JP3139298B2 - 圧延機の速度制御装置 - Google Patents

圧延機の速度制御装置

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JP3139298B2
JP3139298B2 JP06192178A JP19217894A JP3139298B2 JP 3139298 B2 JP3139298 B2 JP 3139298B2 JP 06192178 A JP06192178 A JP 06192178A JP 19217894 A JP19217894 A JP 19217894A JP 3139298 B2 JP3139298 B2 JP 3139298B2
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、複数基の圧延機により
材料を順次圧延する多段圧延設備において、圧延材料が
圧延ロールに噛み込んだ際の圧延速度の低下を補償する
圧延機の速度制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】図5は、従来のこの種の速度制御装置を
示している。図において、1は圧延材料、2は圧延ロー
ル、3は圧延ロール2を駆動する電動機、4は電動機3
の速度を検出する速度検出器、5は電源としての電力変
換器6の入力電流から電動機の電流を検出する電流検出
器、7は速度調節器、8は電流調節器、13は瞬時速度
低下抑制用オブザーバである。
【0003】上記構成において、速度調節器7は速度検
出値10が速度指令値9に一致するように調節動作して
電流指令値11を出力し、また、オブザーバ13は速度
検出値10及び電流検出値12から負荷トルクを推定し
て出力する。これらの電流指令値11及びオブザーバ1
3の出力と電流検出値12とは図示の符号で加減算さ
れ、その結果が電流調節器8の入力となる。
【0004】この従来技術における速度制御の基本的な
考え方は、圧延ロール2が圧延材料1を噛み込んだ際に
速度検出値10が低下するので、噛み込み時の負荷トル
クをオブザーバ13により推定し、その結果を速度調節
器7の出力であるもとの電流指令値(トルク指令値)1
1に加算して最終的な電流指令値を得ている。そして、
電流検出値12がこの電流指令値に一致するように電流
調節器8を介し電力変換器6及び電動機3を制御するこ
とにより、噛み込み時の圧延速度の低下を補償するとい
うものであった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】図6(A)は、圧延機
がある速度で運転中に圧延ロール2が圧延材料1を噛み
込んだときの圧延速度の変化を示し、図6(B)は電動
機3の電流の変化を示すものである。いま、圧延機が速
度指令値9に従って運転されているとする。時刻t1
おいて圧延ロール2が圧延材料1を噛み込んだとする
と、それ以後、速度検出値10及び電流検出値12は図
示のような挙動を示す。
【0006】すなわち、圧延速度はΔVだけ低下し、回
復時間ΔTを経た後にほぼもとの速度指令値9に戻る。
この速度低下により、前段の圧延ロール(図示せず)か
らの圧延材料1の押し込みが発生し、前段の圧延ロール
と圧延材料1の先端部が噛み込んだ後段の圧延ロール
(例えば図5の圧延ロール2)との間で圧延材料1が上
方へ湾曲する“たくれ”現象が発生し、圧延材料1の先
端部がつぶれて圧延失敗を招くおそれがあった。
【0007】本発明は上記問題点を解決するためになさ
れたもので、その目的とするところは、圧延材料噛み込
み時の“たくれ”現象、及びこれに基づく圧延材料先端
部の変形をなくして歩留まりを向上させた圧延機の速度
制御装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、請求項1記載の第1の発明は、圧延材料を圧延する
圧延ロールと、圧延ロールを駆動する電動機と、電動機
の速度を検出する速度検出器と、電動機の電流を検出す
る電流検出器と、電動機の速度検出値が速度指令値に一
致するように調節動作する速度調節器と、電動機の電流
検出値が速度調節器の出力としての電流指令値に一致す
るように電動機を制御する手段と、電動機の電流検出値
及び速度検出値から負荷トルクを推定するオブザーバと
を備え、前記電流指令値にオブザーバの出力を加算した
値を最終的な電流指令値として速度制御を行う圧延機の
速度制御装置において、圧延ロールが圧延材料を噛み込
む時刻の以前から、通常運転時の速度指令値に補設定値
を加算して通常運転時よりも高い速度指令値を与える手
段と、負荷トルク推定値と基準レベルとを比較するコン
パレータと、負荷トルク推定値が基準レベルを越えてか
ら一定時間を経過した後に前記補設定値の加算を解除す
る手段とを備えたものである。
【0009】また、請求項2記載の第2の発明は、圧延
ロールの手前の位置を圧延材料が通過したことを検出す
るセンサと、このセンサの出力信号に基づき、圧延ロー
ルが圧延材料を噛み込む時刻の前後にわたる一定期間の
み、通常運転時の速度指令値に補設定値を加えて通常運
転時よりも高い速度指令値を与える手段とを備えたもの
である。
【0010】
