JP3191238B2 - フィンガカッタ - Google Patents

フィンガカッタ

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JP3191238B2
JP3191238B2 JP28677695A JP28677695A JP3191238B2 JP 3191238 B2 JP3191238 B2 JP 3191238B2 JP 28677695 A JP28677695 A JP 28677695A JP 28677695 A JP28677695 A JP 28677695A JP 3191238 B2 JP3191238 B2 JP 3191238B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は木材の接合の一種で
あるフィンガジョイントのためのフィンガ継手加工用の
回転切削工具、すなわちフィンガカッタに関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】所定の厚み及び幅に製材した木材の木口
どうしをフィンガジョイントして集成材を作る木材産業
が、木材資源の有効利用が重要な課題となった今日、盛
んになってきた。従来、このフィンガジョイントの継手
となるフィンガ継手の加工用として超硬合金や高速度工
具鋼を切刃母材としたろう付式又は替刃式のフィンガカ
ッタが用いられてきたが、更に耐久性を改善するため、
切刃の逃げ面の表面に耐摩耗性のあるクロム又はクロム
窒化物,炭化物,炭窒化物等からなる硬質膜を被覆した
フィンガカッタが考えられた。
【0003】この逃げ面に被覆された硬質膜による耐摩
耗性の向上や切削時の自己研磨特性等によって、硬質膜
を被覆しないカッタに比べてカッタ寿命がのびた。尚、
自己研磨特性とは、切刃を形成する逃げ面又はすくい面
の何れかに被覆した硬質膜を残して硬質膜のない面を切
削時に選択的に摩耗させ、硬質膜が鋭利な切刃として維
持される特性である。本発明では逃げ面に硬質膜を被覆
し自己研磨特性を得ている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来の技術で述べた切
刃の逃げ面の表面に硬質膜を被覆したフィンガカッタに
よるフィンガ継手加工の場合、側切刃は木材を横切削に
近似する形で切削するのに対し、外周切刃は木材繊維を
剪断する木口切削である。また外周切刃は側切刃に対し
て1刃当たりの切削厚みが5〜12倍と厚い。このた
め、切刃部先端幅が0.6mmの一般的な切刃の場合、
逃げ面に被覆された硬質膜の膜厚が0.005mm以下
であると、外周切刃付近の硬質膜の消失(摩耗)が側切
刃より早くなり、硬質膜の消失が生じると外周切刃の摩
耗は非常に早く進む。結果として木材のフィンガジョイ
ント部に嵌合不良が生じ、外周切刃付近の硬質膜の耐久
性は側切刃付近の硬質膜の耐久性に比較し十分であると
は言えない。また、従来技術では外周逃げ面と側逃げ面
とは屈折角75〜85°で直接連続している。
【0005】しかし、逃げ面の硬質膜の膜厚を0.00
5mmを越えて厚くしていくと、被覆後に稜線の硬質膜
にクラックや剥離が生じ易くなる。稜線の硬質膜にクラ
ックや剥離があると切削中の早い段階で稜線から剥離が
外周切刃や側切刃に広がり摩耗も急速に進行し、カッタ
寿命は被覆コストの割には十分であるとは言えない。本
願明細書では、「稜線」とは外周逃げ面と側逃げ面との
二面が形成する「稜」を指すものとする。
【0006】実際に超硬合金又は高速度工具鋼等の切刃
母材からなる前記の一般的な切刃の逃げ面にCr,Cr
