JP3155638B2 - フライアッシュファイバー - Google Patents

フライアッシュファイバー

Info

Publication number
JP3155638B2
JP3155638B2 JP33393192A JP33393192A JP3155638B2 JP 3155638 B2 JP3155638 B2 JP 3155638B2 JP 33393192 A JP33393192 A JP 33393192A JP 33393192 A JP33393192 A JP 33393192A JP 3155638 B2 JP3155638 B2 JP 3155638B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
fiber
fly ash
fibers
temperature
materials
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP33393192A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH06316815A (ja
Inventor
昭 小島
清太郎 高橋
Original Assignee
株式会社三創
昭 小島
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by 株式会社三創, 昭 小島 filed Critical 株式会社三創
Priority to JP33393192A priority Critical patent/JP3155638B2/ja
Publication of JPH06316815A publication Critical patent/JPH06316815A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3155638B2 publication Critical patent/JP3155638B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Inorganic Fibers (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、新規な無機繊維である
フライアッシュファイバーに関する。
【0002】
【従来技術】無機物質を主成分とする繊維に、無機繊維
がある。それらは、石綿、グラスウール、ガラス繊維、
ロックウール、スラグウール、酸化ケイ素繊維、アルミ
ナシリケートファイバー、セラミックスファイバー、シ
リカ繊維、ジルコニアファイバー、炭素繊維、炭化ケイ
素繊維、チタン酸カルシウム繊維、炭化ケイ素繊維、チ
ラノ繊維、セラミクッスウイスカーなどである。これら
の内、天然鉱物として産出するのは石綿であり、その他
の無機繊維は、天然物あるいはその他の物質を原料とし
て、加熱溶融し、それを繊維化して作ったものである。
各繊維は、主として綿状でしか製造されないものと、連
続した繊維状でも製造されるものとの2種類に大別され
る。
【0003】これらの無機繊維の内、主として綿状に製
造されるものは、保温材、断熱材として用いられてい
る。グラスウールは、使用最高温度が250〜350℃
と極めて低く用途が限定される。ガラス繊維は、耐熱性
と耐アルカリ性に問題がある。石綿は、発ガン性をもつ
ことから作業環境の点で使用が規制され始めている。ロ
ックウールは、安価であるので大量に使用されている
が、600℃以下でしか使用できない。同じように、酸
化ケイ素繊維は、750℃以下でしか使用できない。セ
ラミックファイバーとアルミナファイバーは1000℃
以上の耐熱性を有しているが、製造時のエネルギー経費
が大であることから、高価格である。炭素繊維は、比強
度および比弾性率に優れているが、酸化性に問題が有
る。炭化ケイ素繊維やチラノ繊維は、耐酸化性には優れ
ているが、高価格である。これらのことから、セラミッ
クファイバー程度の機械的、熱的特性をもち、価格的に
はロックウール程度の新しい無機繊維の開発が強く望ま
れている。
【0004】また、無機繊維は、断熱材や保温材として
繊維単独で使用される場合もあるが、他の素材と複合化
させて、複合材料の強化材あるいは充填材としても利用
されている。繊維を強化材とする複合材料は、ある素材
が単独でもつ特性よりも、さらに優れた機械的特性など
を得ることを目的として作られたものである。無機繊維
を強化材とした複合材料には、繊維強化プラスチック
(FRP)、繊維強化金属(FRM)、繊維強化ガラス
(網いりガラス)、炭素繊維強化炭素(C/C)、繊維
強化コンクリートなどがある。これらに使用されている
強化繊維には、上述の各種無機繊維のほかに、各種有機
繊維(ポリアミド、ビニロン、木綿、麻、羊毛、絹、ア
セテート、ナイロン、テトロン、セルロース、アクリル
繊維など)、金属繊維なども用いられている。しかし、
耐熱性を要求する場合には、有機繊維では対処できな
い。また、腐食性や密度の点から、金属材料では使用困
難であることが多い。これらの点からも、無機繊維の使
用されることは多い。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上述のように各種無機
繊維は、複合材の強化繊維として、各方面で使用されて
いるが、工業技術の進歩発展にともない、現状の無機繊
維では要求機能を充分に満足できなくなってきているの
が実情である。以下、現在製造されている各種無機繊維
の製造方法、特性および問題点などについて概説する。
天然繊維である石綿は、蛇紋岩類と角閃石類とに大別さ
れるが、前者の方が世界生産量の95%を占めるほど、
多く生産されている。このうち工業的に重要なのは、ク
リソタイル石綿、青石綿およびアモサイト石綿の3種類
である。これらの化学成分および特性を表−1に示す。
【0006】
【表1】
【0007】石綿は、単独で使用される場合もあるが、
他の素材と組合せて、セメント製品(石綿スレート、石
綿管など)、紡織製品(石綿糸、石綿布など)、耐熱性
製品(ボイラー被覆、ジョイントシート、パッキン、船
舶用隔壁など)、耐摩耗製品(自動車のブレーキライニ
ング、クラッチフェーシング、エレベーターや列車の制
御部品など)、電気絶縁、保温、耐酸製品(石綿糸、フ
ェルト、保温板、タイル、塗料など)、その他の製品
(プラスチック強化、石油ストーブの芯など)などの各
種石綿製品が作りだされ、大量に利用されている。石綿
は、セメント中への分散性が特に良好であるので、セメ
ント、モルタルおよびコンクリートの補強材として重要
である。しかし、石綿には発ガン性の問題があることか
ら、使用が規制されやがては中止されようとしている。
【0008】グラスウールは、ガラスの短繊維で、製造
方法により数cmから数十cmの長さになる。その製造方法
には、水蒸気吹きつけ法(ノズルから流下する溶融ガラ
スを水蒸気で吹きとばす方法)、火焔吹きつけ法または
スーパーファイン法(溶融ガラスをノズルから引出して
細い棒に固化成形したのち、高圧の火焔で吹き飛ばして
繊維とする方法)、及び遠心法(溶融ガラスを回転体中
より遠心力でとばす方法、あるいは溶融ガラスを回転す
る容器のノズルから遠心力で引延ばす方法)の3種類が
ある。水蒸気吹きつけ法および火焔吹きつけ法またはス
ーパーファイン法で作られたプラスチックは、保温筒な
どに向き、遠心法はボード、マットなどに向いている。
製品は、ロール、ボード、マット状などに、フェノール
樹脂をバインダーとして成形される。グラスウールは平
均繊維径により1号(4μm以下)、2号(8μm以
下)、3号(20μm以下)に分けられる。熱伝導率は
繊維径が細いほど優れている。例えば、繊維径が2.5
μmの熱伝導率は0.030kcal/m・hr・℃程度である
が、12.5μm付近では0.046kcal/m・hr・℃と大
きく変る。最高使用温度は250℃程度である。グラス
ウールの化学成分を表−2に示す。
【0009】
【表2】
【0010】ガラスから構成される繊維状物質には、ガ
ラスウール以外に長繊維として紡糸されるガラス繊維が
ある。このガラス繊維は、樹脂の強化材として幅広く使
用されている。しかしながら、耐アルカリ性が乏しいた
めに、セメント系マトリックスの強化材には使用できな
い。セメントによるガラス繊維の劣化機構については、
