JP3194994B2 - 誘電体磁器組成物の誘電特性制御方法 - Google Patents

誘電体磁器組成物の誘電特性制御方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ペロブスカイト型構造
を有する誘電体磁器組成物の誘電特性制御方法に関する
ものである。更に詳しく述べると、ABO3又はA1-x
BO3-x で表される組成物の仮焼品を粉砕する際に、そ
の粉砕条件を選択することによりバリウム(Ba)やス
トロンチウム(Sr)などのアルカリ土類金属イオンの
溶出量を調整し、誘電特性を制御する方法に関するもの
である。この技術は、例えばマイクロ波やミリ波等の高
周波領域で用いる誘電体共振器材料やMIC(マイクロ
波IC)用誘電体基板材料などの製造に利用できる。
【0002】
【従来の技術】マイクロ波やミリ波等で使用する高周波
用誘電体磁器材料として、すでに様々な系列の材料が開
発され使用されている。例えば、Ba(Zn1/3 ,Ta
2/3 )O3 −Ba(Zn1/3 ,Nb2/3 )O3 系、ある
いはBa(Zrx,Zny ,Taz )O7/2-x/2-3y/z
などがあり、これらの組成系においてQ値の高い誘電体
磁器組成物が得られている。
【0003】またBa組成比を化学量論よりも不足させ
ることによって高いQ値をもつ高周波用誘電体磁器組成
物を得る技術もある。その一例としては、Ba(Zn
1/3 ,Ta2/3 )O3 系材料において、Ba組成比がや
や不足の状態とし、仮焼品を乾式法のみによって粉砕
し、成形後、1600〜1700℃で1〜10時間焼成
する方法がある(特開平2−51464号)。
【0004】これら従来の技術では、誘電特性の制御
は、専ら材料の組成比を調整することにより行われてい
た。つまり複数の原料素材の組成比を精密に調整し、再
現性の高い製造工程で製造することにより、所望の誘電
特性が得られるように制御する方法である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】誘電体材料の製造で
は、優れた誘電特性を、再現性よく且つ安価に出せると
いうことが必要である。しかし、上記のような従来の方
法では、はじめに多種類の原料素材を精密に秤量しなけ
ればならず、そのほか原料の純度や製造環境の再現性に
細心の注意を払わねばならないため、時間がかかり、ミ
スも生じやすい欠点がある。
【0006】その上、ABO3 で表され、そのAサイト
にBa,Sr等のアルカリ土類金属イオンを導入したペ
ロブスカイト型構造の誘電体磁器組成物では、その構造
上、製造過程においてAサイトイオンの脱離が起こり易
く、これによって生じる炭酸塩は粉砕粉体の数十倍の粒
径を持ち焼結性を著しく阻害する。このため焼成条件が
厳しくなったり、特性が悪化したりする問題が生じる。
この傾向は、特にBa(Zn1/3 ,Ta2/3 )O3 系あ
るいはBa(Mg1/3 ,Ta2/3 )O3 系などの低損失
材では著しい。これらの低損失材は焼成温度が高いから
である。
【0007】またBa組成比を化学量論より不足させ、
乾式粉砕のみを行う製法では、湿式粉砕を行わないため
炭酸塩は生じないが、粉砕粉体の粒径が大きいため、誘
電特性を向上させるにはやはり高い焼成温度が必要とな
る。
【0008】本発明の目的は、上記のような従来技術の
欠点を解消し、優れた誘電特性を再現性よく且つ安価に
発現させることができ、また同一の仮焼粉体を用いても
発現する誘電特性を自由に制御できる方法を提供するこ
とである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、一般式ABO
3 又はA1-x BO3-x で表されるペロブスカイト型構造
の組成物の仮焼品を粉砕し焼成する方法である。但し、
xはペロブスカイト構造の格子欠陥として許容される範
囲内の値であり、AサイトにBaやSr等のアルカリ土
