JP3181826U - 歯科用インプラント - Google Patents

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Abstract

【課題】インプラント治療のオッセオインテグレーションの促進期間中に、フィクスチャー部の汚染を容易に除去すること、およびインプラント治療終了後のインプラント頸部における唾液の流れによる容易な防汚と、インプラント周囲炎に対するリカバーを容易にすることを可能にした歯科用インプラントを提供する。
【解決手段】歯科用インプラント10のフィクスチャー14の上部に微細な溝を設け、さらにフィクスチャー14の表面に親水化処理を施す。溝は、フィクスチャー14の中心軸と水平方向か、または、フィクスチャーの表面に螺旋状に設け、洗浄水が上部から親水面を通して骨に埋入されたフィックスチャー深部にまで到達できるようにしている。また、インプラント10のカラー部12にも微細な溝を設け、カラー部の表面に親水化処理を施してもよい。
【選択図】図1

Description

本考案は、歯槽骨に埋入後のインプラント上部に付着した汚染物を容易に除去すること、およびインプラント治療終了後のインプラント頸部における唾液の流れによる容易な防汚と、インプラント周囲炎に対するリカバーを容易にすることを可能にした歯科用インプラントの構造に関する。
喪失した歯の機能再獲得のために、金属やセラミックス等の人工材料により置換して喪失した口腔機能を補う手段としては、義歯を歯根に埋めたり、完全に歯根まで喪失した場合は、健康な歯にブリッジをかけ義歯を置いたり等の治療手段の他、先端的治療法の一つとして、口腔インプラント治療が実施されている。口腔インプラント治療とは、喪失歯部位の顎骨にチタン製人工歯根を植立する手段である。
結合組織を介在することなくチタンと骨が直接結合する現象は、1952年スウェーデンのペル・イングヴァール・ブローネマルクにより発見され、その後、チタンをある一定の条件で骨に埋入した場合、チタンに対する骨の拒否反応は全くといってよいほど起こらず、そればかりかチタンの表面を覆う酸素の膜を通して強い結合が生まれることを明らかにした。以来、口腔インプラント治療は飛躍的な進歩を遂げることとなり、チタンと骨が直接結合する現象は、骨を表すラテン語のオス(os)と結合を表す英語のインテグレーション(integration)が組み合わされ、オッセオインテグレーション(osseointegration)と呼ばれている。
オッセオインテグレーションは、骨と金属が直接結合する現象であり、チタン表面の酸化膜と骨との接触面に働く機能が生体の分子を酸化膜へと結合させ、骨性癒着を生じさせる。このため、インプラントの成功は、いかにオッセオインテグレーションを獲得するかが重要であり、治療中のインプラント周囲の汚染は、オッセオインテグレーションの阻害要因となる他、周囲炎等の原因となるため、汚染物を除去する必要がある。
従来、汚染物を除去するためには、縫合部を開口し、器具を使用して物理的に除去し、周囲炎等が誘発された場合は治癒のための治療が行われていた。
汚染物を除去するための器具については、インプラントまたは支台歯の表面を少なくとも部分的に覆うクリーニングキュレットを設け、クリーニングキュレットに少なくとも一つのスリットを有するスリーブとして形成されている器具がある。スリットの一つのエッジは、いわば、インプラントまたは支台歯の表面に堆積した物質を取り去る刃として用いられている。さらに、スリーブにおけるスリットが、仮想のねじ線にほぼ沿って延在し、ねじ線は、取り去られる物質がクリーニングキュレットの回転によって口腔内へ運び出されるように配置されている。また、クリーニングキュレットが、回転対称な部材として形成されており、インプラントまたは支台歯に差し込み可能であり、特に回転対称なインプラント及び支台歯のクリーニングの際に、集中的に表面のクリーニングが行われる(特許文献1参照)。
