JP3178956U - カラー部に殺菌機能を備えた歯科用インプラント - Google Patents

カラー部に殺菌機能を備えた歯科用インプラント Download PDF

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Abstract

【課題】歯科用インプラント上部からフィクスチャー部への細菌侵入を防止するために、インプラントのカラー部に抗菌活性作用を発現させる殺菌層を設けたインプラントを提供する。
【解決手段】歯科用インプラント10のカラー部12に、殺菌層16を備える。カラー部12の表面に備えた殺菌層16は、光の照射により殺菌作用を発現する光触媒材を用いて層状に形成される。光触媒材は、光触媒コーティング剤や、光の照射により光触媒機能を発現する酸化チタンを使用する。酸化チタンは、窒素ドープにより、可視光領域での光触媒活性化が可能となる。殺菌層は、インプラント10の埋入直前に光触媒作用を発現させるために、紫外線、レーザ光、X線や超音波を照射して光触媒活性を図る。また、殺菌層16には光照射を必要としない無光触媒材を使用してもよい。
【選択図】図1

Description

本考案は、歯科用インプラントを歯槽骨に埋入した際に、インプラント上部からの細菌の侵入を防止するために、カラー部に殺菌層を設けた歯科用インプラントに関する。
喪失した歯の機能再獲得のために、金属やセラミックス等の人工材料により置換して喪失した口腔機能を補う手段としては、義歯を歯根に埋めたり、完全に歯根まで喪失した場合は、健康な歯にブリッジをかけ義歯を置いたり等の治療手段の他、先端的治療法の一つとして、口腔インプラント治療が実施されている。口腔インプラント治療とは、喪失歯部位の顎骨にチタン製人工歯根を植立する手段である。
1952年スウェーデンのペル・イングヴァール・ブローネマルクが、チタンと骨が完全に結合する事を偶然発見し、その後、チタンがある一定の条件で骨に埋入された場合、チタンに対する骨の拒否反応は全くといってよいほど起こらず、そればかりかチタンの表面を覆う酸素の膜を通して強い結合が生まれることを明らかにした。そして1965年、初めて人工歯根としての臨床応用をスタートした。以来、口腔インプラント治療は飛躍的な進歩を遂げることとなった。結合組織を介在することなくチタンと骨が直接結合する骨結合方式は、骨を表すラテン語のオス(os)と結合を表す英語のインテグレーション(integration)が組み合わされ、オッセオインテグレーション(osseointegration)と呼ばれている。
オッセオインテグレーションは、骨と金属が直接結合する現象であり、チタン表面の酸化膜と骨との接触面に働く機能が生体の分子を酸化膜へと結合させ、骨性癒着を生じさせる。
インプラントの成功は、いかにオッセオインテグレーションを獲得するかが重要であり、インプラントのフィクスチャー部に関する表面性状についてはさまざまな提案がある。
骨に少なくとも部分的に挿入するための親水性表面を有する金属インプラント、特に歯科インプラント及びこのインプラントの製造方法であり、オッセオインテグレーション特性の改良のため、少なくともいくつかの領域において、弱アルカリ溶液中で短時間処理することで、優れた親水性表面が得られる。このオッセオインテグレーション特性は、前処理である、材料除去による機械的表面変性、化学的表面変性後、又は処理無しで、少なくとも骨又は軟組織にさらされる表面の部分を、アルカリ溶液中で化学的に変性する方法により得ることができる(特許文献1参照)。
チタンまたはチタン合金から作製されたインプラントに関し、表面が粗面化され、インプラントが水酸化状態において、高エネルギー紫外線で処理されていることにより、親水性表面として、骨中への移植に適した骨親和性インプラントとすることができる(特許文献2参照)。
インプラントフィクスチャー部への紫外線照射は、さまざまな目的で行われており、代表的には殺菌作用を目的としたものがあり、さらにはインプラントのオッセオインテグレーション機能を向上させるために、例えば次の提案がある。
