JP3191038B2 - 眼科用医薬組成物 - Google Patents
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Description
末端側のテトラペプチドであるPhe−Gly−Leu
−Met−NH2 (以下、FGLMとする)またはそ
の医薬として許容される塩類を有効成分とする角膜障害
治療剤に関するものである。本発明は、また、上記成分
に加えて、成長因子の1つであるインシュリン様成長因
子−I(以下、IGF−Iとする)をもう一つの有効成
分とし、それらの成分を配合または併用することを特徴
とした、角膜上皮の創傷治癒促進作用を有する角膜障害
治療剤に関するものである。
明な無血管の組織である。角膜の透明性は視機能に重要
な影響を与えており、角膜における種々の生理生化学的
現象は、主として角膜の透明性の維持ということを目的
として機能している。
ライアイ等の種々の疾患により引き起こされた角膜上皮
欠損は、混合感染の併発がなければ自然に修復する。し
かし、何らかの理由で修復が遅延したりあるいは修復が
行われずに上皮欠損が遷延化すると、上皮の正常な構築
に悪影響を与えるのみならず、実質や内皮の構造や機能
まで害される。従来からの治療法の原理は、外界の刺激
から角膜表面を保護することにより自然に上皮が伸展し
て欠損部の再被覆をはかるという受動的なものである。
近年、細胞生物学の発展に伴い、細胞の分裂・移動・接
着・伸展等に関与する因子が解明されており、角膜上皮
欠損の修復には、角膜上皮の伸展を促進する化合物が重
要な役割を担うことが報告されている(臨眼,46, 738-
743 (1992)、眼科手術,5 , 719-727 (1992) )。
2114号公報に開示されているサブスタンスPのC末
端側のテトラペプチドであり、降圧作用を有することが
該公報に記載されている。サブスタンスPは血管拡張、
平滑筋収縮、唾液腺の分泌促進、利尿作用等を示す11
個のアミノ酸からなるポリペプチドである。サブスタン
スPについては眼科領域においても、眼障害における結
膜杯細胞の異常分泌の改善が開示されていたり(国際特
許WO95/13087号公開公報)、角膜炎等の炎症
時におけるサブスタンスPの動態が報告されている(日
本眼科学会雑誌,91, 982-987 (1987)、日本眼科学会雑
誌,92, 448-452 (1988))等、さまざまな研究がなされ
ているが、その部分ペプチドであるFGLMについての
眼科領域に関する報告はない。
長因子、繊維芽細胞成長因子、血小板由来成長因子、形
質転換成長因子等のように、正常ヒト細胞の成長を調節
している成長因子の1つで、IGF−Iとインシュリン
様成長因子−II(以下、IGF−IIとする)がある。最
近、IGF−Iが甲状腺細胞の増殖を刺激すること(J.
Biol. Chem., 264 , 18485-18488 (1989))や、IGF
−IIが筋の成長や分化を調節すること(Hum. Mol. Gene
t., 3 , 1117-1121 (1994))等も報告されている。眼科
領域においても、IGF−I、IGF−IIおよびそれら
の機能的誘導体が網膜ニューロンの生存を促進させるこ
と(特表平7−500839号公報)、IGF−IIが角
膜移植時の損傷を始めとする広範囲のあらゆる傷の治療
に有効であること(特開昭63−233925号公
報)、上記の成長因子を含む溶液を用いることによって
移植に供される角膜等の眼組織を低温状態で新鮮な組織
状態で保存することが可能であること(特開平5−25
001号公報、特開平6−48901号公報)が開示さ
れている。さらに、一般的に成長因子を含むゲル配合物
が前眼部を始めとする創傷の治癒に有効であることも開
示されている(特開平2−112号公報)。しかしなが
ら、該公報で具体的に開示されている成長因子は表皮成
長因子だけであり、IGF−Iの効果については記載さ
れていない。ところで、IGF−IIは上述のように角膜
移植時の損傷等の治療に有用であることは知られている
が、IGF−Iについては角膜上皮の創傷治癒に影響を
及ぼさないことが報告されているにすぎない(Connect.
