JP3184695B2 - 衝撃エネルギー吸収体およびこれを用いた自動車用ドアトリム - Google Patents

衝撃エネルギー吸収体およびこれを用いた自動車用ドアトリム

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JP3184695B2 JP02152894A JP2152894A JP3184695B2 JP 3184695 B2 JP3184695 B2 JP 3184695B2 JP 02152894 A JP02152894 A JP 02152894A JP 2152894 A JP2152894 A JP 2152894A JP 3184695 B2 JP3184695 B2 JP 3184695B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、衝撃エネルギーの吸収
特性に優れた衝撃エネルギー吸収体およびこれを用いた
自動車用ドアトリムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】最近では、自動車などの車輛の安全性向
上の一環として側突事故に対する対応が問題となってき
ており、例えばドア内装トリム基板の内部や膨出部に衝
突時における衝撃を吸収するエネルギー吸収体を配置し
たものが、特開平3−28020号公報や実開昭51−
158018号公報等にあるように種々提案されてい
る。ところが、従来のこの種エネルギー吸収体はいずれ
もブロック状の硬質ポリウレタンの発泡成形体であって
衝撃荷重を破壊現象でエネルギー吸収するため、安定し
た特性が得られないという問題点があり、また、ブロッ
ク状の硬質ポリウレタンの発泡成形体の場合、弾性限界
を上回る荷重が加わった時には衝撃荷重吸収によって破
壊されてしまうため繰り返して用いることができずコス
ト高になるという問題点もあった。
【0003】そこで、本発明者は複数の張出板部が衝撃
方向を中心軸として放射状に張出成形された弾性材より
なるブロック状の吸収体本体を利用した衝撃エネルギー
吸収体を開発し、先に特願平5−254093号として
提案したが、先の発明においては従来のものに比べてよ
り高い衝撃吸収特性を発揮するものの、図8に示される
ように衝撃荷重速度が大きくなる(例えば、1m/sec 以
上)と、張出板部に割れが生じて荷重の落ち込みが発生
し、エネルギー吸収効率が低下するという現象があるこ
とが判明した。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記のような
従来の問題点を解決して、衝撃荷重が小さい間は弾性的
に歪んで安定的に衝撃を吸収でき、弾性限界を超えた荷
重が加わった場合にも破壊現象を生じることなく十分な
吸収特性を発揮して安定して衝撃を吸収することができ
るとともに、衝撃荷重速度が大きい場合にも割れを発生
させることなく荷重エネルギーを効率よく吸収すること
ができ、更には繰り返し使用ができてコストの低減化を
図ることができる衝撃エネルギー吸収体およびこれを用
いた自動車用ドアトリムを提供することを目的として完
成されたものである。
【0005】上記の課題を解決するためになされた本発
明は、弾性材よりなるブロック状の吸収体本体の前面を
被取付部材への取付面に形成するとともに後面を受け面
とした衝撃エネルギー吸収体において、前記吸収体本体
に衝撃方向と垂直な面方向における先端部の肉厚が中心
部よりも大きい張出板部を衝撃方向を中心軸として複数
個放射状に張出成形し、弾性限界を超えた荷重が加わっ
た場合に張出板部が衝撃方向に対して垂直方向に弓なり
に座屈変形して衝撃エネルギーを吸収するようにしたこ
とを特徴とする衝撃エネルギー吸収体を第1の発明と
し、この衝撃エネルギー吸収体がドア内装トリム基板の
内面所要部に前記取付面をもって装着されている自動車
用ドアトリムを第2の発明とし、前記のような衝撃エネ
ルギー吸収体と同種の衝撃エネルギー吸収用隆起部がド
ア内装トリム基板本体の内面に成形一体化されている自
