JP3158586B2 - H形状断面を有する部材の成形方法 - Google Patents

H形状断面を有する部材の成形方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、例えば“自動車用コ
ンロッドのビ−ム部”等の如き薄肉のH形状断面部を鍛
造によって成形する方法に関するものである。
【0002】
【従来技術とその課題】一般に、鍛造により金属部材の
一部にH形状断面部を形成するときには、図7に示す如
く、型面が平らな一対の側面工具1,1′を素材2の両
側面に配置した状態で一対の上下工具3,3′を接近さ
せ、この各上下工具による逆押出し(間接押出し)を行
う手法が採用されている。
【0003】しかし、成形部材のフランジ部厚み(図7
のtf )が薄い場合には、上記手法によると金型(工
具)にかかる面圧が非常に高くなって金型寿命が極端に
短くなり、そのためこのような部材を鍛造によって成形
するのは不可能であるとされている。
【0004】例えば、自動車機関部の重要構成部材であ
るコンロッドは図8に示したように小端部,ビ−ム部及
び大端部から成っていて、強度と軽量化の観点からその
ビ−ム部の断面形状は図9に示す如くフランジ部とウェ
ブ部とから成るH形とされているが、高強度材料の開発
に伴ってビ−ム部は益々薄肉化する傾向にあり、鍛造の
みによる成形が叶わない状況となってきている。
【0005】このため、最近では、 a) フランジ部厚みやウェブ部厚み(前記図7のtw
が“金型にかかる面圧が極端に高くならない程度の厚目
の値”に止まる程度に鍛造成形し、その後機械切削によ
る加工を行い薄肉に仕上げる方法, b) 素材から全てを機械加工で仕上げる方法, によって対処しているのが現状であり、製造能率や材料
歩留の点で少なからぬ不利を余儀無くされていた。
【0006】ただ、他方で、高い面圧に耐え得る耐摩耗
性の優れた金型材料の開発等も行われてきたが(例えば
特開昭62−180033号公報には化学組成に工夫を
凝らした金型材料に係る提案が見られる)、金型材料を
改良したとしても薄肉材の成形には高い加工荷重を必要
とすることから設備の大型化が必要であり、そのため工
業的に必ずしも有利な手立てとは言えなかった。
【0007】もっとも、成形時の荷重低減という観点か
ら、鍛造成形の途中で加工を一旦中断し、半製品の中央
部に穴を明けることで材料流れの円滑化を図って(穴部
の方向にも材料の流れが生じるようになる)から加工を
続行しようとの提案(特公昭62−33015号)もな
されたが、この方法を適用できるのは歯車等のような中
央部に穴を有した製品の製造に限られるものであった。
【0008】このようなことから、本発明が目的とした
のは、鍛造による薄肉部材の製造時に問題となる成形荷
重,金型面圧の上昇を抑え、従来は金型寿命(金型面圧
が金型寿命を決定する大きな要素の1つとなる)の関係
等で鍛造による加工が不可能であった薄肉のH形状断面
を有する部材の成形を可能ならしめる鍛造手段を確立す
ることであった。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達
成すべく鋭意重ねられた本発明者による研究の結果等を
基に完成されたものであり、「鍛造によって“H形状断
面部を有する部材”の該H形状断面部を成形するに際
し、 図1で示したように、 第一工程にて、 素材2の両側
に一対の“中央に突出するR部(丸み部)から傾斜平面
が上下方向へ後退して続く型面を対向させた断面山形の
側面工具”4, 4′を配置した状態で一対の上下工具5,
5′を接近させ素材の逆押出しを行ってH断面ウェブ部
と半成形フランジ部を形成し、 続く第二工程では、 断面
山形の側面工具4, 4′に替えて型面が平らな一対の側面
工具6, 6′を用いると共に前記上下工具5, 5′の位置を
固定した状態で半成形品を両側より押圧することで、 加
工終了までの間は半成形フランジ外側面中央部に若干の
凹み7, 7′を残しつつ該半成形フランジ部の圧縮・曲げ
成形を行うことにより、 低い成形荷重,金型面圧の下で
H形状断面を有する部材の鍛造成形を可能ならしめた
点」に大きな特徴を有している。
