本考案は、船舶の各種ディーゼル機関等の排気弁棒に関するものである。
従来、船舶の各種ディーゼル機関やガソリン機関の排気弁棒には、マルテンサイト系耐熱鋼のSUH1、3、4またはオーステナイト系耐熟鋼のSUH31、37、SNCrWの各種を使用し、弁棒材料のシート面にCo系ステライトまたはNi系でコルモノイ等の盛金材が使用されている。
排気弁棒は、デイーゼル機関やガソリン機関の中で最重要な部品で、かつ高価な部品であり、排気弁棒の寿命で船主経済に占めるウェートはかなり大きいものがある。したがって、これまでに排気弁棒の寿命延長のための試みは常になされてきた。
過去に、焼結ステライト弁シートの高温強度を上げた実機試験で、16,000Hr経過後もそのシート面は健全で圧痕が無く、引き続き使用に供した実績があることから、排気弁棒はシート面の高温強度がある値以上であれば、メンテナンス時間も、弁の寿命も、現状よりささらに長くできるものと考えられていた。
また、20数年前から、特開平5−22475号公報のように、Ni基の耐熱鋼ナイモニック(Nimonic(( 登録商標) 以下同じ)80A) 材の排気弁棒が使用されるようになり、この弁材料は上記金属材料よりも、耐熱耐食性に優れており、使用耐用年数もかなり長寿命で、現状では大型ディーゼル機関では品質が安定している。
さらに、排気弁棒に共通した弁傘触火面の高温腐食の多くは、始めに高温高圧排気ガスにより弁体に浸炭され、これが排気弁体の化学成分の内クロームと反応してクロームカーバイトを形成し、結晶粒界に析出、浸炭孔食を引き起こしていると考えられていた。
1984年頃に、鍛造製品ナイモニック(Nimonic80A)の排気弁シートを補修するにあたって、同種(Nimonic80A)の溶接材を使い、シート面に肉盛りの上、溶着部表面をピーニングして硬度を増加させ、さらに時効硬化熱処理を施し、高温での硬度をアップさせることにより、かなり使用寿命の延長が図られた。
一方、機関運転中における排気弁傘表面の温度は、880BHP/cyl機関の100%負荷で、600 ℃以上、シート部で500℃以上の記録がある。最近の燃料油性状を考えると、上記現象に加え、耐サルファーアタック、耐バナジュームアタックの高温耐食性に優れた排気弁棒とする必要がある。
このように、排気弁棒の長寿命を達成するには、1)排気弁シート部の金属が高温時に高硬度が得られる材質であること、2)触火面側の金属が高温高圧腐食雰囲気の燃焼ガスに長時間耐える材質であること、ただし3)排気弁母材の金属Feべ一スのものは、1)、2)を構成する金属の析出共晶の中の金属間化合物にAlが入っていると、Feベースだと脆い化合物ができてよくないので、Niで縁を切らねぱならない。
また、船舶用低速ディーゼル機関は、粗悪燃料を使っており、燃焼室周りの部品が過酷な条件にさらされている。中でも、排気弁棒が最も過酷さが際立っている。排気弁棒のメンテナンスは、機関を停止し、排気弁棒を関放しなければならなく、このメンテナンス間隔は現在10,000Hr と推定される。しかし、エンジンメーカや顧客は、近い将来50,OOOHr以上を狙い目として、経費削減を図ろうと計画されている。
さらに、過去、排気弁棒のトラブルとその解決方法をみると、殆んどがシート面からのガスの吹き抜け、触火面の高温腐食に起因するトラブルである。
その原因は、粗悪な重油の使用に起因する面が多く、対策として成功しているのはシート面材質の高温硬度を上げること、触火面の高温腐食を止める材質の材料で排気弁棒を作ることである。
しかし、上述の材料は、非常に高価であるので、排気弁棒を製作するにあたっては、従来から使用されてきたクラスの材料を、長寿命型の高級材料で被覆させ、寿命の長い総合的に安価な排気弁棒を製作し、メンテナンスフリーとすることが課題であった。
本考案は、上記のような点に鑑みたもので、上記の課題を解決するために、ディーゼル機関等の排気弁棒であって、その排気弁棒の母材に一般に使用されるSUH1、3、4、SUH31、ナイモニック80、81を含む弁材料の耐熱鋼を使用し、その触火面にその下地面層にP(燐)の成分を含まないインコネル(Inconel(登録商標)以下同じ)の耐高温耐蝕性のNi基金属を肉盛溶接し、その表面層にNi40〜60%、Cr60〜40%を主成分とする超合金の耐高温耐蝕性のNi基金属を肉盛溶接し、これらの肉盛金属を希釈して肉盛溶着形成したことを特徴とするディーゼル機関等の排気弁棒を提供するにある。
また、排気弁棒のシート面にその下地面層にP(燐)の成分を含まないインコネルの耐高温耐蝕性のNi基金属を肉盛溶接し、その表面層にUD520の耐高温高硬度耐蝕性のNi基特殊金属を肉盛溶接し、これらの肉盛金属を希釈して溶着形成した請求項1に記載のディーゼル機関等の排気弁棒を提供するにある。
さらに、ディーゼル機関等の排気弁棒の母材に一般に使用されるSUH1、3、4、SUH31、ナイモニック80、81を含む弁材料の耐熱鋼を使用した排気弁棒であって、その触火面にその下地面層にSUS309、310、316を含むステンレス耐熱用鋼金属を肉盛溶接し、中間面層にP(燐)の成分を含まないインコネルの耐高温耐蝕性のNi基金属を肉盛溶接し、その表面層にNi40〜60%、Cr60〜40%を主成分とする超合金の耐高温耐蝕性のNi基金属を肉盛溶接し、これらの肉盛金属を希釈して溶着形成して補修したことを特徴とするディーゼル機関等の排気弁棒を提供するにある。
さらにまた、ディーゼル機関の排気弁棒の母材に一般に使用されるSUH1、3、4、SUH31、ナイモニック80、81を含む弁材料の耐熱鋼を使用した排気弁棒であって、そのシート面にその下地面層にSUS309、310、316を含むステンレス耐熱用鋼金属を肉盛溶接し、中間面層にP(燐)の成分を含まないインコネルの耐高温耐蝕性のNi基金属を肉盛溶接し、その表面層にUD520の耐高温高硬度耐蝕性のNi基特殊金属を肉盛溶接し、これらの肉盛金属を希釈して溶着形成して補修したことを特徴とするディーゼル機関等の排気弁棒を提供するにある。
さらにまた、溶接肉盛をサブマージアーク溶接法による希釈を行って形成したことを特徴とするディーゼル機関等の排気弁棒を提供するにある。
またさらに、肉盛溶接後に830 〜880 ℃で容体化処理して、620 〜680 ℃で析出硬化処理したことを特徴とするディーゼル機関等の排気弁棒を提供するにある。
