JP3109290B2 - 箔スクラップからのアルミニウム回収方法 - Google Patents

箔スクラップからのアルミニウム回収方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、アルミニウム箔のスク
ラップからアルミニウムを溶融金属として回収する方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】アルミニウムは、ボーキサイト等の原料
を溶融塩電解して製造されているが、電力消費量が非常
に高い。電力消費量の節減を図ると共に資源の有効利用
及び環境問題を考慮して、使用済みのアルミニウムを再
生して使用することも検討されている。アルミニウムの
再利用には、アルミニウムスクラップを加熱炉で溶解
し、金属アルミニウムを溶出させ、アルミニウムインゴ
ットとして回収することが一般的な方法である。また、
アルミニウムスクラップを溶融塩浴に供給し、溶解した
金属アルミニウムをセラミックスフィルターで濾別回収
することが、特開昭60−208491号公報で紹介さ
れている。得られた溶融金属アルミニウムは、次いで精
練用電解槽に送られる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】有価金属として回収さ
れる資源として、化成箔,エッチング箔,プレーン箔等
の箔スクラップがある。化成箔スクラップを回収原料と
するとき、箔スクラップを加圧して塊状に成形した後、
加熱炉で700℃に加熱して溶融金属としてアルミニウ
ムを回収する。しかし、このときの歩留りは、20%程
度に過ぎない。エッチング箔からも同様な方法で金属ア
ルミニウムが回収されるが、たとえば70μm程度の厚
みをもつエッチング箔が金属アルミニウムとなる歩留り
は60%程度に留まる。また、同様なプレーン箔から金
属アルミニウムが回収される歩留りは、60%未満であ
る。
【0004】箔スクラップからの回収率がこのように低
いことは、箔表面に酸化皮膜等が形成されており、金属
状態でスクラップ中に存在する割合が低いことに原因が
ある。たとえば、陽極酸化された化成箔にあっては、箔
の厚さにもよるが金属分は箔の50%以下となることが
ある。しかも、酸素親和力が大きい金属であること及び
比表面積が大きな箔状態であることから、加熱炉で箔ス
クラップを加熱溶融する過程で容易に酸化を受け、アル
ミナとなって金属アルミニウムの回収率を低下させる。
酸化・燃焼したアルミニウムは、溶解しない滓として残
留し、溶解した金属アルミニウムを搦め捕る。これによ
っても、金属アルミニウムの回収率が低下する。更に、
箔表面にある酸化物皮膜が箔スクラップの溶解を遅ら
せ、生産性を低下させる。
【0005】溶融塩浴を使用した特開昭60−2084
91号公報の方法でも、スクラップからアルミニウムの
溶出回収は円滑に行われるものの、金属状態にない酸化
物等としてスクラップ中に存在するアルミニウム分は回
収されない。そのため、依然として回収率が低い。本発
明は、このような問題を解消すべく案出されたものであ
り、スクラップ中に存在する金属状のアルミニウム分を
溶解して回収すると共に酸化物等の化合状態にあるアル
ミニウム分を金属状態に電解還元することにより、非常
に高い回収率で箔スクラップから金属アルミニウムを回
収することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明のアルミニウム回
収方法は、その目的を達成するため、コイル状に巻き取
ったアルミニウム箔スクラップ又は塊状に加圧成形した
アルミニウム箔スクラップを溶融塩電解炉の電解浴に押
し込み、電解浴中で酸化アルミニウム分を溶解後電気分
解し、箔中金属アルミニウム分と共に溶融金属アルミニ