Tissue, 27, 65 (1995) )。
の創傷治癒に影響を及ぼさないが、成長因子のうち表皮
成長因子(Prog. Med., 13, 2626-2627 (1993))やIG
F−I(Connect. Tissue, 27, 65 (1995) )と共存す
ると角膜上皮の創傷治癒を促進することが報告されてい
る。しかしながら、サブスタンスPのどの部分が活性発
現部位なのかは明らかにされていない。
タンスPの最小活性発現部位を見つけ出し、その最小単
位の化合物の眼科領域についての作用、特に角膜障害に
対する作用についての研究は非常に興味ある課題であっ
た。
スPのC末端側の部分ペプチドに着目し、角膜障害に対
する作用を検討した。その結果、サブスタンスPのC末
端側のテトラペプチドであるFGLMが、IGF−Iと
共存することで角膜上皮の創傷治癒を促進し、かつ、F
GLMがこの作用を発現するサブスタンスPの部分ペプ
チドの最小単位であることを見い出した。すなわち、F
GLMの眼科用医薬組成物としての新しい用途を見い出
すとともにFGLMまたはその医薬として許容される塩
類に、もう一つの有効成分としてIGF−Iを用いる
と、種々の要因により角膜が損傷を受けた状態にある角
膜潰瘍、角膜上皮剥離、角膜炎またはドライアイ等の角
膜障害の治療剤として有用であることが見い出された。
端側のテトラペプチドで、Phe−Gly−Leu−M
et−NH2 の構造を有するものである。Phe、Le
uおよびMetについては L- 体、D-体、DL- 体が存在
するが、それらはすべて本発明に含まれる。より好まし
い形態はすべて L- 体の化合物である。
ては、例えば塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、乳酸塩、マレ
イン酸塩、フマル酸塩、シュウ酸塩、メタンスルホン酸
塩、パラトルエンスルホン酸塩等が挙げられる。
より角膜が損傷を受けた状態にある角膜潰瘍、角膜上皮
剥離、角膜炎、ドライアイ等をいう。
るべく、角膜障害への影響を検討した。詳細については
後述の薬理試験の項で示すが、FGLMとIGF−Iの
共存によって、角膜片の組織培養系における角膜上皮の
伸展ならびに角膜上皮剥離後の創傷治癒を促進すること
を認めた。このことから、FGLMおよびIGF−I
は、角膜障害、すなわち種々の要因により角膜が損傷を
受けた状態にある角膜潰瘍、角膜上皮剥離、角膜炎、ド
ライアイ等、特に角膜上皮剥離およびドライアイの治療
に有用であることが明らかとなった。
塩類、およびIGF−Iは、経口でも、非経口でも投与
することができ、それらの有効成分を配合または別々に
調剤したものを併用してもよい。投与剤型としては、錠
剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、注射剤、点眼剤等が挙
げられ、特に点眼液、眼軟膏等の点眼剤が好ましい。こ
れらは汎用されている技術を用いて製剤化することがで
きる。例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤等の経
口剤であれば、乳糖、結晶セルロース、デンプン、植物
油等の増量剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク等の
滑沢剤、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピ
ロリドン等の結合剤、カルボキシメチルセルロース カ
ルシウム、低置換ヒドロキシプロピルメチルセルロース
等の崩壊剤、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マ
クロゴール、シリコン樹脂等のコーティング剤、ゼラチ
ン皮膜等の皮膜剤などを必要に応じて加えればよい。ま