本考案は、実用新案請求の範囲の請求項1のように、ディーゼル機関等の排気弁棒であって、その排気弁棒の母材に一般に使用されるSUH1、3、4、SUH31、ナイモニック80、81を含む弁材料の耐熱鋼を使用し、その触火面にその下地面層にP(燐)の成分を含まないインコネルの耐高温耐蝕性のNi基金属を肉盛溶接し、その表面層にNi40〜60%、Cr60〜40%を主成分とする超合金の耐高温耐蝕性のNi基金属を肉盛溶接し、これらの肉盛金属を希釈して肉盛溶着形成したことによって、排気弁棒の母材を一般に使用されるSUH1、3、4、37、ナイモニック80、81等の弁材料の耐熱鋼を使用し、その触火面にP(燐)が無くて溶着の際の耐割れ性に優れているインコネルの耐高温耐蝕性のNi基金属と耐サルファーアタック、耐バナジュームアタックの耐高温耐食性に優れた超合金のNi基金属を組み合わせて、高温−耐腐食性に優れた耐久性を有するものとし、粗悪重油を燃料としている低速ディーゼル機関等の排気弁棒の長期寿命を維持することが期待でき、メンテナンス間隔を大幅に延長でき、顧客の経費の削減に寄与することができる。
また、本考案は、請求項2のように、排気弁棒のシート面にその下地面層にP(燐)の成分を含まないインコネルの耐高温耐蝕性のNi基金属を肉盛溶接し、その表面層にUD520の耐高温高硬度耐蝕性のNi基特殊金属を肉盛溶接し、これらの肉盛金属を希釈して溶着形成したことによって、上記したようにP(燐)が無くて溶着の際の耐割れ性に優れているインコネルの耐高温耐蝕性のNi基金属の溶接棒と耐高温高硬度耐蝕性のUD520のNi基特殊金属の組み合わせて、排気弁棒のシート面の硬度は高温度範囲まで高硬度が維持でき、高温−高硬度と耐腐食性に優れ、粗悪重油を燃料としている低速ディーゼル機関等の排気弁棒の長期寿命を維持することができ、メンテナンス間隔を大幅に延長でき、顧客の経費の削減に寄与することができる。
また、本考案は、請求項3のように、ディーゼル機関等の排気弁棒の母材に一般に使用されるSUH1、3、4、SUH31、ナイモニック80、81を含む弁材料の耐熱鋼を使用した排気弁棒であって、その触火面にその下地面層にSUS309や310、316を含むステンレス耐熱用鋼金属を肉盛溶接し、中間面層にP(燐)の成分を含まないインコネルの耐高温耐蝕性のNi基金属を肉盛溶接し、その表面層にNi40〜60%、Cr60〜40%を主成分とする超合金の耐高温耐蝕性のNi基金属を肉盛溶接し、これらの肉盛金属を希釈して溶着形成して補修したことによって、ディーゼル機関の排気弁棒の使用で損傷した触火面を溶接補修して、上記のように使用寿命の延長をはかることができる。
また、本考案は、請求項4のように、ディーゼル機関の排気弁棒の母材に一般に使用されるSUH1、3、4、SUH31、ナイモニック80、81を含む弁材料の耐熱鋼を使用した排気弁棒であって、そのシート面にその下地面層にSUS309や310、316を含むステンレス耐熱用鋼金属を肉盛溶接し、中間面層にP(燐)の成分を含まないインコネルの耐高温耐蝕性のNi基金属を肉盛溶接し、その表面層にUD520の耐高温高硬度耐蝕性のNi基特殊金属を肉盛溶接し、これらの肉盛金属を希釈して溶着形成して補修したことによって、ディーゼル機関の排気弁棒の使用で損傷したシート面を溶接補修して、上記のように使用寿命の延長をはかることができる。
また、本考案は、請求項5のように、肉盛溶接をサブマージアーク溶接法による希釈を行って形成したことによって、上記した肉盛溶接部を強度にすぐれて割れ防止をはかれた金属組織にでき、ディーゼル機関の排気弁棒の使用で損傷した触火面を肉盛溶接して、使用寿命の延長をはかることができる。
また、本考案は、請求項6のように、肉盛溶接後に830 〜880 ℃で容体化処理して、620 〜680 ℃で析出硬化処理したことによって、上記した肉盛溶接部を高温−高硬度、耐腐食性に優れ、強度にすぐれて割れ防止をはかれた金属組織として、ディーゼル機関の排気弁棒の長期寿命をはかるようにできる。
本考案の一実施例の排気弁棒の側面図、
同上の排気弁棒の触火面、シート面部の拡大側断面図、
同上の触火面、シート面部の下層部の肉盛溶接の拡大側断面図(a)、(b)、
同上の触火面、シート面部の表面部の肉盛溶接の拡大側断面図(a)、(b)、
同上の触火面部の肉盛溶接補修の拡大側断面図(a)、(b)、(c)、
同上のシート面部の肉盛溶接補修の拡大側断面図(a)、(b)、(c)。
本考案のディーゼル機関等の排気弁棒は、その排気弁棒の母材に一般に使用されるSUH1、3、4、SUH31、ナイモニック80、81を含む弁材料の耐熱鋼を使用し、その触火面にその下地面層にP(燐)の成分を含まないインコネルの耐高温耐蝕性のNi基金属を肉盛溶接し、その表面層にNi40〜60%、Cr60〜40%を主成分とする超合金の耐高温耐蝕性のNi基金属を肉盛溶接し、これらの肉盛金属を希釈して肉盛溶着形成したことを特徴としている。
舶用ディーゼル機関の排気弁棒1は、図1のようにマッシュルーム状に形成されているもので、ピストンシリンダーの排気ガスの排出用の弁として機能し、排気弁棒1の母材としてディーゼル機関用として一般的に便用されているマルテンサイト系耐熱鋼のSUH1、3、4、またはオーステナイト系耐熟鋼のSUH31、37、SNCrW系、さらにナイモニック80、81のNi基の耐熱鋼の弁材料を使用できる。これらの化学成分(%)は、表1のとおりである。
排出弁棒1の触火面3は、現時点で最も適当とする溶着金属材料を選択して組み合わせたもので、図2のようにその下地面層に表2のようにP(燐)の成分を含まないインコネル600、601(INT600、601)等のNi基金属の耐高温耐蝕性の溶接棒を使用し、その表面層に表2のようにNi40〜60%、Cr60〜40%、Mo0〜残量の超合金のSUPER ALLOY ( 三菱金属MCアロイ)やSUPER ALLOY FM72(インコネルフィラーメタル72(SPECIAL METALS Welding Products Company FM72))等のNi40〜60%、Cr60〜40%を主成分とする超合金のNi基金属の耐高温耐蝕性の溶接棒を使用して肉盛溶接し、耐サルファーアタック、耐バナジュームアタックの耐高温耐食性に優れて耐久性を有するものとし、粗悪重油を燃料としている低速ディーゼル機関等の排気弁棒の長期寿命を維持することができ、メンテナンス間隔を大幅に延長可能にしている。
表2 Ni基金属の耐高温耐蝕性の溶接棒の化学成分表
