JP3132015B2 - 酸素吸収剤成形体及びその製造方法 - Google Patents

酸素吸収剤成形体及びその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は酸素吸収剤に関する。さ
らにくわしくは錠剤型その他の形状に成形でき、酸素吸
収能力にすぐれた酸素吸収剤成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】食品保存の技術の一つとして脱酸素剤に
よる技術があり、多種多様な食品や、さらには医薬品、
機械部品等の保存までその用途は拡大してきている。脱
酸素剤とは、通常、酸素を吸収する組成物(酸素吸収
剤)を通気性の小袋に充填したものであり、このものを
食品、医薬品、機械部品等の被保存物(以後、被保存物
とのみ記載)とともに包装容器中に密封することによ
り、容器内の酸素を吸収除去して被保存物の品質を維持
するものである。食品メーカー等では、商品を包装する
際に脱酸素剤を同封するだけの簡単な作業で、商品の品
質を長期間保持することができるため、脱酸素剤による
保存技術は広く普及している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記脱
酸素剤は酸素吸収体が粉末状または細かい粒状であるた
め、これらがこぼれない程度に密封性を持ち、且つ通気
性を保持できる小袋に包装されたものであり、小袋から
微粉がこぼれて被保存物を汚す危険があった。酸素吸収
剤のこぼれを防止し、かつ通気性を保持するためには、
紙、フィルム、補強材等を積層するなどの複雑で高価な
材料で小袋を製作する必要があり、コスト上昇の原因と
なっていた。また被保存物の包装形態によっては小袋の
寸法分の容積または小袋の形状が許容されない場合もあ
った。
【0004】これらの点を改良するものとして、特開昭
55−116434、特開昭60−139687等、多
くのシート状脱酸素剤が開示された。しかしこれらは粘
着テープ、パルプ等の繊維シートその他のシート基材に
酸素吸収剤を分散保持または吸収させたものであり、基
材の容積が大きく、酸素吸収剤のみの容積に比べ、かな
り大型になってしまう。更に平面シート状という形状に
限定されてしまう。即ち、いずれの型も酸素吸収剤を収
納する袋またはシート基材の形状で形や大きさの制約を
受けてしまい、かさ高なものとなり、単位容量当たりの
酸素吸収能力が小さくなる欠点があった。
【0005】これらの欠点を解決する方法として、酸素
吸収剤を打錠等の方法で成形することが考えられ、特開
昭58−85461で錠剤型脱酸素剤が開示された。し
かしこのものも塩類を含浸させた粒状物を成形基剤と
し、そこに酸素吸収剤である鉄粉を付着させたものであ
り、鉄粉自体の容積に比べると全体はかさ高なものとな
ってしまう。例えば同号公報の実施例1では鉄粉50重
量部に対して鉄粉以外の成分(鉄粉より比重が軽い)は
165重量部に及ぶ。また、塩を水溶液で含浸させるた
め、水と酸素吸収剤の鉄粉とが打錠時に発熱を伴って酸
素吸収反応を起こし、打錠成形時の取り扱いが煩雑であ
るとともに成形後の酸素吸収容量が減少してしまう等の
欠点があった。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者はかかる問題点
を解決し、取り扱いが容易で極めてコンパクトな脱酸素
剤を得る為に鋭意検討を重ねた結果、酸素吸収主剤であ
る金属粉を粉末バインダーとともに直接成形する方法に
よって成形基材を不要にできること、すなわち成形基材
に金属粉を分散させるのでなく、金属粉そのものを成形
できる方法を見出し、物品の保存その他の目的に好適に