た、点眼液であれば、塩化ナトリウム等の等張化剤、リ
ン酸ナトリウム等の緩衝化剤、塩化ベンザルコニウム等
の防腐剤等を用いて製剤化することができる。pHは眼
科製剤に許容される範囲内にあればよいが、4〜8の範
囲が好ましい。眼軟膏であれば、白色ワセリン、流動パ
ラフィン等の汎用される基剤を用いて調製することがで
きる。
選択できる。経口剤であればFGLMまたはその医薬と
して許容される塩類、およびIGF−Iの投与量は通常
1日当りそれぞれ0.1〜5000mg(FGLMとし
て)および0.001〜100mg、好ましくはそれぞ
れ1〜1000mg(FGLMとして)および0.01
〜10mgであり、投与は1回でまたは数回に分けて行
なうことができる。また、点眼剤であればそれぞれの有
効成分の濃度は0.001〜10%(w/v)(FGL
Mとして)および0.00001〜0.1%(w/
v)、好ましくは0.01〜1%(w/v)(FGLM
として)および0.0001〜0.01%(w/v)で
あり、投与は1日1〜数回点眼する形で行なうことがで
きる。
すが、これらの例は本発明をよりよく理解するためのも
のであり、本発明の範囲を限定するものではない。
示す。
た。
g、5mg、10mg、50mg、500mg、100
0mg含有する点眼液を調製することができる。
01mg、0.05mg、0.1mg、0.5mg、5
mg、10mg、50mg、100mg含有する点眼液
を調製することができる。
0mg、50mg、500mg、1000mg及びIG
F−I、0.01mg、0.05mg、0.1、0.5
mg、10mg、50mg、100mgを任意の組み合
わせで配合した点眼液を調製することができる。
0mg、50mg、100mg、500mg、1000
mg及びIGF−I、0.01mg、0.05mg、
0.1mg、0.5mg、1mg、10mg、50m
g、100mgを任意の組み合わせで配合した眼軟膏を
調製することができる。
コーティング剤2mgを用いてコーティングすることが
できる。
mg中0.1mg、0.5mg、1mg、5mg、50
mg含有する錠剤を得ることができる。
コーティング剤2mgを用いてコーティングすることが
できる。
0mg中0.001mg、0.01mg、0.05m
g、0.5mg、1mg、5mg、10mg、50mg
含有する錠剤を得ることができる。
コーティング剤2mgを用いてコーティングすることが
できる。
mg、0.5mg、1mg、5mg、10mg及びIG
F−I、0.001mg、0.01mg、0.05m
g、0.1mg、0.5mg、1mg、5mg、10m
gを任意の組み合わせで配合した錠剤を得ることができ
る。
(J. Cell Biol., 97,1653-1657 (1983))に準じ、角
膜片の組織培養系での角膜上皮伸展長を指標にして角膜
上皮伸展に対する影響を検討した。
角膜ブロック(1群6個)を、被験化合物を含む培養液
(TC−199)中、37℃・5%CO2 の条件下で2
4時間培養した。培養後、角膜ブロックをエタノール−
氷酢酸(容積比95:5)混合液中で固定し、パラフィ
ンで包埋して切片を作製した。切片を脱パラフィンした
後、ヘマトキシリン−エオジン染色し、顕微鏡下で上皮
細胞層の伸展長を測定した。
い培養液で同様に培養したものを用いた。
単独、IGF−I単独、FGLMとIGF−Iの両方を
含む培養液で培養したときの結果を表1に示す。また、
IGF−Iとともに培養液に添加するペプチドをGly
−Leu−Met−NH2 (以下、GLMとする)、F
GLM、Val−Gly−Leu−Met−NH2 (以
下、VGLMとする)、Ile−Gly−Leu−Me
t−NH2 (以下、IGLMとする)、Tyr−Gly
−Leu−Met−NH2 (以下、YGLMとする)、
Phe−Phe−Gly−Leu−Met−NH2 (以
