JP3197102B2 - 経皮吸収製剤及びその製造方法 - Google Patents

経皮吸収製剤及びその製造方法

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JP3197102B2 JP06972093A JP6972093A JP3197102B2 JP 3197102 B2 JP3197102 B2 JP 3197102B2 JP 06972093 A JP06972093 A JP 06972093A JP 6972093 A JP6972093 A JP 6972093A JP 3197102 B2 JP3197102 B2 JP 3197102B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は経皮吸収製剤及びその製
造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、経皮吸収製剤は、全身もしくは局
部での薬効を得るために、薬物を含有する粘着剤層から
皮膚への薬物分配・拡散、血中への移行によって、薬物
を体内に吸収させるものである。上記経皮吸収製剤にお
いて、その粘着剤層に含有される薬物の濃度が高ければ
高いほど、皮膚から血中への薬物移行量が増加するが、
薬物量が飽和溶解度以下では、人体に吸収される薬物量
が少ないため十分な薬効が得られないことが知られてい
る。
【0003】薬物の皮膚吸収量を増加させるために、種
々の方法が挙げられが、例えば、特開昭60−1691
6号公報には、高分子材料からなるマトリックス中に、
貧溶媒を介して生物活性物質(薬物)が安定な分散状態
で飽和溶解度以上に配合された経皮吸収製剤が開示され
ている。
【0004】また、特開昭60−185713号公報に
は、感圧接着性の高分子系重合体中に、飽和溶解度以上
の経皮吸収性薬物を良溶媒の存在下で溶解させた後、再
結晶させて、略均一な大きさの再結晶微粒子状態で分散
させた経皮吸収製剤が開示されている。
【0005】さらに、特開昭63−35521号公報に
は、薬物供給層を構成する高分子系重合体中に、飽和溶
解度以上の薬物が、溶剤の存在下で溶解又は微結晶状態
で含有された医薬製剤が開示されている。
【0006】しかしながら、上記いずれの方法も、過飽
和状態にある薬物が時間の経過と共に結晶として析出し
薬物濃度を低下させるため、薬物の皮膚透過性能が低減
するという問題点があった。
【0007】また、結晶を分散状に析出させた製剤につ
いては、均一に結晶を分散させることは粘着剤の粘度が
高い場合は極めて難しく、均一な品質の製剤を得ること
が難しいという問題点があった。
【0008】また、経皮吸収製剤中の薬物を結晶として
析出させる方法は、薬物を過飽和濃度以上に配合する必
要があり、1製剤当たりの薬物量が多くなるためコスト
アップを招くという問題点があった。
【0009】さらに、薬物を結晶状態で含有させるに
は、薬物を粘着剤層中に一旦過飽和状態に溶解させた
後、ゆっくりと析出させるために時間がかかり、製造効
率を著しく低下させるという問題点があった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記欠点に
鑑みてなされたものであり、その目的は、薬物を過飽和
状態で含有し、その過飽和状態を長期間にわたって維持
可能な経皮吸収製剤及びその製造方法を提供することに
ある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の経皮吸収製剤
は、ポリエチレングリコール、ワセリン及びラノリンの
うち少なくともいずれか1種の化合物とポリビニルピロ
リドンを構成成分とする粘着基剤並びに薬物よりなる。
但し、粘着基剤には(メタ)アクリル酸系ポリマーが含
有されない。
【0012】上記ポリエチレングリコールは、重量平均
分子量が低くなると流動性が大きくなって、皮膚への密
着性が低下し、重量平均分子量が高くなると皮膚に対す
る貼付性が低下するので、400〜6000に限定され
る。このようなポリエチレングリコールとしては、例え
