JP3135653B2 - 光学活性カルボン酸の製法 - Google Patents

光学活性カルボン酸の製法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、α−置換された光学活
性カルボン酸を、相応するアミドのエナンチオマーの混
合物を酵素触媒によりエナンチオ選択加水分解すること
及び光学活性カルボン酸を単離することによって製造す
る方法に関する。
【0002】
【従来の技術】α−アミノ酸は、天然産及び合成の両方
で食品工業、医薬品工業、農業化学工業等で多く使用さ
れる重要な分子である。光学的に純粋なD−(−)−フ
ェニルグリシンは、D−(−)−パラヒドロキシフェニ
ルグリシンが抗生物質アモキシリン製造の際の中間体で
あるため、抗生物質アンピシリン及びセファレキシンの
ための重要な構成単位である。D−エナンチオマーがフ
ルバリネート(Fluvalinate)(殺虫剤)のための価値の
ある中間体であるため、天然産のアミノ酸L−バリンは
シクロスポリン−A発酵の先駆物質として好適である。
合成アミノ酸と同様にD−ホモフェニルアラニン及びL
−ホモフェニルアラニンを種々のACE−阻害剤の合成
の際の構成単位として使用することができる。
【0003】α−アミノ酸以外にα−アルキル−α−ア
ミノ酸もまた種々の工業において重要である。L−α−
メチル−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニンは、例
えば高血圧に対する重要な薬剤である。
【0004】α−N−ヒドロキシアミノ酸及び/又は該
物質の誘導体は、該物質のペプチドと同様に一般的に生
物学的活性を有しており、かつ通常は抗生物質的活性及
び/又は抗腫瘍活性を有している。E. Buehler及びG.B.
Brown(J. Org. Chem.32(1967)265)は、
種々のN−ヒドロキシアミノ酸が微生物学的発酵中に得
られる種々の抗生物質の成分であると述べており、これ
らの執筆者は、天然産のペプチドから得られる幾つかの
α−N−ヒドロキシアミノ酸を挙げている。
【0005】キラルα−ヒドロキシ酸もまた、薬剤生成
物及び農業化学生成物の両方を製造する際の重要な分子
であり:これらの生成物は、例えばα−ヒドロキシプロ
ピオン酸(除草剤)、α−ヒドロキシフェニルブチル酸
(ACE阻害剤)及びマンデル酸(分解剤(splitting a
gent))である。α−ヒドロキシ酸と併用される場合の
通常の分解技術の付加的に重要な利点は、β−遮断薬の
合成にとって著しく重要であるキラルα−ヒドロキシア
ミンに還元することができる光学活性α−ヒドロキシ酸
アミドが残留されることである。
【0006】α−ヒドロキシカルボン酸アミドの、酵素
触媒によるエナンチオ選択加水分解は、特開昭61‐8
8894号公報に記載されている。そこに記載されてい
る方法の場合には、アエロモナス ヒドロフィラ(Aerom
onashydrophila)(FERMP−7360)及びモラキ
セラ フェニルペルビカ(FERM P−7359)が
使用される。基質は、α−ヒドロキシカルボン酸アミド
に制限される。
【0007】上記方法の欠点は、収量及び光学純度(エ
ナンチオマー過剰率)が比較的低いことである。達成さ
れた光学純度は90〜95%のみであるが、しかし、多
くの場合の使用、特に薬剤への使用に対しては少なくと
も99%の光学純度が要求される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、光学
活性L−カルボン酸及びまた残留D−カルボン酸アミド
がエナンチオマー過剰率(e.e.)95%以上、特に9
8%以上、最大の場合には99%以上で得られ、この場
合には高い収量も達成される方法を提供することであ
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的は、本発明によ
ればアミノ−、ヒドロキシ−もしくはN−ヒドロキシア
ミン基でα−置換されたラセミカルボン酸アミドを加水
分解することによって達成され、この場合、使用酵素は
