JP3149342B2 - 湿式吹付用組成物 - Google Patents

湿式吹付用組成物

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、工業炉の内張用耐火断
熱材として使用する湿式吹付用組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】工業炉の内張用耐火断熱材としてセラミ
ックファイバーなどの無機繊維材料が多く使用されてい
る。
【0003】無機繊維材料を施工する方法の一つとして
吹付方法がある。吹付方法はホースを用いて迅速に多量
の材料を輸送して施工する方法である。この吹付方法
は、乾式法と、湿式法の二つの方法に大別することがで
きる。
【0004】乾式法においては、水を添加しない組成物
が、ホース内を空気搬送されて吹付けノズル部分で排出
される。別に、ノズル周辺に設けた口より水が噴出され
る。このように排出された組成物と噴出された水とを接
触させて吹付けを行う。
【0005】湿式法においては、水を添加して混合した
組成物がホース内をポンプで搬送され、吹付けノズル部
分で圧縮空気により吹付けられる。
【0006】最近は、工期の短縮のために、このような
乾式法と湿式法による吹付施行が採用されることが多
い。
【0007】乾式法は施工の際に粉塵が多く、作業環境
が悪い。これに対し、湿式法は水の添加により粉塵がほ
とんど無い。そのため、湿式法による施工が望まれてい
る。
【0008】ところが、従来、高耐火性の無機繊維を主
材とする組成物で湿式吹付専用に開発されたものはほと
んどない。実際には不定形耐火物やボード用に開発され
た組成物の水分を調整して使用することが提案されてい
る程度であった。
【0009】例えば、特開昭57−71878号公報で
は、無機繊維と、アルミナ粉末と、コロイド状シリカ
と、水を含む組成物が提案されている。また、特開平5
−170525号公報では、無機繊維と、モード径が5
〜33μmのアルミナ粉末と、コロイド状シリカと、水
を含む組成物が提案されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】湿式吹付用組成物の好
ましい特徴としては、次のものを挙げることができる。
【0011】(a)ホース内を搬送できる流動性を有す
ること、(b)吹付け後は接着性があり、たれのないこ
と、(c)水分が少なくて乾燥が容易なこと。
【0012】前述のこれまでに提案されている組成物
は、本来、湿式吹付け専用の組成物ではなく、不定形耐
火物やボードの組成物の水分を調整しただけであり、湿
式吹付に好ましい特性を十分に満足する組成物ではなか
った。従って、そのまま湿式吹付けに適用すると、いろ
いろと問題が生じた。
【0013】例えば、特開昭57−71878号公報で
は、水の添加量が組成物に対し約75重量%以上と多す
ぎて、施工後の乾燥に長い時間が必要であったり、施工
時に、たれが生じる。
【0014】また、特開平5−170525号公報に示
された組成物では、流動性が不足し、ホース内を搬送す
るのに多量の水分を要した。通例、組成物全体に対して
約80重量%以上の水分が必要である。また、粘着性が
少なく、施工時に、たれが生じたり、強度に問題があっ
た。
【0015】このような従来技術に鑑み、本発明は、前
記問題を解決し、たれの少ない、耐熱性を有する湿式吹
付用組成物を提供することを目的としている。
【0016】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するため
に、本発明は、工業炉の内張用耐火断熱材として使用す
る湿式吹付用組成物において、耐火性無機粉末、無機繊
維、コロイド状シリカ、有機増粘剤及び水分からなり、
耐火性無機粉末の平均粒径が1〜25μであり、無機繊
維の水中密度が0.025〜0.050g/cm3 であ
り、耐火性無機粉末と無機繊維との混合比率が重量部で
0.2≦耐火性無機粉末/(無機繊維+耐火性無機粉
