔部材の第2傾斜面と係合してい
る。そして、駆動手段により鋼棒を引抜方向に移動させ
ることによって、第1楔部材が引抜方向に移動するのに
伴って可動片が第1傾斜面に沿って摺動し、当接部位が
引抜方向と鋭角をなす方向で、かつ岩盤表面に向けて移
動して削孔の内壁面に圧力を与え、亀裂を岩盤に形成す
る。このように予め削孔の周囲に岩盤表面に向かう亀裂
を形成しておくことで、削孔周囲の岩盤表面部分の破砕
を容易に行うことが可能となる。
【0012】また、この発明では、亀裂形成のために可
動片を移動させるのにあたって、可動片の移動を第1楔
部材と第2楔部材とで制御しているため、削孔の内壁面
近傍にて可動片の移動経路を制御するための特別の構成
(例えば特許第3117969号の発明では、中空状の
本体が相当する)を設ける必要がなくなり、装置の小型
化、特に削孔形成方向に対して直交する面内における装
置サイズの小型化が可能となる。
【0013】ここで、第1傾斜面の形状については、鋼
棒の先端側から後端側に向かうにしたがって外径が減少
するという特徴を有する限り任意の形状とすることがで
きるが、特に第1傾斜面を半球面に仕上げるのが望まし
い(請求項2)。
【0014】また、可動手段を複数の可動片で構成した
場合、これらの可動片を鋼棒を中心に放射状に配置する
ことで、削孔を中心とした略円錐状に岩盤表面部分を割
岩することができ、心抜き作業をさらに効率的に行うこ
とができる(請求項3)。
【0015】また、鋼棒に対して遊嵌されて、その先端
部が第2楔部材に当接する鋼管と、鋼棒に装着されて鋼
管を第2楔部材に向けて押し付けた状態で鋼管の後端部
と係合可能となっている固定部材とをさらに備えるよう
にしてもよい(請求項4)。この場合、第2楔部材の第
2傾斜面を可動片の他方端部と確実に係合させることが
できる。なお、鋼棒にネジが螺刻されている場合には、
固定部材を鋼棒に対して螺合されたナットで構成するこ
とができる(請求項5)。
【0016】この発明にかかる心抜き工法は、請求項1
ないし3のいずれかに記載の割岩装置を用いた心抜き工
法であって、上記目的を達成するため、岩盤表面から所
定の削孔形成方向に削孔を形成する第1工程と、第1楔
部材が取り付けられた鋼棒の先端部を削孔内に挿入する
第2工程と、第2工程後に、削孔内で第1楔部材の第1
傾斜面上に可動片を配置する第3工程と、第3工程後
に、第2楔部材を鋼棒に沿って移動させて第2傾斜面を
可動片の他方端部に係合させる第4工程と、第4工程後
に、削孔形成方向に沿って鋼棒を削孔からの引抜方向に
移動させることにより第1楔部材を移動させて、当接部
位を鋼棒の引抜方向と鋭角をなす方向で、かつ岩盤表面
に向けて移動させることで削孔の内壁面に圧力を与え、
岩盤に亀裂を形成する第5工程と、第5工程後に、亀裂
が形成された岩盤表面部を破砕する第6工程とを備えて
いる(請求項6)。
【0017】このように構成された発明では、第2ない
し第4工程によって削孔内において、可動片の一方端側
ではその一方端面が第1楔部材の第1傾斜面上を摺動可
能となっており、他方端側では他方端部の当接部位が削
孔の内壁面に当接するとともに、他の部位が第2楔部材
の第2傾斜面と係合している。そして、第5工程におい
て、鋼棒が削孔形成方向に沿って引抜方向に移動する
と、第1楔部材が引抜方向に移動するのに伴って可動片
が第1傾斜面に沿って摺動し、当接部位が鋼棒の引抜方
向と鋭角をなす方向で、かつ岩盤表面に向けて移動して
削孔の内壁面に圧力を与え、亀裂を岩盤に形成する。こ
のように予め削孔の周囲に岩盤表面に向かう亀裂を形成
しておくことで、削孔周囲の岩盤表面部分の破砕を容易
に行うことが可能となる。
【0018】しかも、この割岩装置は上記したように小
型であるため、比較的小口径の削孔であっても削孔の周
囲に岩盤表面に向かう亀裂を形成することができ、心抜
き作業の汎用性を高めている。