また、図2のように、排気弁棒1のシート面4に、その下地面層に上記表2のようにP(燐)の成分を含まないインコネル600、601等のNi基金属の耐高温耐蝕性の溶接棒を使用し、その表面層に表2のようにUD520(SPECIAL METALS Welding Products Company )等のNi基特殊金属の耐高温高硬度耐蝕性の溶接棒を使用して肉盛溶接して形成し、高温−高硬度と耐腐食性に優れて耐久性を有するものとして、粗悪重油を燃料としている低速ディーゼル機関等の排気弁棒の長期寿命を維持することができ、メンテナンス間隔を大幅に延長できるようにしている。
排気弁棒1としては、1)使用実績効果が評価できる材料、2)経済的に見合うことができる材料、3)弁シート部は高温で硬度が保たれて、耐食性に優れていること、4)触火面は耐サルファーアタック、耐バナジュームアタック、耐高圧高温に優れた材料、を選択する必要がある。このような条件を、1種類の材料で達成することは現状では不可能であり、上記のように複数種類の材料で相互に補う方策の排気弁棒1を作成したものである。そのために、2種類または3種類の厚みの薄い溶着金属を重ね、それぞれを希釈させる溶接手法を採用した。
そして、排気弁棒1の触火面3、シート面4の溶接肉盛は、厳密な入熱管理、溶接手法による実験で求めた予熱温度200〜300℃で予熱するとともにパス間温度管理して上記した肉盛溶接の所要の溶着金属を被覆し、肉盛溶接後に830 〜880 ℃で容体化処理し、620 〜680 ℃で析出化処理し、上記した肉盛溶接部を高温−高硬度、耐腐食性に優れて割れも防止できる金属組織としてディーゼル機関の排気弁棒1の長期寿命をはかるようにできる。
また、ディーゼル機関等の排気弁棒の母材に一般に使用されるSUH1、3、4、SUH31、37、SNCrW系、ナイモニック80、81のNi基耐熱鋼の弁材料の耐熱鋼を使用した排気弁棒1であって、その触火面3にその下地面層に表3のようにSUS309、310、316等のステンレス耐熱用鋼金属を肉盛溶接し、中間面層に上記のようにP(燐)の成分を含まないインコネル600、601の耐高温耐蝕性のNi基金属を肉盛溶接し、その表面層に上記のようにNi40〜60%、Cr60〜40%を主成分とするSUPER ALLOY 、SUPER ALLOY FM72の超合金の耐高温耐蝕性のNi基金属を肉盛溶接し、上記のようにしてこれらの肉盛金属を希釈して溶着形成して補修することができる。そのため、上記のようなディーゼル機関の排気弁棒1の使用による損傷した触火面3を溶接補修して、使用寿命の延長をはかることができる。
さらに、ディーゼル機関の排気弁棒2の母材に一般に使用されるSUH1、3、4、SUH31、37、SNCrW系や、ナイモニック80、81のNi基耐熱鋼の弁材料の耐熱鋼を使用した排気弁棒2であって、そのシート面4にその下地面層に上記表3のようにSUS309、310、316等のステンレス耐熱用鋼金属を肉盛溶接し、中間面層に上記のようにP(燐)の成分を含まないインコネル600、601の耐高温耐蝕性のNi基金属を肉盛溶接し、その表面層に上記のようにUD520の耐高温高硬度耐蝕性のNi基特殊金属を肉盛溶接し、上記のようにこれらの肉盛金属を希釈して溶着形成して補修することができる。そのため、上記のようなディーゼル機関の排気弁棒1の使用による損傷したシート面4を溶接補修して、使用寿命の延長をはかることができる。
排気弁棒1の母材の金属がFeべ一スのものは、溶着金属の析出共晶の中の金属間化合物にA1が入っており、排気弁棒母材のFeと脆い化合物を作る可能性があるので、上記のように中間溶着金属材として、インコネルのNiで縁を切る必要がある。インコネル600、601のNi基金属は、P(燐)の成分を含まなく、溶着金属の超合金の溶着の際の耐割れ性に優れていて好ましく使用できるものである。なお、S(硫黄)の成分も含まないものが好ましい。また、超合金の耐高温耐蝕性のNi基金属について、上記のようにNi40〜60%、Cr60〜40%、Mo0〜残量が好ましいが、Mo以外に本考案の趣旨にもとづくNi40〜60%、Cr60〜40%を主成分として多少の他の金属を含有したものも使用可能である。
表4は、これらの溶着金属希釈及び硬度試験組合わせについて、まとめた一例である。
表4 溶着金属希釈及ぴ硬度試験組合わせの表
図1以下は、本考案の一実施例を示すものである。本考案のディーゼル機関の排気弁棒1は、その排気弁棒本体2の母材に一般に使用されるSUH31の弁材料の耐熱鋼を使用し、その触火面3の下地面層にインコネル600の溶接棒を使用してサブマージアーク溶接で肉盛溶接し、その表面層にSUPER ALLOY (三菱金属MCアロイ)の溶接棒を使用してサブマージアーク溶接で肉盛溶接し、シート面4の下地面層にインコネル600の溶接棒を使用してサブマージアーク溶接で肉盛溶接し、その表面層にUD520の溶接棒を使用してサブマージアーク溶接で肉盛溶接し、これらの2種類の肉盛溶接金属を重ね合わせてサブマージアーク溶接で希釈して溶着した。
上記の肉盛溶接するにあたっては、たとえば排気弁棒1を所定の回転台に搭載して固定し、図3(a)、(b)のように触火面3およびシート面4の下地面層の開先加工をし、排気弁棒1の排気弁棒本体2の化学成分、溶接棒に対応して溶接手法による実験で求めた予熱温度250〜300℃で、回転させながらガスバーナーで予熱する。そして、先ず触火面3について、図3(a)のように溶接棒インコネル600/Incoフラックスで所要の下地面層の肉盛溶接をする。ついで、シート面4について、図3(b)のように溶接棒インコネル600/Incoフラックスで所要の下地面層の肉盛溶接をした。
そして、上記触火面3およびシート面4について、図4(a)、(b)のようにそれぞれ表面層の上盛り開先加工をし、同様に所要の予熱をし、触火面3について溶接棒MCアロイ/Incoフラックスで表面層の上盛り肉盛溶接をし、ついで、シート面4について、溶接棒UD520/Incoフラックスで表面層の上盛り肉盛溶接をし、その後870℃で4Hrの容体化処理をし、ついで、670℃で8Hrの析出硬化処理を実施した後完成加工をし、所要の検査を経て製品とした。
このようにディーゼル機関の排気弁棒1の母材に一般に使用される弁材料の耐熱鋼を使用し、その触火面3にその下地面層にP(燐)が無くて溶着の際の耐割れ性に優れているインコネルの溶接棒を使用し、その表面層にSUPER ALLOY (三菱金属MCアロイ)の耐サルファーアタック、耐バナジュームアタックの耐高温耐食性に優れた超合金のNi基金属の溶接棒を使用して肉盛溶接して形成して、弁材料を安価に経済的に製作できるとともに、インコネルの溶接棒と超合金のNi基金属の溶接棒の組み合わせで、触火面3を高温−耐腐食性に優れ、粗悪重油を燃料としている低速ディーゼル機関等の排気弁棒の長期寿命を維持することができ、メンテナンス間隔を大幅に延長でき、顧客の経費の削減に寄与することができる。そして、このような2種類の肉盛溶接をサブマージアーク溶接で希釈し、容体化処理、析出硬化処理をすることによって、硬度と強度を具備するようにできるとともに、下地面層に重ねた表面層の割れ発生の防止ができて、上記のように耐久性を高められて、メンテナンスフリーに近づけることができる。
