JP3149644B2 - 内燃機関の減速制御装置 - Google Patents

内燃機関の減速制御装置

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  • Electrical Control Of Air Or Fuel Supplied To Internal-Combustion Engine (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、所定の減速時に燃料
供給を停止するフューエルカット機構を備えた内燃機関
の減速制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】内燃機関の冷間始動時に、短時間で触媒
による排気浄化を開始できるように、触媒コンバータを
排気マニホルドの出口部など排気通路の比較的上流側に
配置したものが従来から知られている。このように上流
側に配置すれば、排気熱によって触媒コンバータの昇温
が促進され、その速やかな活性化が達成できる。尚、上
流側に配置することにより、相対的に触媒コンバータの
熱劣化が大きくなるので、熱劣化を勘案して耐久性を確
保できる範囲で触媒コンバータの位置を設定している。
【0003】また、燃料噴射式内燃機関などにおいて
は、燃料消費率の向上を図るために、所定の条件を満た
す減速時(例えば、車速および機関回転数が所定値以上
でかつ絞弁全閉時)に、燃料供給の停止、所謂フューエ
ルカットを実行するようにした減速制御装置が知られて
いる(例えば特開昭61−201864号公報、特開昭
62−93438号公報等参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記のように排気通路
の上流位置に配置した触媒コンバータにおいては、運転
条件によっては、かなりの高温状態で使用されることが
ある。
【0005】このような高温状態の下では、一般的に
は、触媒の貴金属が熱劣化することによる再生不能な永
久劣化のみが問題となるが、発明者らの研究によれば、
この永久劣化のほかに、性能が一時的に低下する一時劣
化が存在する。この一時劣化は、例えば800℃〜85
0℃といった高温状態で、触媒に酸素が結合することに
より生じる一時的な性能低下であり、酸素が離脱すれ
ば、再び触媒性能が回復するものである。すなわち、こ
の一時劣化は、空燃比に大きく依存するものとなり、触
媒温度が800℃〜850℃以上の高温下で、空燃比が
リーンであると、顕著な一時劣化が発生する。逆に、8
00℃〜850℃以上の高温下で、空燃比がリッチであ
ると、触媒からの酸素の離脱が促進され、一時劣化して
いた触媒性能が速やかに回復する。
【0006】従って、上記のように、フューエルカット
を行う減速制御装置では、運転条件により触媒温度が高
い場合には、フューエルカットの際に、酸素濃度の高い
排気が触媒コンバータを通過するために、一時劣化が大
きく発生し、その後の排気浄化性能に悪影響を与えると
いう欠点がある。
【0007】尚、上記特開昭61−201864号公報
や特開昭62−93438号公報には、フューエルカッ
トに伴う急激なトルク変動によるショックを緩和するた
めに、減速開始から僅かに遅延させてフューエルカット
を実行するようにした技術が開示されているが、この場
合の遅延期間は非常に短いものかつ、触媒劣化とは無関
係のものであり、上述した一時劣化を回避することはで
きない。
【0008】この発明は、図1に示すように、排気通路
に触媒コンバータを備えるとともに、機関の減速を検出
する減速検出手段1および所定の減速時に燃料供給を停
止するフューエルカット手段2を備えてなる内燃機関の
減速制御装置において、減速開始時の触媒温度を検出も
しくは推定する触媒温度検出手段3と、この減速開始時
の触媒温度に応じて、該温度が高いときほど長い遅延時
間を設定する遅延時間設定手段6と、上記減速開始時の
触媒温度が第1の高温領域にあるときに、上記遅延時間
設定手段6で設定された遅延時間だけ上記フューエルカ
ットの実行を遅延させる遅延手段4と、を設けたもので
ある。また、さらに、空燃比を補正する空燃比補正手段
5を備え、減速開始時の触媒温度が更に高温側の第2の
