JP3177774U - スカーフ - Google Patents

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Abstract

【課題】 安定したドレープを形成し、しかも簡便な装着で豊かでお洒落な襟元を演出するスカーフを提供する。
【解決手段】 円錐台筒状に形成された生地の一部に襞形成帯を設ける。襞形成帯は、稜線がほぼ該円錐台筒外周円に沿うように少なくともひとつの襞を形成固定する。そして、襞形成帯は、長手方向が該円錐台筒の一開口部から他開口部に向い、該両開口部間の少なくとも一部に渡るようにする。これにより襞が固定し、結果としてドレープが安定したものとなる。
また、所謂バームクーヘン形状の生地片から円錐台筒状の生地を生成するときには、縫合する対辺の長さを異なるものとすることで、嵩張らないギャザーを形成する襞形成帯にすることができる。
【選択図】図1

Description

本考案は、スカーフに関する。詳しくは、円錐台側面のうち先端を切り取ったような筒状の生地で、両開口部の間に一以上の襞を形成する部位を設けることにより、装着時に安定したドレープが形成されるようにしたスカーフに係るものである。
(1 本件考案に至るコンセプト)
ファッション雑誌には洋服の製作記事が多く掲載されている。しかし、その読者がこれらの製作記事をもとにして、自分でアレンジをするということは希である。このような現状では意欲ある読者でも、異なる襟元を演出するには異なる洋服をつくることになり、手軽に変化のあるお洒落を楽しむことができない。
考案者は日頃、お洒落について、次のようなコンセプトをもっている。
即ちお洒落は、洋服などとは別個の附属品・小物などによって、簡単にできるものであり、そのアレンジ如何によって見栄えも大きくかわるものである。そして、そのアレンジが全体として一体にみえるようになっていれば、簡単な附属品・小物でも大きな価値を創造することになる。
このようなコンセプトのもと、襟元がレース地などで豊かに見える洋服に着目する。レースの襟が洋服と一体に成形されていれば、レースが固定し、ドレープの形状も安定したものとなる。ドレープとは、布を垂らしたときにできるようなゆったりとした弛みや襞のことをいう。
しかし、これでは、襟元だけを換えることができず、些細な変更をするにも洋服全体を交換しなければならないことになる。
他方、スカーフを用いることで、容易にバリエーションを持たせることができるようにはなる。
しかし、装着すると体を動かす度にその装着状態が変化して、ドレープの形状も崩れやすく、たびたび鏡を見ながらその装着状況を修正しなければならないという面倒がある。
また、結び目をつけた場合には嵩張ることが避けられず、また解けたときには、落として紛失することもある。
更に、その装着後にも、風などに吹かれてめくれるなどして、せっかくのスタイルが型崩れしてしまうことにもなってしまう。
(2 本件考案に係る背景技術)
以上のような現況において、ドレープ・ギャザーを形成するスカーフはいくつか提案されている。
特許文献1では、紫外線防止を目的とするべく円筒状の生地に首回りにギャザーを入れ、紫外線防止効果を高めるスカーフが提案されている。
また、特許文献2では、首から肩に拡がる形状を持たせることで、安定した装着を維持することができるスカーフが提案されている。
さらに、特許文献3では、円筒状若しくは円筒台形状の生地により首回りで安定した装着をなし、合わせてドレープが生じるように工夫されたスカーフが提案されている。
登録実用新案第3140287号公報 登録実用新案第3127119号公報 特開2007−314921号公報
しかし、特許文献1に開示されるスカーフでは、紫外線防止効果は認められるものの、胸元を美しく見せるように首から胸元にかけて大きく広がるようなドレープを期待することができない。
また、特許文献2に開示されるスカーフでは、安定装着はできるものの、ドレープの生成を期待できない。また、ファスナー等の止着具を用いるために、装着が簡便であるとまではいえない。