類金属イオンを導入した組成物である。ここで本発明の
特徴は、前記仮焼品を極性溶媒中で粉砕し、その際の粉
砕条件の選択によりアルカリ土類金属イオンの溶媒への
溶出量を調整し、得られるスラリーを固液分離して液体
分を除去し、固体分のみを乾燥して焼結に用いる点にあ
る。
【0010】ここで粉砕条件の選択とは、粉砕メディア
の選択(ボールミル容器やボールの材質、容器形状、ボ
ール量などの選択)、溶媒の選択(溶媒の種類や温度な
ど溶解度の選択)、粉砕時間の選択などである。使用す
る極性溶媒は分極している分子からなる溶媒であり、例
えば水やアルコールなどがある。本発明は、特にBサイ
トにMg,Zn,Taを導入した組成物の場合に有効で
ある。
【0011】本発明において、xの範囲を各誘電体磁器
組成物においてペロブスカイト構造の格子欠陥として許
容される範囲内の値とする理由は、焼結性が向上する因
子から第2相の生成による因子を除くためである。また
AサイトにBaやSr等のアルカリ土類金属イオンを導
入し、BサイトにMg,Zn,Taを導入するのは、特
にこれらの組成物が高周波領域で有用であり、この領域
で用いる誘電体磁器組成物には厳密な誘電特性の制御が
要求されるし、更にこれらの磁器組成物は難焼結性であ
り、脱離したAサイトイオンにより発生する炭酸塩の引
き起こす焼結性の悪化が問題となるためである。
【0012】
【作用】水やアルコール等の極性溶媒中ではAサイトイ
オンが共存できる。そのため粉砕にそのような極性溶媒
を用いるとペロブスカイト型結晶構造のAサイトイオン
の一部が溶媒中に抜け出る。本発明において、例えばA
1-x BO3-x なる組成の誘電体磁器組成物の仮焼品を水
中で粉砕すると、Aサイトイオンが極性溶媒中に溶出す
るためA1-x-y BO3-x-y +yA(OH)2 となる。こ
のうち第2項のyA(OH)2 はスラリーの液体中に溶
解しており、固液分離でその液体分を取り除くことで除
去され、結局、固体分である第1項のA1-x-y BO
3-x-y のみが残る。従って、粉砕条件を変えるとy量を
制御できることになり、それによって所望の組成が得ら
れ、誘電特性を自由に制御できることになる。
【0013】因に、A1-x-y BO3-x-y +yA(OH)
2 をそのまま空気中で乾燥すると、空気中の炭酸ガスが
A(OH)2 と反応してA1-x-y BO3-x-y +yACO
3 となり、第2項のyACO3 が大きな結晶となって析
出し、それが焼結性を阻害していた。しかし本発明では
液体分を除去してしまうため、そのような難焼結性の析
出物は生じない。
【0014】
【実施例】出発原料として高純度のBaCO3 ,Zn
O,Ta25 ,ZrO2 を用い、次の一般式(1−
m)Ba1-x (Zn1/3 ,Ta2/3 )O3-x+mBa
1-x ZrO3-x で表される組成になるようにmとxの値
を調整し、試料を秤量した。これを樹脂ポットを用いて
純水と共に20時間湿式混合した後、取り出して乾燥
し、1300℃で10時間の仮焼を行った。この仮焼品
130gを、部分安定化ジルコニア製ボール(直径10
mm,重量1kg)と純水450ccと共に樹脂ポット(直径
15cm)に入れ、20〜60時間湿式粉砕した。得られ
たスラリーをろ過して上澄み液をろ過によって分離除去
し、残渣を乾燥した後、バインダを加えて造粒した。こ
れをプレス装置により3000kg/cm2 の圧力を加え、
直径14mm、厚さ6mmの円板に成形し、次いでこの成形
品を酸化雰囲気中で所定温度・所定時間焼成し誘電体磁
器組成物を作製した。その上下両面及び側面を1mm程度
削り取って測定用試料とした。
【0015】各試料について、共振周波数約10GHzに
おける比誘電率εr 及びQ値をポストレゾネータ法によ
り測定した。実験結果を図1〜図3に示す。まず図3か
ら、粉砕時間を変えると粉砕溶媒中へのBa溶出量が変
化し、粉砕時間を長くするほどBa溶出量が増大するこ