また、排気弁棒のシート面4も、P(燐)の成分を含まないインコネルの溶接棒とUD520の耐高温高硬度耐蝕性の超合金のNi基特殊金属の溶接棒の組み合わせで、排気弁棒のシート面の硬度は高温度範囲まで高硬度が維持でき、高温−高硬度と耐腐食性に優れ、粗悪重油を燃料としている低速ディーゼル機関等の排気弁棒の長期寿命を維持することができ、メンテナンス間隔を大幅に延長でき、顧客の経費の削減に寄与することができる。そして、このような2種類の肉盛溶接をサブマージアーク溶接で希釈し、容体化処理、析出硬化処理をすることによって、硬度と強度を具備するようにできるとともに、上記のように耐久性を高められて、メンテナンスフリーに近づけることができる。
また、図5(a)、(b)、(c)のように、上記のようなディーゼル機関の排気弁棒1の損傷の補修にあって、触火面3の損傷部の検査をして所要の処理をし、上記した肉盛溶接加工の前に、その下地面層を所要の開先加工をして溶接棒SUS309/ボンドフラックスS1で肉盛溶接し、中間面層にも所要の開先加工をして上記した溶接棒インコネル600/Incoフラックスで肉盛溶接し、その表面層にも所要の開先加工をして上記したSUPER ALLOY のMCアロイ/Incoフラックスで肉盛溶接し、これらの3種類の肉盛溶接をサブマージアーク溶接で希釈、容体化処理、析出硬化処理をして溶着補修した。このように肉盛溶接して補修して、上記のようにディーゼル機関の排気弁棒1の使用による損傷した触火面3を溶接補修して、使用寿命の長時間の延長をはかることができる。
さらに、図6(a)、(b)、(c)のように、同様に、ディーゼル機関の排気弁棒1の損傷の補修にあっては、シート面4の損傷部の検査をして所要の処理をし、上記した肉盛溶接加工の前に、シート面4にその下地面層にSUS309の溶接棒/ボンドフラックスS1を使用して肉盛溶接し、中間面層にインコネル600/Incoフラックスの肉盛溶接をし、その表面層にUD520/Incoフラックスの肉盛溶接をし、これらの3種類の肉盛溶接をサブマージアーク溶接で希釈、容体化処理、析出硬化処理をして溶着補修した。このように肉盛溶接して補修して、上記のようにディーゼル機関の排気弁棒1の使用による損傷したシート面4を溶接補修して、使用寿命の長時間の延長をはかることができる。
舶用のディーゼル機関の排気弁棒1は、所要の予熱温度に予熱して肉盛溶接補修の溶着金属を被覆できるものであり、当該部材に空気の影響を受けさせない、5〜10hPa(5〜10ミリバール)の真空状態や不活性ガス雰囲気の真空炉や、電気炉やガス炉等の熱処理炉で上記のように熱処理を施工し、酸化物等による破損、炭化物形成による破損を防止できて好ましい。
なお、実施例では、ディーゼル機関の排気弁棒1の母材をSUH31について説明したが、オーステナイト系のSUH37、SNCrW等や、マルテンサイト系のSUH1、3、4等の弁材料の耐熱鋼、ナイモニック81のNi基の耐熱鋼についても同様に選択して実施することができ、またインコネル601のNi基金属、インコネルフィラーメタル72の超合金のNi基金属、SUS310、316等の耐熱鋼用の溶接棒や、さらにMIG溶接、TIG溶接等についても、本考案の趣旨にもとづいて実施可能であり、さらにこれらの適宜の組み合わせ、またこれらの変形態様を実施可能である。
本考案は、船舶のディーゼル機関、ガソリン機関、その他のピストンをもって往復運動を司る航空機、機関車等のすべての内燃機関の排気弁棒に利用できる。
1…排気弁棒 2…排気弁棒本体 3…触火面 4…シート面
またさらに、肉盛溶接後に830 〜880 ℃で溶体化処理して、620 〜680 ℃で析出硬化処理したことを特徴とするディーゼル機関等の排気弁棒を提供するにある。
また、本考案は、請求項6のように、肉盛溶接後に830 〜880 ℃で溶体化処理して、620 〜680 ℃で析出硬化処理したことによって、上記した肉盛溶接部を高温−高硬度、耐腐食性に優れ、強度にすぐれて割れ防止をはかれた金属組織として、ディーゼル機関の排気弁棒の長期寿命をはかるようにできる。
そして、排気弁棒1の触火面3、シート面4の溶接肉盛は、厳密な入熱管理、溶接手法による実験で求めた予熱温度200〜300℃で予熱するとともにパス間温度管理して上記した溶接肉盛の所要の溶着金属を被覆し、触火面3の肉盛溶接後に830 〜880 ℃で溶体化処理し、620 〜680 ℃で析出化処理し、上記した肉盛溶接部を高温−高硬度、耐腐食性に優れて割れも防止できる金属組織としてディーゼル機関の排気弁棒1の長期寿命をはかるようにできる。
そして、上記触火面3およびシート面4について、図4(a)、(b)のようにそれぞれ表面層の上盛り開先加工をし、同様に所要の予熱をし、触火面3について溶接棒MCアロイ/Incoフラックスで表面層の上盛り肉盛溶接をし、ついで、シート面4について、溶接棒UD520/Incoフラックスで表面層の上盛り肉盛溶接をし、その後870℃で4Hrの溶体化処理をし、ついで、670℃で8Hrの析出硬化処理を実施した後完成加工をし、所要の検査を経て製品とした。
このようにディーゼル機関の排気弁棒1の母材に一般に使用される弁材料の耐熱鋼を使用し、その触火面3にその下地面層にP(燐)が無くて溶着の際の耐割れ性に優れているインコネルの溶接棒を使用し、その表面層にSUPER ALLOY (三菱金属MCアロイ)の耐サルファーアタック、耐バナジュームアタックの耐高温耐食性に優れた超合金のNi基金属の溶接棒を使用して肉盛溶接して形成して、弁材料を安価に経済的に製作できるとともに、インコネルの溶接棒と超合金のNi基金属の溶接棒の組み合わせで、触火面3を高温−耐腐食性に優れ、粗悪重油を燃料としている低速ディーゼル機関等の排気弁棒の長期寿命を維持することができ、メンテナンス間隔を大幅に延長でき、顧客の経費の削減に寄与することができる。そして、このような2種類の肉盛溶接をサブマージアーク溶接で希釈し、溶体化処理、析出硬化処理をすることによって、硬度と強度を具備するようにできるとともに、下地面層に重ねた表面層の割れ発生の防止ができて、上記のように耐久性を高められて、メンテナンスフリーに近づけることができる。