さらに、特許文献3に開示されるスカーフは、なるほど安定装着ができ、しかもドレープは生成できる。しかし、そのドレープがいづれの部分にできるかは装着時の偶然に任されており、ドレープの形成が安定しないため、装着時に鏡によるチェックが必須となり、装着が簡便であるとまではいえない。
すなわち、いずれの先行技術においても、ドレープの形成が安定しないため、簡便な装着では豊かなお洒落のバリエーションを演出することができないという問題点がある。
本願考案は、上記問題点の軽減を図るためにされたものであり、その本質とするところは、円錐台筒状に形成された生地に、一開口部から他開口部に向かって少なくとも一部に襞形成帯を設けた点にある。
すなわち、本願請求項1に係る第1の考案は、円錐台筒状に形成された生地に、稜線がほぼ該円錐台筒外周円に沿うように少なくともひとつの襞を形成固定し、長手方向が該円錐台筒の一開口部から他開口部に向い、該両開口部間の少なくとも一部に渡る襞形成帯、を具備するようにしたスカーフである。本考案の手段について図2を用いて説明する。図2は第1の考案に係る手段の概念を示した図である。
「円錐台筒状」とは、中空円錐の先端を上にしたときに、上と下を切り落としたようなような形状のことを意味し、その切断面が平行であるか否かは問わない。
「稜線(202−1、−2、・・・)がほぼ該円錐台筒外周円に沿うように少なくともひとつの襞を形成固定」するとは、襞のうち、(尾根とでも言うべき)もっとも盛り上がっている部分を繋いだ線がほぼ円錐台筒(201)の外周円に沿って形成されるように襞を固定するという趣旨である。
また、本願において「襞」という場合には、山・谷を有する状態を指すものとし、折り目が明瞭なものはもちろん、折り目が明瞭でなく、細かく縫いちぢめたものも含む。すなわち、一般にギャザーやプリーツと呼ばれるものも「襞」に含まれる趣旨である。
また、「長手方向が該円錐台筒の一開口部(203)から他開口部(204)に向い、該両開口部間の少なくとも一部に渡る」とは、襞形成帯が円錐台筒状にした生地のうち、開口面積の狭い開口部から広い開口部の方向に向かう方向に襞形成帯が延びて設けられていて、必ずしも開口部から開口部までの全ての距離(206)を占めずともその一部でもよいという趣旨である。
以上のような要件を具備する襞形成帯(205)は、少なくともひとつのドレープを形成・固定するように作用する。
スカーフとは、人体に装着する装飾布であって、主として首に巻いたり,頭をおおったり,肩に掛けたりするのに用いるものをいう。他に概念を制限するものではない。
本願請求項2に係る第2の考案は、特に襞形成帯に技術的特徴を持つスカーフに関するものである。本考案の手段について図3を用いて説明する。図3は、第2の考案に係る手段の概念を示した図である。
本考案における生地は、第1の辺と第2の辺が対辺をなし、第1の辺(301)の延長線と第2の辺(302)の延長線とが交点(303)を有する形状の生地片の第1の辺と第2の辺とを繋ぎ合わせて形成する。
また、前記襞形成帯は、第2の辺より長い第1の辺を1回以上折り畳むことで第2の辺とほぼ同一の長さとし、両辺両端をそれぞれ合わせて形成する。
即ち、生地形成の場面において、第1の辺の両端(301−1、301−2)と、第2の辺の両端(302−1,302−2)とがそれぞれ対応するように繋ぎあわせる。
ここで、対辺の関係にある第1の辺と第2の辺について、それぞれの延長線同士が交点(303)を有することで、繋ぎ合わせたときに形成される2つの開口部(304、305)円周長が異なるようになり、結果として円錐台筒(306)を形成するように作用する。
また、第2の辺より長い第1の辺を複数折り畳んで第2の辺とほぼ同一の長さにして、両者を繋ぎ合わせて前記襞形成帯を形成することで、複数の折り畳みが襞として顕在化するとともに、必要最低限の厚さでその襞を形成するように作用する。
本願請求項3に係る第3の考案は、上記第2の考案にかかる生地片として、レース生地用いたものである。レースは、スカーフとして豊かで繊細なドレープを形成するように作用する。