インプラント歯周炎を起こした場合は、インプラントの骨埋入部をきれいに清掃し、歯周病菌等を完全に除去した後、インプラント骨内表面が骨との親和性に優れ、再び骨と結合するようにしなければならず、清掃のためのブラストの際にインプラント周囲の骨に食い込んだ研磨剤が生体親和性に優れ、かつ骨伝導能を持ち、最終的には吸収され骨に置換される様な材料が必要とされていた。
このために、ブラスト研磨剤として骨再生にすぐれたリン酸カルシウム系の材料の使用が提案されている。この際研磨剤の研磨効果を高めるために、できるだけ硬いリン酸カルシウム材料の粒子が望ましく、骨内で吸収され骨に置換するβ−TCPやα−TCPが、わずかにHAP相を含んだ研磨剤が、硬い粉末になりまた焼結性が良いとしている(特許文献2参照)。
また、周囲炎を起こした場合には、炎症が生じた歯周病患部に、又は歯肉の炎症が認められた歯周ポケット内に、歯周病用治療材として、プロタミン分解ペプチドを含有する食用シート又は当該食用シートを裁断した食用シート小片或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートからなる歯周病用治療材を挿入し、プロタミン分解ペプチドの抗カンジダ活性により歯周病患部をはじめとする炎症を消失させて歯肉の引き締めを行なうことができるようにした提案がある。歯牙の周りの歯周病、義歯やインプラントの周りの歯肉炎症、更には抜歯窩上への上皮増殖について、プロタミン分解ペプチドの抗カンジダ活性を利用した食用シートによる従来に無い極めて有益で、かつ、安全な治療効果を発揮する歯周病用治療材を実現し提供することができるとしている(特許文献3参照)。
このように、埋入したインプラントの汚染物を除去するための除去器具の開発や、炎症を起こした場合の治癒の対処療法が提案されているが、インプラント自身に汚染物を除去しやすくした構造は見当たらない。
特表平09−512187号公報 特開2006−198355号公報 特開2011−225490号公報
オッセオインテグレーションを原理としたオッセオインテグレーティドインプラントは、歯の欠損から生ずる口腔機能を回復するための補綴治療であり、オッセオインテグレーションの成立と維持が長期的な成功に必須である。
しかしながら、このオッセオインテグレーション成立の阻害要因として、フィクスチャー部の侵入による汚染がある。インプラント手術は、歯茎を切開して歯槽骨に植立孔を開けてインプラントを埋入し、インプラントにカバーアバットメントを取り付けてから歯茎を縫合する。このため、インプラント手術の初期段階では、フィクスチャー部と生体組織とは接触しているのみであり、結合していないため、縫合部からの細菌がフィクスチャー部まで侵入する可能がある。口内には多くの細菌が存在しており、縫合部に細菌が侵入し汚染状態となった場合は、汚染物を除去する必要があり、この汚染物を除去し易くするためのインプラントの表面構造については、考察はされていなかった。
本考案は、インプラント治療のオッセオインテグレーションの促進期間中に、フィクスチャー部の汚染を容易に除去すること、およびインプラント治療終了後のインプラント頸部における唾液の流れによる容易な防汚と、インプラント周囲炎に対するリカバーを容易にすることを可能にした歯科用インプラントを提供することを目的としている。
本考案は、歯科用インプラントのフィクスチャーの上部に微細な溝を設け、さらにフィクスチャーの表面に親水化処理を施したことを特徴とする。溝は、フィクスチャーの中心軸と水平方向か、または、フィクスチャーの表面に螺旋状に設け、洗浄水が上部から親水面を通して骨に埋入されたフィックスチャー深部にまで到達できるようにしている。
フィクスチャーに設ける溝は、フィックスチャーの上部1/4から1/2の範囲であり、幅1〜100μm、深さ0.5〜10μmである。
また、インプラントのカラー部にも微細な溝を設け、カラー部の表面に親水化処理を施してもよい。
フィクスチャー及びカラー部の親水化処理は、光の照射により超親水性を発現する光触媒材の層を設けることで実現され、具体的には、酸化チタンの層を設け、酸化チタンの光触媒による超親水機能を利用する。
