JP3115054U - ストーマ用パウチ装着具 - Google Patents

Abstract

【課題】皮膚とフランジの密着状態が安定かつ良好で、スポーツ時などにもズレる不安感がなく、過大なベルト締付力の必要もない人工肛門または人工膀胱に排泄物収納袋を装着するための装着具の提供。
【解決手段】パウチ装着用フランジ（１）を、適度な軟らかさの軟質ゴムまたはエラストマーにより形成し、大型の押圧リング（３）を所定位置に保持する硬質樹脂製の押圧リング保持部（５）をフランジ上に設ける。同保持部の基部がフランジ中に埋包された硬い芯となるので必要な剛性が付与され、フランジがその全体形状を概ね保持しつつストーマ部位へ均一に押圧される。
【選択図】図１

Description

本考案は、人工肛門または人工膀胱に排泄物収納袋を装着するための装着具に関する。

人工肛門は、肛門を手術により切除した人の腹壁に孔をあけ、切断した腸の先端を縫いつけた人工の排泄口であって、「ストーマ」などとも呼ばれる。

ストーマには括約筋がなく排便時期を調節できないため、常時排泄される便を「パウチ」などと呼ばれる便受け袋で受けて処理する必要がある。

そのためにはパウチを腹壁のストーマ開口部位に装着しなければならないが、従来は、パウチを着脱できる構造を備えた装着用部材を、粘着剤や両面テープで、ストーマ周辺の皮膚に貼り付けること（以下「貼着方式」という）が行われていた。

しかしながら貼着方式は、皮膚の特定部位に繰り返し負担を強いるため、皮膚がカブレたり、炎症による痛みを伴ったりする例が多く、ひどくなるとパウチの装着自体ができなくなるという問題点があった。

そこで、下記特許文献に見られるように、粘着剤等を用いないでパウチを装着するための装着具が色々開発されている。
特公平６−９８１６４号公報 特開平１０−３０５０５７号公報 特開昭６０−１００９６０号公報 特開昭６３−１８１７５９号公報 特開平０４−１８０７５４号公報 特開２００３−１４４４７５号公報 実開平０２−１３１４２１号公報

その一例(「従来例１」)は、特許文献１に見られるように、硬質材料からなり中心にストーマ用開口を備える直径５０ｍｍ程度の孔明き円板状のプレートと称する装具本体と、柔軟なゴム袋であるパック（便受け袋）と、プレートを身体に装着する平ベルトとを備えてなり、上記パックの開口部を、プレート表面に立設した高さが２０ｍｍ程度の突起部に被せて取付けるようにした人工肛門補装具である。

他の例(「従来例２」)は、特許文献２に見られるように、排泄物収容袋と、排泄物収容袋にカップリングを介して連結される体側フランジと、体側部材を身体に押圧して固定する装着部材とを備えるストーマ用補装具であって、体側部材はストーマを挿通可能な貫通孔が形成された接皮部材と、接皮部材の表面に突設された複数の凸部とを備え、装着部材は凸部の外周に系止可能な押圧リングと、押圧リングに取り付けられて身体に巻き付けられるベルトとを備えている。また貫通孔を有するパッドを体側部材と身体との間に挟んでも良く、この場合、パッドはストーマの外周の皮膚に塗布された油脂の上に配置する、というものである。

上記各従来例は、パウチ装着用部材をベルト等で身体に括り着けるものであるから、粘着剤による皮膚のカブレや炎症といった問題は解決されている。

しかしながら、従来例１では、プレートの外径が約５０ｍｍと小さく、人工肛門を囲む面積が小さいのに対して、厚みが２０ｍｍもあり、装着時の衣服の出っ張りが気になり、スポーツで体を動かすような場合にプレートがズレないか気になる。また、ゴムパックが軟らかすぎて洗浄が難しく、使い捨てになってしまう。トイレでゴムパックを取り替える時に、ベルトを片方外した状態で作業しなければならないのは不安定に感じられる。

また従来例２では、接皮部材の表面に突設された複数の凸部により押圧リングを接皮部材上の所定の位置に保つ構成が採用されたが、この構成は満足に機能せず、凸部が変形して押圧リングが位置ずれを起こすという不具合が経験された。

このように、従来開発されたパウチ装着具の例は、使い勝手の面からはいずれも一長一短で、また後述するような問題点を残しており、まだ満足できるものではない。

パウチ装着用部材をベルト等で身体に括り着ける形式のパウチ装着具は、貼着方式に較べて身体の動きによってズレ易く、皮膚との間に隙間ができ易いという欠点がある。そのため、ベルト等の締付力を大きくする必要から、パウチ装着用部材にその力に耐える頑丈さが求められ、柔軟性に欠けることとなるきらいがある。

