JP3109382B2 - 透水性舗装材の製造方法 - Google Patents

透水性舗装材の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は透水性舗装材の製造方法
に係り、特に、石炭灰を原料として透水性舗装材を製造
する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、火力発電所からの石炭灰発生量は
増加傾向にある。即ち、石炭火力は供給安定性と経済性
に優れており、原子力発電に次ぐベース電源として位置
づけられていることから、今なお建設中あるいは建設計
画中の火力発電所が多く、石炭灰発生量は増々増加する
ものと予測される。
【0003】従来、石炭灰の処分方法としては、陸上埋
立が最も多いが、今後の石炭灰発生量の増加の面から、
有効利用を図ることが強く望まれており、その利用方法
の開発が様々な分野で進められている。
【0004】この石炭灰の有効利用の実用化の面では、
建設資材としての利用が注目を集めており、例えばセメ
ント製造時の粘土の代替やセメント骨材としての利用法
が実用化されつつある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来考
えられている方法では、石炭灰の有効利用率は50%以
下であるため、埋立地の確保が困難になりつつある我国
において今後、その発生量が数倍も増加するであろうこ
とが予測される石炭灰の処分に対応しきれなくなること
は必至である。
【0006】なお、石炭灰は同一発電所から発生するも
のであっても、経時的にその成分組成が変動するもので
あり、この石炭灰の成分変動が、石炭灰の有効利用の拡
大の一つの障害となっている。
【0007】本発明は上記従来の問題点を解決し、石炭
灰を大量に使用して透水性舗装材を製造することができ
る透水性舗装材の製造方法を提供することを目的とす
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の透水性舗装材の
製造方法は、粒径0.5〜5mmの硬質骨材、石炭灰、
低耐火度窯業原料及び水を高速回転羽根形造粒機に供給
し、該硬質骨材の外周囲に石炭灰及び低耐火度窯業原料
が緻密に付着した複合粒子を造粒し、この造粒された複
合粒子を、複合粒子間に間隙が残留するようにプレスし
て舗装材形状の成形体とし、その後、この成形体を焼成
する透水性舗装材の製造方法であって、前記硬質骨材、
石炭灰及び低耐火度窯業原料の配合割合が、 硬質骨材 :30〜70重量部 石炭灰 : 5〜70重量部 低耐火度窯業原料: 5〜30重量部 である(ただし、硬質骨材、石炭灰及び低耐火度窯業原
料の合計を100重量部とする。) ことを特徴とする。
【0009】以下に本発明を詳細に説明する。
【0010】本発明の方法においては、まず、粒径0.
5〜5mmの硬質骨材、石炭灰、低耐火度窯業原料及び
水を高速回転羽根形造粒機に供給して複合粒子を造粒す
る。
【0011】この複合粒子の造粒に当たり、硬質骨材の
粒径が0.5mm未満であると大径の複合粒子を造粒す
ることが難しい。複合粒子の粒径が小さいと、プレス成
形体の空隙率が低くなると共に、この空隙も焼成工程で
閉塞され易い。硬質骨材の粒径が5mmを超えると下水
汚泥焼却灰を大量に付着させることが難しくなる。この
ため、硬質骨材の粒径は0.5〜5mm、好ましくは1
〜3mmとする。このような硬質骨材としては、石材や
陶磁器の破砕物、或いは、天然の細骨材、例えば珪砂等
を用いることができる。また、スラグの破砕物を用いる
こともできる。
【0012】一方、石炭灰はその発生箇所により下記の
如く、シンダ、フライアッシュ、クリンカ、ボトムアッ
シュ(JIS分類)に分けられる。本発明において、石
炭灰としては各火力発電所から排出されるものであれば
良く、これらの石炭灰のいずれをも用いることができ
る。なお、フライアッシュはそのまま使用できるが、シ
ンダやクリンカは粉砕工程が必要となる。これらの石炭
灰の成分のバラツキは主に原料である石炭の変更が原因
であり、特に、SiO2 ,Al23 ,CaO等が大き
く変動するが、本発明によればあらゆる成分組成の石炭
灰を使用可能である。
【0013】なお、シンダ、クリンカ等を用いる場合、
