JP3158494U - 携帯通信端末 - Google Patents

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豊 平田
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Abstract

【課題】車両の運転者が眠気を自覚する前の予兆を検出する実用条件範囲の広い携帯通信端末を提供する。【解決手段】携帯通信端末10は、車両運動検出部11により頭部運動を代表する車両運動を検出し、眼球運動検出部12により眼球運動を検出し、理想眼球運動角速度算出部13により車両運動検出部11により検出された頭部運動データに基づいて理想眼球運動角速度を算出する。さらに、眼球回転角速度算出部14により眼球運動検出部12により検出された眼球運動データに基づいて眼球回転角速度を算出し、眠気予兆判定部15により理想眼球運動角速度と眼球回転角速度とから前庭動眼反射を検出し、この前庭動眼反射に基づいて、車両の運転者が眠気を自覚する前の眠気の予兆を判定する。そして、眠気予兆判定部15が眠気の予兆を検出した場合に、警告音発生部16により警告音を発生させる。【選択図】図1

Description

本考案は、頭部運動により誘発される前庭動眼反射を利用して、車両の運転者が眠気を自覚する前の予兆を検出することが可能な携帯通信端末に関する。
車両の運転者の覚醒度低下、つまり、眠気に起因する事故防止策として、覚醒度を他覚的に検知することが有効である。従来、車両の運転者の眠気を検知する眠気検知装置として、眠気に起因する脳波、瞬目、眼球運動等の生体信号を指標とし、眠気を検知するものが提案されている。例えば、特許文献1には、覚醒時の運転者に固有な瞬き時の閉じ時間から設定される瞬きの評価時間に基づいて、評価時間より閉じ時間が長い瞬きを検出し、所定時間における瞬き総数に対する長い瞬きの比率から眠気を検知する眠気検知装置が開示されている。
特開平10−272960号公報
他覚的に覚醒度を検知する際に、一旦低下した覚醒度を高めるよりも覚醒度低下の予兆を捉え適切な処置により覚醒度の低下を未然に防ぐことが事故防止策として有効とされている。しかし、上述した技術では、低下した覚醒度、つまり眠気の検出は可能であるが、覚醒度低下の予兆を検出することはできないという問題があった。一方、眠気の予兆検出の可能性を示唆するものとして、車両の運転者の瞳孔のゆらぎに着目した覚醒度低下検知法が提案されている。被験者が眠気を自覚している際は、瞳孔に低周波の大きなゆらぎ(Large Low Frequency Fluctuation:LLFF)が生じ、
眠気の自覚前には、単調な縮瞳(Gradual Miosis:GM)が生じることから、LLFFが自覚にのぼる眠気、GMが自覚前の眠気予兆を示す指標となりえることが示唆されている。しかし、瞳孔は外界の輝度変化や注視点までの距離に応じてその大きさが変化することから、夜間対向車のない直線道路では有効に機能するものと考えられるが、昼間の走行や対向車の多い夜間の運転状況では、信頼性の高い眠気検出ができないおそれがある。
また、演算負荷が大きく、瞳孔を撮像する装置も必要であることなどから、高価な専用装置が必要であるという問題があった。
そこで、本考案は、携帯通信端末が有する機能を利用し、車両の運転者が眠気を自覚する前の予兆を簡便に検出することができる携帯通信端末を実現することを目的とする。
この考案は、上記目的を達成するため、請求項1に記載の考案では、車両の運動を検出する車両運動検出部と、車両の運転手の眼球運動を検出する眼球運動検出部と、前記眼球運動検出部及び車両運動検出部により取得されるデータに基づいて車両の運転者の眠気の予兆を検出する眠気予兆判定部と、前記眠気予兆判定部が眠気の予兆を検出した場合に、警告音を発生させる警告音発生部と、を備えた携帯通信端末であって、前記眠気予兆判定部において、前記車両運動検出部により測定された車両運動データに基づいて車両の運転者の理想眼球運動角速度を算出し、前記眼球運動検出部により撮像された車両の運転者の眼球映像に基づいて眼球運動を検出し、検出された眼球運動データに基づいて眼球回転角速度を算出し、前記理想眼球運動角速度と前記眼球回転角速度とから前庭動眼反射(VOR)を検出し、この前庭動眼反射に基づいて眠気の予兆を判定する、という技術的手段を用いる。