N,Cr(C,N)を物理蒸着(PVD)法で逃げ面の
膜厚が0.005mm以上となるように被覆し、被覆後
に炉から出したものを詳細に観察すると、幾つか被覆し
たうち一部の切刃の稜線の硬質膜に微細なクラックや硬
質膜の剥離が認められた。また膜厚が0.010mm以
上となるように被覆した稜部切刃付近にはこれらのクラ
ックや剥離が全数に認められた。
【0007】このように稜線の硬質膜にクラックの生じ
た状態のフィンガカッタで木材にフィンガ継手加工を行
うと、切削を進めるうちにまず稜線のすくい面側、すな
わち外周切刃と側切刃との交点から硬質膜の剥離が生じ
た。該交点に剥離が生じると、該交点の摩耗が急速に進
行し切削性が悪くなり、これにより切削抵抗や切削熱が
局部的に大きくなり、この部分から更に急速に硬質膜の
剥離と切刃の摩耗が外周切刃方向や側切刃方向に広がる
ことが分かった。
【0008】以上の結果でも分かるように稜線の硬質膜
にクラックや剥離が生じると、切削中に切刃摩耗が早く
進行し切れ味が低下し、カッタ寿命を十分に延ばせない
という問題を有している。
【0009】本発明は従来の技術の有するこのような問
題点に鑑みなされたものであり、その目的とするところ
は、フィンガカッタの逃げ面に被覆された硬質膜が稜線
から剥離するのを防止し、また側切刃と外周切刃との摩
耗の差を少なくして、カッタ寿命を延長することができ
るフィンガカッタを提供しようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明のフィンガカッタ
は、すくい面には形成されず逃げ面の表面に直接又は中
間被覆膜を介して形成される最も外側の被覆硬質膜がク
ロムまたはクロムの窒化物,炭化物,炭窒化物或いはこ
れらの二以上の混合物からなる硬質膜であるフィンガカ
ッタにおいて、外周逃げ面と側逃げ面との間に稜部逃げ
面を、外周切刃と側切刃との間に稜部切刃を形成し、硬
質膜未被覆時の切刃部先端幅をT、稜部逃げ面及び外周
逃げ面の硬質膜の膜厚をtcとするとき、切削に係わる
範囲の側逃げ面の硬質膜の膜厚は最も薄い部分で0.0
02〜0.010mm、稜部逃げ面及び外周逃げ面の硬
質膜の膜厚は少なくとも0.008×Tで側逃げ面の硬
質膜の膜厚と同じ厚みか又はそれより厚く、すくい面側
から回転面及び外周逃げ面に平行な方向に見た切刃の幾
何形状は、直線的切刃又は曲率半径Rが5×tcを下限
とする曲線的切刃又はこれを組み合わせた切刃が連続
し、隣接する切刃相互の成す屈折角が2.6(tc/
T)-0.5(°)を上限とするものである。
【0011】上述のように構成されたフィンガカッタ
は、逃げ面にフィンガカッタとして都合の良い硬質膜の
厚さと、硬質膜の剥離が生じ難い切刃の幾何形状を形成
することができ、カッタ寿命を延長することができる。
なお、本明細書では、各逃げ面の硬質膜の膜厚は切刃と
して作用する部分の厚みを基準とする。
【0012】
【発明の実施の形態】以下本発明の実施の形態を図面に
もとづいて説明する。図1はフィンガガッタの切刃部分
と被削材(木材)のフィンガ継手部分とを示す図で、フ
ィンガカッタは木材Wの木口(端部)に同形状の多数の
フィンガを一定ピッチ間隔に削成するために同形状かつ
同切削径の単位カッタを複数枚積層したものである。
【0013】切刃部分は高速度工具鋼又は超硬合金を切
刃母材とした替刃式で、切刃は両側の側切刃1aと外周
の外周切刃1bとからなり、側切刃1aに連なる側面は
側逃げ面1cに形成され、外周切刃1bに連なる側面は
外周逃げ面1dに形成されていて、紙面に現れている面
はすくい面である。
【0014】この外周逃げ面及び側逃げ面の少なくとも
切削に係わる範囲d(側切刃1aの最も回転軸心寄りに
