JP3190181B2 - 金型装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は金型装置に関し、詳しく
は、成形品の窪み部を成形する入れ子の外周に、入れ子
の軸線方向に平行な凹溝を設けて、この凹溝内に入れ子
の外周に設ける凸条を別部材にてなす凸条体を嵌め合わ
せて取り付けることにより、入れ子の外周に成形品の窪
み部の内周形状に対応した凹凸条形状を形成した金型装
置に関するものであり、例えば、樹脂製のシロッコファ
ンの羽根車を成形するような場合に利用される。

【０００２】

【従来の技術】図４は従来のこの種の金型装置の一例を
示している。図に示すように、上側に配される固定側型
板ａと、下側に配される可動側型板ｂとの間に、可動側
型板ｂに有する入れ子ｃと、これのまわりに位置するス
ライド入れ子ｄとの間にキャビティｅを形成し、図５に
示すような樹脂製のシロッコファンの羽根車２１を成形
するようにしてある。

【０００３】羽根車２１は、側板２１ａの外周と、この
外周に対応した連結リング２１ｂとの間に多数の羽根２
１ｃを持っている。

【０００４】これに対応して、前記キャビティｅは、図
４（ｂ）に示すように側板部成形部分ｅ１と、連結リン
グ成形部分ｅ２と、必要数の羽根成形部分ｅ３とを有し
ている。

【０００５】特に、多数の羽根成形部分ｅ３は、羽根車
２１の多数の羽根２１ｃが並ぶ窪み部２１ｆの内周形状
を形成するのに、キャビティｅ内に突出する入れ子ｃの
外周形状を、図４（ａ）に示すように前記窪み部２１ｆ
の内周形状に適合した凹凸条形状としてあり、これによ
って、図５に示すような羽根車２１を成形することがで
きる。

【０００６】ところで、入れ子ｃの凹凸条形状は、入れ
子ｃの軸線方向に向くように入れ子ｃの外周に設けた多
数の凸条ｇの相互間にて、入れ子ｃの軸線方向に向く凹
条となるように羽根成形部分ｅ３を形成してある。

【０００７】そして、これら多数の凸条ｇの１つ置きの
ものを入れ子ｃと同体に形成した凸条部ｇ１とし、他の
ものを入れ子ｃに後付けして一体化する凸条体ｇ２とし
てある。

【０００８】これは、凸条ｇの全てを入れ子ｃに同体に
形成すると、羽根成形部分ｅ３が狭く加工が困難である
ので、凸条部ｇ１を１つ置きとすることにより加工し易
くするためである。

【０００９】凸条体ｇ２の後付けは、先ず入れ子ｃの外
周面に入れ子ｃの前記突出方向に向く単なる凹溝ｈを設
け、これに凸条体ｇ２の入れ子ｃに対する取付部ｉを嵌
め合わせて位置決めするようにしており、この位置決め
は凸条体ｇ２を矢印Ｙで示す入れ子ｃの円周方向に固定
する結果となっている。

【００１０】次に、この位置決め位置に凸条体ｇ２を固
定するのに、入れ子ｃの突出端に押え板ｊを取付けて、
この押え板ｊの外周部で凸条体ｇ２を入れ子ｃの突出基
部側に押え込んでおり、これによって可動側型板ｂとの
間で矢印Ｚで示す入れ子ｃの突出方向に固定している。

【００１１】また押え板ｊの外周部の下面に設けられた
下向きの引っ掛かりフランジｊ１が凸条体ｇ２の取付部
ｉの上端に設けた入れ子ｃと同心な円周方向溝ｋに嵌ま
り合うことにより、凸条体ｇ２の上端を、矢印Ｘで示す
入れ子ｃの半径方向に固定している。

【００１２】さらに凸条体ｇ２の下端は、可動側型板ｂ
に対しボルトｍにより個別に取り付けて、矢印Ｘで示す
入れ子ｃの半径方向に固定している。

【００１３】以上により、凸条体ｇ２は入れ子ｃとの一
体化が図られ、凸条部ｇ１とともに必要な形状および大
きさの羽根成形部分ｅ３を形成し、前記のような羽根車
２１を成形することができる。

【００１４】

【発明が解決しようとする課題】しかし、前記のような
固定方式では、凸条体ｇ２の上端部での押え板ｊによる
取付けと、凸条体ｇ２の下端部でのボルトｍによる個別
の取付けとが必要であるので、取付け構造が複雑で、部
品点数および作業工数の多いものとなりコストが高くつ
く。