本願請求項4に係る第4の考案は、上記第3の考案にかかる生地片に紫外線カット処理をしたものである。紫外線カット処理は、生地片の表から裏に抜ける紫外線量を低減させるように作用する。
本考案のスカーフは、以下のような効果がある。
即ち、請求項1に記載のスカーフは、安定して豊かなドレープを作り、簡単に着こなすことができるようにする効果がある。そして、風などに吹かれても装着状態や外観が大きく崩れないという効果がある。
また、請求項2に記載のスカーフは、ギャザーの厚みを最小限に抑えながら豊かなドレープを維持できるので、通常の一枚布によるスカーフと比較しても違和感がない外観を形成する効果がある。
また、請求項3に記載のスカーフは、見栄えが華やかで、しかもレースの生地でもドレープが安定化し、鏡が無くても装着を可能とする効果がある。
また、請求項4に記載のスカーフは、安定したドレープが形成されていることから外来光は幾重かのレース地を透過することになるが、そのために紫外線カット処理の効果を強化して、紫外線強度の減弱化を確実にすることができる。このために日焼け防止を確実にするという効果がある。
図1は、本件考案の最適な実施の形態に係る外観斜視図である。 図2は、第1の考案に係る概念図である。 図3は、第2の考案に係る概念図である。 図4は、本件考案の最適な実施の形態において用いられる生地を形成するための生地片形状例を示した形状例図である。 図5は、本件考案の最適な実施の形態において用いられる生地を形成するための生地片の製図例を示した図である。 図6は、本件考案の最適な実施の形態において用いられる生地を形成するための生地片の裁断例を示した裁断例図である。 図7は、本件考案の最適な実施の形態において用いられる生地を形成するための生地片の別の裁断例を示した裁断例図である。 図8は、本件考案の最適な実施の形態における襞形成帯の形成工程を示した工程説明図である。 図9は、本考案に係るスカーフを装着したときの第1の装着状況例を示した装着状況説明図である。 図10は、本考案に係るスカーフを装着したときの第2の装着状況例を示した装着状況説明図である。 図11は、本考案に係るスカーフを装着したときの第3の装着状況例を示した装着状況説明図である。 図12は、本考案に係るスカーフを装着したときの第4の装着状況例を示した装着状況説明図である。 図13は、本考案に係るスカーフを装着したときの第5の装着状況例を示した装着状況説明図である。
以下、本考案を実施するための形態については、以下の目次に沿って説明する。
[目次]
(1. 第1の実施の形態について)
(1.1. スカーフの外形形状)
(1.2. スカーフの製造方法)
(1.2.1. スカーフ生地片)
(1.2.1.1. 装着時に前面側となる領域の説明)
(1.2.1.2. 装着時に後面側となる領域の説明)
(1.2.2. スカーフ生地片裁断部分の生地上の配置例)
(1.2.3. 襞形成帯)
(1.2.3.1. 襞形成帯の内容)
(1.2.3.2. 襞形成帯の形成工程)
(2. 他の実施の形態について)
(2.1. 縁部形状のバリエーション)
(2.2. 生地柄等)
(2.3. 紫外線防止処理について)
(2.4. 身長によって補正を加えた実施の形態)
(2.5. 男性が用いる場合の実施の形態)
(3. スカーフの装着態様)
[本文]
(1. 第1の実施の形態について)
まず、本願考案を実施するにあたって、最も適した実施の形態である第1の実施の形態について説明する。
(1.1. スカーフの外形形状)
第1の実施の形態に係るスカーフの外形形状の例について図1に基づいて説明する。図1は生地の形状例を示した外観斜視図である。
本実施の形態にかかるスカーフの概形は、概ね円錐台側面と類似の形状(101)であり、上部・下部にそれぞれ開口部(104,106)があり、ほぼ筒状となっている。