動車用ドアトリムを第3の発明とするものである。
【0006】
【作用】第1の発明である衝撃エネルギー吸収体は、ド
ア内装トリム基板やドア外板或いはコンテナ側板などの
内面に前面の取付面をもって装着しておけば、側突事故
が生じても衝撃荷重が小さい間は弾性材よりなるブロッ
ク状の吸収体本体が弾性的に歪んで安定的に衝撃を吸収
し、また、弾性限界を超えた荷重が加わった場合には衝
撃方向を中心軸として放射状に張出成形された全ての張
出板部が一定方向へ撓んで荷重を受けることとなるの
で、破壊を生じることなく安定的に衝撃エネルギーを吸
収することとなり、更に速度の大きい衝撃荷重が加わっ
た場合であっても先端部の肉厚が大きく成形されている
ので、十分に荷重を吸収することができ割れの発生を防
止することとなる。また、第2および第3の発明である
自動車用ドアトリムは、内面の衝撃エネルギー吸収体お
よび衝撃エネルギー吸収用隆起部によって側突事故時に
前記同様に安定的に衝撃エネルギーが吸収されるので、
前記した第1の発明に記載した理由と同じにより側突事
故時における乗員の安全性を確保できる。
【0007】
【実施例】次に、本発明を図示の実施例について詳細に
説明する。図1は第1の発明である衝撃エネルギー吸収
体の第1の実施例を示すもので、1は熱可塑性発泡樹脂
などの弾性体よりなる吸収体本体である。この吸収体本
体1は先端部の肉厚が中心部よりも大きい4枚の張出板
部2が衝撃方向を中心軸として放射状に均等に張出成形
されたものである。なお、図1に示す実施例においては
先端部の肉厚が中心部より徐々に大きくなるよう均一な
テーパ面として構成されているが、図2に示されるよう
に、後述する張出板部2の撓み方向に膨出部を形成した
ものとすることもでき、また、張出板部2の枚数につい
ても実施例のように4枚とする外、図3に示されるよう
に3枚とするなど、その枚数は3〜12枚程度の範囲で
任意に選択できる。また、この吸収体本体1はその前面
が被取付部材であるドア内装トリム基板の被取付面形状
に対応する取付面1aに形成され、一方、後面は受け面
1bとされたブロック状のものとしている。なお、この
実施例における吸収体本体1は、十分な軽量化を図るこ
とができるうえに充分な荷重−歪特性を発揮することが
できるように、ポリプロピレン樹脂やポリフェニレンオ
キシド変性ポリスチレン樹脂等の熱可塑性合成樹脂の一
次発泡ビーズを原料として発泡成形されている。
【0008】このように第1の発明は、吸収体本体1を
先端部の肉厚が中心部よりも大きい張出板部2が衝撃方
向を中心軸として複数個放射状に張出成形された弾性材
で成形したことに特徴的構成があり、この張出板部2は
弾性限界を超えた荷重が加わった場合に破壊や亀裂を生
じることなく安定した衝撃吸収特性を発揮するという作
用効果を発揮する。即ち、図4に示されるように弾性限
界を超えた荷重が図面上下向きに加わった場合、ある張
出板部2の座屈により弓なりに変形を生じるとその他の
張出板部2でも次々と同方向へ弓なりに座屈変形を生
じ、この変形した状態において全体で安定した定荷重−
歪特性を発揮し破壊等を発生させることなく、衝撃エネ
ルギーを十分に吸収するのである。また、速度の大きい
衝撃荷重が加わった場合であっても先端部の肉厚が大き
く成形されているので、十分に荷重を吸収することがで
き割れの発生を防止し荷重エネルギーを効率よく吸収す
ることとなる。なお、弾性材よりなるブロック状の吸収
体本体1はゴムやポリウレタン樹脂発泡体などの熱硬化
性合成樹脂発泡体であってもよいが、前記したような熱
可塑性合成樹脂発泡体としたとき、定荷重−歪特性をは
じめ耐久性、コストなどの点から特に好ましいものとな
る。なお、このような第1の発明に係る衝撃エネルギー
吸収体は、自動車用ドアトリム以外でも輸送用コンテナ
など側突事故の生じるおそれのある物品には全て適用で
きることは勿論である。
【0009】次に、第2の発明である前記のような衝撃
エネルギー吸収体を用いた自動車用ドアトリムを図5に
示した実施例をもとに説明する。図5において、10は
任意の材料をもって基準面10aに対して膨出する膨出