オクロバクトルム アントロピ(Ochrobactrumanthropi)
又はクレブシエラ(Klebsiella)属sp.である。
【0010】
【作用】オクロバクトルム アントロピ又はクレブシエ
属sp.が使用される場合に、L−カルボン酸及び残
留D−カルボン酸アミドが著しく光学的に純粋な形及び
高い収量で得られ、一方ではさらに、該微生物が、該物
質の使用を商業的規模で可能にする、著しく高い活性度
を有していることが見出された。また、本発明によって
使用される微生物を使用することによって、注目すべき
構造的多様性を有する著しく多数のα−置換カルボン酸
アミドを高い選択性及び活性度で加水分解することがで
きることも見出された。有利には、オクロバクトルム
アントロピNCIB40321又はクレブシエラ属s
p. NCIB40322が使用される。
【0011】適当な基質の例は、炭素原子2〜20個を
有するα−アミノ酸アミド、例えばフェニルグリシンア
ミド、パラ−ヒドロキシフェニルグリシンアミド、バリ
ンアミド等である。例えばα−アミノ酸アミドの加水分
解は、公知のアミダーゼ(アミノペプチダーゼ)、例え
ばプソイドモナス プティダ(Pseudomonas putida)から
のアミダーゼの存在下での加水分解と比較して迅速に進
行する。加水分解活性が広いpH範囲にわたって生じる
ことは利点である。他の適当な基質は、例えばα−ヒド
ロキシ酸アミド及びα−N−ヒドロキシアミノ酸アミド
である。カルボン酸アミドは多くの場合炭素原子2〜2
0個を有し、かつα位に第2の置換基、例えばアルキル
基を有していてもよい。
【0012】α−N−ヒドロキシ−アミノ酸アミンの酵
素加水分解は、これまで文献には全く記載されていなか
った。この種の加水分解方法での問題は、得られたα−
N−ヒドロキシ−アミノ酸が、このような方法の場合に
常用される基本条件下で脱カルボキシル化することであ
る。今回出願人によって、本発明による方法の場合には
良好な活性度が低いpH値で、脱カルボキシル化が生じ
ないか又は脱カルボキシル化が殆ど生じないで達成され
ていることも見出された。酸素が化学的な脱カルボキシ
ル化反応のための触媒として作用する際には、α−N−
ヒドロキシアミノ酸アミドの加水分解中に反応混合物は
有利には窒素分子でフラッシされる。さらに加水分解は
窒素分子下で行なわれる。
【0013】本発明は、相応するL−酸に加水分解され
る基質のL−エナンチオマー及び、D−アミドを残留さ
せるD−エナンチオマーにとって著しく大きな利点を有
するエナンチオ選択酵素加水分解を基礎とする。
【0014】本発明による方法によって使用される生物
は、オクロバクトルム アントロピ及びクレブシエラ
sp.、殊にオクロバクトルム アントロピ NCIB
40321及びクレブシエラ属sp. NCIB403
22である。これらの生体の生成は、成分、例えば炭素
源、窒素源、ビタミン及びミネラルを含有する、空気に
晒された媒体中で行なわれる。この種の酵素製造の活性
度及び選択性を最適にするために、加水分解されるべき
少量のアミド又は他の適当な誘導物質を培養基に添加す
ることができる。培養をバッチで、供給バッチ(fed-bat
ches)で行なうこともできるし、連続的に行なうことも
できる。
【0015】同様の培養方法は、特許明細書及び科学出
版物、例えば欧州特許出願公開第244912号明細書
から公知であり、かつこれらの印刷物に詳細に記載され
ており;従って該培養方法の記載は本明細書には必要な
い。本発明に使用される際の酵素調剤は純度及びその他
同様のことを強制されず、かつ粗製酵素溶液であっても
よいし、精製酵素であってもよく;また、該調剤は、必
要な活性度を有する透過性化された細胞からなっていて
もよいし、同様の活性度を有する細胞のホモジネートか
らなっていてもよい。また、酵素を固定化した形で使用
することもできるし、化学的に改質した形で使用するこ
ともできる。発明は、酵素が本発明に使用される態様に
よって制限されることは決してない。本発明の記載の範
囲内では、突然変異体から誘導された酵素を使用するこ
ともできるし、通常は遺伝的に改質された微生物から誘
