JP3179223B2 - 重合せビーム溶接方法 - Google Patents

重合せビーム溶接方法

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JP3179223B2 JP32812692A JP32812692A JP3179223B2 JP 3179223 B2 JP3179223 B2 JP 3179223B2 JP 32812692 A JP32812692 A JP 32812692A JP 32812692 A JP32812692 A JP 32812692A JP 3179223 B2 JP3179223 B2 JP 3179223B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高密度エネルギビーム
を用いて、重ね合わせた部材同士を溶接する重合せビー
ム溶接方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】例えば自動車のボディパネルの組み立て
等のように、比較的大きな部材同士の溶接においては、
予め適当な部位を仮付け溶接した後、増し打ち溶接が施
されるようになっている。このため、仮付け溶接におい
ては、部材同士の接合強度はそれほど高い数値を要求さ
れないものの、溶接によって生じる各部材の変形量を極
力小さくすることが重要な特性として要求されている。
【0003】従来より、上記の仮付け溶接および増し打
ち溶接としては、例えば特開昭60−49883号公報
に開示されているようなレーザ溶接が多用されている。
このレーザ溶接は、例えば重ね合わせた部材同士の両接
触面間にクリアランス(以下、ギャップと称する)が存
在する場合には、部材同士をローラ等の治具でクランプ
して、溶接部位を圧接することにより溶接を施すように
なっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来のレーザ溶接は、重ね合わせた部材同士の両接触面間
に殆どギャップが存在しない場合には、部材同士をクラ
ンプして圧接することによって生じる各部材の変形量は
小さいものの、ギャップが大きくなると、溶接部位を圧
接するために治具による加圧力を大きくしたり、あるい
は治具の個数を増やさなければならず、従って、ギャッ
プの大きさに比例して溶接歪み、即ち各部材の変形量が
増加し、部品精度が低下するという問題を有している。
特に、上記の各部材が長尺物である場合や、表面粗さが
粗い場合、接触面積が広い場合、部材同士をクランプす
る箇所が限られる場合等には、両接触面間のギャップが
大きくなるため、各部材の変形量がより増加し、部品精
度の低下が顕著となる。
【0005】そこで、例えば仮付け溶接においては、溶
接部位を圧接しないで溶接を施す非接触溶接法が提案さ
れている。この非接触溶接法は、溶接部位を圧接しない
ので、両接触面間にギャップが存在しても各部材の変形
量を小さくすることが可能となっているが、反面、溶接
部位が非接触であるために両接触面間のギャップが大き
くなると溶接不良を招き、接合強度の低下や、接合強度
のばらつきを引き起こすという新たな問題を生じること
となる。また、レーザ光を照射する側の部材の板厚が薄
く、かつギャップが大きい場合には、溶接部位の金属が
溶け落ちて部材に孔が開いてしまう虞れがある。
【0006】本発明の重合せビーム溶接方法は、上記の
問題に鑑みなされたものであり、部材同士の両接触面間
にギャップが存在する場合においても、溶接部位の接合
強度の低下や、接合強度のばらつき、各部材の変形量を
低減し、部品精度を維持できる良好な溶接方法を提供す
ることを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】請求項記載の発明の重
合せビーム溶接方法は、上記の課題を解決するために、
高密度エネルギビームを用いて、重ね合わせた部材同士
を両接触面間にクリアランスを有する状態で溶接する重
合せビーム溶接方法であって、上記の両接触面にメッキ
が施されている場合に、メッキ厚の薄い接触面を有する
部材側から高密度エネルギビームを照射することを特徴
としている。
【0008】請求項記載の発明の重合せビーム溶接方
法は、上記の課題を解決するために、高密度エネルギビ