切削に係わらない部分があり、その部分の膜厚は考慮す
る必要はなく、切削に係わる範囲dにおける部分のみ考
慮する)にはクロム又はクロムの窒化物,炭化物,炭窒
化物或いはこれらの二つ以上の混合物からなる硬質膜2
が蒸着されている。
【0015】稜線の硬質膜に生じるクラックや剥離に及
ぼす硬質膜2の膜厚の影響を確認するために、硬質膜未
被覆時の切刃部先端幅Tを0.3〜1.5mmの範囲で
変化させて予備実験1を行った。その結果、硬質膜2の
クラックや剥離は未被覆時の切刃部先端幅Tに依存し、
膜厚を0.008×Tを越えて厚くすると従来の技術に
述べたように硬質膜の被覆後又は切削中に稜線の硬質膜
の剥離が生じ易くなることがわかった。
【0016】次に、カッタ寿命を延ばすことのできる側
逃げ面の硬質膜の最適厚みを決定するため次の予備実験
2を行った。切刃部先端幅Tが0.6mm、側切刃の傾
斜角αが7度である替刃式フィンガカッタの高速度工具
鋼製の複数の替刃上にCrN硬質膜を側逃げ面の膜厚t
sが0.002〜0.012mmとなる範囲で種々の厚
みに物理蒸着(PVD)し、すくい面から硬質膜を除去
するためにすくい面を研磨した替刃1Aを、図2に示す
ように外周切刃径Dが160mmとなるテスト用フィン
ガカッタボディ3に1刃取り付け、ベイマツ材Wをフィ
ンガ継手加工としては一般的な切削条件である回転数N
=5,000rpm、送り速度F=7.5m/分、深さ
d=11.4mm(切削に関わる範囲dに相当)、側切
刃方向の切込み量e=0.2mmで側切刃1aのみで切
削し(図2)、側切刃1aの摩耗状態や正味切削動力の
変化を調べた。
【0017】図3(a)は本実験の側逃げ面の硬質膜の
膜厚tsの違いによるベイマツ材の木口切削長と正味切
削動力比との関係を示すグラフで、各試料の切削初期の
動力はほぼ等しかったので切削初期の正味切削動力を1
として表した。図3(b)〜(d)は硬質膜の厚みの違
いによる側切刃の摩耗状態の違いを示す図である。
【0018】側逃げ面の硬質膜(CrN)の膜厚tsが
0.002mmである試料Aの場合は、側切刃付近の硬
質膜を残しすくい面の硬質膜近くが選択的に摩耗する自
己研磨特性が現れ、側切刃の作用をする硬質膜が切刃母
材から鋭利に突出するが、硬質膜の膜厚が薄いため切削
中に容易に硬質膜は脱落した。一度硬質膜が脱落する
と、その後はすくい面に自己研磨特性が現れず、そのま
ま急速に側面の摩耗が進行した。
【0019】この現象は正味切削動力比の変化によく現
れている。すなわち初期には側切刃付近の硬質膜の摩耗
により動力が少し上昇するが、自己研磨特性によりすく
い面に正のすくい角を形成すると動力は低下し、その後
硬質膜の脱落が生じると動力は急激に上昇した。
【0020】また、膜厚が0.005mmの試料Bの場
合は、硬質膜の摩耗による側切刃の後退と自己研磨特性
とによるすくい面のえぐれの形と量とがうまくバランス
した。
【0021】正味切削動力比は、初期の硬質膜の摩耗に
より上昇するが、その後は自己研磨特性により側切刃に
鋭利さが回復するとともに動力が低下し、この状態は硬
質膜と切刃母材すくい面の摩耗とがバランスしているた
め長く続いた。そしてすくい面のえぐれが深くなって切
粉の排出が窮屈になってくると、次第に動力が上昇し
た。
【0022】また膜厚が0.012mmの試料Cの場合
は、側切刃の木材平均切削厚み(切粉の厚みに相当)の
割に膜厚が厚すぎるため自己研磨特性は生じ難く、側切
刃付近の硬質膜の摩耗が徐々に進行するだけで、自己研
磨特性による側切刃の再生が生じないため、動力は単調
に増加した。
【0023】正味切削動力比が初期の正味切削動力比の
