JP3192704B2 - デスチオビオチンからビオチンへの変換方法 - Google Patents

デスチオビオチンからビオチンへの変換方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、酵素反応系でデスチオ
ビオチンをビオチンに変換する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ビオチンはビオチン酵素の補酵素として
脂肪代謝等の酵素反応に関与する動植物にとって必須の
ビタミンである。現在ビオチンは化学合成法によって製
造されているが複雑な工程を要するため、これを代替す
べく各種ビオチン生産菌を用いた醗酵法によるビオチン
の製造方法の開発が行われている。これらの製造方法に
用いられる微生物としては、エシェリヒア(Escherichi
a)属に属するものとして、α−デヒドロビオチン耐性株
(例えば、特開昭61−149091号公報、参照)、
ビオチンによるフィードバック抑制が解除された株(例
えば、特開昭61−202686号公報、参照)、酢酸
産生能の低減した株(例えば、ヨーロッパ特許出願公開
第0316229号明細書、参照)、ビオチン保持欠損
株(例えば、特公表昭64−500081号、参照)が
知られており、また、エシェリヒア属以外に属するもの
としては、バチルス(Bacillus) 属(例えば、特開昭6
2−275684号公報、参照)、セラチア(Serrati
a) 属(例えば、特開平2−27980号公報、参照)
に属する微生物が知られており、これらの特許公報では
遺伝子工学的に改良した微生物を用いたビオチンの製造
方法を公表している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】一般に、前記のような
微生物を用いた醗酵法によるビオチン製造方法において
は、菌体生産にも栄養源が消費されるためビオチンの対
糖収率が低く、また、目的物たるビオチンとともにその
直前の前駆体であるデスチオビオチンが多量に蓄積、残
存する傾向があるため、必ずしも満足できる生産性を達
成しているとは言えない。さらに、ビオチンの回収にあ
たっては、種々のきょう雑物を含む醗酵液からビオチン
を回収しなければならず、回収、精製工程が複雑になる
といった問題点もある。
【0004】これらの醗酵法によるビオチン製造方法の
問題点の多くは、培養系に比べてより規定(定義)され
た反応系、すなわち休止菌体反応系や酵素反応系等を用
いるビオチン製造方法を開発することによって解決する
ことができる。この際、最も重要となるデスチオビオチ
ンからビオチンへの変換反応に関しては、例えば大腸菌
の休止菌体を用いた変換反応の研究(Eisenberg,M.A.
ら、Antimicrobial Agents and Chemotherapy 21,5,(19
82) 、参照) 等がなされてはいるが、硫黄原子の供与
体、補酵素の必要性など反応機構に関して多くの重要な
点が判っていない。さらに、酵素反応系を用いたデスチ
オビオチンからビオチンへの変換方法の開発にあたって
は、デスチオビオチンからビオチンへの変換活性を高く
維持したまま菌体から酵素抽出液(無細胞抽出液)を調
製する方法が未だ全く確立されていないなど解決すべき
問題が多く、休止菌体反応系や酵素反応系を用いてデス
チオビオチンからビオチンへの変換を高い変換効率で実
施することができなかった。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、効率のよ
いデスチオビオチンからビオチンへの変換方法の確立を
めざして研究を進めた結果、ビオチン生産菌体から無細
胞抽出液を調製する際に特定の物質を添加しておくとデ
スチオビオチンからビオチンへの変換活性を高く維持で