下、FFGLMとする)としたときの結果を表2に示
す。
GF−I単独では角膜上皮の伸展に対する影響は認めら
れなかったが、FGLMとIGF−Iを両方含む培養液
で培養をすると、角膜上皮の伸展に対して顕著な促進が
認められた。
−Iとともに添加するペプチドについては、FGLMま
たはFFGLMを添加した場合は角膜上皮の伸展に対し
て顕著な促進が認められたが、サブスタンスPのC末端
トリペプチドやFGLMの類似ペプチドを添加した場合
は角膜上皮の伸展に対する影響は認められなかった。
lmic Res., 11, 90-96 (1979))に準じて角膜上皮剥離
を起こさせ、フルオレセイン染色面積を指標として創傷
面積を測定し、角膜創傷治癒に対する影響を検討した。
後、被験化合物を含む点眼液を2時間間隔で1日6回
(50μl/回)点眼した。創傷面積を測定する際に、
フルオレセイン染色を行い角膜の写真を測定した。撮影
した角膜のフルオレセイン染色面積は、画像解析処理シ
ステムを用いて算出した。
い基剤を点眼したウサギを用いた。
%(w/v)FGLM点眼液(点眼液F−3)単独、
0.0001%(w/v)IGF−I点眼液(点眼液I
−6)単独、0.05%(w/v)FGLM点眼液(点
眼液F−3)と0.0001%(w/v)IGF−I点
眼液(点眼液I−6)の両方を点眼したときの、上皮剥
離直後、12、24、36、48時間後における創傷面
積を表3に示す。
GF−I単独では角膜上皮剥離後の創傷治癒に対する影
響は認められなかったが、FGLMとIGF−Iの両方
を点眼すると、創傷治癒に対して顕著な促進が認められ
た。
部分ペプチドの1つであるFGLMまたはその医薬とし
て許容される塩類が成長因子の1つであるIGF−Iと
共存することで、角膜上皮の創傷治癒促進作用を有し、
種々の要因により角膜が損傷を受けた状態にある角膜潰
瘍、角膜上皮剥離、角膜炎またはドライアイ等の角膜障
害の治療剤として有用であることが見い出された。
ペプチドやペンタペプチドではIGF−Iと共存して角
膜上皮伸展促進作用を認められたが、サブスタンスPの
C末端側のトリペプチドでは認められなかったことか
ら、角膜上皮の創傷治癒促進作用を有するために必要な
IGF−Iと共存するサブスタンスPの部分ペプチドの
最小単位はC末端側のテトラペプチドであることが明ら
かとなった。さらに、そのテトラペプチドのN末端のア
ミノ酸がPhe以外では角膜上皮伸展促進作用が認めら
れなかったことから、角膜上皮の創傷治癒促進作用を有
するために必要なIGF−Iと共存するテトラペプチド
はサブスタンスPのC末端側のテトラペプチドであるF
GLMでなければならないことが明らかとなった。
Claims (7)
- 【請求項1】 Phe−Gly−Leu−Met−NH
2 またはその医薬として許容される塩類を有効成分と
する角膜障害治療剤。 - 【請求項2】 Phe−Gly−Leu−Met−NH
2 またはその医薬として許容される塩類、およびイン
シュリン様成長因子−Iを有効成分とする角膜障害治療
剤。 - 【請求項3】 角膜障害が角膜潰瘍、角膜上皮剥離、角
膜炎またはドライアイである請求項1または請求項2記
載の角膜障害治療剤。 - 【請求項4】 角膜障害が角膜上皮剥離またはドライア
イである請求項1または請求項2記載の角膜障害治療
剤。 - 【請求項5】 剤型が点眼剤である請求項1から請求項
4のいずれかに記載の角膜障害治療剤。 - 【請求項6】 Phe−Gly−Leu−Met−NH
2 またはその医薬として許容される塩類、およびイン
シュリン様成長因子−Iを有効成分とする角膜上皮伸展
促進剤。 - 【請求項7】 剤型が点眼剤である請求項6記載の角膜
上皮伸展促進剤。
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