ば、日本薬局方「マクロゴール軟膏」等が挙げられる。
【0013】上記ワセリンは、メタン列炭化水素とオレ
フィン列炭化水素の混合物であり、例えば、日本薬局方
「白色ワセリン」、日本薬局方「黄色ワセリン」、日本
薬局方「親水ワセリン」等が挙げられる。
【0014】上記ラノリンは、1価の高級アルコールと
脂肪酸のエステルであり、例えば、羊の毛から得られた
脂肪状物質を精製することにより得られる。上記ラノリ
ンとしては、例えば、日本薬局方「精製ラノリン」、日
本薬局方「親水ワセリン」等が挙げられる。
【0015】上記ポリエチレングリコール、ワセリン及
びラノリンは、単独で用いられてよいし、併用されても
よい。
【0016】上記粘着基剤中、ポリエチレングリコー
ル、ワセリン及びラノリンの含有量は、少なくなると粘
着基剤の柔軟性が失われて貼付性が低下し、多くなると
粘着基剤の流動性が高くなって貼付性が得られなくなる
ので、70〜95重量%に限定される。
【0017】上記ポリビニルピロリドンは、粘着基剤に
薬物溶解性及び貼付性を付与するために含有され、その
重量平均分子量は、低くなると薬物溶解性が小さくな
り、高くなると貼付性に乏しくなるので、100万〜5
00万に限定される。
【0018】上記粘着基剤中、ポリビニルピロリドンの
含有量は、少なくなると薬物溶解性が低下し、多くなる
と粘着基剤の柔軟性が失われて貼付性が乏しくなるの
で、5〜30重量%に限定される。
【0019】上記粘着基剤中に含有される薬物として
は、通常、医薬品として用いられて生理活性物質を有す
るものであれば、特に限定されないが、例えば、エスト
ラジオール、酢酸ノルエチステロン、デソゲストレル等
のステロイド化合物が好適に使用される。
【0020】上記粘着基剤に対する薬物の添加量は、少
なくなると薬効が低下し、多くなると結晶として析出す
るので、粘着基剤100重量部に対して1〜25重量部
に限定される。
【0021】上記粘着基剤には、必要に応じて、経皮吸
収促進剤、粘着付与樹脂等が添加されてもよい。上記経
皮吸収促進剤としては、上記粘着基剤に溶解するもので
あれば特に制限はなく、例えば、N−ラウロイルサルコ
シン、マレイン酸等が好適に使用される。また、上記粘
着付与樹脂としては、粘着基剤との相溶性がよく、粘着
力を付与するものであれば特に制限はなく、例えば、エ
ステルガム(荒川化学社製)等のロジンエステル;YS
レジン(安原樹脂社製)等のテルペン系樹脂などが好適
に使用される。
【0022】本発明の経皮吸収製剤は、必要に応じて、
上記薬物を含有する粘着基剤を支持体上に塗布し、貼付
剤として使用してもよい。
【0023】上記支持体としては、薬物が不透過性又は
難透過性であって、貼付剤用に通常使用されものであれ
ば特に制限はなく、例えば、酢酸セルロース、エチルセ
ルロース、ポリエチレンテレフタレート(以下PETと
いう)、可塑化酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、ナイ
ロン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、可塑化ポリ塩化
ビニル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニリデン等の樹脂フ
ィルム(又はシート)、織布又は不織布;アルミニウム
シート等が挙げられる。これらは単層で使用してもよ
く、2種以上の積層体として使用してもよい。
【0024】上記貼付剤の粘着性が不足して貼付が困難
な場合は、粘着テープを使用して固定してもよい。この
ような粘着テープとしては、例えば、日本薬局方絆創
膏、マイクロポアテープ(3M社製)、ユートクバン
(祐徳薬品社製)等が挙げられる。
【0025】本発明の経皮吸収製剤を製造する方法とし
ては、例えば、溶剤塗工法、ホットメルト塗工法、電子
線硬化エマルジョン塗工法等を用いて粘着基剤を支持体
上に塗布する方法が挙げられる。また、別の方法として
は、例えば、薬物を含有する粘着基剤を一旦シリコン樹
脂等をコーティングした離型紙上に塗工、乾燥して粘着