きることを見いだし、さらに、これらを用いた酵素変換
反応系に特定の物質を添加すると変換効率をより一層高
めることができることを見いだし本発明を完成した。
【0006】従って、本発明によれば、酵素反応系でデ
スチオビオチンをビオチンへ変換する方法であって、酵
素反応系に用いる酵素活性物質が、ビオチンオペロン中
のbioB遺伝子を有する大腸菌より調製された無細胞
抽出液を含んでなるデスチオビオチンからビオチンへの
変換方法が提供される。
【0007】以下、本発明を具体的に説明する。本発明
に言う無細胞抽出液とは、菌体を破砕した粗抽出液およ
びこれを一般に用いられる酵素蛋白質の分離精製方法に
よって種々の程度に精製した抽出液を含めた概念であ
る。
【0008】無細胞抽出液の調製に用いられる大腸菌と
しては、ビオチンオペロン中のbioB遺伝子が染色体
もしくは組換えプラスミドまたはそれらの両方にふくま
れるものであり、特にbioB遺伝子の発現が増強され
たものが好ましく、例えば、本発明者らがビオチン高生
産株として作出したDRK3323〔pXBA312〕
株(微工研条寄第2117号)またはbioB遺伝子を
誘導型プロモーターの下流につなぎ、菌体増殖後に誘導
剤の添加により発現を行う誘導型プラスミドを有する組
換え菌などが挙げられる。このようなbioB誘導型プ
ラスミドは常法に従って市販の誘導型プロモーターを有
するプラスミドベクター(例えばtaq系誘導型プロモ
ーターを有するプラスミドベクターとしてpKK223
−3、ファルマシア社、などが挙げられる)とビオチン
オペロンを有するプラスミド、例えば前記のDRK33
23〔pXBA312〕株からそれ自身既知のプラスミ
ド抽出方法を用いて得られるpXBA312、から容易
に創製することができる。得られたプラスミドの宿主大
腸菌への導入は常法のカルシウム処理法(Mandel,M.ら、
Journal of Molecular Biology 53,109,(1970)、参照)
により容易に行うことができ、プラスミドベクターが有
する薬剤耐性を指標に該プラスミドを有する組換え菌を
選択取得することができる。こうして本発明に都合良く
もちいることのできる大腸菌を得ることができる。
【0009】なお使用する誘導型プロモーターの種類に
応じて宿主菌に用いる大腸菌を適宜選択することで、よ
り効果的に誘導発現を行うことができる。例えばtaq
系プロモーターを使用する場合は、宿主菌として例えば
大腸菌K−12株JM105(Yanisch-Perron,C. ら、
Gene 33,103,(1985)、参照)を用いることでより効果的
に誘導発現を行うことができる。このようにして得られ
た誘導型プロモーターによって発現が調節されるbio
B遺伝子を担持するプラスミドを有する組換え大腸菌と
しては、例えば、後述する調製方法により得られるJM
105〔pTTB15〕などが挙げられる。
【0010】無細胞抽出液の調製に用いられる大腸菌菌
体は、大腸菌の既知の培養方法によって得ることができ
る。培養に際して用いられる培地としては、炭素源、窒
素源、無機物を含有する合成培地、または天然培地のい
ずれも使用可能である。炭素源としては、グルコース、
グリセリン、フラクトース、シュークロース、マルトー
ス、澱粉、澱粉加水分解液、糖蜜など炭水化物が使用で
きる。また窒素源としてはアンモニア、塩化アンモニウ
ム、燐酸アンモニウム、硫酸アンモニウムなどの各種の
無機および有機アンモニウム塩類、あるいはアミノ酸、
肉エキス、酵母エキス、コーンスティープリカー、カゼ
イン加水分解物、脱脂大豆粕あるいはその消化物などの
天然有機窒素源が使用可能である。天然有機窒素源の多
くの場合は、窒素源であるとともに炭素源にもなりう
る。さらに無機物としては、燐酸第一水素カリウム、燐
酸第二水素カリウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウ
ム、硫酸第一鉄、塩化カルシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、
塩化マンガン、塩化コバルト、モリブデン酸アンモン、
ほう酸などが使用できる。また作出された微生物に抗菌
薬剤耐性が付与されている場合には、該当する抗菌剤を
培地に添加することによって汚染菌の混入を防ぐことが
できる。誘導型プロモーターによって発現が調節される
bioB遺伝子を担持するプラスミドを有する組換え大
腸菌を用いる場合は、培養後菌体が対数増殖期に達した
ときに誘導剤、例えば誘導型プロモーターとしてtaq
系プロモーターを使用した場合はIPTG(イソプロピ
ル−β−D−チオガラクトピラノシド)を添加し、bi
oB遺伝子の発現を誘導した後、培養をさらに数時間継
続して得られる菌体を無細胞抽出液の調製に用いるのが
よい。
【0011】菌体からの無細胞抽出液の調製には、一般
に用いられる菌体破砕法が適用できる。すなわち超音波
破砕、アルミナやガラスビーズによる磨砕、フレンチプ
レスやXプレス装置を用いた破砕などが適用できる。す
なわち、例えば培養菌体を遠心分離機で集菌後、菌体を
生理食塩水などで洗浄し、適当な中性の緩衝液、例えば
トリス塩酸緩衝液、に再懸濁し、酵素の安定化剤として
例えば、ジチオスレイトール(DTT)やフェニルメチ
ルスルフォニルフルオライド(PMSF)を添加した菌
体液を上述の菌体破砕方法で処理すればよい。この際、
デスチオビオチンからビオチンへの変換活性を高く維持
するためにフルクトース1,6−二リン酸(FDP)を
5mM〜20mM濃度となるように菌体液に添加してから菌
体破砕することが望ましい。菌体破砕後、遠心分離機で
菌体残さを除去し、上澄液を無細胞抽出液として用いる
ことができる。
【0012】さらに、この無細胞抽出液を、一般に用い
られる酵素蛋白質の分離精製方法、例えば、硫安沈澱法
や、ゲルろ過等のクロマトグラフィーで処理し、デスチ
オビオチンからビオチンへの変換活性を高めたものを精
製無細胞抽出液として用いてもよい。これらの分離精製
処理に際しても5mM〜20mMのFDPを添加しておくこ
とで変換活性の低下を防ぐことができる。
【0013】本発明でデスチオビオチンからビオチンへ
の変換を行わせる酵素変換反応系は、前記で調製した無
細胞抽出液をそのまま用いるか、適用な緩衝液に再溶解
して構成する。緩衝液にはトリス塩酸緩衝液をはじめと
する本発明の変換方法に悪影響を及ぼさない緩衝液を使
用する。緩衝液のpHは、通常6.8〜7.8に設定する
のが好ましい。
【0014】本発明の変換反応は前記酵素変換反応系に
基質であるデスチオビオチンを添加して行う。デスチオ
ビオチンの添加量は構築した酵素変換反応系によってそ
の最適量が変動するので限定されないが、系に全量が溶
解される量で用いるのがよい。デスチオビオチンはD体
でもDL体でもよい。L体は酵素反応を阻害しない。変
換反応は、温度30℃〜41℃で、30分〜3時間かけ
て行うが、酵素活性が消失しない限りさらに長時間反応
を続けても良い。前記酵素変換反応系にグルコース、ま
たはグルコースからの代謝産物、例えばグルコース6−
リン酸、フルクトース6−リン酸、フルクトース1,6
−二リン酸、ジヒドロキシアセトンリン酸などのうち少
なくともひとつを、特に好ましくはフルクトース1,6
−二リン酸を、1mM〜100mM程度添加することによ
り、より効率よく変換反応を行うことができ、本発明の
効果をより高めることができる。
【0015】さらに、他の微量成分として、Feイオ
ン、KClならびにNAD,NADH,NADPおよび
NADPHからなる群より選ばれる少なくとも1成分、
ならびにS−アデノシルメチオニンおよびL−メチオニ
ンからなる群より選ばれる少なくとも1成分のいずれか
