JP3187519B2 - ナフトアルデヒド類の製造方法 - Google Patents

ナフトアルデヒド類の製造方法

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  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)
  • Low-Molecular Organic Synthesis Reactions Using Catalysts (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はナフトアルデヒド類を製
造するための改良法に係るものである。ナフトアルデヒ
ド類、殊に1−ナフトアルデヒドは染料中間体、光沢は
んだめっき浴添加剤として価値ある化学品である。
【0002】
【従来の技術】1−ナフトアルデヒドは、例えば、1−
クロロメチルナフタレンに酢酸水溶液中でヘキサメチレ
ンテトラミンを作用させて製造することができる(S.
J.アンジアル、J.R.テタツ及びJ.G.ウィルソ
ン氏「Org.Synth.」IV,690(196
3))。しかしながら、上記方法は一般には入手困難な
1−クロロメチルナフタレンを原料とすることから、こ
のものから製造する必要がある。例えば、この中間体は
酢酸水中でナフタレンをクロロメチル化して製造され
る。この方法では、中間体を分離しない場合、ナフタレ
ン基準で収率52%で1−ナフトアルデヒドが得られて
いる。その他の方法に、1−クロロメチルナフタレンの
酸化に希硝酸を使用する(特開昭50−117737
号)方法、および1−ナフチルメタノ−ルの電解酸化に
よる方法などがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ナフタレンを出発物資
とする1−ナフトアルデヒドの製法として、中間体に1
−クロロメチルナフタレンを得、これを酸化する方法
は、実験室的には便利な方法であるが、多種類の薬剤を
使用し、特に溶媒として使用する塩酸−酢酸が廃液とし
て多量に発生し、工程が長いという欠点がある。その
他、中間体と未反応ナフタレンの分離方法、または中間
体を分離しない時の1−ナフトアルデヒドと未反応ナフ
タレンとの分離方法、これは蒸留によるのであるが、ナ
フタレン固体の析出による蒸留配管の閉塞など設備、操
業上の課題が多い。1−ナフトアルデヒドの合成法とし
て、ナフタレン以外の物質を出発物質とする方法、例え
ば1−メチルナフタレンの酸化(チェコスロバキア特許
第176,495号,英国特許第758,655号)、
1−ナフタレンメタノールの酸化(英国特許第2,12
5,068号)が公知であるが、これらの方法には、品
質上ないし資源的に原料の入手の困難性、収率の低いこ
となどの問題がある。我々は、高温、高圧を使用しな
い、穏やか条件で、安全性の高い薬品のみを使用し、ナ
フタレン類を直接ホルミル化する1−ナフトアルデヒド
類の工業的製造法につき研究した。
【0004】
【課題を解決するための手段、作用】置換基により活性
化されていない芳香環をホルミル化することによる芳香
族アルデヒドの合成法として、トリフルオロ酢酸を反応
溶媒に使用し、ヘキサミン(ヘキサメチレンテトラミ
ン)によりホルミル化する方法がある(Duff法、S
mith変法)が知られている(例えばW.E.スミス
氏「J.Org.Chem.」37,3972(197
2))。我々は、ナフタレン類からのナフトアルデヒド
類の製造に本法を試みた。しかしながら、常法による
と、ナフタレン類の殆どがタール化し、そのため、僅か
に目的物が得られたのみであった。引き続き、反応条件
につき鋭意検討した結果、ナフタレン類を溶解する副反
応溶媒を添加し、反応を低温、短時間に抑えることで、
副反応を抑制することができ収率を高めることができ
た。その他、反応溶媒を定量的に回収、精製して反応に
再使用する処方を発明し、工業的製造方法を完成した。
【0005】即ち、本発明は、反応溶媒としてのトリフ
ルオロ酢酸の存在下に、ヘキサミンとナフタレン類を反
応させ、次いで加水分解してナフトアルデヒド類を製造
するに際して、副反応溶媒としてクロロベンゼン、ジク
ロロベンゼンおよび/またはニトロベンゼンのうちの1
種あるいはこれらの混合物を添加して反応させることを
