JP3117067B2 - 酸化態窒素含有水の処理方法及び装置 - Google Patents

酸化態窒素含有水の処理方法及び装置

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、酸化態窒素含有水
の処理に係り、特に用水又は廃水中の硝酸性あるいは亜
硝酸性窒素を含む水を生物学的に脱窒素する酸化態窒素
含有水の処理方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】地下水は広く水道の水源として利用され
ているが、近年10mg/リットルを超える硝酸及び亜
硝酸性窒素による汚染が、特に農村部において数多く報
告されている。地下水中の硝酸性窒素除去方法として
は、イオン交換法、有機物を水素供与体とする生物学的
処理法が挙げられる。しかし、前者においては硝酸性窒
素及び塩分濃度の高いイオン交換樹脂再生廃液を処理す
る必要があり、後者では処理水中に有機物が残留するた
めに、後段に残留有機物を除去する設備が必要となる。
また後者では多量の余剰汚泥を排出するため、これを処
理する設備が必要となる。一方、水を電気分解すること
によって陰極から水素を発生させると共に、陰極表面に
水素資化性の脱窒菌を固定化した生体触媒固定化電極を
浸漬して、水中の硝酸性窒素を除去する方法が開発され
ている(特開平5−329497号公報)。この方法は
水素ガスを利用する生物学的脱窒法の一種であるが、水
素の貯蔵施設が不要なこと、有機物を添加しないことか
ら、実用性が高い技術と考えられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、生体触
媒固定化電極を利用した窒素除去技術に関する様々な実
験を行ってきたが、脱窒反応においては陽極から発生す
る酸素が阻害作用を有することが明らかとなった。そこ
で、陽極から発生する酸素の陰極側への移動、拡散を阻
止するために、電極間をイオン交換膜あるいは精密ろ過
膜などの隔膜で仕切る方法を提案した(特願平7−53
780号)。しかし、その後の検討により電極間に隔膜
を挿入すると、通電条件によっては脱窒反応が起こる陰
極側のpHが、10以上に上昇することが明らかになっ
た。生物による脱窒反応の最適pHは7.0〜8.5で
あり、この範囲外では脱窒速度が大きく落ちることが知
られている。そこで、本発明は、陰極側のpH上昇を抑
えることによって、反応速度を高め、効率的に硝酸性窒
素を除去することができる酸化態窒素含有水の処理方法
及び装置を提供することを課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明では、酸化態窒素を含有する水を、陰極と陽
極の間を酸素を透過せず、電子を透過できる部材により
離隔して、各々陰極室と陽極室を形成させて電気分解
し、陰極から水素を発生させると共に、陰極表面又は陰
極室内に固定化された水素資化性脱窒素菌により、前記
酸化態窒素を除去する水の処理方法において、陽極室水
の一部又は全量を陰極室に導入することを特徴とする酸
化態窒素含有水の処理方法としたものである。また、本
発明では、少なくとも一対の陰極と陽極を設けた電解槽
を有し、該陰極と陽極の間を酸素を透過せず、電子を透
過する部材で隔離して陰極室と陽極室を形成し、陰極の
表面又は陰極室内に水素資化性脱窒素細菌を固定化した
酸化態窒素含有水の処理装置において、前記陽極室と陰
極室とを連通する水路を配備したことを特徴とする酸化
態窒素含有水の処理装置としたものである。
【0005】このように、本発明は、前記した陰極室の
pH上昇を抑制する方法を検討した結果、pHが低い陽
極室水の一部又は全量を陰極室へ導入することで、陰極
室のpHを脱窒反応に適切な範囲に維持できることを見
出してなされた。ただし、陽極室でのpHの低下により
遊離した炭酸・重炭酸成分が大気中に放散される為にp
Hの緩衝力が失われて、陰極室のpHが上昇する場合が
ある。この場合は、pHを適正に保つ為に、重炭酸塩の
ような緩衝剤、炭酸や塩酸のような酸を添加する必要が
ある。また、本発明の処理方法では、被処理水をまず全
量陽極室に導入した後、陰極室を全て処理水として放出
するようにしても良い。
【0006】本発明においては、陽極室水の溶存酸素が
過度に高くなると陰極室の脱窒反応を阻害する可能性が
あるが、そのような場合は連通配管の途中に溶存酸素の
放散が可能な貯留槽を設けるのが有効である。本発明に