【0019】ここで、第4工程後で、かつ第5工程前
に、鋼棒に対して鋼管を遊嵌し、その鋼管先端部を第2
楔部材に当接させた後、鋼管を第2楔部材に向けて押し
付けることによって可動片を第2傾斜面に沿って削孔の
内壁面に向けて移動させ、当接部位を削孔の内壁面に密
接させた状態で、固定部材を鋼棒に固定するようにして
もよい(請求項7)。
【0020】さらに、第5工程で、鋼棒を削孔からの引
抜方向に移動させると同時に、固定部材を第2楔部材に
向けて移動させて鋼管を第2楔部材に向けて押し付けて
もよい(請求項8)。
【0021】
【発明の実施の形態】図1は、この発明にかかる割岩装
置の一の実施形態を示す図である。また、図2は図1の
割岩装置の部分構成を示す分解組立斜視図である。この
割岩装置は、岩盤表面RSから岩盤内部に向けて下方向
(+X)に形成された削孔1の内壁面11から岩盤表面
RSに向けて亀裂CRを与えて岩盤Rを割岩する装置で
ある。このように、この実施形態では下方向(+X)が
削孔形成方向となっている。
【0022】この割岩装置は、削孔1の内径よりも小さ
な外径を有し、その外周面にネジが螺刻された鋼棒2を
有している。この鋼棒2としては、一般的なPC鋼棒の
他、住友電工製の「総ネジPC鋼棒・ゲビンデスター
ブ」・「細径異形PC鋼棒・スミツイスト」や、神戸製
鋼所製の「高強度異形棒鋼・ネジコン」などを使用する
ことができる。
【0023】この鋼棒2の先端部には、削孔1の内径よ
りも若干小さな外径を有する鋼球よりなる第1楔部材3
が取り付けられている。より詳しくは、第1楔部材3に
貫通孔が形成されており、この貫通孔に鋼棒2の先端部
が挿通されている。そして、鋼棒2の最先端部にナット
41が螺合されており、ワッシャー42を介して第1楔
部材3を支持し、第1楔部材3が鋼棒2の先端部から落
下しないように取り付けている。もちろん、第1楔部材
3の貫通孔に雌ネジを螺刻して鋼棒2と螺合させたり、
第1楔部材3を溶接などにより鋼棒2に固着するように
してもよい。
【0024】この第1楔部材3の表面のうち削孔1の開
口を向いた上半分は、鋼棒2の先端側から後端側に向か
う方向(−X)に進むにしたがって外径が減少する半球
面(本発明の「第1傾斜面」に相当)31となってい
る。そして、この半球面31上に、鋼棒2を中心に放射
状に配置された3つの可動片51,51,51よりなる
可動ユニット5が設けられている。また、各可動片51
の一方端面511は上半球面31の曲率と同一曲率に仕
上げられており、上半球面31上をその傾斜面に沿って
摺動可能となっている。一方、各可動片51の他方端側
では、その他方端部の一部が当接部位512として削孔
1の内壁面11と当接するとともに、その他方端部の他
の部位が切欠部位513となっており、次に説明する第
2楔部材と係合可能となっている。
【0025】また、鋼棒2には、円錐台形状に仕上げら
れた第2楔部材6が遊嵌されている。この第2楔部材6
は、鋼棒2の先端側から後端側に向かう方向(−X)に
進むにしたがって外径が増大するテーパ面(本発明の
「第2傾斜面」に相当する)61を有し、そのテーパ面
61を第1楔部材3に向けた状態で鋼棒2に沿って移動
自在となっている。そして、この実施形態では、削孔形
成方向が下方向(+X)であるため、その自重により第
1楔部材3に向いて移動し、テーパ面61が各可動片5
1の切欠部位513に係合して下方移動が規制されてい
る。したがって、後で説明するようにして各可動片51
が削孔1の内壁面11側に移動して各切欠部位61同士
が相互に離間すると、その自重によって該離間動作に連
動してテーパ面61が各可動片51の切欠部位513と
係合しながら、第2楔部材6が下方移動していく。つま
り、可動片51は第2楔部材6により押え付けられなが
ら第1楔部材3の上半球面31上を摺動移動する。な