導された酵素を使用することもできる。
【0016】エナンチオ選択酵素加水分解は、このよう
なものとして公知である。エナンチオ選択は、種々のエ
ナンチオマーの転化速度における差違を基礎としてい
る。本発明による方法の場合には上記アミドの殆ど専ら
1つのエナンチオマーが加水分解され、その結果して転
化率は約50%であり、生成物e.e.及び基質e.e.は
約100%であることが見出された。本発明による方法
の付加的な利点は、残留基質、カルボン酸アミドのD−
エナンチオマーを回収することもできることである。引
き続き、公知方法、例えば非立体特異酵素を使用するこ
とによって該カルボン酸アミドを加水分解して該カルボ
ン酸の別のエナンチオマーに変換することができる。転
化率とe.e.値との間の関係は、エナンチオ選択酵素加
水分解についてはQu-Ming Gu他によってTetrahedron Le
tters 27(1986)5203以降に記載されてお
り、かつより一般的な用語ではGhing-ShinChen他によっ
てJ. Am. Chem. Soc. 104(1982)7294以
降に記載されている。エナンチオ選択転化についての一
般的理論はこれらの刊行物に記載されており、かつ本発
明による方法にも適用される。
【0017】反応に使用される細胞は必要に応じて分離
されていてもよく、かつ引き続く転化に、活性度が明ら
かに影響を及ぼされることなく再使用することができ
る。
【0018】問題の微生物の培養の開始時、培養中もし
くは培養後にアミドを培養基に添加することによって加
水分解を行なうことができる。培養細胞を例えば遠心分
離によって収集することもでき、かつアミドを含有する
反応媒体に添加することもできる。この場合には細胞懸
濁液及び乾燥細胞の両方、例えば凍結乾燥細胞、噴霧乾
燥細胞、及び有機溶剤、例えばアセトンもしくはトルエ
ンで処理した細胞を使用することができる。破壊された
細胞又は細胞からの抽出物を使用することもできる。
【0019】反応は通常水性環境の中で行なわれる。こ
の加水分解反応を有機溶剤の存在下で行なうこともまた
可能である。
【0020】加水分解のための反応条件はそれほど重要
ではない。反応は通常水性環境の中で行なわれるが、し
かし水と有機溶剤の混合物を使用することもできる。p
Hは、例えばKOH、NaOH及びNH4OHを使用し
て酵素の活性度範囲内の値に調整され;この値は通常3
〜11、特に4〜9.5である。さらに、加水分解は通
常周囲温度もしくは僅かに高い温度、即ち20℃〜85
℃の間の温度で行なわれる。30℃〜70℃の間の温度
が有利である。明らかに反応条件は、不利な副反応はい
ずれも回避される方法で選択されるべきである。
【0021】基質の濃度は広い範囲内で変化することが
でき、かつ例えば2.5〜500g/lであってもよ
い。基質もしくは生成物との副反応を回避するために転
化を酸素の不在下で、例えば窒素分子を用いたフラッシ
ング下で行なわせることができる。
【0022】本発明による方法を使用しかつ上記の微生
物を使用することによって多数のα−置換カルボン酸ア
ミドを加水分解して、著しく高い選択性及び活性度を有
する、相応するカルボン酸に変換することができること
が見出された。実際には、同じ生体触媒を種々の生成物
の製造に使用することは殊に有利であり、それというの
も、この個々の生成物は通常それぞれ少ない需要量にし
か相当しないからである。
【0023】
【実施例】次に、本発明を例につき詳説するが、しかし
ながら、本発明はこの例の範囲内で限定されるものでは
ない。
【0024】これらの例の場合には反応生成物の分析、
特にエナンチオマー過剰率(e.e.)の測定を2つのH
PLC方法を用いて行い、この方法では必要に応じて反
応の選択度の値をGhing-Shin Chen氏らの式を用いて計
算することができる。(J. Am. Chem. Soc. 104(1
982)7294以降)。α−H−α−アミノ酸及びα
−アルキル−α−アミノ酸の2つ、並びに相応するアミ
ノ酸アミドをA. Duchateau氏らの記載(J. Chromatogr.