【0010】
【作用】即ち、本発明に従うと、自動車用コンロッドの
ような“H形状断面部を有する部材”のH形状断面部を
成形する際に成形工程を二工程に分け、まず第一工程目
では、前記図7で示した従来法とは異なり、側面工具と
して図1に示した如き作用面に適当な傾斜角度α及び先
端丸み半径Rを付けた工具4, 4′を用いる。そして、加
工素材2を間に置いてこれらを所定間隔で対向させ固定
する。
【0011】続いて、この状態で従来法におけると同じ
一対の上下工具5, 5′を互いに接近させ、素材の逆押出
し(間接押出し)を行ってH形状断面に至る前の半製品
を成形する(図1の中央に示す工程)。ここで、この半
製品は、ウェブ部は最終製品の寸法にまで仕上げられて
いるが、フランジ部は側面工具4, 4′の作用面に沿って
外方へ開いた形状を成し、厚みも製品厚より厚くされ
る。この半成形フランジ部の厚みは、図2で示す側面工
具先端位置Lによって調節される。
【0012】このように、素材の逆押出しを行う第一工
程では、コンテナに相当する側面工具4, 4′の作用面が
山形状となっている上、半成形フランジ部の肉厚を厚目
に設定できるので材料の流れが非常に円滑であり、材料
流れによって半成形フランジ部が形成される際の工具に
加わる面圧は非常に小さい。
【0013】次に第二工程(図1の右端に示す工程)が
始まる。第二工程は、上下工具5, 5′を第一工程の最終
位置に固定した状態のまま、山形作用面を有した側面工
具4, 4′に替えて使用される作用面(型面)の平らな側
面工具6, 6′で半成形フランジ部を両側から押圧し、半
成形フランジ部の曲げと減肉とを行ってH形の断面形状
・寸法を最終製品のそれに整える工程である。
【0014】なお、作用面の平らな側面工具6, 6′によ
る上記半成形フランジ部の押圧・圧縮成形は、成形が終
了するまで半成形フランジ外側面中央部(山形作用面を
有した側面工具4, 4′の先端丸みR部が当接した部位)
に若干の凹み7, 7′が残る状態で実施される(この凹み
の深さは基本的には前述した山形作用面を有する側面工
具先端位置Lにより決定される)。
【0015】これにより、材料の流動は従来法のように
フランジ端部方向のみ(図3参照)とはならず、図4に
示したようにフランジ端部方向及びフランジ外側中央部
方向(前述した凹みの方向)の両方向に起こり、従って
この第二工程でも材料流動が容易かつ円滑となるため、
金型(工具)寿命に大きな影響を及ぼすところの“金型
にかかる面圧”を極力小さくすることが可能となる。
【0016】次いで、本発明を実施例により説明する。
【実施例】図1で示す本発明工程に従ってH形状断面部
を成形する際の“金型(工具)に加わる面圧”を調査
し、従来法(図7で示した方法)でのそれと比較した。
【0017】ここで、図1に示す工程において実際上問
題となる最大面圧は“作用面の平らな側面工具を使用す
る第二工程”で加わるため、この実施例では第二工程に
おける面圧を調査対象とした。
【0018】なお、金型にかかる面圧を実験的に調べる
のは困難であるため、表1に示す如く、変化させる値に
“側面工具傾斜角度α", "側面工具先端半径R”及び
“側面工具先端位置L”をとり(本発明例にあっては何
れも第一工程での値)、変形・温度連成解析可能な剛塑
性有限要素法を用いてシミュレ−ションを行った。
【0019】
【0020】その際の計算条件を表2に示す。なお、表
2に示した変形抵抗はS35C相当の鋼を想定して定め
た。また、加圧速度は液圧プレスを想定して定めた値で
ある。更に、摩擦係数はク−ロン摩擦によるものであ
る。
【0021】
【表2】
【0022】このような条件を設定して行ったシミュレ
−ションによる計算結果を整理し、図5に示した。図5
に示される結果からも明らかなように、従来例では面圧
が100kgf/mm2を超えているのに対し、本発明例で
は、第一工程の側面工具先端半径Rが小さすぎる場合に
は半製品フランジ外側面に生じる凹みが鋭くなり、これ
を無くするため第二工程での側面工具に加わる面圧を大
きくせざるを得ないが、側面工具先端半径Rを適正に選
びさえすれば、最大面圧は88kgf/mm2 と従来例に比し