末)≦0.8であることを特徴とする湿式吹付用組成物
を要旨としている。
【0017】好ましくは、有機増粘剤を除外して、組成
物全体に対してコロイド状シリカが乾燥重量で1〜9重
量%を占め、水分(コロイド状シリカ中の水分を含む)
が45〜65%を占めるように設定する。
【0018】
【作用】耐火性無機粉末(その典型例がアルミナ粉末で
あるので、以下アルミナ粉末を例にとって説明する)
は、平均粒径が1〜25μであることが好ましい。この
範囲において、粘度の経時変化が少ない、耐熱性の優れ
た組成物が得られるからである。
【0019】このように経時変化が少ない理由は、これ
らの粒径のアルミナ粉末が有機増粘剤と混在することに
よって、コロイド状シリカの架橋反応を抑制するためと
考えられる。
【0020】耐熱性が向上する理由は、高温で加熱され
た際に、アルミナ粉末とコロイド状シリカが反応してム
ライトが生成して、ムライトが生成するとき体積が膨脹
し、無機繊維の収縮を補う効果があるためである。
【0021】ムライトが生成する温度以下であっても、
アルミナ粉末とコロイド状シリカが無機繊維を介して三
次元に結合して、耐熱性が向上する。
【0022】更に、同じ水分量で混合しても、1〜25
μの粒径のアルミナ粉末を使用すると、流動性が良くな
り、添加水分量を減らすことができる。
【0023】アルミナ粉末の平均粒径が1μより小さい
と、混合の際にアルミナ粉末の再凝集が起こり、均一な
混合物になりにくい。耐熱性の向上もない。
【0024】アルミナ粉末の平均粒径が25μより大き
いと、均一な混合物は得られるが、経時変化により粘度
が上昇し、ポンプで圧送する際に、施工スピードが落ち
ると共に耐熱性が向上しない。
【0025】平均粒径とは、横軸を粒子径値、縦軸を積
算頻度としてグラフを描いたときに得られる累積曲線の
中央累積値(50%)に当たる粒子の径である。
【0026】無機繊維は、耐火断熱材として作用する他
に、組成物の粘着性や流動性を適性にする作用がある。
【0027】無機繊維としては、耐火性のある繊維、例
えばアルミナおよびシリカが各々40〜60重量%のア
ルミナシリカ繊維、アルミナが60重量%以上でシリカ
が40重量%以下の高アルミナ繊維が好ましい。この他
の例をあげると、アルミナシリカジルコニア系繊維、シ
リカ繊維、岩綿などがある。
【0028】無機繊維の水中密度は0.025〜0.0
50g/cm3 であることが好ましい。この範囲におい
ては少量の水分で均一な混合物を得ることができて、ポ
ンプ圧送の際の流動性も良いからである。高温で使用さ
れた場合、このような水中密度であると、無機繊維の収
縮が分散されて成形体としての収縮が小さくなり、耐熱
性の優れた成形体が得られる。
【0029】水中密度とは、無機繊維を水中に均一に分
散し、30分間静置した後の無機繊維の嵩密度である。
【0030】水中密度の具体的な測定方法を次に説明す
る。内径65mm、高さ約400mmの1000ml用
メスシリンダーに10gの無機繊維と1リットルの水を
入れて10回天地攪拌して無機繊維を均一に分散する。
その後、30分間静置する。この間に、無機繊維は沈降
し、無機繊維および水が混合した層と、水のみの層に分
かれる。無機繊維および水の層の体積をメスシリンダー
の目盛りで読み取る。無機繊維の重さ10gをこの体積
で除して水中密度とする。
【0031】無機繊維の水中密度は、一般に、繊維が長
いと小さくなり、繊維が短いと大きくなる傾向がある。
しかし、無機繊維は一本一本の径や長さが異なっていた
り、完全な繊維にならない部分も一部含んでいるため
に、水中密度と長さが単純に対応する訳ではない。
【0032】しかし、湿式吹付材の特性に及ぼす無機繊
維の性質を表現する特性として、水中密度は好都合の特
性である。
【0033】本発明においては、無機繊維の水中密度が
0.025〜0.050g/cm3である。0.050
g/cm3 を超えると、組成物の均一性、流動性、耐熱
性は向上するが、耐熱衝撃性が低下して、成形体が熱衝
