JP3175033U - ディーゼル機関等のCr−Mo鋼ピストンヘッド - Google Patents

ディーゼル機関等のCr−Mo鋼ピストンヘッド Download PDF

Info

Publication number
JP3175033U
JP3175033U JP2012000573U JP2012000573U JP3175033U JP 3175033 U JP3175033 U JP 3175033U JP 2012000573 U JP2012000573 U JP 2012000573U JP 2012000573 U JP2012000573 U JP 2012000573U JP 3175033 U JP3175033 U JP 3175033U
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
piston head
welding
diesel engine
overlay welding
quenching
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP2012000573U
Other languages
English (en)
Inventor
徳一 玉田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
KOCHAB CO., LTD.
Original Assignee
KOCHAB CO., LTD.
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by KOCHAB CO., LTD. filed Critical KOCHAB CO., LTD.
Priority to JP2012000573U priority Critical patent/JP3175033U/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3175033U publication Critical patent/JP3175033U/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Heat Treatment Of Articles (AREA)
  • Arc Welding In General (AREA)

Abstract

【課題】高炭素鋼により製造された船舶用ディーゼル機関等のピストンヘッドであって、燃焼ガスによって焼損したピストンヘッドの触火面を機械的強度を低下させることなく肉盛溶接して補修したピストンヘッドを提供する。
【解決手段】舶用のディーゼル機関のピストンヘッド1は、炭素量が0.23%以上、炭素当量が0.41%を超える高炭素量のCr−Mo鋼でピストンヘッド形状に形成しているもので、燃焼ガスによる焼損が激しくなったピストンヘッド1の触火面3の肉盛溶接部を炭素当量Ceq(%)に対して予熱温度PT(℃)=Ceq×K(K=350〜500)に予熱し、またインコネルの溶接にあたっては厳密な入熱管理、溶接手法による実験で求めた予熱温度200〜300℃で予熱して、肉盛溶接補修の溶着金属4を被覆する。さらに、530〜630℃から急冷焼戻しを施工してピストンヘッド1を補修形成する。
【選択図】図2

