JP3133639B2 - 液晶駆動方法 - Google Patents

液晶駆動方法

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JP3133639B2 JP07093115A JP9311595A JP3133639B2 JP 3133639 B2 JP3133639 B2 JP 3133639B2 JP 07093115 A JP07093115 A JP 07093115A JP 9311595 A JP9311595 A JP 9311595A JP 3133639 B2 JP3133639 B2 JP 3133639B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、透明電極間に液晶と光
伝導層を挟み込んだ液晶空間光変調素子と、それをm×
n個2次元的に配列し、入力光パターンに並列光演算処
理を施して読み出すことを可能にした液晶空間光変調器
を利用した液晶駆動方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の液晶空間光変調器はネマチック液
晶を用いており、ネマチック液晶の電界に対する応答速
度が数ミリ秒と遅いため、入力光に対する応答速度が十
分でなかった。また、ネマチック液晶の電界に対する応
答のしきい値が明確でないため、入力光のデジタル処理
が困難であった。特開昭56−10726号公報に基づ
いて強誘電性液晶が従来のネマチック液晶にくらべて高
速応答性としきい値特性を有することに着目し、これら
の特性を有効に活用して、高速応答性を有し、入力光に
よるONとOFFのデジタル処理が可能な液晶空間光変
調器の開発が試みられてきた。
【0003】ところで、強誘電性液晶では、理想的には
特開昭56−10726号公報で記述されているように
強誘電性液晶の自発分極がセル厚方向で一様に上向きの
状態(前述のONまたはOFFに相当)と一様に下向き
の状態(前述のOFFまたはONに相当)が存在し、液
晶空間光変調器に用いた場合にデジタル処理を行う際に
必要なしきい値特性を有するはずである。
【0004】しかし、現実の強誘電性液晶では、例えば
JAPAN.J.APPL.PHYS.VOL26,N
O1,1987,P1〜4に示されたように自発分極が
セル厚方向で一様な2つの状態の外に、強誘電性液晶の
自発分極が上下基板上で互いに逆方向を向き、かつセル
厚方向で自発分極をスメクチック面に投影したものが1
80度ねじれるツイストの状態が4状態存在することが
明らかとなってきた。このような反転機構を用いた液晶
光変調器では、ツイスト状態の介在によるコントラスト
の低下としきい値特性の悪化等の問題点が観察されてき
た。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明の目的
は、前述したような不具合に対処すべく、平行配向した
液晶セルのセル厚方向で自発分極が上向きに一様にそろ
った状態と下向きに一様にそろった状態の2状態の外
に、セル厚に垂直な方向の一層ごとに自発分極が交互に
上向きと下向きになる1状態以上を持つ即ち、直交した
偏光板の間に置いた時に少なくとも3つ以上の消光状態
を示す反強誘電性液晶を用い、画像のエッジ部分のみを
検知するために、光読み取りした情報を従来のようにコ
ンピューター処理を経ることなく、前記液晶空間光変調
素子のみにより画像演算処理をしたのと同じようにエッ
ジ部分のみの情報を読み取るための新しい方法を提供す
る点にある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、(a)透明基
板とその上に形成された透明電極層とからなる電極基板
および(b)透明基板とその上に順次形成された透明電
極層と光伝導層からなる光伝導層つき電極基板とを、そ
れぞれの透明基板を外側にして配置させた内側に、
(c)印加電圧に対して少なくとも3つの安定状態を有
する液晶を封入してなる液晶空間光変調素子の前記
(a)の透明電極と前記(b)の透明電極との間に液晶
が追随できないような「単極」の高周波電界を印加し、
前記(b)の透明基板の側から光を照射し、入射光の強
度に応じて光伝導層の抵抗値が変化することにより、液
晶に加わる高周波電界の平均値が変化し、それにより、