2倍になった時点を寿命とし、硬質膜のない超硬合金製
の替刃の寿命を1として、側逃げ面の硬質膜の膜厚ts
と寿命比との関係を求めたグラフが図4である。
【0024】仮に、CrNの硬質膜を被覆した高速度工
具鋼替刃を使い捨てと考えると、替刃コストを硬質膜の
ない超硬合金製切刃のろう付式フィンガカッタのコスト
より低くするには、寿命比は5倍がボーダーラインとな
る。図4より側逃げ面の硬質膜の膜厚を0.002〜
0.010mmにすれば、硬質膜のない超硬合金製切刃
に対し寿命比は5倍を越すことが分かる。最も好ましい
膜厚は0.005mm付近で、寿命比は13倍にも達す
る。
【0025】また横切削に近い側切刃1aに対し木口切
削である外周切刃1bの1刃当たりの平均切込み量は5
倍以上となる。そのため、外周逃げ面の硬質膜の膜厚は
少なくとも側逃げ面の硬質膜の膜厚と同じ厚みか又はそ
れより厚くする必要がある。
【0026】しかしながら、稜線付近の逃げ面の硬質膜
の膜厚を0.008×T(図3の実験の場合は0.00
5mm)から厚くしていくと、既に述べたように稜線の
硬質膜に微細クラックや剥離が生じ易くなる。
【0027】そこで、稜線での硬質膜の微細クラックや
剥離を防止のための予備研究1を行った。文献〔『イオ
ンプレーテイング(PVD)法によって超硬合金上に被
覆したTi(C,N)皮膜に生じる残留圧縮応力につい
て』日本金属学会誌,49(9).773−778.1
985〕によると、平面基板上に温度300℃で物理蒸
着被覆すると、膜に約400kgf/mm2 の残留圧縮
応力が発生する。これは主に成膜時に発生した膜自体の
残留応力である。
【0028】このデータを用いてフィンガカッタ切刃の
逃げ面に被覆した硬質膜に400kgf/mm2 の圧縮
応力が作用したモデルを考え有限要素法(FEM)解析
を行った。モデルとして、切刃部先端幅Tを有する外周
逃げ面とその幅方向の両側下方向に各々側面逃げ面を外
周逃げ面に対して直角に連続すなわち面間の屈折角が9
0°となるように配置し、前記外周逃げ面と側面逃げ面
とで稜線を形成したものを想定した。
【0029】この三面で構成されるモデルの外面に膜厚
tが0.017×Tの硬質膜を被覆し400kgf/m
2 の圧縮応力を残留させることで、稜線付近の硬質膜
に作用する応力状態を解析した結果、稜線を構成する各
面上の硬質膜は互いに突っ張り合い、稜線でせり上がる
方向に変形しようとし、稜線付近の硬質膜の内面に最大
120kgf/mm2 の引張応力が発生した。硬質物質
は引張応力に弱いので、この応力レベルでは稜線の硬質
膜に微細クラックが発生することになる。
【0030】そこで、クラックが発生し難い稜線の形状
を得るための予備研究2として、先のモデルを基に、直
角に連なる外周逃げ面と側逃げ面とからなる稜線に面取
りを施すことで稜部逃げ面1eを形成した幾何形状を幾
つかモデル化してそのFEM解析を行った。先ず、図5
(a)に示すように稜線にアール面取りを施す。すなわ
ち二面間に屈折線が生じないように双方の面間に曲率半
径Rのアール面を施し、二面がスムーズに連続するモデ
ルを考え、種々の膜厚比t/Tに対する曲率半径比R/
Tと硬質膜の稜部付近に発生する最大主応力σ1とを解
析した。その関係を示すものが図5(b)である。
【0031】図5(b)において、膜厚比t/Tが小さ
いほど、また曲率半径比R/Tが大きい程に最大主応力
σ1は小さくなった。すなわち、膜厚比t/Tが小さく
て曲率半径R/Tが大きい場合は硬質膜の剥離に関し安
全域である。PVD法による蒸着実験により、膜厚比t
/Tが0.008で曲率半径比R/T=0の場合、およ
び膜厚比t/Tが0.017で曲率半径比R/Tが0.
