JP3109933B2 - 脱臭用および排水処理用の触媒 - Google Patents

脱臭用および排水処理用の触媒

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JP3109933B2
JP3109933B2 JP05002503A JP250393A JP3109933B2 JP 3109933 B2 JP3109933 B2 JP 3109933B2 JP 05002503 A JP05002503 A JP 05002503A JP 250393 A JP250393 A JP 250393A JP 3109933 B2 JP3109933 B2 JP 3109933B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はゲル成形物に関する。さ
らに詳しくは、本発明は微生物反応による脱臭および排
水処理などに用いられる微生物用の担体として好適なゲ
ル成形物に関する。
【0002】
【従来の技術】微生物反応による脱臭および排水処理な
どに用いる微生物用の担体として、セラミックス、プラ
スチック、高分子ゲルなどが用いられている。高分子ゲ
ルは微生物の棲息性が良好なうえ、水の比重に近いた
め、特に流動床での利用に有利である。高分子ゲルの例
としてはアルギン酸塩、カラギーナン、ポリアクリルア
ミド、ポリビニルアルコール、光硬化性樹脂等がある。
このうち、ポリビニルアルコール(以下PVAと略記す
る)含水ゲルは、含水率が高く、酸素・基質の透過性に
優れ、生体との親和性が高く、高分子含水ゲルの中でも
特に優れており、PVAゲルを担体として使用した例や
微生物を包括固定して使用した例(特開昭64−431
88号)が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来のPVAゲルは、
微生物を担持させた場合にその活性が経時的に低下する
という問題があった。本発明の目的は、その活性が長期
間にわたって良好であるPVAゲル成形物に微生物を担
持させた脱臭用および排水処理用の触媒を提供すること
にある。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に本発明者らが鋭意検討した結果、特定のカルシウム化
合物およびPVAからなるゲル成形物を見出し、本発明
を完成させるに至った。本発明のゲル成形物は、微生物
の棲息性に優れ、その活性が長期間にわたって低下しな
いことから、非常に優れている。
【0005】以下、本発明のゲル成形物についてより詳
細に説明する。まず、本発明に使用する成分について説
明する。本発明に使用するPVAの平均重合度は100
0以上が好ましく、1700以上がより好ましい。PV
Aのケン化度は98.5モル%以上が好ましく、99.
85モル%以上の完全ケン化PVAがゲルの形成上の点
からより好ましい。本発明のPVAとしては、本発明の
効果を阻害しない範囲において、公知の種々の変性PV
Aを用いることができる。
【0006】本発明においてカルシウム化合物として
は、水中においてpH8〜13を呈するものが好まし
く、pH10〜13を呈するものがより好ましい。具体
的には、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カル
シウム、フッ化カルシウム、リン酸水素カルシウム、次
亜リン酸カルシウム、亜リン酸カルシウム、リン酸三カ
ルシウム、ケイ酸カルシウム、亜硫酸カルシウムなどの
アルカリ性無機化合物が好適なものとして挙げられる。
また、これらのカルシウム化合物を含むものとして、汚
泥焼却灰、セメント、黒曜石および石灰石などが好適な
ものとして挙げられる。
【0007】本発明のゲル成形物におけるPVA(A)
と水に難溶性のカルシウム化合物(B)との配合割合
は、特に制限はないが、(A)/(B)=10/90〜
95/5が好ましく、(A)/(B)=20/80〜9
0/10がより好ましい。本発明のゲル成形物の含水率
としては、ゲル全体に対して50〜99重量%が好まし
く、70〜80重量%がより好ましい。本発明のゲル成
形物の形状については特に制限はなく、球状、繊維状、
棒状、角型状、楕円状、円盤状、円筒状、円柱状などの
あらゆる形状が可能であるが、取り扱い性の点から、ゲ
ル成形物の形状は球状が好ましい。本発明のゲル成形物
の大きさについては特に制限はなく使用目的により適宜
選定される。
【0008】本発明のゲル成形物は、PVA水溶液およ
びカルシウム化合物の混合液をゲル化させることによっ
て得られる。PVA水溶液の濃度は成形性およびゲル強
度の点から0.3〜40重量%が好ましい。PVAのゲル
化方法としては特に制限はないが、以下の方法が好まし
い。 (1) PVA水溶液および特定のアルカリ性カルシウ
ム化合物の混合液をホウ酸イオンを含有する水溶液と接
触させる。ホウ酸イオンを含有する水溶液としては、ホ
ウ酸あるいはホウ酸ナトリウムのようなホウ酸塩が挙げ
られる。ホウ酸濃度は1g/リットル以上が好ましく、
飽和溶液でも差し支えない。また、水溶液のpHを調節
