JP3190409B2 - 構造物の制振装置 - Google Patents

構造物の制振装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、地盤と建物との間に介
在して、地盤から伝達される振動を低減する構造物の制
振装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、滑り支承形式の制振装置の構造
は、構造物の各柱脚と基礎との間に滑り支承体が介装さ
れ、その支承体の下面にフッ素樹脂からなる平板状の滑
り支承板が被着されると共に、対向する基礎の上面に対
してステンレス鋼板が層着されてなり、また、構造物の
梁と地中梁との間には、ゴムより構成される水平反力機
構が介装されている。
【0003】そして、上記ステンレス鋼とフッ素樹脂か
らなる滑り支承板との間の摩擦係数は0.1程度である
ため、構造物に入力される地震力は、該構造物重量の約
0.1程度に低減される。しかしながら、上記構成の制
振装置では、上記摩擦係数を上記値より小さくすること
が出来ないので、これ以下の値に地震力を低減できな
い。さらに、摩擦係数は一定の値しかとれないので、設
計用地震を越えるような地震が万一発生すると構造物が
許容以上に滑ってしまうと共に構造物の滑る方向や変位
を制御することが出来ず、地震が収まった後に過大な滑
り変位や捩じれ変位が支承部に残留する恐れがある。
【0004】これを改善した構造物の制振装置として
は、例えば特開平2−153140号公報に記載されて
いるものが知られている。これは、支承体の下面に、下
方に開口した凹型の滑り支承板を固着し、その滑り支承
板の凹部外周下面と基礎との接触部分をシールして該滑
り支承板の凹部と基礎との間にシール空間を形成し、更
に、そのシール空間に加圧ポンプ等の加圧装置を連通
し、該加圧装置の駆動によって圧力流体である作動液を
シール空間に付与するようになっている。また、発生し
た地震動を検知するために振動検出用センサが所定位置
に設置されている。
【0005】そして、地震発生と共に上記シール空間
は、作動液が供給されることで急速に加圧されて構造物
を所定量だけ支持し、地盤と構造物間の摩擦力を所定の
大きさに低下させて構造物に入る地震力を低減し、ま
た、地震終了と共に減圧して元の状態に戻している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来の制振装置にあっては、発生した地震力が振動検出用
センサによって検出され、該振動検出用センサからの信
号に応じてポンプ等の加圧装置が作動しシール空間を加
圧するための作動液をシール空間に付与するので、シー
ル空間が所定の圧力に立ち上がるまでに時間がかかり即
時性に欠ける。
【0007】また、作動液としては、加圧装置を構成す
るポンプ等の機器に適した非常に潤滑のよい石油系作動
液が使用されるが、シール空間と加圧装置とは一体に連
通されているために、その作動液は、シール空間を介し
て滑り支承板と基礎との間にも介在してその接触部分を
非常に潤滑された状態にして該滑り支承板が所望以上に
滑り易くなり、支承体と基礎との間の摩擦力の制御が難
しい。
【0008】また、シール空間内のゴミが作動液を汚染
するので、シール空間を加圧する装置の構成にサーボバ
ルブ等の精密な機器を使用することができない。本発明
は上記問題点に着目してなされたもので、シール空間に
対する加圧制御の応答性を向上させると共に、シール空
間に封入される流体を適宜選択することで支承部の圧力
制御を容易にすることを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明の構造物の制振装置は、柱脚と基礎との間
に、反力機構を介装すると共に、下面が下方に開口した
凹型を形成する滑り支承体を設置して、上記支承体と基
礎との上記凹部を囲む接触部分をシールし、更に、その
凹部と基礎上面とで形成されるシール空間に圧力流体を
封入する加圧装置を接続してなる構造物の制振装置にお
いて、上記シール空間と加圧装置とを連通する連通路の
途中に、流体の流通を遮断する可撓性の隔膜を備えた圧
力変換室を介装させたことを特徴としている。
【0010】また、圧力変換室と加圧装置との連通路の
途中に介装されるサーボバルブと、構造物に入力される
振動を検出する振動検出手段と、その振動検出手段から
の信号に応じて上記サーボバルブに所定の開度指令を供
給するコントローラとを備えるとよい。
【0011】
【作用】地震発生時に、ポンプ等からなる加圧装置が作
動することによって圧力変換室の圧力が高くなり、圧力