前記液晶の3つの安定状態のうち2つの状態間のスイッ
チングを発生させ、これを前記(a)の透明基板の側か
ら読み取り、さらに、読取光の書き込み光に対する応答
において画像処理の1つであるエッジ検出を駆動周波数
を調節することにより行なうことを特徴とする液晶駆動
方法に関する。
【0007】前記液晶空間光変調素子は任意数2次元的
に配列して使用することができる。液晶空間光変調器を
組立てるには前記液晶空間光変調素子を通常少なくとも
9個以上、好ましくは10000個以上使用することが
できる。
【0008】前記単極とは、図5に示すように、プラス
方向なら少なくとも0Vとプラス何Vの間で印加電圧を
変化させるものであり、マイナス方向ならば0Vとマイ
ナス何Vの間で印加電圧を変化させるものであり、図1
1の(A)で示すようにプラスからマイナスまでの間で
印加電圧を変化させる「双極」とは異なっている。
【0009】本発明では、室温付近(0〜30℃)で駆
動させるものであるが、この場合の液晶の反強誘電相か
ら強誘電相へ転移するための速度、すなわち応答速度は
双極よりはるかに早く、単極の使用が極めて有利である
ことを発見したことが本発明の1つの重要なポイントで
ある。
【0010】なお、前記液晶の3つの安定状態のうち2
つの状態間のスイッチングを発生させるとは、例えば図
11(D)において、1、2、3の3つの安定状態のう
ち、1と2あるいは1と3の2つの状態間でスイッチン
グを行うことを意味している。
【0011】このように構成した本発明において、前記
反強誘電性液晶が入射光に対して前述のような出力光−
入射光強度特性をもつように前記両電極基板の少なくと
も一方の内表面を配向処理することにより、液晶空間光
変調器の入射光に対する出力光の制御を3値にするとと
もに、コントラストを向上させ、機械的ショックに対し
ても配向がこわれにくくすることができた。
【0012】前記「3つの安定状態を示す」とは、第一
の電極基板と所定の間隙を隔てて配置されている第二の
電極基板の間に反強誘電性液晶が挾まれてなる液晶電気
光学装置において、前記第一及び第二の電極基板に電界
形成用の電圧が印加されるよう構成されており、図11
(A)で示される三角波として電圧を印加したとき、図
11(D)のように前記反強誘電性液晶が、無電界時に
分子配向が第一の安定状態〔図13の(a)〕を有し、
その結果液晶層の透過率が第一の安定状態〔図11
(D)の1〕を示し、かつ、電界印加時に一方の電界方
向に対し分子配向が前記第一の安定状態とは異なる第二
の安定状態〔図13の(b)〕を有し、その結果液晶層
の透過率が第二の安定状態〔図11(D)の2〕を示
し、さらに他方の電界方向に対し前記第一及び第二の安
定状態とは異なる第三の分子配向安定状態〔図13の
(c)〕を有し、その結果液晶層の透過率が第三の安定
状態〔図11(D)の3〕を示すことを意味する。
【0013】なお、この説明では、図11(A)は双極
を用いているが、三安定状態の出現の問題は単極でも双
極でも本質的な差はないので、従来から三安定状態の説
明に用いている図面を利用しただけのものである。
【0014】本発明では、前記三つの安定状態のうち図
11(D)の1の反強誘電相と図11(D)の2の強誘
電相の間あるいは、図11(D)の1の反強誘電相と図
11(D)の3の強誘電相の間で双安定駆動させるもの
である。
【0015】なお、この3つの安定状態を利用する液晶
電気光学装置については、本出願人は特願昭63−70
212号として出願し、特開平2−153322号とし
て公開されている。
【0016】3つの安定状態を示す反強誘電性液晶の特
徴をさらに詳しく説明する。クラーク/ラガウェル(C
lark−Lagawall)により提案された表面安
定化強誘電性液晶素子では、S*C 相において強誘電性
液晶分子が図12(a),(b)のように一方向に均一
配向した2つの安定状態を示し、印加電界の方向によ
り、どちらか一方の状態に安定化され、電界を切っても
その状態が保持される。
【0017】しかしながら実際には、強誘電性液晶分子
の配向状態は、液晶分子のダイレクターが捩れたツイス
ト二状態を示したり、層がくの字に折れ曲ったシエブロ
ン構造を示す。シエブロン層構造では、スイッチング角
が小さくなり低コントラストの原因になるなど、実用化
のためには大きな障害になっている。一方、“反”強誘