してもよい。 (2) −5 ℃以下、好ましくは−10℃以下で凍結
し、これを解凍する操作を少なくとも1回以上、好まし
くは2回以上行なう。 (3) PVA水溶液および特定のアルカリ性カルシウ
ム化合物の混合液を、PVAの離液作用のある化合物を
含有する液体に接触させる。PVAの離液作用のある化
合物としては、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、硫
酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、ク
エン酸ナトリウム、クエン酸アンモニウム、クエン酸カ
リウム、クエン酸マグネシウム、クエン酸アルミニウ
ム、酒石酸ナトリウム、酒石酸アンモニウム、酒石酸カ
リウム、酒石酸マグネシウム、酒石酸アルミニウム等の
化合物のうち少なくとも1種を含有する液体が挙げられ
るが、とりわけ硫酸ナトリウム水溶液が好ましい。濃度
は100g/リットル以上が好ましく、特に飽和水溶液
が好ましい。また、(1)〜(3)の方法を2つ以上併
用してもよい。
【0009】従来の微生物用の担体の場合には、硫黄細
菌はH2を酸化してH2SO4を生成し、硝化菌はNH3
酸化してHNO3を生成するので、担体近傍は酸性とな
り、微生物の棲息性が低下し、その活性も著しく低下し
てしまう。それに対して、本発明のゲル成形物は、脱臭
や排水処理における有用な微生物たとえば硫黄細菌や硝
化菌の棲息しやすい担体である。本発明のゲル成形物
は、水に難溶性のカルシウム化合物が存在するために、
そのアルカリ徐放性により担体近傍が酸性に偏ることな
く、常に高い微生物棲息性と、活性を維持することがで
きるものと推定している。したがって本発明のゲル成形
物は脱臭用の触媒および排水処理用の触媒として有用で
ある。
【0010】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
るが、本発明はこれらの実施例により限定されるもので
はない。 実施例1 (株)クラレ製のPVA(平均重合度4100、ケン化
度99.85モル%)を40℃の温水で約1時間洗浄
後、PVA濃度5重量%になるようにPVAに水を加え
全量を792gにし、酸化カルシウム8gを加えた。p
Hは12であった。これを攪拌しながら110℃、2時
間処理し、PVAを溶解した。これらの混合液を厚さが
約3mmとなるように平板上に流延し、−20℃で凍結
し、室温で解凍した。これを約3mmのサイコロ状に切
断し、ゲル状担体を得た。このゲル状担体を用いて脱臭
試験を行なった。円筒型の反応槽に400gのゲル状担
体を充填し、H2S10ppm、NH310ppmを含む
空気を10ミリリットル/分で導入した。また充填層の
保湿のために適宜散水した。反応槽を通過した空気をガ
スクロマトグラフで分析した。図1および図2に示すよ
うに、約10日で活性が発現し、その後2か月間、高い
活性を保っていた。また、排水処理試験も実施した。1
リットルの曝気槽に200gのゲルを投入し、アンモニ
ア性窒素濃度10ppmの水を125ミリリットル/時
で流入させた。処理水のアンモニア性窒素濃度を測定し
たところ、図3に示すように約15日で活性が発現し、
その後2か月間、高い活性を保っていた。
【0011】比較例1 実施例1と同様のPVAを40℃の温水で約1時間洗浄
後、PVA濃度5重量%になるようにPVAに水を加え
全量を800gにした。水酸化カルシウムは加えなかっ
た。pHは7であった。これを攪拌しながら、110
℃、2時間処理し、PVAを溶解した。これらの混合液
を厚さが約3mmとなるように平板上に流延し、−20
℃で凍結し、室温で解凍した。これを約3mmのサイコ
ロ状に切断し、ゲル状担体を得た。このゲル状担体を用
いて、実施例1と同様の脱臭試験を行なった。図1およ
び図2に示すように、約20日で活性が発現したが、ま
もなく活性が低下した。また、実施例1と同様の排水処
理試験も実施した。図3に示すように約30日で活性が
発現したが、まもなく活性が低下した。
【0012】比較例2 実施例1と同様のPVAを40℃の温水で約1時間洗浄
後、PVA濃度10重量%になるようにPVAに水を加
え全量を400gにし、水酸化カルシウムは加えなかっ
た。pHは7であった。これを攪拌しながら110℃、
2時間処理し、PVAを溶解した。温度が30℃に下が
ったのちに、硫黄細菌および硝化菌を含む菌液400g
を混合し十分に攪拌した。これを厚さが約3mmとなる
ように平板上に流延し、−20℃で凍結し、室温で解凍
した。これを約3mmのサイコロ状に切断し、ゲル状担
体を得た。このゲル状担体を用いて、実施例1と同様の
脱臭試験を行なった。図1および図2に示すように、微
生物を包括固定しているため初期から活性が発現した
が、まもなく活性が低下した。また、実施例1と同様の
排水処理試験も実施した。図3に示すように、微生物を
包括固定しているため初期から活性が発現したが、まも
なく活性が低下した。
【0013】実施例2 実施例1と同様のPVAを40℃の温水で約1時間洗浄
後、PVA濃度5重量%になるようにPVAに水を加え
全量を792gにし、水酸化カルシウム8gを加えた。