08の場合には稜部逃げ面1eの硬質膜に剥離が実際に
認められなかったことから、硬質膜に発生する最大主応
力σ1が60kgf/mm2 以下であれば、硬質膜にク
ラックが発生しないことが類推できる。
【0032】最大主応力σ1が60kgf/mm2 にお
ける膜厚比t/Tと曲率半径比R/Tとの関係を示すの
が図5(c)で、或る膜厚tで膜の剥離が生じない最小
の曲率半径比R/Tである臨界曲率半径比(R/T)c
rは(R/T)cr=5×(t/T)で表される。
【0033】従って、外周切刃の耐久性を良くするため
に膜厚比t/Tが0.008以上でありながら、かつ稜
部逃げ面1cの硬質膜に剥離が発生しないようにするた
めには、アール面の曲率半径比R/Tは稜部逃げ面の膜
厚比t/Tの5倍以上にすればよい。また、このことか
ら曲率半径比R/Tが0.5では膜厚比t/Tが0.1
を越えなければ膜にクラックが発生せず、蒸着後又は切
削による膜の剥離は生じないことも分かった。
【0034】次に、図6(a)に示すように稜線にC面
取り(二面間の屈折角45°)の稜部逃げ面1eを形成
し、膜厚比t/Tが0.017の硬質膜で被覆した場合
に、45°に屈折した部分の硬質膜に発生する最大主応
力σ1との関係を示すものが,図6(b)である。
【0035】図6(b)より分かるようにC面取り比C
/T(刃先部先端幅Tに対する面取りの大きさCの比)
を変化させても、45°に屈折した部分に発生する最大
主応力σ1の大きさはさほど変化せず、C面取りが施さ
れていない場合とほぼ同じの高レベルのままである。従
って、屈折角45°のC面取りは効果がないことが分か
る。
【0036】次に図7(a)に示すように稜線に屈折角
θの種々異なる面取りの稜部逃げ面1eを形成し、膜厚
比t/Tが0.017の硬質膜で被覆した場合に、屈折
角θの屈折部付近の硬質膜に発生する最大主応力σ1に
ついて解析した。この場合の面取り比Q/T(刃先部先
端幅Tに対する面取りの大きさQの比)は0.17の一
定値にした。図7(b)はその結果を示すものである。
【0037】図7(b)において、屈折角θが90°の
場合(前述した稜線にアール面取り又はC面取りを施さ
ない場合と同じ)の最大主応力σ1は120kgf/m
2である。屈折角を90°から小さくしていくと、最
大主応力σ1は一旦少し増加した後減少する。膜厚比t
/Tが0.008,0.033及び0.100について
も同様に解析した結果、膜厚比t/Tを大きくしていく
と同じ屈折角θで最大主応力σ1は大きくなるが、屈折
角θと最大主応力σ1の関係は同じ傾向であり、最大主
応力σ1が60kgf/mm2 以下となるのは屈折角θ
が2.6×(t/T)-0.5(°)以下の場合であること
が分かった。よって、臨界屈折角θcrはθcr=2.6×
(t/T)-0.5(°)で表される(図7c)。
【0038】以上、図6,図7の結果より、膜厚比t/
Tを0.008以上にしても稜部逃げ面1eの硬質膜に
容易にクラックが発生せず、かつ容易に剥離しないよう
にフィンガカッタの逃げ面を形成すると、硬質膜未被覆
時の稜部切刃1fのすくい面側から回転面及び外周逃げ
面に平行な方向に見た幾何形状は図8に示す以下の3通
りとなる。
【0039】(1)一つの曲線的切刃で構成される稜部
切刃1fの任意位置での曲率半径比R/Tの大きさは稜
部逃げ面1eに被覆される硬質膜の膜厚比t/Tの5倍
が下限であり、側切刃及び外周切刃に連なる屈折部分
(○印部分)の屈折角は2.6×(t/T)-0.5(°)
が上限であること〔図8(a)〕。
【0040】(2)複数の直線的切刃の連続で構成され