インプラントの製造方法は、基材を熱処理することによってその表面に酸化チタン皮膜を形成してから、該酸化チタン皮膜に紫外線を照射する。これによって、酸化チタン皮膜の表面にヒドロキシアパタイトが形成しやすくなり、生体親和性に優れたインプラントを提供することができる。通常のチタン製インプラントに紫外線を照射しただけでは十分でなく、表面に酸化チタン皮膜を形成した場合に、紫外線照射によるアパタイト形成能が大幅に改善される。酸化チタン皮膜が、基材を熱処理することによってその表面に形成されたものであり、剥離することが無い。熱処理の温度は250〜790℃であることが好ましい。加熱温度が250℃未満では酸化チタン皮膜が十分に形成されないし、紫外線を照射してもアパタイト形成能が改善されないおそれがある(特許文献3参照)。
インプラント材の表面に光触媒活性及び生体親和性を有する金属酸化物層を備え、生体内に埋入した場合に骨芽細胞との接着面積を増大させることを可能とする。その結果インプラントの細胞接着及び細胞増殖を改善することができる。これにより、骨組織とインプラントを短期間でより確実に結合することが可能になる。また、光触媒活性により、インプラント表面に付着した細菌等を殺菌して感染巣の完全除去や無毒化が可能になる(特許文献4参照)。
また、フィクスチャー部にリン酸化糖を含める提案もある。リン酸化糖がチタン製インプラントの表面に強力に結着し、骨芽細胞の増殖を促進することでインプラントチ口腔内露出部位インプラント表面での骨形成が盛んとなりインプラントと生体への固定が強固かつ早期に行われることから、石灰化抑制やバクテリアの繁殖による種々の疾病発生も予防できることが期待できる(特許文献5参照)。
このように、オッセオインテグレーションの促進と抗菌効果を目的としてインプラントのフィクスチャー部に対しての技術開発が進められている。
特表2010−501212号文献 特表2005−505352号文献 WO2008/143219号文献 特開2008−080102号文献 特開2007−039439号文献
オッセオインテグレーションを原理としたオッセオインテグレーティドインプラントは、歯の欠損から生ずる口腔機能を回復するための補綴治療であり、オッセオインテグレーションの獲得と維持が長期的な成功に必須である。
しかしながら、このオッセオインテグレーション促進の阻害要因として、フィクスチャー部への細菌の侵入による汚染がある。インプラント手術は、歯茎を切開して歯槽骨に植立孔を開けてインプラントを埋入し、インプラントにカバーアバットメントを取り付けてから歯茎を縫合する。このため、インプラント手術の初期段階では、フィクスチャー部と生体組織とは接触しているのみであり、結合していないため、縫合部からの細菌がフィクスチャー部まで侵入する可能がある。口内には多くの細菌が存在しており、縫合部に細菌が侵入し汚染状態となった場合は、殺菌消毒を行うことになるが、従来から提案されているのは、オッセオインテグレーションインプラントの表面性状に関するものが多く、その対象となるのは歯槽骨と直接接触するフィクスチャー部であった。
本考案は、インプラント治療のオッセオインテグレーションの促進期間中に、フィクスチャー部への細菌の侵入を防止することができる歯科用インプラントを提供することを目的としている。
本考案は、歯科用インプラントのカラー部に、殺菌層を備えたことを特徴とする。
カラー部の表面に備えた殺菌層は、光の照射により殺菌機能を発現する光触媒材を用いて、層状に形成される。光触媒材は、光触媒コーティング剤や、光の照射により光触媒機能を発現する酸化チタンを使用する。
酸化チタンは紫外光により光触媒機能を発現するが、酸化チタン結晶中に窒素をドープすることで、エネルギーギャプが狭くなり、可視光により光触媒機能が発現する。このため、歯科用インプラントのカラー部に殺菌層として酸化チタンを使用する場合においては、酸化チタン結晶中に、窒素をドープしてもよい。
一般にアナターゼ構造の酸化チタンは、エネルギーギャップ3.2eVであり、電子を励起させる波長である約400nm以下の波長の光を照射して光触媒機能を発現させる。このため、カラー部に形成された酸化チタンの層に、ガンマ線、紫外線又はX線を照射する。酸化チタン結晶中に、窒素をドープした場合は、自然光や蛍光灯の光でもよい。また、水中で超音波を照射することによっても光触媒機能は発現する。
また、殺菌層は光を照射しないで光触媒活性する無光触媒材で形成してもよい。無光触媒材としては、例えばリン酸チタニウム化合物があり、酸素と水分があれば、マイナスイオンを発生させて活性効果を持続する。
この他、殺菌層には、CT触媒を使用してもよい。CT触媒は、電子供与体と電子受容体から構成され、同時進行する酸化、還元反応によりや細菌を分解する機能を有している。