その粒径を10〜30μm程度に粉砕して用いるのが好
ましい。
【0014】 シンダ :燃焼によって生成される粗粒灰 フライアッシュ:燃焼によって生成される細粒灰 クリンカ :燃焼によって生成される灰が塊状とな
ったもの ボトムアッシュ:燃焼によって生成した灰のうち炉底に
落下したもの また、低耐火度窯業原料としては、長石、陶石、天然ガ
ラス(シラス、黒曜石等)、人工ガラス等を用いること
ができ、これらの低耐火度窯業原料の粒径は5〜20μ
m程度であることが好ましい。
【0015】本発明においては、このような硬質骨材、
石炭灰、低耐火度窯業原料及び水を用いて造粒すること
により、硬質骨材の外周囲に石炭灰及び低耐火度窯業原
料が緻密かつ厚肉に、好ましくは層厚比30%以上とな
るように付着した複合粒子を製造する。なお、この層厚
比とは、硬質骨材の半径に対する付着層肉厚の百分率を
指す。
【0016】ここで、硬質骨材の周囲に石炭灰を低耐火
度窯業原料と共に厚く付着させることにより、大量の石
炭灰を処分することが可能となる。また、石炭灰及び低
耐火度窯業原料を緻密に付着させることにより、後のプ
レス工程において造粒粒子が潰れることが防止される。
【0017】本発明において、硬質骨材、石炭灰及び低
耐火度窯業原料の配合割合は下記の通りである(ただ
し、全体を100重量部とする。)。
【0018】 硬質骨材 :30〜70重量部 石炭灰 : 5〜70重量部 低耐火度窯業原料: 5〜30重量部 硬質骨材が上記範囲よりも少なく、石炭灰が上記範囲よ
りも多いと、得られる複合粒子の強度が低下し、プレス
成形時につぶれ易くなる。逆に、硬質骨材が上記範囲よ
りも多く、石炭灰が上記範囲よりも少ないと、石炭灰の
利用効率が低下する。低耐火度窯業原料が上記範囲より
少ないと焼結性が悪くなり、多いと、相対的に硬質骨材
や石炭灰の割合が減って、複合粒子の強度低下、石炭灰
の利用効率の低下を招く。
【0019】本発明においては、この大量の石炭灰を低
耐火度窯業原料と共に緻密に付着させるために、アイリ
ッヒミキサー、ロッキングミキサー等の高速回転羽根形
造粒機を用いる。この高速回転羽根形造粒機中に、硬質
骨材、石炭灰、低耐火度窯業原料及び水を供給して羽根
を高速回転させることにより、硬質骨材の周囲に石炭灰
及び低耐火度窯業原料が分厚くしかも緻密に付着する。
この際、羽根を高速回転させることが肝要であり、アイ
リッヒミキサーであれば周速10m/S、とりわけ周速
15m/S以上、ロッキングミキサーであれば周速10
m/S、とりわけ周速13m/S以上で羽根を回転させ
る。なお、羽根を過度に高速回転させると、適正な造粒
が難しくなるので、アイリッヒミキサーでは周速30m
/S以下、ロッキングミキサーでは周速25m/S以下
とするのが好ましい。これにより、造粒機に投入した石
炭灰のほぼ全量を硬質骨材に付着させることができる。
【0020】このような条件下で造粒することにより、
硬質骨材の周囲に分厚く緻密な低耐火度窯業原料含有石
炭灰付着層(以下単に「付着層」と称す。)を有した複
合粒子を造粒できる。付着層の肉厚は、硬質骨材の半径
の30%以上、とりわけ40%以上とするのが好まし
い。また、付着層の緻密さは、得られる複合粒子の圧潰
強度が2kgf/cm2 以上とりわけ8kgf/cm2
以上となるようにするのが好ましい。
【0021】なお、この複合粒子の造粒に当たり使用す
る水の量は特に制限はないが、通常の場合、石炭灰に対
して10〜50重量%程度とされる。また、この造粒に
おいては、必要に応じて粘土の泥漿、ポリビニルアルコ
ール(PVA)、カルボキシメチルセルロース(CM
C)等のバインダーを使用することができ、バインダー
の使用により一層高強度の複合粒子を得ることが可能と
なる。この場合、バインダー使用量は、粘土の泥漿を用
いる場合には、粘土の乾燥重量として、硬質骨材、石炭
灰及び低耐火度窯業原料の合計100重量部に対して5
〜20重量部とするのが好ましい。また、PVA等の有
機系バインダーを用いる場合、その使用量は、硬質骨
材、石炭灰及び低耐火度窯業原料の合計100重量部に
対して1.0〜3.0重量部とするのが好ましい。
【0022】得られた複合粒子は、次いで、粒子間に間
隙が残留するようにプレス(好ましくは一軸プレス)し
て舗装材形状の成形体とする。プレス圧の程度は、複合