ウムとして回収することを特徴とする。電解浴として
は、酸化物に対する溶解能が大きなフッ化物系を使用す
ることが好ましい。また、硼酸を使用した化成処理を受
けた箔スクラップは、その投入量に応じて電気製錬炉に
チャージされる硼素の量がコントロールされるため、所
定の成分・組成をもつAl−B合金を製造することも可
能である。
【0007】
【作 用】本発明においては、たとえば図1に示す溶融
塩電解炉10が使用される。溶融塩電解炉10は、陰極
ブスバー11に接続された陰極カーボン12を炉体13
の底部に配置している。炉体13は、耐熱性及び断熱性
に優れた耐火物で構築されており、上部がトッププレー
ト14となっている。陽極カーボン15は、陰極カーボ
ン12に対向して配置されており、陽極16に接続され
ている。炉体13の内部には、陰極カーボン12と陽極
カーボン15との間に溶融塩20がチャージされてい
る。溶融塩20の表面は、アルミナ21で覆われてい
る。陰極カーボン12と陽極カーボン15との間に流れ
る電流によって溶融塩20に溶解した酸化アルミニウム
(アルミナ)が電解還元される。電解還元によって生じ
た金属アルミニウムは、溶融塩20中を陰極カーボン1
2上に沈降し、メタルプール22を形成する。炉体13
の内壁面には、電解浴及びアルミナが混合して凝固した
クラスト25が形成される。溶融塩20とアルミナ21
との界面にも、同様なクラスト26が形成される。
【0008】アルミニウム源として再使用される箔スク
ラップは、コイル状に巻かれ或いは塊状に加圧成形した
箔スクラップ30としてトッププレート14の上に置か
れ、溶融塩電解炉10からの放射熱によって予熱され
る。これにより、箔スクラップ30に含まれている水分
が除去される。なお、予熱に別途の加熱炉を使用し、箔
スクラップ30を100℃以上の高温に保持して置き、
加熱炉から予熱済みの塊状箔スクラップを適宜取り出し
て溶融塩電解炉に投入することも可能である。予熱され
た箔スクラップ30を電解浴に装入するとき、浴表面を
覆っているアルミナ21及びクラスト26を電解浴中に
押し込んで溶かし込み、電解浴表面を露出させる。そし
て、押込み工具31を使用し、露出した温度約980℃
以下の電解浴の浴面32から箔スクラップ33を溶融塩
20中に徐々に押し込む。箔スクラップ33の装入と同
時に、フレッシュアルミナを投入することが好ましい。
フレッシュアルミナは、電解浴の表面を覆うことにより
電解浴からの放熱を抑制すると共に、押し込まれた箔ス
クラップ33の一部が電解浴表面に露出し外気との接触
によって酸化することを防止する。なお、本発明におい
ては、箔スクラップ中の酸化物がアルミナとして補給さ
れるため、通常のアルミニウム溶融塩電解に比較してフ
レッシュアルミナの使用量を節減することができる。
【0009】箔スクラップ33の押込み過程で、箔スク
ラップ33は、溶融塩20によって表面が酸化されるこ
となく、溶融塩20中に溶け込む。このとき、フッ化物
系の浴で処理した酸化アルミニウム等のアルミナ分は、
塩化物系浴で処理した場合よりも大きな溶解能力を示
す。この点、回収率を一層向上させるため、フッ化物系
の浴で処理することが好ましい。押し込まれた箔スクラ
ップ33のうち、金属分は、そのまま沈降して、溶融塩
20の電気分解によって生成した溶融アルミニウムと共
に炉底のメタルプール22に入る。酸化アルミニウム等
の化合状態のアルミニウム分は、溶融塩電解による電気
分解を受け、金属状態に還元される。たとえば、酸化ア
ルミニウムは、次のようにアルミナの電気分解と同じ分
解反応を受け、金属アルミニウムとして回収される。 Al23 →2Al↓+3/2O22 +C→CO2
【0010】すなわち、従来の箔スクラップからのアル
ミニウムの回収は、酸化物等の化合状態にあるアルミニ
ウム分を除く金属分のみを回収対象としているため、回