使用できる他、必要に応じて、粉末バインダーを選定す
ることにより、耐水性、耐熱性にも優れた酸素吸収剤成
形体を発明するに至った。
【0007】本発明において、金属粉を主剤とする酸素
吸収物質とは鉄、鉄合金、アルミニウム、マグネシウム
などの金属を主とする物質の粉末をさし、酸素を吸収す
る物質であれば良いが、入手の容易さ、安全性等から主
剤の金属粉としては純鉄粉、鋳鉄粉、鋼粉及び鉄合金粉
等の鉄粉が好ましい。また一般的には酸素吸収能力増大
の為にこれら金属粉にハロゲン化金属、活性炭及び各種
無機フィラ−類を混合したり被覆したりすることが行わ
れており、これらの処理をしたものが好適に使用でき
る。
【0008】粉末バインダーについては上記金属粉を主
剤とする酸素吸収物質を結合成形できるものであればよ
いが、本発明の主旨の一つである金属粉を主剤とする酸
素吸収物質そのものを成形主剤とし、他の成形基材を用
いないという点から、少量で結合効果が得られるものが
良く、添加量としては金属粉に対して30重量%以下、
更に望ましくは20重量%以下で結合成形可能なものが
良い。
【0009】また、成形時に水分共存による酸素吸収反
応が起きないように、成形時の水分は1%以下の実質的
に水分を含まない状態にしておくことが取り扱い上有利
であるから、水溶液で使用することなく結合効果が得ら
れるものが望ましい。
【0010】具体的には各種糖類、セルロ−ス、ガム
類、ワックス類、樹脂類等が挙げられる。また、酸素吸
収剤が高湿度雰囲気下で長期間使用される際、水濡れに
よる酸素吸収機能低下を防ぐためには水難溶性または水
不溶性の粉末バインダーが望ましく、セルロ−ス、ワッ
クス類、樹脂類が好適に用いられる。
【0011】更に最近では被保存物を加熱滅菌したり、
食品では調理直後の熱いうちに包装したりする例が増加
してきており、これらの用途に対応するためには融点ま
たは軟化点が90℃以上である樹脂類が更に望ましい。
粉末バインダーの耐熱性が低い場合には成形体が変形し
たり、粉末の溶融物が金属粉表面をおおって酸素吸収能
力を低下させることにつながるからである。
【0012】以上の諸条件すべてに耐えられるものとし
てはポリエチレン、ポリプロピレン等、軟化点90℃以
上の水不溶性樹脂微粉末が具体例としてあげられる。粉
末の粒径は50μm以下が成形性に優れているので望ま
しい。但し、上記諸条件を全て満たす必要のない用途も
あるので、粉末バインダーの選択はこの例に限定される
ものではない。
【0013】金属粉を主剤とする酸素吸収物質と粉末バ
インダーを混合したのち打錠機、プレス機等で加圧成形
することにより、本発明の酸素吸収剤成形体を得る。混
合方法は粉末バインダーを均一に分散させるという目的
が達せられるかぎり特に制限はない。また、混合時およ
び加圧成形時の温度も適宜選択できる。必要に応じて、
より酸素吸収機能及び成形性を高めるため、または消
臭、ガス発生、ガス吸収、殺菌、着香、吸水等の効果を
加えて酸素吸収との複合機能を持たせるために、金属粉
を主剤とする酸素吸収物質と粉末バインダー以外に種々
の添加剤を加えた後に加圧成形しても良い。成形体の形
状はその用途に適した任意の形状を選択でき、円形、多
角形、長円形などの各種錠剤形をはじめ、包装容器の収
納部に合わせた形にしたり、星形、花形、動物形、文字
形など、親しみのある形にすることもできる。
【0014】
【実施例】実施例1 市販鉄粉2000gに50%塩化カルシウム水溶液16
gを混合後乾燥し、さらに酸化鉄40gをフィラーとし
て混合した鉄粉系酸素吸収物質と、ポリプロピレンを微
粉砕後325メッシュの篩を通過させた粉末100g、
及び滑剤としてステアリン酸マグネシム5gを混合し、