パウチ装着用部材に柔軟性が欠ける場合は、これを強い力で身体に括り着けると、身体の姿勢によっては、装着用部材の一端が周囲の皮膚に食い込んで痛みを与えることがある。また、装着用部材の一部が、傷つき易いストーマに直接接触して損傷を与えることもある。

貼着方式のものを含めて、従来のパウチ装着具に共通するさらなる問題点は、パウチ着脱部に不必要な溝構造が含まれることがあり、その部分に入り込んだ汚れの清拭、洗浄が困難という点である。本考案の課題は、これら従来のパウチ装着用部材に認められる問題点を解消することである。

上記課題を解決するための手段は、ストーマ用パウチ装着具であって、
適度な軟らかさの軟質ゴムまたはエラストマーから形成され、中心にストーマ用開口６を備える、所定厚さの孔明き円板であるフランジ１と、
硬質樹脂から短円筒状に形成され、フランジ上面の開口を囲む位置にその基部を一体に埋め込まれて固定される、パウチ８装着用カップリング部材２と、
フランジ上面の、その端部とカップリング部材との中間位置に在って、フランジを身体表面のストーマ部位へ均一に押圧するステンレス製の円形押圧リング（３）と、
押圧リングに連結され、これを左右または３方に牽引して押圧力を与えるように身体に巻付けられるベルト４と、
押圧リングをフランジ上面の前記中間位置に安定的に保持するために、押圧リングの、ベルト取付け部分以外のほぼ全周を支持する２個または３個の部分円をなす硬質樹脂製の低い円弧状突条から成り、該突条の頂部に、押圧リングを把持する溝が形成され、該突条の基部が、フランジ上面の前記中間位置に一体に埋め込まれて固定される押圧リング保持部５とを備え、
前記押圧リング保持部が、フランジ中に埋包された硬い芯として作用するため、軟らかいフランジが、その形状を概ね保持しつつストーマ部位へ均一に押圧されるに必要な剛性を付与されることを特徴とする前記パウチ装着具である。

上記の「適度な軟らかさ」とは、例えばJIS-K-6253(加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの硬さ試験法)に規定されている「Ａ形デュロメータによる硬さ(JIS硬さA)」の値が概ね１０から３０の範囲を指す。フランジが皮膚表面に密着するためには軟らかいことが望ましいが、極度に軟らかいと、皮膚呼吸が妨げられる点と耐久性に問題を生じるので、この程度の軟らかさが好適である。そのような軟質ゴムの例としてシリコーンゴムがある。

本考案のパウチ装着具では、傷つき易いストーマを保護するため、前記カップリング部材の基部内周がフランジの中心開口の内周より外側に位置するように配置され、かつフランジの中心開口の壁面の角部が丸められている。

本考案のパウチ装着具では、汚れの清拭、洗浄が容易なように、前記押圧リング保持部を構成する突条の側面とこれに連なるフランジの表面、及び前記カップリング部材の内壁と該部材に囲まれるフランジの表面が、いずれも滑らかに連続する凹面に仕上げられている。

本考案のパウチ装着具では、フランジの先端が皮膚に食い込んで痛みを与えることがないように、その外縁部が、所定幅にわたり減肉されて柔軟化され、かつその先端が丸められている。

本考案のパウチ装着具では、過大な締付け力を加えなくても安定な装着状態が得られるように、ベルトとして、押圧リングと別に設ける連結環（９）との間に、胴周り及び股下を経る三本のベルトが張り渡される三叉式ベルトを採用することができる。なお、ベルト自体は、幅３０〜３５ｍｍ程度のゴム又は軟質プラスチックのベルトが、汚れに強く好適である。

本考案のパウチ装着具では、フランジの直径を概ね１００〜１２０ｍｍ、厚さを１０ｍｍ程度、かつ前記押圧リングの直径を概ね７０〜９０ｍｍとすることができる。このような寸法構成により、スポーツで体を動かすような場合にもズレに対して安心感があり、装着時の衣服の出っ張りが気にならない。

本考案のパウチ装着具の形成に際しては、硬質樹脂（例えばＰＰやＰＥＴ）から別体として成形したカップリング部材及び押圧リング保持部を、予めゴム成形金型内の所定位置へ配置し、そこへ軟質ゴムまたはエラストマーの材料を供給して、前記フランジを形成することができる。これは挿入成形法と呼ばれ、異材からなるカップリング部材及び押圧リング保持部を、フランジの上面にしっかりと固着させることができる。

本願請求項１の考案によれば、大型の押圧リングが頑丈な押圧リング保持部によって保持され、しかも、その押圧リング保持部の基部がフランジ中に埋包された硬い芯として作用するため、フランジがその形状を保持しつつ、ストーマ部位へ均一に押圧されるに必要な剛性が付与される。そのため、身体表面へのフランジの押圧状態が安定しており、皮膚への密着状態が適切で、スポーツ時などにもズレに対する不安感がなく、過大なベルト締付力の必要もない。