もっとも、両開口面を平行にする必要はない。また、上部縁部(105)と下部縁部(107)とはともに、筒を切断したような均一なものである必要はない。本願においては、このような形状を「円錐台筒状」ということとする。
このように、本スカーフを円錐台筒状にしたことで、これを使用する者は、円筒内に頭を通して装着する。これは言い換えれば、本スカーフを一旦装着すると、また頭部を通さない限り外すことができないということである。その結果、装着位置がズレてきた程度では、首回りから外れることがないという利点がある。
襞(102)は、スカーフの生地外周の外縁にほぼ沿って延びる稜線(108)を形成するものであり、少なくともひとつが設けられる。
襞形成帯(103)は、スカーフ生地の一部に設けられ、特に、その長手方向は図面上側の開口部(104)から図面下側の開口部(106)に向かうようになっている。また、襞形成帯は、襞(102)の稜線(108)が襞形成帯の長手方向に入り込むように、襞を固定するようになっている。
このために、スカーフの貫通開口部分に首を通し、これを首後ろから前に垂れるように掛けるようにすることで、襞は人体前面でドレープを安定して形成するようになっている。
(1.2. スカーフの製造方法)
次に、第1の実施の形態に係るスカーフの製造方法の例について図4乃至図8に基づいて説明する。
(1.2.1. スカーフ生地片)
スカーフ生地片の形状ならびに詳細な製図例について、図4、図5を用いて説明する。
まず、スカーフ生地片の概要について図4を用いて説明する。図4は、第1の実施の形態における生地片形状例を示したものである。
スカーフ生地は円錐台筒状を基調として形成するために、図を一瞥してもわかるとおり、その生地を形成する生地片はいわゆるバームクーヘン状(EFJGHI)を採るのが望ましい。
もっとも、ひとが装着したときに前面側にあたる領域(401)で、中心Pからみた幅(403)を広く採ることが望ましい。通常、豊かなドレープは前面側に生じさせるものであって、ドレープ形成のためにはより多くの生地が必要なためである。
これに対し、後面側にあたる領域(402)は、接合端となる辺に向かうに従って、自然な比率で次第に幅が狭まるような形状とすることが望ましい。これは、後面側ではドレープを前面ほど強く表わす必要がないためである。
ここでは説明の都合上、生地片のうち前面側の領域(401)か後面側の領域(402)かは扇形外周の中心角をほぼ同角に内分する線IJで仕切っているが、特にこの線分で仕切らなければならないわけではなく、デザイン等に応じて適宜変更することができる。以下、この線分IJを領域分離線(404)ということとする。
次に、前面側にあたる領域と後面側にあたる領域とについて更なる詳細な製図例等について図5を用いて説明する。図5は、第1の実施の形態において用いられる生地片を生地から裁断するときに用いる寸法を示した製図例を示したものであり、紙面表側が生地表側を表している。また、生地片を70cmの正方形(ABCD)の元生地から裁断して得ることを想定している。
なお、以下の数値は、身長155cmの女性に合わせて設計したものである。このため、装着者の身長・性別などに合わせてこの寸法を変更することが望ましい。
まず、生地片(505)(曲線EFJMGHLI)を元生地(506)(方形ABCD)から切り取る場合を例示する。地の目線は辺ABに平行になるように採るか、辺ADに平行になるように採ることが望ましい。ここで、地の目線とは、生地端の「みみ」と同じ方向の線のことである。
上部縁部(501)(曲線EILH)は、縫合完成後に上部縁部(105)となる部位である。形状は、点Pを中心とした略弧状であって、角EPHを凡そ100°とし、半径PIを36cmとするのが望ましい。ここで、角EPHを90°を超えるものとしたのは、上部縁部(501)(曲線EILH)と、後述する下部縁部(504)(曲線FJMG)との長さの差が大きくなるようにするためである。これにより、縫合完成後のスカーフは円錐台筒状になる。また、内周部から外周部に向かったときの広がり方が大きく、連通した開口部に頭を通した場合に自然な形に肩にかかるようになる。
