JP3130257B2 - 不燃性耐火組成物及び不燃性耐火発泡プラスチック - Google Patents

不燃性耐火組成物及び不燃性耐火発泡プラスチック

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、断熱材、防音
材、電気絶縁材等として使用される不燃性耐火発泡プラ
スチックおよび不燃性耐火組成物、特に一般建築物など
の断熱材や防音材として好適に用いられる、不燃性耐火
発泡プラスチックおよび不燃性耐火組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】発泡プラスチックは、無数の小空隙、小
気泡がプラスチック全体に分散しているものであり、そ
の特徴的な構造に起因して断熱性、防音性、弾力性等に
優れるとともに、軽量、安価であることから、クッショ
ン材(緩衝材)、断熱材、防音材、包装材、電気絶縁材
等多用途に使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、発泡プ
ラスチックは有機物からなる材料であることに加えて、
前記無数の小空隙、小気泡が存在するから燃えやすいと
いう欠点を有している。これに対し、近年のプラスチッ
ク製品の安全性に対する関心が高まる中で、発泡プラス
チックにおいても、特に火災防止の面よりその不燃性や
耐火性について厳しい性能が要求されることが多い。
【0004】例えば、一般建築物などに断熱材や防音材
として使用される場合、その施工工程において、火花等
の着火源等により発泡プラスチックが燃えて火災が発生
することがあり、これにより負傷者あるいは死者が発生
する事態に至ることもあることから、不燃性に優れた発
泡プラスチックの開発が強く望まれていた。
【0005】また、一般建築物などに断熱材や防音材と
して使用される場合には耐火性を要求されるため、従来
は発泡プラスチック材の表面に不燃性の物質をコーティ
ングする等の耐火性能を高める工夫が施されているが、
このような手法では施工工程が増え、施工作業に時間を
要し、施工期間の長期化及びコストの増大を来すことか
ら、この観点からも発泡プラスチック自体が優れた耐火
性を有することが求められていた。
【0006】この発明は、かかる技術的背景に鑑みてな
されたものであって、不燃性に優れるのみならず、優れ
た耐火性能を備えた不燃性耐火組成物及び不燃性耐火発
泡プラスチックを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明者は鋭意研究の結果、エトリンジャイトを所
定量配合した、発泡剤含有樹脂組成物を用いて発泡体に
成形した発泡プラスチック材が、不燃性に優れるのみな
らず、耐火性能にも優れることを見出すに至り、本発明
を完成したものである。
【0008】即ち、請求項1の発明にかかる不燃性耐火
組成物は、発泡剤と、樹脂と、該樹脂100重量部に対
してエトリンジャイト5〜300重量部とを含有してな
ることを特徴とするものである。
【0009】請求項2の発明にかかる不燃性耐火組成物
は、上記請求項1の発泡樹脂組成物において、更に樹脂
100重量部に対して、100〜1000℃で不燃性ガ
スを放出すると共に吸熱作用を生じる無機化合物粉粒体
が5〜500重量部配合されてなる構成を採用したもの
である。
【0010】請求項3の発明にかかる不燃性耐火組成物
は、上記請求項1または2の発泡樹脂組成物において、
更に樹脂100重量部に対して、酸化チタン粉粒体が
0.01〜100重量部配合されてなる構成を採用した
ものである。
【0011】請求項4の発明にかかる不燃性耐火発泡プ
ラスチックは、請求項1〜3のいずれかの不燃性耐火組
成物を用いて発泡体に成形されてなることを特徴とする
ものである。
【0012】ところで、図1に示されているのはJIS