高温領域にあるときに、上記遅延手段4によって、上記
遅延時間設定手段6で設定された遅延時間だけフューエ
ルカットの実行が遅延されるとともに、上記空燃比補正
手段5によって、減速開始から上記遅延時間の間、空燃
比がリッチ側に補正されるようになっている。
【0009】
【作用】触媒温度検出手段3は、温度センサによる直接
的な検出もしくは機関運転条件等からの推定により触媒
温度を検出する。内燃機関が所定の減速状態となったと
きに、この触媒温度が低温領域にあれば、減速開始と同
時にフューエルカット手段2により燃料供給の停止つま
りフューエルカットが実行される。
【0010】これに対し、減速開始時の触媒温度が第1
の高温領域にあれば、遅延手段4によりフューエルカッ
トの実行が遅延される。従って、触媒温度がある程度低
下した段階でフューエルカットが開始され、リーン燃焼
による酸素濃度の高い排気と高温触媒との接触が回避さ
れる。ここで、減速開始時の触媒温度が高いほど、遅延
時間は長く設定される。このようにフューエルカットせ
ずに減速することにより、排気温度は速やかに低下す
る。さらに、減速開始時の触媒温度が第1の高温領域よ
り高温側の第2の高温領域にあれば、上記遅延手段4に
よりフューエルカットの実行が遅延されると同時に、
の遅延時間の間、空燃比補正手段5により空燃比がリ
チ側に補正される。これにより、触媒温度が高い間にリ
ッチ燃焼がなされることになり、一時劣化により低下し
ていた触媒性能が速やかに回復する。そして、触媒温度
がある程度低下した段階でフューエルカットが開始され
る。
【0011】
【実施例】以下、この発明の一実施例を図面に基づいて
詳細に説明する。
【0012】図2は、この発明に係る減速制御装置の機
械的構成を示す構成説明図であって、11は内燃機関、
12はその吸気通路、13は排気通路を示している。上
記吸気通路12には、各吸気ポートへ向けて燃料を供給
する電磁式燃料噴射弁14が配設されているとともに、
スロットル弁15が介装されている。このスロットル弁
15の開度は、ポテンショメータからなるスロットル開
度センサ16にて検出される。このスロットル開度セン
サ16によって内燃機関11の減速を検出することがで
きる。また、スロットル弁15の上流側に、吸入空気量
を検出する例えば熱線式のエアフロメータ17が配設さ
れている。
【0013】上記排気通路13には、例えば三元触媒を
用いた触媒コンバータ18が介装されている。この触媒
コンバータ18は、排気熱による昇温を速めるために、
排気通路13の比較的上流側、例えば排気マニホルドの
出口部分に装着されている。そして、この触媒コンバー
タ18よりも上流位置に、空燃比センサとしてO2セン
サ19が配設されている。このO2センサ19は、排気
中の残存酸素濃度に応じた起電力を発生するもので、理
論空燃比を境に起電力がステップ状に急変する特性を有
している。
【0014】また、20は内燃機関11の冷却水温を検
出する水温センサ、21は機関回転数を検出するために
設けられた所定クランク角毎にパルス信号を発するクラ
ンク角センサ、22は車速を検出する車速センサをそれ
ぞれ示している。
【0015】上述した各種センサの検出信号が入力され
るコントロールユニット27は、所謂マイクロコンピュ
ータシステムを用いたもので、CPU23、ROM2
4、RAM25、I/Oポート26等を主体として構成
されている。このコントロールユニット27は、エアフ
ロメータ17が検出する吸入空気量やO2センサ19の
検出信号等に基づき燃料噴射弁14の噴射量や噴射時
期、機関の点火時期等を総合的に制御しているととも
に、機関減速時に後述するフューエルカットを含む減速
制御を行っている。
【0016】次に、機関減速時の制御について説明す
る。本実施例では、触媒コンバータ18の温度を直接に
検出せずに、機関運転条件つまり機関の負荷(例えば基
本燃料噴射量Tp)と機関回転数Nとから推定してい
る。図4は、基本燃料噴射量Tpと機関回転数Nとから
定まる運転条件と排気温度(触媒コンバータ18入口温
度に相当する)との関係を示しており、低速低負荷側で
低温に、高速高負荷側で高温になる。この特性に対応し
て、図5に示すような領域の区分がなされている。すな
