JP3110733B1 - 疲労特性に優れたマルエージング鋼薄板およびその製造方法 - Google Patents
疲労特性に優れたマルエージング鋼薄板およびその製造方法Info
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Abstract
製造方法を提供する。 【解決手段】 化学成分が重量%で、C:0.01%以
下、Ni:8〜19%、Co:8〜20%、Mo:2〜
9%、Ti:0.1〜2%、Al:0.15%以下、
N:0.003%以下、O:0.0015%以下を含み
残部実質的にFe よりなり、非金属介在物の大きさが3
0μm 以下とされる。上記マルエージング鋼は、テーパ
ーTp=(D1−D2)×100/Hが5.0〜25.
0%、高径比Rh=H/Dが1.0〜3.0、扁平比B
=W1/W2が1.5以下となる鋳型を用いて鋳造し、
鋳造片に塑性加工を施すことにより容易に製造される。
上記マルエージング鋼は、Ti成分偏析比およびMo成
分偏析比を各々1.3以下とすることで、疲労強度をさ
らに向上させることができる。
Description
ルエージング鋼薄板とその製造方法に関する。
るいは極低炭素−Ni−Coからなる靱性に富んだマル
テンサイト母相に、TiあるいはMo等の金属間化合物
を析出させることにより強化を図った鋼で、靱性に富
み、高い強度を有する。しかも溶接性が良好で、熱処理
による寸法変化が小さいなど、今までになかった種々の
特長を有する。このため、宇宙開発、海洋開発、原子力
利用分野、航空機関係、自動車関係等の先端的技術分野
の構造部材から、圧力容器、工具、押し出し用ラム、ダ
イス等の多岐の分野にわたり広範な用途への適用が試み
られている。
強度と強化機構に起因して以下のような問題をかかえて
いる。すなわち高強度になると材料中の非金属介在物に
敏感になり、その応力集中によって疲労強度が低下し、
引いては耐久性が劣化する傾向がある。
誘導溶解法(VIM)により溶解した後、真空アーク再
溶解法(VAR)により再溶解して、NやOを低減規制
することにより非金属介在物清浄度を向上させ、これに
よって疲労破壊の起点となる非金属介在物の量を低減す
ることで、疲労特性の改善が図られている。
る程度の耐久性の向上が図られたが、近年、機械や構造
物の使用条件が過酷になり、材料の強度特性に対する要
求がますます厳しくなってきており、機械機器や構造物
の長期安定性を保証するため、耐久性のより一層の向上
を図るべく、優れた疲労特性を有するマルエージング鋼
の開発が要望されるに至っている。また、従来の製造方
法では、真空誘導溶解後に真空アーク再溶解を行うた
め、特殊な真空アーク再溶解設備が必要であり、生産性
も低いという問題がある。
あり、優れた疲労特性を有するマルエージング鋼薄板、
および真空アーク再溶解を行うことなく、通常の溶解設
備で生産性に優れた機械構造用マルエージング鋼薄板を
製造することができる方法を提供するものである。
鋼薄板は、化学成分が重量%で、 C:0.01%以下、 Ni:8〜19%、 Co:8〜20%、 Mo:2〜9%、 Ti:0.1〜2%、 Al:0.15%以下、 N:0.003%以下、 O:0.0015%以下を含み残部Fe および不純物よ
りなり、非金属介在物の大きさをその周長を円周とする
相当円の直径で表したとき、非金属介在物の大きさが3
0μm 以下とされ、かつ厚さ方向におけるTi成分偏析
比およびMo成分偏析比が各々1.3以下とされたもの
である。このマルエージング鋼薄板によると、鋼を非金
属介在物が生成しにくい成分で形成したので、非金属介
在物量を抑制することができる。さらに、非金属介在物
の大きさを30μm 以下としたので、疲労亀裂の進展を
促進する非金属介在物を除去することができ、マルエー
ジング鋼薄板の疲労特性を向上させることができる。
おけるTi成分偏析比およびMo成分偏析比は各々1.