お、この実施形態では、可動片51が摺動する摺動面は
球面であるため、鋼棒2の引上に伴いこれらの切欠部位
513は、まるで花びらが開花する如くラッパ状に広が
っていくため、この動作を考慮してテーパ面61を設計
するのが望ましい。
【0026】第2楔部材6に続いて鋼棒2には、鋼管7
が遊嵌されており、その鋼管7の先端部が第2楔部材6
の(−X)方向側端面に当接している。また、鋼管7の
後端近傍に位置すようにナット8が鋼棒2に螺合されて
いる。このため、ナット8を(+X)方向に送り込んで
いくと、このナット8は鋼管7を第2楔部材6に向けて
押し付けた状態で鋼管7の後端部と係合する。
【0027】さらに、この実施形態では、鋼棒2を削孔
形成方向Xに沿って駆動するための駆動ユニット9が設
けられている。この駆動ユニット9は、図1に示すよう
に、油圧式の中空ジャッキ(例えば、株式会社大阪ジャ
ッキ製作所製のO.J.パワージャッキEC100H1
5)91と、この中空ジャッキ91を支持する支持機構
92とで構成されている。この支持機構92では、水平
支持部材921が複数本の油圧ジャッキ922によって
岩盤表面RSとほぼ平行な状態で支持されており、各油
圧ジャッキ922のピストンの伸縮量を調整することで
岩盤表面RSの凹凸にかかわらず水平支持部材921の
水平姿勢を容易に確保することができるようになってい
る。
【0028】そして、この水平支持部材921に中空ジ
ャッキ91が取り付けられている。この中空ジャッキ9
1は鋼棒2の後端部に外挿されており、鋼棒2の後端側
からナット93を螺合させて中空ジャッキ91の可動部
911上面を締め付けている。このため、中空ジャッキ
91を駆動して鋼棒2を削孔1からの引抜方向(−X)
に移動させると、鋼棒2の先端部に取り付けられた第1
楔部材3が一体的に引抜方向(−X)に移動して削孔1
の内壁面11から岩盤表面RSに向けて亀裂CRが形成
される。
【0029】次に、上記のように構成された割岩装置の
動作、ならびに同割岩装置を用いた心抜き作業手順につ
いて図面を参照しつつ説明する。
【0030】まず最初に、削岩機を用いて岩盤表面RS
から岩盤内部に向けて下方向(+X)に削孔を形成す
る。そして、図2に示すように、第1楔部材3が取り付
けられた鋼棒2を削孔1内に挿入した後、第1楔部材3
の上半球面31上に3つの可動片51を鋼棒2を中心に
放射状に配置する。そして、第2楔部材6を鋼棒2に沿
って下方向(+X)に移動させてテーパ面61を各可動
片51の切欠部位513に係合させる。これによって、
各可動片51の当接部位512を削孔1の内壁面11に
当接させた状態で各可動片51を削孔1内で第2楔部材
6および第1楔部材3により姿勢制御している。そし
て、図3に示すように、この姿勢状態のまま鋼棒2を下
方向(+X)に降下させていき、当接部位512を所望
の深さ位置まで移動させる。つまり、当接部位512を
亀裂の起点予定位置に位置決めする。
【0031】それに続いて、図4に示すように、鋼棒2
に対して鋼管7を遊嵌し、その鋼管先端部を第2楔部材
6の上方端面に当接させた後、ナット8を(+X)方向
に送り込むことによって鋼管7で第2楔部材6を(+
X)方向に押し遣り、各可動片51をテーパ面61に沿
って削孔1の内壁面11に向けて移動させる。これによ
り、当接部位512が削孔1の内壁面11に密接するこ
ととなり、しかもナット8は鋼棒2に螺合固定されてい
るため、鋼棒2を外部から支えることなく装置各部を削
孔1に対してセットすることができる。
【0032】次に、図5に示すように、岩盤表面RS上
に支持機構92を組み立てた後、支持機構92の水平支
持部材921に中空ジャッキ91を取り付ける。このと
き、中空ジャッキ91を鋼棒2の後端部に外挿し、鋼棒
2の後端側からナット93を螺合させて中空ジャッキ9
1の可動部911上面を締め付けている。
【0033】このようにして割岩作業の準備が完了する