本願請求項２の考案によれば、硬質樹脂からなるカップリング部材の基部が、軟質ゴムまたはエラストマーからなるフランジの中心開口の内周より内側には存在せず、かつフランジの中心開口の壁面の角部が丸められているので、傷つき易いストーマの先端が、硬いカップリング部材の基部に直接触れて損傷を受けることがないように保護される。

本願請求項３の考案によれば、押圧リング保持部を構成する突条の側面とこれに連なるフランジの表面、及びカップリング部材の内壁と同部材に囲まれたフランジの表面とが、いずれも滑らかな凹面に仕上げられているので、付着した汚れをティッシュペーパー等で容易に拭い去ることができ、また容易に洗い流すことができる。

本願請求項４の考案によれば、フランジの外縁部が所定幅にわたり減肉されて柔軟化されているとともに、先端が丸められているので、身体の姿勢によってフランジの一端が周囲の皮膚に当たる場合にも、外縁部が柔軟に折れ曲がって、皮膚に食い込んで痛みを与えることがない。

本願請求項５の考案によれば、パウチ装着用部材たるフランジ及びこれを身体表面に押圧する押圧リングが、三叉式ベルトにより三方向から牽引・支持されるので、通常の二方向からの引っ張りによる支持よりも安定性が良く、過大な引っ張り力を加える必要がない。

本願考案は人工肛門または人工膀胱用の装着具に関するものであるから、医療器具等製造・販売業の発達に役立つ。

(A)は本考案のパウチ装着具の平面図、(B)は図１(A)に示すＡ−Ａ方向から見たパウチ装着具の断面図である。ただしパウチ自体の図示を省略する。 パウチの平面図（任意スケール）である。 平ベルト及び押圧リングを示す図である。 三叉式ベルトを示す図である。 従来例２のパウチ装着具を示す側面図である。

符号の説明

１：フランジ
２：カップリング部材
３：押圧リング
４：平ベルト
４１：ベルト調節フック
５：押圧リング保持部
６：フランジ中心のストーマ用開口
７：ストーマ
８：パウチ
９：三叉ベルト用連結環

Claims (5)

1. ストーマ用パウチ装着具であって、
   適度な軟らかさの軟質ゴムまたはエラストマーから形成され、中心にストーマ用開口（６）を備える、所定厚さの孔明き円板であるフランジ（１）と、
   硬質樹脂から短円筒状に形成され、フランジ上面のストーマ用開口を囲む位置にその基部を一体に埋め込まれて固定される、パウチ（８）装着用カップリング部材（２）と、
   フランジ上面の、フランジの端部とカップリング部材との中間位置に在って、フランジを身体表面のストーマ部位へ均一に押圧するステンレス製の円形押圧リング（３）と、
   押圧リングに連結され、これを左右または３方に牽引して押圧力を与えるように身体に巻付けられるベルト（４）と、
   押圧リングをフランジ上面の前記中間位置に安定的に保持するために、押圧リングの、ベルト取付け部分以外のほぼ全周を支持する２個または３個の部分円をなす硬質樹脂製の低い円弧状突条から成り、該突条の頂部に、押圧リングを把持する溝が形成され、該突条の基部が、フランジ上面の前記中間位置に一体に埋め込まれて固定される押圧リング保持部（５）とを備え、
   前記押圧リング保持部の基部が、フランジ中に埋包された硬い芯として作用するため、軟らかいフランジが、その全体形状を概ね保持しつつストーマ部位へ均一に押圧されるに必要な剛性を付与されることを特徴とする前記パウチ装着具。
2. 前記カップリング部材（２）の基部内周がフランジ（１）の中心開口（６）の内周より外側に位置するように該部材が配置され、かつ、フランジの中心開口の壁面の角部が丸められていることを特徴とする請求項１記載のパウチ装着具。
3. 前記押圧リング保持部（５）を構成する突条の側面とこれに連なるフランジ（１）の上面、及び前記カップリング部材（２）の内壁と該部材に囲まれるフランジの上面とが、いずれも滑らかに連続する凹面に仕上げられ、汚れの清拭、洗浄が容易であることを特徴とする請求項１記載のパウチ装着具。
4. 前記フランジ（１）の外縁部が、所定幅にわたり減肉されて柔軟化され、かつその先端が丸められていることを特徴とする請求項１記載のパウチ装着具。
5. 前記ベルト（４）が、押圧リング（３）と、別に設ける連結環（９）との間に、胴周り及び股下を経る三本のベルト（４）が張り渡される三叉式ベルトであることを特徴とする請求項１記載のパウチ装着具。
   
   
   

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