JP3183935U - 配管の継手構造及び主蒸気配管 - Google Patents

配管の継手構造及び主蒸気配管 Download PDF

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Abstract

【課題】内部流体の破断前漏洩が成立するとともに、流れ加速型腐食に対する特性が十分な配管の継手構造、及び主蒸気配管を提供する。
【解決手段】Crを含む炭素鋼からなる第一配管11及び第二配管12と、これら第一配管と第二配管との端部同士を溶接する溶接金属部21と、を備え、前記第一配管及び前記第二配管のうち対向するそれぞれの端面が、前記第一配管及び前記第二配管の内周面に連続して互いに溶接される接触部13と、該接触部の外周側に連続して形成され、前記溶接金属部が設けられる傾斜部14と、を有する。
【選択図】図1

Description

本考案は、例えば原子力プラントに用いられる配管の継手構造に関するものである。
従来、原子力プラントの主蒸気配管をはじめとする内部流体を含んだ配管では、例えば、図3に示すように(1)、(2)、(3)で示す順序で、疲労又は腐食に起因するき裂が進展することが想定される。図3において、(A)、(B)、(C)は、き裂の進展状況を示している。
このようなき裂は、配管を構成する材料の破壊靭性が低い場合には、き裂が貫通(例えば図3における(2)の状態)する前に不安定破壊が発生する可能性があり、この場合、何ら予兆なく突然破壊に至ることになり問題となる。
このように配管の内面からき裂が進展する場合に、不安定破壊が発生する前にき裂が貫通して漏洩した内部流体を早期に検知することにより、き裂部に不安定破壊が発生する前に原子力プラントを安全に停止操作する破断前漏洩(Leak Before Break,以下LBBと表記する)という概念が、原子力プラントの配管設計において採用されている。
このようなLBBを成立させるために、例えば、不安定破壊が発生する前に発生する内部流体の漏洩を早期に効率的に検知するための種々の技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
なお、上述した原子力プラントの配管としては、材料強度、耐腐食性、コスト等の観点から炭素鋼管が使用される場合がある。
特開2002−106800号公報
ところで、LBBの成立に関して、不安定破壊が生じる限界き裂寸法(例えば、図3における(3))を、貫通が生じるき裂寸法(例えば、図3における(2))に対して大きくして不安定破壊前の内部流体の漏洩を容易に検知することが有効であり、そのためにはき裂貫通時点で不安定破壊をしない破壊靭性を有する材料で構成される必要がある。
一方、上述したように原子力プラントの配管(例えば主蒸気配管)には、炭素鋼管が使用される場合があり、この炭素鋼管の内部に流体が流れる場合、流れ加速型腐食(Flow Accelerated Corrosion,以下FACと表記する)が生じるため、このFACを考慮して配管を設計する必要がある。このFACは、配管を構成する金属の化学的な腐食が内部流体の流れによって加速する減肉現象である。
また、配管は、配管の端面同士が溶接される継手構造を有している場合があり、このような配管の継手構造においても、上述したLBBが成立するとともに、FACに対する要求特性を満たす必要がある。
図4に従来の配管の継手構造101を示す。この配管の継手構造101は、第一配管111と、第二配管112と、これらの第一配管111及び第二配管112を接合する溶接金属部121とを備えている。このように溶接金属部121が配管の内周面側に形成され、内部流体と直接接触すると、FACに対する特性が低下することがあった。
そこでなされた本考案の目的は、LBBが成立するとともに、FACに対する特性が十分な配管の継手構造、及び主蒸気配管を提供することである。
本考案は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本考案の配管の継手構造は、Crを含む炭素鋼からなる第一配管及び第二配管と、これら第一配管と第二配管との端部同士を溶接する溶接金属部と、を備え、前記第一配管及び前記第二配管のうち対向するそれぞれの端面が、前記第一配管及び前記第二配管の内周面に連続して互いに溶接される接触部と、該接触部の外周側に連続して形成され、前記溶接金属部が設けられる傾斜部と、を有することを特徴としている。
本考案の配管の継手構造によれば、Crを含む炭素鋼からなる第一配管及び第二配管のうち対向するそれぞれの端面が、第一配管及び第二配管の内周面に連続して互いに溶接される接触部を有しているので、Crを含む炭素鋼によって配管の内周面側が構成されることになる。すなわち、第一配管及び第二配管の溶接部において、内周面側がCrを含む第一配管及び第二配管が溶接されることで形成され、溶接金属部が内周面側に露出しないので、LBBを成立させるとともに、FACに対する特性も十分に確保することができる。
前記炭素鋼において、Cr含有量が0.05mass%超とされていることが好ましい。
Cr含有量が0.05mass%超とされた炭素鋼は、LBBが成立するとともに、FACに対する特性も良好となるので、このような炭素鋼を用いた配管の継手構造とすることにより、配管の継手構造の信頼性を向上させることができる。