また、排気弁棒のシート面4も、P(燐)の成分を含まないインコネルの溶接棒とUD520の耐高温高硬度耐蝕性の超合金のNi基特殊金属の溶接棒の組み合わせで、排気弁棒のシート面の硬度は高温度範囲まで高硬度が維持でき、高温−高硬度と耐腐食性に優れ、粗悪重油を燃料としている低速ディーゼル機関等の排気弁棒の長期寿命を維持することができ、メンテナンス間隔を大幅に延長でき、顧客の経費の削減に寄与することができる。そして、このような2種類の肉盛溶接をサブマージアーク溶接で希釈し、溶体化処理、析出硬化処理をすることによって、硬度と強度を具備するようにできるとともに、上記のように耐久性を高められて、メンテナンスフリーに近づけることができる。
また、図5(a)、(b)、(c)のように、上記のようなディーゼル機関の排気弁棒1の損傷の補修にあって、触火面3の損傷部の検査をして所要の処理をし、上記した肉盛溶接加工の前に、その下地面層を所要の開先加工をして溶接棒SUS309/ボンドフラックスS1で肉盛溶接し、中間面層にも所要の開先加工をして上記した溶接棒インコネル600/Incoフラックスで肉盛溶接し、その表面層にも所要の開先加工をして上記したSUPER ALLOY のMCアロイ/Incoフラックスで肉盛溶接し、これらの3種類の肉盛溶接をサブマージアーク溶接で希釈、溶体化処理、析出硬化処理をして溶着補修した。このように肉盛溶接して補修して、上記のようにディーゼル機関の排気弁棒1の使用による損傷した触火面3を溶接補修して、使用寿命の長時間の延長をはかることができる。
さらに、図6(a)、(b)、(c)のように、同様に、ディーゼル機関の排気弁棒1の損傷の補修にあっては、シート面4の損傷部の検査をして所要の処理をし、上記した肉盛溶接加工の前に、シート面4にその下地面層にSUS309の溶接棒/ボンドフラックスS1を使用して肉盛溶接し、中間面層にインコネル600/Incoフラックスの肉盛溶接をし、その表面層にUD520/Incoフラックスの肉盛溶接をし、これらの3種類の肉盛溶接をサブマージアーク溶接で希釈、溶体化処理、析出硬化処理をして溶着補修した。このように肉盛溶接して補修して、上記のようにディーゼル機関の排気弁棒1の使用による損傷したシート面4を溶接補修して、使用寿命の長時間の延長をはかることができる。
本考案は、船舶の各種ディーゼル機関等の排気弁棒に関するものである。
従来、船舶の各種ディーゼル機関やガソリン機関の排気弁棒には、マルテンサイト系耐熱鋼のSUH1、3、4またはオーステナイト系耐熟鋼のSUH31、37、SNCrWの各種を使用し、弁棒材料のシート面にCo系ステライトまたはNi系でコルモノイ等の盛金材が使用されている。
排気弁棒は、デイーゼル機関やガソリン機関の中で最重要な部品で、かつ高価な部品であり、排気弁棒の寿命で船主経済に占めるウェートはかなり大きいものがある。したがって、これまでに排気弁棒の寿命延長のための試みは常になされてきた。
過去に、焼結ステライト弁シートの高温強度を上げた実機試験で、16,000Hr経過後もそのシート面は健全で圧痕が無く、引き続き使用に供した実績があることから、排気弁棒はシート面の高温強度がある値以上であれば、メンテナンス時間も、弁の寿命も、現状よりささらに長くできるものと考えられていた。
また、20数年前から、特開平5−22475号公報のように、Ni基の耐熱鋼ナイモニック(Nimonic(( 登録商標) 以下同じ)80A) 材の排気弁棒が使用されるようになり、この弁材料は上記金属材料よりも、耐熱耐食性に優れており、使用耐用年数もかなり長寿命で、現状では大型ディーゼル機関では品質が安定している。
さらに、排気弁棒に共通した弁傘触火面の高温腐食の多くは、始めに高温高圧排気ガスにより弁体に浸炭され、これが排気弁体の化学成分の内クロームと反応してクロームカーバイトを形成し、結晶粒界に析出、浸炭孔食を引き起こしていると考えられていた。
1984年頃に、鍛造製品ナイモニック(Nimonic80A)の排気弁シートを補修するにあたって、同種(Nimonic80A)の溶接材を使い、シート面に肉盛りの上、溶着部表面をピーニングして硬度を増加させ、さらに時効硬化熱処理を施し、高温での硬度をアップさせることにより、かなり使用寿命の延長が図られた。
一方、機関運転中における排気弁傘表面の温度は、880BHP/cyl機関の100%負荷で、600 ℃以上、シート部で500℃以上の記録がある。最近の燃料油性状を考えると、上記現象に加え、耐サルファーアタック、耐バナジュームアタックの高温耐食性に優れた排気弁棒とする必要がある。
このように、排気弁棒の長寿命を達成するには、1)排気弁シート部の金属が高温時に高硬度が得られる材質であること、2)触火面側の金属が高温高圧腐食雰囲気の燃焼ガスに長時間耐える材質であること、ただし3)排気弁母材の金属Feべ一スのものは、1)、2)を構成する金属の析出共晶の中の金属間化合物にAlが入っていると、Feベースだと脆い化合物ができてよくないので、Niで縁を切らねぱならない。
また、船舶用低速ディーゼル機関は、粗悪燃料を使っており、燃焼室周りの部品が過酷な条件にさらされている。中でも、排気弁棒が最も過酷さが際立っている。排気弁棒のメンテナンスは、機関を停止し、排気弁棒を関放しなければならなく、このメンテナンス間隔は現在10,000Hr と推定される。しかし、エンジンメーカや顧客は、近い将来50,OOOHr以上を狙い目として、経費削減を図ろうと計画されている。
さらに、過去、排気弁棒のトラブルとその解決方法をみると、殆んどがシート面からのガスの吹き抜け、触火面の高温腐食に起因するトラブルである。
その原因は、粗悪な重油の使用に起因する面が多く、対策として成功しているのはシート面材質の高温硬度を上げること、触火面の高温腐食を止める材質の材料で排気弁棒を作ることである。
しかし、上述の材料は、非常に高価であるので、排気弁棒を製作するにあたっては、従来から使用されてきたクラスの材料を、長寿命型の高級材料で被覆させ、寿命の長い総合的に安価な排気弁棒を製作し、メンテナンスフリーとすることが課題であった。
本考案は、上記のような点に鑑みたもので、上記の課題を解決するために、ディーゼル機関等の排気弁棒であって、その排気弁棒の母材に一般に使用されるSUH1、3、4、SUH31、ナイモニック80、81を含む弁材料の耐熱鋼を使用し、その触火面にP(燐)の成分を含まないインコネル(Inconel(登録商標)以下同じ)の耐高温耐蝕性のNi基金属を肉盛溶接し、その肉盛溶接した上面にNi40〜60%、Cr60〜40%を主成分とする超合金の耐高温耐蝕性のNi基金属を肉盛溶接し、これらの肉盛金属を希釈して溶着形成したことを特徴とするディーゼル機関等の排気弁棒を提供するにある。
