JP3157619B2 - ティシュ・インヒビター・オブ・メタロプロテイナーゼ−2含有組織培養用無血清培地と細胞増殖方法 - Google Patents

ティシュ・インヒビター・オブ・メタロプロテイナーゼ−2含有組織培養用無血清培地と細胞増殖方法

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JP3157619B2 JP26264792A JP26264792A JP3157619B2 JP 3157619 B2 JP3157619 B2 JP 3157619B2 JP 26264792 A JP26264792 A JP 26264792A JP 26264792 A JP26264792 A JP 26264792A JP 3157619 B2 JP3157619 B2 JP 3157619B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】本発明は、ティシュ・インヒビター・オブ
・メタロプロテイナーゼ−2(以下、TIMP−2と記
す)を含有せしめた接着性細胞および浮遊細胞培養用の
無血清培地に関するものであり、また、この培地を用い
て接着性細胞および浮遊細胞を短期間に増殖させる方法
に関するものである。
【0002】さらに詳しくは、本発明は、10−15%
ウシ胎児血清(FCS)を含有せしめた組織培養用培地
に代えて有効に用い得るTIMP−2含有組織培養用無
血清培地に関するものであり、また、この無血清培地を
用いて、哺乳類から分離、樹立した接着性細胞あるい
は、非接着性細胞あるいはヒト型あるいはマウス型の融
合細胞等の浮遊細胞その他を培養する方法に関するもの
である。
【0003】
【背景技術】ティシュ・インヒビター・オブ・メタロプ
ロテイナーゼ(TIMP)はヒトおよびその他の動物の
培養細胞(繊維芽細胞、腫瘍細胞、軟骨細胞、平骨筋細
胞、内皮細胞など)や血小板、単球、マクロファージ、
歯髄などが産生する分子量約30kDaの糖蛋白質であ
る。従来、TIMPは間質コラゲナーゼ活性を阻害する
ことからコラゲナーゼ・インヒビターと呼ばれていた
が、間質コラゲナーゼ以外に種々のメタロプロテイナー
ゼ(72kDaゼラチナーゼ、92kDaゼラチナー
ゼ、ストロムライシン−1)を阻害することが明らかに
なり、TIMP(ティシュ・インヒビター・オブ・メタ
ロプロテイナーゼ)と改名された。(Docherty
ら、Ann.Rheum.Dis.,49,469〜4
79、1990: Cawston in“Prote
inase Inhibitors”、ed.by B
arrettら、Elsevir、Amsterda
m,1986,p589.参照)。
【0004】最近、上述のTIMPとは分子量の異なる
ティシュ・インヒビター・オブ・メタロプロテイナーゼ
−2(TIMP−2,約21kDa)と呼ばれるメタロ
プロテイナーゼ・インヒビターが発見された(Stet
ler−Stevensonら、J.Biol.Che
m.,246,17374〜17378、1989;G
oldbergら、Proc.Natl.Acad.S
ci.USA,86,8207〜8211、1989;
Williamsonら、Biochem.J.,26
8,267〜274、1990参照)。
【0005】TIMP−2と従来のTIMPとの違い
は、分子量の他に、Con−A−セファロースカラムに
結合しないということにより区別される。ヒトTIMP
−2はcDNAクローニングによりその一次構造が明ら
かにされている(Booneら、Proc.Natl.