る稜部切刃1f及び側切刃1a,外周切刃1bの各切刃
間の屈折部分(○印部分)の屈折角は2.6×(t/
T)-0.5(°)が上限であること〔図8(b)〕。
【0041】(3)曲率半径比R/Tの大きさが稜部逃
げ面1eに被覆される硬質膜の膜厚比t/Tの5倍が下
限である曲線的切刃と直線的切刃の組合せで構成される
稜部切刃1f及び側切刃1a,外周切刃1bの各切刃間
の屈折部分(○印部分)の屈折角は2.6×(t/T)
-0.5(°)が上限であること〔図8(c)〕。
【0042】但し、上記(1),(2),(3)におい
て、フィンガ継手の形状から、基本的には硬質膜側が凹
となる曲線的切刃または切刃間の屈折は含まないが、側
切刃のみ僅かな凹としてもフィンガ継手の形成はでき
る。尚、2個所の稜部逃げ面を大きくすることで、回転
軸に平行な外周逃げ面が消失することも考えられるが、
本明細書では説明の都合上、このような場合では幅がゼ
ロの外周逃げ面が存在するものとする。
【0043】上述した幾何形状に稜部切刃1fを加工す
る例を以下に示す。 (1)砥石による研削 (2)砥粒粉中での相対運動 (3)ブラッシング (4)ブラスト加工
【0044】以上の予備実験・研究の結果にもとづいて
次のようなフィンガカッタの替刃を作成した。高速度工
具鋼製の替刃1Aを図9に示すように回転軸4に取り付
け、すくい面及び切刃を回転方向後側になるように替刃
の背面方向に回転させながら砥粒粉5中を通過させるこ
とにより稜部切刃を加工し、図10に示すように稜部切
刃1fを外周切刃1bとともに楕円弧に形成した。この
ようにして稜部切刃1fの最小曲率半径が0.05m
m,0.10mm,0.15mmで屈折角0°の3種類
の替刃1Aを作った。ここで切刃部先端幅Tは0.6m
mである。
【0045】この替刃1AにPVD法により逃げ面に硬
質膜を形成した。切削に係わる範囲dにおける側切刃1
aの外周切刃1bから最も離れた部分での側逃げ面の硬
質膜の膜厚が最小厚み0.004mm、この部分から外
周側へ徐々に膜厚を厚くしていき、稜部逃げ面1f及び
外周逃げ面1dに膜厚tcが0.010mm(膜厚比t
c/Tが0.017)のCrN硬質膜2を被覆し、すく
い面を研磨してすくい面の硬質膜を除去した。
【0046】このようにして作られた替刃1Aをテスト
用フィンガカッタボディ3に1刃だけねじ等で固定し、
切削直径D=160mmとし、硬くて切削抵抗が大きく
かつ切削熱の発生も大きいため結果的に硬質膜の剥離が
早期に生じやすいナラ材を、カッタ回転数N=5000
rpm,送りF=3.75m/分で切削し、切刃から硬
質膜の剥離が生じ始める時点の木口切削長さを調べた。
【0047】図11はその結果を示すものである。外周
切刃1bと側切刃1aが屈折角83°で直接連続する替
刃試料R00は被覆後切削前から稜部に硬質膜の剥離が
認められた。切削と共に稜部切刃付近の硬質膜の剥離が
外周切刃及び側切刃方向に広がった。
【0048】稜部切刃に最小曲率半径0.05mmの加
工を施した替刃試料R05は被覆後切削前に硬質膜の剥
離は認められなかった。このことから稜部逃げ面1e及
び外周逃げ面1dの硬質膜の膜厚tc=0.010mm
に対して稜部切刃1fをその5倍の曲率半径の曲線的切
刃に加工すれば、被覆後切削前に硬質膜の剥離が生じな
いことが確認される。切削を行うと硬質膜の剥離は全て
稜部切刃から始まった。×印は切刃から硬質膜が剥離し
始めた時点を示し、曲率半径が大きい替刃試料R10,
R15ほど大きな切削長になっても切刃、特に稜部切刃
の剥離は生じ難いことが確認される。
【0049】次に上記の試料と同じ母材,形状でCrN