471(1989)263)の通りに分析した。マン
デル酸のエナンチオマー構成を、逆相カラム(ヌクレオ
シル(Nucleosil)120−C18)上で、リガンド交換ク
ロマトグラフィーを使用することによって2つのエナン
チオマーを分離することによって測定した。使用する溶
離剤を次の通りにして得た:トリエチルアミン0.2g
を2 l メスフラスコ中のH2O1800mlに添加
し;さらにCu(CH3COO)2・2H2O 0.8g及び
N,N−ジ−n−プロピル−L−アラニン1.38gを
添加した。pHを酢酸(1.8モル/l)を用いて5.3
に調整し、さらにメスフラスコをH2Oで2リットルま
で満たした。得られた溶液をサルトリウス膜フィルター
(Sartorius membrane filter)(0.45μm)を通して
濾過し、かつアセトンニトリルと次の比で混合した:C
u−溶液230/アセトンニトリル20(v/v)。流
速は1.5ml/分であり、かつ温度は40℃であっ
た。成分を、Fe2(SO43試薬(H2O600ml中
のFe2(SO43・nH2O 500mg;pHはH2
(SO4)/H2O(10/240−溶液)を用いて2.
1に調整した)を用いた後カラム反応を使用して選択的
に検出した。検出を紫外可視検出器を用いて420nm
で行なった。添加率の測定前に上記のHPLC方法を使
用し、この場合、紫外線検出を用いた逆相HPLC系又
は、加水分解反応中に放出されたアンモニアが測定され
るイオン選択性アンモニア電極のいずれかを使用した。
【0025】例 I 生体触媒の培養 オクロバクトルム アントロピ NCIB40321と
クレブシエラ属sp.NCIB40322それぞれの培
養を培養基500mlで満たされた2 l 三角フラスコ
中で行ない、この場合、該培養基を撹拌(150rp
m)下で28℃でインキュベーションを行なった。培養
基は次の成分を含有していた:イーストカーボンベース
10g/l(Difco)、DL−マンデル酸アミド1.5g
/l、及び燐酸カリウム緩衝剤、pH7.0 50ミリ
モル。接種の約20時間後に培養細胞を遠心分離(10
分、15000g)によって収集し、燐酸カリウム緩衝
剤(50ミリモル、pH7.0)を使用して洗浄し、か
つ同じ緩衝剤中で再懸濁した。このようにして得られた
細胞懸濁液を酵素加水分解に直接使用するか又は先ず短
時間、深冷凍結した(−20℃)。
【0026】例 II DL−フェニルグリシンアミドの加水分解 オクロバクトルム アントロピ NCIB40321を
例Iに記載されたとおりに培養した。
【0027】このようにして得られた細胞懸濁液は、1
ml当り乾燥重量50mgを有していた。該細胞懸濁液
0.5mlを、DL−フェニルグリシンアミド5.0g/
lを含有する燐酸カリウム緩衝剤100ミリモル、pH
8.0、19.5mlに添加した。15分間のインキュベ
ーション(40℃、50rpm)後に添加されたアミド
の50%が加水分解された。HPLC分析によって、L
−アミドのみが加水分解されたことが示された。残留反
応混合物は、L−フェニルグリシン及びD−フェニルグ
リシンアミドの両方をe.e.≧99.5%で含有してい
た。L−フェニルグリシンアミド及びD−フェニルグリ
シンアミドを別々に用いたインキュベーション中にL−
フェニルグリシンアミドのみが加水分解された。アンモ
ニアは理論量で堆積した。
【0028】例 III DL−マンデル酸アミドのエナンチオ選択加水分解 オクロバクトルム アントロピ NCIB40321と
クレブシエラ属sp.NCIB40322をそれぞれ例
Iに記載されたとおりに培養した。例2の場合と同様
に、得られたオクロバクトルムの細胞懸濁液は乾燥重量
50mg/mlを有しており、クレブシエラ細胞の場合
には乾燥重量は48mg/mlであった。これらの細胞
懸濁液2.0mlを、DL−マンデル酸アミドを含有す
る燐酸カリウム緩衝剤100ミリモル、pH7.0、1
8mlに添加した。70分間のインキュベーション(2
8℃、150rpm)後にインキュベーションを中断
し、かつ反応混合物を分析した。転化率をHPLC及び
イオン選択性アンモニア電極の両方を用いて測定した。
結果は第1表に示されている。
【0029】 第1表 転化率 e.e.p E NH3 HPLC NH3 HPLC ─────────────────────────────────── オクロバクトルム アントロピ 0.48 0.46 98.4% 378 330 NCIB40321 クレブシエラ属sp. 0.32 0.40 97.1% 107 133 NCIB40322 例 IV pHの作用としての加水分解率 例IIIの場合と同様にして、オクロバクトルム アント