また、上述したように配管の内周面側に溶接金属部が露出しない構成とされているので、溶接金属部を構成する材料としては、Cr含有量が第一配管及び第二配管よりも少ない炭素鋼からなる溶接金属を用いることができ、溶接性を確保できる。
前記炭素鋼において、Cr含有量が0.40mass%以下とされていることが好ましい。
この場合、第一配管及び第二配管の製造コストを低減することができる。
本考案の主蒸気配管は、上述の配管の継手構造を有することを特徴としている。
本考案の主蒸気配管によれば、上述した配管の継手構造を有しているため、配管の継手構造においてもLBBが成立し、FACに対する特性も良好であるため、主蒸気配管の信頼性を向上させることができる。
本考案によれば、LBBが成立するとともに、FACに対する特性が十分な配管の継手構造、及び主蒸気配管を提供することができる。
本考案の実施形態に係る配管の継手構造の概略説明図である。 本考案の実施形態に係る配管の破壊靭性のJ積分値とテアリングモジュラスとの関係を示す図である。 配管におけるき裂の進展を説明するための概略図である。 従来の配管の継手構造の概略説明図である。
以下、添付図面を参照して、本考案の実施形態について説明する。
本考案の実施形態は、例えば原子力プラント(PWR、加圧水型原子炉)の主蒸気配管が有する配管の継手構造1である。図1に、本考案の実施形態に係る配管の継手構造1を示す。
配管の継手構造1は、図1に示すように、第一配管11及び第二配管12と、これら第一配管11と第二配管12との端部同士を溶接する溶接金属部21とを備えている。
第一配管11及び第二配管12は、円筒状の配管とされており、配管の内部には内部流体として高温・高圧の蒸気が流れている。図1においては、第一配管11及び第二配管12の長手方向の断面の一部が図示されている。図1において、下側が第一配管11及び第二配管12の内面側、上側が第一配管11及び第二配管12の外面側である。
これら第一配管11及び第二配管12は、Crを含有する炭素鋼によって構成されている。炭素鋼において、Crの含有量は0.05mass%超0.40mass%以下とされていることが好ましく、より好ましくは0.10mass%以上0.40mass%以下である。第一配管11及び第二配管12の厚さ(図1においてH1で示される厚さ)は、例えば40mmである。
そして、上述の第一配管11及び第二配管12のうち対向するそれぞれの端面が、第一配管11及び第二配管12同士が溶接された接触部13と、溶接金属部21が設けられる傾斜部14とを有している。
接触部13は、第一配管11及び第二配管12の内周面に連続して互いに溶接されることによって形成されている。すなわち、第一配管11及び第二配管12の溶接部において、内周面側のCrを含む第一配管11及び第二配管12が溶接されるのである。しかしながら、接触部13を接合する際に用いる炭素鋼の溶接材料は、第一配管11及び第二配管12に含まれるCrが溶接により希釈されることを考慮し、第一配管11及び第二配管12とCr含有量が同程度の溶接材料を選定しなければならない。
この接触部13は、溶接金属部21が溶接される際に流入する熱、及び上述の第一配管11及び第二配管12とCr含有量が同程度の溶接材料によって、第一配管11及び第二配管12の端部同士が溶接されて形成されるものである。溶接方法としては、例えばアーク溶接を用いれば良い。
接触部13の厚さ(図1においてH2で示される厚さ)は、前述の溶接時において片側溶接において第一配管11及び第二配管12を十分溶かし込み裏波が形成される厚さとされている。具体的には、例えばH1が40mmの場合、H2は1.5mm以上3mm以下である。
傾斜部14は、第一配管11及び第二配管12を溶接する際に、溶接金属部21を設けるために形成された溝であり、接触部13の外周側に連続して形成されている。本実施形態において、傾斜部14は、第一配管11及び第二配管12の延在方向に対して斜め方向に形成されており、第一配管11及び第二配管12の内周面側から外周面側にかけて、傾斜が徐々に大きくなるように形成されている。本実施形態においては、第一配管11及び第二配管12の突き合わせた開先の断面形状は、U型開先とされている。第一配管11及び第二配管12のそれぞれの傾斜部14は、間に溶接金属が介在されるように互いに離間している。
溶接金属部21は、第一配管11及び第二配管12を溶接するための部材であり、第一配管11及び第二配管12の端部が突き合わされて形成される傾斜部14に設けられている。この溶接金属部21は、Crを0.01mass%以上0.05mass%以下含有する炭素鋼により構成されることが好ましい。
溶接金属部21は、例えばその溶接金属部21を構成するビードがアーク溶接によって溶接されることで形成される。
以下に、Crを含有する炭素鋼に対して、LBBの成立性を確認するために行った実験結果を示す。
LBBの成立性は、評価対象となる材料の破壊靱性のJ積分値及びテアリングモジュラスの関係が、LBBの要求線以上であるかどうかを判断することによって行われる。ここで、破壊靭性のJ積分値及びテアリングモジュラスは、例えば使用する材料について破壊靭性試験を実施することにより求められる。なお、図2においては、LBBの要求線としてSF(ストレスファクター、引張強度の測定値/引張強度のスペック値)=1.2の場合を示しているが、LBBの要求線はこのSFの値に応じて適宜設定すれば良い。