本考案は、歯科用インプラントのカバー部に殺菌層を設けることによって、インプラント治療期間中に、生体と結合するインプラントのフィクスチャー部への細菌の侵入を防止することができる。殺菌層は、光触媒機能による殺菌効果を利用しており、インプラントに装着する直前に光を照射することで殺菌作用が発現する。
光触媒材は、光触媒コーティング剤や酸化チタンにより形成でき、酸化チタンの場合は、窒素のドーピングや光励起構造変化により可視光領域での光触媒活性が発現し、殺菌効果が得られる。また、無光触媒材の使用により、酸素と水の存在で光触媒機能を発現でき、キャップが上皮に覆われていても縫合部から空気が進入し、抗菌効果が生じる。
さらに、CT触媒を殺菌層に使用することで、光の照射を必要としない殺菌効果が得られる。
このように、歯科用インプラントのカラー部に殺菌層を設けることによって、オッセオインテグレーションが生成するフィクスチャー部の汚染が抑止できるため、インプラントの成功率を高くすることができる。さらに、オッセオインテグレーション獲得後も、インプラント周囲炎の予防や進行を抑制する効果がある。
本考案による歯科用インプラントの断面を示す図。 本考案による歯科用インプラントにカバーアバットメントとヒーリングアバットメントの装着をする場合の説明する図。 インプラント手術のフローチャート。 カバーアバットメント埋込み状態での理想的治癒状態。 カバーアバットメント埋込み状態での一般的治癒状態。 カバーアバットメント埋込み後の縫合部裂開時の一般的汚染状態を説明する図。 上皮組織増殖のため、オッセオインテグレーションを十分に獲得できずに2次手術へ移行する状態を説明する図。 免荷期間終了時の理想的治癒状態を説明する図。 免荷期間終了時の一般的治癒状態を説明する図。 オッセオインテグレーションを十分に獲得できずに免荷期間が終了した状態を説明する図。 ヒーリングアバットメント装着前に、カラー部へ光照射する場合の説明図。
代用歯としての歯科用インプラントは、骨に埋入し、生体組織と結合させる。このため、歯槽骨と直接接触するフィクスチャー部は、表面性状等様々な試みがされ、オッセオインテグレーションの促進効果を得ている。ところが、実際の臨床現場では口内に存在する細菌の進入による汚染がフィクスチャー部まで達し、オッセオインテグレーションの阻害要因となっていることが大きな問題であり、いかに殺菌するかがインプラント治療を成功させるための重要な課題となっている。
このような背景から、本考案は歯科用インプラントのカラー部に着目して、カラー部に殺菌作用を発現させる構造を考案した。
図1は、本考案による歯科用のインプラント10の断面図である。歯科用のインプラント10は、カラー部12とフィクスチャー14、さらにインプラント治療期間中にインプラント10に装着するカバーアバットメントやヒーリングアバットメントを取り付けるキャップ取付部18とから構成されている。そして、カラー部12には、本考案による殺菌層16が設けられている。図1において、殺菌層16は、キャップ取付部18の内部中央まで設けられているが、キャップ取付部18のネジ部分を含む内部全体に渡って設けられていてもよく、また、カラー部12の側面のみ、あるいは、カラー部12の側面と上面だけでもよい。
フィクスチャー14は、生体組織との結合を促進する。歯科用のインプラント10は一般的にはチタンで作製されているが、生体組織との結合を促進するために、様々な方法で表面処理が行われている。例えば、構造的に生体組織との結合を促進するために、フィクスチャー14を適度な表面粗さとすること、酸化により、酸化チタンとしたり陽極酸化させたりすること、アルカリ処理すること等の表面処理が行われている。これらは、オッセオインテグレーションを基本とした生体組織との結合の促進であるが、さらには、バイオインテグレーションと呼ばれるハイドロキシアパタイト(Hydoroxyapatite)処理がある。ハイドロキシアパタイトは、ヒドロキシアパタイトとも言われている。
ハイドロキシアパタイトはリン酸カルシウムでできた歯や骨を構成する成分のことで、 エナメル質は97%、象牙質の70%がハイドロキシアパタイトで構成されている。ハイドロキシアパタイトは唾液中のミネラルイオンに作用し、周囲骨との間にはカルシウムが沈着して骨と生化学的に結合する。このため、ハイドロキシアパタイトをコーティングしたインプラントは、インプラント治療の治癒期間が短いのが特徴とされている。しかしながら、一旦細菌が侵入すると、他の処理を行ったインプラントよりも汚染の進行が早く、また、消毒による殺菌も効果が薄い。このために、特にハイドロキシアパタイトをコーティングしたインプラントでは、フィクスチャー部への細菌の侵入を防止することが必要とされる。