車両の運転者の覚醒度低下に起因する事故防止策として、覚醒度を他覚的に検知することが重要とされている。出願人は、ヒトの眠気を検出するための他覚的指標として、頭部運動に対してほぼ同じ速さで眼球を逆方向に回転させ、ブレのない視界を得るための反射性眼球運動である前庭動眼反射(Vestibulo−Ocular Reflex:VOR)に着目し、実験によりその有効性を確認した。請求項1に記載の考案によれば、携帯通信端末が備えた眠気予兆判定部において、車両運動検出部により測定された車両運動データに基づいて車両の運転者の理想眼球運動角速度を算出する。ここで、運転者の体には車両に作用する直線加速度及び回転角速度に応じた直線加速度及び回転角速度が作用するため、車両運動検出部により検出された車両運動データを運転者の頭部に生じる頭部運動データを代表するデータとして用いて車両の運転者の理想眼球運動角速度を算出することができる。そして、眼球運動検出部により撮像された車両の運転者の眼球映像に基づいて眼球運動を検出し、検出された眼球運動データに基づいて眼球回転角速度を算出し、理想眼球運動角速度と前記眼球回転角速度とから前庭動眼反射(VOR)を検出し、この前庭動眼反射に基づいて、車両の運転者が眠気を自覚する前の眠気の予兆を判定することができる。そして、眠気予兆判定部が眠気の予兆を検出した場合に、警告音発生部により警告音を発生させることができるため、運転者に今後眠気が発生することを自覚させることができるので、運転者は覚醒度の回復や休憩のきっかけとすることができる。つまり、運転者の覚醒度低下の予兆を捉え、覚醒度の低下を未然に防ぐことできる。
前庭動眼反射は、周囲の明るさなどの外部環境の影響を受けにくいので、実用条件範囲を広くすることができる。また、演算負荷が小さいため、リアルタイム測定及び判定が可能であり、携帯通信端末に一般的に搭載されているCPUで実用的な速度で処理可能である。
請求項2に記載の考案では、請求項1に記載の携帯通信端末において、前記眠気予兆判定部は、前記眼球回転角速度を前記理想眼球運動角速度の一次式である下式で近似した際のGで定義されるVORゲインとそのVORゲインの減少率とを算出し、前記VORゲインの減少率があらかじめ設定された閾値を超えた場合に、眠気の予兆と判定する、という技術的手段を用いる。
e(t) = G h(t-τ) + dc +ε(t)
e(t):眼球回転角速度、G:VORゲイン、h(t):理想眼球運動角速度、τ:頭部運動に対する眼球運動の遅れ時間、dc:定数項、ε(t):回帰モデルの残差
VORゲインの減少は、眠気を自覚する前から生じるため、眠気の予兆を示す指標として有効である。請求項2に記載の考案のように、眠気予兆判定部は、VORゲインの減少率があらかじめ設定された閾値を超えた場合に、眠気の予兆と判定するため、眠気予兆の判定に好適に用いることができる。
請求項3に記載の考案では、請求項1または請求項2に記載の携帯通信端末において、前記眠気予兆判定部は、前記眼球回転角速度を前記理想眼球運動角速度の一次式である下式で近似した際のε(t)で定義される近似残差と残差標準偏差とを算出し、前記残差標準偏差の増加率があらかじめ設定された閾値を超えた場合に、眠気の予兆と判定する、という技術的手段を用いる。
e(t) = G h(t-τ) + dc +ε(t)
e(t):眼球回転角速度、G:VORゲイン、h(t):理想眼球運動角速度、τ:頭部運動に対する眼球運動の遅れ時間、dc:定数項、ε(t):回帰モデルの残差
残差標準偏差の増大は、眠気を自覚する前から生じるため、眠気の予兆を示す指標として有効である。請求項3に記載の考案のように、眠気予兆判定部は、残差標準偏差の増加率があらかじめ設定された閾値を超えた場合に、眠気の予兆と判定するため、眠気予兆の判定に好適に用いることができる。特に、請求項2に記載の考案と併用すると、眠気予兆の判定精度を向上させることができる。