1種、あるいはこれらの各成分を適宜組み合わせて変換
反応系に添加することによりさらに一層変換効率を高め
ることができる。これらの成分の添加量は構築した酵素
変換反応系によって最適量が異なるが、一般的にFe2+
は1mM〜10mM、KClについては1mM以上、NAD,
NADH,NADP,NADPHについては100μM
以上、L−メチオニン、S−アデノシルメチオニンにつ
いては50μM〜500μMとなるように添加するのが
好ましい。
【0016】こうしてデスチオビオチンから変換された
ビオチンの反応液からの回収は、例えば、反応終了後、
加熱処理等により蛋白質成分を変性沈澱させ、遠心分離
によって除去し、上澄液より常法にしたがってビオチン
を抽出精製することにより容易に達成することができ
る。上澄液を活性炭処理、イオン交換樹脂処理した後、
水またはアルコールより再結晶することにより精製ビオ
チンを得ることができる。これらの工程は、例えば醗酵
液中からビオチンを抽出精製する場合に比べ、きょう雑
物の種類と量が少なく、著しく容易に達成されるもので
ある。
【0017】
【実施例】本発明を以下の例によりさらに具体的に説明
するが、本発明をこれらの例に限定することを意図する
ものではない。例1 bioB高発現系プラスミドを有する組換え大腸
菌の創製 プラスミドpXBA312(ヨーロッパ特許出願公開第
0316229号公報、参照)をプラスミドとして保有
する組換え大腸菌DRK3323〔pXBA312〕
(微工研条寄第2117号)を、テトラサイクリン1
2.5mg/Lを添加したLB培地(バクトトリプトン
(ディフコ社製)1%、バクト酵母エキス(ディフコ社
製)0.5%、塩化ナトリウム1%、水酸化ナトリウム
でpH7.2に調整)中で37℃一昼夜振盪培養して菌体
を得、アルカリ抽出法(Biroboim,H.C.ら、Nucl.Acid.Re
s.,7,1513,(1979)、参照) を用いてプラスミドDNA
pXBA312を採取した。
【0018】得られたプラスミドDNA pXBA31
2 1μgを制限エンドヌクレアーゼNcoIで切断
し、65℃10分間の熱処理を行ない、エタノール沈澱
によりDNAを回収した。DNA断片を大腸菌DNAポ
リメラーゼ緩衝液(500mMトリス塩酸pH7.5、67
mM MgCl2、10mMメルカプトエタノール)中それ
ぞれ500μMのdCTP,ATP,dTTP,dGT
P、および大腸菌DNAポリメラーゼクレノーフラグメ
ントを加え、37℃30分反応させた。次に65℃10
分間加熱することにより反応を停止し、エタノール沈澱
によりDNAを回収した。得られたDNAの末端に5′
−リン酸化EcoRIリンカー(宝酒造社)を宝酒造社
製DNAライゲーションキットを用いて連結させ、その
後エタノール沈澱によりDNAを回収した。次に制限エ
ンドヌクレアーゼEcoRIで切断し、低温ゲルアガロ
ース(シグマ社製タイプIV)を用いた1%アガロースゲ
ル電気泳動を行ないエチジウムブロミドで染色後約9kb
のDNA断片を前述の方法により分離採取した。次にこ
の断片を制限エンドヌクレアーゼPvuIIで切断し、
1%の低温ゲルアガロースで電気泳動を行ない、エチジ
ウムブロミドで染色後、約1.7kbのDNA断片を切り
取り、70℃で5分間加熱後にTE緩衝液(10mMトリ
ス塩酸緩衝液pH8.0、1mM EDTA)飽和フェノー
ルをほぼ同量加え、よく混合し、遠心分離により水相を
得た。この水相に2倍容のエタノールを加えて完全なb
ioB遺伝子を含むDNA断片を沈澱採取した。
【0019】一方、誘導型のtaqプロモーターを有す
るプラスミドベクターpKK223−3(ファルマシア
社)1μgを2つの制限エンドヌクレアーゼ、Sma
I,EcoRIで切断し、1%の低温ゲルアガロースで
電気泳動を行ない、エチジウムブロミドで染色後約4.