Description

本考案は、船舶等のディーゼル機関やガソリン機関等の内燃機関のCr−Mo鋼ピストンヘッドに関するものである。
従来、船舶等の各種ディーゼル機関等のピストンヘッドは、所要の各種金属材料から鍛造若しくは鋳造段階の素材工程を経て熱処理を加えて、各種ディーゼル機関等のピストンヘッドが必要とする所定の強度を確保するようにし、その後機械加工工程を経て完成品に仕上げられている。
これら各種ディーゼル機関等のピストンヘッドは、数百度の高温腐食性ガス雰囲気の中で、しかも過酷に使われるものは連続数十日の使用が繰り返し行われる。したがって、ピストンヘッドの触火面が腐食損耗したり、各部にクラックが発生したりして損傷が激しい部品である。
そこで、一般的には、定期的な点検が定められており、ピストンの各部位について基準を超えて損耗したり、クラック等による破損があれば、必要な補修を施したり、新品と交換される。
また、これら各種ディーゼル機関等のCr−Mo鍛造鋼製のピストンヘッドは、溶着性が悪く、溶着しても熱処理段階で溶接HAZ部にクラックが発生して使用に耐えないため、炭素当量の高いCr−Mo鍛造鋼材製ピストンヘッドは、殆どの場合、溶接補修が不可能であり、一部のエンジンメーカではこの種のピストンの溶接補修工事を中止したケースもあった。
さらに、Cr−Mo鍛造鋼製のピストンヘッドの強度に対応した市販の溶接棒が、確認されていないものであった。
そのため、船級協会の鋼船規則では鋼材の炭素量が0.23%、炭素当量が0.41%を超えるものは溶接をしてはならないとされている、耐久化がはかれる高炭素量、高炭素当量を含む船舶用のディーゼル機関等のピストンヘッドの触火面の溶接補修について、理論的に解明して耐久性よく溶接補修を可能とすることが課題であった。
本考案は、上記のような点に鑑みたもので、上記の課題を解決するために、Cr−Mo鋼のディーゼル機関等のピストンヘッドであって、燃焼ガスによって焼損したピストンヘッドの触火面の肉盛溶接部を機械的性質の引張強さが800N/mm2 以上となるように触火面を予熱して所要の肉盛溶接補修の溶着金属を被覆し、530 〜630 ℃から急冷焼戻しを施工してピストンヘッドを補修形成したことを特徴とするディーゼル機関等のピストンヘッドを提供するにある。
また、溶接棒として、SCM435、SCM440、SCM445、16CrMo44、42CrMo4に対応、または相当の溶着金属を使用し、炭素当量Ceq(%)に対して予熱温度PT(℃)=Ceq×K(K=350〜500)に予熱して上記肉盛溶接補修の溶着金属をサブマージアーク溶接で被覆して肉盛補修したことを特徴とするディーゼル機関等のピストンヘッドを提供するにある。
さらに、ピストンヘッドの触火面または肉盛溶接した触火面を予熱温度200〜250℃、パス間温度250〜300℃にして、インコネル(Inconel(登録商標)以下同じ)の耐高温耐蝕用のNi基金属をサブマージアーク溶接で肉盛溶接補修して被覆したことを特徴とするディーゼル機関等のピストンヘッドを提供するにある。
さらに、肉盛溶接として母材のシート材の所要個所を凹ませてその凹ませ部に肉盛溶接をし、その凹ませ部に肉盛溶接をした部分を溶接試験規格に対応して切り取った試験片について所定の溶接検査試験をして機械的性質の引張強さが800N/mm2 以上の溶接部であることを特徴とするディーゼル機関等のピストンヘッドを提供するにある。
またさらに、当該部材に空気の影響を受けさせないで真空炉、または酸素の影響を受けさせないように不活性ガス雰囲気で830 〜880 ℃から急冷焼入れ処理を施工し、530 〜630 ℃から急冷焼戻しを施工したことを特徴とするディーゼル機関等のピストンヘッドを提供するにある。
さらにまた、市販の丸型圧延鋼材若しくは市販の丸型鍛造鋼材を所定の長さに輪切りに切断し、鍛造工程を加えずに熱処理前の機械加工を施して所要のピストンヘッド形状に形成し、当該部材に空気の影響を受けさせないで真空炉、または酸素の影響を受けさせないように不活性ガス雰囲気で830 〜880 ℃から急冷焼入れ処理を施工し、530 〜630 ℃から急冷焼戻しを施工してピストンヘッドを形成したもので、そのピストンヘッドの触火面に肉盛溶接補修した肉盛溶接とし、母材のシート材の所要個所を凹ませてその凹ませ部に肉盛溶接をし、その凹ませ部に肉盛溶接をした部分を溶接試験規格に対応して切り取った試験片について所定の溶接検査試験をして機械的性質の引張強さが800N/mm2 以上の溶接部であることを特徴とするディーゼル機関等のピストンヘッドを提供するにある。
本考案は、実用新案登録請求の範囲の請求項1のように、Cr−Mo鋼のディーゼル機関等のピストンヘッドであって、燃焼ガスによって焼損したピストンヘッドの触火面の肉盛溶接部を機械的性質の引張強さが800N/mm2 以上となるように触火面を予熱して所要の肉盛溶接補修の溶着金属を被覆し、530 〜630 ℃から急冷焼戻しを施工してピストンヘッドを補修形成したことによって、Cr−Mo鋼のピストンヘッドの触火面を耐久性よく肉盛溶接補修ができる。そして、焼戻しで金属のもろさによる弊害を避ける金属組織の改善を図り、製品の各部位で強度と硬度のばらつきのない強靱性を確保し、信頼性のあるピストンヘッドを溶接補修して形成できる。