携帯通信端末の構成図である。 眠気予兆検出方法を示すフロー図である。 自動車運転時を模擬した実験システムの概略図である。 試験結果を示す説明図である。図4(a)は、典型的な被験者の覚醒時(暗算課題中)の理想眼球運動角速度と眼球回転角速度を重ねてプロットしたものである。図4(b)は、図4(a)のデータを縦軸に眼球回転角速度、横軸に理想眼球運動角速度をとってプロットしたものである。図4(c)、(d)は、被験者が眠気を感じた区間における試験結果であり、図4(c)は図4(a)に、図4(d)は図4(b)にそれぞれ対応している。 VORゲイン及びSDresを、瞳孔径変化と比較した説明図である。 VORゲイン減少率ΔVOR(t)及びSDresの増加率ΔSDres(t)と眠気の予兆との関係を示す説明図である。図6(a)は、6つの実験データにおけるVORゲイン減少率ΔVOR(t)及びSDresの増加率ΔSDres(t)をそれぞれ縦軸, 横軸にとってプロットしたものである。図6(b)は、暗算課題終了後から眠気を知覚するまでのΔVOR(t)およびΔSDres(t)をプロットしたものである。
本考案における携帯通信端末について、図を参照して説明する。携帯通信端末10は、運転者の眼球映像を撮像可能な位置、例えば、インストゥルメンタル・パネル近傍などに配置される。
携帯通信端末10は、例えば、携帯電話に代表されるものである。図1に示すように、携帯通信端末10は、車両の運動を検出する車両運動検出部11と、車両の運転手の眼球運動を検出する眼球運動検出部12と、車両運動検出部11及び眼球運動検出部12により取得されるデータに基づいて車両の運転者の眠気の予兆を検出する眠気予兆判定部15と、眠気予兆判定部15が眠気の予兆を検出した場合に、警告音を発生させる警告音発生部16と、を備えている。
これら、車両運動検出部11、眼球運動検出部12、眠気予兆判定部15、警告音発生部16の各部は、図示しないCPU(中央処理装置)、ROM(リードオンリーメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)を含む記憶部などに接続されている。各部を制御するプログラムは、眠気予兆判定部15などに設けられた記憶領域、または、ROMに格納される。
眠気予兆判定部15は、車両運動検出部11により検出された車両運動データに基づいて理想眼球運動角速度を算出する理想眼球運動角速度算出部13と、眼球運動検出部12により検出された眼球運動データに基づいて眼球回転角速度を算出する眼球回転角速度算出部14と、を備えている。
車両運動検出部11は、車両に作用する直線加速度及び回転角速度を検出するものであり、携帯通信端末10が内蔵している3軸加速度センサや回転角速度を検出するジャイロスコープを用い、運転者の進行方向、上下方向、左右方向に対する直線加速度と、運転者のローリング、ピッチング、ヨーイングの各方向に対する回転角速度とを検出可能に構成することができる。運転者の体には車両に作用する直線加速度及び回転角速度に応じた直線加速度及び回転角速度が作用するため、車両運動検出部11により検出された直線加速度及び回転角速度を運転者の頭部に生じる直線加速度及び回転角速度を代表する値として用いることができる。これにより、頭部運動をそれぞれ検出し、加速度データ及び回転角速度データを理想眼球運動角速度算出部13に送出する。
眼球運動検出部12は、眼球映像を撮影するものであり、携帯通信端末10に普及しているビデオカメラなどの内蔵カメラを好適に用いることができる。
理想眼球運動角速度算出部13は、車両運動検出部11により検出された車両運動データに基づいて頭部運動を補償するための理想的な眼球運動の角速度である理想眼球運動角速度を算出する。
眼球回転角速度算出部14は、眼球運動検出部12により検出された眼球運動データに基づいて眼球回転角速度を算出する。
眠気予兆判定部15は、理想眼球運動角速度と眼球回転角速度とから前庭動眼反射(Vestibulo−Ocular Reflex:VOR)に関するパラメータとして、後述するVORゲインGと残差標準偏差SDresとを算出し、少なくとも一方のパラメータに基づいて眠気の予兆を判定する。
警告音発生部16は、眠気予兆判定部15が眠気の予兆を検出した場合に、警告音を発生させる。警告音は、ROMなどに保存されている呼出音や音楽などから選択することができる。警告音発生部16として、例えば、携帯通信端末10が備えたスピーカーを用いることができる。
次に、眠気予兆検出方法を説明する。まず、携帯通信端末10の操作ボタンやアイコンなどを操作して眠気予兆検出プログラムを起動し、ビデオカメラなどの眼球運動検出部12により、運転者の眼球が撮像されていることをディスプレイで確認し、インストゥルメンタル・パネル近傍など所定の位置に配置する。