ームを用いて、重ね合わせた部材同士を両接触面間にク
リアランスを有する状態で溶接する重合せビーム溶接方
法であって、上記の接触面の何れか一方にメッキが施さ
れている場合に、メッキが施されていない接触面を有す
る部材側から高密度エネルギビームを照射することを特
徴としている。
【0009】
【作用】請求項記載の方法によれば、両接触面にメッ
キが施されている場合に、メッキ厚の薄い接触面を有す
る部材側から高密度エネルギビームを照射することによ
り、重ね合わせた部材同士を両接触面間にクリアランス
を有する状態で溶接するので、高密度エネルギビームの
熱によって蒸発するメッキ材の蒸発量を抑えることがで
きる。
【0010】それゆえ、溶接を良好に施すことを阻害す
る要因であるメッキ材の蒸気発生量を抑えることができ
るので、溶接部位の接合強度の低下や、接合強度のばら
つき、各部材の変形量を低減することができ、部品精度
が維持された良好な溶接を施すことが可能となる。
【0011】請求項記載の方法によれば、接触面の何
れか一方にメッキが施されている場合に、メッキが施さ
れていない接触面を有する部材側から高密度エネルギビ
ームを照射することにより、重ね合わせた部材同士を両
接触面間にクリアランスを有する状態で溶接するので、
高密度エネルギビームによって蒸発するメッキ材の蒸発
量を抑えることができる。
【0012】それゆえ、溶接を良好に施すことを阻害す
る要因であるメッキ材の蒸気発生量を抑えることができ
るので、溶接部位の接合強度の低下や、接合強度のばら
つき、各部材の変形量を低減することができ、部品精度
が維持された良好な溶接を施すことが可能となる。
【0013】
【実施例】〔背景技術を説明する基本実験例〕 本発明の背景技術を説明する基本実験例について図1お
よび図2に基づいて説明すれば、以下の通りである。
尚、本基本実験例は、図1に示すように、平板状の第一
部材1と、この第一部材1よりも板厚の薄い平板状の第
二部材2とを重ね合わせて、これら第一および第二部材
1・2の両接触面を高密度エネルギビームとしてのレー
ザ光によって溶接する重合せビーム溶接方法を一例とし
て示すものである。
【0014】上記の第一部材1としては板厚 1.2mmの鋼
板を用い、第二部材2としては板厚0.7mmの鋼板を用い
た。また、重ね合わせたこれら第一および第二部材1・
2にビーム溶接(以下、レーザ溶接と称する)を施すた
めのレーザ溶接機としてはCO2 レーザ溶接機を用い、
第一部材1側(図1中で、A方向)からレーザ光を照射
した。溶接条件は、CO2 レーザ溶接機の溶接出力 2.0
kw、溶接時間 0.4秒、焦点外し量 0の点溶接とし、第一
および第二部材1・2の両接触面間のクリアランス(以
下、ギャップと称する)量を 0mm〜 1.0mmの範囲の大き
さに設定して行った。
【0015】また、比較のために、レーザ溶接と同一の
溶接条件で、第二部材2側(同図中で、B方向)からレ
ーザ光を照射する比較レーザ溶接も行った。そして、レ
ーザ溶接および比較レーザ溶接を施した溶接部位の溶接
強度(接合強度)を測定した。これら測定結果を図2に
示す。
【0016】図2に示すように、重ね合わせた第一およ
び第二部材1・2に、第一部材1側からレーザ溶接を施
した場合の溶接強度(図中、●で示す)は、ギャップ量
が 0mm〜 1.0mmの範囲にわたって 80kgf前後で略一定
し、安定した溶接強度を有すると共に、ギャップ許容限
が大きくなっていることがわかる。このように、レーザ
溶接は、例えば両接触面間のギャップ量が 1.0mmである
場合においても、第一および第二部材1・2を良好に溶
接することが可能となっている。
【0017】一方、重ね合わせた第一および第二部材1
・2に、第二部材2側から比較レーザ溶接を施した場合
の溶接強度(図中、○で示す)は、ギャップ量が 0mm〜
0.3mmの範囲では110kgf前後で略一定し、安定した溶接
強度を有するものの、ギャップ量が 0.3mmよりも大きく
なると溶接強度が急激に低下している。このように、比
較レーザ溶接は、ギャップ量が大きい場合には第一およ
び第二部材1・2を良好に溶接することが不可能となっ
ている。
【0018】このように第二部材2側から比較レーザ溶
接を施した場合に、溶接強度の急激な低下が生じるの
は、以下の理由による。即ち、溶接強度は、溶接部位に