(1)セメントのアルカリ性成分による化学的浸食、(2)生
成する水酸化カルシウムの再結晶による物理的損傷、及
び(3)セメント水和物がガラス繊維フィラメント間の空
隙を充填し、ガラス繊維の変形に対する自由度を小さく
することによる、硬化物の破壊エネルギー吸収能力の低
下、と説明されている。
【0011】そこで、ガラス繊維に耐アルカリ性を増大
させるために、ガラス繊維表面に耐アルカリ性の物質を
被覆することが、種々試みられている。無機物質の被覆
例としては、ガラス繊維をオキシ塩化ジルコニウムなど
のジルコニウム化合物溶液に浸漬した後、熱処理してZ
rO2の微結晶を形成する方法、有機チタン化合物の気
化物と接触させ、次に水分含有気体と接触させてTiO
2被膜を形成する方法などがある。有機物の被膜例とし
ては、フラン樹脂を塗布する方法、ゴム系樹脂を被覆す
る方法、ワックスなどのアルカリ不浸透性含浸剤を被覆
する方法、ポリビニルアルコールを被覆する方法があ
る。しかしながら、いずれの方法も良好な結果を得るま
でには至っていない。
【0012】また、ガラス繊維の耐アルカリ性を増大さ
せるために、ガラス繊維表面にセメントのアルカリ性を
弱める物質又はセメントの水和を遅らせる物質(例え
ば、ポリオキシ芳香族化合物、糖類、ジヒドロキシ安息
香酸などの遅延剤)を被覆する方法がある。しかしなが
ら、これらの方法も充分な成果を得るまでには至ってい
ない。
【0013】これらの考え方とは別に、ガラス繊維本来
に耐アルカリ性を付与させるために、ガラス繊維に酸化
ジルコニウムを20wt%程度添加したものが開発され
た。このガラス繊維は、セメントペースト中に浸漬して
も溶解することはなく、強度を維持できることがわかっ
た。酸化ジルコニウムを含むガラス繊維は、耐アルカリ
性ガラス繊維と呼ばれ、ARG(日本電気硝子(株)
製)やセムフィル(日本板硝子(株)製)などが製造さ
れている。
【0014】これらのうちARGは、酸化ジルコニウム
を20%含むもので、全電融DM法により製造されてい
る。全電融DM法は、全電気溶融炉でジュール熱によっ
て溶融したガラスを直接紡糸する方法である。従来の重
油燃焼炉でいったんマーブル(直径約20mmのガラス)
を作り、それを再溶融して紡糸する方法に比べて、ガラ
ス化反応が均一に進む、エネルギー効率が高い、ガラス
の揮発損失が少ない、脱硫装置のような公害対策が不要
である等の利点をもっており、高品位のガラス繊維を比
較的安価に生産するのに適している。
【0015】ARGの製造時には、溶解しにくいZrO
2成分を20%程度も添加するため、原料の調合および
溶解には、細心の注意を計って行われる。溶解したガラ
ス生地は、白金製ブッシングの底部にある多数のノズル
から引出され、直径約13μmのフィラメントに紡糸さ
れる。数百本のフィラメントの表面に、用途に応じた集
束剤がコーテングした後、それらを束ねてストランドと
し、高速で回転しているワインダーで巻取っている。ブ
ッシング温度およびワインダーの回転速度を制御するこ
とにより、繊維径が調節される。巻取ったガラス繊維
は、乾燥工程を経てロービングやチョップドストランド
などに加工される。ARGの諸性質を表−3に示す。
【0016】
【表3】
【0017】また、耐アルカリガラス繊維の耐アルカリ
性をより増大させるために、マトリックス側のセメント
を改質する試みも行われている。それらは、セメントに
ビニール重合体、カルシウムサルホアルミネート、シリ
カヒュームなどの混和剤を添加するもので、これらの中
から低アルカリ性セメントが開発された。耐アルカリ性
のガラス繊維と低アルカリ性セメントを使用した、GR
Cセメント(秩父セメント(株)製)が作り出され、カ
ーテンウォールなどに利用されている。
【0018】ロックウール(鉱滓綿)は、人工的な鉱物
繊維である。ロックウールの原料は、玄武岩あるいは安
山岩で、国内いたるところにある溶岩流、岩脈あるいは
岩床となって露出している。これらの岩石(火成岩)
は、ガラス原料と類似の成分であり、原料が安価である
ことから、大量に生産され使用されている。しかし、品
質の安定したものが得がたいことから、最近では金属の
精錬滓、特に高炉スラグを主原料として使用し、これに
化学成分調整のために、ケイ石、ドロマイト、石灰岩な
どを添加している。これらの原料をキュポラか電気炉で
1500℃前後の温度で溶融し、この湯を炉から流し、
高圧蒸気または圧搾空気をふきつけて繊維化する吹製法
または遠心法により繊維化する。繊維化されたルーズウ
ールは、集綿されそのまま製品とするか、あるいは一定
の密度や厚さに調整され連続成形の加工プロセスに入る
か、または粒状装置に送られて粒状綿に作られる。ロッ
クウールの化学成分のうち、代表的な化学組成を表−4
に示す。
【0019】
【表4】
【0020】ロックウールの繊維径は2〜20μm(平
均7μm以下)、長さは10〜100mmが普通である。
ロックウールの引張り強度は50kgf/mm2(繊維径5.
1μm)、熱伝導率0.0348kcal/m・hr・℃である。
ロックウールを使用して、種々の工業製品が作り出され
ている。それらは、使用最高温度が600℃でガラス繊
維より高いため、断熱材、保温材としてだけでなく、不
燃建材として使用されている。ロックウールは不燃建材
と認定されてから、建築用素材として注目され、鉄骨柱
などの耐火被覆用および住宅断熱材用として利用され、
その需要分野は広範囲にわたっている。
【0021】しかし、ロックウールは、価格的にはガラ
ス繊維に比べて安いが、性能面で劣っていること、着色
していること、繊維がこわくて体にささること、耐アル
カリ性に問題があり長期間強度を維持できるか未解決で
あるなどの欠点を有している。事実ロックウールをセメ
ントペースト中に浸漬し、20時間80℃に加熱する
と、繊維形態を保持できなくなり、粉末状になってしま
う。それらの繊維表面を走査電子顕微鏡で観察しても、
平滑な処理前の表面状態とは異なり、多層ウのクラック
が生じており、激しくエッチングされていた。
【0022】ロックウールよりも、耐熱温度の高い無機
繊維に酸化ケイ素繊維があり、PMF(Process Minera
l Fiber)とCMFの二種類が製造されている。この繊
維の化学組成および性質を表−5に示す。
【0023】
【表5】
【0024】前者のPMFは、米国ジムウォルター社に
よって開発製造されているもので、同社で製造されるロ
ックウールあるいはスラグウールなどを機械的処理によ
って、繊維長さを揃え、ショットを取除いたものであ
る。従って、化学組成はロックウールと全く同じであ
る。このPMFは、有機シラン化合物にて表面処理を行
った後、各種樹脂(例えばナイロン、PBT、ポリプロ
ピレン、フェノール樹脂など)の充填剤や補強材として
使用されている。しかしながらこのPMFは、化学組成
の点から耐薬品性、特に耐アルカリ性には問題があるの
で、セメント系物質の充填材や強化材としては利用され
ていない。
【0025】後者のCMFは、日本セメントKKで開発さ
れ、製造されている。この繊維は、4種類の天然鉱石を
約1500℃の高熱で溶融したものを遠心力や圧縮空気
で吹きとばして繊維状にし、それを精選した非晶質の人
工無機繊維である。このCMFは、石綿並に耐熱性が高
く、引張り強度も平均50kgf/mm2で比較的高い。しか
し、CMFの問題点は、耐薬品性、特に耐アルカリ性が
石綿に比べて格段に悪く、これをいかにして石綿に近づ
けるかにある。特にセメント材料中に添加した場合に長
期間強度を維持できるかに関して問題があり、セメン
ト、モルタル、コンクリートなどの強化材としての使用
は不向きである。また、酸化ケイ素繊維は、あくまでも
石綿の代替品として開発されたものであり、石綿製品範
囲を越えてまでの用途展開はなされていない。CMFの
用途としては、樹脂複合材素材(熱可塑性樹脂、熱硬化
性樹脂)、塗料用充填剤、ゴム用充填材、不燃紙(クッ
ションフロワー、壁紙、室内建築材など)、不燃フェル
ト、不燃ボード用原料、石膏、摩擦材(ブレーキパッ
ド、ブレーキデイスク、クラッチフェーシングなど)な
どがある。
【0026】ロックウールよりも耐熱性の無機繊維とし
てセラミックスファイバーがある。この繊維は、非晶質
のシリカアルミナ系繊維を中心にして生産されている。
セラミクッスファイバーは、60数年前米国においてカ