pHは12であった。これを攪拌しながら110℃、2
時間処理し、PVAを溶解した。これらの混合液を先端
に内径1mmの注射針を取り付けた内径2mmφのビニ
ル管1本を使用したローラーポンプで1ミリリットル/
分で送液し、スターラーで攪拌した30g/リットルの
ホウ酸水溶液に、水表面5cmの高さより滴下した。滴
下した液滴はホウ酸水溶液中で直ちに球状化した。これ
らの球状化した成形物を全量ホウ酸水溶液と分離し、蒸
留水で軽く洗浄した後、−20℃で凍結し、室温で解凍
することにより、不透明な白色の柔軟性に富んだ球状の
ゲルが得られた。粒径は3〜3.5mmφであった。こ
の球状のゲルを用いて、実施例1と同様の脱臭試験を行
なったところ、約10日で活性が発現し、その後2か月
間、高い活性を保っていた。H2S濃度およびNH3濃度
の経時変化は実施例1と同一であった。また、実施例1
と同様の排水処理試験を実施したところ、約15日で活
性が発現し、その後2か月間、高い活性を保っていた。
アンモニア性窒素濃度の経時変化は実施例1と同一であ
った。
【0014】実施例3 実施例1と同様のPVAを40℃の温水で約1時間洗浄
後、PVA濃度5重量%になるようにPVAに水を加え
全量を792gにし、水酸化カルシウム8gを加えた。
pHは12であった。これを攪拌しながら110℃、2
時間処理し、PVAを溶解した。これらの混合液を先端
に内径1mmの注射針を取り付けた内径2mmφのビニ
ル管1本を使用したローラーポンプで1ミリリットル/
分で送液し、スターラーで攪拌した飽和Na2SO4水溶
液に滴下した。滴下した液滴は不定形に凝固した。凝固
した成形物を、そのまま、飽和Na2SO4水溶液に90
分間浸漬することにより、不透明な白色の柔軟性に富ん
だ不定形のゲルが得られた。このゲルを用いて、実施例
1と同様の脱臭試験を行なったところ、約10日で活性
が発現し、その後2か月間、高い活性を保っていた。H
2S濃度およびNH3濃度の経時変化は実施例1と同一で
あった。また、実施例1と同様の排水処理試験を実施し
たところ、約15日で活性が発現し、その後2か月間、
高い活性を保っていた。アンモニア性窒素濃度の経時変
化は実施例1と同一であった。
【0015】
【発明の効果】以上の実施例から明らかなとおり、特定
カルシウム化合物を含むPVAゲルは、微生物用の担
体として優れており、脱臭用の担体および排水処理用の
担体として高い活性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】H2濃度の経過を示す。
【図2】NH3濃度の経過を示す。
【図3】アンモニア性窒素濃度の経過を示す。
【符号の説明】
図1〜3における記号の意味は以下のとおりである。 ○ 実施例1 △ 比較例1 □ 比較例2
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C12N 11/08 C12N 11/08 B (72)発明者 岡崎 正樹 東京都中央区日本橋3丁目8番2号 株 式会社クラレ内 (72)発明者 長田 司郎 大阪府大阪市北区梅田1丁目12番39号 株式会社クラレ内 (72)発明者 野木 一男 神奈川県横浜市磯子区滝頭1−2−15 横浜市環境科学研究所内 (72)発明者 下村 光一郎 神奈川県横浜市磯子区滝頭1−2−15 横浜市環境科学研究所内 (56)参考文献 特開 平1−230659(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08L 29/04 A61L 9/01 - 9/014 B01J 13/00 - 13/22 B01J 31/26 - 31/38 C08K 3/18 - 3/26 C12N 11/08

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭
    酸カルシウム、フッ化カルシウム、リン酸水素カルシウ
    ム、次亜リン酸カルシウム、亜リン酸カルシウム、リン
    酸三カルシウム、ケイ酸カルシウムおよび亜硫酸カルシ
    ウムから選ばれるカルシウム化合物、あるいはこれらの
    カルシウム化合物を含む汚泥焼却灰、セメント、黒曜石
    および石灰石から選ばれる無機化合物ならびにポリビニ
    ルアルコールからなるゲル成形物に微生物を担持させた
    脱臭用の触媒。
  2. 【請求項2】 酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭
    酸カルシウム、フッ化カルシウム、リン酸水素カルシウ
    ム、次亜リン酸カルシウム、亜リン酸カルシウム、リン
    酸三カルシウム、ケイ酸カルシウムおよび亜硫酸カルシ
    ウムから選ばれるカルシウム化合物、あるいはこれらの
    カルシウム化合物を含む汚泥焼却灰、セメント、黒曜石
    および石灰石から選ばれる無機化合物ならびにポリビニ
    ルアルコールからなるゲル成形物に微生物を担持させた
    排水処理用の触媒。
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