【００１５】しかも、凸条体ｇ２をＸ方向に固定できる
のは、凸条体ｇ２の上端部と下端部とだけであるので、
一体化凸条の中央部分での固定および位置決めが甘く、
成形中の熱による変形等により若干浮いたりして成形品
の寸法精度が低下するし、入れ子ｃと凸条体ｇ２との間
にできる隙間に原因してバリが発生し、成形品の品質が
低下する不都合もある。

【００１６】本発明は、このような問題を解消すること
を課題とし、簡単な構造および組み立て作業が簡単で、
確固にしかも高精度に位置決めし固定することができる
金型装置を提供することを目的とするものである。

【００１７】

【課題を解決するための手段】本発明の金型装置は、上
記のような目的を達成するために、キャビティ内に突出
して成形品の窪み部を成形する入れ子の外周に入れ子の
前記突出方向に向く凹溝を設けて、この凹溝内に入れ子
の外周に設ける凸条を別部材にてなす凸条体を嵌め合わ
せて取り付けることにより、入れ子の外周に成形品の窪
み部の内周形状に対応した凹凸条形状を形成した金型装
置において、前記凹溝と、これに嵌まり合う凸条体の取
付部とを、入れ子の突出端側から突出基部側に向かって
細くなるテーパ状のアリ溝と、アリとし、凸条体を入れ
子の突出端に取付けた押え部材により、アリのアリ溝内
への前記入れ子突出端側からの所定の嵌まり合い位置に
押え込み、凸条体を位置決め状態に取付けたことを特徴
とするものである。

【００１８】

【作用】本発明の金型装置の上記構成では、入れ子の成
形品の窪み部の内周形状に対応した凹凸条形状を後付け
した凸条体により形成するのに、この後付けを行う入れ
子の突出方向に向く凹溝をアリ溝としてあり、これに前
記凸条体の取付部をなすアリを嵌め合わせて取付けるの
で、アリ溝のアリに対する抱き込み形状によって、アリ
溝の幅方向は勿論、アリ溝の深さ方向にも凸条体をその
取付部の全長に亘って位置決めすることができ、入れ子
の突出端に取付ける押え部材により凸条体を入れ子突出
端側からの嵌め合わせ位置に押えつけるだけで、凸条体
をどの方向にも確固に位置決めし、固定することができ
る。

【００１９】しかも、前記嵌め合わされるアリ溝および
アリは、入れ子の突出端側から突出基部側に向かって細
くなるテーパ形状をなしているので、アリをアリ溝に入
れ子の突出端側から嵌め合わせるのにクサビ的働きがあ
って、全体に遊びのない密な嵌め合いができるので、前
記位置決めおよび固定をどの部分にても遊びなく高精度
に達成することができる。

【００２０】

【実施例】以下本発明の一実施例としての金型装置につ
いて、図１〜図３を参照しながら説明する。

【００２１】本実施例の金型装置は図１に示すように、
上側に配される固定側型板１と、下側に配される可動側
型板２との間に、可動側型板２に有する入れ子３と、こ
の入れ子３のまわりに位置するスライド入れ子４との間
にキャビティ５を形成し、図５に示すような樹脂製のシ
ロッコファンの羽根車２１を成形するようにしてある。
スライド入れ子４は入れ子３のまわり数カ所で分割さ
れ、矢印Ａで示す方向にスライドできるようにしてあ
る。

【００２２】スライド入れ子４には、固定側型板１から
斜め外方の下向きに突出したガイド突起６と嵌まり合う
ガイド孔７を有し、可動側型板２が型開き動作によって
下方に開かれるのにスライド入れ子４が同動するとき、
ガイド突起６とガイド孔７との嵌まり合いによる案内で
外側へ自動的に開かれ、逆に型閉じによって可動側型板
２が上動するのにスライド入れ子４が同動するとき、ガ
イド突起６とガイド孔７との嵌まり合いによる案内で内
側へ自動的に閉じられるようになっている。

【００２３】キャビティ５は、図１、図２（ｂ）に示す
ように羽根車２１の側板部２１ａを成形する側板部成形
部分５ａと、羽根車２１の連結リング部２１ｂを成形す
る連結リング成形部分５ｂと、羽根車２１の必要数の羽
根２１ｃを成形する羽根成形部分５ｃとを有している。