オリン鉱物の有効利用を目的として研究された。そし
て、セラミックファイバーは、工業材料として優れた特
性をもつことから企業化が進められたのは第2次世界大
戦後の1950〜1955年頃である。
【0027】アルミナシリカファイバーの原料として
は、開発当初カオリン、カイヤナイトなどの天然鉱物が
多く使用されてきたが、含まれている不純物(Fe
23、TiO2、Na2Oなど)が耐熱性に影響を与える
ため、現在ではけい石、けい砂などのシリカ原料と、バ
イヤーアルミナ、電融アルミナなどのアルミナ原料とを
配合し、必要に応じてホウ酸ガラス、ジルコニア、酸化
クロム、酸化チタンなどを加えている。原料混合物の溶
融温度が2000℃以上であるので、アーク式、抵抗
式、または誘導式などの電気炉で溶融する。そして、融
液の粘度を数百cp程度まで低下させたのち、これを流出
させて繊維化する。繊維化の方法には、溶融物の細流
に、圧縮空気、またはスチームジェットを吹きつけるブ
ローイングプロセスと、高速回転するローターの遠心力
を利用するスピニングプロセスがある。ブローイングプ
ロセスは、(原料調合)−(融解)−(吹きつけ)−
(繊維)の順で作られる。スピニングプロセスは、(原
料調合)−(融解)した融液を、ディストリビューター
に流し、高速回転している1本若しくは2本又は数本の
ローター上に滴加することによって紡糸され、繊維化す
るものである。できあがった繊維は、集綿装置で層状に
集められ、各種の二次製品に加工される。
【0028】セラミクスファイバーの特性は、材質(ア
ルミナ・シリカ)と繊維の形態に起因する。前者の材質
に基づく特性は、耐火性、耐薬品性、化学的中性、電気
絶縁性などである。また、後者の形態に影響される特性
は、断熱性、弾力性(被圧縮性、復元性)、シート性、
濾過性、吸音性などである。現在市販されているセラミ
ックスファイバー(アルミナシリケートファイバー)
は、その化学組成、使用最高温度などによって1260
℃クラスと1400℃クラスの2種類に分わけることが
できる。それらの特性を表−6に示す。比較のために、
後述するアルミナファイバーの場合も合せて記した。
【0029】
【表6】
【0030】また、製造されている各種セラミックスフ
ァイバーの化学組成および特性を表−7に示す。この場
合にも、最高使用温度が1260〜1300℃の標準品
と、1400〜1480℃の高温品とに分類される。
【0031】
【表7】
【0032】1260〜1300℃の耐熱度を有する標
準品は、Al23/SiO2の重量比が1.2〜0.8
の範囲にあるが、CaO、MgO、TiO2、Fe23
などの不純物を含んでいる。一方高温品は、Al23
SiO2の重量比が1.3〜1.6とアルミナ成分が多
くなっており、その他の不純物は非常に少ない。セラミ
ックファイバーは、その製造法に起因して繊維化されな
い「ショット」と呼ばれるガラス状の粒子が混入するこ
とは避けられない。これは製品の性能に悪影響をおよぼ
すので、できるだけ少なくすることが望ましい。JIS
では、ブランケットの場合、212μm以上の粒子が2
5%以下になるよう規定されている。
【0033】セラミックファイバーの使用最高温度は、
主にファイバーの加熱収縮率により決定される。アルミ
ナシリカファイバーは、約1000℃でムライト(3A
23・2SiO2)結晶が析出し、ガラス質から結晶
質に移行する。これに伴いファイバーに収縮が起こる。
収縮量は、高温になるに従い増大し、柔軟性も失われて
くる。これらの点に対処するために、Cr23、ZrO
2などの成分を添加して耐熱度を向上させ、使用最高温
度1400℃程度のものが製造されている。実用上の使
用最高温度は、施工方法、使用条件などによって変動す
るので、考慮を必要とする。一般に繊維質材料は、かさ
密度が小さく気孔率が大きいので、断熱性に優れるもの
であるが、高温における熱伝導率は、ふく射による影響
が強くでるために、若干密度を大きめにした方が良くな
る傾向にある。その他、吸音特性も優れており、500
MHz以上の中高周波数域で高い吸音率を示す。また、電
気絶縁性もアルカリ成分が微量であるため優れている
が、高温になると低下する傾向にある。
【0034】セラミックファイバーは、バルクファイバ
ーをはじめとして、フェルト、ボード、ブランケット、
ブロック状断熱材、成形品などの各種製品がある。この
ほか、紡織品、キャステイング材などが製造されてい
る。また、吹きつけによる断熱材の現場施工も行われて
いる。セラミックファイバーは、断熱材、シール材、パ
ッキング材、吸音材など種々の用途に幅広く用いられて
いるが、アルミナシリカ系セラミックファイバーの最大
の欠点は、加熱時の再結晶化による品質の劣化である。
この種の繊維は、本来極めて短時間に繊維化されるの
で、過冷却の状態で非晶質となっている。
【0035】上記の欠点を補う意味でさらに高温に耐え
るものとしてアルミナファイバーが開発された。アルミ
ナファイバーは、例えば塩化アルミニウム塩類の水溶液
を出発原料とし、極めて厳密な制御のもとに水溶液から
繊維化し、これを加熱して塩酸、酢酸などを除き、多結
晶質の繊維とする前駆体無機塩法(塩分解法)で製造す
る。この方法は、繊維化条件の管理が容易であるため、
非繊維化粒子(ショット)の発生が極端に低い特徴があ
る。アルミナファイバーの特性を表−8に示す。
【0036】
【表8】
【0037】溶融石英ファイバーは、ガラス繊維に比
べ、水蒸気、耐候性に優れ、酸、アルカリに長時間さら
されても影響を受けない。融点は1500℃以上であ
る。この繊維の製造方法は、径0.12〜0.15mmの
石英ロッドを一定の低速度で高温の火炎中に出し、軟化
したロッドの先端を引き伸して高速回転するワインドド
ラムに巻取る。このように99.95%の石英を原料と
するファイバーは高価なために我が国では需要は少な
い。溶融石英の引張り強度は、Eガラス繊維の2倍程度
の600kgf/cm2ぐらいである。その他の性質を表−9
に示す。この溶融ガラス繊維は、繊維状、ヤーン、テー
プ、クロスなどが作り出されている。この繊維の用途
は、精密機器部品、断熱材、濾過材、プラスチック補強
材、電気絶縁材などである。
【0038】
【表9】
【0039】高ケイ酸質ファイバーは、ガラス繊維を硫
酸で処理し、96%以上のシリカを有するファイバーに
かえることによって、耐熱性を高めたものである。この
繊維は直径が10.2〜12.7μmで中性子やγ線に
暴露されても熱的、機械的性質には影響を受けない。9
00℃での連続使用では安全であるが、1150℃で1
00時間使用後では著しく脆くなる。このファイバーか
ら繊維状、ヤーン、テープ、クロス、パット、ロープな
ど種々の形態のものが作られている。そして、この繊維
の用途は、一般断熱材、電線の耐熱被覆材、高温用ガス
ケット、プラスチック補強材、石油ストーブ芯、触媒担
体などである。
【0040】ジルコニアファイバーは、高温まで使用で
きる可能性をもつ繊維である。UCC社製の繊維は、有
機繊維をプレカーサーとし、これにジルコニウム塩の水
溶液を圧入してその微細組織中に均一に分散させたもの
を、特殊雰囲気炉中で熱分解した後、再度熱処理して作
られている。この方法は、プレカーサーの微細構造を保
った無機繊維を作るものである。また、ICI社製のジ
ルコニアファイバーは、微小気孔を有する多結晶体で絹
状の手触りがあり、優れた可撓性、弾性をもっている。
これの製法は、ジルコニウムを含む液をノズルから吹出
し、高圧ガスで吹き飛ばし繊維化する吹出し紡糸法と言
われている方法である。この繊維もポリクリスタリン繊
維であり、安定化剤が添加されている。
【0041】その他の繊維として、チタン酸カルシウム
繊維や各種ウイスカーも開発されているが、高価格であ
ることから特殊分野にしか用いられていない。
【0042】炭素繊維は、比強度、比弾性率に優れてい
ることから、宇宙航空、スポーツ、レジャー関係を中心
に発達してきたが、酸化するという欠点があり、高温酸
化雰囲気下では使用できない。高温状態で使用可能な繊
維には、上述のアルミナ繊維やシリカファイバーなどの
各種セラミックス繊維がある。これらは、耐酸化性には
優れているが、高価格であることから使用範囲が限定さ
れなければならない。また、鋼繊維などの金属繊維は、
経済性の点では優れているが、密度が高いことから比強
度や比弾性率の点では炭素繊維などと比べると問題が有