また、請求項2のように、溶接棒として、SCM435、SCM440、SCM445、16CrMo44、42CrMo4に対応、または相当の溶着金属を使用し、炭素当量Ceq(%)に対して予熱温度PT(℃)=Ceq×K(K=350〜500)に予熱して上記肉盛溶接補修の溶着金属をサブマージアーク溶接で被覆して肉盛補修したことによって、殆んど溶接補修が不可能といわれていた高炭素量を含むCr−Mo鋼のピストンヘッドの触火面を耐久性よく肉盛溶接補修ができ、かつ金属組織の改善を図り、製品の各部位で強度と硬度を高めて、ばらつきのない強靱性を確保し、信頼性のあるピストンヘッドを溶接補修して形成できる。
また、請求項3のように、ピストンヘッドの触火面または肉盛溶接した触火面を予熱温度200〜250℃、パス間温度250〜300℃にして、インコネル(Inconel)の耐高温耐蝕用のNi基金属をサブマージアーク溶接で肉盛溶接補修して被覆したことによって、インコネルのNi基金属で触火面の耐高温耐蝕性を高められ、かつ製品の各部位で強度と硬度を高めて、ばらつきのない強靱性を確保し、信頼性のあるピストンヘッドを溶接補修して形成できる。
さらに、請求項4のように、肉盛溶接として母材のシート材の所要個所を凹ませてその凹ませ部に肉盛溶接をし、その凹ませ部に肉盛溶接をした部分を溶接試験規格に対応して切り取った試験片について所定の溶接検査試験をして機械的性質の引張強さが800N/mm2 以上の溶接部であることによって、実体に近い状態の溶接結果の、ばらつきのない強靱性を確保した、信頼性のあるピストンヘッドを提供できる。
さらに、上記請求項5のように、当該部材に空気の影響を受けさせないで真空炉、または酸素の影響を受けさせないように不活性ガス雰囲気で830 〜880 ℃から急冷焼入れ処理を施工し、530 〜630 ℃から急冷焼戻しを施工したことによって、急冷焼入れ、急冷焼戻しでの製品表面の酸素含浸を回避できて、酸素による製品への弊害を避けられ、特に長時間使用されてピストンヘッドの鋼材がオーバーヒート等で金属組織がかなり粗大化されたものであっても、ピストンヘッドの強度と硬度のばらつきによる破損を回避でき、酸素含有に起因する酸化物等による破損、炭化物形成に起因する破損を防止できる。
さらにまた、上記請求項6のように、市販の丸型圧延鋼材若しくは市販の丸型鍛造鋼材を所定の長さに輪切りに切断し、鍛造工程を加えずに熱処理前の機械加工を施して所要のピストンヘッド形状に形成し、当該部材に空気の影響を受けさせないで真空炉、または酸素の影響を受けさせないように不活性ガス雰囲気で830 〜880 ℃から急冷焼入れ処理を施工し、530 〜630 ℃から急冷焼戻しを施工してピストンヘッドを形成したもので、そのピストンヘッドの触火面に肉盛溶接補修した肉盛溶接とし、母材のシート材の所要個所を凹ませてその凹ませ部に肉盛溶接をし、その凹ませ部に肉盛溶接をした部分を溶接試験規格に対応して切り取った試験片について所定の溶接検査試験をして機械的性質の引張強さが800N/mm2 以上の溶接部であることによって、ピストンヘッド用に均一な組織の鋼材を確保し、製品の各部位で強度と硬度にばらつきのない強靱性を確保し、酸素による製品への弊害を避けられ、各種ディーゼル機関の内燃機関の鍛鋼製ピストンヘッドの強度と硬度のばらつきによる破損を防止できる信頼性のあるピストンヘッドを形成でき、上記のように溶接補修して提供できる。
本考案の一実施例のピストンの側面図、 同上のピストンヘッド部の拡大側断面図。 同上の肉盛溶接部と溶着金属部の強度試験の説明面用図(a)、(b)、 同上のピストンヘッドの他の実施例の製造過程説明図。
本考案のディーゼル機関等のピストンヘッドは、Cr−Mo鋼のディーゼル機関等のピストンヘッドであって、燃焼ガスによって焼損したピストンヘッドの触火面の肉盛溶接部を機械的性質の引張強さが800N/mm2 以上となるように触火面を予熱して所要の肉盛溶接補修の溶着金属を被覆し、530 〜630 ℃から急冷焼戻しを施工してピストンヘッドを補修形成したしたことを特徴としている。
舶用ディーゼル機関の内燃機関のピストンヘッド1は、図1、図2のようにピストンロッド2と連結されて使用されるもので、表1、表2のようにCr−Mo鋼の鍛鋼材料で作られているが、炭素量が0.23%、炭素当量が0.41%を超えるものは溶着性が悪く、溶着しても熱処理段階で溶接HAZ部にクラックが発生して使用に耐えないため、殆んどの場合、溶接補修が不可能であった。船級協会の鋼船規則では、鋼材の炭素量が0.23%、炭素当量が0.41%を超えるものは、溶接をしてはならないとされている。但し、エンジンメーカで補修基準が定められていれば、その補修基準が優先されることとなっている。
表1 ピストンヘッドの素材の化学成分%
Figure 0003175033

