JP3169409B2 - 光ファイバ用母材の製造方法 - Google Patents

光ファイバ用母材の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、光ファイバ用母材の製
造方法、特には製造歩留まりを向上させ、かつ、長期間
安定して光ファイバ用母材を製造する方法に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】光ファイバ用母材を製造する方法として
は、多重管バ−ナ−に燃焼ガス及びガラス原料ガスを供
給し火炎中での加水分解反応又は酸化反応によりガラス
微粒子を生成させ、このガラス微粒子を回転している出
発材の先端又は外周に堆積させて多孔質母材を得た後、
該多孔質母材を高温電気炉中の炉芯管内で焼結し透明ガ
ラス化する方法が行われている。
【0003】この場合ガラス原料の送入は酸素や不活性
ガスをキャリアガスとして用いているが、酸素をキャリ
アガスとして用いた場合、キャリアガスの酸素と燃焼ガ
スの水素とがバ−ナ−出口において直ちに反応して水を
生成し、さらにこの水とガラス原料との加水分解反応に
よりガラス微粒子SiO2が生成する。 SiCl4 + 2H2O → SiO2 + 4HCl4 (1) また、ガラス原料供給ノズルと水素供給ノズルが隣接し
ていると、このガラス微粒子生成の反応がバ−ナ−出口
において瞬時に起こるためガラス微粒子がバ−ナ−出口
に沈積してしまいノズルが閉塞してしまうという不都合
があった。
【0004】この問題を解決するため、ガラス原料供給
ノズルと水素供給ノズルの中間に不活性ガス供給ノズル
を設け、水素と酸素との反応を不活性ガスによりシ−ル
ドしバ−ナ−ノズルから少し離れたところから反応させ
て水の生成反応を遅らせるようにする方法がある。例え
ば特公昭61-44822では、キャリアガスが水素の場合につ
いてであるが、水素と酸素との反応を不活性ガスでシ−
ルドし、燃焼によるバ−ナ−のノズル先端部の加熱を防
ぐ方法が示されているが、前記不活性ガスとしてはアル
ゴンが一般的に用いられている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】通常シ−ルド用不活性
ガスの流量を増加させると、該ガス噴出ノズル出口にお
けるガス線速度(m/sec) が大きくなり、ガラス原料と燃
焼ガスとのシ−ルド効果が増す。しかし一方で、不活性
ガスを流すことにより火炎の温度が低下するので、その
結果、生成する多孔質ガラス母材の密度は低くなってし
まうし、密度が低下すると、多孔質ガラス母材の外径が
大きくなり、後工程の炉芯管に入らなくなるという不都
合が生じる。例えば燃焼ガスの水素流量を増加させるこ
とで多孔質ガラス母材の密度高めることは可能であるが
不経済であり、そのため不活性ガスの量を増やすにはあ
る程度限界があった。
【0006】また、不活性ガスによるシ−ルド効果は完
全なものでなく、不活性ガスを必要十分な流量流してい
るにもかかわらず、バ−ナ−出口の不活性ガス噴出ノズ
ル先端部にガラス微粒子のすすが付着することがあっ
た。さらに連続して多孔質ガラス母材を製造している
と、やがてノズル出口がつまって製造の中断に至ること
もあり、かかる現象が発生すると製造歩留りの低下やバ
−ナ−の寿命低下等を引き起こすといった問題点があっ
た。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明はこのような不利
を解決した光ファイバ用母材の製造方法に関するもので
あり、これは気体状ガラス原料を多重管バ−ナ−から噴
出させて、酸水素火炎中で酸化、加水分解させ、生成す
るガラス微粒子を回転する出発材の先端または外周に堆
積させて光ファイバ用母材を製造する方法において、前
記バ−ナ−に供給するガラス原料ガスと酸素ガスの混合
ガスの噴出ノズルと水素ガス噴出ノズルの間のノズルを
流れる不活性ガスを150 ℃以上に加熱することを特徴と
するものである。
【0008】すなわち、本発明者らはガラス原料ノズル
と水素供給ノズルの中間に不活性ガス供給ノズルを設け
て水素と酸素との反応を不活性ガスでシ−ルドする方法
についてさらに研究を進めた結果、この不活性ガスを15
0 ℃以上に加熱すると、ノズル先端の温度が上がり、こ
れがノズル出口付近の表面温度の低下を防止し、サ−モ
ホレシス効果(温度勾配のある流れの中でサブミクロン