図2に示すように、ステップS1では、車両運動検出部11により車両に作用する直線加速度及び回転角速度を検出し、直線加速度データ及び回転角速度データを理想眼球運動角速度算出部13に送出する。ここでは、上下方向の直線加速度データとピッチング方向に対する回転角速度を用いることとするが、他の成分を用いることもできる。
次に、ステップS2では、理想眼球運動角速度算出部13により、ステップS1において検出された車両運動に基づいて理想眼球運動角速度を算出し、理想眼球運動角速度データを眠気予兆判定部15に送出する。
ステップS3では、眼球運動検出部12により、眼球運動を撮影し、瞳孔中心座標の移動量を計測し、運転者のローリング、ピッチング、ヨーイングの各方向に対する眼球運動データを眼球回転角速度算出部14に送出する。
ステップS4では、眼球回転角速度算出部14により、ステップS3において撮影された眼球運動データに基づいて眼球回転角速度を算出し、眼球回転角速度データを眠気予兆判定部15に送出する。
ステップS5では、眠気予兆判定部15により、理想眼球運動角速度データと眼球回転角速度データとに基づいて、前庭動眼反射に関するパラメータとして、以下に示すVORゲインGと残差標準偏差SDresとを求める。ここで、前庭動眼反射(VOR)とは、頭部運動に対してほぼ同じ速さで眼球を逆方向に回転させ、ブレのない視界を得るための反射性眼球運動である。
VORゲインは、目的変数を眼球回転角速度e(t)、説明変数を理想眼球運動角速度h(t)と定数項dcとする回帰モデルの係数Gとして最小二乗推定して求める。ここで、ε(t)は回帰モデルの残差であり、τは理想眼球運動に対する眼球運動の遅れ時間である。ここで、VORゲインは、運転者の進行方向、上下方向、左右方向の少なくとも1つの方向について算出すればよい。
(数1)
e(t) = G h(t-τ) + dc +ε(t)
残差標準偏差SDresは次式により算出する。ここで、Nは計測されるデータの点数である。
Figure 0003158494
VORゲインの減少及び残差標準偏差の増加は、眠気を自覚する前から生じるため、眠気の予兆を示す指標として有効である。そこで、ステップS6では、VORゲインの増加及び残差標準偏差の増加を定量化するために、眠気予兆判定部15により、下記の指標を算出する。つまり、VORゲイン及び残差標準偏差SDresは個人差により初期値や変化量が異なるため、それぞれ高覚醒状態の平均値を求め、平均値に対する変化率を算出する。ある時刻におけるVORゲイン減少率ΔVOR(t)及びSDresの増加率ΔSDres(t)をそれぞれ下記のように定義し、算出する。
Figure 0003158494
Figure 0003158494
ステップS7では、眠気予兆判定部15により、ステップS6で求めたVORゲイン減少率ΔVOR(t)及びSDresの増加率ΔSDres(t)をそれぞれあらかじめ設定してある閾値th1、th2と比較する。VORゲイン減少率ΔVOR(t)及びSDresの増加率ΔSDres(t)がともに閾値を超えている場合(S7:YES)には、眠気の予兆が検出されたと判定し、続くステップS8に処理を移行する。VORゲイン減少率ΔVOR(t)及びSDresの増加率ΔSDres(t)の少なくとも一方が閾値以下の場合(S7:NO)には、眠気の予兆は検出されないと判定し、一連の処理を終了する。
ステップS8では、眠気予兆判定部15により、警告音発生部16に眠気予兆検出信号を出力し、警告音発生部16により警告音を発生し、一連の処理を終了する。
以上のように、本考案の携帯通信端末10によれば、前庭動眼反射に基づいて、車両の運転者が眠気を自覚する前の眠気の予兆を判定することができる。前庭動眼反射は、周囲の明るさなどの外部環境の影響を受けにくいので、実用条件範囲を広くすることができる。また、演算負荷が小さいため、リアルタイム測定及び判定が可能である。また、警告音により運転者に今後眠気が発生することを自覚させることができるので、運転者は覚醒度の回復や休憩のきっかけとすることができる。
上述の眠気予兆検出方法において、ステップS1及びS2とステップS3及びS4との処理順序は任意である。
眠気予兆判定部15に設けられた記憶領域に、上記各ステップで測定、算出されたデータを保存しておくこともできる。これによれば、後に各データを解析することにより、例えば、運転者に眠気の予兆が生じる状況などを把握することができ、安全運転に寄与することができる。
(実施例)