表2 ピストンヘッドの素材の機械的性質
Figure 0003175033

そこで、本考案者らは、船級協会の鋼船規則の一般肉盛り用の肉盛溶接法にもとづいて、溶接作業並びに熱処理を研究し、溶接の感受性を和らげる溶接母材の予熱並びにパス間温度管理、溶接施工中に溶接剥離を起こさせない入熱量管理、溶接施工手法管理、及び溶接施工後、溶接HAZ部に剥離を起こさせないで靱性を確保させるための、空気の影響を受けさせないで焼入れ処理、焼戻しを施工して歪取り焼鈍処理等について研究した。
鍛鋼製のピストンヘッド1の代表的なSCM鍛鋼材の金属組織は、トールスタイト組織(400 ℃程度での焼戻し)又ソルバイト組織(800 ℃程度での焼戻し)と呼ばれる組織で、どちらもフェライト(純鉄)とセメンタイト(炭化物、Fe3C)からなっており、総称して微細パーライトとも呼ばれている。焼き入れのままだと、マルテンサイトという大変硬くて脆い組織となるが、このままだと使えないので、焼戻しする。また、ぺーナイト組織は、マスが大きい等の理由で冷却速度が小さくなった場合、やや粗い組織になる。厳密には、微細パーライトと言うことになる。
そこで、ピストンヘッド1の損耗した触火面3の肉盛溶接部を、母材の化学成分、溶接棒に対応して、炭素当量Ceq(%)に対して予熱温度PT(℃)=Ceq×K(K=350〜500)で予熱したり、触火面3のインコ肉盛溶接を厳密な入熱管理、溶接手法による実験で求めた予熱温度200〜300℃で予熱するとともにパス間温度管理して上記した肉盛溶接の所要の溶着金属4を被覆し、530 〜630 ℃から急冷焼戻しを施工してピストンヘッド1を適正に補修できることが分かった。上記炭素当量について、Ceq(%)=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15の数式にもとづいて基本的に算出できる。C、Mn、Cr、Mo、V、Ni、Cuは、当該ピストンヘッド1の素材の化学成分量(%)である。
このような各種ディーゼル機関のCr−Mo鍛鋼製のピストンヘッド1の溶接補修に、船級協会の鋼船規則の一般肉盛り用で採用されている炭素量、炭素当量の規制を超えたCr−Mo鍛鋼製ピストンヘッドの鍛鋼材料の中で炭素量、炭素当量が最も高いSCM435、SCM440及びSCM445の強度に対応した市販のフラックス/溶接棒(PF-500/US-521H又はH80AK/US-80LT)又はその相当材溶接棒により補修肉盛溶接を施工できる。また、ピストンヘッド1の触火面3に上記した溶接棒に代え、若しくは上記した肉盛溶接した触火面3にその上に重ね合わせるようにして、耐腐食性に優れたインコネル600、601、625等のNi基金属を、その市販のフラックス/溶接棒(PFB-70N/1NT-625A)又はその相当材溶接棒により肉盛溶接を施工することができる。
そして、上記のように理論的な根拠に基づいて試験を実施し、溶接性を確認した。溶接試験方法は、従来、いわゆる突き合わせの肉盛溶接による強度試験が規定されているが、本考案のようにピストンヘッド1の触火面3に肉盛溶接する場合、実際の使用状態を反映しているものではなかった。そこで、図3(a)、(b)のように母材の試験片5にV字状やU字状等に凹ませ、母材を残した上記凹み部に肉盛溶接して、引っ張り試験やシャルピー試験等の各種の所定の肉盛溶接部の試験、溶着金属部の試験を実行することが実体にそうものである。本件は、図3(a)、(b)のように母材の試験片5にU字状に凹ませ、この凹み部に肉盛溶接して、肉盛溶接試験にそうように一点鎖線のように所定の大きさに切り取った試験片5で試験、および溶着金属部から切り取った溶着金属4の試験を実施した。
従来、溶接後焼鈍時に溶接HAZ部に度々剥離が発生していたが、溶接後の歪取り焼鈍時の焼戻しもろさによる剥離の発生メカニズムが明確になり、効率的に耐久性よく補修ができると共に信頼性の向上が図れ、補修完成の歩留が良く、コスト削減ができることを確証できた。