ロピ NCIB40321細胞を使用することによって
DL−マンデル酸アミドの加水分解活性度をpHの作用
として試験した。インキュベーションを60℃で行なっ
た。次の緩衝剤(100ミリモル)を使用した:燐酸カ
リウム緩衝剤(△);トリス/HCl緩衝剤(*)、グ
リシン/NaOH緩衝剤(●)。結果は図1に示されて
いる。活性度100%は、加水分解率140ナノモル
min-1(乾燥重量mg)-1に相応する。
【0030】例 V 温度の作用としての加水分解率 例IIIの場合と同様にして、オクロバクトルム アント
ロピ NCIB40321細胞を使用することによって
DL−マンデル酸アミドの加水分解活性度を温度の作用
として試験した。インキュベーションをpH8.5(ト
リス/HCl100ミリモル)で行なった。結果は図2
に示されている。活性度100%は、加水分解率175
ナノモル min−1(乾燥重量mg)−1に相応す
る。
【0031】例 VI 基質及び/又は生成物の抑制 例IIIの場合と同様にして、オクロバクトルム アント
ロピ NCIB40321細胞を使用することによって
DL−マンデル酸アミドの加水分解活性度をマンデル酸
アミド及びマンデル酸の両方の濃度の作用として試験し
た。マンデル酸100g/lの存在下では活性度は、例
3の場合に測定された活性度と実質的に同じであった。
マンデル酸アミド100g/lの存在下では活性度は、
例3の場合に測定された活性度より25%低かった。
【0032】例 VII α−N−ヒドロキシフェニルグリシンアミドのエナンチ
オ選択加水分解 例Iの場合と同様にして、オクロバクトルム アントロ
ピ NCIB40321を培養した。DL−α−N−ヒ
ドロキシフェニルグリシンアミド2.0g/lを含有す
る燐酸カリウム緩衝剤100ミリモル、pH6.0、1
9.5mlを窒素分子でフラッシした。さらに、オクロ
バクトルム細胞懸濁液(1ml当りの乾燥重量50m
g)0.5mlをこの反応媒体に添加した。この混合物
を窒素分子で再度フラッシし、かつこのインキュベーシ
ョン混合物を40℃で振盪(150rpm)しながらイ
ンキュベーションした。60分後にはDLアミドの50
%が加水分解されていた(HPLC分析及びアンモニア
測定)。120分後及び180分後にはアミド及びアン
モニアの全く同じ濃度が測定された。D−α−N−ヒド
ロキシフェニルグリシンアミド及びL−α−N−ヒドロ
キシフェニルグリシンアミドを別々に用いたインキュベ
ーションによって、L−アミドのみが加水分解されてい
たことが示された。
【0033】例 VIII α−メチルフェニルグリシンアミドのエナンチオ選択加
水分解 オクロバクトルム アントロピ NCIB40321細
胞懸濁液(1ml当りの乾燥重量50mg)2.0ml
を、DL−α−メチルフェニルグリシンアミド2.0g
/lを含有する燐酸カリウム緩衝剤(pH8.0)10
0ミリモル、18mlに添加した。60分間のインキュ
ベーション(40℃、150rpm)後にはアミドの5
0%が加水分解されていた。残留反応混合物の分析によ
って、L−α−メチルフェニルグリシン及びD−α−メ
チルフェニルグリシンアミドの両方がe.e.≧99%で
存在していたことが示された。
【0034】例 IX バリンアミドのエナンチオ選択加水分解 例VIIIの場合と同様にして、インキュベーションをDL
−バリンアミドを用いて行なった。4時間後の残留反応
混合物の分析によって、e.e.98.5%のL−バリン
が生成されており、かつe.e.99%のD−バリンアミ
ドが残留したことが示された。
【0035】例 X α−メチルバリンアミドのエナンチオ選択加水分解 例VIIIの場合と同様にして、インキュベーションをDL
−α−メチルバリンアミドを用いて行なった。8時間後
の残留反応混合物の分析によって、L−α−メチルバリ
ン及びD−α−メチルバリンアミドの両方がe.e.≧9
9.5%で反応混合物中に存在していたことが示され
た。
【0036】例 XI α−アリル−フェニルグリシンアミドのエナンチオ選択
加水分解 例VIIIの場合と同様にして、インキュベーションをDL
−α−アリル−フェニルグリシンα−アミドを用いて行
なった。8時間後の残留反応混合物の分析によって、
e.e.99.5%のL−α−アリル−フェニルグリシン
が生成されており、かつe.e.99.5%のD−α−ア
リル−フェニルグリシンアミドが残留したことが示され
た。
【0037】例 XII α−プロピルフェニルグリシンアミドのエナンチオ選択
加水分解 例VIIIの場合と同様にして、インキュベーションを
DL−α−プロピルフェニルグリシンアミドを用いて行
なった。8時間後の残留反応混合物の分析によって、L