おける溶融金属部分の面積が広くなると大きくなる。比
較レーザ溶接では、板厚の薄い第二部材2側からレーザ
光を照射するために、ギャップ量が 0.3mm以下のときは
レーザ光の熱により溶融金属部分の面積が広くなり、溶
接強度が大きくなる一方、ギャップ量が 0.3mmよりも大
きくなると、第二部材2の溶融金属部分が完全に溶け落
ちて第二部材2に孔が開き、第一および第二部材1・2
を溶接することが困難となってしまうためである。
【0019】上記の測定結果から、板厚の厚い第一部材
1側からレーザ光を照射する重合せビーム溶接としての
レーザ溶接は、例えば両接触面間のギャップ量が 1.0mm
である場合においても、溶接部位に孔を開けることなく
第一および第二部材1・2を安定した溶接強度で良好に
溶接することが可能となっていることがわかる。従っ
て、例えば、第一および第二部材1・2が長尺物である
場合や、表面粗さが粗い場合、接触面積が広い場合、第
一および第二部材1・2同士をクランプする箇所が限ら
れる場合、あるいはクランプする箇所を少なくした場合
等においても、溶接部位の溶接強度の低下や、溶接強度
のばらつきを低減することができ、生産性が向上すると
共に、第一および第二部材1・2の部品精度が維持され
た良好な溶接を施すことが可能となる。
【0020】尚、上記の基本実験例においては、重ね合
わせた第一および第二部材1・2を点溶接する場合を例
に挙げて説明したが、勿論、第一および第二部材1・2
を連続溶接する場合においても、レーザ溶接は、安定し
た溶接強度で良好に溶接することが可能である。また、
各部材1・2の材質は、上記の鋼板に限定されず、例え
ば各部材1・2が各々異なった材質であってもよい。さ
らに、各部材1・2の板厚も上記の基本実験例に用いた
厚さに限定されない。その上、溶接条件も上記の基本実
験例に限定されず、各部材1・2の材質や板厚等に応じ
た最適の条件となるように種々変更可能である。
【0021】〔実施例〕 本発明の第の実施例について図3および図4に基づい
て説明すれば、以下の通りである。尚、本実施例は、図
3に示すように、片面にメッキ層5が形成された平板状
の第一部材3と、片面にメッキ層6が形成された平板状
の第二部材4とを、メッキ層5・6が形成された面が接
触面となるように重ね合わせて、これら第一および第二
部材3・4をレーザ光によって溶接する重合せビーム溶
接方法を一例として示すものである。
【0022】上記の第一および第二部材3・4を等しい
板厚とし、板厚 0.7mmの鋼板を用いた。そして、メッキ
層5のメッキ量(メッキ厚)よりもメッキ層6のメッキ
量の方が多くなるようにして上記の第一および第二部材
3・4にメッキを施し、各メッキ層5・6を形成した。
また、レーザ溶接の溶接条件を前記の基本実験例と同一
とし、第一部材3側(図3中で、C方向)からレーザ光
を照射し、第一および第二部材3・4の両接触面間のギ
ャップ量を 0mm〜 0.4mmの範囲の大きさに設定して行っ
た。
【0023】また、比較のために、レーザ溶接と同一の
溶接条件で、第二部材4側(同図中で、D方向)からレ
ーザ光を照射する比較レーザ溶接も行った。そして、レ
ーザ溶接および比較レーザ溶接を施した溶接部位の溶接
強度を測定した。これら測定結果を図4に示す。
【0024】図4に示すように、重ね合わせた第一およ
び第二部材3・4に、第一部材3側からレーザ溶接を施
した場合の溶接強度(図中、●で示す)は、ギャップ量
が 0mm〜 0.3mmの範囲にわたって115kgf前後で略一定
し、安定した溶接強度を有することがわかる。
【0025】一方、重ね合わせた第一および第二部材3
・4に、第二部材4側から比較レーザ溶接を施した場合
の溶接強度(図中、○で示す)は、ギャップ量が 0.1mm
〜 0.3mmの範囲ではレーザ溶接を施した場合と略同一の
値を示し、安定した溶接強度を有するものの、ギャップ
量が 0mmのときに溶接強度が急激に低下している。この
ように、比較レーザ溶接は、ギャップ量が小さい場合に
は、第一および第二部材3・4を良好に溶接することが
困難となっている。
【0026】このように第二部材4側から比較レーザ溶
接を施した場合に、溶接強度の急激な低下が生じるの
は、以下の理由による。即ち、比較レーザ溶接では、メ
ッキ量の多いメッキ層6側からレーザ光を照射するため