A1304「建築構造部分の耐火試験方法」に規定さ
れる加熱試験における試験体の一般的な温度上昇パター
ンを示すグラフであり、加熱によってまず100℃まで
立上がり(a),試験体に含まれる水分が水蒸気ガスと
して放出されている間は水の沸点である100℃で停滞
し(b)、その後時間の経過とともに温度が上昇し
(c)、350℃に達するまでの時間が耐火時間として
評価される。図1からわかるように、立上がり域(a)
が長いほど耐火時間が長くなり、100℃における停滞
域(b)が長いほど耐火時間が長くなり、温度上昇域
(c)における温度勾配が小さい程350℃に達するの
が遅くなって耐火時間が長くなり、耐火性能が良いとい
える。
【0013】前記エトリンジャイトとは、結晶骨格間に
大きな空隙を有するカルシウムとアルミニウムの水和硫
酸塩であって、前記空隙に約45〜55重量%もの多量
の結晶水を含んでいる。この発明に使用するエトリンジ
ャイトは、天然に産出するものでも人工的に合成したも
のでも良い。このようなエトリンジャイトを成分として
所定量含有させることにより、不燃性に優れたものとな
すことができる。また、エトリンジャイトは、加熱され
ると前記結晶水が60℃付近から結晶骨格から遊離し始
め、該結晶水は不燃性の水蒸気ガスとして放出される
が、前述のように結晶水量が極めて多いために前述の1
00℃停滞域(b)を延ばす効果がある。このようなエ
トリンジャイトの配合量は、前記樹脂100重量部に対
して5重量部未満では前記100℃停滞域(b)を延ば
す効果が殆どなく、また300重量部を超えると相対的
に前記樹脂組成物の配合量が少なくなって、断熱性能等
の発泡プラスチック本来の優れた諸特性が阻害される。
従って、エトリンジャイトの配合量は、樹脂100重量
部に対して5〜300重量部の範囲とする必要がある。
特に好ましい配合量は50〜250重量部である。
【0014】前記無機化合物粉粒体としては、100〜
1000℃の温度域で結晶水の放出または分解反応によ
り水蒸気ガスまたは炭酸ガスの不燃性ガスを放出すると
共に吸熱作用を生じる無機化合物の水和物または無機炭
酸塩の粉粒体、あるいはこれらを主体とする鉱物の粉粒
体を使用するが、その重量の10%以上を不燃性ガスと
して放出するものが好ましい。具体的には、200〜2
50℃で水蒸気ガスを生成する水酸化アルミニウム、約
800℃で炭酸ガスを生成する炭酸カルシウム、約90
0℃で水蒸気ガスを生成するベントナイトおよびセピオ
ライト、約150℃で水蒸気ガスおよび炭酸ガスを生成
する重曹、約400℃で水蒸気ガスを生成する水酸化マ
グネシウム等を例示でき、これらのうちの1種を単独で
使用しても良く、また2種以上を併用しても良い。な
お、これらの無機化合物粉粒体は特に限定されるもので
はないが、樹脂組成物の均一混合を図るために平均粒径
1.0mm程度以下のものが望ましい。
【0015】前記無機化合物粉粒体においては、不燃性
ガスが生成している間はガス生成のために熱が奪われる
ために温度上昇が抑制され、図1の温度上昇域(c)に
おける温度勾配が小さくなる。このような無機化合物粉
粒体の配合量は、前記樹脂100重量部に対して5重量
部未満では前記温度勾配を小さくする効果が殆どなく、
また500重量部を超えると相対的に前記エトリンジャ
イトの配合量が少なくなって100℃停滞域(b)の延
長効果が減少するし、相対的に前記樹脂組成物の配合量
が少なくなって断熱性能等の発泡プラスチック本来の優
れた諸特性が阻害される。従って、無機化合物粉粒体の
配合量は、樹脂100重量部に対して5〜500重量部
の範囲とする必要がある。特に好ましい配合量は50〜
250重量部である。
【0016】前記酸化チタンは、高温域においても非常
に安定で分解せず、輻射熱を遮断して断熱材の熱伝導率
を下げる効果がある。従って図1の温度上昇パターンに