過酷に長時間使用されたディーゼル機関のCr−Mo鍛鋼のピストンヘッド1の鋼材は、オーバヒート等により金属組織がかなり粗大化されるが、上記のように適正温度で溶体化処理をし、必要により、5〜10hPa(5〜10ミリバール)、好ましくは10hPa(10ミリバール)以下の真空炉を使って真空による製品表面の酸素含有を防ぐことで、ディーゼル機関が稼動中に鍛鋼材ピストンヘッドの腐食を起点とした破損によるトラブルの要因を排除すると共に、急冷焼戻しすることにより、溶接によるマルテンサイト組織を微細パーライト組織にして強靱性をもたせることが可能となる。
なお、図4のように市販の丸型圧延鋼材若しくは市販の丸型鍛造鋼材の鋼材の素材6を輪切り状に切断して、鍛造工程を経ずに製造するピストンヘッドについて、酸素の影響を受けさせないように窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気で急冷焼入れ処理、急冷焼戻し処理を施工したものについても、施工可能である。
図1〜図3は、本考案の実施例を示すものである。舶用のディーゼル機関のピストンヘッド1は、炭素量が0.23%以上、炭素当量が0.41%を超える高炭素量のCr−Mo鋼でピストンヘッド形状に形成しているもので、燃焼ガスによる焼損が激しくなったピストンヘッド1の触火面3の肉盛溶接部を炭素当量Ceq(%)に対して予熱温度PT(℃)=Ceq×K(K=350〜500)に予熱し、またインコネルの溶接にあたっては厳密な入熱管理、溶接手法による実験で求めた予熱温度200〜300℃で予熱して、肉盛溶接補修の溶着金属を被覆した。
上記ピストンヘッドの素材1の化学成分は、表1のとおりに機関メーカー仕様にそうものであり、またピストンヘッド1の素材の機械的性質についても表2のとおりに機関メーカー仕様にそうものである。なお、表1の化学成分にもとづいて、炭素当量について、Ceq(%)=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15の数式にもとづいて基本的に算出できる。
表3は、上記ピストンヘッド1の溶接条件を示すもので、溶接棒として、SCM440及びSCM445の強度に対応した市販の溶接棒/フラックス(US-521H/PF-500) 、(US-80LT/H80AK )、その相当材および溶接棒/フラックス(INT-625A/PFB-70N)により補修肉盛溶接を施工したのである。予熱は、表4の化学成分から、上記の炭素当量の算出式にもとづいて基本的に算出して調整した300〜450℃のものと、インコネルについては、溶接手法による実験で求めた予熱温度200〜300℃、パス間温度200〜250℃で、表3のとおりである。焼鈍(焼戻し)は550±10℃である。
表4は、上記ピストンヘッド1の供試母材および溶着金属の性状であり、表1にもとづいている。
そして、上記した図3(a)、(b)のように母材のシート材に凹ませた凹み部に肉盛溶接した試験片5について、溶接試験に基づいて実施し、溶接性を確認した。その結果、表3のように十分な引張強度を有し、肉盛溶接部は機械的性質の引張強さが800N/mm2 以上であり、燃焼ガスによって焼損したピストンヘッドの触火面3の耐久化がはかれる。従来の溶接後焼鈍時に溶接HAZ部に度々剥離が発生していたが、溶接後の歪取り焼鈍時の焼戻しもろさによる剥離の発生もなく、十分な強度と硬度を有し、耐久性のよい補修ができ、信頼性の向上が図れ、補修完成の歩留が良く、コスト削減ができる。なお、母材のシート材の試験片5は、試験ピースだけでなく、損耗した母材を使用することもできる。
また、過酷に長時間使用されたディーゼル機関のCr−Mo鍛鋼製ピストンヘッド1の鋼材は、オーバヒート等により金属組織がかなり粗大化されているが、当該部材に空気の影響を受けさせない、5〜10hPa(5〜10ミリバール)の真空状態で830 〜880 ℃から急冷焼入れを施工してピストンヘッド1を肉盛溶接補修をした。真空熱処理炉で製品表面の酸素浸透を防ぐことで、ディーゼル機関が稼動中に鍛鋼材ピストンヘッドの腐食を起点とした破損によるトラブルの要因を排除すると共に、溶接後は直ちに530 〜550 ℃から急冷焼戻しすることにより、溶接によるマルテンサイト組織を微細パーライト組織にして強靱性をもたせることができた。
表3 ピストンヘッドの溶接条件および機械的性質
Figure 0003175033