部11が形成されたものとして三次元形状に成形された
ドア内装トリム基板であって、その膨出部11の内部に
は前記した衝撃エネルギー吸収体をブロック状の吸収体
本体1の受け面1bが前記基準面10aと略同一面にあ
るように前記取付面1aをもって装着してある。このよ
うな自動車用ドアトリムは、膨出部11に外圧が加えら
れた場合に前記した衝撃エネルギー吸収体が安定的に衝
撃エネルギーを吸収するので、前記した第1の発明に記
載した理由と同じ理由により側突事故時における乗員の
安全性を確保できる。
【0010】また、第2の発明ではドア内装トリム基板
10が前記したように任意の材料をもってしたものでよ
いが、図6に示すように、先端部の肉厚が中心部よりも
大きい張出板部22が衝撃方向を中心軸として複数個放
射状に張出成形された弾性材よりなる衝撃エネルギー吸
収用の隆起部本体21をドア内装トリム基板本体20の
内面に成形一体化して該隆起部本体21の端面を受け面
21bとしたものが第3の発明であって、このようにド
ア内装トリム基板本体20の内面に衝撃エネルギー吸収
用の隆起部本体21を成形一体化しておけば製造工程を
簡易化できる利点がある。この場合、衝撃エネルギー吸
収用の隆起部本体21はドア内装トリム基板本体20と
同材のポリプロピレン樹脂やポリフェニレンオキシド変
性ポリスチレン樹脂等の熱可塑性合成樹脂により成形す
るのが一般的であるが、多色成形法などにより異種の合
成樹脂材料をもって衝撃エネルギー吸収用の隆起部本体
21がドア内装トリム基板本体20よりもより弾性に優
れたものとして成形するようにしてもよい。また、前記
した衝撃エネルギー吸収体の使用例は膨出部11のある
自動車用ドアトリムのドア内装トリム基板10に取付け
た場合のみであるが、膨出部がないドア内装トリム基板
の内面に衝撃エネルギー吸収体を突出状態に取付けても
よい。
【0011】いずれにしても、本発明では衝突時におけ
る衝撃エネルギーを吸収するようドアトリムの所定箇所
に先端部の肉厚が中心部よりも大きい張出板部が衝撃方
向を中心軸として複数個放射状に張出成形された弾性材
よりなる衝撃吸収部を形成しておくことにより、側突事
故が生じて受け面にドア外板より衝撃が伝えられても、
熱可塑性発泡樹脂などの弾性体よりなる衝撃吸収部が衝
撃荷重の小さい間は弾性的に歪んで安定的に衝撃を吸収
することとなるが、弾性限界を超えた荷重が加わった場
合でも、衝撃方向を中心軸として複数の張出板部が放射
状に張出成形されているので、それら張出板部が一定方
向へ撓んで荷重を受けることとなり、破壊を生じること
なく安定的に衝撃を吸収することとなる。更に、速度の
大きい衝撃荷重が加わった場合であっても先端部の肉厚
が大きく成形されているので、十分に荷重を吸収するこ
とができ割れの発生を防止し荷重エネルギーの吸収を低
下することなく効率的に行えることとなるのである。
【0012】(実験例)次に、第1の発明である衝撃エ
ネルギー吸収体を用いた実験結果を示す。熱可塑性発泡
合成樹脂としてポリプロピレンのビーズ状材料を主材と
して15倍の発泡倍率で図1に示すような張出板部を4
枚とした吸収体本体を成形し、JIS K7220の圧
縮試験に従い荷重速度5m/sec で荷重−歪特性を測定し
た結果は、図7に示されるように安定したエネルギー吸
収特性を発揮することが確認できた。また、荷重速度が
大きいにもかかわらず何ら亀裂や破壊も発生しておらず
再利用可能なことも確認できた。なお、図2および図3
に示すような衝撃エネルギー吸収体を用いた場合につい
ても同様の実験を行ったところ、張出板部を4枚とした
場合に比べ若干劣るものの、いずれも弾性限界を超えた
荷重を加えた領域においてもかなり安定したエネルギー
吸収特性を発揮することおよび速度の大きい衝撃荷重が
加わった場合であっても割れを発生することなく十分に
荷重を吸収することが確認できた。一方、先に出願した
均一な肉厚の張出板部で構成された硬質ポリウレタン発
泡体よりなるブロック状の衝撃エネルギー吸収体(特願
平5−254093号)を同様箇所に取り付けて同様の