次に、インプラントの手術方法と汚染状態について述べる。
図2は、インプラント10に、カバーアバットメント22とヒーリングアバットメント24が装着される状態を示している。歯科用インプラント10は、フィクスチャー14が歯槽骨に埋入され、生体組織との結合、即ちオッセオインテグレーションが促進されて、歯槽骨に固定される。
インプラント治療期間中は、まず、カバーアバットメント22が、インプラント10の上部からネジにより装着され、オッセオインテグレーションが進んだところで、カバーアバットメント22が取り外され、ヒーリングアバットメント24が取り付けられる。
図3は、インプラント手術のフローチャート26である。ここでは、2回法と呼ばれる術式について説明する。
まずステップS1では、インプラントを埋入する部分の歯槽骨に麻酔をして、埋入するインプラントの長さにあわせてドリルでインプラントの植立孔を形成する。次に、ステップ2では形成した植立孔にインプラントを埋入予定位置まで埋入する。埋入したインプラントには、カラー部の上面が開口したキャップ取付部がある。ステップS3ではこの開口部にカバーアバットメントを装着し、ステップS4で歯茎を縫合して封印する。ステップS5は、歯茎が縫合された状態で、オッセオインテグレーションが促進されるまで2〜6ヶ月静置する。清置する期間は、症例により若干異なるが、上顎で約3〜6月、下顎で約2〜4ヶ月程度である。
オッセオインテグレーションが促進された後に、2次手術に移る。ステップS6では、歯茎を切開して、インプラントに装着していたカバーアバットメントを取り外す。次に、ステップS7ではヒーリングアバットメントをインプラントに装着する。ヒーリングアバットメントは、ヒーリングアバットメント上部のキャップ部が歯茎から出た状態で歯茎を縫合し、上部構造(義歯)装着時の歯茎を形成する。ステップS8で、歯茎が形成されるまで2〜4週間静置する。歯茎が形成された後に、ステップ9ではヒーリングアバットメントを取り外す。
次に、ステップ10でインプラントに印象コーピングを取り付け、シリコン印象材で印象採得を行う。
そして、最後のステップ11では、フィクスチャーから印象コーピングを取り外し、取り外した印象コーピングにアナログを取り付け印象内に戻す。さらに、印象内にガム模型用シリコンを流し込み、その上から石膏を流してアナログ模型を作製する。石膏硬化後は、印象コーピングを取り外す。さらに上部構造(義歯)を作製して、インプラントにはアバットメントを介して上部構造を取り付け完成する。
図4は、2次手術前の理想的な状態を示している。歯槽骨30に埋入しているインプラント10のフィクスチャー14は、オッセオインテグレーションにより生体と結合している。カバーアバットメント22の装着後に歯茎の切開部を縫合するが、外界との交通を遮断するため上皮組織が増殖し、上皮組織のダウングロースを避けて、骨が吸収する。骨膜32、結合組織34と上皮組織36は層状にカラー部12の上部とカバーアバットメント22を覆っている。インプラント埋入時に切開した縫合部38は組織結合して治癒している。
図5は、比較的早期に起きる縫合部38の裂開状態を示している。骨膜32が、カバーアバットメント22まで成長せず、インプラント10のカラー部12までしか覆われておらず、縫合部38は裂開して、裂開した部分に細菌が侵入し、汚染40が生じている。縫合部38が裂開しても、汚染40が裂開部だけに留まっているのが理想的で、望ましい汚染状態である
図6は、裂開部からの汚染40進み、結合組織性付着が失われ、上皮組織36がカバーアバットメント22に沿ってダウングロースを起こし、カラー部12に達している。上皮組織36のダウングロースに伴い、結合組織34及び骨膜32もダウングロースを起こしている。このために、カバーアバットメント22とカラー部12の上部はポケット状に汚染されている。縫合部38の汚染は多かれ少なかれ発生し、このような状態が汚染の一般的な状態である。
図7は、縫合部38の裂開によりさらに汚染が進んで、インプラント10のフィクスチャー14の一部にまで達した状態である。オッセオインテグレーションを獲得すべきフィクスチャー14で汚染が生じており、このような場合は2次手術への移行は困難である。