る。また、金属であることから、腐食しやすいなどの欠
点も有している。ナイロンやビニロンなどの有機繊維
も、強化用繊維として利用されている。しかし、耐熱性
の点で問題が有る。
【0043】このように、各種無機繊維が断熱材、保温
材、複合材の強化繊維として、使用されているが、夫々
種々の問題点を有しており、新しい繊維の開発が強く望
まれているのが実情である。従って、本発明の目的は、
このような社会的状況を鑑み、上記の各種条件を満足す
る新規無機繊維を提供することにある。
【0044】
【課題を解決するための手段】本発明の上記目的は、新
規無機繊維として、20〜40%のAl23、35〜5
0%のSiO2、15〜35%のCaO、3〜12%の
Fe23及び2〜5%のMgOを含有することを特徴と
するフライアッシュファイバーにより達成されることが
見いだされた。更に、上記組成に加えて、更にジルコニ
ウム化合物を含有する、20〜45%のAl23、25
〜50%のSiO2、15〜35%のCaO、3〜12
%のFe23、0〜5%のMgO及び3〜10%のZr
2を含有することを特徴とするフライアッシュファイ
バーにより、耐アルカリ性が更に向上し、セメント系材
料への使用に適した無機繊維を得ることができる。
【0045】本発明は、未利用資源である石炭灰を高温
で溶融紡糸したフライアッシュファイバ−(FAファイ
バー)の開発を試みたものである。特に新しい無機繊維
を製造する原料配合を規定するとともに、産業上有効な
新規繊維の性質、機能、構造などを規定するものであ
る。
【0046】石炭灰は、石炭を発電用に燃焼した際に生
じるものであり、例えば1989年度には発電用石炭の
使用量は2450万トン、副生する石炭灰の量は約40
0万トンにも達している。そのうち有効利用されている
のは190万トン(49%)にすぎず、残り51%は陸
上埋立材や海面埋立材として処理されている。その他に
一般産業からも約150万トンの石炭灰が発生してい
る。石炭灰の発生量は今後も増加することが予想される
ので、石炭灰の有効利用技術の開発が強く望まれてい
る。本発明は、価値ある無機繊維を提供するとともに、
石炭灰の有効利用が実現できる点において、非常に有効
である。
【0047】しかしながら、火力発電所から排出される
石炭灰の組成は、使用される石炭によって異なる。石炭
中の含有金属は、国内炭と外国炭とでは異なるととも
に、石炭の生産地によっても違う。国内炭と外国炭の代
表的な化学成分と、産地別の化学成分とを表−10に示
す。
【0048】
【表10】
【0049】このように、石炭灰の生産地によってそれ
の化学組成は異なっているが、製造されるフライアッシ
ュファイバーの機械的強度や熱的性質などの諸特性は、
一定でなければならない。一定の特性をもつフライアッ
シュファイバーの製造技術の確立は、工業的にも極めて
重要なことである。また、石炭灰だけでなく、その他の
諸原料(例えば、天然鉱石、工業副生成物など)を使用
してもフライアッシュファイバー相当の機能をもつ無機
質繊維又はセラミックス繊維の製造技術を確立しておく
ことは、極めて意義あることである。これらの点に鑑
み、本発明者らは鋭意研究の結果、上記組成を有するフ
ライアッシュファイバーが優れた機械的強度と熱的性質
を有することを見いだし、本発明に到達したものであ
る。
【0050】本発明のフライアッシュファイバーの最大
の特色は、耐熱性および機械的特性に優れた点である。
本発明の一定の特性を有するフライアッシュファイバー
は、製造用原料の化学組成および各原料の配合を決定
し、フライアッシュファイバーの品質を保証する製造技
術の確立をはかることにより、実現される。さらに本発
明では、主原料に石炭灰、更に必要に応じてその他の副
原料を使用して作り出される無機質繊維の機械的、熱的
特性、構造などを規定できるものである。
【0051】本発明のフライアッシュファイバーの機械
的及び熱的特性は、化学組成によって決定される。中で
もアルミナ(Al23)は、繊維の熱的特性に影響を与
える。アルミナ含有量の増加は、融解温度、使用最高温
度、耐アルカリ性を高くする。また、原料(原料混合
物)の融解温度を高くするとともに、耐薬品性を向上さ
せる。ただし、繊維化に要するエネルギー経費は増大
し、炉構造材料の高温度化など、繊維化技術は困難にな
る。従って、本発明のフライアッシュファイバーでは2
0〜40%含むことが望ましい。Al23量が20%以
下では、耐熱性が不足し、40%以上では紡糸温度が高
温になりエネルギー経費が高騰することや、粘度が高く
なって紡糸が困難になる。
【0052】また、シリカ(SiO2)含有量が多いと
融解温度は低くなり、融液の粘度は低下し、繊維化は容
易になる。当然のごとく、製造経費は低廉になる。しか
し、耐熱度は低くなり、高温域での利用は出来なくなっ
てくる。さらに、耐アルカリ性は低く、セメント・コン
クリート系複合材料には使用できない。従って、本発明
のフライアッシュファイバーでは35〜50%が望まし
い。SiO2含有量が35%以下では、粘性が低く紡糸
が困難になることや、融解温度を高くしなければならな
い。また、50%以上では紡糸は容易になるが、耐アル
カリ性が低下し、セメント系材料の強化材には使用でき
ない。
【0053】その他に、酸化カルシウムもグラスウール
やロックウールの場合には多量に含まれている。これ
は、原料中にすでに含まれている場合が大部分である
が、それ以外にも本発明の組成になるように原料中に粘
度調節剤として添加してもよい。酸化カルシウム量は、
本発明のフライアッシュファイバーの場合、15〜35
%であることが望まれる。15%以下では溶融しにく
く、紡糸が困難である。しかし、35%以上ではセメン
ト系材料として使用した場合に、中性化が生じ、長期強
度が低下する心配がある。
【0054】石炭灰に含まれ、フライアッシュファイバ
ー中にも含有されるFe23含有量は、3〜12%であ
る。この含有量は、出来るだけ少ない方が望ましいが、
石炭灰を使用することから、3%程度の混入は避けられ
ない。また、Fe23含有量が少なくなると、製造され
るフライアッシュファイバーの耐熱性は向上することが
実験事実から確認されており、極力少なくする配慮を払
うことが望ましい。またFe23含有量が増加すると、
フライアッシュファイバーの着色度合いが高まり好まし
くない。これらのことから12%以上のFe23含有量
では問題が多くあり、避けなければならない。
【0055】また、耐アルカリ性を向上させ、セメント
系材料に使用するために、3〜10%の酸化ジルコニウ
ムを添加することができる。3%以下では耐アルカリ性
を向上させる効果がみられない。また、10%以上では
溶融温度が高く、紡糸温度が高くなることから、操作上
使用できない。
【0056】フライアッシュファイバーの繊維直径は5
〜20μm程度(平均繊維径5〜10μm)、繊維長さ
5〜30mmである。フライアッシュファイバーの機械的
特性は、繊維径によって異なることが判った。例えば、
直径が6μmの場合には、引張り強度4120MPa、引
張り弾性率200GPaである。これらの特性を、他の無
機質繊維、例えば、アルミナ繊維(強度1400MPa、
弾性率385GPa)、ガラス繊維(強度2400MPa、弾
性率70GPa)、炭素繊維(強度3000MPa、弾性率2
20GPa)などと比べると、フライアッシュファイバー
が極めて優れた特性を有していることが判る。また、繊
維径が15μmのフライアッシュファイバーでは、引張
り強度290MPa、引張り弾性率17.5GPaであり、繊
維径によって機械的特性は著しく影響を受ける。しか
し、ロックウールファイバーや一般的なガラスファイバ
ーとは、耐熱性の点でも、機械的強度の点でも、遥かに
優れている。一般的に本発明のフライアッシュファイバ
ーの機械的性質は、繊維によって異なるが、引張強度2
00〜450MPa、引張弾性率は10〜250GPaであ
る。
【0057】繊維の融解温度および結晶化温度は、熱分
析(示差熱分析)から求めることができる。製造したフ
ライアッシュファイバーを空気中、熱分析装置で加熱し
てゆくと、940℃付近から発熱ピークが、1150℃
付近から吸熱ピークが夫々見られた。前者の発熱ピーク
は、フライアッシュファイバーの結晶化の開始を示して
いる。
【0058】フライアッシュファイバーの結晶化とは、
次の現象が生じたことを示している。すなわち、製造し