Acad.Sci.USA,87,2800〜280
4、1990参照)。それによると、ヒトTIMP−2
は、194個のアミノ酸残基からなり、ヒトTIMPと
38%の相同性を有している。
【0006】また、ヒトTIMP−2は、ヒトTIMP
と同じ12個のシステイン残基を持ち、その位置もよく
保存されている。
【0007】一方、TIMPはプロ92kDaゼラチナ
ーゼおよびその活性型ゼラチナーゼと複合体を形成し、
また、TIMP−2はプロ72kDaゼラチナーゼと複
合体を形成していることが認められている。(Wilh
e1mら、J.Biol.Chem.,264,172
13〜17221、1989;Wardら、Bioch
em.J.,278,179〜187、1991参
照)。
【0008】TIMP−2はヒトおよびその他の動物の
培養細胞(ヘパトーマ細胞、気管支上皮細胞、線維芽細
胞、黒色腫細胞、骨肉腫細胞、大動脈内皮細胞、神経鞘
腫細胞、直腸癌細胞、リウマチ滑膜細胞など)や胎盤、
羊水、血液、軟骨、関節液などで合成、分泌され、TI
MPと同様に細胞外マトリックスメタロプロテイナーゼ
の共通のインヒビターとして生物活性を有している。本
発明者らは、先にヒトTIMPが広範囲の細胞に増殖活
性を示すことを明らかにしたが(Hayakawaら、
FEBS Lett.,298,29〜32,199
2)、このたび、ヒトT1MP−2に対するマウスモノ
クローナル抗体の作製に成功し、それらの抗体の組合せ
によるサンドイッチ酵素免疫測定法(EIA)によりヒ
トおよびウシ組織体液および血液中のTIMP−2濃度
を高感度で測定することに成功した。
【0009】従来、組織培養用培地にウシ胎児血清(F
CS)を添加すると細胞増殖が促進されることはよく知
られている。先に本発明者らは、ヒトTIMPを組織培
養用無血清培地に添加すると細胞増殖が促進されること
を明らかにした(特願平4−188528号)が、それ
以外にこれまでに、細胞増殖を促進する因子について
は、何ら報告されていない。
【0010】本発明者らは、上記のヒトTIMP−2に
対するモノクローナル抗体を用いたアフィニティカラム
でヒト胎盤からTIMP−2を分離、精製したものを組
織培養用無血清培地に添加し、ヒト歯肉線維芽細胞、パ
ーキットリンパ細胞およびヒト慢性赤血球性白血病細胞
を培養したところ、TIMP−2濃度10ng/mlで
最大細胞増殖効果が認められた。また、マウス由来ハイ
ブリドーマやマウス由来コロン26細胞の増殖用培地に
ヒトTIMP−2(10ng/ml)を添加したところ
細胞増殖効果が認められた。上記2種のマウス由来細胞
にヒトTIMPを添加しても増殖効果は認められなかっ
た。
【0011】これらの知見に基づき、本発明者らは、細
胞培養に対するTIMP−2の成長因子としての効果を
確認し、TIMP−2を無血清培地中に添加して用いる
ことによって、接着性細胞および浮遊細胞を培養するた
めの極めて優れた無血清培地を提供することに成功し
た。
【0012】
【発明の開示】本発明はティシュ・インヒビター・オブ
・メタロプロテイナーゼ−2を含有せしめたことを特徴
とする組織培養用無血清培地を提供するものであり、さ
らにティシュ・インヒビター・オブ・メタロプロテイナ
ーゼ−2を細胞増殖因子として用いて、動物組織細胞あ
るいは動物由来の融合細胞をティシュ・インヒビター・
オブ・メタロプロテイナーゼ−2含有組織培養用無血清
培地中で増殖させる方法を提供するものである。本発明
の組織培養用培地に添加するTIMP−2としては、哺
乳類の組織、血液、体液および哺乳類より分離された正
常細胞、腫瘍細胞からの精製品を使用することができる
が、リコンビナントDNA法などによって作製されたも
のも使用することができる。
【0013】本発明により、組織培養用無血清培地にT
IMP−2を一定量添加した培地が提供され、また、こ
のTIMP−2含有無血清培地を用いて哺乳類より分
離、樹立した接着性細胞、非接着性細胞およびヒト、マ
ウス型融合浮遊細胞などを増殖させるという極めて有用
な培養法が提供される。
【0014】本発明により、現在通常のウシ胎児血清添
加培養液の使用による培養コストを大巾に低減すること
ができ、かつ培養液中の希薄な産生たん白質の精製を容
易にすることができるなど、本発明による産業的貢献は
極めて大きいものであり、また、本発明により、最近の
動物愛護運動からのウシ胎児血清生産に対する批判にも
耐え得るという利点がもたらされる。
【0015】以下に実施例を示し、本発明を具体的に説
明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではな
い。なお、下記の実施例中で用いられているヒトTIM
P−2およびヒトTIMPは、下記の如くして調製され
たものである。
【0016】ヒトTIMP−2(hTIMP−2)の調
製 (a) ヒトTIMP−2ポリペプチドの調製 Booneらは、ヒトTIMP−2ポリペプチドの配列
を、cDNAの配列から予測している(Proc.Na
tl.Acad.Sci.USA,87;2800〜2
804、1990)。その予測されたアミノ酸配列構造
中より、表1に示した3種のポリペプチド(P−1、P
−2、P−3)をそれぞれペプチドシンセサイザー96
00(ミリジェン/バイオサーチ)を用いて合成し、続
いて、それらの各ポリペプチドのC末端にシステイン残
基を導入した。
【0017】得られた3種の粗ポリペプチドは、それぞ
れ、μBondasphere(Waters,5μ、
C18−100Å、3.9×150mm)カラムを用い
て高速液体クロマトグラフィーにより精製した。
【0018】
【表1】
【0019】(b) ヒトTIMP−2ポリペプチドと
キーホールリンペットヘモシアニン複合体の調製 (a)で得られた3種のポリペプチドについて、それぞ
れ下記のとおりにして複合体を調製した。2mgキーホ
ールリンペットヘモシアニン(KLH、Calbioc
hem.)を1mlの0.1Mリン酸緩衝液,pH7.