また、排気弁棒のシート面にP(燐)の成分を含まないインコネルの耐高温耐蝕性のNi基金属を肉盛溶接し、その肉盛溶接した上面にUD520の耐高温高硬度耐蝕性のNi基特殊金属を肉盛溶接し、これらの肉盛金属を希釈して溶着形成したことを特徴とするディーゼル機関等の排気弁棒を提供するにある。
さらに、ディーゼル機関等の排気弁棒の母材に一般に使用されるSUH1、3、4、SUH31、ナイモニック80、81を含む弁材料の耐熱鋼を使用した排気弁棒であって、その触火面にSUS309、310、316を含むステンレス耐熱用鋼金属を肉盛溶接し、その肉盛溶接した上面にP(燐)の成分を含まないインコネルの耐高温耐蝕性のNi基金属を肉盛溶接し、さらにその肉盛溶接した上面にNi40〜60%、Cr60〜40%を主成分とする超合金の耐高温耐蝕性のNi基金属を肉盛溶接し、これらの肉盛金属を希釈して溶着形成して補修したことを特徴とするディーゼル機関等の排気弁棒を提供するにある。
さらにまた、ディーゼル機関の排気弁棒の母材に一般に使用されるSUH1、3、4、SUH31、ナイモニック80、81を含む弁材料の耐熱鋼を使用した排気弁棒であって、そのシート面にSUS309、310、316を含むステンレス耐熱用鋼金属を肉盛溶接し、その肉盛溶接した上面にP(燐)の成分を含まないインコネルの耐高温耐蝕性のNi基金属を肉盛溶接し、さらにその肉盛溶接した上面にUD520の耐高温高硬度耐蝕性のNi基特殊金属を肉盛溶接し、これらの肉盛金属を希釈して溶着形成して補修したことを特徴とするディーゼル機関等の排気弁棒を提供するにある。
さらにまた、溶接肉盛をサブマージアーク溶接法による希釈を行って形成したことを特徴とするディーゼル機関等の排気弁棒を提供するにある。
またさらに、肉盛溶接後に830 〜880 ℃で溶体化処理して、620 〜680 ℃で析出硬化処理したことを特徴とするディーゼル機関等の排気弁棒を提供するにある。
本考案は、実用新案請求の範囲の請求項1のように、ディーゼル機関等の排気弁棒であって、その排気弁棒の母材に一般に使用されるSUH1、3、4、SUH31、ナイモニック80、81を含む弁材料の耐熱鋼を使用し、その触火面にP(燐)の成分を含まないインコネルの耐高温耐蝕性のNi基金属を肉盛溶接し、その肉盛溶接した上面にNi40〜60%、Cr60〜40%を主成分とする超合金の耐高温耐蝕性のNi基金属を肉盛溶接し、これらの肉盛金属を希釈して肉盛溶着形成したことによって、排気弁棒の母材を一般に使用されるSUH1、3、4、37、ナイモニック80、81等の弁材料の耐熱鋼を使用し、その触火面にP(燐)が無くて溶着の際の耐割れ性に優れているインコネルの耐高温耐蝕性のNi基金属と耐サルファーアタック、耐バナジュームアタックの耐高温耐食性に優れた超合金のNi基金属を組み合わせて、高温−耐腐食性に優れた耐久性を有するものとし、粗悪重油を燃料としている低速ディーゼル機関等の排気弁棒の長期寿命を維持することが期待でき、メンテナンス間隔を大幅に延長でき、顧客の経費の削減に寄与することができる。
また、本考案は、請求項2のように、排気弁棒のシート面にP(燐)の成分を含まないインコネルの耐高温耐蝕性のNi基金属を肉盛溶接し、その肉盛溶接した上面にUD520の耐高温高硬度耐蝕性のNi基特殊金属を肉盛溶接し、これらの肉盛金属を希釈して溶着形成したことによって、上記したようにP(燐)が無くて溶着の際の耐割れ性に優れているインコネルの耐高温耐蝕性のNi基金属の溶接棒と耐高温高硬度耐蝕性のUD520のNi基特殊金属の組み合わせて、排気弁棒のシート面の硬度は高温度範囲まで高硬度が維持でき、高温−高硬度と耐腐食性に優れ、粗悪重油を燃料としている低速ディーゼル機関等の排気弁棒の長期寿命を維持することができ、メンテナンス間隔を大幅に延長でき、顧客の経費の削減に寄与することができる。
また、本考案は、請求項3のように、ディーゼル機関等の排気弁棒の母材に一般に使用されるSUH1、3、4、SUH31、ナイモニック80、81を含む弁材料の耐熱鋼を使用した排気弁棒であって、その触火面にSUS309や310、316を含むステンレス耐熱用鋼金属を肉盛溶接し、その肉盛溶接した上面にP(燐)の成分を含まないインコネルの耐高温耐蝕性のNi基金属を肉盛溶接し、さらにその肉盛溶接した上面にNi40〜60%、Cr60〜40%を主成分とする超合金の耐高温耐蝕性のNi基金属を肉盛溶接し、これらの肉盛金属を希釈して溶着形成して補修したことによって、ディーゼル機関の排気弁棒の使用で損傷した触火面を溶接補修して、上記のように使用寿命の延長をはかることができる。
また、本考案は、請求項4のように、ディーゼル機関の排気弁棒の母材に一般に使用されるSUH1、3、4、SUH31、ナイモニック80、81を含む弁材料の耐熱鋼を使用した排気弁棒であって、そのシート面にSUS309や310、316を含むステンレス耐熱用鋼金属を肉盛溶接し、その肉盛溶接した上面にP(燐)の成分を含まないインコネルの耐高温耐蝕性のNi基金属を肉盛溶接し、さらにその肉盛溶接した上面にUD520の耐高温高硬度耐蝕性のNi基特殊金属を肉盛溶接し、これらの肉盛金属を希釈して溶着形成して補修したことによって、ディーゼル機関の排気弁棒の使用で損傷したシート面を溶接補修して、上記のように使用寿命の延長をはかることができる。
また、本考案は、請求項5のように、肉盛溶接をサブマージアーク溶接法による希釈を行って形成したことによって、上記した肉盛溶接部を強度にすぐれて割れ防止をはかれた金属組織にでき、ディーゼル機関の排気弁棒の使用で損傷した触火面を肉盛溶接して、使用寿命の延長をはかることができる。
また、本考案は、請求項6のように、肉盛溶接後に830 〜880 ℃で溶体化処理して、620 〜680 ℃で析出硬化処理したことによって、上記した肉盛溶接部を高温−高硬度、耐腐食性に優れ、強度にすぐれて割れ防止をはかれた金属組織として、ディーゼル機関の排気弁棒の長期寿命をはかるようにできる。
本考案の一実施例の排気弁棒の側面図、
同上の排気弁棒の触火面、シート面部の拡大側断面図、
同上の触火面、シート面部の下層部の肉盛溶接の拡大側断面図(a)、(b)、
同上の触火面、シート面部の表面部の肉盛溶接の拡大側断面図(a)、(b)、
同上の触火面部の肉盛溶接補修の拡大側断面図(a)、(b)、(c)、
同上のシート面部の肉盛溶接補修の拡大側断面図(a)、(b)、(c)。