6kbのDNA断片を切り取り、70℃で5分間加熱後に
TE緩衝液(10mMトリス塩酸緩衝液pH8.0、1mM
EDTA)飽和フェノールをほぼ同量加え、よく混合
し、遠心分離により水相を得た。この水相に2倍容のエ
タノールを加えてtaqプロモーターを有するベクター
DNA断片を沈澱採取した。
【0020】これらの処理により得られた2つのDNA
断片を宝酒造社製DNAライゲーションキットを用いて
連結した。このライゲーション反応液を用いて、大腸菌
JM105株を形質転換した。形質転換は、カルシウム
法に準じて行った。アンピシリン50mg/Lを含むLB
固形培地上で生育した形質転換株JM105〔pTTB
15〕を本発明で用いる菌株とした。
【0021】例2 菌体の調製 培地−A リン酸二ナトリウム(12水和物) 17.6 g/L リン酸−カリウム 2.4 g/L 硫酸アンモニウム 4.0 g/L 酵母エキス 10.0 g/L ペプトン 10.0 g/L 硫酸第一鉄(7水和物) 0.1 g/L 塩化カルシウム(2水和物) 0.05g/L 塩化マンガン(4水和物) 0.05g/L 硫酸マグネシウム(7水和物) 0.1 g/L グルコース 5.0 g/L
【0022】−80℃で凍結保存していたい組換え大腸
菌JM105〔pTTB15〕株を500ml容量坂口フ
ラスコ(柴田ハリオ社)中20mlの培地−Aに接種し、
37℃、125ストロークス/分で12〜14時間振と
う培養したものを前培養とした。この前培養20mlを5
L容量ミニジャーファメンター(丸菱バイオエンジ社)
中2Lの培地−Aに植菌し、本培養を開始した。培養条
件は温度37℃、通気量2vvm 、攪拌速度500rpm と
した。本培養開始後1〜2時間経過し菌体濃度(OD6
60)が2.0程度まで菌体が増殖した時点でIPTG
2mMを添加しtaqプロモーターの誘導を行った。IP
TG添加後3〜4時間経過し菌体濃度(OD660)が
12.0程度まで達した時点で培養を終了し、得られた
培養液を無細胞抽出液の調製材料として用いた。乾燥菌
体量は菌体濃度(OD660)より算出した。本菌株の
場合、日本分光社の分光光度計UVIDEC−220B
で測定すると、1.0 OD660=0.48 g乾燥
菌体/Lの換算式が成立した。
【0023】例3 無細胞抽出液の調製 以下の操作は全て氷水中あるいは4℃で行った。例2で
調製した培養液2Lを6000rpm で10分間遠心分離
して集菌後、培地と等量の0.75%NaCl溶液で2
回洗浄し、200mL(培養液の1/10容量)の0.1
Mトリス塩酸緩衝液(pH7.5、2mM DTT、0.2
mM PMSFを含む)に再懸濁した。
【0024】この菌体懸濁液120mLを300mL容量の
ビーカーに移し、氷浴中で懸濁液の温度が10℃以上に
上昇しないよう注意しながら、超音波破砕装置(ブラン
ソン社、SONIFIERモデル450)を用いて菌体
を超音波破砕した。得られた菌体破砕液を遠心チューブ
に移し、14000rpm、4℃で30分間遠心分離し、
上澄液を無細胞抽出液とした。菌体破砕液の粘度が高く
1回の遠心分離で完全に細胞残さが除去できない場合は
上澄液について遠心分離操作を繰り返した。無細胞抽出
液は遠心チューブ等に小分けして−80℃で凍結保存し
た。凍結保存した無細胞抽出液は6カ月間以上変換活性
を保持していた。無細胞抽出液の蛋白質濃度は蛋白質定
量キット(ピアス社、製品コード23225)を用い、
アルブミン(BSA)で検量線を作成して求めた。調製
した無細胞抽出液の蛋白質濃度は約15〜25mg/mLで
一定していた。
【0025】例4 精製無細胞抽出液の調製 a)ゲルろ過による無細胞抽出液の精製 セファデックスG−25充填カラム(ファルマシア社、
PD−10)を0.1Mのトリス塩酸緩衝液(pH7.