特徴とするナフトアルデヒド類の製造方法、および使用
したトリフルオロ酢酸の全量を回収し、反応に再使用す
る方法に存する。
【0006】更に、本発明を詳細に説明する。本法は最
初の仕込みにおいて、トリフルオロ酢酸にヘキサミン1
モルを溶解させ、これに副反応溶媒およびナフタレン類
を0.5〜1.5モル、好ましくは0.7〜1.0モル
を添加し、50〜100℃、好ましくは60〜80℃に
数時間反応させる。ヘキサミンはトリフルオロ酢酸に容
易に溶解するが、冷却なしに一括添加することは避けね
ばならない。両者は一種の塩を生成することから、発熱
が大であり、昇温する。昇温によるトリフルオロ酢酸の
蒸発を抑え、またヘキサミンの変質を防ぐために、この
溶解操作を冷却、攪拌下にトリフルオロ酢酸に小量づつ
ヘキサミンを添加して行なうことが重要である。
【0007】反応に使用する副反応溶媒の目的ないし作
用は、第一に、ナフタレン類の溶解能を高め、反応収率
を改善することとにある。このためには、加温したヘキ
サミン溶液に、ナフタレン類溶液を滴加する方法が有効
であった。第二に、副反応固体生成物を溶解して反応系
での固体の析出トラブルを防ぐことにある。即ち、副反
応溶媒を添加しないで反応させると、反応系に固体が析
出し、特に濃縮、加水分解時、塊状化するなどして、閉
塞トラブル、攪拌設備の故障などを生じた。第三に、加
水分解物からの抽出性を改良すること、第四にナフタレ
ン類の減圧蒸留を共沸により改善する作用である。これ
らの目的を満足する条件は、1.溶解度、2.反応性、
3.蒸気圧、沸点がある。
【0008】沸点に関しては、反応液濃縮時に蒸発せ
ず、ナフタレン類より低沸点で、ナフタレン類に近い沸
点を持つことが望ましい。その他、凝固点が低く、常温
で液体であり、有害性のない化合物が望ましい。これを
満足する化合物として、ニトロベンゼンがあり、それに
次ぐものとして、o−ジクロロベンゼン、クロロベンゼ
ンがあった。
【0009】次いで、濃縮してトリフルオロ酢酸の一部
を回収する。この回収トリフルオロ酢酸は次回の反応に
そのまま再使用出来る。回収時の加熱温度は100℃以
下とし、反応液タール化を抑える。温度を100℃以下
に抑えて、濃縮度を高めるため、減圧とすることも有効
である。しかし、このときにトリフルオロ酢酸を完全に
回収するための対策、たとえば深冷凝縮、アルカリ吸収
などの対策が無いと、トリフルオロ酢酸ロスが大とな
る。次いで、水を添加し、常温、1時間以内かきまぜて
加水分解する。加水分解した液は油層と水層の2層から
成る。これに抽出溶媒、例えばクロロホルムを添加、次
いで希アルカリ水を添加して系内のトリフルオロ酢酸を
中和し、中性条件下、反応で生成したナフトアルデヒド
類をクロロホルム層に抽出、分液して油層を得る。
【0010】ここで使用するアルカリ種としては、水酸
化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸
カリウムなどの水溶性のアルカリが使われ、その濃度は
塩が析出しない程度に希釈する。中和終点のpHは6〜
8とする。酸性が強いと、次の濃縮時にトリフルオロ酢
酸が蒸発して損失となる。アルカリ性とすると、アルカ
リとの反応物により分液性に問題を生じることと、過剰
のアルカリ相当の、反応生成物であるアンモニア、およ
びメチルアミンが濃縮時に留出するためである。油層を
水洗し、濃縮して、抽出溶媒を回収する。次いで、減圧
蒸留して副反応溶媒、未反応ナフタレン類を分離回収
し、最後にナフトアルデヒド類を留分として得る。即
ち、反応したナフタレン類に対し約60%の収率で精製
品を得る。
【0011】蒸留缶残からは抽出などでナフトアルデヒ
ド類を回収し、残さは焼却する。抽残の水層にはトリフ
ルオロ酢酸がアルカリ塩として溶解している。これを、
蒸発濃縮し、濃硫酸を添加して酸性化し、蒸発脱水して
無水トリフルオロ酢酸を回収し、次回反応に再使用す
る。蒸発濃縮の程度は、若干の水の残留は望ましい。即
ち、濃硫酸を添加したとき、硫酸濃度が80〜95%と
なるようにする。95%以上では硫酸による副反応を生
じるためこれを避ける。80%以下では脱水能が不足す
る。水量が不足であれば、希硫酸を添加してこの濃度範
囲に調整する。硫酸添加量はアルカリ等量プラス脱水能