粒子の強度、所望とする透水性の程度等により適宜決定
されるが、通常の場合、100〜200kgf/cm2
程度の範囲内とされる。また、振動プレスを用いても当
然成形できる。
【0023】このプレス成形に際しては、前述の通り、
複合粒子が圧潰されることはない。プレス成形により、
複合粒子相互が付着し、舗装材形状となる。このプレス
成形体においては、複合粒子間に連続した空隙が残存す
る。後の焼成工程においても、この空隙が熔融物で閉塞
されることはなく、連続気孔が形成される。
【0024】なお、このプレス成形に当り、得られる透
水性舗装材の表層側の位置に、着色骨材とPVA等のバ
インダーと長石等の低耐火度窯業原料との混合物よりな
る成形原料を配置しておくことにより、表層部に所望の
着色を有するカラー透水性舗装材を得ることができる。
【0025】本発明では、複合粒子の付着層が緻密であ
るため、プレス成形圧を比較的高くとることができる。
このため、プレス成形体の粒子構造を観察すると、複合
粒子相互が良く点接着していることが認められた。即
ち、複合粒子同志の接触面積が大きい。そのため、プレ
ス成形体の成形強度が高い。また、焼成工程において
は、比較的低目の焼成温度で焼成するだけで、石炭灰が
低耐火度窯業原料の作用で十分に焼結され、しかも複合
粒子同志を十分に熔着させることができる。
【0026】このようにプレス成形体の焼結性が良いと
ころから、石炭灰がCaOやK2 O等を多量に含んでい
ても、寸法精度良く十分に焼結され、しかも空隙が多量
に残存した多孔質体を焼き上げることができる。
【0027】なお、焼成は、ローラーハースキルン、ト
ンネルキルン等により1200〜1300℃で行なうの
が好ましい。焼成時間は120min以上が好ましい。
【0028】このようにして得られる透水性舗装材は、
通常の場合20kgf/cm2 以上の強度を有し、かつ
10-2cm/S以上の透水性(JIS A 1218で
測定した値)を有するものであり、舗装材として好適に
使用することができる。
【0029】
【作用】硬質骨材の外周囲に石炭灰を低耐火度窯業原料
と共に緻密かつ厚肉に付着させることができ、この複合
粒子を用いて成形、焼成することにより、大量の石炭灰
を原料とした透水性舗装材を製造することが可能とされ
る。
【0030】即ち、複合粒子は硬質骨材を核として用い
ることから、高硬度で寸法安定性が良く、また、石炭灰
を肉厚に付着させることにより、石炭灰を大量に使用す
ることができる。しかも、石炭灰及び低耐火度窯業原料
を緻密に付着させることから、複合粒子の強度が比較的
高いものとなり、あらゆる種類の石炭灰を用いて、複合
粒子間の間隙が残留するように容易にプレス成形するこ
とができる。また、使用する石炭灰以外の原料として
は、硬質骨材及び低耐火度窯業原料のみで良く、コスト
の低廉化が図れる。その上、このプレス成形に当り、振
動プレス成形機等の特別な成形機を用いる必要もなく、
一軸加圧成形により容易に成形することができる。
【0031】このため、石炭灰の成分組成の変動に影響
を受けることなく、大量の石炭灰を用いて、所望の透水
性を有する透水性舗装材を通常の設備により容易に製造
することができる。
【0032】
【実施例】以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をよ
り具体的に説明する。
【0033】なお、用いたフライアッシュは、同一の火
力発電所から異なる日に排出されたものであるが、その
成分組成及び粒径(メジアン径)は表1に示す通りであ
る。
【0034】
【表1】
【0035】実施例1〜15 表1に示すフライアッシュを用い、下記割合でフライア
ッシュ、長石(平均粒径15μm)、硬質骨材(平均粒
径3.0mmの陶磁器破砕物)を調合し、更に、バイン
ダー及び水を表2に示す割合で添加して、アイリッヒミ
キサーに投入して周速20m/Sで混合、造粒し、表2
に示す物性の複合粒子を製造した。この複合粒子を表2
に示すプレス圧で一軸加圧成形して成形体を得、この成
形体を100℃で12時間乾燥(絶乾)した後、炉底昇
降式電気炉にて表2に示す温度で3時間焼成した(昇温
速度は10℃/min)後、放冷して透水性舗装材を製
造した。
【0036】原料調合(重量部) フライアッシュ:30 長石 :10 硬質骨材 :60 得られた透水性舗装材の曲げ強度(JIS A 520