たフライアッシュファイバーは、高温度で融解した状態
から繊維化されたものである。繊維化は、0.1秒以下
の極めて短時間で行われる。繊維化されると同時に高温
度から常温まで急激に冷却されるので、過冷却されて非
晶質となっている。このような過冷却状態のフライアッ
シュファイバーが、再び高温度に加熱された場合、フラ
イアッシュファイバー中には結晶が析出(結晶化)す
る。しかし、加熱温度が低い場合には、析出する結晶量
も少なく、結晶の成長も顕著ではないが、ファイバー内
にストレスを生じ、湾曲したり硬直性を増したりする。
さらに加熱温度が上がると、析出した結晶が成長し、繊
維径に影響を及ぼすようになるとともに、硬直性は増し
て折れやすくなり、ファイバーの品質を劣化させること
になる。従って、この結晶化温度および結晶化開始温度
は、出来るだけ高温であることが望ましい。
【0059】本発明では、示差熱分析における発熱ピー
クの立上がる温度を結晶化開始温度とした。同時に、こ
の温度以上になると、性能は変質しておることが予想さ
れるので、この温度を使用最高温度と規定した。また、
融解開始温度は、吸熱ピークの立上がる時の温度を、融
解温度は吸熱ピークの示す温度から夫々求めた。本発明
におけるフライアッシュファイバーの熱的特性は、その
化学特性によって影響されるが、非常に高く、結晶化温
度は950〜1050℃、融解温度は1150〜130
0℃、使用最高温度は910〜950℃である。本発明
者は、化学組成を総合的に検討してフライアッシュファ
イバーを製造した結果、910℃以上の使用最高温度を
有する極めて有効な無機繊維の製造技術を確立したもの
である。
【0060】フライアッシュファイバーの原料となる石
炭灰の成分は、前記表−11に示したように石炭の産地
によって異なっているが、主たるものは二酸化ケイ素
(シリカ;SiO2)と酸化アルミニウム(アルミナ;
Al23)であり、この二つの無機質で全体の60〜8
0%を占める。その他、少量の酸化第二鉄、酸化カルシ
ウム、酸化マグネシウムなどが含まれている。石炭灰の
品質保持のためには、原料である石炭の成分が安定して
いることが好ましい。また、できるだけシリカ含有量が
低く、アルミナ含有量の高い石炭灰の方が、結晶化温
度、融解温度および使用最高温度の高いフライアッシュ
ファイバーの製造が可能である。ただ、アルミナ含有量
が多いと、高温における粘度は低くなるので、フライア
ッシュファイバーを紡糸する際には、粘度調整剤として
石灰岩などの副原料を添加することが好ましい。
【0061】本発明に従うフライアッシュファイバーの
化学組成は、請求項1記載の通り、Al23含量が20
〜40%、SiO2含量が35〜50%、CaO含量が
15〜35%、Fe23含量が3〜12%、MgO含量
が2〜5%である。この組成のフライアッシュファイバ
ーが得られる原料石炭灰の化学組成は、Al23が10
〜40%、特に15〜30%、SiO2が30〜65
%、特に40〜50%、CaOが0.5〜15%、特に
1〜5%、Fe23が1〜20%、特に5〜15%、M
gOが0〜10%、特に0〜2%であることが好まし
い。この成分組成をもつ原料石炭灰の化学組成の一例と
して、Al23が18.9%、SiO2が56.6%、
CaOが2.5%、Fe23が12.8%及びMgOが
1.0%の中国大同炭の石炭灰を挙げることができる。
【0062】ここで、本発明に従うフライアッシュファ
イバー、及びその原料石炭灰を構成する各成分の組成
は、X線マイクロアナライザーにより元素分析を行い得
られた結果に基づき、それぞれの安定した形態である酸
化物の形に換算して表現したものである。従って、本発
明のフライアッシュファイバー又は石炭灰中に必ずしも
上記酸化物の形で存在するわけではない。
【0063】上記好ましい配合内の石炭灰を用いて本発
明のフライアッシュファイバーを製造する場合には、該
石炭灰をそのまま融解し繊維化してもよい。しかし、こ
れらの化学組成内に入っていない場合には、必要に応じ
て別の副原料を添加することが好ましい。また、上記化
学組成内にある石炭灰であっても、必要に応じて適宜各
種の副原料を添加することができる。
【0064】副原料としては、従来公知の無機繊維に用
いられると同様のものを本発明に用いることができ、例
えば石灰岩、各種シリカ、各種アルミナ、ムライトある
いはシリマナイトなどの粘土鉱物、リン酸マグネシウム
等のリン酸塩、電融アルミナ、酸化鉄、酸化マグネシウ
ム、各種天然鉱物などを挙げることができる。その他に
溶融促進剤、粘度調整剤などを添加してもよい。更に具
体的には、オケルマナイト(2CaO・MgO・2Si
2)、アンダルサイト(Al23・SiO2)、灰長石
(CaO・Al23・2SiO2)、霞石(CaC
3)、ベルリナイト(Al23・P25)、ベーマイ
ト(Al23・H2O)、方解石(CaCO3)、ダイア
スポア(Al23・H2O)、透輝石(CaO・MgO
・2SiO2)、ドロマイト(MgCO3・CaC
3)、鉄橄攬石(2FeO・SiO2)、フォルステラ
イト(2MgO・SiO2)、ゲーレナイト(2CaO
・Al23・SiO2)、灰礬拓榴石(3CaO・Al2
3・3SiO2)、灰鉄輝石(CaO・FeO・2Si
2)、ヒルゲンストッカイト(4CaO・P25)、
水バン石(Al23・3H2O)、カイアナイト(Al2
3・SiO2)、ラルナイト(2CaO・SiO2)、
メルウイナイト(MgO・3CaO・2SiO2)、モ
ンチセライト(CaO・MgO・SiO2)、ナーゲル
シュミタイト(7CaO・P25・2SiO2)、紅拓
榴石(3MgO・Al23・3SiO2)、ランキナイ
ト(3CaO・2SiO2)、サッフィリン(4MgO
・5Al23・2SiO2)、滑石(3MgO・4Si
2・H2O)、ホイットロカイト(3CaO・P
25)、珪灰石(CaO・SiO2)、ジルコニア(Z
rO2)、ジルコン(ZrO2・SiO2)、各種ジルコ
ニア化合物などである。
【0065】本発明のフライアッシュファイバーは、従
来のセラミックスファイバーなどの無機繊維の製造法を
用いて製造することができる。例えば、原料の石炭灰の
融解では、粉体状の原料を固めて投入するキューポラに
よるバッチシステム法(キューポラ法)、原料を粉体の
まま直接投入する電気炉を用いた電気炉法などが挙げら
れる。このうち電気炉法は、電力原単位が低い、収率が
高い等の点から好ましい。これらの方法で融解された石
炭灰は、セラミックスファイバーの場合と同じように、
ブローイングプロセススあるいはスピニングプロセスス
などで繊維化される。この場合にも、ショット混入率の
低い、長めの繊維長が確保できることから好ましい。
【0066】高温融体の繊維化には、適正な粘度が得ら
れる温度での融解が必要であり、原料の石炭灰の組成に
もよるが、1100〜1900℃、特に1400〜17
00℃の温度が適当である。
【0067】本発明に従うフライアッシュファイバー
は、シリカを35〜50%含むことから、セメントペー
スト中に浸漬した場合に溶解し、強度の低下が心配され
る。この点について検討するためにフライアッシュファ
イバー10gを普通ポルトランドセメントのペースト中
に浸漬し80℃に加熱し、200時間後に取り出した。
この処理に伴う重量減少率は認められなかった。ロック
ウールの場合には、繊維形態を保持できないで粉末化し
ていたことと比べると、フライアッシュファイバーの耐
アルカリ性は、はるかに優れていることが判った。ま
た、走査電子顕微鏡でフライアッシュファイバーの表面
を観察したところ、激しくエッチングされている様子は
なかった。従って、重量減少率や表面状況などから、耐
アルカリ性は問題ないと言える。
【0068】しかしながら、フライアッシュファイバー
の化学成分の中にはSiO2が含まれているから、セメ
ント系マトリックスと長期間特性を維持できるかは疑問
がのこる。このことから、耐アルカリ性をもつフライア
ッシュファイバーの製造について更に検討した。ガラス
質のフライアッシュファイバーに耐アルカリ性を付与さ
せるには、すでにガラス繊維(ARG)に適用され、好
ましい結果の得られている酸化ジルコニウムの添加法を
採用することにより有効に達成できた。酸化ジルコニウ
ムの添加原料には、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、
ジルコニウムのケイ酸塩(ジルコン、ZrO2・Si