保持、さらには流動性保持のため過剰の硫酸を使用す
る。所定温度にまで加熱して回収した後に残るトリフル
オロ酢酸は水蒸気蒸留により全部回収し、回収したトリ
フルオロ酢酸水は次回の加水分解水として使用する。従
って、本製造方法での廃水は先の濃縮による留分と本回
収蒸留廃酸とからなり、従来法、例えば、中間体にクロ
ロメチルナフタレンを経る方法が、処理に費用のかかる
多量の酢酸廃水を排出するのに比較して、廃水処理を大
幅に改善することができた。
【0012】以上、詳細に説明した通り、本発明者は、
ナフタレン類とヘキサミンからナフトアルデヒド類を好
収率で得るワンポット合成法を見い出し、工業的に有利
なナフトアルデヒド類の製造方法を完成した。即ち、本
発明はトリフルオロ酢酸を反応溶媒とするナフタレン類
のホルミル化によるナフトアルデヒド類の製造方法に関
する。
【0013】
【実施例】次に本発明を実施例によって更に詳細に説明
するが、しかし本発明は以下の実施例に限定されるもの
ではない。実施例中「部」とあるは「重量部」を意味す
る。
【0014】実施例1 還流冷却器つき反応フラスコにトリフルオロ酢酸246
部を仕込み、水浴にて冷却、攪拌しながらヘキサミン2
0.1部を少しづつ加え溶解した。次いで、60℃に加
熱し、別途ニトロベンゼン43.3部にナフタレン1
5.1部を溶解した溶液58.4部を10分かけて滴下
した。滴下後、60℃で150分間、引き続き80℃で
63分間加熱した。還流冷却器を蒸留冷却器に付け替
え、フラスコ内温を91℃になるまで加熱し、常圧濃縮
した。留分は62.0部であった。次いで、30mmH
gに減圧し、濃縮を内温50℃まで行ない、留分を−7
8℃の深冷トラップに濃縮させて73.3部を得た。こ
れを先の留分と合わせて分析(滴定)した。トリフルオ
ロ酢酸純度は99%であり、ここでの回収率は55%で
あった。濃縮反応液を常温に冷却し、これに水167部
を滴下し、次いでクロロホルム246部を滴下し、常温
で1時間攪拌した。次いで、20%水酸化ナトリウム水
溶液を滴下してpH7まで中和した。所要20%アルカ
リ量は147部であった。後、静置し、分液して下層に
クロロホルム層、上層に水層を得た。加水分解液に固体
析出は無く、抽出液の中間層の存在は僅かであり、分液
性、抽出率共に良好であった。これは、副反応溶媒のニ
トロベンゼンの効果が認められた。抽出分液した油層を
ガスクロマトグラフィー分析した。その結果、ナフタレ
ン反応率は92.5%、1−ナフトアルデヒド収率5
5.2%、選択率(反応したナフタレンに対する収率)
59.7%であった。油層を水洗し、蒸留して、1−ナ
フトアルデヒド、沸点104℃/3mmHg、を純度9
9%品で7.5部得た。1−ナフトアルデヒドの初留は
ニトロベンゼンとおよびナフタレンとの混合品から成
り、ナフタレン単独留分は無く、従ってナフタレンの固
体析出による留出管閉塞の恐れはなかった。即ち、ニト
ロベンゼンによる共沸蒸留効果があった。蒸留缶残は常
温で固化し、ジメチルホルムアミドに溶解した。缶残中
の1−ナフトアルデヒドはイソプロピルアルコールによ
る抽出により回収できた。抽出残の水層を70℃減圧濃
縮し、液状の粗トリフルオロ酢酸ナトリウム塩220部
を得た。これに90%硫酸500部を添加して蒸留し、
無水トリフルオロ酢酸95部を留出させ回収した。引き
続き水蒸気蒸留によりトリフルオロ酢酸25%水溶液6
2.5部を得た。全トリフルオロ酢酸回収率は99.8
%であった。
【0015】実施例2 実施例1において回収した無水トリフルオロ酢酸を使用
した以外は、実施例1と同様の方法にて反応させた。抽
出油層の分析値はナフタレン反応率87%、1−ナフト
アルデヒド収率47%、選択率54%であった。
【0016】実施例3 副反応溶媒にo−ジクロロベンゼンを使用した以外は実
施例2と同様に反応させた。反応温度80〜86℃で1
73分、後、常圧、99℃まで加熱濃縮した。回収トリ
フルオロ酢酸量は反応仕込みに対して43%であった。
加水分解後、抽出した油層分析値は、ナフタレン反応率
98.6%、1−ナフトアルデヒド収率47%であっ
た。
【0017】実施例4 副反応溶媒にクロロベンゼンを使用した以外は実施例1
と同様に反応させた。仕込み比は、トリフルオロ酢酸2
46部に対しヘキサミン17.0部、ナフタレン15.