試験を行った結果は図8に示すとおりであって、従前の
ブロック状の硬質ポリウレタンの発泡成形体より優れて
はいるものの、大きな荷重速度の影響から張出板部に割
れが生じて荷重の落ち込みが発生し、エネルギー吸収効
率が低下するもので、張出板部の先端部の肉厚を中心部
よりも大きいものとするだけで優れた特性が得られるこ
とが確認できた。
【0013】
【発明の効果】以上の説明からも明らかなように、本発
明は衝撃荷重が小さい間は弾性的に歪んで安定的に衝撃
を吸収でき、また、弾性限界を超えた荷重が加わった場
合にも破壊現象を生じることなく十分な吸収特性を発揮
して安定して衝撃を吸収することができるとともに、衝
撃荷重速度が大きい場合にも割れを発生させることなく
荷重エネルギーを効率よく吸収することができ、更には
繰り返しの使用ができてコストの低減化を図ることがで
きるものである。よって本発明は従来の問題点を一掃し
た衝撃エネルギー吸収体およびこれを用いた自動車用ド
アトリムとして業界の発展に寄与するところ極めて大き
いものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の発明である衝撃エネルギー吸収体の実施
例を示す斜視図である。
【図2】衝撃エネルギー吸収体のその他の実施例を示す
斜視図である。
【図3】衝撃エネルギー吸収体のその他の実施例を示す
斜視図である。
【図4】図1に示した衝撃エネルギー吸収体の座屈の変
形状態を示す説明図である。
【図5】第2の発明である自動車用ドアトリムの実施例
を示す斜視図である。
【図6】第3の発明である自動車用ドアトリムの実施例
を示す要部の断面図である。
【図7】第1の発明の実施例における荷重−歪特性を示
すグラフである。
【図8】従来例における荷重−歪特性を示すグラフであ
る。
【符号の説明】
1 吸収体本体 1a 取付面 1b 受け面 2 張出板部 10 ドア内装トリム基板 20 ドア内装トリム基板本体 21 衝撃エネルギー吸収用の隆起部本体 21b 受け面 22 張出板部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B60J 5/00 F16F 7/00 B60R 21/04

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 弾性材よりなるブロック状の吸収体本体
    (1) の前面を被取付部材への取付面(1a)に形成するとと
    もに後面を受け面(1b)とした衝撃エネルギー吸収体にお
    いて、前記吸収体本体(1) に衝撃方向と垂直な面方向に
    おける先端部の肉厚が中心部よりも大きい張出板部(2)
    を衝撃方向を中心軸として複数個放射状に張出成形し、
    弾性限界を超えた荷重が加わった場合に張出板部(2) が
    衝撃方向に対して垂直方向に弓なりに座屈変形して衝撃
    エネルギーを吸収するようにしたことを特徴とする衝撃
    エネルギー吸収体。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の衝撃エネルギー吸収体
    が、ドア内装トリム基板(10)の内面所要部に前記取付面
    (1a)をもって装着されていることを特徴とする自動車用
    ドアトリム。
  3. 【請求項3】 衝撃方向と垂直な面方向における先端部
    の肉厚が中心部よりも大きい張出板部(2) が衝撃方向を
    中心軸として複数個放射状に張出成形されて、弾性限界
    を超えた荷重が加わった場合に張出板部(2) が衝撃方向
    に対して垂直方向に弓なりに座屈変形して衝撃エネルギ
    ーを吸収するようにした弾性材よりなる隆起部本体(21)
    の端面を受け面(21b) とした衝撃エネルギー吸収用隆起
    部が、ドア内装トリム基板本体(20)の内面に成形一体化
    されていることを特徴とする自動車用ドアトリム。
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