撃により割れ易くなる。0.025g/cm3 未満であ
ると、組成物が不均一になり、流動性が低下して、ポン
プ圧送が困難になる。さらに、耐熱性が向上しない。
【0034】アルミナ粉末と無機繊維の混合比率は、重
量で0.2≦アルミナ粉末/(無機繊維+アルミナ粉
末)≦0.8の範囲が好ましい。0.2未満では、アル
ミナ粉末の添加による流動性、耐熱性の効果がなくな
る。0.8を越えると、耐熱衝撃性が低下して、成形体
が熱衝撃により割れ易くなるとともに、嵩密度も高くな
り、たれが大きくなる。
【0035】コロイド状シリカは、無機接着剤として乾
燥した時の強度を大きくするために加えるものである。
コロイド状シリカは、組成物を乾燥したときの重量で1
〜9%が好ましい。この範囲において、使用時に強度の
大きく、経時変化が少なくて熱的性質の優れた組成物が
得られる。
【0036】水分は施工後の乾燥を考えると可能な限り
少ないほうが好ましい。繊維材料は断熱作用があるため
に、繊維材料を含む組成物は、乾燥が難しく、しかも長
時間を要する。
【0037】この他、水分が少ないと、粘度が増加し
て、たれが少なくなる。しかし、粘度の増加は同時に流
動性の減少となって、ホース内の搬送が困難になる。
【0038】水分量は、乾燥による重量の減少量に相当
し、45〜65重量%が好ましい。この範囲において、
乾燥が速く、たれの無い、しかもホース内を容易に搬送
し得る組成物が得られる。
【0039】本発明はアルミナ粉末の粒径および無機繊
維の水中密度を限定することにより、このように水分を
減らしても、ホース内を容易に搬送できる流動性を得ら
れるようにした。本発明の組成物は、湿式吹付材に必要
な適度の粘着性、流動性を有することができる。
【0040】
【実施例】本発明の実施例を説明する。
【0041】アルミナ粉末、無機繊維、コロイド状シリ
カ、水を所定の割合に配合し、配合物を作り、この配合
物100重量部に対して有機増粘材としてヒドロキシエ
チルセルロースを1.5重量部添加し、混合攪拌して組
成物とする。
【0042】フォロープレートとラムシリンダーの付い
たエアーポンプ(アロー社製形番650691)(入口
圧力4kg/cm2 )を用いて、内径19mm、長さ1
0mのホース内を前述の組成物が搬送され、ホースの先
端に設けた内径10mmの吹付けノズル部分から排出さ
れる。それと共に、別に設けたホースから導いた圧力4
kg/cm2 の圧縮空気が吹付けノズル部分から噴出さ
れる。それにより組成物を耐火煉瓦の上に吹き付けて、
厚さ30mmの成形体を得た。
【0043】無機繊維としては、実施例1〜9ではAl
2 3 72%の結晶質高アルミナ繊維4部とAl2 3
52%の非晶質アルミナシリカ繊維6部の混合物を使用
し、実施例10ではAl2 3 72%の結晶質高アルミ
ナ繊維のみを使用し、実施例11ではAl2 3 52%
の非晶質アルミナシリカ繊維のみを使用し、実施例12
ではAl2 3 95%の結晶質高アルミナ繊維のみを使
用した。
【0044】無機繊維の原綿は小さな水中密度を有して
いる。この原綿を粉砕機などで切断して、水中密度を所
望の値に調整した。
【0045】無機繊維の水中密度と長さを調べた結果、
水中密度が0.020g/cm3 の無機繊維は長さ10
mmのものが80%以上であった。同じく0.035g
/cm3 の繊維は長さ3〜15mmのものが80%以
上、同じく0.067g/cm3 は1mm以下のものが
80%以上であった。長さは繊維を拡大鏡で観察し、そ
れと同時に本数を数えた。
【0046】各組成物の混合物の状態、粘度、排出量、
嵩密度、熱収縮率、耐熱衝撃性、たれなどの特性を観察
および測定した。配合と特性を表1に示す。
【0047】
【表1】 各実施例1〜12は、本発明の範囲内であり、湿式吹付
材として好ましい特性を備えている。
【0048】次に実施例1〜12で得られた組成物の各
持性を説明する。
【0049】熱収縮率は、1400℃に24時間保持す