Crを約0.01mass%含有する炭素鋼の溶接金属について求めた破壊靱性のJ積分値とテアリングモジュラスの関係を図2に示す。なお、図2の曲線aは板厚が1.5インチ厚さの試験片を使用して実験的に求められた曲線であり、曲線b及び曲線cは板厚が1インチ厚さの試験片を使用して実験的に求められた曲線である。
図2に示すように、Crを0.01mass%含有する炭素鋼の溶接金属では、LBBの要求線を上回っており、LBBが成立することが確認された。
なお、実験で用いられたCrを約0.01mass%含有する炭素鋼の溶接金属の具体的な組成は、C:0.07mass%、Mn:1.46mass%、P:0.006mass%、S:0.009mass%、Si:0.81mass%、Cr:0.01mass%、Cu:0.19mass%、Mo:0.01mass%未満、Ni:0.02mass%、V:0.001mass%未満、残部がFe及びその他の不可避不純物からなるものである。
また、Crを含有する炭素鋼に対するFACに対する特性は、EPRI(Electric Power Research Institute)による報告書(NSAC−202L−R3)に記載がある。この報告書によれば、Crを0.10%含有する炭素鋼においては、Crを含有しない炭素鋼と比較してFACに対する特性が大きく向上することが分かる。すなわち、Crを含有する炭素鋼は、FACに対する特性が良好である。なお、炭素鋼においてCr含有量が増加すれば、FACに対する特性は向上する。
以上のような構成とされた本実施形態に係る配管の継手構造1によれば、Crを含む炭素鋼からなる第一配管11及び第二配管12のうち対向するそれぞれの端面が、第一配管11及び第二配管12の内周面に連続して互いに溶接される接触部13を有しているので、Crを含む炭素鋼によって配管の内周面側が構成されることになるので、LBBを成立させるとともに、FACに対する特性も十分に確保することができる。
炭素鋼において、Cr含有量が、好ましくは0.05mass%超とされているので、この場合、確実にLBBが成立するとともに、FACに対する特性も良好となる。Cr含有量が、さらに好ましくは0.10mass%以上とされており、この場合、より確実にLBBが成立するとともに、FACに対する特性もさらに良好となる。
また、炭素鋼において、Cr含有量が、好ましくは0.40mass%以下とされており、この場合、第一配管11及び第二配管12の製造コストを低減することができる。
溶接金属部21は、好ましくはCrを0.01mass%以上0.05mass%以下含有する炭素鋼によって構成されているので、溶接性を確保することができる。すなわち、溶接金属部21のCr含有量が0.05mass%を超える場合、溶接性が低下する。
炭素鋼においてCr含有量が増加すると、LBBも成立しやすくなるとともに、FACに対する特性も良好となるため、図4に示すような従来の配管の継手構造101において、溶接金属部21をCr含有量が0.05mass%超の炭素鋼で構成することができれば、LBBを成立させることができるとともに、FACに対する特性も改善されると考えられるが、Cr含有量が0.05mass%超の炭素鋼からなる溶接金属は、溶接性が悪化するため、溶接金属部21に使用することは難しい。そこで、本実施形態では、好ましくはCr含有量が0.05mass%を超える炭素鋼によって第一配管11及び第二配管12を構成し、これらの第一配管11及び第二配管12の接触部13を溶接することで溶接部において第一配管11及び第二配管12を内周面側とするので、LBBを確実に成立させ、かつFACに対する特性も確実に良好にできるようになるのである。
以上、本考案の実施形態について説明したが、本考案はこれに限定されることはなく、その考案の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
なお、上記実施の形態では、第一配管11及び第二配管12の傾斜部14が突き合わされてU字形状の開先を形成する場合について説明したが、他の形状でも良く、例えば開先がV字形状とされていても良い。
1、101 配管の継手構造
11、111 第一配管
12、112 第二配管
13 接触部
14 傾斜部
21、121 溶接金属部

Claims (4)

  1. Crを含む炭素鋼からなる第一配管及び第二配管と、
    これら第一配管と第二配管との端部同士を溶接する溶接金属部と、を備え、
    前記第一配管及び前記第二配管のうち対向するそれぞれの端面が、
    前記第一配管及び前記第二配管の内周面に連続して互いに溶接される接触部と、
    該接触部の外周側に連続して形成されて、前記溶接金属部が設けられる傾斜部と、を有することを特徴とする配管の継手構造。
  2. 前記炭素鋼において、Cr含有量が0.05mass%超とされていることを特徴とする請求項1に記載の配管の継手構造。
  3. 前記炭素鋼において、Cr含有量が0.40mass%以下とされていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の配管の継手構造。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の配管の継手構造を有する主蒸気配管。
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