本考案のディーゼル機関等の排気弁棒は、その排気弁棒の母材に一般に使用されるSUH1、3、4、SUH31、ナイモニック80、81を含む弁材料の耐熱鋼を使用し、その触火面にP(燐)の成分を含まないインコネルの耐高温耐蝕性のNi基金属を肉盛溶接し、その肉盛溶接した上面にNi40〜60%、Cr60〜40%を主成分とする超合金の耐高温耐蝕性のNi基金属を肉盛溶接し、これらの肉盛金属を希釈して肉盛溶着形成したことを特徴としている。
舶用ディーゼル機関の排気弁棒1は、図1のようにマッシュルーム状に形成されているもので、ピストンシリンダーの排気ガスの排出用の弁として機能し、排気弁棒1の母材としてディーゼル機関用として一般的に便用されているマルテンサイト系耐熱鋼のSUH1、3、4、またはオーステナイト系耐熟鋼のSUH31、37、SNCrW系、さらにナイモニック80、81のNi基の耐熱鋼の弁材料を使用できる。これらの化学成分(%)は、表1のとおりである。
排気弁棒1の触火面3は、現時点で最も適当とする溶着金属材料を選択して組み合わせたもので、図2のようにその下地面層に当たる触火面3に表2のようにP(燐)の成分を含まないインコネル600、601(INT600、601)等のNi基金属の耐高温耐蝕性の溶接棒を使用し、その下地面層の肉盛溶接した上面に当たる表面層に表2のようにNi40〜60%、Cr60〜40%、Mo0〜残量の超合金のSUPER ALLOY ( 三菱金属MCアロイ)やSUPER ALLOY FM72(インコネルフィラーメタル72(SPECIAL METALS Welding Products Company FM72))等のNi40〜60%、Cr60〜40%を主成分とする超合金のNi基金属の耐高温耐蝕性の溶接棒を使用して肉盛溶接し、耐サルファーアタック、耐バナジュームアタックの耐高温耐食性に優れて耐久性を有するものとし、粗悪重油を燃料としている低速ディーゼル機関等の排気弁棒の長期寿命を維持することができ、メンテナンス間隔を大幅に延長可能にしている。
表2 Ni基金属の耐高温耐蝕性の溶接棒の化学成分表
また、図2のように、排気弁棒1のシート面4に当たる下地面層に上記表2のようにP(燐)の成分を含まないインコネル600、601等のNi基金属の耐高温耐蝕性の溶接棒を使用し、その下地面層の肉盛溶接した上面に当たる表面層に表2のようにUD520(SPECIAL METALS Welding Products Company )等のNi基特殊金属の耐高温高硬度耐蝕性の溶接棒を使用して肉盛溶接して形成し、高温−高硬度と耐腐食性に優れて耐久性を有するものとして、粗悪重油を燃料としている低速ディーゼル機関等の排気弁棒の長期寿命を維持することができ、メンテナンス間隔を大幅に延長できるようにしている。
排気弁棒1としては、1)使用実績効果が評価できる材料、2)経済的に見合うことができる材料、3)弁シート部は高温で硬度が保たれて、耐食性に優れていること、4)触火面は耐サルファーアタック、耐バナジュームアタック、耐高圧高温に優れた材料、を選択する必要がある。このような条件を、1種類の材料で達成することは現状では不可能であり、上記のように複数種類の材料で相互に補う方策の排気弁棒1を作成したものである。そのために、2種類または3種類の厚みの薄い溶着金属を重ね、それぞれを希釈させる溶接手法を採用した。
そして、排気弁棒1の触火面3、シート面4の溶接肉盛は、厳密な入熱管理、溶接手法による実験で求めた予熱温度200〜300℃で予熱するとともにパス間温度管理して上記した肉盛溶接の所要の溶着金属を被覆し、肉盛溶接後に830 〜880 ℃で溶体化処理し、620 〜680 ℃で析出化処理し、上記した肉盛溶接部を高温−高硬度、耐腐食性に優れて割れも防止できる金属組織としてディーゼル機関の排気弁棒1の長期寿命をはかるようにできる。
また、ディーゼル機関等の排気弁棒の母材に一般に使用されるSUH1、3、4、SUH31、37、SNCrW系、ナイモニック80、81のNi基耐熱鋼の弁材料の耐熱鋼を使用した排気弁棒1であって、その触火面3に当たる下地面層に表3のようにSUS309、310、316等のステンレス耐熱用鋼金属を肉盛溶接し、その下地面層の肉盛溶接した上面に当たる中間面層に上記のようにP(燐)の成分を含まないインコネル600、601の耐高温耐蝕性のNi基金属を肉盛溶接し、さらにその肉盛溶接した上面に当たる表面層に上記のようにNi40〜60%、Cr60〜40%を主成分とするSUPER ALLOY 、SUPER ALLOY FM72の超合金の耐高温耐蝕性のNi基金属を肉盛溶接し、上記のようにしてこれらの肉盛金属を希釈して溶着形成して補修することができる。そのため、上記のようなディーゼル機関の排気弁棒1の使用による損傷した触火面3を溶接補修して、使用寿命の延長をはかることができる。
さらに、ディーゼル機関の排気弁棒2の母材に一般に使用されるSUH1、3、4、SUH31、37、SNCrW系や、ナイモニック80、81のNi基耐熱鋼の弁材料の耐熱鋼を使用した排気弁棒2であって、そのシート面4に当たる下地面層に上記表3のようにSUS309、310、316等のステンレス耐熱用鋼金属を肉盛溶接し、その下地面層に肉盛溶接した上面に当たる中間面層に上記のようにP(燐)の成分を含まないインコネル600、601の耐高温耐蝕性のNi基金属を肉盛溶接し、さらにその肉盛溶接した上面に当たる表面層に上記のようにUD520の耐高温高硬度耐蝕性のNi基特殊金属を肉盛溶接し、上記のようにこれらの肉盛金属を希釈して溶着形成して補修することができる。そのため、上記のようなディーゼル機関の排気弁棒1の使用による損傷したシート面4を溶接補修して、使用寿命の延長をはかることができる。
排気弁棒1の母材の金属がFeべ一スのものは、溶着金属の析出共晶の中の金属間化合物にA1が入っており、排気弁棒母材のFeと脆い化合物を作る可能性があるので、上記のように中間溶着金属材として、インコネルのNiで縁を切る必要がある。インコネル600、601のNi基金属は、P(燐)の成分を含まなく、溶着金属の超合金の溶着の際の耐割れ性に優れていて好ましく使用できるものである。なお、S(硫黄)の成分も含まないものが好ましい。また、超合金の耐高温耐蝕性のNi基金属について、上記のようにNi40〜60%、Cr60〜40%、Mo0〜残量が好ましいが、Mo以外に本考案の趣旨にもとづくNi40〜60%、Cr60〜40%を主成分として多少の他の金属を含有したものも使用可能である。
表4は、これらの溶着金属希釈及び硬度試験組合わせについて、まとめた一例である。