おいて、脱窒菌は陰極表面に固定されるがこれに限定さ
れるものではない。例えば、脱窒菌としては、アルカリ
ゲネス ユウトロファス(Alcaligenes eutrophas)、パ
ラコッカス デニトリフィカンス(Paracoccus denitri
ficans) 、シュードモナス(Pseudomonas)属の1部等が
あり、これらを陰極室内にスポンジ様の担体を配置し、
担体内部で脱窒菌を増殖させるのも有効であるし、又、
陰極室壁に固定されても良い。
【0007】本発明で使用する隔膜は、親水性テフロン
(PTFE)、セルロースアセテート、ポリエステル不
織布にポリエチレン系樹脂又はセルロースアセテートを
コーティングした精密ろ過膜、又は、ポリエステル不織
布にイオン交換樹脂をコーティングしたイオン交換膜な
どの隔膜が有効であるが、酸素の陰極への移動を阻止で
きるものであれば種類は限定されない。単一素材でも複
合素材でも良く、また、壁、板、膜状等形状もとわな
い。なお、硝酸イオン(NO3 - )が陽極へ移動して脱
窒効率が低下することを防ぐためにはイオン交換膜、特
に陽イオン交換膜が有効である。
【0008】
【発明の実施の形態】次に、本発明を図面を用いて詳細
に説明する。図1は、本発明の処理装置の一例を示す全
体構成図である。図1において、電解槽1は、陽極室4
の底部に被処理水7の流入部、陰極室3の上部に処理水
10流出部を有し、隔膜2によって陰極室3及び陽極室
4に分離されている。また、陽極室4流出水は中間層8
を経由して、陰極室3に導入される。電解槽1に陰極5
(生体触媒固定化電極)及び陽極6を浸漬し、電極間に
電流密度が0.1mA/cm2 程度になる直流電圧11
を印加すると、陰極5、陽極6表面では下記の反応が起
こり、陰極表面からは水素ガス、陽極表面からは酸素ガ
スが発生する。 陰極 : 2H+ + 2e- → H2 ↑ 陽極 : 4OH- → O2 ↑+2H2 O+4e-
【0009】硝酸性窒素を含むpHが7.5である被処
理水7は、陽極室4を経て全量が陰極室3に通水され
る。陽極室4では陽極6表面で酸素が発生するため、陽
極室4流出水は溶存酸素が飽和状態となっている。また
陽極室4ではOH- イオンが消費されるため、pHが3
〜5に低下する。またpHの低下により陽極室では炭酸
イオンが遊離し、大気中に放散される。陽極室4流出水
は、高濃度の溶存酸素を含むが、例えば中間槽(脱気用
貯留槽)8を経由することにより、過飽和の溶存酸素が
揮散し、被処理水7中の溶存酸素濃度とほぼ等しくな
る。勿論ガス透過膜等による脱気を行ってもよい。
【0010】また、陰極室内水のpH緩衝力が容認でき
ない程度に低下する様な場合は陰極室流入水には重炭酸
ナトリウム、炭酸ガス又は塩酸等を添加する。陰極室3
内ではH+ イオンが陰極5表面でH2 ガスとなるためp
Hが上昇するが、pHの低い陽極室流出水の流入によ
り、陰極室3内のpHは7.5〜8.5となる。陰極5
表面には、水素資化性の脱窒菌が固定されており、陰極
5で発生する水素ガスを利用して下式のような脱窒反応
が起こり、被処理水7中の硝酸性窒素は窒素ガスとして
系外に排出される。 2NO3 - +5H2 → N2 ↑+2OH- +4H2
【0011】図2も本発明の他の一例を示す全体構成図
である。図2において、電解槽1は陽極室4および陰極
室3両方の底部に被処理水7流入部を有し、陽極室4の
一部の水が被処理水7と混合後、陰極室3に底部から流
れる。このフローにおいては、循環される陽極水が少量
であるため、図1に示したような溶存酸素放散用の中間
層は必要ない。図2においても、低pHの陽極水が導入
されることから陰極室のpHは脱窒反応に適切な範囲
(7〜8.5)に維持可能である。
【0012】
【実施例】以下、実施例に基づいて具体的に本発明を説
明する。 実施例1 実施例のフローは、図1に記載の処理フローを用いた。
実施条件を以下に示す。 ・被処理水: 地下水 水質:硝酸性窒素約10mg/リットル、亜硝酸性窒素
0mg/リットル 水温:17℃ 水量:0.2m3 /日
【0013】・生物反応槽 容積:3リットル 陽極:チタン(表面に白金をメッキ、電極面積0.15
2 ) 陰極:黒鉛(電極面積0.15m2 ) 電極間距離:16mm 隔膜:旭硝子(株)製陽イオン交換膜セレミオンCMV 陽極から5mmの位置に設置 電圧及び電流:直流3〜6V、0.5〜1.0A NaHCO3 添加量:陰極室中のpHにより適宜添加し