点Pは、上記のごとく角EPHが略100°となるような点であるが、この点Pは作図の都合上、対角線AC上で、Aから6cmの位置と決めれば足りる。
下部縁部(504)(曲線FJMG)は、縫合完成後に下部縁部(107)となる部位である。下部縁部の形状は、スカーフの形状が人体の前面側にあたる領域と後面側にあたる領域とで異なることから、生地片上でも前面にあたる曲線と、後面にあたる曲線とで、その特徴が異なる。
(1.2.1.1. 装着時に前面側となる領域の説明)
人体装着時に前面にあたる領域について、説明する。前面にあたる生地片の領域は図中、バームクーヘン形状のうち、領域分離線(507)より右上側(IJMGHL)にあたる。
前面側領域(IJMGHL)は生地片幅を大きくとる。ドレープを主として人体前側に形成するためで、この領域の面積を後面側領域より広く採る方が装着時の意匠上、適切だからである。
また、特に前面中央付近で稜線・谷線を明瞭にするような、深く豊かなドレープを形成するためには前面領域の中央付近の幅を広くすることが望ましい。このために、線分LMの付近の幅は32cm程度にすることが望ましい。前面領域の中央を決めるにあたっては、角JPGを均等に内分する線に合わせるのがよい。もっともここが、厳密である必要はない。容易な作図の都合上、生地の辺CDを均等に内分する点Nを求め、線分PNを前面領域の中央とすれば足りる。
縫い合わせ辺1(502)は、縫合工程において縫い合わせ辺2(503)と縫合される辺である。裁断・縫合容易のため、縫い合わせ辺1(502)は直線状にするのが望ましい。そしてその長さは、襞を形成するために、対応する縫い合わせ辺2(503)より長く採る。
本実施の形態では30cmとし、対応する縫い合わせ辺2(503)の18cmよりも12cm長くする。これにより、襞のために利用できる余裕分は12cmとなる。
なお、この外側に1cm程度の縫いしろ分を確保するものとする(図示せず)。
(1.2.1.2. 装着時に後面側となる領域の説明)
次に、人体装着時には背にあたる後面領域について、説明する。後面となる生地片の領域は図中、バームクーヘン形状のうち、領域分離線(507)より左下側(EFJI)にあたる。
上部縁部(501)のうち、装着時後面領域にあたる部分(曲線IE)は、前記装着時前面での領域の上部縁部の延長上にあり同曲率とすれば足りる。
縫い合わせ辺2(503)は、縫い合わせ辺1(502)に縫合される辺であり、その形状は、縫い合わせ辺1(502)に合わせることになる。本実施の形態では、縫い合わせ辺1(502)を直線状としたので、縫い合わせ辺2(503)も直線状にするのが望ましい。
ここでも、この外側に1cm程度の縫いしろ分を確保するものとする。
下部縁部(504)のうち、装着時後面領域にあたる部分(曲線FJ)は、前記装着時前面での領域の下部縁部(曲線JG)の延長上にあるものの、その曲率の取り方は異なる。
すなわち、装着時後面にあたる領域では、領域分離線(507)付近から縫い合わせ辺2(503)に近づくにつれ次第に狭くなるような形状とする。もっとも、縫い合わせ辺1(502)と縫い合わせ辺2(503)を縫い合わせたときに、前面領域と後面領域とが自然に繋がって見えるようにすることが望ましい。このため、たとえば点Pを中心として、縫い合わせ辺2(503)から角θ°をなす付近の下部縁部について、点Pからの距離Loで表すと、下記式程度にするのが好適である。
Figure 0003177774
この数式右辺について簡単に説明する。
第1項・第2項の「36+18」は、Pからこの領域の最短辺となる縫い合わせ辺2(503)の下部縁部までの長さであり、Pから上部縁部36cmの長さと縫い合わせ辺2の長さ18cmを加算したものである。
第3項の「6」は、曲線FJを滑らかに波打つようにしたときの波の振幅のオフセット分にあたる。そして第4項は、振幅6cmで最短辺から領域分離線に至る曲線を半周期の余弦で近似する波を表現している。
もちろん、この式は目安であって、これに拘泥する必要はなく、自然に前面と後面とが繋がればよい。