の硬質膜を被覆した替刃1Aを用いて、集成材製造のた
めの実際のフィンガ継手加工機で切削を行った。カッタ
の外径はD=160mm,1回転2刃切削,回転数N=
5000rpm,送りF=10m/分,被削材ベイマツ
の切削条件である。
【0050】その結果、比較の対象として硬質膜のない
超硬合金ろう付製カッタは切刃の摩耗により2週間で寿
命となった。稜部切刃1fの曲率半径Rが0mm(屈折
角87°)で側切刃の最小膜厚が0.0015mm,外
周逃げ面の膜厚tcが0.003mm(膜厚比tc/T
=0.005)の替刃の場合は稜部逃げ面の剥離は生じ
難くすくい面に自己研磨特性が現れたが、硬質膜が薄い
ために結果的に切刃の後退が早く、寿命は超硬合金ろう
付製カッタの2倍であった。
【0051】次に稜部切刃1fの曲率半径Rが0mm
(屈折角87°)で側切刃の最小膜厚が0.004m
m,外周逃げ面1dの膜厚tcが0.010mm(膜厚
比tc/T=0.017)の替刃を製作したが、外周逃
げ面の膜厚比tc/Tが0.017となるため、屈折角
87°は2.6×(t/T)-0.5(°)以下を満足せ
ず、被覆後切削前に稜部にクラックが入り一部剥離が生
じた。
【0052】この替刃で切削を行うと、外周切刃から離
れた部分の側切刃ではすくい面の自己研磨特性と側切刃
の摩耗がうまくバランスして切刃の摩耗による後退は少
なかったが、稜部逃げ面の硬質膜の剥離が切削と共に広
がり、外周切刃の摩耗が早く、フィンガジョイント部の
嵌合不良が生じ、寿命は超硬合金ろう付製カッタの5倍
であった。
【0053】これと同じ被覆条件、側逃げ面の最小膜厚
が0.004mm,外周逃げ面1d及び稜部逃げ面1e
の膜厚tcが0.010mm(膜厚比tc/T=0.0
17)で、図11のR05と同じ楕円形状の稜部切刃1
fを有する替刃に被覆すると、稜部逃げ面の硬質膜の剥
離が生じ難くなり、外周切刃及び側切刃共に自己研磨特
性によるすくい面のえぐれの形と量が硬質膜の摩耗によ
る切刃の後退とうまくバランスし、寿命は超硬合金ろう
付製カッタの10倍まで延びた。
【0054】以下同様に、側逃げ面の最小膜厚が0.0
04mm,稜部逃げ面1d及び外周逃げ面1eの膜厚t
cが更に厚く0.030mm(膜厚比tc/T=0.0
5)までの被覆をした替刃で切削を行ったところ、曲線
的切刃の曲率半径Rが5×tc以上でかつ切刃相互の成
す屈折角が2.6(tc/T)-05 (°)以下の替刃に
ついては超硬合金ろう付製カッタの10倍前後の寿命が
得られた。尚、曲線的切刃の曲率半径Rが5×tc以上
でかつ切刃相互の成す屈折角が2.6(tc/T)-0.5
(°)以下の条件を満足させながら更に0.030mm
を越えて膜厚を厚くしても、被覆コストに見合う寿命増
は見込めないと考える。
【0055】
【発明の効果】本発明のフィンガカッタは上述のとおり
構成されているので次に記載する効果を奏する。逃げ面
にフィンガカッタとして都合の良い硬質膜の厚さと、硬
質膜の剥離が生じ難い切刃の幾何形状を形成することが
できるので、カッタ寿命を大幅に最大限引き延ばすこと
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例のフィンガカッタの切刃部分と
被削材のフィンガ継手部分とを示す図である。
【図2】硬質膜の膜厚を決定するための予備実験2の説
明図で、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【図3】(a)は側逃げ面の硬質膜の膜厚による側切刃
の摩耗の違いで変化する正味切削動力比を示すグラフ図