また、従来、船舶等の各種ディーゼル機関等のピストンヘッドは、所要の金属材料から鍛造若しくは鋳造段階の素材工程を経て熱処理を加えて、その後に機械加工工程を経て完成品に仕上げられている。そのため、前記の鍛造素材工程の製品は、その製品の部位によって強度と硬度にばらつきができる。このばらつきは、従来の鍛造素材工程では避けがたいものである。そのため、従来の鍛造工程を廃止し、均一な品質が保証された市販の丸型圧延鋼材若しくは市販の丸型鍛造鋼材の素材に置きかえ、強度、鍛造比一定の量産品を使用して鍛造製品の部位でばらつきのある強度分布を防止するようにした。
図4のように市販の丸型圧延鋼材若しくは市販の丸型鍛造鋼材の素材6を所要の機械加工し、ピストンヘッド製品に適した大きさに輪切り状に切断し、荒加工の上、完成加工前の半製品素材7を作成する。そして、この半製品素材8を適正温度830 〜880 ℃から油冷等の急冷焼入れをして、焼入れ後、直ちに電気炉やガス炉等の熱処理炉にて530 〜630 ℃から急冷焼戻し、上記のように強化できる。特に、空気の影響を受けさせない、熱処理炉で真空等により製品表面の酸素含有を防ぐことで、ディーゼル機関が稼動中に鍛鋼材のピストンヘッド1の腐食を起点とした破損によるトラブルの要因を排除できる。
表4 ピストンヘッドの供試母材および溶着金属の性状
Figure 0003175033

このように市販の丸型圧延鋼材若しくは市販の丸型鍛造鋼材を所定の長さに輪切りに切断し、鍛造工程を加えずに熱処理前の機械加工を施して所要の形状に形成し、所要の温度での焼入れ処理を施工後、急冷焼戻しを施工して、品質が確保された市販の一定の強度、鍛造比を持った量産品の市販の丸型圧延鋼材若しくは市販の丸型鍛造鋼材を素材に使用して、製造コストセーブができるとともに、鍛造比にばらつきの少ない量産品を使用して、製品の部位でばらつきの出る強度および硬度分布を防止でき、各種ディーゼル機関のピストンヘッドの強度およびのばらつきによる破損を防止できる。空気の影響を受けさせない、上記したように真空等で熱処理することが好ましい。
上記では、炭素量が0.23%以上、炭素当量が0.41%を超える鍛造鋼材を含む鋼材について説明したが、上記した市販の丸型圧延鋼材若しくは市販の丸型鍛造鋼材の市販の鋼材についても適用でき、また必要により、酸素の影響を受けさせないように窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気で熱処理を施工することもできる。
なお、ピストンロッド2、ピストンスカート8についても、従来の化学成分、機械的性質に適合するものを上記ピストンヘッド1に準拠して実施することができるものである。
本考案は、船舶のディーゼル機関のピストンヘッドのみならず、ガソリン機関、その他ピストンをもって往復運動を司る航空機、機関車等のすべての内燃機関ピストンヘッドに利用できる。
1…ピストンヘッド 2…ピストンロッド 3…触火面 4…溶接金属
鍛鋼製のピストンヘッド1の代表的なSCM鍛鋼材の金属組織は、トールスタイト組織又ソルバイト組織と呼ばれる組織で、どちらもフェライト(純鉄)とセメンタイト(炭化物、Fe3C)からなっており、総称して微細パーライトとも呼ばれている。焼き入れのままだと、マルテンサイトという大変硬くて脆い組織となるが、このままだと使えないので、焼戻しする。また、ーナイト組織は、マスが大きい等の理由で冷却速度が小さくなった場合、やや粗い組織になる。厳密には、微細パーライトと言うことになる。
表1 ピストンヘッドの素材の化学成分%
Figure 0003175033