【作用】第1の発明では、圧延材料の噛み込み以前か
ら、通常の速度指令値よりも高い速度指令値にて速度制
御を行い、圧延材料を噛み込んだ後、負荷トルク推定値
が基準レベルを越えてから一定時間経過した後で速度指
令値を通常運転時の値に戻す。第2の発明では、圧延材
料の噛み込み以前に圧延材料が圧延ロールの手前を通過
したことを検出し、その後、噛み込み時刻の前後にわた
るような一定期間だけ、通常の速度指令値よりも高い速
度指令値にて速度制御を行う。このように第1または第
2の発明によれば、圧延材料の噛み込み時には通常運転
時よりも高い速度指令値にて加速された形で圧延される
ため、いわゆる“たくれ”現象が起こらず、圧延材料先
端部の変形も生じない。
【0011】
【実施例】以下、図に沿って各発明の実施例を説明す
る。図1は、第1の発明の実施例を示しており、図5と
同一の構成要素には同一の番号を付して詳述を省略し、
以下では異なる部分を中心に説明する。図1において、
15は負荷推定器であり、速度検出値10及び電流検出
値12から負荷トルクを推定する。なお、この機能はオ
ブザーバ13と同様であるため、負荷推定器15を省略
してオブザーバ13により代用しても良い。
【0012】17は、負荷トルク推定値16がある基準
レベルを越えると動作するコンパレータ、18はオンデ
ィレイ用のタイマ、19は圧延材料噛み込み時の速度低
下分を見込んだ高め速度補設定値20を切り/入りさせ
るための、b接点形のスイッチである。なお、21は速
度指令値9に加えられる速度補設定値であり、スイッチ
19のオン時には速度補設定値21は速度補設定値20
に等しく、スイッチ19のオフ時には速度補設定値21
はゼロとなる。
【0013】図2は、この実施例の動作を示す波形図で
あり、(A)は速度検出値10、(B)は電流検出値1
2、(C)は速度補設定値21、(D)は負荷トルク推
定値16である。また、(D)において、Vrefはコン
パレータ17の基準レベル(比較レベル)、ΔTMはタ
イマ18の遅延時間である。
【0014】この実施例において、圧延機は噛み込みの
発生時刻t1以前から、通常運転時の速度指令値9に速
度補設定値21としての高め速度補設定値20を加算し
た値を最終的な速度指令値9'として運転しており、こ
のときの速度検出値10は前記速度指令値9'に一致し
ている。時刻t1で圧延ロール2が圧延材料1を噛み込
むと、速度検出値10が低下するのと同時に負荷トルク
推定値16が次第に増加していく。そして、この推定値
16がコンパレータ17の基準レベルVrefを越えた時
刻t2で、タイマ18が動作を開始する。
【0015】タイマ18の遅延時間ΔTMは、速度検出
値10が通常運転時の速度指令値9近くに低下するまで
の時間に予め設定されており、時刻t2からΔTM経過
後の時刻t3において、タイマ18の出力によりスイッ
チ19をオフする。このスイッチ19のオフにより、速
度指令値9'は通常の速度指令値9に復帰し、速度実際
値が速度指令値9に一致するように制御が行われる。
【0016】このように制御することにより、圧延材料
1の噛み込み時に通常の速度指令値9を下回らずに圧延
することが可能になる。また、速度指令値9に対する速
度偏差を示す面積(図2(A)の斜線部分)を、従来の技
術(図6(A)の斜線部分)に比べて大幅に減少させるこ
とができ、通常の速度指令値9への回復時間も短縮する
ことが可能である。
【0017】次に、第2の発明の実施例を図3、図4を
参照しつつ説明する。図3はこの実施例の構成を示すも
ので、図1と同一の構成要素には同一の番号を付してあ
る。図3において、22は圧延材料1が圧延ロール2の
手前を通過したことを検出する圧延材料通過センサ、2
3,24はセンサ出力信号27により動作するオンディ
レイ用のタイマ、25はタイマ24の出力信号が加えら
れるNOT回路、26はタイマ23及びNOT回路25
の出力信号が加えられるAND回路である。そして、A
ND回路26の出力信号がa接点形のスイッチ19に加
えられている。
【0018】図4は、この実施例の動作を示す波形図で
あり、(A)は速度検出値10、(B)は電流検出値1
2、(C)は速度補設定値21、(D)はセンサ出力信
号27である。また、(D)において、ΔTM1はタイ
マ23の遅延時間、ΔTM2はタイマ24の遅延時間で
ある。
【0019】いま、圧延機が速度指令値9のもとで運転
されているとする。圧延材料1が時刻t01でセンサ22
により検出されると、センサ22の出力によりタイマ2
3,24がカウントを開始する。一方のタイマ23がΔ
TM1経過後の時刻t02にカウントアップすると、タイ
マ23の出力は“H”レベルとなる。このとき、NOT
回路25の出力は“H”レベルであるため、AND回路
26を介して“H”レベルの信号が出力される。これに
よりスイッチ19がオンして、速度指令値9に速度補設
定値20(21)を加算した値が新たな速度指令値9'
となる。
【0020】つまり、速度調節器7は通常運転時に比べ
て加速状態になる。この状態において時刻t1で圧延材
料1を噛み込むと、速度検出値10が図示のように低下
する。他方のタイマ24の遅延時間ΔTM2は、速度検
出値10が通常の速度指令値9まで低下する時間に予め