3以下とすることにより、成分偏析に起因するバンド組
織の生成を抑制することができ、バンド組織の境界部が
疲労破壊の起点となるのを防止することができるため、
疲労特性をより向上させることができる。
長に相当する円周を有する相当円の直径をD1、鋼塊底
部の周長に相当する円周を有する相当円の直径をD2、
鋼塊高さをH、H/2位置における鋼塊の周長に相当す
る円周を有する相当円の直径をD、H/2位置における
鋼塊の長辺長さおよび短辺長さをそれぞれW1,W2と
するとき、テーパーTp=(D1−D2)×100/H
が5.0〜25.0%、高径比Rh=H/Dが1.0〜
3.0、扁平比B=W1/W2が1.5以下となる鋳型
を用いて、請求項1に記載した化学成分を有する鋼の溶
湯を鋳造し、鋳造された鋳造片を鍛練比4以上で熱間鍛
造し、次いで1100〜1280℃の温度範囲で保持す
るソーキング処理を1回または2回以上行い、ソーキン
グ処理の合計時間を10〜100hrとし、その後圧延
する、前記疲労特性に優れたマルエージング鋼薄板の製
造方法である。
非金属介在物が速やかに鋼塊内部から上部へと浮上分離
され、鋼塊内部には小形の非金属介在物しか残存しない
ようになる。
熱間鍛造し、次いで1100〜1280℃の温度範囲で
保持するソーキング処理を1回または2回以上行い、ソ
ーキング処理の合計時間を10〜100hrとすること
で、ソーキング後の鍛造片のTi、Moの成分偏析比を
1.3以下にすることができ、その後圧延を施すだけ
で、鋼中の非金属介在物の微細化を容易に行うことがで
きる。
く、前記本発明にかかる疲労特性に 優れたマルエージン
グ鋼薄板を容易に製造することができる。
量を抑制しただけでは疲労寿命の向上には限界があり、
その大きさを抑制することが有効であることを見い出し
た。さらに、本発明者らはマルエージング鋼の化学組成
のうち、TiとMoが偏析しやすいことに着目し、鋳造
の際に生じた成分偏析が熱間加工や熱処理で除去されな
い場合、バンド組織が発生し、時効処理後にバンド組織
内外で強度が異なるようになるため、成分偏析を抑制す
ることが疲労寿命の向上に有効であることを見い出し
た。本発明はかかる知見を基に完成されたものであり、
以下、詳細に説明する。
分が重量%で、 C:0.01%以下、 Ni:8〜19%、 Co:8〜20%、 Mo:2〜9%、 Ti:0.1〜2%、 Al:0.15%以下、 N:0.003%以下、 O:0.0015%以下を含み残部Fe および不純物よ
りなり、非金属介在物の大きさをその周長を円周とする
相当円の直径で表したとき、非金属介在物の大きさが3
0μm 以下とされ、かつ厚さ方向におけるTi成分偏析
比およびMo成分偏析比が各々1.3以下とされたもの
である。
分限定理由(wt%)について説明する。 C:0.01%以下 Cは炭化物を形成し、金属間化合物の析出量を減少させ
て疲労強度を低下させるため少ないほど好ましく、本発
明では0.01%以下、好ましくは0.005%以下に
止めるのがよい。
の元素であり、8%未満では過少で靱性が劣化する。一
方、過多に添加すると母相にマルテンサイト以外にオー
ステナイトが生じるようになり強度が低下する。このた
め、Ni含有範囲の下限を8%、好ましくは12%、よ
り好ましくは16%とし、その上限を19%とするのが
よい。
向上させる。8%未満では強度低下を生じ、一方20%
を超えて添加すると靱性が低下する。このため、Co含
有範囲の下限を8%とし、その上限を20%、好ましく
は15%とするのがよい。
鋼の強化に有効な元素である。その含有量が2%未満で
は強化が不十分となり、一方9%を超えると鋼中のミク
ロ偏析が増大し、靱性を低下させる。したがってMo含
有範囲の下限を2%、好ましくは3%とし、その上限を
9%、好ましくは6%とするのがよい。
て、Moと同様鋼の強化に有効な元素である。その含有
量が0.1%未満では強化が不十分となるため、Ti含
有範囲の下限を0.1%、好ましくは0.3%とするの
がよい。一方、2%を超えると鋼中のミクロ偏析の増大
が顕著となり、靱性と疲労強度を低下させる。しかもT
i( C, N) 系非金属介在物が増加し、耐久性を劣化さ
せる。したがって、Ti含有範囲の上限を2%、好まし
くは1.2%とするのがよい。
ミナ系酸化物が多くなり、耐久性を低下させるので、上
限を0.15%とする。
%以下に低減することが重要である。0.003%を超
えると、主にTiNが急激に増加し、しかもこれが点列
状となるため、疲労強度は著しく低下する。疲労強度に
対してはNが少ないほど有利であり、好ましくは0.0
02%以下、より好ましくは0.001%以下とするこ
とで耐久性がより一段と向上する。
下と低くすることが重要である。0.0015%を超え
ると疲労強度が著しく低下する。疲労強度に対してはO
が少ないほど有利であり、好ましくは0.0010%以
下とすることにより耐久性が更に改善される。
SiO2 、MnO、MnS等の非金属介在物を形成し、
疲労強度を低下させるので、少ない程好ましく、それぞ
れ0.05%以下、好ましくは0.02%以下に止める
のがよい。また、P、Sについても、粒界脆化や非金属
介在物形成のために疲労強度を低下させるので、少ない
程好ましく、それぞれ0.01%以下、好ましくは0.