わち、領域Aは、排気温度が低く、触媒の一時劣化が問
題とならない低温領域であり、例えば排気温度が800
℃以下の領域に相当する。減速開始時に、運転条件がこ
の低温領域にあった場合には、減速時のフューエルカッ
トを特に遅延させずに実行する。また領域B〜領域D
は、触媒の一時劣化が生じ得る高温領域であり、その中
の比較的低温側の領域Bは、例えば排気温度が800℃
〜850℃の領域に相当する。減速開始時に、運転条件
がこの領域Bにあった場合には、フューエルカットを例
えば2秒間遅延させてから実行する。この領域Bより高
温側の領域Cは、例えば排気温度が850℃〜900℃
の領域に相当するものであり、減速開始時に、運転条件
がこの領域Cにあった場合には、フューエルカットを例
えば5秒間遅延させてから実行する。この領域Cよりさ
らに高温側の領域Dは、例えば排気温度が900℃以上
の領域に相当するものであり、減速開始時に、運転条件
がこの領域Dにあった場合には、フューエルカットを例
えば5秒間遅延させるとともに、その間、空燃比をリッ
チ側に補正する。
【0017】図6は、フューエルカットの遅延による作
用を示すもので、減速時(フューエルカット条件成立
時)に同時にフューエルカットを開始すると、(b),
(c)に実線で示すように、排気温度が十分に低下しな
い間に空燃比がリーンとなるが、フューエルカット実行
を遅延させると、(b),(c)に破線で示すように、
排気温度がある程度低下した段階で空燃比がリーンとな
り、しかも、減速中の燃料供給により排気温度の低下
が、(c)に示すように、フューエルカットを行う場合
よりも促進される。従って、触媒高温下でのリーン燃焼
による一時劣化を回避できるのである。
【0018】また、領域Dのような高温領域で空燃比を
リッチ側に保つと、触媒に結合していた酸素が離脱する
ようになり、上述した一時劣化が回避できるばかりでな
く、一時劣化していた触媒の性能回復を図ることができ
る。
【0019】次に、減速時になされる具体的な処理の流
れを図3のフローチャートに基づいて説明する。この図
3のフローチャートに示す処理は、機関運転中に繰り返
し実行されるもので、先ず、ステップ1では、燃料供給
停止つまりフューエルカット中であるか否かを判定す
る。減速開始時点では、ステップ1はNOであるので、
ステップ2へ進み、所定のフューエルカット条件が成立
しているか否かを判定する。例えば、機関冷却水温が所
定値以上、機関回転数Nが所定値以上、スロットル弁1
5が全閉状態、の各条件を同時に満たす場合に、フュー
エルカットを行うものとし、何れかの条件を満たさない
場合には、フューエルカットは行わない。次に、ステッ
プ3では、機関の負荷(例えば基本燃料噴射量Tp)と
機関回転数Nとから定まる運転条件が、所定の低温領域
である図5の領域A内にあるか否かを判定する。この減
速開始時の運転条件が領域A内にある場合には、ステッ
プ3からステップ7へ進み、直ちにフューエルカットを
実行する。
【0020】減速開始時の運転条件が領域A以外の場合
には、さらにステップ5およびステップ8の判定によ
り、領域Bであるか、領域Cであるか、あるいは領域D
であるかを判別する。但し、ステップ4において、冷却
水温が60℃以上であるか否か判定し、60℃未満の場
合には、運転条件の領域判定に拘わらず、ステップ7へ
進んで、直ちにフューエルカットを実行する。これは、
冷間始動直後に相当し、機関が高速高負荷となっても触
媒温度は低いためである。なお、水温が非常に低い状態
では、ステップ2の条件によりフューエルカット自体が
なされない。
【0021】減速開始時の運転条件が領域Bにある場合
は、ステップ5からステップ6へ進み、ここで減速開始
から2秒遅延させた後に、ステップ7へ進んでフューエ
ルカットを開始する。
【0022】減速開始時の運転条件が領域Cにある場合
は、ステップ8からステップ9へ進み、ここで減速開始
から5秒遅延させた後に、ステップ7へ進んでフューエ
ルカットを開始する。つまり、この場合は、領域Bより
も減速開始時点の触媒コンバータ18入口温度が高いこ
とになるので、遅延期間を長く与えることで、一時劣化
を確実に回避している。
【0023】また減速開始時の運転条件が領域Dにある
場合は、ステップ8からステップ10へ進み、空燃比を