と、図1に示すように、中空ジャッキ91を駆動して鋼
棒2を引抜方向(−X)へ移動させて、鋼棒2の先端部
に取り付けられた第1楔部材3を一体的に引抜方向(−
X)に移動させる。すると、第1楔部材3の移動ととも
に各可動片51が引抜方向(−X)に移動しながら、第
1楔部材3の上半球面31上を傾斜方向に摺動すること
となり、各可動片51の当接部位512は鋼棒2の引抜
方向(−X)と鋭角θ、例えば30゜をなす方向で、か
つ岩盤表面RSに向けて移動して削孔1の内壁面11に
圧力を与えて亀裂CRを形成して岩盤Rを割岩する。特
に、この実施形態では、3本の可動片51を鋼棒2を中
心として放射状に配置しており、可動片51が放射状に
突出して亀裂CRも放射状に形成されるため、岩盤表面
部分のうち削孔1を中心とする倒立状で、しかも略円錐
状の部分rが岩盤Rから浮き上がった状態となる。つま
り、亀裂CRが相互につながり自由面が形成されること
となる。なお、以下の説明の便宜から、当該部分rを
「表面分離部分」と称する。
【0034】上記のようにして岩盤表面部に自由面を形
成することで次に説明するようにして削孔1を拡張する
ことができる。もちろん、心抜き作業を行う上で完全な
自由面を形成することが必須というわけではなく、岩盤
表面部において削孔1の内壁面11から岩盤表面RSに
向かって亀裂CRが発生しているだけでも、次に説明す
る作業を行うことで削孔1の拡張が可能となる。
【0035】次に、図6に示すように、第2楔部材6お
よび鋼管7がナット8に対して下方向(+X)に相対的
に移動した分だけナット8を下方向(+X)に送り込
む。これによって、ナット8が鋼管7の後端部と当接
し、再び鋼管7で第2楔部材6を(+X)方向に押し付
けた状態に戻り、鋼棒2および第1楔部材3の降下を防
止することができる。そして、これに続いて、鋼棒2か
らナット93および中空ジャッキ91を取り外すととも
に、支持機構92も撤収する。こうして表面分離部分r
の表面を露出させた後、表面分離部分rを例えば特開平
8−105288号公報に記載されているような従来よ
り周知の割岩装置によって破砕除去する。こうして、図
7に示すように、表面分離部分rがそっくり除去されて
心抜き部分が拡張されて自由面が広がる。もちろん、こ
れをもって心抜き作業を完了してもよいのであるが、こ
の実施形態では、周知の割岩装置によって心抜き部分の
表面側をさらに広げた後、上記した心抜き作業を繰り返
して心抜き部分を拡張していく。こうすることで、より
大きな心抜き部分を形成することができる。
【0036】以上のように、この実施形態によれば、各
可動片51の当接部位512を引抜方向(−X)と鋭角
をなす方向で、かつ岩盤表面RSに向けて移動させるこ
とによって削孔1の内壁面11に圧力を与え、亀裂CR
を岩盤Rに形成している。このように予め削孔1の周囲
に岩盤表面RSに向かう亀裂CRを形成しておくこと
で、削孔1の周囲の岩盤表面部分の破砕を容易に行うこ
とが可能となる。特に、この実施形態のように、割岩作
業によって自由面を形成し、岩盤Rから表面分離部分r
が浮き上がるように破砕しておくことで、その表面分離
部分rの破砕を容易に、しかも効率良く行うことがで
き、心抜きの作業時間を大幅に短縮するとともに、騒音
も低減することができる。
【0037】しかも、この実施形態では、亀裂形成のた
めに可動片51を移動させるのにあたって、各可動片5
1の移動を第2楔部材6と第1楔部材3とで制御してい
るため、削孔1の内壁面11近傍にて可動片51の移動
経路を制御するための特別の構成(例えば特許第311
7969号の発明では、中空状の本体が相当する)を設
ける必要がなくなり、装置の小型化、特に削孔形成方向
Xに対して直交する面内における装置サイズの小型化が
可能となる。その結果、比較的小口径の削孔1であって