基剤層を形成した後、該粘着基剤層を離型紙から剥離し
て支持体と密着させる方法が挙げられる。
【0026】上記粘着基剤層の厚さは、剤型や使用目的
によって異なるが、薄くなると必要量の薬物を含有させ
ることができず、厚くなると支持体近傍の粘着基剤層に
含まれる薬物が十分に拡散せず、皮膚に吸収されなく難
くなるので、通常30〜200μmが好ましい。
【0027】次に、本発明2の経皮吸収製剤の製造方法
について説明する。まず、上記粘着基剤及び薬物を均一
に混合するために加熱、溶融して液状物とする。上記加
熱温度は、低くなると粘着基剤自体の粘度が高くなって
十分な混合ができなくなり、高くなると薬物の分解が起
こるので、60〜120℃に限定される。また、加熱時
間は、薬物の熱安定性によって異なるが、長くなると薬
物の分解が起こるので、3時間以内が好ましい。
【0028】次いで、上記液状物を上記支持体上に塗工
した後常温に冷却することにより経皮吸収製剤が得られ
る。上記冷却時間は、長くなると薬物の結晶化が促進さ
れて過飽和状態が失われるので、結晶の析出を防止する
ために1時間以内に限定される。
【0029】
【作用】本発明の経皮吸収製剤は、特定の分子量のポリ
ビニルピロリドンを含有することにより、粘着基剤中に
薬剤を過飽和状態で含有することができるので優れた皮
膚透過性を発現し、この過飽和状態を長期間にわたって
安定に維持することができる。また、基材の粘着力が適
度であるため、剥離時に皮膚角質層を剥離せず、刺激性
を与えない。本発明2の製造方法は、粘着基剤と薬物を
短時間の加熱で均一に溶解させることが可能であり、薬
剤の熱分解が起こらない。
【0030】
【実施例】以下に本発明の実施例につき具体的に説明す
る。 (実施例1)日本薬局方「マクロゴール軟膏」(丸石製
薬製)77重量部、ポリビニルピロリドン(東京化成社
製「K−90」、分子量120万)15重量部及び17
−β−エストラジオール(ダイオシンス社製)8重量部
をセパラブルフラスコに仕込み、窒素雰囲気下で90℃
に加熱し1時間攪拌した。17−β−エストラジオール
及びポリビニルピロリドンの結晶が、粘着基剤中に溶解
していることを確認した後、薬剤を含有する粘着基剤を
厚さ40μmのPETフィルムをシリコン離型処理した
剥離紙上に、厚さが60μmとなるように塗工後、60
℃で30分間乾燥して粘着基剤層を形成した。次いで、
上記粘着基剤層を、厚さ60μmの支持体(PETとエ
チレン−酢酸ビニル共重合体の積層体)に貼り合わせ
て、経皮吸収製剤を得た。
【0031】(実施例2)実施例1において、マクロゴ
ール軟膏70重量部、ポリビニルピロリドン22重量部
及び17−β−エストラジオール8重量部使用したこと
以外は、実施例1と同様にして経皮吸収製剤を得た。
【0032】(実施例3)実施例1において、マクロゴ
ール軟膏85重量部、ポリビニルピロリドン7重量部及
び17−β−エストラジオール8重量部使用したこと以
外は、実施例1と同様にして経皮吸収製剤を得た。
【0033】(実施例4)実施例1において、マクロゴ
ール軟膏に代えて日本薬局方加水ラノリン77重量部を
使用したこと以外は、実施例1と同様にしてして浸漬、
乾燥することにより中間層を形成したこと以外は、実施
例1と同様にして経皮吸収製剤を得た。
【0034】(実施例5)実施例1において、マクロゴ
ール軟膏に代えて日本薬局方親水ワセリン77重量部を
使用したこと以外は、実施例1と同様にしてして経皮吸
収製剤を得た。
【0035】(実施例6)実施例1で得られた薬剤を含
有する粘着基剤を支持体上に塗工せず、そのままの状態
で4℃の雰囲気下で急速に冷却して経皮吸収製剤を得
た。
【0036】(実施例7)実施例4で得られた薬剤を含
有する粘着基剤を支持体上に塗工せず、そのままの状態
で4℃の雰囲気下で急速に冷却して経皮吸収製剤を得
た。
【0037】(実施例8)実施例5で得られた薬剤を含
有する粘着基剤を支持体上に塗工せず、そのままの状態
で4℃の雰囲気下で急速に冷却して経皮吸収製剤を得
た。
【0038】(比較例1)実施例1において、マクロゴ