変換室の隔膜が撓むことでシール空間に封入されている
流体の圧力も高くなって構造物が所定量だけシール空間
によって支持される。これによって、支承体と基礎との
間の摩擦力が小さくなって、構造物への地震力の入力が
低減される。
【0012】このとき、シール空間内の液体と、加圧装
置の作動液とは隔膜によって分離されているので、シー
ル空間内に封入する液体に、加圧装置の作動液とは違
う,水グリコール系等の粘性の低い液体が使用可能とな
り、支承体と基礎との間の最低摩擦力が所望の値になる
ような液体を封入できるようになる。これによって、支
承体の滑り変位を許容範囲に制御することが可能とな
る。
【0013】また、振動検出手段によって検出された振
動の大きさや方向に応じた開度制御信号をサーボバルブ
に供給し、隔膜を介してシール空間に付与する圧力を制
御して、滑り支承体と基礎との間の摩擦力を制御する。
このように、サーボバルブを使用して滑らかな加圧の変
更を可能にすると共に、シール空間に常時液体が封入さ
れている状態を維持させるようにしたので、コントロー
ラからの制御信号に対するシール空間内の圧力の応答性
が向上する。
【0014】このとき、シール空間内にあるゴミで作動
液が汚染されるということがなくなったので精密機器で
あるサーボバルブが使用可能となった。
【0015】
【実施例】本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
まず構成を説明すると、図1に示すように、基礎1の上
面にステンレス板2が水平に層着されている。その基礎
1と柱脚4との間には、滑り支承体5が介装されてい
る。
【0016】その滑り支承体5の下面には、下方に向け
て開口した凹部を備えた滑り支承板6が固着されてい
て、その滑り支承板6の外周部下面にフッ素樹脂からな
る滑り材7が層着され、その滑り材7と基礎1上面の接
触部分がシール部材8でシールされて、該凹部とステン
レス板2によってシール空間9が形成されている。その
シール空間9は第1連通管10を介して圧力変換室11
の一方の部屋10aに連通して、シール空間9とその一
方の部屋10aとによって閉じた空間が形成され、その
閉じた空間内に水グリコールからなる石油系の作動油よ
りも潤滑性の低い流体が封入されている。また、第1連
通管10の途中には流体補充装置12が接続されてい
る。
【0017】上記圧力変換室11は、外殻を構成する剛
体のハウジング10cと、そのハウジング10c内を2
つに区画するゴム等の可撓性の隔膜11dとからなり、
その隔膜11dによってハウジング10c内が2つの部
屋10a,10bに分離されている。また、圧力変換室
11の他方の部屋10bは、第2連通管13を介して加
圧ポンプ14に連通している。上記第2連通管13の途
中にはサーボバルブ15が介装されると共に、加圧ポン
プ14側にアキュムレータ16が接続されている。
【0018】また、上記柱脚4に、加速度センサ17及
び変位センサ18が夫々設置されて、入力された振動の
加速度及び支承部の変位量が検出され、また、基礎1に
も加速度センサ19が設置されて実際の地震動が検出さ
れるようになっていて、該加速度センサ17,19及び
変位センサ18によって振動検出手段が構成されてい
る。更に、シール空間9を形成する滑り支承板5の凹部
には圧力センサ20が設置されて、該シール空間9の圧
力が常時測定されている。そして、各センサ17〜20
はコントローラ21に接続されて、検出した加速度や変
位等に応じた信号を該コントローラ21に常時供給して
いる。そのコントローラ21は、その信号をもとに、シ
ール空間9に付与すべき圧力を求め、それに応じた開度
の制御信号をサーボバルブ15に供給するようになって
いる。
【0019】また、柱脚4に接合された梁22と地中梁
23との間には、ゴムより構成された水平反力機構24
が配設されている。なお、上記構成の装置は、各柱脚4
と基礎1との間に設けられている。上記のような制振装
置では、加速度センサ17,19によって振動が検知さ
れると、コントローラ21が所定の開度制御指令をサー
ボバルブ15に供給し、その指令に応じてサーボバルブ
15が開いて、加圧ポンプ14から圧力変換室11の他
方の部屋10bに所定圧力が付与される。その圧力は、
隔膜11dを介して一方の部屋10a,さらにはシール
空間9に入力されて、シール空間9が所定の設定圧力に
なる。
【0020】上記圧力は、加速度センサ17,19,変
位センサ18,及び圧力センサ20からの信号をもと
に、コントローラ21が所定のアルゴリズムに従って算
出して,随時サーボバルブ15の開度を滑らかに変更し
て適切な値に随時,調整される。例えば、地震の入力を