5)緩衝液で十分洗浄後、例3で調製した無細胞抽出液
2.5mLをカラムに添加し、3.5mLの同緩衝液で溶出
させて精製画分を得た。
【0026】b)硫安沈澱法による無細胞抽出液の精製 無細胞抽出液10mLをビーカーに移し、マグネットスタ
ーラーで攪拌しながら等量の飽和硫酸アンモニウム溶液
を除々に加えた。さらに1L当り300gの固形硫酸ア
ンモニウム(乳鉢中で細粉化したもの)を徐々に加え硫
安濃度を90%にした後、4℃で30分間低速攪拌して
平衡化した。これを12000rpm 、4℃で15分間遠
心分離し、上澄を除去して硫安沈澱画分を得た。沈澱画
分を2mLのトリス塩酸緩衝液(pH7.5)に懸濁し、セ
ルロース製透析チューブ(ユニオンカーバイド社)に移
して2Lの0.1Mトリス塩酸緩衝液(pH7.5)を用
いて2時間づつ、2回緩衝液を交換して透析を行った
後、透析チューブ内の溶液を回収して精製画分を得た。
【0027】例5 デスチオビオチンからビオチンへの
変換反応 例3あるいは例4によって調製された無細胞抽出液を酵
素活性物質として用いてデスチオビオチンからビオチン
への変換反応を行った。変換反応は1.5mL容量のマイ
クロ遠心チューブ内で行い、0.1mMトリス塩酸緩衝液
(pH7.5)を基本組成として、最終反応液量が100
〜200μLとなるように無細胞抽出液や基質溶液等を
添加し、35℃に設定した恒温槽中で30分〜5時間静
置して行った。反応系にデスチオビオチンを50μMと
なるように添加することで反応を開始させた。反応終了
後、直ちに100℃で5分間加熱して酵素を失活させ
た。12000rpm で5分間遠心分離後、上澄液50μ
Lをラクトバシラス プランタラムを用いたバイオアッ
セイの試料として供し、生成したビオチン量を算出し
た。変換活性は1分間に無細胞抽出液の蛋白質1mg当た
りに生成するビオチン量として表した。
【0028】例6 グルコース、またはグルコース代謝
産物の添加効果 例5に従ってデスチオビオチンからビオチンへの変換反
応を行う際、反応系にグルコースを添加するとビオチン
変換活性が増加する現象を見いだした。用いた無細胞抽
出液は例3に従って調製したが、この無細胞抽出液には
デスチオビオチンからビオチンへの変換に関与する酵素
以外に解糖系などのグルコース代謝に関与する酵素も含
まれており、添加したグルコースがこれらの酵素により
代謝されてビオチン変換活性を増加させることが考えら
れたので、各種グルコースの代謝産物を変換反応系に添
加してビオチン変換活性への影響を調べた。結果を表1
に示した。
【0029】
【表1】
【0030】表1から明らかなように、グルコース、お
よびグルコース6リン酸、フルクトース6リン酸、フル
クトース1,6二リン酸(FDP)、ジヒドロキシアセ
トンリン酸、D−グリセルアルデヒド3−リン酸などの
グルコースの代謝産物を変換反応系に添加すると、無添
加時に比べてビオチン変換活性が増加することがわか
り、特にFDPの添加効果が著しいことがわかる。
【0031】例7 FDPによる変換活性の安定化 例3に従って無細胞抽出液を調製する際に、FDPを5
mM濃度となるように添加して調製した無細胞抽出液と、
対照として添加しないで調製したものを、それぞれ4℃
で18時間放置し、例5に準じて変換活性を測定した。
いずれの場合も、変換活性測定時に変換反応系にFDP
を5mM濃度となるように添加した。結果を表2に示し
た。
【0032】
【表2】
【0033】表2から明らかなように、調製の際にFD
Pを添加しなかった無細胞抽出液のビオチン変換活性は
FDPを添加して調製した場合の1/4以下であった。
また、例4b)において硫安沈澱を行う際に、最終濃度
20mMとなるようにFDPを添加してから硫安沈澱処理
をして調製した精製無細胞抽出液と、FDPを無添加で
調製した精製無細胞抽出液のビオチン変換活性を比較し
た。いずれの場合も、変換活性測定時に変換反応系にF
DPを5mM濃度となるように添加した。結果を表3に示
した。
【0034】
【表3】
【0035】表3から明らかなように、FDPを添加し
ておくことで精製工程中の変換活性の低下を顕著に防止
することができる。以上の結果から、以降の実施例に用
いた無細胞抽出液の調製時にはFDPを添加した。
【0036】例8 Fe2+イオンの添加効果 金属イオンのビオチン変換活性に対する影響を調べるた