設定されており、時刻t2においてタイマ24の出力は
“H”レベル、NOT回路25の出力は“L”レベルと
なる。これにより、AND回路26を介してスイッチ1
9がオフするので、速度補設定値20の加算が解除さ
れ、速度指令値9'は通常の速度指令値9に復帰すると
共に、この速度指令値9に速度実際値が一致するように
制御が行われる。
【0021】本実施例においても、圧延材料1の噛み込
み時に通常の速度指令値9を下回らずに圧延することが
可能になる。また、速度指令値9に対する速度偏差を示
す面積(図4(A)の斜線部分)を、従来の技術(図6
(A)の斜線部分)に比べて大幅に減少させ、通常の速度
指令値9への回復時間を短縮することができる。
【0022】なお、タイマ23,24、NOT回路2
5、AND回路26は、センサ22により圧延材料1の
通過を検出した後、一定時間だけスイッチ19をオンさ
せるパルスを出力させるものであるから、これらの代わ
りに、例えば単安定マルチバイブレータ等のパルス発生
手段を用いてもよい。
【0023】
【発明の効果】以上のように第1または第2の発明によ
れば、圧延ロールが圧延材料を噛み込む際には通常運転
時よりも高い速度指令値にて加速された形で圧延される
ため、前段の圧延ロールとの間でいわゆる“たくれ”現
象が起こらず、圧延材料先端部が後段の圧延ロールによ
り圧迫されて変形するおそれもない。従って、圧延製品
として使用できる長さが増え、製品の歩留まりを向上さ
せることができる。また、構成上、従来技術に幾つかの
機能ブロックを付加すれば実現可能であるから、既存の
速度制御装置を改良して使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の発明の実施例を示すブロック図である。
【図2】第1の発明の実施例の動作を示す波形図であ
る。
【図3】第2の発明の実施例を示すブロック図である。
【図4】第2の発明の実施例の動作を示す波形図であ
る。
【図5】従来の技術を示すブロック図である。
【図6】従来の技術の動作を示す波形図である。
【符号の説明】
1 圧延材料 2 圧延ロール 3 電動機 4 速度検出器 5 電流検出器 6 電力変換器 7 速度調節器 8 電流調節器 9,9' 速度指令値 10 速度検出値 11 電流指令値 12 電流検出値 13 瞬時速度低下抑制用オブザーバ 15 負荷推定器 16 負荷トルク推定値 17 コンパレータ 18,23,24 タイマ 19 スイッチ 20,21 速度補設定値 22 圧延材料通過センサ 25 NOT回路 26 AND回路 27 センサ出力信号
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B21B 37/00 - 37/78

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 圧延材料を圧延する圧延ロールと、圧延
    ロールを駆動する電動機と、電動機の速度を検出する速
    度検出器と、電動機の電流を検出する電流検出器と、電
    動機の速度検出値が速度指令値に一致するように調節動
    作する速度調節器と、電動機の電流検出値が速度調節器
    の出力としての電流指令値に一致するように電動機を制
    御する手段と、電動機の電流検出値及び速度検出値から
    負荷トルクを推定するオブザーバとを備え、前記電流指
    令値にオブザーバの出力を加算した値を最終的な電流指
    令値として速度制御を行う圧延機の速度制御装置におい
    て、 圧延ロールが圧延材料を噛み込む時刻の以前から、通常
    運転時の速度指令値に補設定値を加算して通常運転時よ
    りも高い速度指令値を与える手段と、 負荷トルク推定値と基準レベルとを比較するコンパレー
    タと、 負荷トルク推定値が基準レベルを越えてから一定時間を
    経過した後に前記補設定値の加算を解除する手段と、 を備えたことを特徴とする圧延機の速度制御装置。
  2. 【請求項2】 圧延材料を圧延する圧延ロールと、圧延
    ロールを駆動する電動機と、電動機の速度を検出する速
    度検出器と、電動機の電流を検出する電流検出器と、電
    動機の速度検出値が速度指令値に一致するように調節動
    作する速度調節器と、電動機の電流検出値が速度調節器
    の出力としての電流指令値に一致するように電動機を制
    御する手段と、電動機の電流検出値及び速度検出値から
    負荷トルクを推定するオブザーバとを備え、前記電流指
    令値にオブザーバの出力を加算した値を最終的な電流指
    令値として速度制御を行う圧延機の速度制御装置におい
    て、 圧延ロールの手前の位置を圧延材料が通過したことを検
    出するセンサと、 このセンサの出力信号に基づき、圧延ロールが圧延材料
    を噛み込む時刻の前後にわたる一定期間のみ、通常運転
    時の速度指令値に補設定値を加えて通常運転時よりも高
    い速度指令値を与える手段と、 を備えたことを特徴とする圧延機の速度制御装置。
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