4部であった。反応温度66℃で220分、後101℃
まで加熱濃縮してトリフルオロ酢酸を44%回収した。
加水分解後、抽出した油層分析値は、ナフタレン反応率
72%、1−ナフトアルデヒド収率43.4%、選択率
60.3%であった。抽出油層を濃縮、減圧蒸留して純
度98%の1−ナフトアルデヒドを得た。ナフタレン留
分から中間留にかけて若干量の固体がクーラー内部に付
着した。これは、1−ナフトアルデヒド本留分前にフラ
スコ内にクロロベンゼンを追加仕込み、蒸留してナフタ
レンを溶解流出させた。
【0018】比較例1 トリフルオロ酢酸246部に対し、ヘキサミン22.5
部、ナフタレン20.6部を一括仕込み、60℃で24
0分加熱し、加水分解後クロロホルム抽出した。その結
果、ナフタレン反応率71%、1−ナフトアルデヒド収
率26%、選択率37%を得た。なお、加水分解物には
固体析出があり、反応器壁に固着した。更に、製品の減
圧蒸留においては、未反応ナフタレンがクーラー管内部
に析出し、製品純度を低下させた。また、蒸留留出配管
の閉塞の恐れを生じた。
【0019】
【発明の効果】反応を100℃以下の穏やかな条件下に
行なうことで、ナフタレンの大部分を、1−ナフトアル
デヒドに転化させ得た。この時、副反応溶媒を使用する
ことにより、好ましくない副反応を抑え、引き続く1−
ナフトアルデヒドの抽出分離を容易にした。更に、副反
応溶媒は1−ナフトアルデヒド蒸留において、ナフタレ
ンの共沸溶媒として作用し、ナフタレン分離を容易にし
た。反応溶媒に使用したトリフルオロ酢酸を抽出残の水
溶液からナトリウム塩として濃縮回収し、濃硫酸で脱水
して蒸留精製し、これを繰り返し使用する。これによ
り、汚染度の少ない、従って処理の容易な廃水を得るこ
とによって、本法の経済性を大幅に高めることができ
た。以上詳細の説明の通り、本発明方法は著しい工業的
進歩を示すものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07C 47/546 C07B 61/00 300

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 トリフルオロ酢酸の存在下に、ヘキサメ
    チレンテトラミンとナフタレン類を反応させ、次いで加
    水分解してナフトアルデヒド類を製造するに際して、副
    反応溶媒として、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンお
    よび/またはニトロベンゼンのうちの1種あるいはこれ
    らの混合物を添加して反応させることを特徴とするナフ
    トアルデヒド類の製造方法。
  2. 【請求項2】 ナフタレン類を副反応溶媒に溶解させ、
    溶液として反応系に添加することを特徴とする請求項1
    記載のナフトアルデヒド類の製造方法。
  3. 【請求項3】 反応液からナフトアルデヒド類を抽出分
    離した残りのトリフルオロ酢酸水に、水酸化ナトリウ
    ム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウムまたは炭酸カリウ
    ムなどから成るアルカリを添加してpH5〜8の範囲に
    中和し、次いで濃縮脱水し、汚染されていない廃水を得
    ると共に、濃縮物に濃硫酸(好ましくは80〜95%濃
    度のもの)を添加し、蒸留して無水トリフルオロ酢酸を
    回収し、このトリフルオロ酢酸を反応に反復使用するこ
    とを特徴とする請求項1記載のナフトアルデヒド類の製
    造方法。
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