本考案の携帯通信端末10において用いる眠気予兆判定方法の効果を実験的に検証した。図3に、自動車運転時を模擬した実験システムの概略図を示す。ドライビングシミュレータ(DS)システム21は、DS映像を投影するプロジェクターとスクリーン、ステアリング、アクセル、ブレーキを備えたドライバーシートから構成される。ドライバーシートは、被験者の頭部とスクリーンの中心が正対する位置に設置した。被験者頭部前面−スクリーン間距離は2470mm、スクリーンサイズは100inch(左右視野角±39.1deg、上下視野角±26.3deg)である。ドライバーシート下部には前庭動眼反射を誘発するための振動装置22を設置した。被験者の瞳孔径が瞳孔可動範囲のほぼ中間径(直径6mm程度)となるように、プロジェクターの輝度ならびにコントラストを調節した。
眼球映像は、携帯通信端末10の眼球運動検出部12に相当する眼球回旋撮影装置23により両眼球映像を29.97fpsで計測した。頭部運動は図示しない3軸加速度センサとジャイロスコープ3台とを眼球回旋撮影装置23上に取り付け、
それぞれ3軸方向の直線加速度及び回転角速度を計測した。頭部運動データは眼球映像と同期させ、サンプリング周波数1kHzでAD/DA変換装置24によりAD変換し, データ保存用PC25に収録した。更に、眼球映像及び頭部運動データは演算処理用PC26に分岐入力し、頭部運動、眼球運動および瞳孔径変化をリアルタイムで観測した。
ここで、3軸加速度センサ及びジャイロスコープが車両運動検出部11に、眼球回旋撮影装置23が眼球運動検出部12に、演算処理用PC26が、理想眼球運動角速度算出部13、眼球回転角速度算出部14及び眠気予兆判定部15にそれぞれ対応する。
被験者は、眼球回旋撮影装置23および加速度センサ、ジャイロスコープを装着後、ドライバーシートに自然な姿勢で着座し、次に説明する実験タスクが課された。
まず、計測開始から20秒間は静止中の眼球位置を計測するため、振動装置22を駆動させない状態で前方車両のナンバープレート上部を注視点とし、固視するよう指示した。次に、20秒経過後, 振動装置22を駆動させVORを誘発した。この間、被験者は注視点を固視し続け、走行車線から逸脱しないようステアリング操作を行った。また、振動装置を駆動してから3分間は、覚醒状態を維持させるため、単純な暗算課題を課した。3分経過後、験者の指示により暗算課題を止めさせ、DS操作と振動刺激は実験が終了するまで続けた。DS操作時間は暗算課題区間を含め15分間とし、実験後、暗算課題中とその後の単調走行中の眠気の有無に関する内省報告を被験者にさせた。
(データ解析)
理想眼球運動角速度h(t)は、頭部に生じる直線加速度及び回転角速度から算出することができる。本実施例では、直線加速度の寄与が小さかったため、頭部の回転角速度に基づいて算出した。理想眼球運動角速度h(t)は、デジタルバンドパスフィルタによりノイズを除去した後、眼球運動データとデータ点数をあわせるため、サンプリング周波数29.97Hzでリサンプリングして、演算処理用PC26により算出した。眼球運動角及び瞳孔径の抽出は、眼球回旋撮影装置23による眼球映像を演算処理用PC26により演算処理して算出した。眼球回転角速度e(t)は、眼球運動角を微分処理することにより求めた。なお、理想眼球運動角速度h(t)は、頭部に生じる直線加速度を考慮に入れて算出することもできる。
理想眼球運動角速度h(t)と眼球回転角速度e(t)とから、演算処理用PC26によりVORゲインと残差標準偏差(SDres)とを算出した。VORゲインならびに残差標準偏差(SDres)は,眼球運動データから急速相除去後も十分な推定精度が得られる40秒間のデータを1セグメントとし、30秒のオーバーラップを持たせながら、10秒毎に各セグメントにおける値を算出した。
(試験結果)
図4は、試験結果を示す説明図である。図4(a)は、典型的な被験者の覚醒時(暗算課題中)の理想眼球運動角速度と眼球回転角速度を重ねてプロットしたものである。頭部運動に対し,眼球運動がほぼ同じ速さで逆向に生じる通常のVORが誘発されていることが確認できる. 図4(b)は、図4(a)のデータを縦軸に眼球回転角速度、横軸に理想眼球運動角速度をとってプロットしたものであり,直線は式1の回帰直線を当てはめたものである。この例では、VORゲインは0.802、SDresは1.017であった。