てほぼ13%も低減されることが分かる。
【0023】更に、上記シミュレ−ションとは別に、成
形容易な素材を用いて平面歪を仮定した本発明に係わる
成形実験も行い、従来法に係わるそれと比較した。な
お、この実験において、成形容易な素材としては鉛を用
い、試験装置として図6で示した如き“スプリング8に
より上下均一圧縮可能な金型”を使用した。ここで、本
発明に従った金型装置は、第一工程目では側面工具9,
9′が、そして第二工程目では上下工具10,10′がそれ
ぞれコンテナとなるような構造とされたものであった。
【0024】そして、この場合でも、金型にかかる面圧
を実験的に求めるのは困難なため荷重を測定することで
それを推定した。この実験結果を表3に示す。
【0025】
【0026】表3に示される結果からも、成形荷重は、
従来法によると4.71トンであったものが本発明法に従っ
た場合には3.88トンへと17%も減少することが分か
る。
【0027】なお、以上の説明は熱間の鋼を想定したも
のであったが、本発明法では加工時の温度は特に問うも
のではなく、また材料についても格別に限定されること
なくて全ての塑性加工材料に適用でき、更にはH形状断
面を持つ如何なる製品の製造に対しても応用できること
は言うまでもない。勿論、素材の形状,金型(工具)の
形状は任意に選ぶことができる。
【0028】
【効果の総括】上述のように、この発明によれば、成形
中における材料の流動を2方向と成して円滑化できるた
め、金型(工具)にかかる面圧を非常に小さくして高い
金型寿命の下で“H形状断面部を有する部材”のH形状
断面部を鍛造成形することができ、薄肉のH断面形状を
持つ部材でも低コストで安定に量産することが可能とな
るなど、産業上有用な効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる成形工程の説明図である。
【図2】本発明に係わる成形工程の内の第一工程目の側
面工具位置説明図である。
【図3】従来法における材料流動の説明図である。
【図4】本発明に係わる成形工程の内の第一工程目での
材料流動の説明図である。
【図5】第一工程で使用する側面工具の先端丸み部Rの
半径と第一工程目で加わる金型(工具)最大面圧との関
係を、従来法での金型最大面圧レベルと比較して示した
グラフである。
【図6】素材として鉛を用いた実験で使用した金型装置
の概要説明図である。
【図7】従来成形工程の説明図である。
【図8】自動車用コンロッドの形状説明図である。
【図9】自動車用コンロッドのビ−ム部における断面形
状の説明図である。
【符号の説明】
1 側面工具 1′側面工具 2 素材 3 上工具 3′下工具 4 側面工具 4′側面工具 5 上工具 5′下工具 6 側面工具 6′側面工具 7 凹み 7′凹み 8 スプリング 9 側面工具 9′側面工具 10 上工具 10′下工具
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B21J 1/00 - 13/14 B21J 17/00 - 19/04 B21K 1/00 - 31/00

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鍛造によって“H形状断面部を有する部
    材”の該H形状断面部を成形するに際し、第一工程に
    て、素材の両側に一対の“中央に突出するR部から傾斜
    平面が上下方向へ後退して続く型面を対向させた断面山
    形の側面工具”を配置した状態で一対の上下工具を接近
    させ素材の逆押出しを行ってH断面ウェブ部と半成形フ
    ランジ部を形成し、続く第二工程では、断面山形の側面
    工具に替えて型面が平らな一対の側面工具を用いると共
    に前記上下工具の位置を固定した状態で半成形品を両側
    より押圧することで、加工終了までの間は半成形フラン
    ジ外側面中央部に若干の凹みを残しつつ該半成形フラン
    ジ部の圧縮・曲げ成形を行うことを特徴とする、H形状
    断面を有する部材の成形方法。
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