め、FDPを添加して例3に従って調製した無細胞抽出
液を用い、各種金属イオンを変換反応系に添加して、例
5に示した方法に準じてデスチオビオチンからビオチン
への変換反応を行った。変換活性測定時には変換反応系
にFDPを5mM濃度となるように添加した。結果を表4
に示した。
【0037】
【表4】
【0038】表4から明らかなようにFeイオンの添加
は顕著にビオチン変換活性を増加させた。
【0039】例9 KCl,NAD,NADP,S−ア
デノシルメチオニン、L−メチオニンの添加効果 さらに塩類、補酵素、アミノ酸など各種微量成分のビオ
チン変換活性に対する影響を調べるため、FDPを添加
して例4b)に従って精製した精製無細胞抽出液を用
い、各種微量成分を変換反応系に添加して、例5に示し
た方法に準じてデスチオビオチンからビオチンへの変換
反応を行った。塩類、補酵素、アミノ酸の添加効果をそ
れぞれ表5、表6、表7に示した。
【0040】
【表5】
【0041】
【表6】
【0042】
【表7】
【0043】いずれの場合も変換活性測定時に変換反応
系にFDPおよびFe2+イオンをそれぞれ5mM濃度とな
るように添加した。またビオチン変換活性を顕著に増加
させた添加物について相乗効果を調べた結果を表8に示
した。
【0044】
【表8】
【0045】表4、表5、表6、表7、表8から明らか
なようにFe2+イオン,KCl,NAD,NADH,N
ADP,NADPH,S−アデノシルメチオニン,L−
メチオニンを添加するとビオチン変換活性が著しく増加
することがわかる。
【0046】
【発明の効果】デスチオビオチンからビオチンへの効果
的な変換方法が提供される。無細胞抽出液を用い、さら
に変換反応系にフルクトース1,6−二リン酸、鉄イオ
ン等を添加することでさらに前記変換の効率を高めた変
換方法が提供される。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI (C12P 17/18 C12R 1:19) (56)参考文献 特表 昭64−500081(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12N 17/18 BIOSIS(DIALOG) WPI(DIALOG)

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 酵素反応系でデスチオビオチンをビオチ
    ンへ変換する方法であって、酵素反応系に用いる酵素活
    性物質が、ビオチンオペロン中のbioB遺伝子を含む
    がビオチンオペロン中の他の活性な遺伝子を含まないD
    NA断片を挿入したベクターにより形質転換した大腸菌
    より調製された無細胞抽出液を含んでなる、デスチオビ
    オチンからビオチンへの変換方法。
  2. 【請求項2】 酵素反応系にグルコース、またはグルコ
    ースからの代謝産物のうち少なくとも一つを添加するこ
    とを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 グルコースからの代謝産物がグルコース
    6−リン酸、フルクトース6−リン酸、フルクトース
    1,6−二リン酸およびジヒドロキシアセトンリン酸で
    ある請求項2記載の方法。
  4. 【請求項4】 酵素反応系にFeイオン、KClならび
    にNAD,NADH,NADPおよびNADPHからな
    る群より選ばれる少なくとも1成分、ならびにS−アデ
    ノシルメチオニンおよびL−メチオニンからなる群より
    選ばれる少なくとも1成分のいずれか1種、あるいはこ
    れらの各成分を適宜組み合わせて添加することを特徴と
    する請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. 【請求項5】 無細胞抽出液の調製に際してフルクトー
    ス1,6−二リン酸を添加しておくことを特徴とする請
    求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. 【請求項6】 大腸菌が高発現bioB遺伝子を担持す
    るプラスミドを含有する請求項1〜5のいずれかに記載
    の方法。
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