2)、塩化ジルコニウムなどのハロゲン化物、Zr
(NO34・5H2O、ZrO・(NO32、Zr(S
42、Zr(SO4)・4H2O、ZrO(SO4)、
Zr(H2PO4)、ZrP27などの酸素酸塩、各種有
機酸塩などを使用した。
【0069】これらの物質を、上記と同様の原料石炭灰
の中に所定量(石炭灰の5〜20%)添加し、1500
〜1600℃に加熱し、溶解させた後、上記と同様の方
法で紡糸した。得られたフライアッシュファイバーの外
観、繊維径、繊維長さなどは、ジルコニウムを含まない
一般用のフライアッシュファイバーの場合とほぼ同様で
あった。また、走査電子顕微鏡で表面状態を観察した
が、ジルコニアの有無による差は認められなかった。
【0070】X線マイクロアナライザーを使用して、こ
のジルコニウム化合物を含有する場合のフライアッシュ
ファイバーの組成分析を行ったところ、請求項2記載の
通り、Al23;20〜45%、SiO2;25〜50
%、CaO;15〜35%、Fe23;3〜12%、M
gO;0〜5%、ZrO2;3〜10%であった。この
フライアッシュファイバーをセメントの飽和溶液中に5
0時間浸漬したが、重量減少は認められなかった。また
走査電子顕微鏡で表面状態を観察したが、浸食されてい
ることはなかった。これらのことから、酸化ジルコニウ
ムを含有することによって、耐アルカリ性のフライアッ
シュファイバーの得られることが判った
【0071】本発明に従うフライアッシュファイバーを
使用して、種々の優れた建築材料を開発することができ
る。その一つに、フライアッシュファイバーを強化材と
して使用した、フライアッシュファイバー強化セメント
複合材がある。本発明に従うフライアッシュファイバー
と普通ポルトランドセメントとから複合材を作製する
と、その機械的強度は、作製条件により影響を受ける
が、例えばフライアッシュファイバーをセメント重量の
25%含むセメント複合材の曲げ強度は80kgf/cm2
圧縮強度は690kgf/cm2であった。この場合、フライ
アッシュファイバーを添加していないセメント硬化体よ
りも、曲げ強度では2.5倍、圧縮強度では20%増の
強度補強が見られた。
【0072】さらに、フライアッシュファイバーを使用
した高強度、高耐火性の建築材料を開発できた。その場
合のマトリックスとしてアルミナセメントを用い、フラ
イアッシュファイバー強化アルミナセメント複合材料を
作製したところ、例えば、密度2.2g/cm3で、曲げ強
度の最高値は190kgf/cm2、圧縮強度の最高値は14
50kgf/cm2のものが得られた。これらの強度は、アル
ミナセメント単身の場合より、曲げ強度では2.5倍、
圧縮強度では1.8倍も大であった。このフライアッシ
ュファイバー強化アルミナセメント複合材は、高い耐火
性および熱衝撃性を有し、900℃の熱処理後でも形状
変化はなく、実用性のある高い機械的強度を保持してい
た。
【0073】上記のフライアッシュファイバー強化コン
クリートは、従来のガラスウール、ロックウールなどの
セラミックスファイバーよりは、はるかに優れた保温
材、断熱材の強化材としても有効である。
【0074】また、本発明のフライアッシュファイバー
をセメントやコンクリート以外の素材(プラスチック、
金属、ゴム、ガラス、木材など)と複合させると、それ
ぞれの特性が向上することが認められた。例えば、フラ
イアッシュファイバーとプラスチックとの強化材では、
衝撃強度の向上が見られた。また、金属(アルミニウ
ム)との複合材では、硬度の向上とともに、増量材とし
て20%添加しても機械的強度を低下させることはなか
った。
【0075】本発明のフライアッシュファイバーは、そ
れを複合化させるマトリックスの種類や特性にあわせ
て、繊維特性と化学組成を適宜調節できる。例えば、セ
メント系マトリックス用フライアッシュファイバーの場
合には、耐アルカリ性を有してなければならない。ま
た、金属強化(FRM)用および樹脂強化(FRP)
用、ゴム用、ガラス用、木材用などの場合には、機械的
強度、耐熱性、しなやかさなどが要求されることにな
る。両者の違いは、フライアッシュファイバー中に含ま
れる酸化ジルコニウム成分の有無およびその量によって
制御することが好ましい。酸化ジルコニウムを含有しな
い請求項1記載のフライアッシュファイバーは、金属
用、樹脂用、ガラス用、木材用、ゴム用などに適し、酸
化ジルコニウムを含有する請求項2記載の耐アルカリフ
ライアッシュファイバーは、セメント、モルタル、コン
クリート用などに適している。
【0076】本発明に従うフライアッシュァイバーの更
に具体的な用途としては、特に限定されないが、上記の
如き強化材の他に、断熱材(各種工業炉のライニング
材、自動車排気系統断熱材、誘導コイル部断熱材、溶融
アルミニウム取り鍋および湯道、ガラスタンク窯蓄熱室
外部断熱材、局部焼結用ユニットヒーター、熱処理金属
部品の除冷誘導炉周辺断熱材、熱処理炉バックアップ断
熱材、大口径管溶接部徐冷材、精密鋳造シェルの断熱
材、鋳物用ホットトップ材、ライザースリープ材、電子
式コピー設備断熱部材、レイドルの内張り材など)、シ
ール材(コイル焼鈍炉インナーカバーガスシール材、均
熱炉炉蓋ガスシール材、各種工業窯炉およびダクトのジ
ョイント部シール材、溶融アルミ用タップコーン部、製
鋼真空脱ガス装置ガスケット部、温水ボイラー用ガスケ
ット、小型工業窯炉材など)、パッキング材(炉壁膨張
材の充填材、バーナータイル周囲の充填、のぞき穴ブロ
ック、測温用パイプその他の金具類周囲のパッキング
材、家庭用燃焼器具用パッキング材、自動車エンジン部
品、ボイラー、高温高圧容器用パッキング材など)、吸
音材(高温箇所用(バーナー周囲)吸音材、小型温水ボ
イラーの燃焼音吸音材など)、複合材料用補強材(耐火
物中の補強材、宇宙船外壁補強材など)、触媒担体(触
媒担体製造用原料、ガス改質用、コンバーター用触媒ヘ
ッド、触媒燃焼式ガスストーブなど)、ろ過材(白金炉
ダスト回収用フィルターなど)などの他、赤外線バーナ
ー面発熱体、耐火被覆材、耐熱治具、熱交換素子、ふく
射材料、マシナブルセラミックス等を挙げることができ
る。
【0077】
【実施例】以下本発明を実施例により例証するが、本発
明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0078】実施例1 中国大同炭を燃焼し、生成した石炭灰を原料としてフラ
イアッシュファイバーを製造した。この大同炭灰の化学
組成は、Al23;18.9%、SiO2;56.6%
、CaO;2.5%、Fe23;12.8%、Mg
O;1.0%である。このままでは融解しにくいので、
溶融促進剤として、石灰岩を使用石炭灰量の30%を加
えた。その他に、粘度調節剤としての鉱物(例えば、リ
ン酸マグネシウム系化合物など)も加えた。これらの混
合物を約1600℃に加熱してある電気炉中に入れて融
解し、それをブローイングプロセス又はスピニングプロ
セスで繊維化してフライアッシュファイバー(フライア
ッシュファイバー(1))を製造した。
【0079】得られた繊維は、白色ガラス状であった。
繊維長さは、5〜30mmで、ショットを含んでいた。ま
た、走査電子顕微鏡で断面を観察すると、直径は5〜2
0μm程度であった。得られたフライアッシュファイバ
ーを熱分析装置(理学電機(株)製、サーモフレック
ス)で熱重量分析および示差熱分析を行った。空気中1
300℃まで重量分析を行ったが重量の増減はなかっ
た。一方、示差熱分析では、910℃付近から発熱ピー
クが、1140℃付近から吸熱ピークが夫々見られた。
前者はフライアッシュファイバーの結晶化の開始であ
り、後者は融解であった。このフライアッシュファイバ
ーの結晶化温度は995℃、融解温度は1205℃、使
用最高温度は910℃であった。
【0080】フライアッシュファイバーの機械的特性
を、万能試験機で測定した。機械的性質は、繊維径によ
って異なった。例えば、直径が6μmの場合には、引張
り強度4120MPa、引張り弾性率200GPaであった。
また、繊維径が15μmのフライアッシュファイバーで
は、引張り強度290MPa、引張り弾性率17.5GPaで
あった。いずれの場合も、ロックウールや一般的なガラ
スファイバーとは、耐熱性の点でも、機械的強度の点で
も、遥かに優れていた。
【0081】X線マイクロアナライザー装置を使用し