も削孔1の周囲に岩盤表面RSに向かう亀裂CRを形成
することができ、心抜き作業の汎用性を高めることがで
きる。
【0038】なお、本発明は上記した実施形態に限定さ
れるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて
上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能であ
る。例えば、上記実施形態では、3つの可動片51を鋼
棒2を中心に放射状に配置しているが、可動片51の個
数および配置形態はこれに限定されるものではなく、任
意である。特に、上記実施形態では可動片51を鋼棒2
を取り囲むように配置しているため、上記心抜き作業を
実行することによって削孔1を同心円状に拡張している
が、例えば図8に示すように2つの可動片51,51を
鋼棒2を挟んで対向配置した割岩装置を用い、上記実施
形態と同様にして心抜き作業を実行することにより削孔
1を可動片51の配列方向Yに選択的に拡張することが
できる。
【0039】また、上記実施形態では、第1楔部材3を
鋼球で構成しているが、例えば半球面体で構成し、その
球面を本発明の「第1傾斜面」として削孔1の開口に向
けた状態で鋼棒2の先端部に取り付けるようにしてもよ
い。また、第1傾斜面を球面とすることは本発明の必須
構成要件ではなく、鋼棒2の先端側から後端側に向かう
方向(−X)に進むにしたがって外径が減少する傾斜面
であればよく、例えば円錐状や円錐台状の金属部材によ
って第1楔部材3を構成するようにしてもよい。
【0040】また、上記実施形態では、可動片51の当
接部位512が鋼棒2の引抜方向(−X)と30゜をな
す方向に移動させているが、この角度θはこれに限定さ
れるものではなく、例えば、この角度θを変化させるこ
とにより、亀裂の形成方向を変化させることができる。
こうすることで、心抜き作業により形成される大径部の
径を変化させることができる。
【0041】また、上記実施形態では、鋼棒2を方向X
に駆動するための駆動源として油圧式の中空ジャッキ9
1を用いているが、これ以外の駆動源や駆動機構などを
用いてもよいことはいうまでもない。
【0042】また、上記実施形態では、鋼棒2を引抜方
向(−X)へ移動させて岩盤Rに亀裂CRを形成した後
にナット8を下方向(+X)に送り込みナット8を鋼管
7の後端部と当接させて再び鋼管7で第2楔部材6を
(+X)方向に押し付けているが、このように第2楔部
材6を(+X)方向に押し付ける機構、つまり鋼管7お
よびナット8は岩盤Rに亀裂CRを形成する上での必須
構成要件ではなく、任意の構成要件である。ただし、鋼
管7およびナット8を設けることによって上述したよう
に当接部位512を亀裂の起点予定位置に位置決めた状
態で鋼棒2を外部から支えることなく装置各部を削孔1
に対してセットすることができ、作業性の向上を図るこ
とができる。
【0043】また、ナット8を送りこんで鋼管7で第2
楔部材6を(+X)方向に押し付ける工程については、
鋼棒2を引抜方向(−X)へ移動させながら同時にナッ
ト8を下方向(+X)に送り込み、常時鋼管7によって
第2楔部材6を(+X)方向に押し付けるようにしても
よい。こうすることで、第2楔部材6のテーパ面61を
可動片51の切欠部位513に確実に係合させることが
できる。また、削孔形成方向Xが下向き以外に形成され
ている場合には、上記実施形態と異なり自重によって第
2楔部材6を第1楔部材3側に移動させることが難しく
なるが、引抜方向(−X)への鋼棒2の移動と、削孔形
成方向(+X)へのナット8の送り込みとを同時に行う
ことによって上記実施形態と同様の作用効果を得ること
ができる。つまり、この発明によれば、削孔形成方向X
が下向きに限定されず、岩盤表面RSから任意の削孔形
成方向Xに削孔1が形成された岩盤Rに対し、その削孔
1の内壁面11から岩盤表面RSに向けて亀裂を与えて