【００２４】この多数の羽根成形部分５ｃは、羽根車２
１の多数の羽根２１ｃが並ぶ窪み部２１ｆの内周形状を
形成するのに、入れ子３の外周形状を、前記窪み部２１
ｆの内周形状に適合した図２（ａ）に示すような凹凸条
形状としてあり、これによって、図５に示すような羽根
車２１を成形することができる。

【００２５】入れ子３の凹凸条形状は、入れ子３のキャ
ビティ５への突出方向、本実施例では円柱状に突出した
入れ子３の突出方向、つまり軸線方向に向くように入れ
子３の外周に設けられる多数の凸条８の相互間にて、入
れ子３の軸線方向に向くスリット状の凹条として羽根成
形部５ｃを形成している。

【００２６】そして従来同様に、これら多数の凸条８の
１つ置きのものを入れ子３と同体に形成した凸条部８ａ
とし、他のものを入れ子３に後付けして一体化する凸条
体８ｂとしてある。

【００２７】これにより、凸条８の全てを入れ子３に同
体に形成した場合の不都合、つまり羽根成形部分５ｃが
狭く加工が困難であると言う不都合が解消され、加工し
易くなる。

【００２８】凸条体８ｂの後付けは、入れ子３の外周面
に入れ子３の軸線方向に向く凹溝９に凸条体８ｂを嵌め
合わせて取付位置決めすることにより行う。本実施例で
は特に、前記凹溝９と、これに嵌まり合う凸条体８ｂの
取付部８ｃとを、入れ子３の先端側つまり突出端側から
基部側つまり突出基部側に向かって細くなるテーパ状の
アリ溝と、アリとし、凸条体８ｂを入れ子３の突出端に
設けた押え板１１により、アリ８ｃのアリ溝９内への入
れ子突出端側からの所定の嵌まり合い位置に押え込み、
凸条体８ｂを位置決め状態に固定するようにしてある。

【００２９】本実施例でのアリ溝９とアリ８ｃとのテー
パ状とするための寸法関係は、図２（ｂ）、図３に示す
ように、幅寸法を、基部幅ｂ１＜先端部幅ｂ２として２
Δｂの差を持たせ、深さ寸法を、基部深さｔ１＜先端部
深さｔ２としてΔｔの差を持つようにしてある。

【００３０】このように、入れ子３の成形品であるシロ
ッコファンの羽根車２１の窪み部２１ｆの内周形状に対
応した凹凸条形状を、入れ子３に同体形成した凸条部８
ａと、後付けした凸条体８ｂとによって形成するのに、
この後付けを行う入れ子３の軸線方向に向いた凹溝９を
アリ溝としてあり、これに前記凸条体８ｂのアリをなす
取付部８ｃ部を入れ子３の突出端側から嵌め合わせて取
付けるので、アリ溝９のアリ８ｃに対する抱き込み形状
によって、矢印Ｙで示すアリ溝幅方向、本実施例では入
れ子３の外周方向は勿論、矢印Ｘで示すアリ溝深さ方
向、本実施例では入れ子３の半径方向にも凸条体８ｂを
全長に亘って確固に位置決めすることができ、入れ子３
の突出端に取付ける押え板１１により凸条体８ｂを入れ
子突出端側からの所定の嵌め合わせ位置に押え付けて、
矢印Ｚで示す入れ子３の軸線方向に位置決めし固定する
だけで、凸条体８ｂの各部をＸ、Ｙ、Ｚのどの方向にも
確固に位置決めし、固定できる。

【００３１】しかも、前記嵌め合わされるアリ溝９およ
びアリ８ｃは、入れ子３の先端から基部に向かって細く
なるテーパ状をなしているので、アリ８ｃをアリ溝９に
嵌め合わせるのにクサビ的働きがあって、全体に遊びの
ない密な嵌め合いができるので、前記位置決めおよび固
定をどの部分にも遊びなく高精度に達成することができ
る。

【００３２】したがって、成形品を高い寸法精度をもっ
て高精度に成形することができるし、凸条体と入れ子と
の間に一部の浮き上がりによる隙間ができて成形品にバ
リが発生するようなことも防止し、バリの発生によって
品質が低下するようなことを解消することができる。