図8は、2次手術でヒーリングアバットメント24をインプラント10に取り付けたときの、免荷期間終了時における汚染状態である。ヒーリングアバットメント24は外部と交通しているために、切開部が歯茎で覆われることはなく、ヒーリングアバットメント24の周囲は、単に上皮組織や結合組織と接しているだけの状態となる。このため、細菌の侵入による汚染40は避けられず、免荷期間終了時に、上皮組織36のダウングロースがヒーリングアバットメント24の領域にあり、ヒーリングアバットメント24の周囲だけに、ポケット状の汚染40が留まっているのが理想的である。
図9は、2次手術でヒーリングアバットメント24をインプラント10に取り付けたときの、免荷期間終了時における一般的な汚染状態である。上皮組織36のダウングロースがヒーリングアバットメント24の領域を超えて、カラー部12の一部に達しており、ヒーリングアバットメント24の周囲部とカラー部12の一部の周囲がポケット状に汚染されている。
図10は、2次手術でヒーリングアバットメント24をインプラント10に取り付けたときの、免荷期間終了時に、過度に汚染が生じた場合の汚染状態である。上皮組織36のダウングロースがインプラント10のフィクスチャー14に侵入し、ヒーリングキアバットメント24、カラー部12とフィックスチャー14の一部までその周囲がポケット状に汚染されている。この状態では、インプラント10は固定せず、再度の手術をしなければならない。
これまで、インプラント手術の治療期間中の汚染状態を説明したが、汚染は完全には防止できないものの、汚染がフィクスチャー14に達しないのが望ましい。
インプラント10のカラー部12の表面が殺菌層16で覆われていると、殺菌作用を発現して、細菌は殺菌層16で殺菌され、汚染40がさらに広がることがなく、図6に示した汚染状態で留まる。
インプラントのフィクチャーとアバットメントとの境界は、汚れや細菌が繁殖し易く、汚染していると、上皮はそこまでは外界にしようと、ダウングロースする。これに対して、カラー部に抗菌効果を持たせることによって、汚れや細菌の繁殖を防止できれば、上皮のダウングロースは発現せず理想的な治癒形態となり得る。
図11は、カバーアバットメント22を取り外してヒーリングアバットメント24を取り付ける2次手術において、カバーアバットメント22を取り外した後に、歯茎を開放した状態でインプラント10に光42を照射している状態である。光照射による殺菌作用の発現を行う殺菌層16を使用している場合は、インプラントの埋入後は光が当たらず、徐々に殺菌効果が失われていくが、2次手術時に、カラー部12に光を照射することで、再度殺菌作用を発現させることができる。
また、インプラント10のカラー部12の殺菌作用は、オッセオインテグレーション獲得後も、インプラント周囲炎を予防や進行を抑制する効果がある。
本考案による殺菌層の実施例は、光を利用して殺菌作用を発現する場合と、光がなくても殺菌効果を発現する場合とがあり、以下に具体的に説明する。
(実施例1)
アナターゼ型結晶で構成される酸化チタンは、エネルギーバンドが3.2eVであり、波長が380nm以下の光に対して電子が励起して活性化し、光触媒機能を発現する。光触媒活性により、超親水性や酸化分解反応を示すため、殺菌効果を有する。
このため、インプラントのカラー部に光触媒材の層である酸化チタン薄膜を形成した。酸化チタン薄膜の作製は、スパッタリングにより行った。スパッタリング装置のターゲットには、純度99%以上のチタンを用い、アノードにはインプラントを取り付けた。スパッタリング装置のチャンバー内は真空度を5×10−4Paまで排気し、アルゴンガスに酸素を40%加えた混合ガスを用いて成膜した。酸化チタンの膜厚は、0.5〜1μmである。
酸化チタンの光触媒活性化は、波長が380nm以下の光の照射が必要であり、紫外線領域の光である。このため、可視光領域でも光触媒活性化を行わせるために、酸化チタンに窒素をドーピングすることが有効である。このために、上記スパッタリング装置での混合ガスを、アルゴンガスに酸素20%の他、さらに窒素20%を加えて成膜した。窒素ドープ型酸化チタン薄膜は、0.5〜1μmである。