本考案は、親水性処理を施した歯科用インプラントのフィクスチャー上部及びカバー部に微細な溝を設けるインプラント構造とすることによって、インプラント治療期間中に、生体と結合するインプラントのフィクスチャー部への細菌の侵入等により汚染部を除去しやすくすることができる。汚染部の除去は、縫合部を開口し、洗浄水を流すことで、親水性処理されたカラー部及びフィクスチャー部の溝を通して、汚染部とフィクスチャーの接触面に浸透し、汚染部を水分で浮かすことにより、除去しやすくする効果が得られる。
治療中に汚染部を除去することで、オッセオインテグレーションの阻害要因を取り除けるので、インプラントの成功率を高くすることができる。さらにインプラント周囲炎の予防や進行抑制の効果がある。
本考案による歯科用インプラントを示す図。 本考案による歯科用インプラントに汚染物が付いた状態と、オッセオインテグレーションの獲得により生体が結合している状態、及び水分により汚染物が浮いている状態を説明する模式図。 インプラント手術のフローチャート。 カバーアバットメント埋込み状態での理想的治癒状態。 カバーアバットメント埋込み状態での一般的治癒状態。 カバーアバットメント埋込み後の縫合部裂開時の一般的汚染状態を説明する図。 過度に汚染が生じた場合の汚染状態を説明する図。 免荷期間終了時の理想的治癒状態を説明する図。 免荷期間終了時の一般的治癒状態を説明する図。 過度に汚染が生じた場合の汚染状態を説明する図。
代用歯としての歯科用インプラントは、骨に埋入し、生体組織と結合させるが、実際の臨床現場では口内に存在する細菌の進入による汚染がフィクスチャー部まで達し、オッセオインテグレーションの阻害要因となっていることが大きな問題であり、いかに汚染物を除去するかがインプラント治療を成功させるための重要な課題となっている。
このような背景から、本考案は歯科用インプラントのカラー部に着目して、カラー部に殺菌作用を発現させる構造を考案した。
図1は、本考案による歯科用のインプラント10の断面図である。歯科用のインプラント10は、カラー部12とフィクスチャー14とから構成されている。カラー部12及びフィックスチャー14の上部には多数の微細な溝が設けられている。フィクスチャーの溝部16は、フィクスチャーに設ける溝は、フィックスチャーの上部1/4から1/2の範囲であり、幅1〜100μm、深さ0.5〜10μmである。溝の幅については、好ましくは細胞増殖抑制効果、細胞接触誘導効果が最大となる8〜12ミクロンとする。
図1においては、溝部16での溝は、フィクスチャー14の中心軸と水平方向に設けられているが、フィクスチャーの表面に螺旋状に設けてもよく、洗浄水がカラー部12の上部から親水面を通して骨に埋入されたフィックスチャー深部にまで到達し易い構造としている。
インプラント10の表面は親水化処理が施されており、水分との親和性が極めて高くなっている。親水化処理は、例えば、光触媒の層を設けて光照射により、超親水性を発現させる。光触媒の層は酸化チタンが好ましく、超親水性の機能とともに、オッセオインテグレーションの促進に寄与する。
図2は、本考案によるインプラント10の埋入後における溝部16の水平断面の一部を拡大した図であり、図2(A)は、溝18に、汚染物22が付いた状態と、オッセオインテグレーションの獲得により生体組織20が結合している状態であり、図2(B)は、溝18における水分の存在により汚染物22が浮いている状態を説明する模式図である。
まず、図2(A)を参照して生体組織とインプラントとの結合について説明する。
正常歯周組織について、線維性結合組織が歯牙と接しているところでは、線維芽細胞が分泌するコラーゲン線維がセメント質内に埋入する形で存在している。これに対して人工歯であるインプラントは表面にセメント質が存在せず、コラーゲン線維あるいは線維芽細胞が直接インプラント表面に接するように存在し、接着、伸展する。
線維芽細胞の材料への接着は、接着性タンパクを介して行われており、特にフィプロネクチンは線維芽細胞をはじめとして、様々な細胞から分泌されて、細胞自身の接着に大きく関わっているといわれている。フィプロネクチンを含む多くの接着性タンパクでは、そのアミノ酸配列中にArg−Gly−Asp−Asn(RGD)からなる部分が存在しており、細胞は主としてこれを認識し,同部位に特異的に結合する。インプラントの材料であるチタン或いは酸化チタン上でも同様に線維芽細胞との間にフィプロネクチンが存在しており、線維芽細胞のチタン或いは酸化チタンへの接着に大きく寄与している。