5に溶解したものと1.85mgN−(ε−malei
midocaproyloxy)succinimid
eを200μlのジメチルホルムアミドに溶解したもの
とを混合し、30℃、30分間インキュベーションし
た。次に上記の混合液を0.1Mリン酸緩衝液,pH
7.0で平衡化したPD−10(ファルマシア)でゲル
濾過した。
【0020】マレイミドが結合されたKLHを分取し、
1.5ml以下に濃縮した。マレイミドが結合されたK
LHに対し50倍モル量の前記(a)で合成した各ポリ
ペプチドを1mlの0.1Mリン酸緩衝液,pH7.0
に溶解したものと混合した。4℃、20時間インキュベ
ーションし、3種のポリペプチドーKLH複合体を調製
した。
【0021】(c) 抗体産生細胞の調製 前記(b)の方法により調製した各複合体250μgを
完全フロイントアジュバントと共に8週令Balb/c
雌マウスにそれぞれ腹腔内投与し、初回免疫した。15
日後に0.1Mリン酸緩衝液,pH6.0に溶解した各
複合体200μgを初回免疫したそれぞれのマウスに腹
腔内投与し追加免疫した。さらに、38日後に追加免疫
時と同様に各複合体70μgを静脈内および130μg
を腹腔内投与し、最終免疫とした。その3日後に脾臓を
摘出し、脾細胞懸濁液を調製した。
【0022】(d) 細胞融合 (1) 以下の材料および方法を用いた。 RPMI 1640培地:RPMI 1640(Flo
w Lab.)に重炭酸ナトリウム(24mM)、ピル
ビン酸ナトリウム(1mM)、ペニシリンGカリウム
(50U/ml)、硫酸ストレプトマイシン(50μg
/ml)および硫酸アミカシン(100μg/ml)を
加え、ドライアイスでpHを7.2にし、0.2μm東
洋メンブレンフィルターで除菌濾過した。
【0023】NS−1培地:上記RPMI 1640培
地に除菌濾過した仔牛胎児血清(M.A.Biopro
ducts)を15%(v/v)の濃度になるように加
えた。 PEG 4,000溶液:RPMI 1640培地にポ
リエチレングリコール4,000(PEG 4,00
0、Merck&Co.)を50%(w/w)になるよ
うに加え、無血清溶液を調製した。8−アザグアニン耐
性ミエローマ細胞SP2(SP2/O−Ag14)との
融合は、Selected Method in Ce
llular Immunology(eds.Mis
hell and Shiigi)、W.H.Free
man and Company 351〜372、1
980に記載のOiらの方法を若干改変して行った。
【0024】(2) 前記(c)で調製した各有核牌臓
細胞(生細胞率100%)について、それぞれ、ミエロ
ーマ細胞(生細胞率100%)と5:1の割合で融合し
た。なお、この場合、脾蔵細胞とミエローマ細胞とは別
々に前記のRPMI 1640培地で洗浄しておき、次
に両者を同じRPMI 1640培地に懸濁し、上記の
割合で混合した。混合した各培地に対し、新たにRPM
I 1640培地を前記のペプチドP−1,P−2,P
−3の各複合体の場合につき、各25.8ml、28.