に、ギャップ量が 0mmの場合には、レーザ光の熱によっ
て蒸発したメッキ材の蒸気が溶接部位に滞留し、第二部
材4によるレーザ光の吸収が不安定となり、ブローホー
ルが発生して、第二部材4の溶接部位における金属の溶
け込み状態に悪影響を与えるためである。
【0027】上記の測定結果から、メッキ量の少ないメ
ッキ層5が形成された第一部材3側からレーザ光を照射
する重合せビーム溶接としてのレーザ溶接は、レーザ光
によって蒸発するメッキ材の蒸発量を抑えることがで
き、ブローホールの発生が抑制されるので、両接触面間
のギャップ量が 0mmの場合においても、第一および第二
部材3・4を安定した溶接強度で良好に溶接することが
可能となっていることがわかる。従って、溶接を良好に
施すことを阻害する要因であるメッキ材の蒸気発生量を
抑えることができるので、溶接部位の溶接強度の低下
や、溶接強度のばらつきを低減することができ、生産性
が向上すると共に、第一および第二部材3・4の部品精
度が維持された良好な溶接を施すことが可能となる。
【0028】尚、上記の実施例においては、重ね合わ
せた第一および第二部材3・4を点溶接する場合を例に
挙げて説明したが、勿論、第一および第二部材3・4を
連続溶接する場合においても、レーザ溶接は、安定した
溶接強度で良好に溶接することが可能である。また、各
部材3・4の材質は、上記の鋼板に限定されず、例えば
各部材3・4が各々異なった材質であってもよい。さら
に、各部材3・4の板厚も上記の実施例に用いた厚さ
に限定されない。その上、溶接条件も上記の実施例
限定されず、各部材3・4の材質や板厚等に応じた最適
の条件となるように種々変更可能である。
【0029】〔実施例〕 本発明の第の実施例について図5ないし図9に基づい
て説明すれば、以下の通りである。尚、本実施例は、図
5に示すように、平板状の第一部材7に、略「く」の字
型の第二部材8を重ね合わせて、これら第一および第二
部材7・8をレーザ光によって三点溶接する重合せビー
ム溶接方法を一例として示すものである。
【0030】上記の第一部材7としては、板厚 1.2mmの
軟鋼板( Stored Programing Control:SPC材)を用
い、第二部材8としては、メッキが施されて両面にメッ
キ層(図示せず)が形成された板厚 0.7mmの電気メッキ
鋼板(Zn−Niメッキ、メッキ量:両面とも30g/m2
を用いた。また、レーザ溶接の溶接条件を、CO2 レー
ザ溶接機の溶接出力 2.4kw、溶接時間 0.5秒とした以外
は、前記の基本実験例と同一とし、第一部材7側(図5
中で、E方向)からレーザ光を照射し、第一部材7(以
下、軟鋼板と称する)および第二部材8(以下、メッキ
鋼板と称する)の両接触面間のギャップ量を 0mm〜 1.0
mmの範囲の大きさに設定して行った。
【0031】また、比較のために、レーザ溶接と同一の
溶接条件で、メッキ鋼板8側(同図中で、F方向)から
レーザ光を照射する比較レーザ溶接も行った。さらに、
上記のレーザ溶接と比較するために、同一の軟鋼板7お
よびメッキ鋼板8を用い、比較例としてスポット溶接を
施した。スポット溶接を施すためのスポット溶接機とし
ては、ポータブル型の単相交流溶接機を用いた。溶接条
件は、単相交流溶接機の溶接電流0.85kA、通電時間13サイ
クル、加圧力 250kgにて行った。
【0032】そして、溶接による上記軟鋼板7およびメ
ッキ鋼板8の変形量は、図6に示すように、軟鋼板7を
固定し、溶接の前後におけるメッキ鋼板8の立ち上がり
部分8aのG方向への変位量を変位計10にて測定する
ことにより求めた。また、溶接部位の接合強度を求める
ために引張荷重を測定すると共に、この引張荷重の測定
値の標準偏差を算出した。上記三種類の溶接をそれぞれ
施した溶接部位の各測定結果を図7ないし図9に示す。
尚、変形量は、G方向への変形を+の値とし、逆方向へ
の変形を−の値とした。
【0033】図7に示すように、重ね合わせた軟鋼板7
およびメッキ鋼板8にレーザ溶接を施した場合の変形量
(図中、●で示す)は、ギャップ量が 0mm〜 1.0mmの範
囲にわたって± 0.2mm以内であり、特にギャップ量が
0.3mm〜 1.0mmの範囲においては 0.1mm〜 0.2mmで略一
定し、良好な溶接精度を有することがわかる。このよう