ロータリー式打錠機を用い毎分500錠の速度で打錠成
形した。打錠に際しては発熱、結露、分級、付着その他
のトラブルはなく、順調に連続生産できた。成形前に上
記混合粉の水分を測定したところ、1重量%以下であっ
た。得られた成形品は径9mm、厚さ2.5mmの円板
形で、重量は0.5g、錠剤硬度は5.6kg(有限会
社・三力製作所製錠剤硬度試験器による)、金属鉄含有
量は90.4重量%であった。この成形品をゴム栓(2
番)の小径側に設けた9mm径の窪みにはめこみ、水1
0ccを入れた100ml容量のナス型フラスコ(口径
15mm)の栓として使用した。1日後にフラスコ内の
酸素濃度を測定したところ、0.01%以下であった。
【0015】実施例2 銑鉄のヤスリ粉100gに塩化ナトリウム(100メッ
シュの篩を通したもの)0.5gと粉末活性炭1gおよ
び実施例1で使用したポリプロピレンを微粉砕後325
メッシュの篩を通過させた粉末と同じもの0.8gを混
合し、水分1%以下の混合粉を得た。この5gを手動プ
レス機を用いて外径20mm、内径10mmのドーナツ
状に加圧成形した。化粧水50ccが入ったねじ口滴び
ん(容量120cc)のキャップに取り付けたスポイト
の管状部を、上記で得られたドーナツ状成形品の内側の
穴に差し込み、ネジこみキャップの内側で接着剤を用い
て固定した。化粧水のねじ口滴びんのキャップでふたを
し、化粧水とドーナツ状成形品を密閉した。1日後に壜
内の酸素濃度を測定したところ、0.01%以下であっ
た。
【0016】実施例3 ポリプロピレン粉末の代わりにポリエチレングリコール
6000番280gを使用した他は実施例1と同様の操
作によって、9mm径、厚さ2.5mm、重量0.5g
の錠剤型酸素吸収剤成形体を得た。この成形体を饅頭1
個を入れたKON/PE袋の一角に、点ヒートシールに
よって通気性を確保しつつつくられたポケットに入れ、
饅頭と成形体を空気100mlとともに密封し、室温下
に保存した。1日後に袋内酸素濃度を測定したところ、
0.01%以下であった。更に保存を続け、2週間後に
開封したところ、饅頭の品質は良好に保持されていた。
【0017】比較例1 実施例3の試験において、対照として酸素吸収剤成形品
を挿入せずに同様の条件で密封保存した饅頭には2週間
後カビがはえており、食することができなかった。
【0018】実施例4 実施例1の錠剤型酸素吸収剤成形品(重量0.5g)を
KON/PE袋内に入れ、空気量400ml、RH10
0%の条件で密封して室温下に置いた。24時間後に袋
内酸素濃度を測定すると13.5%であった。また7日
後に袋内酸素濃度を測定すると0.01%以下であっ
た。
【0019】比較例2 酸素吸収剤(小袋内粉末状内容物)量0.5gである小
袋状脱酸素剤(三菱瓦斯化学株式会社製エージレスFX
−20、37×37mm)を用いて実施例4と同様の方
法で袋内に密封、保存した。24時間後に袋内酸素濃度
を測定すると12.8%であった。
【0020】実施例5 実施例1の錠剤型酸素吸収剤成形品(重量0.5g)を
ポリプロピレンフィルムを溶断シールして作った15×
15mmの袋の中に密封し、袋面に針で穴を開けて通気
性を持たせたものをKON/PE袋内に入れ、空気量2
00ml、RH100%の条件で密封して室温下に置い
た。1週間後に袋内酸素濃度を測定すると0.01%以
下であった。直ちに袋内に空気10mlを追加注入し、
2週間後に酸素分析を行って0.01%以下であれば更
に空気を10ml注入することを繰り返し、酸素吸収能
力の持続性を測定したところ、8週間後の分析でも酸素
濃度は0.01%以下を維持していた。