表4 溶着金属希釈及ぴ硬度試験組合わせの表
図1以下は、本考案の一実施例を示すものである。本考案のディーゼル機関の排気弁棒1は、その排気弁棒本体2の母材に一般に使用されるSUH31の弁材料の耐熱鋼を使用し、その触火面3にインコネル600の溶接棒を使用してサブマージアーク溶接で肉盛溶接し、その肉盛溶接した上面にSUPER ALLOY (三菱金属MCアロイ)の溶接棒を使用してサブマージアーク溶接で肉盛溶接し、シート面4にインコネル600の溶接棒を使用してサブマージアーク溶接で肉盛溶接し、その肉盛溶接した上面にUD520の溶接棒を使用してサブマージアーク溶接で肉盛溶接し、これらの2種類の肉盛溶接金属を重ね合わせてサブマージアーク溶接で希釈して溶着した。
上記の肉盛溶接するにあたっては、たとえば排気弁棒1を所定の回転台に搭載して固定し、図3(a)、(b)のように触火面3およびシート面4に開先加工をし、排気弁棒1の排気弁棒本体2の化学成分、溶接棒に対応して溶接手法による実験で求めた予熱温度250〜300℃で、回転させながらガスバーナーで予熱する。そして、先ず触火面3について、図3(a)のように溶接棒インコネル600/Incoフラックスで所要の肉盛溶接をする。ついで、シート面4について、図3(b)のように溶接棒インコネル600/Incoフラックスで所要の肉盛溶接をした。
そして、上記触火面3およびシート面4について、図4(a)、(b)のようにそれぞれの肉盛溶接した上面に上盛り開先加工をし、同様に所要の予熱をし、触火面3について溶接棒MCアロイ/Incoフラックスで上盛り肉盛溶接をし、ついで、シート面4について、溶接棒UD520/Incoフラックスで上盛り肉盛溶接をし、その後870℃で4Hrの溶体化処理をし、ついで、670℃で8Hrの析出硬化処理を実施した後完成加工をし、所要の検査を経て製品とした。
このようにディーゼル機関の排気弁棒1の母材に一般に使用される弁材料の耐熱鋼を使用し、その触火面3にP(燐)が無くて溶着の際の耐割れ性に優れているインコネルの溶接棒を使用し、その肉盛溶接した上面にSUPER ALLOY (三菱金属MCアロイ)の耐サルファーアタック、耐バナジュームアタックの耐高温耐食性に優れた超合金のNi基金属の溶接棒を使用して肉盛溶接して形成して、弁材料を安価に経済的に製作できるとともに、インコネルの溶接棒と超合金のNi基金属の溶接棒の組み合わせで、触火面3を高温−耐腐食性に優れ、粗悪重油を燃料としている低速ディーゼル機関等の排気弁棒の長期寿命を維持することができ、メンテナンス間隔を大幅に延長でき、顧客の経費の削減に寄与することができる。そして、このような2種類の肉盛溶接をサブマージアーク溶接で希釈し、溶体化処理、析出硬化処理をすることによって、硬度と強度を具備するようにできるとともに、触火面3に重ねた上面に当たる表面層の割れ発生の防止ができて、上記のように耐久性を高められて、メンテナンスフリーに近づけることができる。
また、排気弁棒のシート面4も、P(燐)の成分を含まないインコネルの溶接棒とUD520の耐高温高硬度耐蝕性の超合金のNi基特殊金属の溶接棒の組み合わせで、排気弁棒のシート面の硬度は高温度範囲まで高硬度が維持でき、高温−高硬度と耐腐食性に優れ、粗悪重油を燃料としている低速ディーゼル機関等の排気弁棒の長期寿命を維持することができ、メンテナンス間隔を大幅に延長でき、顧客の経費の削減に寄与することができる。そして、このような2種類の肉盛溶接をサブマージアーク溶接で希釈し、溶体化処理、析出硬化処理をすることによって、硬度と強度を具備するようにできるとともに、上記のように耐久性を高められて、メンテナンスフリーに近づけることができる。
また、図5(a)、(b)、(c)のように、上記のようなディーゼル機関の排気弁棒1の損傷の補修にあって、触火面3の損傷部の検査をして所要の処理をし、上記した肉盛溶接加工の前に、触火面3に所要の開先加工をして溶接棒SUS309/ボンドフラックスS1で肉盛溶接し、その肉盛溶接した上面にも所要の開先加工をして上記した溶接棒インコネル600/Incoフラックスで肉盛溶接し、さらにその肉盛溶接した上面にも所要の開先加工をして上記したSUPER ALLOY のMCアロイ/Incoフラックスで肉盛溶接し、これらの3種類の肉盛溶接をサブマージアーク溶接で希釈、溶体化処理、析出硬化処理をして溶着補修した。このように肉盛溶接して補修して、上記のようにディーゼル機関の排気弁棒1の使用による損傷した触火面3を溶接補修して、使用寿命の長時間の延長をはかることができる。
さらに、図6(a)、(b)、(c)のように、同様に、ディーゼル機関の排気弁棒1の損傷の補修にあっては、シート面4の損傷部の検査をして所要の処理をし、上記した肉盛溶接加工の前に、シート面4にSUS309の溶接棒/ボンドフラックスS1を使用して肉盛溶接し、肉盛溶接した上面にインコネル600/Incoフラックスの肉盛溶接をし、さらにその肉盛溶接した上面にUD520/Incoフラックスの肉盛溶接をし、これらの3種類の肉盛溶接をサブマージアーク溶接で希釈、溶体化処理、析出硬化処理をして溶着補修した。このように肉盛溶接して補修して、上記のようにディーゼル機関の排気弁棒1の使用による損傷したシート面4を溶接補修して、使用寿命の長時間の延長をはかることができる。
舶用のディーゼル機関の排気弁棒1は、所要の予熱温度に予熱して肉盛溶接補修の溶着金属を被覆できるものであり、当該部材に空気の影響を受けさせない、5〜10hPa(5〜10ミリバール)の真空状態や不活性ガス雰囲気の真空炉や、電気炉やガス炉等の熱処理炉で上記のように熱処理を施工し、酸化物等による破損、炭化物形成による破損を防止できて好ましい。
なお、実施例では、ディーゼル機関の排気弁棒1の母材をSUH31について説明したが、オーステナイト系のSUH37、SNCrW等や、マルテンサイト系のSUH1、3、4等の弁材料の耐熱鋼、ナイモニック80、81のNi基の耐熱鋼についても同様に選択して実施することができ、またインコネル601のNi基金属、インコネルフィラーメタル72の超合金のNi基金属、SUS310、316等の耐熱鋼用の溶接棒や、さらにMIG溶接、TIG溶接等についても、本考案の趣旨にもとづいて実施可能であり、さらにこれらの適宜の組み合わせ、またこれらの変形態様を実施可能である。
本考案は、船舶のディーゼル機関、ガソリン機関、その他のピストンをもって往復運動を司る航空機、機関車等のすべての内燃機関の排気弁棒に利用できる。
1…排気弁棒 2…排気弁棒本体 3…触火面 4…シート面