て、フライアッシュファイバー内に含まれている各元素
の定性および定量分析を行った。製造されたフライアッ
シュファイバーの化学組成は、Al23;24.7%、
SiO2;40.5%、CaO;26.5%、Fe
23;8.3%であった。
【0082】製造したフライアッシュファイバーの化学
組成と結晶化温度、融解温度および使用最高温度などを
表−11に示す。また、比較のためにグラスウール、ロ
ックウール、酸化ケイ素繊維、セラミックスファイバー
および原料石炭灰も併せて示す。フライアッシュファイ
バーの使用最高温度は910℃であり、酸化ケイ素繊維
(750℃)よりは遥かに高く、セラミックスファイバ
ー(1000℃)よりはやや低いものであった。また、
耐熱性を左右するアルミナ含有量は24.7%であり、
酸化ケイ素繊維よりは高く、セラミックスファイバーよ
りは低いものであった。従って、フライアッシュファイ
バーは、性能的にはセラミックスファイバーに近いもの
であることが判明した。
【0083】
【表11】
【0084】実施例2 フライアッシュファイバーの使用最高温度をさらに向上
させるために、実施例1とは別の配合でフライアッシュ
ファイバーを製造した。原料の石炭灰は、実施例1と同
じ中国大同炭を燃焼し、生成した石炭灰を用いた。この
大同炭灰の化学組成は、Al23;18.9%、SiO
2;56.6%、CaO;2.5%、Fe23;12.
8%、MgO1.0%である。この中に、融解促進剤と
しての石灰岩の添加量を実施例1よりも少なくした。そ
の量は、石炭灰の、25%加えたもの(フライアッシュ
ファイバー(2))および20%加えたもの(フライアッ
シュファイバー(3))の2種類とした。その他に、実施
例1の場合と同様にリン酸マグネシウム系化合物などの
粘度調節剤も加えた。これらの混合物を約1600℃に
加熱してある電気炉中に入れて融解し、それをブローイ
ングプロセスス又はスピニングプロセススで繊維化して
各フライアッシュファイバーを製造した。
【0085】得られたフライアッシュファイバーの外
観、機械的強度、直径などは、実施例1の場合とほぼ同
じであった。フライアッシュファイバーの風合いは、添
加石灰岩量が増すと、柔らかさが増加した。作られたフ
ライアッシュファイバーを熱分析装置(理学電機(株)
製、サーモフレックス)で熱重量分析および示差熱分析
を行った。空気中1300℃まで重量分析を行ったが、
重量の増減はなかった。一方、示差熱分析では、940
℃付近から発熱ピークが、1150℃付近から吸熱ピー
クが夫々見られた。前者はフライアッシュファイバーの
結晶化の開始であり、後者は融解である。さらに、各ピ
ークの位置からフライアッシュファイバーの結晶化温度
は975℃、融解温度は1180℃であった。さらに、
石灰岩量を少なくすると、融解温度はより高く1225
℃になった。
【0086】X線マイクロアナライザー装置を使用し
て、フライアッシュファイバー内に含まれている各元素
の定性および定量分析を行った。主原料の石炭灰と、副
原料の石灰岩との配合を種々変化させて製造した、フラ
イアッシュファイバーの化学組成と結晶化温度、融解温
度および安全使用最高温度などを表−12に示す。製造
されたフライアッシュファイバーの化学組成は、石灰岩
量を減らすことによって、Al23含有量は24.7%
から32.0%へと増加した。また、CaO量は26.
5%から20.7%へと少なくなった。SiO2含有量
は40%とほぼ一定であった。
【0087】また、実施例1の場合よりも石灰岩量を少
なくしたことによって、結晶化開始温度は910℃から
945℃へと高くなった。また、融解開始温度も114
0℃から1185℃へと上昇した。これらのことから、
フライアッシュファイバー中のCaO量は、繊維化が可
能ならばできるだけ少ないこととの方が好ましいといえ
る。
【0088】
【表12】
【0089】実施例3 実施例2で調製したフライアッシュファイバー(3)の耐
アルカリ性について検討した。フライアッシュファイバ
ー(3)10.0gをセメントペーストの飽和溶液(pH
=13)300ml中に浸漬し、200時間80℃に加熱
した。水洗、乾燥後、重量を測定したが重量変化は見ら
れなかった。走査電子顕微鏡で浸漬後のフライアッシュ
ファイバーの表面を観察すると、処理前に比べ、やや平
滑性が失われていた。従って、極めて長期間セメント等
のアルカリ性マトリックス中に浸漬した場合には、繊維
強度を維持できるかどうかには問題が残る。ただし、そ
の他のマトリックス(例えば、金属、樹脂、木材、ゴ
ム、ガラスなど)ならば、強化材としての強度を維持で
きることは明白である。
【0090】フライアッシュファイバーがFRM(繊維
強化金属)強化材として使用可能であるかについて検討
した。純アルミニウム粉末(13.5g)中にフライア
ッシュファイバー(1.5g)を添加し、両者を充分に
混合した。これをホットプレスの黒鉛製型枠(内径40
mm)中に充填し、真空ポンプで減圧にした。この混合物
に280kg/cm2の圧力を加えた。次に、真空ポンプで減
圧にすることを止め、アルゴンガスを毎分1リットル流
しながら、毎分3.3℃の速度で665℃まで加熱し
た。同温度に30分間保持した後、昇温時と同じ速度で
降温した。
【0091】得られたフライアッシュファイバー強化ア
ルミニウム複合材は、直径40mm、厚さ6mmの円盤状で
あった。複合材の引張強度は96MPaで、無添加の場合
(103MPa)と同程度であった。しかしながら、FR
Mの表面強度は、ヌープ硬さで60(無添加では3
3)、ロックウェル硬さで81(無添加では55)と大
きくなっていた。事実、研磨紙に対しての削り易さは、
フライアッシュファイバー量が増すにつれて、硬く削り
にくくなっていた。
【0092】実施例4 フライアッシュファイバーの耐アルカリ性を向上させる
ために、実施例1および実施例2とは別の配合でフライ
アッシュファイバーを製造した。原料の石炭灰は、実施
例1と同じ中国大同炭を燃焼し、生成した石炭灰を用い
た。この大同炭灰の化学組成は、Al23;18.9
%、SiO2;56.6%、CaO;2.5%、Fe2
3;12.8%、MgO;1.0%である。この中に、
融解促進剤としての石灰岩を石炭灰重量の20%相当を
加えた。その他に、酸化ジルコニウム又はジルコン若し
くはその他のジルコニウム化合物を添加した。その量
は、ZrO2の形に換算して石炭灰の10%であった。
その他に、実施例1の場合と同様に、リン酸マグネシウ
ム系化合物などの粘度調節剤も加えた。これらの混合物
を約1600℃に加熱してある電気炉中に入れて融解
し、それをブローイングプロセスス又はスピニングプロ
セススで繊維化してフライアッシュファイバー(4)を製
造した。
【0093】得られたフライアッシュファイバーの外
観、機械的強度、直径などは、実施例2の場合とほぼ同
じであった。X線マイクロアナライザー装置を使用し
て、フライアッシュファイバー内に含まれている各元素
の定性および定量分析を行った。Al23;35%、S
iO2;30%、CaO;20%、Fe23;8%、M
gO;2%、ZrO2;5%であった。
【0094】次に、このフライアッシュファイバー(4)
をセメントペーストの飽和溶液(pH=13)中に浸漬
し、80℃で50時間加熱した。水洗、乾燥後、重さを
測定したが、重量減少は認められなかった。また、浸漬
後のフライアッシュファイバーの表面を走査電子顕微鏡
で観察したが、エッチングされている様子はなかった。
従って、ジルコニウムを含有したフライアッシュファイ
バーは、耐アルカリ性が優れていることがわかった。
【0095】
【発明の効果】以上のことから、本発明のフライアッシ
ュファイバーは、優れた機械的強度及び耐熱性を有する
低廉な新規無機繊維であり、金属用、樹脂用、ゴム用、
木材用およびガラス用等の繊維強化材、断熱材、保温
材、シール材など幅広く用いることができる。更にジル
コニウム化合物を含有させることにより、更に耐アルカ
リ性が向上し、特にセメント・モルタル・コンクリート
用として有効である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭57−188427(JP,A) 特開 昭60−134026(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D04F 9/08 C04B 14/38