電性液晶は3つの安定状態を示すS*(3)相では、上記
液晶電気光学装置において、無電界時には、図13
(a)に示すごとく隣り合う層毎に分子は逆方向に傾斜
した反平行状に配列し、液晶分子の双極子はお互に打ち
消し合っている。したがって、液晶層全体として自発分
極は打ち消されている。この分子配列における液晶層の
透過率は、図11(D)の1に対応している。さらに、
(+)または(−)のしきい値より充分大きい電圧を印
加すると、図13(b)および(c)に示すようにそれ
ぞれ液晶分子が同一方向に傾き、平行に配列する。この
状態では、分子の双極子も同一方向に揃うため自発分極
が発生し、強誘電相となる。これらの分子配列における
液晶層の透過率は、図11(D)の2および3に対応し
ている。
【0018】すなわち、“反”強誘電性液晶のS*(3)
相においては、無電界時の“反”強誘電相と電界印加時
の極性による2つの強誘電相とが安定になり、“反”強
誘電相と2つの強誘電相間とを直流的しきい値を持って
3つの安定状態間スイッチングを行うものである。この
スイッチングに伴う液晶分子配列の変化により図14に
示すダブル・ヒステリシスを描いて相対光透過率が変化
する。このダブル・ヒステリシスに、図14の(A)に
示すバイアス電圧を印加して、さらにパルス電圧を重畳
することによりメモリー効果を実現できる特徴を有す
る。
【0019】さらに、電界印加により強誘電相は層がス
トレッチされ、ブックシエルフ構造となる。一方、第一
安定状態の“反”強誘電相では類似ブックシエルフ構造
となる。この電界印加による層構造スイッチングが液晶
層に動的シエアーを与えるため駆動中に配向欠陥が改善
され、良好な分子配向が実現できる。そして、“反”強
誘電性液晶では、プラス側とマイナス側の両方のヒステ
リシスを交互に使い画像表示を行なうため、自発分極に
基づく内部電界の蓄積による画像の残像現象を防止する
ことができる。
【0020】以上のように、“反”強誘電性液晶は、
1)高速応答が可能で、2)高いコントラストと広い視
野角および3)良好な配向特性とメモリー効果が実現で
きる、非常に有用な液晶化合物と言える。
【0021】“反”強誘電性液晶の3つの安定状態を示
す液晶相については、1)A.D.L.Chandan
i etal.,Japan J.Appl.Phy
s.,28,L−1265(1989)、2)H.Or
ihara etal.,Japan J.Appl.
Phys.,29,L−333(1990)に報告され
ており、“反”強誘電的性質にちなみS*CA 相(An
tiferroelectric Smectic C
*相)と命名している。本発明者らは、この液晶相が3
つの安定状態間のスイッチングを行なうためS*(3)相
と定義した。
【0022】3つの安定状態を示す“反”強誘電相S*
(3)を相系列に有する液晶化合物は、本発明者の出願し
た特開平1−316367号、特開平1−316372
号、特開平1−316339号、特開平2−28128
号及び市橋等の特開平1−213390号公報等があ
り、本発明においては“反”強誘電相をもつ液晶化合物
なら何でも使用することができる。また3つの安定状態
を利用した液晶電気光学装置としては本出願人は特開平
2−40625号、特開平2−153322号、特開平
2−173724号などを提案している。
【0023】前記透明基板としては、ガラス、石英、合
成樹脂などを例示することができる。
【0024】前記透明電極としては、ITO、Sn
2、ZnOなどを例示することができる。透明電極の
厚みは1050〜1600Å、好ましくは1300〜1
600Åである。
【0025】前記光伝導層としては、a−Si、GaA
s、CdSなどを例示することができる。光伝導層の厚
みは、5000〜50000Å、好ましくは5000〜
15000Åである。また、本発明において必要な高周
波電界は、通常10〜300kHz、好ましくは150
〜250kHzである。
【0026】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図面により説明す
る。図1に素子の構造を示す。2つの透明電極3,3′
(本実施例ではITOを使用)のついたガラス基板5,
5′の間に、a−Si2と反強誘電性液晶1を挾んでい
る。a−Si2は光伝導層となっており、反強誘電性液