002%以下に止めるのがよい。
成分を有し、その母相は実質的にマルテンサイト単相か
らなるものであるが、非金属介在物の大きさを、その周
長を円周とする相当円の直径で表したとき、非金属介在
物の大きさが30μm 以下とされる。
どにおける疲労強度は疲労亀裂を発生させる限界の応力
と考えられてきたが、最近では、亀裂発生限界応力では
なく、発生した亀裂が伝播を停止する限界の応力である
と認識されている。発生した亀裂が伝播を停止している
状態は、材料がその亀裂という欠陥を含んでいるという
ことでもあり、もともと自ら作った欠陥の進展で自分自
身の疲労強度を決めていると解釈することができる。こ
のため材料が繰り返し負荷を受ける際に自ら作る停留亀
裂より大きい非金属介在物が材料中に存在すると、疲労
強度が低下する。この場合、後述の実施例から明らかな
とおり、非金属介在物の大きさが30.0μm を超える
と急激に疲労強度が低下するようになる。このため、本
発明では非金属介在物の大きさの上限を30.0μm 、
好ましくは20μm 、より好ましくは10μm とする。
特に、板厚が0.5mm以下の薄板に塑性加工する場合、
疲労強度に及ぼす非金属介在物の悪影響が著しくなるの
で、10μm 以下とするのがよい。
いては、厚さ方向におけるTi成分偏析比およびMo成
分偏析比は各々1.3以下とされる。化学組成の内、T
iとMo、特にTiは偏析しやすく、鋳造の際に生じた
成分偏析が熱間加工や熱処理で除去されない場合、バン
ド組織が発生し、時効処理後にバンド組織内外で強度が
大きく変動する。特に板厚が0.5mm以下の薄板に塑性
加工する場合、バンド組織は顕著になり、その悪影響が
著しくなる。このためバンド組織の境界部が疲労破壊の
起点となり、疲労強度が低下する。この場合、Ti、M
oの成分偏析比が各々1.3を超えると急激に疲労強度
が低下するようになる。従って、Ti、Moの成分偏析
比の各々の上限を1.3、好ましくは1.2とすること
で、疲労強度をより一層向上させることができる。この
偏析比は小さいほど疲労強度の向上には効果的である。
は、マルエージング鋼薄板の厚さ方向におけるTi、M
oの最小濃度に対する最大濃度の比(最大濃度/最小濃
度)を意味する。なお、Ti、Mo以外の成分も偏析す
るが、顕著な成分偏析が生じるTi、Moの成分偏析比
を所定の値に抑えることで、Co等の他の成分も問題の
ない範囲に止まるため、本発明ではTi、Moの成分偏
析比のみを規定している。
は、図1に示すように、鋼塊頂部の周長L1に相当する
円周を有する相当円の直径をD1、鋼塊底部の周長L2
に相当する円周を有する相当円の直径をD2、鋼塊高さ
をH、H/2位置における鋼塊の周長に相当する円周を
有する相当円の直径をD、H/2位置における鋼塊の長
辺長さおよび短辺長さをそれぞれW1,W2とすると
き、テーパーTp=(D1−D2)×100/Hが5.
0〜25.0%、高径比Rh=H/Dが1.0〜3.