おいて、100℃までの立上がり域(a)以降の全区域
で耐火時間を延ばす効果がある。また、酸化チタン粉粒
体の粒度は特に限定されるものではないが、樹脂組成物
の均一混合を図るために平均粒径1.0mm程度以下の
ものが望ましい。このような酸化チタン粉粒体の配合量
は、前記樹脂組成物に対して0.01重量部未満では熱
伝導率を低下させる効果が殆どなく、また100重量部
を超えて配合しても熱伝導率低下効果が飽和するため多
量に配合する意味がないし、経済的に不利でコスト高と
なる。従って、酸化チタン粉粒体の配合量は樹脂組成物
に対して0.01〜100重量部の範囲とする必要があ
る。特に好ましい配合量は0.5〜15重量部である。
【0017】この発明において用いられる樹脂として
は、ポリウレタン、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリ塩
化ビニル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、フェノ
ール樹脂、ユリア樹脂等が挙げられるが、特にこれらに
限定されるものではなく、発泡体に成形可能な樹脂であ
ればよい。
【0018】この発明において用いる発泡剤としては、
化学発泡剤として、アゾジカルボンアミド、、アゾビス
イソブチロニトリル、ジアゾアミノベンゼン、N,N´
−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N´−ジ
メチル−N,N´−ジニトロテレフタルアミド、ベンゼ
ンスルホニルヒドラジド、p−トリエンスルホニルヒド
ラジド、p,p´−オキシビスベンゼンスルホニルヒド
ラジド、炭酸塩、有機酸塩等を、物理発泡剤として、プ
ロパン、ブタン、ペンタン、メタノール、エタノール等
を挙げることができる。もちろん、これらの発泡剤と通
常使用される発泡助剤、架橋剤、核剤を併用してもよ
く、また発泡体は架橋させても良い。
【0019】また、前述の各成分の他に諸性質の向上を
目的として、安定剤、可塑剤、酸化防止剤などの各種添
加剤を任意に配合することができる。
【0020】この発明において、上述したような各材料
成分を配合する際には常法に従って配合すれば良い。
【0021】
【実施例】次に、この発明の具体的実施例について説明
する。
【0022】不燃性耐火組成物を作成するに際し、樹脂
としてポリウレタン及びポリスチレンと、含水量46重
量%のエトリンジャイトと、無機化合物粉粒体として平
均粒径0.1mmの水酸化アルミニウム、平均粒径0.
1mmの炭酸カルシウム、平均粒径0.2mmのベント
ナイトおよび平均粒径1mmのセピオライトと、平均粒
径1μmの酸化チタンと、発泡剤としてペンタンを主材
料として使用した。前記各材料を表1および表2に示す
割合(発泡剤の配合量は樹脂100重量部に対して全て
3重量部とした)で混合して実施例1〜13および比較
例1〜5の組成物とし、各組成物について、発泡成形に
より発泡体を作製した。
【0023】<試験方法および評価方法>上記のように
作製された各発泡体に対し、下記に示す不燃性試験法、
耐火性試験法、熱伝導率測定方法に準拠して評価を行っ
た。
【0024】A.不燃性試験法 JIS A1321−1975に記載の方法に基づき、
各発泡体について基材試験、表面試験を行い、両試験共
に合格と評価されるものを「合格」とし、どちらか一方
又は両方が不合格と評価されるものを「不合格」とし
た。建築基準法において、「不燃材料」は、上記基材試
験、表面試験を行い、それぞれの試験に合格したもの、
と規定されているから、本実施例で「合格」と評価され
るものは、建築基準法で規定される「不燃材料」となる
ものである。なお、表中においては合格を「○」、不合
格を「×」と表記した。
【0025】B.耐火性試験法 各発泡体を、幅100mm×長さ100mm×厚さ1.