インプラントでは、軟組織との界面は上皮細胞、線維芽細胞や骨芽細胞のフィクスチャーへの接着からなっており、材料特性としての親水性(ぬれ性)、表面電荷と表面形態が接着に影響を与える要因となっている。
一般的に親水性の高い材料ほど、生体との親和性も良好となり、細胞接着性も高くなる。このため、ハイドロキシアパタイトなどのコーティングが行われているインプラントでは、親水性が高いが、チタンを材料としているインプラントでも親水処理、即ち酸化チタンの光触媒効果を利用することで超親水効果が得られる。
上皮細胞、線維芽細胞や骨芽細胞をはじめ生体組織の多くは表面電荷が負に帯電しているため、ゼータ電位が正である正電荷上に置かれた細胞の広がりが良好で,接着面積も広くなる。
表面形態では、特に表面粗さの影響が大きい。インプラント表面と細胞の接着は、細胞膜を架橋する接着性タンパクが関係しており、インプラント表面の粗さが程度に粗いほうが骨芽細胞の接着が良好となる。これは、骨芽細胞は平滑な面に比べて粗い面のほうが、多くのコラーゲン新生と石灰化を促すためと考えられている。
さらに、表面粗さに加えて表面形状の規則性が細胞分化と石灰化に影響し、インプラント表面の細胞外基質とコラーゲン新生を促進させる。このため、溝を備えたインプラント表面では、細胞が溝に沿って配列し、骨原性細胞を骨芽細胞に分化させ、石灰化細胞外基質が幅広く広がり、溝に沿って沈着することが知られている。いわゆるコンタクトガイダンスと呼ばれる現象であり、フィクスチャー上部での溝構造により、細胞組織の形成方向を上皮に向かって形成するように制御することになる。
一方、インプラント歯周炎では上皮の深部増殖が問題となり、この問題に対する対応は、溝をインプラント中心軸と水平方向に配列するのではなく、垂直方向に配列することが有効と考えられるため、上部からの水分浸透効果も考慮して、溝をフィクスチャー表面に螺旋状に設けてもよい。
次に、図2(A)における汚染物22のインプラントへの付着について説明する。
インプラントが埋入されると、次にくる問題は汚染である。インプラントへの汚染が進むと、インプラント周囲炎の主な原因となるプラークが付着する。プラークは細菌の集合体でもあり、軟組織直上のインプラントに多量のプラークが付着すると、そこから継続的に毒素が送られ、炎症を引き起こす。即ち、インプラント周囲炎である。
プラークの付着も歯面の表面性状が関与しているが、表面が粗く、また、表面エネルギーが高いほど細菌は付着しやすいばかりでなく、さらに清掃によっても粗面のものの方が細菌の脱落がしにくいのは当然である。このため、インプラントへ溝を設けることは、細菌の付着にとっても有利な条件となっていることは否めない。
しかしながら、プラークが付着した場合には何らかの方法で除去しなければならず、一般に、インプラント周囲ポケット深さ4mm未満では,インプラント表面の機械的清掃と研磨が行われる。さらに周囲ポケットが深くなると、局所および全身への抗菌薬の投与をしなければならないため、汚染物を除去しやすいインプラント構造とすることで、細菌の付着を抑制しつつ、インプラント治療を行うことが好ましい。
汚染物を除去しやすいインプラントの構造は、市販の汚れにくい壁と同様にカタツムリからヒントを得ている。
カタツムリの殻は向こうが透けて見えるほど薄いが比較的強固であり、成分は石灰石の一種である炭酸カルシウムで、アラゴナイトと呼ばれるものとタンパク質の複合体である。その表面は、殻皮層と三層の石灰質層が層状に重なった、微細な溝が規則的に並んでいる状態である。これら殻本体の材質と表面の形状、そして後天的にできたシリカの膜が複合的に作用してカタツムリの殻は常にクリーンな状態を維持している。