(1.2.2. スカーフ生地片裁断部分の生地上の配置例)
次に、生地片の生地布からの獲りかたについて説明する。
有効な生地の利用を図るにあたっては、2パターンに大別できる。
ひとつは短い方の縫い合わせ辺を地の目線(生地の「みみ」と同じ方向の線)と略平行にしたもの(以下、第1の裁断パターンという)である。
もうひとつは、長い方の縫い合わせ辺を地の目線と略平行にしたもの(以下、第2の裁断パターンという)である。
まず、第1の裁断パターンを図6に基づいて説明する。図6は第1の実施の形態において用いられる生地片を第1のパターンで裁断した裁断例図である。この例は、みみとみみの間長である幅90cmの生地布から生地片を裁断する場合を想定している。
図に示すとおり、2つの生地片の上部縁部がそれぞれ向かい合うように配置することにより、生地上に重なり部分(601)を設けることができ、90cm幅の生地では、33cmを重ねることができるようになる。
次に、第2のパターンを図7に基づいて説明する。図7は第1の実施の形態において用いられる生地片を第2の裁断パターンで裁断した裁断例図である。この例も、みみとみみの間長である幅90cmの生地から生地片を裁断する場合を想定している。
図に示すとおり、第2のパターンでも上部縁部が向かい合うように配置することにより、生地上に重なり部分(701)を設けることができ、90cm幅の生地では、65cmを重ねることができるようになる。
いずれのパターンでも実現可能であるが、一般的に縦地の方が生地の伸びが少ないことから、第1の裁断パターンの方が加工は容易であると解される。
もっとも、生地の性質によって、また加工容易性ばかりでなく生地片模様等の意匠上の特徴も重要であるので、一概に第1の裁断パターンの方が優れているとまでは言えない。
従って、いずれのパターンにするかは、完成したスカーフの意匠、加工容易性、その他様々な観点から、総合的に判断すればよい。
このように、本実施の形態のように生地片をバームクーヘン状にしたことにより、生地布の利用効率を高めることができる。
(1.2.3. 襞形成帯)
次に、襞形成帯について、説明する。
(1.2.3.1. 襞形成帯の内容)
襞形成帯は、襞を形成し、これを固定する。これにより稜線を形成し、かつこれを固定するように作用する。そして、ドレープは稜線に基づいて形成するので、襞形成帯を設けることによって、安定したドレープを形成できるように作用する。当然、装着時に望むスカーフの意匠によって、襞の数を1本以上に選ぶことは自由である。
襞形成帯は、開口がある上部縁部から下部縁部に向かって設けるのが望ましい。後に(3.スカーフの装着態様)で述べるように、ドレープが首をゆったり包むように形成される意匠を構成することになるからである。
もっとも、襞形成帯は、上部縁部から下部縁部までの全範囲にわたる必要はなく、その一部を構成するだけでもよい。どのような範囲で襞形成帯を設けるかは、スカーフの意匠によって自由である。
(1.2.3.2. 襞形成帯の形成工程)
次に、襞形成帯の形成工程について、図8を用いて説明する。図8は、前記寸法で裁断した生地片から第1の実施の形態に係るスカーフを形成する際の、襞形成帯の形成工程を示した工程説明図である。
[ステップ 1]
まず裁断した生地片に、襞を形成するための下準備をする。
襞の形成は所謂ギャザーを形成する加工法によるのが容易である。具体的には、長い方の縫い合わせ辺1近傍にて、辺に沿って並縫いを行う(図8(a))。そして、並縫いに用いた糸を引き、この縫い合わせ辺の長さが短い方の縫い合わせ辺2と同じ程度の長さにする。こうすることで、長い方の縫い合わせ辺1が波を打つようになるので、襞の基礎部分を構成できる。
尚、襞形成帯を上部縁部から下部縁部まで繋ぐ全範囲にわたるようにする場合には、並縫いを縫い合わせ辺1全てに渡っておこなう。
また、襞形成帯を上部縁部から下部縁部まで繋ぐ範囲のうちの一部に限る場合には、並縫いを縫い合わせ辺1全てに渡って行ったうえで襞を一部に寄せるか、そもそも縫い合わせ辺1の一部に限って並縫いをすればよい。