で、(b)〜(d)はそれぞれ側切刃の摩耗状態を示す
図である。
【図4】側逃げ面の膜厚と寿命の関係を示すグラフ図で
ある。
【図5】(a)は外周逃げ面と側逃げ面とで形成した稜
線にアール面取りを施した図で、(b)は膜厚比t/T
に対する曲率半径比R/Tと硬質膜の稜部逃げ面に発生
する最大主応力σ1との関係を示した図で、(c)は最
大主応力σ1が60kgf/mm2 における膜厚比t/
Tと曲率半径比R/Tとの関係を示す図である。
【図6】(a)は外周逃げ面と側逃げ面とで形成した稜
線にC面取りを施した図で、(b)はC面取り比C/T
と最大主応力σ1との関係を示す図である。
【図7】(a)は外周逃げ面と側逃げ面とで形成した稜
線に屈折角θの面取りを施した図で、(b)は屈折角θ
と屈折部の硬質膜に発生する最大主応力σ1との関係を
示す図で、(c)は最大主応力σ1が60kgf/mm
2 となる屈折角θと膜厚比t/Tとの関係を示す図であ
る。
【図8】本発明の硬質膜未被覆時の稜部切刃の幾何形状
を示す図で、(a)は稜部切刃を一つの曲線的切刃で構
成する図、(b)は稜部切刃を直線的切刃の連続で構成
する図、(c)は稜部切刃を曲線的切刃と直線的切刃と
で構成する図である。
【図9】本発明の稜部切刃の形状を砥粒粉分中での相対
運動により稜部切刃を外周切刃とともに楕円弧に加工す
る方法を説明する図である。
【図10】稜部切刃を外周切刃とともに楕円弧に形成し
た替刃の切刃部分の図である。
【図11】稜部切刃の最小曲率半径が異なる図9の替刃
の硬質膜の剥離が生じ始める時点の木口切削長を示す図
表である。
【符号の説明】
0 フィンガカッタ 1 単位カッタ 1A 替刃 1a 側切刃 1b 外周切刃 1c 側逃げ面 1d 外周逃げ面 1e 稜部逃げ面 1f 稜部切刃 2 硬質膜
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平7−88806(JP,A) 特開 平2−252501(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B27F 1/16 B27G 13/00 - 13/16

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 すくい面には形成されず逃げ面の表面に
    直接又は中間被覆膜を介して形成される最も外側の被覆
    硬質膜がクロムまたはクロムの窒化物,炭化物,炭窒化
    物或いはこれらの二以上の混合物からなる硬質膜である
    フィンガカッタにおいて、外周側逃げ面と側逃げ面との
    間に稜部逃げ面を、外周切刃と側切刃との間に稜部切刃
    を形成し、硬質膜未被覆時の切刃部先端幅をT、稜部逃
    げ面及び外周逃げ面の硬質膜の膜厚をtcとするとき、
    切削に係わる範囲の側逃げ面の硬質膜の膜厚は最も薄い
    部分で0.002〜0.010mm、稜部逃げ面及び外
    周逃げ面の硬質膜の膜厚は少なくとも0.008×Tで
    側逃げ面の硬質膜の膜厚と同じ厚みか又はそれより厚
    く、すくい面側から回転面及び外周逃げ面に平行な方向
    に見た切刃の幾何形状は、直線的切刃又は曲率半径Rが
    5×tcを下限とする曲線的切刃又はこれを組み合わせ
    た切刃が連続し、隣接する切刃相互の成す屈折角が2.
    6(tc/T)-0.5(°)を上限とすることを特徴とす
    るフィンガカッタ。
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