Claims (6)

  1. Cr−Mo鋼のディーゼル機関等のピストンヘッドであって、
    燃焼ガスによって焼損したピストンヘッドの触火面の肉盛溶接部を機械的性質の引張強さが800N/mm2 以上となるように触火面を予熱して所要の肉盛溶接補修の溶着金属を被覆し、
    530 〜630 ℃から急冷焼戻しを施工してピストンヘッドを補修形成したことを特徴とするディーゼル機関等のピストンヘッド。
  2. 溶接棒として、SCM435、SCM440、SCM445、16CrMo44、42CrMo4に対応、または相当の溶着金属を使用し、炭素当量Ceq(%)に対して予熱温度PT(℃)=Ceq×K(K=350〜500)に予熱して上記肉盛溶接補修の溶着金属をサブマージアーク溶接で被覆して肉盛補修した請求項1に記載のディーゼル機関等のピストンヘッド。
  3. ピストンヘッドの触火面または肉盛溶接した触火面を予熱温度200〜250℃、パス間温度250〜300℃にして、インコネル(Inconel(登録商標))の耐高温耐蝕用のNi基金属をサブマージアーク溶接で肉盛溶接補修して被覆した請求項1または2に記載のディーゼル機関等のピストンヘッド。
  4. 肉盛溶接として母材のシート材の所要個所を凹ませてその凹ませ部に肉盛溶接をし、その凹ませ部に肉盛溶接をした部分を溶接試験規格に対応して切り取った試験片について所定の溶接検査試験をして機械的性質の引張強さが800N/mm2 以上の溶接部である請求項1ないし3のいずれかに記載のディーゼル機関等のピストンヘッド。
  5. 当該部材に空気の影響を受けさせないで真空炉、または酸素の影響を受けさせないように不活性ガス雰囲気で830 〜880 ℃から急冷焼入れ処理を施工し、530 〜630 ℃から急冷焼戻しを施工した請求項1ないし3のいずれかに記載のディーゼル機関等のピストンヘッド。
  6. 市販の丸型圧延鋼材若しくは市販の丸型鍛造鋼材を所定の長さに輪切りに切断し、鍛造工程を加えずに熱処理前の機械加工を施して所要のピストンヘッド形状に形成し、当該部材に空気の影響を受けさせないで真空炉、または酸素の影響を受けさせないように不活性ガス雰囲気で830 〜880 ℃から急冷焼入れ処理を施工し、530 〜630 ℃から急冷焼戻しを施工してピストンヘッドを形成したもので、そのピストンヘッドの触火面に肉盛溶接補修した肉盛溶接とし、母材のシート材の所要個所を凹ませてその凹ませ部に肉盛溶接をし、その凹ませ部に肉盛溶接をした部分を溶接試験規格に対応して切り取った試験片について所定の溶接検査試験をして機械的性質の引張強さが800N/mm2 以上の溶接部である請求項1ないし3のいずれかに記載のディーゼル機関等のピストンヘッド。
JP2012000573U 2012-02-06 2012-02-06 ディーゼル機関等のCr−Mo鋼ピストンヘッド Expired - Lifetime JP3175033U (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012000573U JP3175033U (ja) 2012-02-06 2012-02-06 ディーゼル機関等のCr−Mo鋼ピストンヘッド

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012000573U JP3175033U (ja) 2012-02-06 2012-02-06 ディーゼル機関等のCr−Mo鋼ピストンヘッド

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP3175033U true JP3175033U (ja) 2012-04-19

Family

ID=48002119

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012000573U Expired - Lifetime JP3175033U (ja) 2012-02-06 2012-02-06 ディーゼル機関等のCr−Mo鋼ピストンヘッド

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3175033U (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2015129612A1 (ja) * 2014-02-28 2015-09-03 三菱重工業株式会社 可動壁部材および溶接方法
JP2017508918A (ja) * 2014-03-03 2017-03-30 フェデラル−モーグル コーポレイション 付加加工が燃焼ボウル周縁および冷却ギャラリーを製造することを特徴とする1部品ピストン
CN111992867A (zh) * 2020-10-16 2020-11-27 贵州盘江精煤股份有限公司 一种焊网机电极头及其焊接方法