【００３３】また、構造が簡単で、部品点数および組み
立ての作業工数の少ないものとなり、コストを低減する
ことができる。

【００３４】なお、アリ溝９とアリ８ｃとの嵌め合いに
よって前記のような凸状体８ｂの位置決めおよび固定の
ためのクサビ状働きが得られればよく、片方でのΔｂ分
の勾配を省略することができるし、幅方向および深さ方
向の少なく一方向にテーパ状の勾配を持つようにすれば
足りる。

【００３５】また、凸条８の１つ置きのものを別部材の
凸条体８ｂにて形成したが、これに限られることはな
く、例えば全ての凸条８に凸条体８ｂを適用することも
できる。

【００３６】さらに、本実施例では樹脂製のシロッコフ
ァンの羽根車２１を成形する場合について述べたが、こ
れに限ることはない。他の各種の羽根車や、複雑な凹凸
条形状を窪み内面に持った成形品一般に本発明は適用さ
れる。

【００３７】

【発明の効果】本発明の金型装置によれば、入れ子の成
形品の窪み部の内周形状に対応した凹凸条形状を形成す
るための別部材である凸条体の取付部を、入れ子に対す
るアリ溝とアリとの嵌め合わせを利用して後付けし、入
れ子側のアリ溝の凸条体のアリに対する抱き込み形状に
よって、凸条体をその取付部の全長に亘って入れ子のア
リ溝幅方向およびアリ溝深さ方向に確固に位置決めし、
入れ子の突出端に取付ける押え部材により凸条体を入れ
子の突出端側からのアリ溝とアリの所定の嵌め合わせ位
置に押え付けて位置決めするだけで、凸条体をどの方向
にも確固に位置決めし、固定できるので、部品点数およ
び組み立て作業工数の少ない構造および組み立てが簡単
なものとなり、コストを低減することができる。

【００３８】しかも、アリ溝およびアリが、入れ子の突
出端側から突出基部側に向かって細くなるテーパ形状を
なしていて、互いの嵌め合わせにクサビ的働きがあり全
体に遊びのない密な嵌め合いにて、前記位置決めおよび
固定をどの部分にても遊びなく高精度に達成するので、
成形品をより高い寸法精度で成形することができるし、
凸条体と入れ子との間に一部の浮き上がりによる隙間が
できてバリが発生するようなことを防止し、バリの発生
によって成形品の品質が低下するようなことを解消する
ことができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明が適用された一実施例としての樹脂成形
金型の組み立て状態を示す断面図である。

【図２】図１の金型装置の入れ子部を詳細に示す平面図
および断面図である。

【図３】図１の金型装置の入れ子の一部を示す斜視図で
ある。

【図４】従来例の樹脂成形金型の入れ子部を詳細に示す
平面図および断面図である。

【図５】成形品の一例を示す樹脂製のシロッコファンの
羽根車の斜視図である。

【符号の説明】

３ 入れ子 ５ キャビティ ５ａ 側板部成形部分 ５ｂ 連結リング成形部分 ５ｃ 羽根成形部分 ８ 凸条 ８ａ 凸条部 ８ｂ 凸条体 ８ｃ アリ ９ アリ溝 １１ 押え部材 ｂ１ 基部幅 ｂ２ 先端部幅 ｔ１ 基部深さ ｔ２ 先端部深さ

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−97899（ＪＰ，Ａ) 特開 昭57−126638（ＪＰ，Ａ) 実開 昭62−158198（ＪＰ，Ｕ) 実開 平４−102823（ＪＰ，Ｕ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) B29C 33/00 - 33/76 F04D 29/28

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 キャビティ内に突出して成形品の窪み部
   を成形する入れ子の外周に入れ子の前記突出方向に向く
   凹溝を設けて、この凹溝内に入れ子の外周に設ける凸条
   を別部材にてなす凸条体を嵌め合わせて取り付けること
   により、入れ子の外周に成形品の窪み部の内周形状に対
   応した凹凸条形状を形成した金型装置において、 前記凹溝と、これに嵌まり合う凸条体の取付部とを、入
   れ子の突出端側から突出基部側に向かって細くなるテー
   パ状のアリ溝と、アリとし、凸条体を入れ子の突出端に
   取付けた押え部材により、アリのアリ溝内への前記入れ
   子突出端側からの所定の嵌まり合い位置に押え込み、凸
   条体を位置決め状態に取付けたことを特徴とする金型装
   置。