いずれにしても、縫い合わせ辺1と縫い合わせ片2を縫い合わせるときに、両端(801,802)が合わさって、縫合後の形状が自然に見えるようにすればよい。
[ステップ 2]
次に、ギャザーの基礎をつけた生地片を中表にして直線同士を合わせる(図8(b))。
[ステップ 3]
次に、本縫いを行う。そして、縫いしろをロックミシンなどでかがる(図8(c))。
この際、一度に4本糸でロックミシンをかけるようにしても構わない。
[ステップ 4]
ステップ3まででできあがったものは裏表が逆になっているので、一旦裏表を返す。そして、上部縁部及び下部縁部を巻きロックミシンをかけて、かがる(図8(d))。
ここで、上記ステップ3でかがられた縫いしろは、短い縫い合わせ辺2の側に倒すようにすることで、ギャザーがかさばらないようにすることができる。
以上のように、生地片における縫い合わせ辺の長さを異なるものとして、片方の縫い合わせ片にのみギャザーを付けるように構成すると、ギャザー部分がかさばらない襞形成帯にすることができ、安定したドレープの形成を維持しつつ、自然なスカーフの外観に寄与するようになる。
(2. 他の実施の形態について)
別の実施の形態について簡単に説明する。
(2.1. 縁部形状のバリエーション)
上部縁部・下部縁部の形状は比較的自由にとることができる。
本考案での主要な特徴は襞形成帯にあるところ、他の部分は装着時の意匠によって様々なバリエーションをとることが可能である。即ち、バリエーションとして、上部縁部・下部縁部の曲線形状を変更することができる。また、襞形成帯の配置位置を変更することもありえる。
(2.2. 生地柄等)
本実施の形態において、特に生地の質等について制限はない。
しかし、本考案は特にスカーフとして用いる以上、その生地布にレースを選ぶことで特に豊かさを表現できる。
また、配色についても単色のレースとすることはもちろん、花柄の柔らかい布を用いた場合には、ハワイ風のレイのような演出が可能となる。
さらに、生地としてチュールレースを用いることも可能である。チュールレースとは、細かい網目模様のチュールの布地に刺繍を施したレースのことである。
チュールレースは、細かい網目を基調とする生地であるので、単に一枚布のスカーフでは安定したドレープを形成することが困難であるところ、襞形成帯を設けることで安定したドレープを形成することができる。したがって、生地としてチュールレースを用いたときには、本考案に基づいて構成したスカーフで強く効果が現れる。
(2.3. 紫外線防止処理について)
一般に、生地をレースにしたときには、太陽光等が外部から肌にまで到達し易くなる。
しかし、本考案のようになしたスカーフでは、ドレープが安定してできることから、スカーフ表面に至った太陽光等は、人体に達するまでにほぼ確実に数回生地を透過することになる。このため、生地に紫外線防止加工をすることで、より確実な紫外線防止効果を得ることが可能となる。
なお、紫外線防止加工には、紫外線吸収加工、紫外線反射加工など、およそ生地が紫外線の透過を減弱させるものであるならばどのような加工法を採っても構わない。
(2.4. 身長によって補正を加えた実施の形態)
第1の実施の形態においては身長155cmの者が装着するもとのして製図したが、身長の異なる者が装着する場合には、その身長との比をそれぞれに掛け合わせた値を用いることができる。
たとえば、近時の日本人女性の平均身長について、政府統計の、
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001072699
に記載されている統計表第2表(年齢別体格測定の結果)中の身長データを用いれば、対象年齢によってのバリエーションを提供することも可能である。
(2.5. 男性が用いる場合の実施の形態)
第1の実施の形態においては女性が装着するものとして製図したが、男性用のスカーフを提供するのであれば、第1の実施の形態の生地片を表裏反転させた製図(領域分離線で線対称にした製図)をし、生地布を裁断すればよい。