0、扁平比B=W1/W2が1.5以下となる鋳型を用
いて、前記化学成分を有する鋼の溶湯を鋳造し、鋳造さ
れた鋳造片を鍛練比4以上で熱間鍛造し、次いで110
0〜1280℃の温度範囲で保持するソーキング処理を
1回または2回以上行い、ソーキング処理の合計時間を
10〜100hrとし、その後圧延するものである。
寸法限定理由を説明するに際し、まず、鋳型を規定する
寸法パラメータとして、テーパーTp、高径比Rh、扁
平比Bを選んだ理由を説明する。
たえる鋼塊の不均質性の原因は、鋼塊の凝固に際しての
鋼の物理的および化学的性質の変化に基づくものであ
る。鋼の液体および固体における各種元素の溶解度およ
び拡散速度、密度、熱伝導度などの相違は各種元素の偏
析、引け巣、パイプ、気泡、非金属介在物などの欠陥を
生じ、鋼塊の不均質性の原因となる。一般に、良質な鋼
塊を得るためには、溶鋼の十分な精錬が基礎となるが、
均質かつ欠陥の少ないものを得るためには上記の理由に
より溶鋼の凝固過程の適切なる制御が必要である。
で核生成した、無秩序な成長方向を有するチル層が形成
され、その後柱状晶帯が形成される。柱状晶は鋳型に熱
が流れた結果、成長したものであるから、鋳型壁に対し
てほぼ垂直に、すなわち熱抽出と反対の方向に成長して
いる。また非金属介在物は柱状晶の成長方向に押し出さ
れて浮上分離していく。このため、鋳型のテーパー(両
側テーパー)Tpを非金属介在物の浮上分離に関与する
寸法パラメータの一つとして採用した。
速度とのバランスも非金属介在物の浮上分離に関与する
要因の一つと考えられる。すなわち、鋳型内で非金属介
在物を浮上分離させるためには、溶湯を底部から順次上
方に向かって凝固させなければならない。そこで、縦凝
固速度に関係する高径比Rhと横凝固速度に関係する扁
平比Bをも鋳型の寸法パラメータとして選んだ。
ーTpを5.0%以上、好ましくは10%以上とし、高
径比Rhを3.0以下、好ましくは2.5以下とし、ま
た扁平比Bを1.5以下、好ましくは1.2以下とする
ことで、大形の非金属介在物が速やかに鋼塊内部から上
部へ浮上分離され、鋼塊内部には小形の非金属介在物し
か残存しないようになる。一方、Tpが25.0%を超
えると、テーパーが大きくなり過ぎ、鋼塊の肩部の吊り
切れ現象(凝固収縮に伴う鋼塊本体の沈下が鋳型で局部
的に阻止されて、それ以下の部分の重量に耐えられない
で生じる横割れ)が発生するようになる。このため、T
pの上限を25.0%、好ましくは20%以下とする。
また、高径比Rhが1.0未満では、鋼塊内部に引け巣
が発生するようになるので、Rhの下限を1.0、好ま
しくは1.5とする。なお、従来の鋳型は、テーパーT
pが3%程度のものが一般的である。
り溶解した溶湯を、真空アーク再溶解を行うことなく、
上記所定の鋳型に鋳造するだけで、大形の非金属介在物
が速やかに鋼塊内部から上部へと浮上分離され、鋼塊内
部には小形の非金属介在物しか残存しないようになる。
このため、その鋳造片に塑性加工を施すだけで、非金属
介在物の大きさが30.0μm 以下、好ましくは20μ
m 以下、より好ましくは10μm 以下のマルエージング
鋼薄板を容易に製造することができる。
熱間鍛造、圧延(熱間圧延、あるいはさらに冷間圧延)
などを適用することができる。この場合、前記鋳造片を
鍛錬比4以上で熱間鍛造し、次いで1100〜1280
℃の温度範囲で保持し、処理時間の合計が10〜100
hrとされたソーキング処理(成分拡散焼鈍処理)を1
回または2回以上行い、その後、圧延を施すのがよい。
造後断面積) を4以上とするのは、適切なソーキング条
件の下でも鍛練比が4未満ではTi、Moの偏析ピーク
間の距離が大きく、拡散によって十分に平滑化できない
ようになり、Ti、Moの成分偏析比を1.3以下にす
ることが困難になるからである。また、ソーキング温度
が1100℃未満あるいはソーキング時間の合計が10
hr未満では適切な鍛練比の下でも所定のTi、Moの
成分偏析比が得られないようになる。一方、ソーキング
温度が1280℃超あるいはソーキング時間の合計が1
00hr超になると、結晶の粗大化が著しく、結晶粒度
番号が8未満になり、疲労強度が著しく低下するように
なる。これより、ソーキング温度の下限を1100℃、
好ましくは1180℃とし、その上限を1280℃、好
ましくは1250℃とする。また、ソーキング処理の合
計時間の下限を10hr、好ましくは20hrとし、そ
の上限を100hr、好ましくは72hrとする。な
お、ソーキング処理後の鍛造片におけるTi、Moの偏