9準拠)、透水係数及び収縮率(JIS A 5209
準拠)を調べ、結果を表2に示した。
【0037】表2より、本発明の方法によれば、フライ
アッシュの成分組成によらず、大量の石炭灰を用いて、
良好な透水性舗装材を製造することができることが明ら
かである。
【0038】
【表2】
【0039】比較例1 実施例6において、硬質骨材として、平均粒径0.2m
mの微細なものを用いたこと以外は同様にして複合粒子
を製造したところ、複合粒子の粒径が0.3mm以下と
小さなものであった。このため、プレス成形体及び焼結
体のいずれも気孔の乏しいものであり、透水率は10-2
cm/S以下であった。
【0040】比較例2 実施例4において、硬質骨材として、平均粒径10mm
の大きな粒子を用いたこと以外は同様にして複合粒子を
製造したところ、得られた複合粒子の付着層の肉厚は硬
質骨材の半径の15%にしかならず、フライアッシュを
大量に付着させた複合粒子を製造することはできなかっ
た。
【0041】比較例3 実施例4において、造粒工程で回転パン型造粒機を用い
たこと以外は同様にして複合粒子を製造した。得られた
複合粒子の付着層の層厚比(t/r×100%)は35
であったが、圧潰強度3.0kgf/cm2 で、フライ
アッシュの緻密な付着層を形成することはできなかっ
た。
【0042】この複合粒子を用いて、実施例4と同様に
成形、焼成したところ、複合粒子が強度不足であること
から、複合粒子間の間隙が潰れてしまい、透水性は10
-2cm/S以下で、十分な透水性を有するものは得られ
なかった。
【0043】比較例4 長石を用いなかったこと以外は、実施例7と同様にして
行なったところ、十分に焼結することができず、透水性
舗装材を得ることはできなかった。
【0044】
【発明の効果】以上詳述した通り、本発明の透水性舗装
材の製造方法によれば、石炭灰の成分組成に何ら制約を
受けることなく、大量の石炭灰を用いて、良好な透水性
舗装材を、特別な設備を要することなく、容易かつ効率
的に安価に製造することができる。
【0045】本発明の透水性舗装材の製造方法は、火力
発電所から大量に排出され、年々その排出量が増大する
石炭灰の有効利用技術として工業的に極めて有用であ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 佐治 明 愛知県名古屋市緑区大高町字北関山20番 地の1 中部電力株式会社電力技術研究 所内 (72)発明者 鳥屋尾 守 愛知県名古屋市緑区大高町字北関山20番 地の1 中部電力株式会社電力技術研究 所内 (72)発明者 森田 悦宏 愛知県名古屋市緑区大高町字北関山20番 地の1 中部電力株式会社電力技術研究 所内 (72)発明者 川合 和之 愛知県常滑市鯉江本町5丁目1番地 株 式会社イナックス内 (72)発明者 加藤 正俊 愛知県常滑市鯉江本町5丁目1番地 株 式会社イナックス内 (56)参考文献 特開 平7−2578(JP,A) 特開 昭63−236773(JP,A) 実開 平1−136144(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C04B 38/00 - 38/10

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 粒径0.5〜5mmの硬質骨材、石炭
    灰、低耐火度窯業原料及び水を高速回転羽根形造粒機に
    供給し、該硬質骨材の外周囲に石炭灰及び低耐火度窯業
    原料が緻密に付着した複合粒子を造粒し、 この造粒された複合粒子を、複合粒子間に間隙が残留す
    るようにプレスして舗装材形状の成形体とし、 その後、この成形体を焼成する透水性舗装材の製造方法
    であって、 前記硬質骨材、石炭灰及び低耐火度窯業原料の配合割合
    が、 硬質骨材 :30〜70重量部 石炭灰 : 5〜70重量部 低耐火度窯業原料: 5〜30重量部 である(ただし、硬質骨材、石炭灰及び低耐火度窯業原
    料の合計を100重量部とする。) ことを特徴とする透
    水性舗装材の製造方法。
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