【0021】比較例3 小袋状脱酸素剤(三菱瓦斯化学株式会社製エージレスF
X−20、37×37mm)の内容物(酸素吸収剤粉
末)を実施例5と同じポリプロピレン袋に密封し、針穴
を開けた。この際、袋(15×15mm)が小さいため
粉末を袋へ充填するのが困難でシール部に粉が噛みやす
いばかりでなく、針穴部分から粉がこぼれ、使用に適さ
なかった。
【0022】実施例6 実施例1の錠剤型酸素吸収剤成形品(重量0.5g)
と、実施例3の錠剤型酸素吸収剤成形品(重量0.5
g)をそれぞれ ポリプロピレンフィルムを溶断シール
して作った20×20mmの袋の中に密封し、袋面に針
で穴を開けて通気製を持たせた後、容量200mlのね
じ蓋式ガラス壜の蓋の内側に接着剤で貼り付け、壜内に
はカレールウ150mlを入れてこの壜を120℃で3
0分間レトルト処理し、処理後は室温下に置いた。処理
1日後に壜内の酸素濃度を測定したところ、実施例1の
酸素吸収剤を使用したものは0.01%以下であった。
しかし実施例3の酸素吸収剤を使用したものは処理1週
間後になっても酸素濃度が10%以下に低下しなかっ
た。また処理1週間後、実施例1の酸素吸収剤には異常
が見られなかったのに対し、実施例3の酸素吸収剤はベ
トベトになり、変形していた。
【0023】
【発明の効果】このようにして得られた酸素吸収剤成形
体は、自由な形状に成形が可能で、容器への収納性、美
観保持性に優れ、被保存物容器の形状的な制約を受ける
ことがなく、また粉末状ではないので酸素吸収剤がこぼ
れて被保存物を汚すこともなく、酸素吸収剤を包装材料
で包装する必要がある場合にも単純なフィルムに通気の
ための穴を開ける程度で安価に行なうことができる。更
に高湿度下での能力にもすぐれ、耐熱性も高く、加熱滅
菌処理にも対応できることは勿論であるが、
【0024】従来の酸素吸収剤成形体と異なり酸素吸収
主剤である金属粉を成形基材なしに加圧成形したもので
あるため、小さな容積で多量の酸素を吸収することがで
きる。また水分を実質的に含まないので成形時の発熱や
それに伴う結露がなく、成形作業性にすぐれるうえ、被
保存物に含まれる水分等、外から水分を受けて初めて酸
素吸収機能を発揮するため、酸素吸収能力の低下がなく
取り扱い性に優れる。

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】金属粉を主剤とする酸素吸収物質と、水難
    溶性または水不溶性の粉末からなるバインダーとを必須
    成分とし、水分含有率が1%以下の成形体であることを
    特徴とする酸素吸収剤成形体。
  2. 【請求項2】前記バインダーが、ポリエチレン又はポリ
    プロピレンからなる粒径50μm以下の水不溶性樹脂微
    粉末である請求項1記載の酸素吸収剤成形体。
  3. 【請求項3】前記バインダーが、軟化点90℃以上の水
    不溶性樹脂粉末である請求項1記載の酸素吸収剤成形
    体。
  4. 【請求項4】金属粉を主剤とする酸素吸収物質に、水難
    溶性または水不溶性の粉末からなるバインダーを混合
    し、水分含有率が1%以下の状態で乾式加圧成形するこ
    とを特徴とする酸素吸収剤成形体の製造方法。
  5. 【請求項5】前記バインダーが、ポリエチレン又はポリ
    プロピレンからなる粒径50μm以下の水不溶性樹脂微
    粉末である請求項4記載の酸素吸収剤成形体の製造方
    法。
  6. 【請求項6】前記バインダーが、軟化点90℃以上の水
    不溶性樹脂粉末である請求項4記載の酸素吸収剤成形体
    の製造方法。
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