析比は、その後に圧延等の塑性加工が施されてもほとん
ど変化せず、ほぼ同じ偏析比が維持される。
り溶解し、表2および表3に示すテーパーTp、高径比
Rh、扁平比Bを有する種々の鋳型に注湯し、その鋳造
片(500kgf )を同表に示す鍛錬比にて熱間鍛造し、
必要に応じてソーキングした後、熱間圧延および冷間圧
延を施して板厚0.3mmの薄板に加工した。この薄板か
ら圧延方向に沿って長さ100mm、幅10mmの試験片を
採取し、820℃×1hrの溶体化処理を行い、480
℃×4hrの時効処理を施した後、450℃×6hrの
NH3 ガス窒化処理を施した。なお、この実施例におい
ては、鋳造片の平均厚さから0.3mmの薄板までの全圧
下率は約99.9%であった。
在物の大きさ並びにTi、Moの成分偏析比を調べた。
非金属介在物の大きさは、片振り試験片の破断面をSE
M(走査型電子顕微鏡)によって観察し、破断の起因に
なった非金属介在物を特定し、その周長を円周とする相
当円の直径を非金属介在物の大きさとして求めた。ま
た、成分偏析比は、各試料の板厚方向にEPMAで線分
析することによりTi、Mo濃度の最大値と最小値とを
測定し、その比(最大値/最小値)を算出した。なお、
板厚表層30μm は窒化層が存在するので、その部分を
除いてX線を走査させた。
疲労強度は、片振り試験の繰り返し数107 回に対する
時間強度によって評価した。これらの調査結果を表2お
よび表3に併せて示す。同表には、成分偏析比の大きい
A系列の試料(試料No. の数字にAを付したもの)と成
分偏析比の小さいB系列の試料(試料No. の数字にBを
付したもの)とを並べて表示した。また、非金属介在物
の大きさと疲労強度との関係を整理したグラフを図2に
示す。
の大きさが30.0μm を境として、それ以下で疲労強
度が著しく向上しており、さらに非金属介在物が30.
0μm 以下の領域においても、成分偏析比の小さいB系
列の発明例にかかる試料は、疲労強度がより一層向上し
ている。
ジング鋼薄板によれば、化学成分をNおよびOが規制さ
れた所定成分としたので、非金属介在物量が減少し、清
浄度が向上する。また、非金属介在物の大きさを30.
0μm 以下に規制したので、疲労破壊の起点となる非金
属介在物の発生が抑制、防止されるため優れた疲労特性
を備えたものとなる。さらに、Ti、Moの成分偏析比
を各々1.3以下に規制したので、成分偏析に起因した
ミクロ的な強度差の発生が抑制、防止されるため、疲労
特性がより一層向上したものとなる。また、本発明の製
造方法によれば、通常の溶解設備を用いて、本発明にか
かる疲労特性に優れたマルエージング鋼薄板を容易に製
造することができ、生産性に優れる。
である。
度との関係を示すグラフである。
Claims (3)
- 【請求項1】 化学成分が重量%で、 C:0.01%以下、 Ni:8〜19%、 Co:8〜20%、 Mo:2〜9%、 Ti:0.1〜2%、 Al:0.15%以下、 N:0.003%以下、 O:0.0015%以下を含み残部Fe および不純物よ
りなり、非金属介在物の大きさをその周長を円周とする
相当円の直径で表したとき、非金属介在物の大きさが3
0μm 以下であり、かつ厚さ方向におけるTi成分偏析
比およびMo成分偏析比が各々1.3以下である疲労特
性に優れたマルエージング鋼薄板。 - 【請求項2】 板厚が0.5mm以下である請求項1に記
載した疲労特性に優れたマルエージング鋼薄板。 - 【請求項3】 鋼塊頂部の周長に相当する円周を有する
相当円の直径をD1、鋼塊底部の周長に相当する円周を
有する相当円の直径をD2、鋼塊高さをH、H/2位置
における鋼塊の周長に相当する円周を有する相当円の直
径をD、H/2位置における鋼塊の長辺長さおよび短辺
長さをそれぞれW1,W2とするとき、 テーパーTp=(D1−D2)×100/Hが5.0〜
25.0%、高径比Rh=H/Dが1.0〜3.0、扁
平比B=W1/W2が1.5以下となる鋳型を用いて、
請求項1に記載した化学成分を有する鋼の溶湯を鋳造
し、鋳造された鋳造片を鍛練比4以上で熱間鍛造し、次
いで1100〜1280℃の温度範囲で保持するソーキ
ング処理を1回または2回以上行い、ソーキング処理の
合計時間を10〜100hrとし、その後圧延する、請
求項1に記載した疲労特性に優れたマルエージング鋼薄
板の製造方法。
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1999
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