に、レーザ溶接は、両接触面間のギャップ量が 1.0mmで
ある場合においても、軟鋼板7およびメッキ鋼板8の変
形を殆ど引き起こすことなく溶接を施すことが可能とな
っている。
【0034】一方、軟鋼板7およびメッキ鋼板8にスポ
ット溶接を施した場合の変形量(図中、△で示す)は、
ギャップ量が大きくなるにつれて増加し、特にギャップ
量が0.3mmを超えると 0.4mm以上となり、溶接精度が不
良となっていることがわかる。このように、スポット溶
接は、ギャップ量が 0.3mmを超えると、軟鋼板7および
メッキ鋼板8の変形を引き起こすことなく溶接を施すこ
とが不可能となっている。
【0035】また、図8に示すように、軟鋼板7および
メッキ鋼板8にレーザ溶接を施した場合の引張荷重(図
中、●で示す)は、ギャップ量が 0mm〜 1.0mmの範囲に
わたって150kgf前後で略一定となっており、溶接部位が
安定した接合強度を有していることがわかる。また、図
9に示すように、引張荷重の測定値の標準偏差σ(図
中、●で示す)は、何れも10以下で略一定しており、再
現性良く上記の接合強度が得られることがわかる。この
ように、レーザ溶接は、軟鋼板7およびメッキ鋼板8
を、再現性の良い安定した接合強度で溶接することが可
能となっている。
【0036】一方、図8に示すように、軟鋼板7および
メッキ鋼板8にスポット溶接を施した場合の引張荷重
(図中、△で示す)は、ギャップ量が大きくなるにつれ
て低下しており、溶接部位の接合強度がギャップ量の大
きさに左右されていることがわかる。また、軟鋼板7お
よびメッキ鋼板8に比較レーザ溶接を施した場合の引張
荷重(図中、○で示す)は、ギャップ量が 0mm〜 1.0mm
の範囲にわたって200kgf前後となっており、上記のレー
ザ溶接を施した場合の引張荷重よりも若干大きくなって
いるものの、図9に示すように、引張荷重の測定値の標
準偏差σ(図中、○で示す)は、何れも15以上となり、
溶接部位の接合強度にばらつきが生じていることがわか
る。即ち、比較レーザ溶接は、軟鋼板7およびメッキ鋼
板8を、再現性の良い安定した接合強度で溶接すること
が不可能となっている。
【0037】このようにメッキ鋼板8側から比較レーザ
溶接を施した場合に、引張荷重の測定値にばらつきが生
じるのは、以下の理由による。即ち、比較レーザ溶接で
は、メッキ鋼板8側からレーザ光を照射するために、メ
ッキ鋼板8両面に形成されたメッキ層がレーザ光の熱に
よって蒸発する。このため、蒸発したメッキ材の蒸気が
溶接部位に滞留し、メッキ鋼板8によるレーザ光の吸収
が不安定となり、メッキ鋼板8の溶接部位における金属
の溶け込み状態にばらつきが生じ、この溶け込み状態の
ばらつきが溶接部位の接合強度のばらつきを引き起こす
こととなる。また、メッキ鋼板8は軟鋼板7よりも板厚
が薄いために、ギャップ量の許容限が 0.8mm程度となっ
ており、ギャップ量が 1.0mmになると、メッキ鋼板8に
おけるレーザ光が照射された部分が完全に溶け落ちてメ
ッキ鋼板8に孔が開き、溶接を施すことが不可能となっ
てしまう。
【0038】上記の測定結果から、板厚が厚くメッキ層
が形成されていない軟鋼板7側からレーザ光を照射する
重合せビーム溶接としてのレーザ溶接は、レーザ光によ
って蒸発するメッキ材の蒸発量を抑えることができるの
で、両接触面間のギャップ量が 1.0mmの場合において
も、軟鋼板7およびメッキ鋼板8を、再現性の良い安定
した接合強度で変形を殆ど引き起こすことなく溶接する
ことが可能となっていることがわかる。従って、溶接を
良好に施すことを阻害する要因であるメッキ材の蒸気発
生量を抑えることができるので、溶接部位の溶接強度の
低下や、溶接強度のばらつきを低減することができ、生
産性が向上すると共に、軟鋼板7およびメッキ鋼板8の
部品精度が維持された良好な溶接を施すことが可能とな
る。また、例えば、第一および第二部材1・2が長尺物
である場合や、表面粗さが粗い場合、接触面積が広い場
合、第一および第二部材1・2同士をクランプする箇所
が限られる場合、あるいはクランプする箇所を少なくし
た場合等においても、軟鋼板7およびメッキ鋼板8の部
品精度が維持された良好な溶接を施すことが可能とな
る。
【0039】尚、上記の実施例においては、重ね合わ
せた軟鋼板7およびメッキ鋼板8を三点溶接する場合を