晶1は光変調層となつている。a−Si2は、pin構
造となっており、それぞれの厚さはp層0.01μm、
i層3.5μm、n層0.01μmとなっている。書き
込み光は、a−Si側から照射し、読み出し光は反強誘
電性液晶側から照射してa−Si上で反射させて読み出
す反射型の構造である。また、ITO電極間には高周波
電圧を印加する。
【0027】本実施例に用いた反強誘電性液晶は、
【化1】 の混合物であり、
【表1】 のような相転移温度を示した。
【0028】反強誘電性液晶で3つの安定状態を作り出
すには液晶分子を均一に配向させなければならない。そ
のため、ポリイミドラビング(rubbing)法で液
晶を配向させた。
【0029】この反強誘電性液晶の電圧応答について知
るために透過型素子を作製し、その透過光強度について
測定した。素子は2枚の透明電極(ITO:indiu
mtinoxide)基板の間に液晶を注入したもので
あり、液晶層の厚さは2μmである。液晶を配向させる
ために、ITO表面にポリイミドをコーティングしラビ
ング処理を行った。ラビングは液晶層側の電極基板につ
いて行った。本実施例の空間光変調素子の作製の際は、
片面はa−Si基板であるから熱処理を伴うポリイミド
ラビングは片面についてしか行うことができない。な
お、偏光板は両電極基板のいずれにも設けられている。
【0030】このセルについての透過光強度測定の結果
を図3に示す。3状態を観察するために、一方の極板に
十分に高い電圧を印加した状態で、そのときに透過光強
度が最小になるように偏光板を調整した。測定は室温で
行なった。透過光強度が最大のときと最小のときとのコ
ントラスト比は100以上であり、中間のとき透過光強
度は最大の強度のほぼ半分であった。また、ダブル・ヒ
ステリシスも観察され、その幅は約2Vであった。
【0031】液晶は、等方液体相(Iso相)を示し、
またa−Siの不純物が拡散を起こさないような、10
0℃において、毛細管効果を利用して注入した。この後
S*(3)相においてラビング方向に沿った液晶の層構造
を成長させるために徐冷し、特にIso相からS*(3)
相への転移温度近辺においては、−0.1℃/minと
いう慎重な徐冷を行った。
【0032】図4に素子の等価回路を示す。a−Siは
pin構造なのでダイオード特性をとる。図5(a)に
素子の駆動波形を示す。これはa−Siのp−i−n構
造に対して逆バイアスとなるような正の部分だけの方形
波電界である。周波数の条件として反強誘電性液晶の応
答時間よりも速くa−Siの応答時間よりも遅いものと
する。また抵抗の理想的な条件は、
【数1】 である。図5(b)は書き込み光がないとき液晶層にか
かる電界を示している。書き込み光がない場合は、印加
電界はa−Siの構造に対して逆バイアスであるため、
ほとんどa−Si層にかかることになり、液晶層には
(b)のような電界がかかっていることになる。このと
き、電界の周波数が液晶分子が追随できないほど充分に
高いと、結果として平均値であるVLCが液晶層にかかっ
ていることになる。このVLCはほぼ0に近い値となる。
液晶は反強誘電相のままである。
【数2】
【0033】一方、書き込み光が照射されると印加電界
に加え、a−Si層内で光起電力が生じるため図5
(c)のような電界が液晶層にかかっている。この場合
も(b)の時と同様に、周波数が液晶分子が追随できな
いほど、充分に高いと平均値であるVLCが液晶層にかか
っていることになる。このVLCが液晶の閾値を越えると
反強誘電相から強誘電相への相転移が起こる。
【数3】
【0034】以上が本素子の動作原理である。この駆動
方法により同期などを必要とせずに光信号の実時間処理
が行える。また、高周波を加え続けることにより、反強
誘電性液晶の焼き付きなどを防ぐことができる。本素子
は、反強誘電性液晶とa−Siの応答時間の差を利用し
ているのでバイアス周波数をその値に設定しないと十分
な特性が得られない。そこで、バイアス周波数を変化さ
せて読み出し光をストレイジ・スコープ上に投影した画
面のプロッタ出力を図6に示す。測定光学系を図2に示
す。印加電圧VBは22Vとしている。書き込み光はオ
プティカル・チョッパーでON、OFFを行い、その周
波数は50Hz程度である。
【0035】図6(a)は周波数40kHzのときの読
み出し光である。上側の曲線は光入力があるとき、そし