−α−プロピルフェニルグリシン及びD−α−プロピル
フェニルグリシンアミドの両方がe.e.≧99.5%で
反応混合物中に存在していたことが示された。
【0038】例 XIII α−エチルフェニルグリシンアミドのエナンチオ選択加
水分解 例VIIIの場合と同様にして、インキュベーションをDL
−α−エチルフェニルグリシンアミドを用いて行なっ
た。8時間後の残留反応混合物の分析によって、L−α
−エチルフェニルグリシン及びD−α−エチルフェニル
グリシンアミドの両方がe.e.≧99%で反応混合物中
に存在していたことが示された。
【0039】例 XIV α−シンナミル−アラニンアミドのエナンチオ選択加水
分解 例VIIIの場合と同様にして、インキュベーションをDL
−α−シンナミル−アラニンアミドを用いて行なった。
8時間後の残留反応混合物の分析によって、L−α−シ
ンナミル−アラニン及びD−α−シンナミル−アラニン
アミドの両方がe.e.≧99%で反応混合物中に存在し
ていたことが示された。
【0040】例 XV 第三ロイシンアミドのエナンチオ選択加水分解 例VIIIの場合と同様にして、インキュベーションをDL
−第三ロイシンアミドを用いて行なった。8時間後の残
留反応混合物の分析によって、L−第三ロイシン及びD
−第三ロイシンアミドの両方がe.e.≧99%で反応混
合物中に存在していたことが示された。
【0041】例 XVI α−メチルロイシンアミドのエナンチオ選択加水分解 例VIIIの場合と同様にして、インキュベーションを
DL−α−メチルロイシンアミドを用いて行なった。4
時間後の残留反応混合物の分析によって、L−α−メチ
ルロイシン及びD−α−メチルロイシンアミドの両方が
e.e.≧99%で反応混合物中に存在していたことが示
された。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による加水分解の活性度とpHとの関係
を示す線図である。
【図2】本発明による加水分解の活性度と温度との関係
を示す線図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12P 41/00 BIOSIS(DIALOG)

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 光学活性カルボン酸を、相応するアミド
    のエナンチオマーの混合物を酵素によりエナンチオ選択
    加水分解すること及び光学活性酸を単離することによっ
    て製造する方法において、L−カルボン酸を、アミノ
    −、ヒドロキシ−もしくはN−ヒドロキシルアミン基で
    α−置換されたLカルボン酸アミド及びDカルボン酸ア
    ミドの混合物を、オクロバクトルム アントロピ又はク
    レブシエラ属sp.を酵素として使用して、酵素加水分
    解することによって製造することを特徴とする、光学活
    性カルボン酸の製法。
  2. 【請求項2】 オクロバクトルム アントロピ NCI
    B40321又はクレブシエラ属sp. NCIB40
    322を酵素として使用する、請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 加水分解をpH4〜9.5の間で行な
    う、請求項1又は2記載の方法。
  4. 【請求項4】 加水分解を温度30〜70℃で行なう、
    請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
  5. 【請求項5】 α−アミノ酸アミドを基質として使用す
    る、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
  6. 【請求項6】 α−アルキル−α−アミノ酸アミドをα
    −アミノ酸アミドとして使用する、請求項記載の方
    法。
  7. 【請求項7】 α−N−ヒドロキシアミノ酸アミドを基
    質として使用する、請求項1から4までのいずれか1項
    に記載の方法。
  8. 【請求項8】 α−ヒドロキシ酸アミドを基質として使
    用する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方
    法。
  9. 【請求項9】 光学活性カルボン酸アミドを製造する方
    法において、請求項1から8までのいずれか1項に記載
    の方法で残留カルボン酸アミドを得ることによる光学活
    性カルボン酸アミドの製法。
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