Cited By (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2015129612A1 (ja) * 2014-02-28 2015-09-03 三菱重工業株式会社 可動壁部材および溶接方法
CN106133285A (zh) * 2014-02-28 2016-11-16 三菱重工业株式会社 可动壁构件以及焊接方法
JPWO2015129612A1 (ja) * 2014-02-28 2017-03-30 三菱重工業株式会社 可動壁部材の溶接方法
KR20170116188A (ko) * 2014-02-28 2017-10-18 미츠비시 쥬고교 가부시키가이샤 가동벽부재 및 용접방법
TWI622448B (zh) * 2014-02-28 2018-05-01 三菱重工業股份有限公司 Movable wall member and welding method
CN106133285B (zh) * 2014-02-28 2018-09-25 三菱重工业株式会社 可动壁构件以及焊接方法
JP2017508918A (ja) * 2014-03-03 2017-03-30 フェデラル−モーグル コーポレイション 付加加工が燃焼ボウル周縁および冷却ギャラリーを製造することを特徴とする1部品ピストン
US10443536B2 (en) 2014-03-03 2019-10-15 Tenneco Inc. One-piece piston featuring addictive machining produced combustion bowl rim and cooling gallery
CN111992867A (zh) * 2020-10-16 2020-11-27 贵州盘江精煤股份有限公司 一种焊网机电极头及其焊接方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP3086899B2 (en) Precipitation strengthened nickel based welding material for fusion welding of superalloys
US9365913B2 (en) High-hardness hardfacing alloy powder
US7682471B2 (en) Austenitic iron-based alloy
JP2023120195A (ja) 炭素含有量が規定されたフィラーワイヤを準備して溶接鋼ブランクを製造する方法、関連する溶接ブランク、熱間プレス成形及び冷却された鋼部品並びに関連する部品を用いて溶接部品を製造する方法
JP3175033U (ja) ディーゼル機関等のCr−Mo鋼ピストンヘッド
JP4645303B2 (ja) 熱間鍛造金型用肉盛溶接材料及びその溶接材料を用いた熱間鍛造用金型
WO2014126086A1 (ja) 金属粉末、熱間加工用工具および熱間加工用工具の製造方法
JP2017519638A (ja) メタルコアード溶接電極
CN113084457A (zh) 一种活塞的金相强化制造方法
JP3175779U (ja) ディーゼル機関等の排気弁棒
CN1029133C (zh) 一种钴基合金及其制品
Hall Introduction to Today's Ultrahigh-strength Structural Steels: Issued Under the Auspices of American Society for Testing and Materials and the Defense Metals Information Center
CN116393869A (zh) 一种带有铝硅镀层热成形钢拼焊板用焊丝及其应用
CN111304527B (zh) 钢质活塞及其制备方法
CN109277724B (zh) 一种芯棒局部修复用气保焊丝及焊接工艺
US2306662A (en) Alloy
JP3175955U (ja) ディーゼル機関等のピストンヘッド
KR20150037480A (ko) 초합금의 용접을 위한 용접 재료
US11732331B2 (en) Ni-based alloy, and Ni-based alloy product and methods for producing the same
Mishler et al. Welding of high-strength steels for aircraft and missile applications
TWI464278B (zh) 耐候鋼材及其製造方法
KR101821082B1 (ko) 내연 기관의 배기 밸브 봉 및 그의 제법
JP3175956U (ja) ディーゼル機関等のピストンロッド
WO2015129612A1 (ja) 可動壁部材および溶接方法
Madalena et al. Mechanical and Microstructural Properties of the Inconel 625 Alloy Weld Overlay Obtained by Electroslag Welding Process

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20120207

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20120216

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 3175033

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150328

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150328

Year of fee payment: 3

S303 Written request for registration of pledge or change of pledge

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R326303

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150328

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150328

Year of fee payment: 3

R371 Transfer withdrawn

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R371

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150328

Year of fee payment: 3

S303 Written request for registration of pledge or change of pledge

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R326303

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150328

Year of fee payment: 3

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

S803 Written request for registration of cancellation of provisional registration

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R326803

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

EXPY Cancellation because of completion of term