の微小粒子が高温側から低温側に力を受ける現象)を小
さくする手法として有効であり、該ガスノズル出口にお
けるノズル表面にガラス微粒子の付着することが防止さ
れるようになるということを見出すと共に、この不活性
ガスを加熱すると多孔質ガラス母材の密度を下げること
なくシ−ルド効果を高めることが可能であることを確認
して本発明を完成させた。以下にこれさらに詳述する。
【0009】
【作用】本発明は光ファイバ用母材を製造方法に関する
ものであり、これは気体状ガラス原料を多重管バ−ナ−
に供給し、その火炎加水分解で生成したガラス微粒子を
出発材に堆積させて多孔質ガラス母材を製造するに当
り、バ−ナ−に供給する原料ガスと酸素との混合ガスの
噴出ノズルと水素ガス噴出ノズルとの間に不活性ガスを
流し、これを150℃以上に加熱することを要旨とする
ものである。
【0010】本発明による多孔質ガラス母材の製造自体
は公知の方法で行なわれる。すなわち、本発明で使用さ
れる酸水素火炎バ−ナ−は公知のものであるが、これは
図1に示したような構成とされるものである。図1は本
発明で使用される酸水素火炎バ−ナ−の横断面図を示し
たものであるあが、これは同心多重管からなるものであ
り、これは中央ノズル1に原料ガスとしてのSiCl4
とキャリアガスとして酸素ガスが供給され、その外周の
第2ノズル2からは不活性ガスとしてのアルゴンガス
が、その外側の第3ノズル3からは燃焼ガスとしての水
素ガスが、その外側の第4ノズル4からは不活性ガスと
してのアルゴンガスが、またその外側の最外層の第5ノ
ズル5からは支燃性ガスとしての酸素ガスがそれぞれ噴
出されるようにされている。
【0011】この酸水素火炎バ−ナ−を用いてこの酸水
素火炎中にガラス原料を供給すると、上記した式(1)
の火炎加水分解反応によってガラス微粒子が生成され、
このガラス微粒子はガラス微粒子を形成して火炎中を流
れ、回転している石英ガラスロッドに達し、このガラス
ロッドに堆積されて多孔質ガラス母材を形成するが、こ
のときこのガラス微粒子の中には第2ノズル2の先端に
付着するものもあり、このすすが次第に成長してノズル
出口を閉塞させることもある。
【0012】しかし、本発明者らがこのガラス微粒子の
付着メカニズムについて検討した結果、このガラス微粒
子によってノズル出口が閉塞されるのはシ−ルドガスと
して流している不活性ガスがノズル出口付近の表面温度
を低下させるので、これによってサ−モホレシス効果に
よりガラス微粒子が引き寄せられるためであることが見
出されたので、この不活性ガスを加熱してノズル先端の
温度を上げるようにしたところ、上記したサ−モホレシ
ス効果が小さくなることを確認した。
【0013】また、この不活性ガスの加熱については、
理想気体の堆積は圧力が一定である場合、絶対温度に比
例することが知られている(シヤ−ルの法則)が、温度
25℃を基準としてガスの体積膨張を計算すると図2に
示したようになり、ガスが25℃から150℃に加熱さ
れたときには体積は約1.4倍に膨張するので、例えば
不活性ガスを150℃に加熱すればそのガスの線速度も
約1.4倍となるので、これによれば多孔質ガラス母材
の密度を下げることなくシ−ルド効果を高めることが可
能となる。
【0014】したがって本発明にしたがってガラス原料
と酸素ガスとの混合ガスの噴出ノズルと水素ガス噴出ノ
ズルの間に不活性ガスを流し、この不活性ガスを150
℃以上に加熱すると、上記したサ−モホレシス効果の低
減とノズル出口におけるシ−ルドガス線速の増加との相
乗効果により、ノズル先端におけるガラス微粒子の付着
が効果的に防止されるので、密度の高い多孔質ガラス母
材を効率よく製造することができ、したがってこれを常
法により脱水、透明ガラス化すれば目的とする光ファイ
バ用母材を容易に安定して得ることができる。
【0015】
【実施例】つぎに本発明の実施例、比較例をあげる。 実施例 図1に示した同心5重管バ−ナ−を使用し、この中心ノ
ズル1からSiCl4 3リットル/分とキヤリアガスとして
の酸素ガス5リットル/分を、第2ノズル2からシ−ル
ド用ガスとしてのアルゴンガス1リットル/分をバ−ナ
−出口で150℃になるように加熱して噴出させ、第3
ノズル3から水素ガスを15〜35リットル/分、第4
ノズル4からシ−ルドガルとしてのアルゴンガスを2リ
ットル/分、第5ノズル5から酸素ガスを20リットル