一般に、撥水性表面では水滴が転がり落ちるときに汚れを一緒に付着していくので自己清浄(セルフクリーニング)機能がある。これは水性汚れに対して効果があり、疎水的な有機系の油汚れが落ちることはない。油をはじく性質、つまり撥油性を実現する時にも撥水性表面と同様に微細構造が有効であることが知られている。例えば、微細な溝構造を有する陽極酸化アルミニウムにフルオロアルキルリン酸を吸着させた表面や、カーボンナノチューブが林立した構造体をフルオロアルキル化合物で被覆した表面などである。
カタツムリの殻も水膜が形成されることにより防汚性を示すと考えられている。空気中または乾燥状態では油や汚れが付着するが、水を殻にかけると微細な溝構造に水が浸透し、水膜ができるメカニズムとなっている。そのため、油汚れははじかれ、水と一緒に流れ落ちることで殻は防汚性を発揮している。親水性の汚れに対しても、微細な溝構造に水が浸透して、殻と接触している汚れを浮かせる効果を生じる。
このメカニズムをインプラント表面に適用することにより、汚染物が除去しやすい構造が実現できる。
図2(A)でインプラント表面の微細な溝18に汚染物22が付着している状態を模式的に示したように、汚染物は、インプラント表面との生体組織の結合ではなく、付着である。このため、微細な溝構造上では多数の隙間があり、インプラント表面を親水化処理しておくことにより、水を流した場合には、親水性の表面を水分が這うように浸透する。
この状態を図2(B)に示したが、溝18に浸透した水分24が汚染物22の下方に存在するようになり、付着した汚染物22を浮かせる作用が働く。さらに、微細な溝構造は、インプラント中心軸に水平方法に配列されているので、器具により掻き出し易くなっている。一方、生体組織20は、インプラント表面との結合であり、水分24が浸透しても生体組織とインプラントとの結合状態に影響を与えることが無い。従って、オッセオインテグレーションと汚染物の除去が矛盾すること無く、微細な溝構造を有するインプラントで実現できる。
次に、インプラントの手術方法と汚染状態について述べる。
図3は、インプラント手術のフローチャート26である。ここでは、2回法と呼ばれる術式について説明する。2回法では、インプラントのフィクスチャーは歯槽骨に埋入され、生体組織との結合、即ちオッセオインテグレーションが促進されて、インプラントが歯槽骨に固定される。インプラント治療期間中は、まず、カバーアバットメントが、インプラントの上部からネジにより装着され、オッセオインテグレーションが進んだところで、カバーアバットメントが取り外され、ヒーリングアバットメントが取り付けられる。
まずステップS1では、インプラントを埋入する部分の歯槽骨に麻酔をして、埋入するインプラントの長さにあわせてドリルでインプラントの植立孔を形成する。次に、ステップ2では形成した植立孔にインプラントを埋入予定位置まで埋入する。埋入したインプラントには、カラー部の上面が開口したキャップ取付部がある。ステップS3ではこの開口部にカバーアバットメントを装着し、ステップS4で歯茎を縫合して封印する。ステップS5は、歯茎が縫合された状態で、オッセオインテグレーションが促進されるまで2〜6ヶ月静置する。清置する期間は、症例により若干異なるが、上顎で約3〜6月、下顎で約2〜4ヶ月程度である。
オッセオインテグレーションが促進された後に、2次手術に移る。ステップS6では、歯茎を切開して、インプラントに装着していたカバーアバットメントを取り外す。次に、ステップS7ではヒーリングアバットメントをインプラントに装着する。ヒーリングアバットメントは、ヒーリングキャップ上部が歯茎から出た状態で歯茎を縫合し、上部構造(義歯)装着時の歯茎を形成する。ステップS8で、歯茎が形成されるまで2〜4週間静置する。歯茎が形成された後に、ステップ9ではヒーリングアバットメントを取り外す。
次に、ステップ10でインプラントに印象コーピングを取り付け、シリコン印象材で印象採得を行う。
そして、最後のステップ11では、フィクスチャーから印象コーピングを取り外し、取り外した印象コーピングにアナログを取り付け印象内に戻す。さらに、印象内にガム模型用シリコンを流し込み、その上から石膏を流してアナログ模型を作製する。石膏硬化後は、印象コーピングを取り外す。さらに上部構造(義歯)を作製して、インプラントにはアバットメントを介して上部構造を取り付け、インプラントが完成する。