て下側の曲線は入力がないときである。このように低周
波領域では光に対して応答するが、それと共に電界の周
波数に反強誘電性液晶が追随できるのであまりはっきり
としたコントラストが得られない。
【0036】周波数を上げて100kHzにすると〔図
6(b)〕、反強誘電性液晶が電界周波数に追いつかな
くなっていくので、はっきりとしたコントラストが得ら
れるようになる。しかし、この周波数でも光入力がなく
反強誘電相の時は前駆動現象などのため若干の応答がみ
られる。
【0037】周波数を200kHzにすると〔図6
(c)〕、強誘電相、反強誘電相共に完全に電界に対し
ては応答しなくなり、高いコントラストが得られる。従
って、実時間光情報処理に応用できる。
【0038】さらに、周波数を上げ、800kHzにす
ると〔図6(d)〕、今度はa−Siの応答速度が電界
周波数に追随しにくくなり、読み出し光の応答も鈍って
コントラストが低下する。以上のように周波数を選択す
ることにより、高いコントラストで光情報処理が実現で
きることが確認された。
【0039】次に、読み出し光の周波数特性を図7に示
す。電圧は22Vとしている。周波数150〜250k
Hzにおいて高い出力差が得られた。また、図8は、図
7の特性をコントラスト比に計算したものである。最大
コントラストは1:38ほどである。
【0040】図9に読み出し光の電圧特性を示す。この
とき電界周波数は200kHzとしている。低電圧領域
では反強誘電性液晶は光入力に関係なく、反強誘電相を
とる。そして電圧を上げていくと、光入力がないとき
は、VLCがほぼ0なので反強誘電相のままである。光が
書き込まれている場合は、a−Siの光起電力効果によ
って
【数4】 なので、電圧(VB)が図3で示された反強誘電性液晶
の閾値である約10Vの2倍の20V付近まで上げられ
ると、強誘電相に転移して、光出力が得られるようにな
る。
【0041】光入力がないときの暗状態は電圧を上げて
も変化せず、反強誘電性液晶の問題点の1つである前駆
動現象が抑えられている。また10〜20Vにおいて、
印加電圧によりコントラストが調整できる。
【0042】この素子の解像度は15 lp/mm、応
答時間は立上り0.4ms、立ち下がり0.5msであ
った。
【0043】さらに、この素子により画像処理の一種で
あるエッジ検出を試みた。図10に液晶分子の変更モデ
ルと書き込み光に対する読み出し光の関係を示す。この
図において偏光子の方向に液晶分子が近いほど出力は暗
状態となり、検光子の方向に近いほど明状態となる。図
10(a)のように反強誘電相を偏光子の方向と平行な
るように設定したとき、入力画像を書き込むと光があた
っていない部分は反強誘電相となり暗に、光があたって
いる部分は強誘電相となり明になるため、出力は入力画
像がそのまま読みだされた像となる。逆に図10(b)
のように強誘電相を偏光子の方向と平行となるように設
定すると、出力は入力画像が反転されたものが読みださ
れることになる。
【0044】エッジ検出は、図10(c)、(d)のよ
うに両偏光板と液晶分子の関係を設定することによって
実現できる。まず(c)のように偏光子の方向に対し、
反強誘電相と強誘電相が対称となるように設定すると、
書き込み光があたっている部分(強誘電相)、あたって
いない部分(反強誘電相)ともに明の状態として読みだ
される。また、入力画像の輪郭の部分は偏光子の方向と
平行になるため暗状態として読みだされる。したがっ
て、全体の読みだされた像としては輪郭部分のみが暗状
態となり、エッジ検出が実現できる。
【0045】一方図10(d)のように検光子の方向に
対し、反強誘電相と強誘電相が対称になるように設定す
ると、強誘電相と反強誘電相ともに暗の状態で読みださ
れ、入力画像の輪郭部分は検光子の方向と一致するた
め、明の状態として読みだされる。したがって、(c)
のように設定した場合とは逆に、輪郭部分のみが明の状
態としてエツジが検出される。
【0046】以上は、印加電圧22V、周波数200k
Hzで行った場合である。
【0047】図10(a)の場合に、周波数を200k
Hzから約80kHzに下げることにより、図10
(c)のように暗のエッジ検出ができた。また、図10
(b)の場合でも、周波数を200kHzから約80k
Hzに下げることにより、図10(d)のように明のエ