/分でそれぞれ噴出させて酸水素火炎を形成させ、この
SiCl4 の火炎加水分解反応で発生したガラス微粒子を回
転している出発材としての合成石英ガラスロッドに堆積
して多孔質ガラス母材を作った。
【0016】ついで、この反応終了後、バ−ナ−先端部
におけるガラス微粒子の付着状況をくらべたところ、こ
れにはガラス微粒子の付着は全く認められなかったの
で、バ−ナ−の洗浄は行なわず、そのまま連続して同じ
条件で、多孔質ガラス母材を製造したところ、連続して
10本の多孔質ガラス母材を製造することができ、10
本製造後もこのバ−ナ−先端部にはガラス微粒子の付着
は全くなく、ここに得られた母材の平均密度は0.65g/cm
3 であった。
【0017】比較例1 実施例における第2ノズル2から供給されるアルゴンガ
スを加熱せず常温で供給したほかは実施例と同じ条件で
多孔質ガラス母材の製造を行ない、製造終了後にバ−ナ
−先端部を観察したところ、第2ノズル2の先端にガラ
ス微粒子の付着がみられたが、このバ−ナ−を洗浄せず
に同じ条件で連続して多孔質ガラス母材の製造を行なっ
たところ、8本目の途中でバ−ナ−先端が閉塞し製造不
可能となった。なお、ここに得られた7本目の多孔質ガ
ラス母材の平均密度は0.62g/cm3 であった。
【0018】比較例2 上記した比較例1における第2ノズル2からのアルゴン
ガス供給量を1.0 リットル/分から1.5 リットル/分と
したほかは比較例1と同じ条件で多孔質ガラス母材の製
造を行なったところ、この場合には連続して10本の多
孔質ガラス母材を製造することができたが、このバ−ナ
−にはガラス微粒子がかなり付着しており、得られた多
孔質ガラス母材の平均密度は0.51g/cm3 であった。
【0019】
【発明の効果】本発明は光ファイバ用母材の製造方法に
関するものであり、これは前記したように気体状ガラス
原料を多重管バ−ナ−に供給し、その火炎加水分解で生
成したガラス微粒子を出発材に堆積させて多孔質ガラス
母材を製造するに当り、バ−ナ−に供給する原料ガスと
酸素との混合ガスの噴出ノズルと水素ガス噴出ノズルと
の間に不活性ガスを流し、これを150℃以上に加熱す
ることを特徴とするものであるが、これによればサ−モ
ホレシス効果を小さくすることができ、バ−ナ−出口に
おけるガス線速度も高くなるので、バ−ナ−先端へのガ
ラス微粒子の付着を効果的に防止することができるし、
さらには多孔質ガラス母材の密度を下げることがないの
で水素ガスを無駄に使うことがなく、経済的にかつ安定
して光ファイバ用母材を製造することができるという有
利性が与えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に使用される同心多重管バ−ナ−の横断
面図を示したものである。
【図2】ガス体の加熱による体積膨張を示すガス温度と
体積増加比との関係グラスを示したものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 平沢 秀夫 群馬県安中市磯部2丁目13番1号 信越 化学工業株式会社 精密機能材料研究所 内 (72)発明者 神屋 和雄 群馬県安中市磯部2丁目13番1号 信越 化学工業株式会社 精密機能材料研究所 内 (56)参考文献 特開 平2−164737(JP,A) 特開 昭59−232934(JP,A) 特開 平2−275725(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C03B 37/018 C03B 8/04

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】気体状ガラス原料を多重管バ−ナ−から噴
    出させて、酸水素火炎中で酸化、加水分解させ、生成す
    るガラス微粒子を回転する出発材の先端または外周に堆
    積させて光ファイバ用母材を製造する方法において、前
    記バ−ナ−に供給するガラス原料ガスと酸素ガスの混合
    ガスの噴出ノズルと水素ガス噴出ノズルの間のノズルを
    流れる不活性ガスを150 ℃以上に加熱することを特徴と
    する光ファイバ用母材の製造方法。
  2. 【請求項2】前記不活性ガスがアルゴンガスである請求
    項1に記載の光ファイバ用母材の製造方法。
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