とが分かる。上記の条件では、粉砕時間が20時間程度
でBa溶出量は約0.25%、60時間になると0.7
5%に達する。なお、これらの値は分離した上澄み液を
空気中で放置(乾燥)してBaCO3 の形にして重量を
測定し、その値から算出したものである。
【0016】図1はBa溶出量(BaCO3 換算量)に
対するQ値の変化を示し、また図2はBa溶出量(Ba
CO3 換算量)に対する比誘電率εr の変化を示してい
る。Ba溶出量が0.75%以上の領域ではかえって誘
電特性が低下する。X線による観察結果によれば、この
領域では、結晶構造に歪みが生じ第2相(セカンド・フ
ェーズ)が生成されていた。0.5〜0.75%の領域
ではペロブスカイト型結晶構造であり第2相は観察され
なかったが、誘電特性はほとんど一定である。0.5%
以下の領域ではBa溶出量の変化に応じてQ値及び比誘
電率εr が大きく変化している。このことから、この実
施例の場合にはBa溶出量を0.5%以下の領域で粉砕
条件を変えることにより、粉砕により生じる僅かな結晶
構造の変化を引き起こし、それによって誘電特性の制御
が可能となることが分かる。
【0017】上記の実施例では、粉砕時間のみを変えて
いるが、他の粉砕条件(粉砕メディア、溶媒の種類や温
度など)を変えても、同様の効果が得られる。また、そ
れら複数の粉砕条件を同時に変化させてもよい。
【0018】
【発明の効果】本発明は上記のように、仮焼品を極性溶
媒中で粉砕し、その際の粉砕条件の選択によりアルカリ
土類金属のイオンの極性溶媒中への溶出量を調整し、得
られるスラリーから液体分を分離除去する方法であるか
ら、製造途中から誘電特性の修正が可能となる。つまり
同じ仮焼粉体を用いても粉砕条件を変えるだけで、所望
の誘電特性に制御することが可能となる。これによっ
て、より高い誘電特性を、再現性よく且つ安価に出すこ
とが可能となる。また本発明方法では焼結性を阻害する
有害な炭酸塩が混入することはないから、焼結性が悪化
する等の問題が生じることもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】Ba溶出量に対するQ値の変化を示すグラフ。
【図2】Ba溶出量に対する比誘電率εr の変化を示す
グラフ。
【図3】粉砕時間に対するBa溶出量の関係を示すグラ
フ。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平3−261002(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C01G 35/00 C01B 13/14 C01G 9/00

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式ABO3 又はA1-x BO3-x で表
    されるペロブスカイト型構造の組成物(但し、xはペロ
    ブスカイト構造の格子欠陥として許容される範囲内で、
    Aサイトにアルカリ土類金属イオンを導入したもの)の
    仮焼品を粉砕し焼成する方法において、前記仮焼品を極
    性溶媒中で粉砕し、その際の粉砕条件の選択によりアル
    カリ土類金属イオンの溶出量を調整し、得られるスラリ
    ーを固液分離して液体分を除去し、固体分のみを乾燥し
    て焼結に用いることを特徴とする誘電体磁器組成物の誘
    電特性制御方法。
  2. 【請求項2】 BサイトにMg,Zn,Taを導入した
    組成物の仮焼品を使用する請求項1記載の方法。
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JP4356552B2 (ja) * 2003-08-13 2009-11-04 堺化学工業株式会社 ペロブスカイト化合物粉体の製造方法
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