5ml、34.5ml加え、容量50mlのポリプロピ
レン製遠沈管(岩城硝子)を用いて、400×gで10
分間遠心し、上清を完全に吸引除去した。得られた各沈
殿細胞に37℃加温PEG 4,000溶液を、ペプチ
ドP−1、P−2、P−3の各複合体の場合につき、そ
れぞれ、2.3ml、4.8ml、5.0mlの量をも
って、穏やかに撹拌しながら、1分間で滴下し、さらに
1分間撹拌し各細胞を再懸濁、分散させた。得られた各
懸濁液に対し、37℃加温RPMI 1640培地を、
ペプチドP−1、P−2、P−3の各複合体の場合につ
いて、それぞれ、4.6ml、9.6ml、10.0m
lの量を用いて、2分間、滴下した後、さらに、新たな
同じ培地をペプチドP−1、P−2、P−3の各複合体
の場合につき、それぞれ、16.0ml、33.6m
l、35.0mlを用いて、2〜3分間において、常に
撹拌しながら滴下し細胞を分散させた。
【0025】得られた各懸濁液を、400×gで7分間
遠心分離し、上清を完全に吸引除去した。次に得られた
各沈殿細胞に対し、37℃加温NS−1培地をペプチド
P−1、P−2、P−3の各複合体の各場合につき、そ
れぞれ、22.7ml、40.0ml、40.0ml速
やかに加え、細胞の大きい塊を10mlのピペットを用
いて注意深くピペッティングして分散した。得られた各
分散液に対し、さらに新たに、37℃加温NS−1培地
をペプチドP−1、P−2、P−3の各複合体の各場合
につき、それぞれ、45.3ml、104ml、110
ml加えて希釈し、ポリスチレン製96穴マイクロウエ
ル(岩城硝子)にウエル当り6.0×10個/0.1
mlの細胞を加えた。次いで、これを7%炭酸ガス/9
3%空気中で温度37℃、湿度100%下で培養した。
【0026】(e) 選択培地によるハイブリドーマの
選択的増殖 (1) 使用する培地は以下のとおりである。 HAT培地:前記(d)で述べたNS−1培地にさらに
ヒポキサンチン(100μM)アミノプテリン(0.4
μM)およびチミジン(16μM)を加えた。 HT培地:アミノプテリンを除去した以外は上記HAT
培地と同一組成のものである。
【0027】(2) 前記(d)の培養開始後翌日(1
日目)、細胞に10mlピペットでHAT培地2滴(約
0.1ml)を加えた。2、3、5、8、11日目に培
地の半分(0.1ml)を新しいHAT培地で置き換
え、11日目に培地の半分を新しいHT培地で置き換え
た。通常約2週間で充分なハイブリドーマの生育が観察
される。ハイブリドーマ生育全ウエルについて次項
(f)記載の固相−抗体結合テスト法(ELISA)に
より陽性ウエルをチェックした。
【0028】次にフィーダーとして10個のマウス胸
腺細胞を含むHT培地1mlをポリスチレン製24穴セ
ルウエル(岩城硝子)に加えたものを用い、上記で検出
された各陽性ハイブリドーマの全内容物を移した。これ
を前記(d)におけると同様に7%炭酸ガス存在下、3
7℃で約2〜3日培養に付した。ハイブリドーマの充分
生育した時点でELISA法により陽性を再確認し、そ
れぞれについて次項(g)記載の限界希釈法によるクロ
ーニングを行った。なお、クローニングに使用後の残液
をポリスチレン製25cm組織培養フラスコ(岩城硝
子)に移し、凍結保存用試料を調製した。
【0029】(f) ELISA法による抗ヒトTIM
P−2抗体産生ハイブリドーマの検索 Anal.Biochem.104,205〜214、
1980に記載のRennardらの方法を若干改変し
た方法を用いた。この方法は、ハイブリドーマ抗体の検
出に適している。96穴ミクロタイトレーションプレー
ト(FlowLab.)を前記(a)で得られた各ポリ
ペプチド50ngでコートした。
【0030】これに前記(e)で得られたハイブリドー
マ生育ウエルの上清の一部を加えて室温で約1時間イン
キュベートした。2次抗体として西洋わさびペルオキシ
ダーゼ標識ヤギ抗マウス免疫グロブリン(Cappel
Lab.)を加え、さらに室温で約1時間インキュベ
ートした。次に基質である過酸化水素とo−フェニレン
ジアミンを加え生成した褐色の程度をマイクロプレート