減らしたいときは圧力を上げて支承部の摩擦力を下げる
ようにし、支承部の滑り変位を抑制したいときには圧力
を下げて、支承部の摩擦力を大きくするように調整され
る。
【0021】このように、その圧力に比例した分だけシ
ール空間9で構造物重量を支持し、滑り支承板6の滑り
材8と基礎1のステンレス板2との接触面での摩擦力を
小さくして構造物に入力される地震を低減するが、この
とき、各支承部におけるシール空間9内の液圧を調整す
ることによって各接触面に作用する力を調整して、滑り
の大きさや方向を制御し、もって、各支承部に過大な変
位が発生することを回避したり、構造物に捩じれ変位が
残留しないようにする。
【0022】なお、流体補充装置12は、適宜作動し
て、シール空間9内に封入されている液体の漏洩した分
の液体をシール空間9に補充してシール空間9を含む閉
じた空間内の液体の量を一定に維持するものである。本
実施例の制振装置にあっては、シール空間9に封入され
ている液体と加圧ポンプの作動液とは分離されているの
で、加圧ポンプ14側には、非常に潤滑した石油系の作
動油を使用しても、シール空間9に封入する液体には、
上記水グリコール等の粘性の低い液体が使用可能とな
る。このため、シール空間9内から基礎と支承体との間
に介在してしまう液体による,支承部の潤滑性を低下さ
せることができるなど、基礎と支承体間の摩擦力が制御
しやすい潤滑性や粘性を有する液体を選択して使用可能
となり、支承部の摩擦力の制御が従来に比べて容易とな
る。
【0023】また、シール空間9内の液体は加圧ポンプ
14の作動液と分離されて、1つの閉じた系を構成して
いるため、シール空間9内の液体に混入したゴミが加圧
ポンプ14側の作動液を汚染することがなくなり、サー
ボバルブ15等の精密な機器のトラブルを防止させるこ
とができる。また、常時,シール空間9内には液体が封
入された状態になっていると共に、サーボバルブ15を
使用することで滑らかな加圧制御が可能となり、コント
ローラ21からの制御信号に対するシール空間9内の圧
力の立ち上がりや加圧調整の応答が向上する。
【0024】
【発明の効果】以上説明してきたように、本発明の構造
物の制振装置は、加圧装置の作動液とシール空間内に封
入されている液体を分離したため、滑り支承体と基礎間
に介在するシール空間内に封入された流体を選択可能に
なり、該流体による滑り支承体と基礎間の潤滑等を、該
液体を適宜選択することで所望の潤滑性にすることで支
承体に発生する摩擦力の制御を従来と比較して容易にす
ることができる。
【0025】また、そのシール空間内の液体と加圧装置
に使用される作動液を分離したので、シール空間内のゴ
ミによる加圧装置の作動液の汚染が防止されて、サーボ
バルブ等のトラブルが低減する。また、シール空間に液
体が常時封入されている状態になると共に、サーボバル
ブを使用して加圧制御を実施するようにしたため、シー
ル空間の所定圧力への立ち上がりや圧力の調整制御の応
答性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる実施例の構造物の制振装置を示
す概略構成図である。
【符号の説明】
1 基礎 2 ステンレス板 4 柱脚 5 滑り支承体 6 滑り支承板 8 シール部材 9 シール空間 11 圧力変換室 11d 隔膜 14 加圧ポンプ 15 サーボバルブ 17〜20 センサ 21 コントローラ

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 柱脚と基礎との間に、反力機構を介装す
    ると共に、下面が下方に開口した凹型を形成している滑
    り支承体を設置して、上記支承体と基礎との上記凹部を
    囲む接触部分をシールし、更に、その凹部と基礎上面と
    で形成されるシール空間に圧力流体を封入する加圧装置
    を接続してなる構造物の制振装置において、上記シール
    空間と加圧装置とを連通する連通路の途中に、流体の流
    通を遮断する可撓性の隔膜を備えた圧力変換室を介装さ
    せたことを特徴とする構造物の制振装置。
  2. 【請求項2】 圧力変換室と加圧装置との連通路の途中
    に介装されるサーボバルブと、構造物に設定されて振動
    を検出する振動検出手段と、その振動検出手段からの信
    号に応じて上記サーボバルブに所定の開度制御指令を供
    給するコントローラとを備えたことを特徴とする請求項
    1記載の構造物の制振装置。
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