例に挙げて説明したが、勿論、軟鋼板7およびメッキ鋼
板8を連続溶接する場合においても、レーザ溶接は、再
現性の良い安定した接合強度で変形を殆ど引き起こすこ
となく溶接することが可能である。また、第一および第
二部材7・8の材質は、上記の軟鋼板およびメッキ鋼板
に限定されず、例えば各部材7・8が同一の材質であっ
てもよい。さらに、各部材7・8の板厚も上記の実施例
に用いた厚さに限定されない。その上、溶接条件も上
記の実施例に限定されず、各部材7・8の材質や板厚
等に応じた最適の条件となるように種々変更可能であ
る。
【0040】
【発明の効果】本発明の請求項記載の重合せビーム溶
接方法は、以上のように、両接触面にメッキが施されて
いる場合に、メッキ厚の薄い接触面を有する部材側から
高密度エネルギビームを照射する方法である。
【0041】それゆえ、溶接を良好に施すことを阻害す
る要因であるメッキ材の蒸気発生量を抑えることができ
るので、溶接部位の接合強度の低下や、接合強度のばら
つき、各部材の変形量を低減することができ、部品精度
が維持された良好な溶接を施すことが可能となるという
効果を奏する。
【0042】本発明の請求項記載の重合せビーム溶接
方法は、以上のように、接触面の何れか一方にメッキが
施されている場合に、メッキが施されていない接触面を
有する部材側から高密度エネルギビームを照射する方法
である。
【0043】それゆえ、溶接を良好に施すことを阻害す
る要因であるメッキ材の蒸気発生量を抑えることができ
るので、溶接部位の接合強度の低下や、接合強度のばら
つき、各部材の変形量を低減することができ、部品精度
が維持された良好な溶接を施すことが可能となるという
効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の背景技術を説明する基本実験例におけ
る重合せビーム溶接としてのレーザ溶接を施す第一およ
び第二部材の要部の正面図である。
【図2】図1の第一および第二部材に施された溶接の、
ギャップ量と溶接強度との関係を示すグラフである。
【図3】本発明の第の実施例における重合せビーム溶
接としてのレーザ溶接を施す第一および第二部材の要部
の正面図である。
【図4】図3の第一および第二部材に施された溶接の、
ギャップ量と溶接強度との関係を示すグラフである。
【図5】本発明の第の実施例における重合せビーム溶
接としてのレーザ溶接を施す第一および第二部材の斜視
図である。
【図6】図5の第一および第二部材の変形量の測定方法
を示す説明図である。
【図7】図5の第一および第二部材に施された溶接の、
ギャップ量と変形量との関係を示すグラフである。
【図8】図5の第一および第二部材に施された溶接の、
ギャップ量と引張荷重との関係を示すグラフである。
【図9】ギャップ量と図8の引張荷重の標準偏差との関
係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 第一部材 2 第二部材 3 第一部材 4 第二部材 5 メッキ層 6 メッキ層 7 軟鋼板(第一部材) 8 メッキ鋼板(第二部材)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B23K 26/00 - 26/40

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】高密度エネルギビームを用いて、重ね合わ
    せた部材同士を両接触面間にクリアランスを有する状態
    で溶接する重合せビーム溶接方法であって、 上記の両接触面にメッキが施されている場合に、メッキ
    厚の薄い接触面を有する部材側から高密度エネルギビー
    ムを照射することを特徴とする重合せビーム溶接方法。
  2. 【請求項2】高密度エネルギビームを用いて、重ね合わ
    せた部材同士を両接触面間にクリアランスを有する状態
    で溶接する重合せビーム溶接方法であって、 上記の接触面の何れか一方にメッキが施されている場合
    に、メッキが施されていない接触面を有する部材側から
    高密度エネルギビームを照射することを特徴とする重合
    せビーム溶接方法。
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