ッジ検出ができた。これらの方法によれば、偏光板と液
晶分子の位置関係を変えることなく、入力画像の処理方
法を周波数のみで調節できる。
【0048】
【発明の効果】
1.本発明は、a−Siと反強誘電性液晶の応答時間の
差を利用した、高周波電界印加時の光書き込みという簡
便な駆動方法により、印加電界の電圧や周波数の変化に
よるコントラストの調整が可能となった。 2.また、本発明は、従来の強誘電性液晶を用いた空間
光変調器と同様の方法と駆動周波数を調節するという従
来にはない新しい方法であり、これにより液晶素子のみ
による入力画像のエッジ検出をはじめて可能とした。従
来技術では画像情報のなかから、エッジ部分のみの情報
を得るためには必ずコンピューターによる情報処理を必
要としていたが、本発明によれば、コンピューターを使
用することなく、コンピーターによる画像演算処理を行
ったものと同一の情報処理が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる液晶空間光変調素子の構造を示
す図である。
【図2】液晶空間光変調素子における光学系を示す図で
ある。
【図3】反強誘電性液晶の相対光透過率と印加電圧との
関係を示す図である。
【図4】液晶空間光変調素子の等価回路を示す図であ
る。
【図5】液晶空間光変調素子の駆動波形を示す。(a)
はバイアス電圧の波形であり、(b)は書き込み光がな
い場合の駆動波形であり、(c)は書き込み光がある場
合の駆動波形である。
【図6】液晶空間光変調素子に印加されるそれぞれの周
波数に対応する読み出し光の変化を示すものであり、
(a)は40kHz、(b)は100kHz、(c)は
200kHz、(d)は800kHzのときのものであ
る。
【図7】読み出し光の周波数特性を示す図である。
【図8】コントラスト比が印加する周波数に応じて大き
く変化することを示す図である。
【図9】それぞれのバイアス電圧に対応する読み出し光
の強弱を示す図である。
【図10】液晶分子の偏光モデルと書き込み光に対する
読み出し光の関係を示す図である。 (a)は入力画像をそのまま読み出す場合の偏光モデル (b)は入力画像の反転を読み出す場合の偏光モデル (c)はエッジ部分を暗状態として読み出す場合の偏光
モデル (d)はエッジ部分を明状態として読み出す場合の偏光
モデル
【図11】(A)は印加される三角波を、(B)は市販
のネマチック液晶の、(C)は二状態液晶の、(D)は
三状態液晶の、それぞれの光学応答特性を示す。
【図12】クラーク/ラガウエルにより提案された強誘
電液晶分子の二つの安定した配向状態を示す。
【図13】本発明の“反”強誘電液晶分子の三つの安定
した配向状態を示す。
【図14】“反”強誘電液晶分子が印加電圧に対応して
ダブル・ヒステリシスを描いて光透過率が変化すること
を示す印加電圧−光透過率特性図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G02F 1/135 G02F 1/141

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (a)透明基板とその上に形成された透
    明電極層とからなる電極基板および(b)透明基板とそ
    の上に順次形成された透明電極層と光伝導層からなる光
    伝導層つき電極基板とを、それぞれの透明基板を外側に
    して配置させた内側に、(c)印加電圧に対して少なく
    とも3つの安定状態を有する液晶を封入してなる液晶空
    間光変調素子の前記(a)の透明電極と前記(b)の透
    明電極との間に液晶が追随できないような単極の高周波
    電界を印加し、前記(b)の透明基板の側から光を照射
    し、入射光の強度に応じて光伝導層の抵抗値が変化する
    ことにより、液晶に加わる高周波電界の平均値が変化
    し、それにより、前記液晶の3つの安定状態のうち2つ
    の状態間のスイッチングを発生させ、これを前記(a)
    の透明基板の側から読み取り、さらに、読取光の書き込
    み光に対する応答において画像処理の1つであるエッジ
    検出を駆動周波数を調節することにより行なうことを特
    徴とする液晶駆動方法。
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