岩盤Rを割岩することができる。
【0044】
【発明の効果】以上のように、この発明では、削孔内に
おいて可動片の一方端側ではその一方端面が第1楔部材
の第1傾斜面上を摺動可能となっており、他方端側では
他方端部の当接部位が削孔の内壁面に当接するととも
に、他の部位が第2楔部材の第2傾斜面と係合させてい
る一方、鋼棒を引抜方向に移動させることによって、第
1楔部材が引抜方向に移動するのに伴って可動片が第1
傾斜面に沿って摺動し、当接部位が引抜方向と鋭角をな
す方向で、かつ岩盤表面に向けて移動して削孔の内壁面
に圧力を与え、亀裂を岩盤に形成するように構成してい
る。このように、この発明によれば、亀裂形成のために
可動片を移動させるのにあたって、可動片の移動を第2
楔部材と第1楔部材とで制御しているので、削孔の内壁
面近傍にて可動片の移動経路を制御するための特別の構
成(例えば特許第3117969号の発明では、中空状
の本体が相当する)を設ける必要がなくなり、削孔形成
方向に対して直交する面内における装置サイズを小さく
することができ、割岩装置を小型化することができる。
【0045】また、このような小型の割岩装置を用いて
心抜き工程を実行することによって、比較的小口径の削
孔であっても削孔の周囲に岩盤表面に向かう亀裂を形成
することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明にかかる割岩装置の一の実施形態を示
す図である。
【図2】図1の割岩装置の部分構成を示す分解組立斜視
図である。
【図3】図1の割岩装置の動作および該装置を用いた心
抜き作業を説明するための図である。
【図4】図1の割岩装置の動作および該装置を用いた心
抜き作業を説明するための図である。
【図5】図1の割岩装置の動作および該装置を用いた心
抜き作業を説明するための図である。
【図6】図1の割岩装置の動作および該装置を用いた心
抜き作業を説明するための図である。
【図7】図1の割岩装置の動作および該装置を用いた心
抜き作業を説明するための図である。
【図8】この発明にかかる割岩装置の他の実施形態を示
す図である。
【符号の説明】
1…削孔 2…鋼棒 3…第1楔部材 5…可動ユニット(可動手段) 6…第2楔部材 7…鋼管 8…ナット(固定部材) 9…駆動ユニット(駆動手段) 11…(削孔の)内壁面 31…上半球面(第1傾斜面) 51…可動片 61…テーパ面(第2傾斜面) 511…(可動片の)一方端面 512…(可動片の)当接部位 513…切欠部位(他の部位) CR…亀裂 R…岩盤 RS…岩盤表面 X…削孔形成方向 −X…(鋼棒の)引抜方向
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) E21C 37/00 - 37/08

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 岩盤表面から所定の削孔形成方向に削孔
    が形成された岩盤に対し、その削孔の内壁面から前記岩
    盤表面に向けて亀裂を与えて前記岩盤を割岩する割岩装
    置であって、 前記削孔に挿入可能な鋼棒と、 前記鋼棒の先端側から後端側に向かうにしたがって外径
    が減少する第1傾斜面を有し、その第1傾斜面を前記削
    孔の開口に向けた状態で前記鋼棒の先端部に取り付けら
    れた第1楔部材と、 前記鋼棒の先端側から後端側に向かうにしたがって外径
    が増大する第2傾斜面を有し、その第2傾斜面を前記第
    1楔部材に向けた状態で前記鋼棒に沿って移動自在とな
    っている第2楔部材と、 前記削孔内で前記第1楔部材と前記第2楔部材との間に
    配置され、その一方端面が前記第1傾斜面上をその傾斜
    方向に沿って摺動可能となっている一方、その他方端部