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 20〜40%のAl23、35〜50%
    のSiO2、15〜35%のCaO、3〜12%のFe2
    3及び2〜5%のMgOを含有することを特徴とする
    フライアッシュファイバー。
  2. 【請求項2】 20〜45%のAl23、25〜50%
    のSiO2、15〜35%のCaO、3〜12%のFe2
    3、0〜5%のMgO及び3〜10%のZrO2を含有
    することを特徴とするフライアッシュファイバー。
JP33393192A 1992-12-15 1992-12-15 フライアッシュファイバー Expired - Fee Related JP3155638B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP33393192A JP3155638B2 (ja) 1992-12-15 1992-12-15 フライアッシュファイバー

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP33393192A JP3155638B2 (ja) 1992-12-15 1992-12-15 フライアッシュファイバー

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH06316815A JPH06316815A (ja) 1994-11-15
JP3155638B2 true JP3155638B2 (ja) 2001-04-16

Family

ID=18271578

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP33393192A Expired - Fee Related JP3155638B2 (ja) 1992-12-15 1992-12-15 フライアッシュファイバー

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3155638B2 (ja)

Families Citing this family (15)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3619974B2 (ja) * 1996-02-02 2005-02-16 イビデン株式会社 無機繊維緩衝シール材の製造方法
JP2006220214A (ja) * 2005-02-10 2006-08-24 Matsushita Electric Ind Co Ltd 真空断熱材
JP5024847B2 (ja) 2005-06-06 2012-09-12 トヨタ自動車株式会社 バサルト繊維材料
AU2006313594B2 (en) * 2005-11-10 2011-06-09 Morgan Advanced Materials Plc High temperature resistant fibres
EP2079580A4 (en) * 2006-11-09 2010-06-02 Lilo Nessim Beuzieron INORGANIC FABRIC
CN103979787B (zh) * 2014-05-19 2016-04-06 北京大学 一种利用高钙粉煤灰制备矿物棉的方法
CN104003622B (zh) * 2014-05-19 2016-04-27 北京大学 一种利用粉煤灰蒸压砖废品或用后砖制备矿物棉的方法
JP6594802B2 (ja) 2016-03-08 2019-10-23 東芝機械株式会社 非鉄金属合金溶湯用の給湯管、給湯管組立体及び非鉄金属鋳造システム
JP7017958B2 (ja) * 2018-03-15 2022-02-09 太平洋セメント株式会社 骨材原料の調製方法及び骨材の製造方法
WO2020217568A1 (ja) * 2019-04-25 2020-10-29 新日本繊維株式会社 耐放射線劣化性無機組成物及びその繊維
WO2020218356A1 (ja) 2019-04-25 2020-10-29 新日本繊維株式会社 耐放射線性無機材料及びその繊維
CN110643187B (zh) * 2019-09-19 2021-05-07 三河市纳诺科斯机电产品制造有限公司 一种改性粉煤灰增强道路沥青及其制备方法
AU2021242712A1 (en) * 2020-03-24 2022-10-13 Nippon Fiber Corporation Fiber and fiber manufacturing method
CN113072304B (zh) * 2021-04-25 2022-09-02 泰安顺茂新材料技术有限公司 耐碱纤维玻璃组合物及制备方法
CN115417669A (zh) * 2022-09-30 2022-12-02 武汉科技大学 高硅氧玻璃纤维增强焦磷酸锆基复合材料及其制备方法

Also Published As

Publication number Publication date
JPH06316815A (ja) 1994-11-15

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3155638B2 (ja) フライアッシュファイバー
US4384046A (en) Method of producing mullite ceramic fiber products
Wallenberger et al. Fiberglass and glass technology
US7887917B2 (en) Inorganic fiber
US5346868A (en) Inorganic fiber
EP2996998B1 (en) Refractory castables with hydrophobic aggregates
US20070252308A1 (en) Method for suppressing reaction of molten metals with refractory materials
US4304604A (en) Production, composition and aftertreatment of mineral fibers for the micro-reinforcement of binders of building materials
US4472201A (en) Hydraulic heat-resisting material and premold product made of such hydraulic heat-resisting material
CN1193947C (zh) 利用煤矸石制造硅酸铝陶瓷纤维的方法及其应用
EP0076677B1 (en) Glass fibre reinforced cementitious products
JP2000515480A (ja) 生物溶解性、高温鉱物ウール
EP1086936A2 (en) Ceramic composites and use thereof as lining materials
EP0044716A1 (en) Ceramic fibre composite and method of making it
CN114174235B (zh) 无机纤维、无机纤维制品、无机纤维制品的制造方法、无机纤维制造用组合物和无机纤维的制造方法
AU2006345730B2 (en) Inorganic fiber
US4018964A (en) Method for preparing glassy fiber having protuberances studded on the surface useful for reinforcement and resulting product
JP2003261366A (ja) ロックウール、ロックウール成形体およびこれらの製造方法
JPH042543B2 (ja)
JPH1025138A (ja) 硬化性無機質組成物
JP2875589B2 (ja) ロックウール系組成物の吹付材
JPH02133359A (ja) 高強度セメント組成物及び高強度セメント硬化体の製造方法
JPH06239654A (ja) 無機繊維強化石膏複合材料
CN1188366C (zh) 熔铜炉吹风管保护层用耐火材料
Young Properties, applications and manufacture of man-made mineral fibers

Legal Events

Date Code Title Description
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20001228

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees