JP3133926B2 - ナトリウム−硫黄電池用陽極容器の製造方法 - Google Patents

ナトリウム−硫黄電池用陽極容器の製造方法

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JP3133926B2
JP3133926B2 JP07216288A JP21628895A JP3133926B2 JP 3133926 B2 JP3133926 B2 JP 3133926B2 JP 07216288 A JP07216288 A JP 07216288A JP 21628895 A JP21628895 A JP 21628895A JP 3133926 B2 JP3133926 B2 JP 3133926B2
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孝志 安藤
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、電力負荷調整用、
電気自動車の電源用等の二次電池として利用されるナト
リウム−硫黄電池を構成する陽極容器の製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】この種のナトリウム−硫黄電池は、特開
平5−275109号公報、特開平5−275110号
公報等に示されているように、金属材料からなる有底筒
状の陽極容器と、同陽極容器の内部に配設されたナトリ
ウムイオンを透過可能な有底筒状の固体電解質と、同固
体電解質内に収容された金属ナトリウムからなる陰極活
物質と、前記固体電解質と前記陽極容器間に収容された
硫黄からなる陽極活物質とを備えた構成となっている。
【0003】当該形式のナトリウム−硫黄電池は、30
0〜350℃に加熱された状態で充放電の動作を行うも
ので、放電時には陰極室側のナトリウムと陽極室側の硫
黄とがイオン化され、イオン化されたナトリウムが固体
電解質を透過して硫黄と反応して多硫化ナトリウムを生
成するとともに放電し、また充電時にはこれとは逆の反
応が生じて充電されるものである。
【0004】しかして、当該ナトリウム−硫黄電池にお
いて、放電時の反応により生成される多硫化ナトリウム
は金属に対する腐食性が高く、この多硫化ナトリウムが
陽極容器に直接接触すると陽極容器の内周面が腐食して
損傷し、耐久性を低下させるとともに、腐食が局部的で
激しい場合には陽極容器に亀裂、貫通孔が発生して、多
硫化ナトリウム、硫黄等が外部へ漏洩するおそれがあ
る。
【0005】また、陽極容器の腐食が進行すると、陽極
活物質である硫黄が陽極容器を構成する金属の硫化のた
めに消費され、陽極活物質として機能する硫黄の量が減
少し、これにともない電池容量が減少して電池としての
寿命が短縮される。特に、陽極容器を軽量でかつ安価に
構成すべくアルミニウムまたはアルミニウム合金で製作
した場合には、多硫化ナトリウムによる腐食はステンレ
ス鋼等の特殊鋼で製作した場合に比較してより一層激し
い。
【0006】このため、上記した各公報に示されたナト
リウム−硫黄電池においては、陽極容器として、アルミ
ニウムまたはアルミニウム合金からなる有底筒状の基体
の内周面に、同基体より耐腐食性の高い被覆層を備えた
構成の陽極容器を採用している。また、被覆層は耐腐食
性の高い金属の溶射層にて形成され、採用し得る金属と
してはコバルト−クロム−タングステン系合金(ステラ
イト合金)、クロム−鉄系合金、ニッケル−クロム系合
金等が知られている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところで、陽極容器と
して、基体の内周面に耐腐食性の被覆層を備えた陽極容
器を使用した形式のナトリウム−硫黄電池においては、
図4に示すように、充放電サイクルの初期において内部
電気抵抗が高くてその後漸次低下して一定となる。この
ため、当該ナトリウム−硫黄電池においては、充放電の
初期においては電気エネルギーの効率が低いという問題
がある。
【0008】この理由は、当該ナトリウム−硫黄電池の
始動初期においては、陽極容器における陽極活物質と直
接接触する被覆層の表面の電気抵抗が大きいためであ
り、また被覆層の表面の電気抵抗は図5のグラフに示す
ように、被覆層の表面を構成する酸化物被膜の酸素量に
比例していることが判明した。なお、当該ナトリウム−
硫黄電池においては、繰り返しなされる充放電により、
被覆層の表面の酸化物被膜が還元して同表面の電気抵抗
が漸次低下することが認められる。
【0009】従って、本発明の目的は、陽極容器におけ
る電気抵抗と被覆層における表面の酸素含有量との関係
に着目して、ナトリウム−硫黄電池の初期特性を向上さ
せることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、ナトリウム−
硫黄電池を構成する陽極容器の製造方法に関し、特に、
金属材料からなる有底筒状の基体の内周面に同基体より
耐腐食性の高い金属材料からなる被覆層を備え内部に
配設されたナトリウムイオンを透過可能な有底筒状の固
体電解質の内周側に金属ナトリウムからなる陰極活物質
を、同固体電解質の外周側に硫黄からなる陽極活物質を
それぞれ収容して、加熱状態において充放電動作を行う
形式のナトリウム−硫黄電池を構成する陽極容器の製造
方法に関する。
【0011】本発明が製造の対象する陽極容器の前記被
覆層は、高クロム−鉄系合金からなる層を外層とする1
層または複数層にて構成されているとともに、前記外層
における表面から少なくとも5μmの深さの間の酸素含
有量が2.0重量%以下であるであることを特徴とする
ものである。
【0012】当該ナトリウム−硫黄電池においては、被
覆層は1層であってもよく、また2層以上の複数層であ
ってもよい。被覆層が1層の場合には当該被覆層自体が
外層となる。また、当該ナトリウム−硫黄電池において
は、前記被覆層の厚みを30μm以上とすること、前記
被覆層の外層における表面の面粗度(Ra)を7.0μ
m以下とすること、前記被覆層の外層のクロム含有量を
60重量%以上とすること、等の態様を採ることが好ま
しい。
【0013】しかして、本発明に係る陽極容器の第1の
製造方法は、上記した形式のナトリウム−硫黄電池を構
成する陽極容器の製造方法であって、前記陽極容器の基
体の内周面に金属材料を溶射して外層が高クロム−鉄系
合金からなる被覆層を大気中で形成する溶射工程と、同
被覆層の表面を切削または研磨して同被覆層の表面の酸
素含有量を2.0重量%以下とする加工工程を含むこと
を特徴とするものである。
【0014】当該製造方法においては金属粉末を用い
て、溶射工程として大気中でのプラズマ溶射手段を採用
するとともに、一次ガスとしてアルゴンを用い、出力を
増大させる二次ガスとして水素を用い、かつ金属粉末を
移送するキャリアガスとしてアルゴンを用いることが好
ましい。また、加工工程では一般的な機械加工である切
削加工、および/または研磨加工を採用することがで
き、これらの加工により溶射層の表面を所定厚みだけ除
去するとともに、被覆層における表面の面粗度を向上さ
せる。
【0015】また、本発明に係る陽極容器の第2の製造
方法は、上記した形式のナトリウム−硫黄電池を構成す
る陽極容器の製造方法であって、前記基体の内周面に金
属材料を溶射して外層が高クロム−鉄系合金からなる被
覆層を大気中で形成するプラズマ溶射工程からなり、同
プラズマ溶射工程での溶射原料としてクロムを60重量
%以上含む高クロム−鉄系合金の金属粉末を、一次ガス
としてアルゴンを、出力を増大させる二次ガスとして水
素ガスを、金属粉末を移送するキャリアガスとしてアル
ゴンを採用するとともに、前記基体の内周面と溶射ノズ
ルの噴射口間の溶射距離を10〜30mmの距離に設定
することを特徴とするものである。
【0016】当該製造方法においては、前記金属粉末と
して粒度10〜45μmの金属粉末を採用するととも
に、一次ガス30〜45l/min、二次ガス1.0〜
2.5l/min、電流230〜300A、プラズマ出
力8.5〜12.5kwの条件下で溶射することが好ま
しい。
【0017】
【発明の作用・効果】本発明に係る製造方法で製造され
た陽極容器を構成部材とするナトリウム−硫黄電池にお
いては、陽極容器の被覆層の外層における表面層部の酸
素含有量が2.0重量%以下に規定されているために、
陽極容器は図5に示すグラフから明らかなように電気抵
抗が低い。このため、当該ナトリウム−硫黄電池の充放
電サイクル数と内部電気抵抗との関係は図4のグラフの
2点鎖線の状態となって、ナトリウム−硫黄電池の初期
特性を向上させることができ、これにより充放電サイク
ルの初期においても設定された電気エネルギーを放電す
ることができて、エネルギー効率を向上させることがで
きる。
【0018】当該ナトリウム−硫黄電池においては、内
部電気抵抗は被覆層の表面と、陽極活物質を介在させる
陽極用導電材であるグラファイトフェルトとの接触状態
にも影響され、被覆層の表面が平滑であるほど同表面と
陽極導電材との接触が良好であって電気抵抗が低い。従
って、被覆層の表面の酸素含有量を上記のごとく規定す
るととともに、被覆層における表面の面粗度(Ra)を
7.0μm以下とすることが好ましい。
【0019】また、当該ナトリウム−硫黄電池において
は、陽極容器の耐腐食性が重要であり、被覆層における
クロムの含有量を60重量%以上とすることが好まし
い。この場合、被覆層が2層以上の複層構造のものであ
る場合には、陽極活物質と直接接触する側の層、すなわ
ち外層におけるクロムの含有量を60重量%以上とす
る。
【0020】本発明に係る陽極容器の第1の製造方法に
おいては、溶射工程において陽極容器を構成する基体の
内周面に耐腐食性の高い金属のプラズマ溶射を施すこと
により、耐腐食性の高い溶射層が形成される。また、そ
の後の加工工程において、上記溶射層の表面を切削、お
よび/または研磨することにより、溶射層の形成時に形
成される酸素含有量が高くて面粗度が高い被覆層の表面
の酸化物被膜が除去され、酸素含有量が規定量以下の表
面を有するとともに面粗度が規定値以下の平滑な表面を
有する被覆層が形成される。
【0021】当該製造方法においては、上記した溶射条
件を採用することにより、一次ガスとしてのアルゴンの
使用量を低減させるとともに、出力を増大させる二次ガ
スとしての水素の使用量を増大させる。これにより、溶
射工程でのエネルギーの効率を向上させることができ
る。また、使用する金属粉末中の酸素の成分量を調整す
ることにより、さらには上記した各溶射条件を採用する
ことにより、溶射層の酸素含有量の調整を行うことが可
能である。
【0022】本発明に係る陽極容器の第2の製造方法に
おいては、溶射層を形成する条件を上記したごとく設定
することにより、形成される溶射層の少なくとも表面に
おける酸素含有量を2.0重量%以下に調整することが
できる。このため、当該製造方法を採用すれば、上記し
た陽極容器の第1の製造方法におけるがごとき、溶射層
の表面を切削、および/または研磨加工することなく、
少なくとも表面層部の酸素含有量が2.0重量%以下の
被覆層を形成することができて、同様の特性を有する陽
極容器を製造することができるという利点がある。
【0023】
【発明の実施の形態】
(ナトリウム−硫黄電池)以下、本発明に係るナトリウ
ム−硫黄電池を図面に基づいて説明する。図1には本発
明の一実施の形態に係るナトリウム−硫黄電池の縦断面
が示されている。当該ナトリウム−硫黄電池は陽極容器
10aと、固体電解質10bを主要構成部材とし、かつ
陰極活物質10cと、陽極活物質10dを主要構成物質
としている。陽極容器10aは有底筒状の基体11と被
覆層12とからなり、基体11はアルミニウムまたはア
ルミニウム合金にて形成されているとともに、被覆層1
2はクロム−鉄系合金の溶射層にて形成されている。
【0024】固体電解質10bは有底筒体であって、ナ
トリウムイオンの透過能を有するものであり、ベータア
ルミナにて形成されている。固体電解質10bは、アル
ファアルミナにて形成されている絶縁リング13に嵌着
された状態で、陽極容器10a内に同心的に配設されて
いて、陰極端子14aを有する蓋体14bにて覆蓋され
ている。これにより、絶縁リング13および蓋体14b
は陽極容器10aおよび固体電解質10bを密閉してい
て、固体電解質10b内を陰極室に構成し、かつ陽極容
器10aと固体電解質10b間を陽極室に構成してい
る。なお、陽極容器10aを構成する基体11はその外
周に陽極端子11aを備えている。
【0025】当該ナトリウム−硫黄電池においては、陰
極室に陰極活物質10cが収容され、かつ陽極室に陽極
活物質10dが収容されている。陰極活物質10cは金
属ナトリウムからなるもので、陰極室に収容されてい
る。また、陽極活物質10dは硫黄からなり、グラファ
イトフェルトを介在させた状態で陽極室に収容されてい
る。
【0026】当該ナトリウム−硫黄電池においては、同
電池を300〜350℃に加熱すると約2.08Vの開
路電圧を示し、電池に外部負荷を接続すると電池内では
陰極活物質であるナトリウムがイオン化され、ナトリウ
ムイオンは固体電解質10bを透過して陽極活物質10
dに達し、同活物質10dである硫黄と反応して多硫化
ナトリウムを生成させて放電する。また、当該ナトリウ
ム−硫黄電池においては、充電時には上記とは逆の反応
が起こって充電される。
【0027】しかして、被覆層12は60重量%〜95
重量%のクロムを含む高クロム−鉄系合金の粉末をプラ
ズマ溶射することにより形成されているもので、溶射層
の表面を切削加工または研磨加工により所定厚み除去す
ることによって、溶射層の表面を形成している酸化物被
膜が除去されている。これにより、被覆層12は、その
表面から少なくとも5μmの深さの間(表面層部)の酸
素含有量が2.0重量%以下で、その表面の面粗度Ra
(JIS B0601の規定の基づく平均粗さ)が7.
0μm以下になっている。
【0028】このように、当該ナトリウム−硫黄電池に
おいては、陽極容器10aの被覆層12における表面の
酸素含有量が2.0重量%以下であり、陽極容器10a
は図5に示すグラフから明らかなように電気抵抗が低
い。このため、当該ナトリウム−硫黄電池の充放電サイ
クル数と内部電気抵抗との関係が図4のグラフの2点鎖
線で示す状態となって、ナトリウム−硫黄電池の初期特
性を向上させることができ、これにより当該ナトリウム
−硫黄電池の充放電サイクルの初期においても設定され
た電気エネルギーを放電することができる。
【0029】また、当該ナトリウム−硫黄電池において
は、被覆層12の表面の面粗度(Ra)が7.0μm以
下であって平滑であるため、被覆層12の表面と陽極活
物質10dの陽極導電材料であるグラファイトフェルト
との接触状態が良好であり、この点からも電気抵抗が低
い。
【0030】なお、被覆層12はクロムの含有量が60
重量%以上の高クロム−鉄系合金の溶射層にて形成され
ているため、陽極活物質10dと直接接触する面の耐腐
食性が高く、陰極活物質10cと陽極活物質10dの反
応生成物である多硫化ナトリウムによる陽極容器10a
の腐食を防止し得て、多硫化ナトリウムの外部への漏洩
を防止することができるとともに、設定された電気容量
を維持することができる。
【0031】(陽極容器の製造法1)当該ナトリウム−
硫黄電池を構成する陽極容器10aを製造するには、下
記に示すようにプラズマ溶射工程と、切削加工、および
/または研磨加工の加工工程とによる。溶射工程では図
2に示すように溶射ガンGが使用され、陽極容器10a
を構成する基体11をその軸心を中心として周方向へ回
転させるとともに、溶射ガンGを基体11の内孔を上下
方向に移動させることにより、基体11の内周面に金属
粉末12aを噴出して溶射層12bを形成する。
【0032】溶射工程では、クロムの含有量が60重量
%〜95重量%である粒径10μm〜45μmのクロム
−鉄系合金の粉末が採用されるとともに、一次ガスとし
てアルゴン、二次ガスとして水素ガス、キャリアガスと
してアルゴンが採用される。この場合、一次ガスである
アルゴンの供給量は30〜50l/min、二次ガスで
ある水素ガスの供給量は1〜5l/min、電流は23
0〜260A、出力は8.0〜9.7kwの範囲である
ことが好ましい。また、合金の粉末の供給量は15〜4
0g/minの範囲であることが好ましい。これらの条
件に基づいて、基体11の内周面には厚み40〜80μ
mの均一な厚みの溶射層12bを形成する。
【0033】加工工程は、基体11の内周面に形成され
た溶射層12bの表面を所定厚さだけ除去するためと、
除去後の表面を平滑にするためになされる。加工工程で
は、一般の機械加工である切削加工、研磨加工またはこ
れら両加工を施して表面の酸化物被膜を除去するととも
に表面を平滑にし、表面層部の酸素含有量が2.0重量
%以下、表面の面粗度Raが7.0μm以下で、厚みが
30μm以上の被覆層12を形成する。
【0034】(実施例1)本実施例では、外径が60m
m、肉厚2.0mm、長さ300mmの基体の底部を除
く内周面に、表面特性の異なる各種の被覆層(切削、研
磨加工の有無)を備えた陽極容器を使用して、図1に示
す形式の複数のナトリウム−硫黄電池を構成して、同電
池の初期特性である内部抵抗を測定した。得られた結果
を表1に示すとともに、図4のグラフ上にプロットする
(白丸印は本実施例に該当し、黒丸印は比較例に該当す
る)。
【0035】また、同表には、各陽極容器の被覆層にお
ける表面層部の酸素含有量および表面の面粗度を示す。
なお、各被覆層はクロムの含有量が70重量%のクロム
−鉄系合金の粉末を使用してプラズマ溶射により形成し
たものである。また、被覆層における表面層部の酸素含
有量の測定はEPMA分析法に基づき、皮膜のみを採取
して分析した。また、表面の面粗度の測定は表面粗さ計
(測定距離:12mm)により行った。
【0036】
【表1】
【0037】表1および図5を参照して、本実施例に該
当する実験NO.1〜NO.8と比較例に該当する実験
NO.9〜NO.13とを対比すると、電池の初期特性
である内部抵抗は前者では2.7mΩ〜3.4mΩであ
るのに対して、後者では5.3mΩ〜6.0mΩであっ
てかなり高い内部抵抗を示している。また、前者の内部
抵抗である2.7mΩ〜3.4mΩの値は、充放電サイ
クル数と内部電気抵抗の関係を示す図4のグラフにおけ
る一定に収れんする値に略相当するもので、前者におい
ては電池の始動初期の内部電気抵抗が低くて、始動初期
の電気エネルギーの効率が向上している。
【0038】本実施例でこのような好結果が得られる場
合は、被覆層における表面層部の酸素含有量が2.0重
量%以下の範囲である。なお、被覆層の厚みは30μm
以上であり、かつ被覆層における表面の面粗度Raは
7.0μm以下であることが好ましい。
【0039】(陽極容器の製造法2)当該ナトリウム−
硫黄電池を構成する陽極容器10aを製造する第2の製
造方法は、下記に示すようにプラズマ溶射工程のみを使
用する方法である。当該製造方法においては、プラズマ
溶射工程での溶射原料としてクロムを60重量%以上含
む高クロム−鉄系合金の粉末を採用するとともに、一次
ガスとしてアルゴンを、出力を増大させる二次ガスとし
て水素ガスを、金属粉末を移送するキャリアガスとして
アルゴンを採用する。
【0040】また、プラズマ溶射する条件としては、基
体11の内周面と溶射ガンGのノズルの噴射口間の溶射
距離Lを10〜30mmの距離に設定し、金属粉末とし
て粒度10〜45μmの金属粉末を採用するとともに、
一次ガス30〜45l/min、二次ガス1.0〜2.
5l/min、電流230〜300A、プラズマ出力
8.5〜12.5kwの条件を採用する。
【0041】図3は陽極容器10aを製造する他の一例
を示す図面であり、溶射中には基体11を所定の回転数
で回転しつつ、溶射ガンGを上下方向に移動させる。例
えば、基材11は200〜300rpmの回転数の範囲
で回転され、溶射ガンGは6〜10mm/secの速度
で上下方向に移動される。これにより、基体11の内周
面には高クロム−鉄からなる厚さ50〜80μmで、酸
素含有量が2.0重量%以下の溶射層12bが形成され
る。当該製造方法では、溶射層12bには切削加工、研
磨加工等の後加工を施すことがないため、溶射層12b
それ自体が被覆層12となる。
【0042】(実施例2)本実施例では、外径60m
m、肉厚2.0mm、長さ310mmの基体の内周面に
厚さ65μmの溶射層を、基体の内周面と溶射ガンのノ
ズルの噴射口間の溶射距離Lを適宜変更して形成して、
溶射距離Lと被覆層中の酸素含有量の関係、溶射距離L
と基体の損傷および被覆層内の気孔率の関係を測定し
た。
【0043】本実施例で溶射原料として採用した高クロ
ム−鉄系の粉末は、Crが75重量%、O2が0.5重
量%で、粒度が10〜45μmのものである。なお、本
実施例では、これとは別に、金属粉末の粒度分布と被覆
層の品質との関係を検討するため、10〜106μmの
範囲の粒度を有する4種類の粒度分布の金属粉末を採用
して、溶射実験を行って被覆層を形成した。但し、本実
験では溶射距離Lを15〜25mmの範囲で行った。
【0044】本実施例で得られた溶射距離Lと被覆層中
の酸素含有量の関係を表2と図6のグラフに示し、得ら
れた溶射距離Lと基体の損傷および気孔率の関係を表2
に示し、かつ溶射距離Lと被覆層の気孔率との関係を表
2と図7のグラフに示す。また、金属粉末の粒度分布と
被覆層の品質との関係を表3に示す。なお、得られた各
陽極容器を使用して図1に示す形式の複数のナトリウム
−硫黄電池を構成して、各電池の初期特性である内部抵
抗と陽極容器における被覆層中の酸素含有量との関係を
測定した。得られた結果を図8のグラフに示す。
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】表2および図6のグラフを参照すると、被
覆層中の酸素含有量は溶射距離Lが長くなるほど増加す
るが、特に溶射距離Lが30mmを越えると急激に増加
する傾向にある。また、表2および図7のグラフを参照
すると、被覆層中の気孔率も溶射距離Lが長くなるほど
増加するが、特に溶射距離Lが30mmを越えると急激
に増加する傾向にある。
【0048】一方、陽極容器を構成する基体の溶射後の
損傷については溶射距離Lが短いと熱により損傷し易
く、表2に示すように、溶射距離が10mm未満、特に
8.0mm以下の場合には明かに損傷する。この場合、
基体は溶損状態となる。従って、溶射距離Lは被覆層中
の酸素含有量、気孔率、および基体の損傷状態を考慮す
ると、10〜30mmの範囲であることが好ましい。
【0049】図8のグラフは、各ナトリウム−硫黄電池
を340℃にて充放電を7回繰り返した時の内部抵抗を
示しており、被覆層中の酸素含有量と内部抵抗の関係で
は、溶射距離Lが30mm以下の群と、35mm以上の
群とに明確に区分することができる。このことからも、
溶射距離Lの好ましい範囲は10〜30mmの範囲であ
ることが理解される。
【0050】なお、本実施例では、各種の粒度分布の金
属粉末を採用したが、粒度は75μm以下がよく、より
好ましくは10〜45μmの範囲の粒度分布のものであ
る。金属粉末の粒度が75μmを越えると、金属粒子が
溶融不足となって被覆層中に未溶融粒子が残存して被覆
層の品質を低下させる。この場合には、特に被覆層内の
気孔率が増加するとともに、被覆層の表面の平滑性が低
下する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係るナトリウム−硫黄
電池の縦断面図である。
【図2】同ナトリウム−硫黄電池を構成する陽極容器を
製造する溶射工程を説明するための陽極容器を構成する
基体の縦断側面図である。
【図3】同ナトリウム−硫黄電池を構成する陽極容器を
製造する他の溶射工程を説明するための陽極容器を構成
する基体の縦断側面図である。
【図4】ナトリウム−硫黄電池における充放電サイクル
数と内部電気抵抗との関係を示すグラフである。
【図5】本発明の第1の製造方法で製造した陽極容器の
被覆層における表面層部の酸素含有量と、同陽極容器を
構成部材とするナトリウム−硫黄電池の内部電気抵抗と
の関係を示すグラフである。
【図6】本発明の第2の製造方法で製造した陽極容器に
おける溶射距離と被覆層中の酸素含有量との関係を示す
グラフである。
【図7】同第2の製造方法で製造した陽極容器における
溶射距離と被覆層中の気孔率との関係を示すグラフであ
る。
【図8】同第2の製造方法で製造した陽極容器の被覆層
中の酸素含有量と、同陽極容器を構成部材とするナトリ
ウム−硫黄電池の内部電気抵抗との関係を示すグラフで
ある。
【符号の説明】
10a…陽極容器、10b…固体電解質、10c…陰極
活物質、10d…陽極活物質、11…基体、12…被覆
層、12b…溶射層、G…溶射ガン。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭61−264659(JP,A) 特開 平4−284371(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01M 10/39 H01M 2/02 C23C 4/00 - 4/18

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】金属材料からなる有底筒状の基体の内周面
    に同基体より耐腐食性の高い金属材料からなる被覆層を
    備え内部に配設されたナトリウムイオンを透過可能な
    有底筒状の固体電解質の内周側に金属ナトリウムからな
    る陰極活物質を、同固体電解質の外周側に硫黄からなる
    陽極活物質をそれぞれ収容して、加熱状態において充放
    電動作を行うナトリウム−硫黄電池を構成し、前記被覆
    層が高クロム−鉄系合金からなる層を外層とする1層ま
    たは複数層にて構成されているとともに、前記外層にお
    ける表面から少なくとも5μmの深さの間の酸素含有量
    が2.0重量%以下である陽極容器の製造方法であり、
    前記基体の内周面に金属材料を溶射して外層が高クロム
    −鉄系合金からなる被覆層を大気中で形成するプラズマ
    溶射工程と、同被覆層の表面を切削または研磨して同被
    覆層の表面の酸素含有量を2.0重量%以下とする加工
    工程を含むことを特徴とするナトリウム−硫黄電池用陽
    極容器の製造方法。
  2. 【請求項2】金属材料からなる有底筒状の基体の内周面
    に同基体より耐腐食性の高い金属材料からなる被覆層を
    備え、内部に配設されたナトリウムイオンを透過可能な
    有底筒状の固体電解質の内周側に金属ナトリウムからな
    る陰極活物質を、同固体電解質の外周側に硫黄からなる
    陽極活物質をそれぞれ収容して、加熱状態において充放
    電動作を行うナトリウム−硫黄電池を構成し、前記被覆
    層が高クロム−鉄系合金からなる層を外層とする1層ま
    たは複数層にて構成されているとともに、前記外層にお
    ける表面から少なくとも5μmの深さの間の酸素含有量
    が2.0重量%以下である陽極容器の製造方法であり、
    前記基体の内周面に金属材料を溶射して外層が高クロム
    −鉄系合金からなる被覆層を大気中で形成するプラズマ
    溶射工程からなり、同プラズマ溶射工程での溶射原料と
    してクロムを60重量%以上含む高クロム−鉄系合金の
    金属粉末を用いて、一次ガスとしてアルゴンを、出力を
    増大させる二次ガスとして水素ガスを、金属粉末を移送
    するキャリアガスとしてアルゴンを採用するとともに、
    前記基体の内周面と溶射ノズルの噴射口間の溶射距離を
    10〜30mmの距離に設定することを特徴とするナト
    リウム−硫黄電池用陽極容器の製造方法。
  3. 【請求項3】請求項2に記載のナトリウム−硫黄電池用
    陽極容器の製造方法にお いて、前記金属粉末として粒度
    10〜45μmの金属粉末を採用するとともに、一次ガ
    ス30〜45l/min、二次ガス1.0〜2.5l/
    min、電流230〜300A、プラズマ出力8.5〜
    12.5kwの条件下で溶射することを特徴とするナト
    リウム−硫黄電池用陽極容器の製造方法。
  4. 【請求項4】請求項1または2に記載のナトリウム−硫
    黄電池用陽極容器の製造方法において、前記被覆層の厚
    みが30μm以上であることを特徴とするナトリウム−
    硫黄電池用陽極容器の製造方法。
  5. 【請求項5】請求項1または2に記載のナトリウム−硫
    黄電池用陽極容器の製造方法において、前記被覆層の外
    層における表面の面粗度(Ra)が7.0μm以下であ
    ることを特徴とするナトリウム−硫黄電池用陽極容器の
    製造方法。
  6. 【請求項6】請求項1に記載のナトリウム−硫黄電池用
    陽極容器の製造方法において、前記被覆層の外層のクロ
    ム含有量が60重量%以上であることを特徴とするナト
    リウム−硫黄電池用陽極容器の製造方法。
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