図4は、2次手術前の理想的な状態を示している。歯槽骨30に埋入しているインプラント10のフィクスチャー14は、オッセオインテグレーションにより生体と結合している。カバーアバットメント16の装着後に歯茎の切開部を縫合するが、外界との交通を遮断するため上皮組織が増殖し、上皮組織のダウングロースを避けて、骨が吸収する。骨膜32、結合組織34と上皮組織36は層状にカラー部12の上部とカバーアバットメント16を覆っている。インプラント埋入時に切開した縫合部38は組織結合して治癒している。
図5は、比較的早期に起きる縫合部38の裂開状態を示している。骨膜32が、カバーアバットメント42まで成長せず、インプラント10のカラー部12までしか覆われておらず、縫合部38は裂開して、裂開した部分に細菌が侵入し、汚染40が生じている。縫合部38が裂開しても、汚染部40が裂開部だけに留まっているのが理想的で、いわば望ましい汚染状態である
図6は、裂開部からの汚染40進み、結合組織によるシールドが失われ、上皮組織36がカバーアバットメント42に沿ってダウングロースを起こし、カラー部12に達している。上皮組織36のダウングロースに伴い、結合組織34及び骨膜32もダウングロースを起こしている。このために、カバーアバットメント42とカラー部12の上部はポケット状に汚染されている。縫合部38の汚染は多かれ少なかれ発生し、このような状態が汚染の一般的な状態である。
従来のインプラントでは、この状態での汚染物を取り除くために、カラー部12は平滑な面としていた。
本考案のインプラント10では、このような汚染状態で、縫合部38を開き、開口部に洗浄水を注ぐことで、カラー部12の微細な溝に沿って水分が浸透し、汚染物を浮かせて除去しやすい状態となる。この状態となることにより、器具で汚染物を容易に除去できる。
図7は、縫合部38の裂開によりさらに汚染が進んで、インプラント10のフィクスチャー14にまで達し、過度に汚染が生じた場合の汚染状態を説明する図である。オッセオインテグレーションを獲得すべきフィクスチャー14で汚染が生じている。従来のインプラントは、この状態では、フィクスチャー14が下部と同様なネジ構造となっていたため、汚染物を除去することは困難であった。このため、2次手術への移行が困難であった。
しかしながら、本考案のインプラント10を使用することで、このような汚染状態でも、縫合部38を開き、開口部に洗浄水を注ぐことで、カラー部12及びフィクスチャー14上部の微細な溝に沿って水分が浸透し、汚染物を浮かせて除去しやすい状態として、器具で汚染物を容易に除去できる。このため、2次手術への移行が比較的容易となった。
図8は、2次手術でヒーリングキャップ44をインプラント10に取り付けたときの、免荷期間終了時における汚染状態である。ヒーリングキャップ44は外部と交通しているために、切開部が歯茎で覆われることはなく、ヒーリングキャップ44の周囲は、単に上皮組織や結合組織と接しているだけの状態となる。このため、細菌の侵入による汚染40は避けられず、免荷期間終了時に、上皮組織36のダウングロースがヒーリングキャップ44の領域にあり、ヒーリングキャップ44の周囲だけに、ポケット状の汚染40が留まっているのが理想的である。この状態であれば、唾液によって容易に汚染物質、細菌が流れ洗浄できる。
図9は、2次手術でヒーリングキャップ44をインプラント10に取り付けたときの、免荷期間終了時における一般的な汚染状態である。上皮組織36のダウングロースがヒーリングキャップ44の領域を超えて、カラー部12の一部に達しており、ヒーリングキャップ44の周囲部とカラー部12の一部の周囲がポケット状に汚染されている。
従来のインプラントでは、この状態での汚染物を取り除くために、カラー部12は平滑な面としていた。
本考案のインプラント10では、このような汚染状態で、開口部に洗浄水を注ぐことで、カラー部12の微細な溝に沿って水分が浸透し、汚染物を浮かせて除去しやすい状態となる。この状態となることにより、器具で汚染物を容易に除去できる。