リッチ側に補正する。これは、例えば、運転条件により
決定された燃料噴射量に1以上の所定の係数を乗じるこ
とにより行われる。この補正は、ステップ11により例
えば5秒間なされ、5秒経過後にステップ7へ進んでフ
ューエルカットを開始する。
【0024】そして、このようにフューエルカットが開
始された後は、ステップ1からステップ12へ進み、所
定のリカバー条件であるか否かが繰り返し判定される。
例えば、スロットル弁15が非全閉状態となったり、機
関回転数Nが所定回転数以下となった場合には、ステッ
プ12からステップ13へ進み、フューエルカットを停
止する。つまり、燃料の噴射を再開する。
【0025】なお、上記実施例では、機関の負荷(基本
燃料噴射量Tp)と機関回転数Nとから触媒温度を推定
するようにしているが、排気温度もしくは触媒コンバー
タ18の温度を温度センサにより直接に検出するように
構成してもよい。
【0026】
【発明の効果】以上の説明で明らかなように、この発明
に係る内燃機関の減速制御装置によれば、触媒コンバー
タが高温状態にある間にフューエルカットに伴い酸素濃
度の高い排気が触媒に接触して顕著な一時劣化が発生す
ることを回避でき、しかも、リッチ空燃比による一時劣
化の回復が図れる。従って、触媒の一時劣化による性能
低下を防止して、常に良好な排気浄化を行うことができ
る。また、高温下での一時劣化が回避できることから、
それだけ触媒コンバータを排気通路の上流側に配置する
ことが可能となり、冷間始動時に早期に排気浄化を開始
することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の構成を示すクレーム対応図。
【図2】この発明の一実施例を示す構成説明図。
【図3】この実施例における制御の内容を示すフローチ
ャート。
【図4】運転条件と排気温度との関係を示す特性図。
【図5】減速開始時の運転条件の領域を示す特性図。
【図6】減速時の車速と空燃比と排気温度の変化を示す
タイムチャート。
【符号の説明】
1…減速検出手段 2…フューエルカット手段 3…触媒温度検出手段 4…遅延手段 5…空燃比補正手段
フロントページの続き (72)発明者 馬場 清孝 神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日 産自動車株式会社内 (56)参考文献 特開 昭55−137339(JP,A) 特開 昭52−81428(JP,A) 実開 昭57−35426(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F02D 41/12 330 F02D 41/22 330

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 排気通路に触媒コンバータを備えるとと
    もに、機関の減速を検出する減速検出手段および所定の
    減速時に燃料供給を停止するフューエルカット手段を備
    えてなる内燃機関の減速制御装置において、 減速開始時の触媒温度を検出もしくは推定する触媒温度
    検出手段と、この減速開始時の触媒温度に応じて、該温度が高いとき
    ほど長い遅延時間を設定する遅延時間設定手段と、 上記 減速開始時の触媒温度が第1の高温領域にあるとき
    、上記遅延時間設定手段で設定された遅延時間だけ
    記フューエルカットの実行を遅延させる遅延手段と、 を設けたことを特徴とする内燃機関の減速制御装置。
  2. 【請求項2】 空燃比を補正する空燃比補正手段をさら
    に備え、 減速開始時の触媒温度が更に高温側の第2の高温領域に
    あるときに、上記遅延手段によって、上記遅延時間設定
    手段で設定された遅延時間だけフューエルカットの実行
    が遅延されるとともに、上記空燃比補正手段によって、
    減速開始から上記遅延時間の間、空燃比がリッチ側に補
    正されることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の
    減速制御装置。
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