リーダー(MPR−A4、東洋ソーダ)を用いて492
nmの吸光度を測定し判定した。
【0031】(g) クローニング 前記(e)の操作後、各ウエル中には、2種以上のハイ
ブリドーマが生育している可能性があるので、限界希釈
法によりクローニングを行い、モノクローナル抗体産生
ハイブリドーマを取得する。NS−1培地1ml当りフ
ィーダーとして10個のマウス胸腺細胞を含むクロー
ニング培地を調製し、96穴マイクロウエルの36ウエ
ル、36ウエルおよび24ウエルにウエル当り5個、1
個および0.5個のハイブリドーマを加えた。5日目に
全ウエルに各約0.1mlのNS−1培地を追加した。
【0032】クローニング開始後11〜14日で充分な
ハイブリドーマの生育が認められ、コロニーを形成して
いるウエルを12個選びELISA法を行った。テスト
した全ウエルが陽性でない場合、抗体陽性ウエル中のコ
ロニー数を確認し、ウエル中に1コロニーが確認された
ウエルを2個選びその内1ウエルを再クローニングす
る。最終的に表2に示したようにP1−ペプチド、P2
−ペプチド、P3−ペプチドのそれぞれに対するモノク
ローナル抗体産生ハイブリドーマ計51クローンを得
た。
【0033】(h) モノクローナル抗体の生体外増殖
および生体内増殖 モノクローナル抗体の増殖は常法による。すなわち、得
られた各ハイブリドーマをNS−1培地などの適当な培
養液で培養(生体外増殖)し、その培養上清から10〜
100μg/mlの濃度のモノクローナル抗体を得るこ
とができた。一方、大量に抗体を得るためには脾細胞と
ミエローマ細胞の由来動物と同系の動物(Balb/c
マウス)にマウス1匹当り0.5mlの腫瘍形成促進剤
プリスタン(2,6,10,14−テトラメチルペンタ
デカン、Aldrich Chem.Co.)を腹腔内
投与した。1〜3週間後に、各ハイブリドーマ1×10
個を同じく腹腔内投与し、さらにその1〜2週間後に
生体内で産生された4〜7mg/mlのモノクローナル
抗体を含む腹水を得ることができた。
【0034】(i) モノクローナル抗体の重鎖および
軽鎖 前述したELISA法に従って、前述のP1−ペプチ
ド、P2−ペプチド、P3−ペプチドそれぞれをコート
したミクロタイトレーションプレートに、前記(g)で
得られた各モノクローンの培養上清を加えた。次にPB
Sにより洗浄した後、アイソタイプ特異的ウサギ抗マウ
スIg抗体(Zymed Lab.)を加えた。PBS
による洗浄後、西洋わさびペルオキシダーゼ(POD)
標識ヤギ抗ウサギIgG(H+L)抗体を加え、基質と
して過酸化水素および2,2′−アジノ−ジ(3−エチ
ルベンゾチアゾリン硫酸)を用いてそれぞれの重鎖およ
び軽鎖を判定した。その結果をまとめて後掲の表2に示
した。
【0035】(j) モノクローナル抗体の精製 前記(h)で得られた各腹水を40%飽和硫酸アンモニ
ウムで分画した後、IgGクラスの抗体について0.5
M塩化ナトリウム含有1.5Mグリシン−NaOH緩衝
液,pH8.9で平衡化したプロテインAアフィゲル
(Bio−RadLab.)カラムに吸着させ、上記洗
浄液で洗浄後、0.1Mクエン酸緩衝液,pH5.0で
溶出することにより精製した。
【0036】なお、クローン番号67−4H11のハイ
ブリドーマは、微工研菌寄第12690号(FERM
P−12690)の受託番号をもって、微生物工業技術
研究所に寄宅されており、また、同クローン番号68−
6H4のハイプリドーマは、微工研菌寄第12691号
(FERM P−12691)の受託番号をもって、同
研究所に寄託されている。
【0037】
【表2】
【0038】(k) nTIMP−2の精製 ヒト胎盤に1mM塩酸カルシウム、0.1M塩化ナトリ
ウム、1mMN−エチルマレイミド、5mMEDTA、
5mMベンザミジンおよび0.005%ブリッジ35含
有20mMトリス−塩酸緩衝液、pH7.4を加え、T
IMP−2を抽出した。遠心後、その上清をpH7.1
に調整し、前記(j)項で精製したヒトTIMP−2モ
ノクローナル抗体(クローン番号67−4H11)結合
セファロース4Bアフィニティー・カラムを用いて精製
し、最後に、35℃、30分間、4M塩酸グアニジン中
で処理した後、ウルトロゲルAcA54カラムでゲル濾
過し、TIMP−2に結合している可能性のある細胞成
長因子を解離、分画により、除去した(表3)。
【0039】精製により得られたhTIMP−2は、
J.Mol.Biol.,80,579〜599,19
73記載のLaemmliらの方法に従いドデシル硫酸
ナトリウム−ポリアクリルアミド電気泳動で調べたとこ
ろ分子量約21kDaの単一バンドを示した。なお、各
精製段階のhTIMP−2濃度は後記(1)項記載の1
ステップサンドイッチEIAにより測定した。
【0040】(l) 1ステップサンドイッチEIA 前記(j)項で精製したモノクローナル抗体(固相クロ
ーン番号68−6H4、複合体:クローン番号67−4
H11)と上記(k)項で調製したヒト胎盤を用いて表
4に示す方法で標準曲線を作成した。得られた標準曲線
の定量感度は約16pgであり、6.3−50ng/m
l(63−500pg/アッセイ)の範囲で直線性が認
められた。
【0041】
【表3】
【0042】
【表4】
【0043】1) 1μg/mlIgG−POD複合体
溶液(溶解緩衝液:1%BSA、0.1M塩化ナトリウ
ムおよび10mMEDTA含有30mMリン酸緩衝液,
pH7.0) 2) 生理食塩液 3) 2mg/mlo−フェニレンジアミン溶液(溶解
緩衝液:0.02%過酸化水素含有クエン酸−リン酸緩
衝液,pH4.6) 4) 2N硫酸
【0044】ヒトTIMP(hTIMP)の調製 (a) 抗hTIMPモノクローナル抗体の調製 特開昭63−219392号公報記載の方法に従ってウ
シ歯髄TIMPに対するマウスモノクローナル抗体を調
製した。得られた17種のクローンの内、hTIMPと
交差反応を示すクローン番号、7−6C1、7−21B
12および7−23G9の融合細胞をBalb/cマウ
スに投与し腹水を得た。得られた各腹水中のモノクロー
ナル抗体をCollagen Rel.Res.,7,
341−350,1987に記載のKodamaらの方
法に従って精製した。
【0045】(b) hTIMPの精製 hTIMPはヒト歯肉線維芽細胞(Gin−1細胞)の
コンディション培養液より、Ultrogel AcA
−44、Con Aセファロース、抗hTIMPモノク
ローナル抗体(クローン番号,7−21B12)−セフ
ァロース・アフィニティー・カラムを用いて精製し、最
後に、35℃、30分間、4M塩酸グアニジン中で処理
した後、Bio−Gel P60カラムにかけて、hT
IMPに結合している可能性のある細胞成長因子を解
離、分画によって除去した。
【0046】
【実施例】
実施例1 Gin−1細胞増殖に対するhTIMP−2濃度の影響 ヒト歯肉線維芽細胞(Gin−1)の増殖に対してダル
ベッコ変法イーグル(D−MEM)培地にhTIMP濃
度を段階的に変えてその増殖程度をAnal.Bioc
hem.,39,197−201,1971に記載のH
inegardnerの方法に従って細胞中のDNA量
より調べた。後掲図1に示したように7日目の培養期間
中、hTIMP−2濃度10ng/mlで最大活性を示
している。なお、100ng/ml以上では逆にhTI
MP−2による増殖抑制がみられた。
【0047】実施例2、3 K−562細胞およびRaji細胞に対するhTIMP
−2濃度の影響 ヒト慢性赤血球性白血病細胞(K−562)およびヒト
パーキットリンパ腫細胞(Raji)の増殖に対してA
SF104無血清培地にhTIMP濃度を段階的に変え
てその影響を調べたところ、後掲図2および図3に示し
たように7日目の培養期間中、hTIMP−2濃度10
ng/mlで最大活性を示している。なお、100ng
/ml以上では逆にhTIMP−2による増殖抑制がみ
られ、実施例3のGin−1細胞の場合と同様な結果が
得られた。
【0048】実施例4 マウス由来ハイブリドーマ増殖に対するhTIMPおよ
びhTIMP−2の効果 マウス抗ヒトトロンボモジュリンモノクローナル抗体産
生ハイブリドーマ(クローン番号、21−4G3,FE
RM P−12201)増殖に対するhTIMP(10
0ng/ml)およびhTIMP−2(10ng/m
l)添加効果を調べたところ、図4に示したようにhT
IMPでは効果を認められなかったが、hTIMP−2
では増殖効果が有意に増大していることが認められる。
【0049】実施例5 マウス由来コロン26細胞の増殖に対するhTIMP、
bTIMPおよびhTIMP−2の効果 マウスコロン26細胞(マウス直腸癌コロン26細胞)
の増殖に対してhTIMP(100ng/ml)および
hTIMP−2(10ng/ml)を添加しその効果を
調べた。図5に示したようにhTIMPでは効果は認め
られなかったが、hTIMP−2で増殖効果が有意に増
大していることが認められた。
【0050】以上から明らかなように、上記の実験結果
は、TIMP−2が明らかに広い範囲の細胞の増殖に深
い関わりをもっていることを示しているものである。特
にhTIMPは、マウス由来細胞やマウス由来ハイブリ
ドーマにその増殖効果をもたなかったが、hTIMP−
2でその効果が認められた。
【0051】本発明は、天然のTIMP−2またはリコ
ンビナントTIMP−2を単独であるいはTIMPと組
み合わせて合成人口培養液中に加えることにより、これ
まで、合成人工培養液中では細胞増殖が困難であった
り、細胞増殖が制限されていた細胞の増殖を行うことを
可能にしたものであり、細胞培養を用いる諸研究や、さ
らに、工業レベルへの応用等、これらの分野での進歩に
大きな貢献をするものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】D−MEM無血清培養液中でのヒトGin−1
細胞増殖に対するhTIMP−2のもたらす添加効果を
示す図であり、
【図2】ASF104無血清培養液中でのヒトK−56
2細胞増殖に対するhTIMP−2のもたらす添加効果
を示す図であり、
【図3】ASF104無血清培養液中でのヒトRaji
細胞増殖に対するhTIMP−2のもたらす添加効果を
示す図であり、
【図4】PRMI1640無血清培養液中でのマウス抗
ヒトトロンボモジュリンモノクローナル抗体産生細胞ハ
イブリドーマ増殖に対するhTIMPおよびhTIMP
−2のもたらす添加効果を示す図であり、
【図5】マウスコロン26細胞増殖に対するhTIM
P、bTIMPおよびhTIMP−2の添加効果を示す
図である。
【0052】
【表5】
【0053】
【表6】
【0054】
【表7】
【0055】
【表8】
【0056】
【表9】
【0057】
【表10】
【0058】
【表11】
【0059】
【表12】
【0060】
【表13】
【0061】
【表14】
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−171182(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12N 5/00 - 5/28 BIOSIS(DIALOG) WPI(DIALOG)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ティシュ・インヒビター・オブ・メタロ
    プロテイナーゼ−2を含有せしめたことを特徴とする組
    織培養用無血清培地。
  2. 【請求項2】 ティシュ・インヒビター・オブ・メタロ
    プロテイナーゼ−2を細胞増殖成長因子として用いて、
    動物組織細胞あるいは動物由来の融合細胞をティシュ・
    インヒビター・オブ・メタロプロテイナーゼ−2含有組
    織培養用無血清培地中で増殖させることを特徴とする細
    胞増殖方法。
JP26264792A 1992-08-19 1992-08-19 ティシュ・インヒビター・オブ・メタロプロテイナーゼ−2含有組織培養用無血清培地と細胞増殖方法 Expired - Lifetime JP3157619B2 (ja)

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