一般に、婦人服は右の身頃を上にしてボタンをするのに対し、紳士服は逆に左の身頃を上にしてボタンをする。すなわち、婦人服は左前とし、左前で深く合わせるとボタンは左に寄ることになる。このため、女性用のスカーフの提供を図った第1の実施の形態では、左肩にドレープの起点となる襞形成帯を配置したのである。
このような事情にあるために、スカーフを男性用とするならば、ドレープの起点となる襞形成帯は右肩に配置するのが素直である。
もちろん、社交ダンスなどで用いるなど、女性用でも左肩から背中側にギャザーを出すデザインが必要ならば、男性用と同じく、第1の実施の形態の生地片と表裏反転させた製図をすればよい。
(3. スカーフの装着態様)
次にスカーフの装着態様について、図9乃至図13を用いて説明する。
本スカーフは、狭い開口部を首側、広い開口部を胴体側とする向きで、連通する両開口部に頭を通して装着する。
図9乃至図13は本実施の形態に基づいて得られたスカーフを人体に装着したときの着こなしの外観を示した装着状況説明図であり、主たるものとして5パターンほどが考えられる。
[パターン1]
図9は、もっとも簡単な着こなしをしたときの外観図である。
スーツを着るときにスカーフを内側に入れ、スーツの中で畳むことで図示した外観を演出することができる。
[パターン2]
図10は、アスコットタイ風に着こなしたときの外観図である。本考案にかかるスカーフに頭を通したあと、首元でねじって内から外へ返すことによって図示した外観を演出することができる。
[パターン3]
図11は、ブラウスの上に着こなしたときの外観図である。ブラウスの外側で肩にかけるようにすれば図示した外観を演出することができる。
[パターン4]
図12は、襟元を豊かに見せる態様での着こなしをしたときの外観図である。スカーフを大きく開いた襟の服の中に入れることで図示した外観を演出することができる。
[パターン5]
図13は、前面にできるドレープを強調した着こなしをしたときの外観図である。スーツを着たときにその内側に入れ、そのスーツの中で畳まずに自然な状態にすることで図示した外観を演出することができる。
本考案のごとくスカーフを構成することで、簡単にあらゆる場面で安定してお洒落な着こなしを提供することができるので、レースの意匠によって高級感を表現させることもできるし、また、地味さを表現させることもできる。
よってお洒落着のアクセサリとしての製品、冠婚葬祭用品など様々なファッション商品に適用することができる。
101 円錐台側面
105 上部縁部
107 下部縁部
301−1 第1の辺の一端部
301−2 第1の辺の他端部
302−1 第2の辺の一端部
302−2 第2の辺の他端部
304 開口部
305 開口部
306 円錐台筒
601 生地上の重なり部分
701 生地上の重なり部分

Claims (4)

  1. 円錐台筒状に形成された生地に、
    稜線がほぼ該円錐台筒外周円に沿うように少なくともひとつの襞を形成固定し、長手方向が該円錐台筒の一開口部から他開口部に向い、該両開口部間の少なくとも一部に渡る襞形成帯、
    を具備することを特徴とするスカーフ。
  2. 前記生地は、第1の辺と第2の辺が対辺をなし、第1の辺の延長線と第2の辺の延長線とが交点を有する形状の生地片の第1の辺と第2の辺とを繋ぎ合わせて形成されているとともに、
    前記襞形成帯は、第2の辺より長い第1の辺を少なくとも1回折り畳み、両辺両端をそれぞれ合わせて形成することを特徴とする請求項1に記載のスカーフ。
  3. 前記生地片はレース生地を用いることを特徴とする請求項2に記載のスカーフ。
  4. 前記生地片に紫外線カット処理をしたことを特徴とする請求項3に記載のスカーフ。

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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