た。
【0014】図3に被処理水と処理水の水質経時変化を
示す。処理水pH(−●−)は8.0〜8.5となり、
微生物の脱窒に適した値が維持された。陰極表面への脱
窒菌の固定化は、被処理水(−〇−)を通水することで
自然に増殖させる方法で行った。従って運転初期には脱
窒能力は認められなかった。しかし運転開始1週間後か
ら徐々に処理水中の硝酸性窒素濃度の低下が認められ、
陰極表面には生物スライムの生成が認められた。運転開
始1ケ月後からは処理水硝酸性窒素濃度(−▲−)が約
3mg/リットルでほぼ安定した。処理水中の亜硝酸性
窒素濃度(−□−)は0.1〜0.3mg/リットルと
被処理水より高くなったが、この程度では特に問題はな
いと考えられる。
【0015】生物処理においては、脱窒菌の過剰な増殖
による処理水中へのSS及び菌体の流出がしばしば問題
となる。本実施例でのSS測定値は、被処理水:測定限
界以下に対して処理水:0.2〜1.8mg/リットル
であった。これは水素資化性脱窒菌の増殖によるものと
推定されるが、従来の有機物を水素供与体とする方法に
比べてかなり低くなることが証明された。また、溶解性
TOCは、被処理水:1.5〜3.0mg/リットルに
対し、処理水:1.5〜3.0mg/リットルであっ
た。菌体からの有機物の生成、電極からの有機物の溶出
は認められなかった。2.5ケ月の運転で、電極の消耗
は陰極・陽極ともに認められず、生物膜による電解効率
の低下も認められなかった。
【0016】
【発明の効果】このように、本発明によって生体触媒固
定化電極による脱窒反応の効率が従来よりも向上させる
ことが可能となった。また従来法では、陽極室からは硝
酸性窒素が除去されない水が流出し、陰極室流出水と混
合した水を処理水としたが、本発明では、陽極室流出水
を陰極室に導入するため、被処理水の全量が脱窒され
る。本発明はこれまでの脱窒方法の問題点を解決し、今
後の上水処理、地下水汚染修復事業に有効であると考え
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の処理装置の一例を示す全体構成図。
【図2】本発明の処理装置の他の例を示す全体構成図。
【図3】運転日数による水質濃度の経時変化を示すグラ
フ。
【符号の説明】
1:電解槽、2:隔膜、3:陰極室、4:陽極室、5:
陰極、6:陽極、7:被処理水、8:中間槽、9:pH
調整剤貯留槽、10:処理水、11:直流電源
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 鴻野 卓 東京都大田区羽田旭町11番1号 株式会 社荏原製作所内 (72)発明者 黒田 正和 栃木県足利市寿町15番10号 (56)参考文献 特開 平5−329497(JP,A) 特開 平8−141574(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C02F 3/34 101 C02F 1/46

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 酸化態窒素を含有する水を、陰極と陽極
    の間を酸素を透過せず、電子を透過できる部材により離
    隔して、各々陰極室と陽極室を形成させて電気分解し、
    陰極から水素を発生させると共に、陰極表面又は陰極室
    内に固定化された水素資化性脱窒素菌により、前記酸化
    態窒素を除去する水の処理方法において、陽極室水の一
    部又は全量を陰極室に導入することを特徴とする酸化態
    窒素含有水の処理方法。
  2. 【請求項2】 少なくとも一対の陰極と陽極を設けた電
    解槽を有し、該陰極と陽極の間を酸素を透過せず、電子
    を透過する部材で隔離して陰極室と陽極室を形成し、陰
    極の表面又は陰極室内に水素資化性脱窒素細菌を固定化
    した酸化態窒素含有水の処理装置において、前記陽極室
    と陰極室とを連通する水路を配備したことを特徴とする
    酸化態窒素含有水の処理装置。
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CN108083454A (zh) * 2018-01-11 2018-05-29 广西师范大学 一种基于damo进行工业废水处理脱氮产能的装置

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