また、光触媒コーティング剤をインプラントのカラー部にコーティングすることにより、殺菌層を形成することもできる。例えば、テイカ株式会社製のコーティング剤である商品名TKC−303やTKC304、光触媒サガンコートコーティング剤の商品名TPX−VBやTPK−HL等が利用できる。
光触媒機能を利用した殺菌層を備えたインプラントは、埋入直前に光の照射が行われる。光は、酸化チタンの光触媒活性化を行うために、波長が380nm以下の紫外線、X線あるいはガンマ線が使用できる。可視光領域での光植外活性化が可能な窒素ドープ酸化チタンでは、自然光や蛍光灯の光でもよい。上記試作した殺菌層は、いずれも光触媒活性が得られた。
また、殺菌層として試作した光触媒層は、水中での超音波照射によっても光触媒活性が得られた。このため、インプラントの埋入直前に、超音波洗浄を行うことにより、洗浄効果と光触媒活性効果が同時に得られる。
(実施例2)
光触媒を利用した殺菌層は、キャップ埋入初期には効果を発揮するが、口内は光が直接照射されることがないために、徐々に効果が薄れていく。このため、光照射を必要としない無光触媒材を使用した。無光触媒材としては、リン酸チタニア化合物を使用する。リン酸チタニア化合物は、光触媒酸化チタンにリン酸を反応させて、暗所において光触媒活性が得られ、酸素と水分があれば、マイナスイオンを発生させて活性効果を持続し、抗菌効果が得られる。リン酸チタニア化合物の無光触媒は、例えばYOOコーポレーションの無光触媒エコキメラ(登録商標)がある。抗菌タイプのエコキメラSシリーズ(品番:SW−50)を使用して、インプラントのカラー部にコーティングして殺菌層とした。
また、ファイラック・インターナショナル株式会社により開発されたCT触媒も光を利用しない触媒であり、殺菌層に利用できる。CT(Change Transfer)触媒は、電子供与体と電子受容体から構成され、同時進行の酸化、還元反応により、悪臭成分や細菌を分解する。この酸化、還元反応を利用した殺菌層を、インプラントのカラー部にコーティングすることにより作製した。
以上、本考案の実施例を説明したが、本考案はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態よる限定は受けない。
10 インプラント
12 カラー部
14 フィクスチャー
16 殺菌層
18 キャップ取付部
22 カバーアバットメント
24 ヒーリングアバットメント
26 インプラント手術のフローチャート
30 歯槽骨
32 骨膜
34 結合組織
36 上皮組織
38 縫合部
40 汚染部
42 光

Claims (10)

  1. カラー部の表面に殺菌機能を発現する殺菌層を備えたことを特徴とする歯科用インプラント。
  2. 請求項1に記載の歯科用インプラントにおいて、
    前記殺菌層は、光の照射により殺菌機能を発現する光触媒材の層であること、
    を特徴とする歯科用インプラント。
  3. 請求項2に記載の歯科用インプラントにおいて、
    前記光触媒材は、光触媒コーティング剤であること、
    を特徴とする歯科用インプラント。
  4. 請求項2に記載の歯科用インプラントにおいて、
    前記光触媒材は、酸化チタンであること、
    を特徴とする歯科用インプラント。
  5. 請求項4に記載の歯科用インプラントにおいて、
    前記酸化チタンに、窒素がドーピングされていること、
    を特徴とする歯科用インプラント。
  6. 請求項3又は4に記載の歯科用インプラントは、
    インプラントに装着する直前に、酸化チタンの電子を励起させる波長以下の光が照射されること、
    を特徴とする歯科用インプラント。
  7. 請求項6に記載の歯科用インプラントは、
    インプラントに装着する直前に照射される光は、ガンマ線、X線又は紫外線であること、
    を特徴とする歯科用インプラント。
  8. 請求項3乃至5に記載の歯科用インプラントは、
    インプラントに装着する直前に、水中で超音波が照射されること、
    を特徴とする歯科用インプラント。
  9. 請求項1に記載の歯科用インプラントにおいて、
    前記無光触媒材はリン酸チタニア化合物であること、
    を特徴とする歯科用インプラント。
  10. 請求項1に記載の歯科用インプラントにおいて、
    前記殺菌層は、CT触媒材の層であること、
    を特徴とする歯科用インプラント。

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