5mmの鉄板の両面に15mm厚に積層したものを試験
体とした。試験体の鉄板および発泡体の表面に熱電対を
取り付けて加熱炉に入れ、JIS A1304−199
4の方法に従って発泡体の表面温度が所定温度となるよ
うに加熱炉を昇温し、前記熱電対により鉄板の温度を測
定した。そして、鉄板の温度が350℃に達するまでの
時間を耐火時間とした。
【0026】C.熱伝導率測定方法 JIS A1413−1977に記載の方法に基づき、
各発泡体について熱伝導率を測定した。
【0027】これらの試験結果を表1および表2に示
す。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】表1の結果から明らかなように、この発明
の実施例1〜13の発泡体はいずれも不燃性に優れるの
みならず、耐火性能にも優れている。また、エトリンジ
ャイトを単独で用いるよりも無機化合物粉粒体および酸
化チタン粉粒体を併用することにより、なお一層耐火性
能が向上することを確認し得た。また、これら発泡体は
熱伝導率が低く、優れた断熱性能を具備していることを
確認し得た。
【0031】これに対し、この発明の範囲を逸脱する比
較例1〜5はいずれも不燃性材料にはなり得ず、また耐
火時間が短く、耐火性能に劣るものであった。
【0032】
【発明の効果】この発明にかかる不燃性耐火組成物及び
不燃性耐火発泡プラスチックは、成分としてエトリンジ
ャイトを所定量含有するものであるから、不燃性に優
れ、建築基準法で規定される「不燃材料」と成し得るも
のである。また、加熱過程において、エトリンジャイト
の結晶水が約60℃で遊離し始め、この水蒸気ガスが生
成され、放出されている間は、その吸熱作用によって発
泡プラスチックの温度上昇が抑制されて温度は100℃
で停滞する。しかもエトリンジャイトは45〜55重量
%もの多量の結晶水を有しているから100℃停滞域は
長くなり優れた耐火性能を発現する。
【0033】無機化合物粉粒体は100〜1000℃の
温度域で吸熱して結晶水の放出または分解反応を起こ
し、その吸熱作用により発泡プラスチックの温度上昇が
抑制され100℃以上の温度域、即ち図1における温度
上昇域における温度勾配を小さくして耐火時間を延ばす
ことができる。このような無機化合物粉粒体をエトリン
ジャイトと併用することによって、エトリンジャイトを
単独で使用する場合に比べて相乗的に優れた耐火性能を
発現する。また、無機化合物粉粒体は、それ自体が不燃
性であるから、より不燃性能に優れたものとなすことが
できる。
【0034】また、エトリンジャイトおよび無機化合物
粉粒体に起因する不燃性ガスは、生成時の吸熱作用のみ
ならず、不燃性ガス層を形成することによって熱伝導を
遅らせることとなり、この点でも耐火性能を向上させ得
る。
【0035】更に、酸化チタン粉粒体は輻射熱を遮断し
て熱伝導率を下げるため、加熱直後から耐火時間を延ば
す効果がある。このような酸化チタン粉粒体を配合する
ことにより、エトリンジャイトを単独で使用する場合
や、エトリンジャイトおよび無機化合物粉粒体の混合物
を使用する場合に比べて相乗的に優れた耐火性能を発現
する。また、酸化チタン粉粒体は、それ自体が不燃性で
あるから、より一層不燃性能に優れたものとなすことが
できる。
【0036】この発明の不燃性耐火組成物を用いて成形
された発泡体またはこの発明の不燃性耐火発泡プラスチ
ックは、材料自体が優れた不燃性を有するものであるか
ら、燃えることはなく、従って特に火災防止の観点から
安全性の高い材料を提供することができ、例えば一般建
築物などの断熱材として施工する際の、火花等の着火源
による発泡プラスチックの燃焼に起因する火災の発生お
よびこれにより負傷者あるいは死者が発生する事態を回
避することができる。
【0037】また、材料自体が優れた耐火性を有するか
ら、例えば従来一般建築物などの断熱材用途に使用する
場合に必要とされていた耐火性能を高める処理を施す必
要がなくなり、その結果、施工期間の短縮及びコスト低
減に大きく寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】加熱試験における試験体の温度上昇パターンを
示すグラフである。
【符号の説明】
a…立上がり域 b…100℃停滞域 c…温度上昇域

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 発泡剤と、樹脂と、該樹脂100重量部
    に対してエトリンジャイト5〜300重量部とを含有し
    てなることを特徴とする不燃性耐火組成物。
  2. 【請求項2】 前記樹脂100重量部に対して、100
    〜1000℃で不燃性ガスを放出すると共に吸熱作用を
    生じる無機化合物粉粒体が、5〜500重量部配合され
    てなることを特徴とする請求項1に記載の不燃性耐火組
    成物。
  3. 【請求項3】 前記樹脂100重量部に対して酸化チタ
    ン粉粒体が0.01〜100重量部配合されてなること
    を特徴とする請求項1または2に記載の不燃性耐火組成
    物。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれか1項に記載の不
    燃性耐火組成物を用いて発泡体に成形されてなることを
    特徴とする不燃性耐火発泡プラスチック。
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