図10は、2次手術でヒーリングキャップ44をインプラント10に取り付けたときの、免荷期間終了時に、過度に汚染が生じた場合の汚染状態である。上皮組織36のダウングロースがインプラント20のフィクスチャー部まで進行し、ヒーリングキャップ44、カラー部12とフィックスチャー14の一部までその周囲がポケット状に汚染されている。従来のインプラントは、この状態では、フィクスチャー14が下部と同様なネジ構造となっていたため、汚染物を除去することは困難であった。
しかしながら、本考案のインプラント10を使用することで、このような汚染状態でも、開口部に洗浄水を注ぐことで、カラー部12及びフィクスチャー上部の微細な溝に沿って水分が浸透し、汚染物を浮かせて除去しやすい状態として、器具で汚染物を容易に除去できる。
インプラントのフィクチャーとアバットメントとの境界は、汚れや細菌が繁殖し易く、汚染していると、上皮はそこまでは外界にしようと、ダウングロースする。これに対して、カラー部に抗菌効果を持たせることによって、汚れや細菌の繁殖を防止できれば、上皮のダウングロースは発現せず理想的な治癒形態となり得る。
本考案によりインプラントは、酸化チタンの光触媒機能を利用した超親水効果を利用した微細な溝構造を備えているが、酸化チタンの光触媒機能は、殺菌作用も有しているため、汚れの除去性のほか、細菌の繁殖を防止する効果もある。このため、オッセオインテグレーション獲得後も、インプラント周囲炎の予防や進行を抑制する効果がある。
以上、本考案の実施例を説明したが、本考案はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態よる限定は受けない。
10 インプラント
12 カラー部
14 フィクスチャー
16 溝部
16 殺菌層
18 溝
20 生体組織
22 汚染物
24 水分
26 インプラント2回法のフローチャート
30 歯槽骨
32 骨膜
34 結合組織
36 上皮組織
38 縫合部
40 汚染部
42 カバーアバットメント
44 ヒーリングキャップ

Claims (8)

  1. フィクスチャーの上部に微細な溝を設け、
    さらに前記フィクスチャーの表面に親水化処理を施したこと、
    を特徴とする歯科用インプラント。
  2. 請求項1に記載の歯科用インプラントにおいて、
    前記溝は、前記フィクスチャーの中心軸と水平方向であること
    を特徴とする歯科用インプラント。
  3. 請求項1に記載の歯科用インプラントにおいて、
    前記溝は、前記フィクスチャーの表面に螺旋状に設けること、
    を特徴とする歯科用インプラント。
  4. 請求項1に記載の歯科用インプラントにおいて、
    前記溝は、前記フィックスチャーの上部1/4から1/2の範囲であること、
    を特徴とする歯科用インプラント。
  5. 請求項1に記載の歯科用インプラントにおいて、
    前記溝は、幅1〜100μm、深さ0.5〜10μmであること、
    を特徴とする歯科用インプラント。
  6. 請求項1に記載の歯科用インプラントにおいて、
    カラー部にも微細な溝を設け、
    さらに前記カラー部の表面に親水化処理を施したこと、
    を特徴とする歯科用インプラント。
  7. 請求項1又は4に記載の歯科用インプラントにおいて、
    前記親水化処理は、光の照射により超親水性を発現する光触媒材の層であること、
    を特徴とする歯科用インプラント。
  8. 請求項5に記載の歯科用インプラントにおいて、
    インプラント上部に設けた前記溝は、光触媒材は、酸化チタンであること、
    を特徴とする歯科用インプラント。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2015033680A1 (ja) * 2013-09-09 2015-03-12 株式会社ナントー フィクスチャー、インプラント、インプラントの製造方法
WO2020085321A1 (ja) * 2018-10-23 2020-04-30 国立大学法人大阪大学 インプラント材料及び当該インプラント材料の製造方法

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