る加熱の前後での寸法変化であり、間接的に耐熱性を示
す。たれは、側面に施工した後の、組成物が移動した距
離であり、間接的に粘着性を示す。排出量は、ノズルの
出口から出てくる組成物の量であり、間接的に流動性を
示す。時間の経過による粘度の変化を経時変化として示
す。
【0050】耐熱衝撃性は、50×100×100mm
の成形体を作製し、この成形体を所定の温度に保持した
電気炉にいれて15分間加熱し、その後、炉から取り出
して放冷して、成形体に割れが発生したときの加熱温度
として示す。加熱温度は、1000℃から100℃毎に
行った。
【0051】比較例 配合割合が異なる他は実施例1〜12と同様にして組成
物を作製し比較例1〜10とした。その特性を測定し
て、表2に示す。
【0052】
【表2】 比較例1、2はアルミナ粉末の粒径が本発明の範囲外で
ある例を示す。特性としては、排出量が少なく、耐熱性
に劣る。
【0053】比較例3は無機繊維が水中密度が大きい例
を示す。特性としては、耐熱衝撃性に劣る。
【0054】比較例4は無機繊維が水中密度が小さい例
を示す。特性としては、均一な混合ができずに、一定量
の排出が出来なかった。
【0055】比較例5はコロイド状シリカが少ない例を
示す。特性としては、熱収縮率が大きい。
【0056】比較例6はコロイド状シリカが多い例を示
す。特性としては、時間と共に粘度が上昇して排出量が
少ない。耐熱衝撃性に劣る。
【0057】比較例7は水分が少ない例を示す。特性と
しては、粘度が高くて、排出量が少ない。
【0058】比較例8は水分が多い例を示す。特性とし
ては、たれが大きくなる。
【0059】比較例9はアルミナ粉末が少ない例を示
す。特性としては、熱収縮率が大きく、耐熱性に劣る。
【0060】比較例10はアルミナ粉末が多い例を示
す。特性としては、たれが大きく、耐熱衝撃性に劣る。
【0061】本発明の耐火性無機粉末は、アルミナ粉末
に限らず、ムライト、カイヤナイトなどの耐火性粉末を
使用しても同様の効果が得られる。
【0062】本発明の組成物に少量の有機繊維や有機粉
末を添加しても良い。これらの有機物は燃焼して空隙を
形成し、断熱性の向上および嵩密度の低減効果が得られ
る。
【0063】
【発明の効果】本発明によれば、耐火性無機粉末(アル
ミナ粉末)の粒度および無機繊維の水中密度を限定した
ことによって、水分が少なく、経時変化も少なく、適度
の粘着性を有し、流動性に優れた湿式吹付用組成物が得
られる。この組成物はホース内を容易に搬送することが
できる。吹付施工すると、排出量が多く、迅速に施工が
できて、たれが少なく、乾燥時間の短い耐火断熱体が得
られる。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭52−96608(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C04B 35/66

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 工業炉の内張用耐火断熱材として使用す
    る湿式吹付用組成物において、耐火性無機粉末、無機繊
    維、コロイド状シリカ、有機増粘剤及び水分からなり、
    耐火性無機粉末の平均粒径が1〜25μであり、無機繊
    維の水中密度が0.025〜0.050g/cm3 であ
    り、耐火性無機粉末と無機繊維との混合比率が重量部で
    0.2≦耐火性無機粉末/(無機繊維+耐火性無機粉
    末)≦0.8であることを特徴とする湿式吹付用組成
    物。
  2. 【請求項2】 有機増粘剤を除外して、組成物全体に対
    してコロイド状シリカが乾燥重量で1〜9重量%を占
    め、水分(コロイド状シリカ中の水分を含む)が45〜
    65重量%を占めることを特徴とする請求項1に記載の
    湿式吹付用組成物。
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