    の一部が当接部位として前記削孔の内壁面と当接すると
    ともに、その他方端部の他の部位が前記第2傾斜面と係
    合可能となっている可動片を少なくとも1つ以上有する
    可動手段と、 前記鋼棒を前記削孔形成方向に沿って駆動する駆動手段
    とを備え、 前記駆動手段により前記鋼棒を前記削孔から引抜く方向
    に移動させることにより前記第1楔部材が前記引抜方向
    に移動するのに伴って前記可動片が前記第1傾斜面に沿
    って摺動し、前記当接部位が前記引抜方向と鋭角をなす
    方向で、かつ前記岩盤表面に向けて移動して前記削孔の
    内壁面に圧力を与え、前記亀裂を前記岩盤に形成するこ
    とを特徴とする割岩装置。
  2. 【請求項2】 前記第1傾斜面が半球面となっている請
    求項1記載の割岩装置。
  3. 【請求項3】 前記可動手段は複数の可動片で構成され
    ており、これらの可動片は前記鋼棒を中心に放射状に配
    置されている請求項1または2記載の割岩装置。
  4. 【請求項4】 前記鋼棒に対して遊嵌されて、その先端
    部が前記第2楔部材に当接する鋼管と、 前記鋼棒に装着されて前記鋼管を前記第2楔部材に向け
    て押し付けた状態で前記鋼管の後端部と係合可能となっ
    ている固定部材とをさらに備えた請求項1ないし3のい
    ずれかに記載の割岩装置。
  5. 【請求項5】 前記鋼棒にはネジが螺刻されており、前
    記固定部材は前記鋼棒に対して螺合されたナットで構成
    されている請求項4記載の割岩装置。
  6. 【請求項6】 請求項1ないし3のいずれかに記載の割
    岩装置を用いた心抜き工法であって、 岩盤表面から所定の削孔形成方向に削孔を形成する第1
    工程と、 前記第1楔部材が取り付けられた前記鋼棒の先端部を前
    記削孔内に挿入する第2工程と、 前記第2工程後に、前記削孔内で前記第1楔部材の第1
    傾斜面上に前記可動片を配置する第3工程と、 前記第3工程後に、前記第2楔部材を前記鋼棒に沿って
    移動させて前記第2傾斜面を前記可動片の他方端部に係
    合させる第4工程と、 前記第4工程後に、前記削孔形成方向に沿って前記鋼棒
    を前記削孔からの引抜方向に移動させることにより前記
    第1楔部材を移動させて、前記当接部位を前記鋼棒の前
    記引抜方向と鋭角をなす方向で、かつ前記岩盤表面に向
    けて移動させることで前記削孔の内壁面に圧力を与え、
    前記岩盤に亀裂を形成する第5工程と、 前記第5工程後に、前記亀裂が形成された岩盤表面部を
    破砕する第6工程とを備えたことを特徴とする心抜き工
    法。
  7. 【請求項7】 前記割岩装置は、前記鋼棒に対して遊嵌
    されて、その先端部が前記第2楔部材に当接する鋼管
    と、前記鋼棒に装着されて前記鋼管を前記第2楔部材に
    向けて押し付けた状態で前記鋼管の後端部と係合可能と
    なっている固定部材とをさらに備えており、 前記第4工程後で、かつ前記第5工程前に、前記鋼棒に
    対して前記鋼管を遊嵌し、その鋼管先端部を前記第2楔
    部材に当接させた後、前記鋼管を前記第2楔部材に向け
    て押し付けることによって前記可動片を前記第2傾斜面
    に沿って前記削孔の内壁面に向けて移動させ、前記当接
    部位を前記削孔の内壁面に密接させた状態で、前記固定
    部材を前記鋼棒に固定する請求項6記載の心抜き工法。
  8. 【請求項8】 前記第5工程では、前記鋼棒を前記引抜
    方向に移動させると同時に、前記固定部材を前記第2楔
    部材に向けて移動させて前記鋼管を前記第2楔部材に向
    けて押し付ける請求項7記載の心抜き工法。
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