ール軟膏を92重量部使用し、ポリビニルピロリドンを
全く使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にして
経皮吸収製剤を得た。
【0039】(比較例2)実施例1において、分子量6
00万のポリビニルピロリドンを使用したこと以外は、
実施例1と同様にして経皮吸収製剤を得た。
【0040】(比較例3)実施例1において、分子量5
0万のポリビニルピロリドンを使用したこと以外は、実
施例1と同様にして経皮吸収製剤を得た。
【0041】(比較例4)実施例1において、マクロゴ
ール軟膏を50重量部使用し、ポリビニルピロリドン4
2重量部を使用したこと以外は、実施例1と同様にして
経皮吸収製剤を得た。
【0042】〔経皮吸収製剤の評価〕 (1)試料の作製 実施例及び比較例で得られた経皮吸収製剤を、製造直後
と包材に入れたままで1年間室温で放置しものの2種類
について、下記の評価を行った。上記経皮吸収製剤を直
径20mmの円形に打ち抜いたものを試料とし、実施例
6〜8については、上記製剤を直径20mmの円形に打
ち抜いたPETフィルム上に100mgを均一に塗布し
たものを試料とした。
【0043】(2)薬物皮膚透過性試験 薬物皮膚透過性試験は、図1に示す装置1を用いて行っ
た。まず、頸椎脱臼により屠殺したヘアレスマウス
(♂、6週令)より摘出後、皮下脂肪組織を除去せしめ
たマウス摘出皮膚3を、速やかに薬物皮膚透過性試験器
セルにセットした。次いで、この装置1の上部に、
(1)で作製した試料2を貼付し、下部のレセプター槽
4には、蒸留水中に溶解して、Na2 PO4 5×10 -4
M、NaHPO4 2×10-4M、NaCl1.5×10
-1M及びゲンタマイシン10ppmの濃度となるように
調製した溶液を、NaOHでpH7.2に調節し、ポリ
エチレングリコール400を20重量%となるように添
加した緩衝液を入れ、試験開始後より37℃に保たれた
恒温槽中に上記装置1を設置した。上記試験を開始して
から24時間後に、サンプリング口5よりレセプター槽
4中の液1ミリリットルを採取し、17−β−エストラ
ジオールの濃度をHPLC法により測定し、薬物の皮膚
透過量とした。尚、この薬物皮膚透過性試験は、各試料
毎に3個のサンプル数で行い、その結果を表1に示し
た。
【0044】
【表1】
【0045】
【発明の効果】本発明の経皮吸収製剤の構成は、上述し
た通りであり、薬剤を長期間にわたって過飽和状態で安
定に含有するので、優れた皮膚透過性能を長期間にわた
って持続する。本発明2の経皮吸収製剤の製造方法は、
薬剤を過飽和状態に含有する経皮吸収製剤を提供し、溶
剤塗工法で必要な排気や火災防止等の設備が不要であ
り、低コストでの製造が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の経皮吸収製剤の薬物皮膚透過性試験に
使用される装置を示す概要図である。
【符号の説明】
1 装置 2 試料 3 マウス摘出皮膚 4 レセプター槽 5 サンプリング口 6 攪拌子

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量平均分子量400〜6000のポリ
    エチレングリコール、ワセリン及びラノリンのうち少な
    くともいずれか1種の化合物70〜95重量%と、重量
    平均分子量100万〜500万のポリビニルピロリドン
    30〜5重量%とを構成成分とする粘着基剤(但し、
    (メタ)アクリル酸系ポリマーを含有しない。)100
    重量部並びに薬物1〜25重量部よりなることを特徴と
    する経皮吸収製剤。
  2. 【請求項2】請求項1記載の粘着基剤に薬物を加え、6
    0〜120℃に加熱、溶融して液状物となし、該液状物
    を支持体上に塗布して薬物含有の粘着基剤層を形成した
    後、該粘着基剤層を1時間以内に常温まで冷却すること
    を特徴とする経皮吸収製剤の製造方法。
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