被験者が眠気を感じた区間における試験結果を図4(c)、(d)に示す。図4(c)は図4(a)に、図4(d)は図4(b)にそれぞれ対応している。VORゲインは0.673、SDresは2.964であり、覚醒時と比較してVORゲインは減少、SDresは増加した。
図5は、VORゲイン及びSDresを、眠気ならびにその予兆検知指標としての有効性が確認されている瞳孔径変化と比較した説明図である。暗算課題停止後1分から約2分間にわたり、VORゲインは緩やかに減少し、SDresはそれとは逆に緩やかに増加している。更に、VORゲイン、SDresがそれぞれ減少、増加し始める区間における瞳孔径変化には、単調な縮瞳(Gradual Miosis:GM)が確認できる。このGM区間では、これまでの研究より被験者は未だ眠気を自覚していないことが示されている。即ち、この区間におけるVORゲインの減少やSDresの増加という特徴的な変化は眠気の予兆信号である。
単調縮瞳開始から約2分後、VORゲイン、SDresはそれぞれ更に減少、増加し、瞳孔径には低周波の大きなゆらぎ(Large Low Frequency Fluctuation:LLFF)が確認できる。LLFFは、被験者が自覚的な眠気を知覚している際に生じる現象であることが知られており、実験中盤から後半にかけて眠気を感じたと報告している被験者の内省報告とも一致する。即ち、VORゲインの減少、SDresの増加も眠気の予兆信号及び眠気の指標となる。
(眠気予兆判定方法)
上述の実験と同条件の実験タスクにおいて、2分ごとに眠気に関する内省を被験者に報告させ、VORゲイン、SDresの変化から眠気の予兆を判定した。判定には、式3及び式4で定義したVORゲイン減少率ΔVOR(t)及びSDresの増加率ΔSDres(t)を用いた。図6は、VORゲイン減少率ΔVOR(t)及びSDresの増加率ΔSDres(t)と眠気の予兆との関係を示す説明図であり、図6(a)は、6つの実験データにおけるVORゲイン減少率ΔVOR(t)及びSDresの増加率ΔSDres(t)をそれぞれ縦軸, 横軸にとってプロットしたものである。黒丸印は覚醒状態、×印は眠気有りとした区間のデータである。また、図中上部及び右部には各状態の分布を面積が1になるように重み付けを行いプロットした。ここで, 覚醒状態のデータ全てを含むように、ΔVOR(t)、ΔSDres(t)それぞれに閾値を設定し、2つの閾値以下のエリアをarousal area、閾値以上をsleepiness areaとした。図6(b)は、暗算課題終了後から眠気を知覚するまでのΔVOR(t)、ΔSDres(t)をプロットしたものである。図6(a)より眠気有りと報告したデータの内95%がsleepiness areaにプロットされ、眠気の有無を分離できていることが確認できる。図6(b)に示したそれぞれの分布からわかるように, ほとんどのデータはarousal area内に存在する一方、いくつかのデータはsleepiness areaにも及んでいる。
ここで、眠気を知覚していない状態において、sleepiness areaにプロットされ、かつそれが40秒以上継続して表れたものを眠気の予兆信号として定義した。30秒以内の継続の場合は, オーバーラップによる影響が含まれる可能性があるためである。その結果、5データ(83.3%)に眠気の予兆が認められた。眠気予兆が認められなかった1データもsleepiness areaにプロットされたが40秒以上継続して表れなかったため眠気予兆として認めなかった。
これにより、あらかじめ定義した被験者それぞれの高覚醒状態に対して, 被験者に依存しない閾値を設定することにより、殆どの被験者で容易に眠気予兆を検出できることが確認された。
[実施形態の効果]
(1)本考案の携帯通信端末10によれば、車両運動検出部11により頭部運動を代表する車両運動を検出し、眼球運動検出部12により眼球運動を検出し、理想眼球運動角速度算出部13により車両運動検出部11により検出された車両運動データに基づいて理想眼球運動角速度を算出し、眼球回転角速度算出部14により眼球運動検出部12により検出された眼球運動データに基づいて眼球回転角速度を算出し、眠気予兆判定部15により理想眼球運動角速度と眼球回転角速度とから前庭動眼反射(VOR)を検出し、この前庭動眼反射に基づいて、車両の運転者が眠気を自覚する前の眠気の予兆を判定することができる。そして、眠気予兆判定部15が眠気の予兆を検出した場合に、警告音発生部16により警告音を発生させることができるため、運転者に今後眠気が発生することを自覚させることができるので、運転者は覚醒度の回復や休憩のきっかけとすることができる。つまり、運転者の覚醒度低下の予兆を捉え、覚醒度の低下を未然に防ぐことできる。前庭動眼反射は、周囲の明るさなどの外部環境の影響を受けにくいので、実用条件範囲を広くすることができる。また、演算負荷が小さいため、リアルタイム測定及び判定が可能であり、携帯通信端末10に一般的に搭載されているCPUで実用的な速度で処理可能である。
(2)VORゲインの減少及び残差標準偏差の増大は、眠気を自覚する前から生じるため、眠気の予兆を示す指標として有効である。眠気予兆判定部15により、VORゲイン減少率ΔVOR(t)及びSDresの増加率ΔSDres(t)をそれぞれ算出し、それぞれあらかじめ設定してある閾値L1、L2と比較し、VORゲイン減少率ΔVOR(t)及びSDresの増加率ΔSDres(t)がともに閾値を超えている場合に、眠気の予兆が検出されたと判定することができる。これにより、殆どの被験者で容易に眠気予兆を検出できることが確認された。
[その他の実施形態]
ステップS7では、VORゲイン減少率ΔVOR(t)及びSDresの増加率ΔSDres(t)がともに閾値を超えているか否かを判断したが、簡易的には、どちらか一方だけ算出して、閾値を超えているか否かで眠気の予兆を判定してもよい。
10 携帯通信端末
11 車両運動検出部
12 眼球運動検出部
13 理想眼球運動角速度算出部
14 眼球回転角速度算出部
15 眠気予兆判定部
21 ドライビングシミュレータ(DS)システム
22 振動装置
23 眼球回旋撮影装置
26 演算処理用PC

Claims (3)

  1. 車両の運動を検出する車両運動検出部と、
    車両の運転手の眼球運動を検出する眼球運動検出部と、
    前記眼球運動検出部及び車両運動検出部により取得されるデータに基づいて車両の運転者の眠気の予兆を検出する眠気予兆判定部と、
    前記眠気予兆判定部が眠気の予兆を検出した場合に、警告音を発生させる警告音発生部と、
    を備えた携帯通信端末であって、
    前記眠気予兆判定部において、
    前記車両運動検出部により測定された車両運動データに基づいて車両の運転者の理想眼球運動角速度を算出し、
    前記眼球運動検出部により撮像された車両の運転者の眼球映像に基づいて眼球運動を検出し、
    検出された眼球運動データに基づいて眼球回転角速度を算出し、
    前記理想眼球運動角速度と前記眼球回転角速度とから前庭動眼反射(VOR)を検出し、この前庭動眼反射に基づいて眠気の予兆を判定することを特徴とする携帯通信端末。
  2. 前記眠気予兆判定部が、前記眼球回転角速度を前記理想眼球運動角速度の一次式である下式で近似した際のGで定義されるVORゲインとそのVORゲインの減少率とを算出し、前記VORゲインの減少率があらかじめ設定された閾値を超えた場合に、眠気の予兆と判定することを特徴とする請求項1に記載の携帯通信端末。
    e(t) = G h(t-τ) + dc +ε(t)
    e(t):眼球回転角速度、G:VORゲイン、h(t):理想眼球運動角速度、τ:頭部運動に対する眼球運動の遅れ時間、dc:定数項、ε(t):回帰モデルの残差
  3. 前記眠気予兆判定部が、前記眼球回転角速度を前記理想眼球運動角速度の一次式である下式で近似した際のε(t)で定義される近似残差と残差標準偏差とを算出し、前記残差標準偏差の増加率があらかじめ設定された閾値を超えた場合に、眠気の予兆と判定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の携帯通信端末。
    e(t) = G h(t-τ) + dc +ε(t)
    e(t):眼球回転角速度、G:VORゲイン、h(t):理想眼球運動角速度、τ:頭部運動に対する眼球運動の遅れ時間、dc:定数項、ε(t):回帰モデルの残差
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2014168506A (ja) * 2013-03-01 2014-09-18 Tokyo Metropolitan Univ 人の状態推定装置およびそれを備えた輸送機器

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