収率が約30%と非常に低い。これに対し、本発明にあ
っては、酸化物等の化合状態にあるアルミニウム分も電
気分解されて金属状態で回収される。その結果、箔スク
ラップ中の酸化皮膜や再酸化アルミニウムをも資源とし
て利用するため、非常に高い回収率で金属アルミニウム
が得られる。
【0011】
【実施例】
実施例1:(化成箔) 溶融塩電解炉10として、定格電流55kAの横型電解
炉を使用し、氷晶石85%,フッ化アルミ5%及びフッ
化カルシウム10%の溶融塩20を調製した。溶融塩2
0は、陰極カーボン12と陽極カーボン15との間に2
50KWの電力を供給することにより、温度970℃に
保持した。箔スクラップとして、厚みが平均70μmの
化成箔を使用した。この化成箔には、金属状態のアルミ
ニウム分が70%,γ−アルミナ(Al23・H2 O)
状態のアルミニウム分が30%含まれていた。化成箔を
内径50mm,外径200mm及び高さ500mmのコ
イル状に巻き取り、1個当り15kgの箔スクラップ3
0を用意した。なお、円筒状に成形できない箔スクラッ
プは、高さ100mm,縦250mm及び横500mm
の直方体状に加圧成形した。
【0012】個々の箔スクラップ30をそれぞれ木製パ
レット上に保持し、1日の投入分150kgを用意し
た。木製パレットを1日3回、50kgづつ溶融塩電解
炉10のトッププレート14上に載置し、この状態に8
時間放置した。箔スクラップ30は、溶融塩電解炉10
からの放熱によって予熱され、工場内の雰囲気温度(4
0℃)から200℃の温度まで昇温した。この予熱工程
で、箔スクラップ30に含まれていた水分は完全に除去
された。
【0013】予熱完了した箔スクラップ30は、クラス
ト26を割って露出させた電解浴表面32から溶融塩2
0中に押し込んだ。箔スクラップ33の投入によって、
電解製錬で得られる金属アルミニウムの生産量に増加が
みられた。増加分を箔スクラップ33に由来するものと
推定し、箔スクラップ33から金属アルミニウムの回収
率を算出した。得られた回収率は、80%であった。こ
の回収率は、箔スクラップに金属状態で含まれているア
ルミニウム分(70%)より多く、Al23 状態のア
ルミニウム分が電解還元され併せて回収されたことを意
味する。
【0014】実施例2:(エッチング箔) 箔スクラップとして、厚みが平均70μmのエッチング
箔を使用した。このエッチング箔は、表面に酸化物皮膜
が形成されておらず、実質的に純度100%のアルミニ
ウム資源である。箔スクラップを実施例1と同様に塊状
箔スクラップに加圧成形し、実施例1と同じ条件下で溶
融塩電解炉に投入した。この場合の回収率は、95%で
あった。
【0015】実施例3:(プレーン箔) 箔スクラップとして、厚みが平均70μmのプレーン箔
を使用した。このプレーン箔は、厚み0.5μmのγ−
アルミナ層が2層に形成されており、金属状態のアルミ
ニウム分が98.9%であった。箔スクラップを実施例
1と同様に塊状箔スクラップに加圧成形し、実施例1と
同じ条件下で溶融塩電解炉に投入した。この場合の回収
率は、93%であった。また、実施例1〜3共に、箔ス
クラップを継続投入しても金属アルミニウムとしての回
収に変化がみられず、高い回収率が維持された。
【0016】比較例:(加熱炉による箔スクラップの溶
融) 加熱炉で箔スクラップを700℃に加熱し、金属アルミ
ニウム分を溶出させてアルミニウムインゴットとして回
収した。加熱溶融される箔スクラップとしては、実施例
1と同様に塊状に加圧成形したものを使用した。この場
合の回収率は、次の通りであった。箔の種類 金属Al分 回収率 化成箔 70% 20% エッチング箔 100% 60% プレーン箔 98.9% 80%
【0017】この対比から明らかなように、本発明に従
った実施例では、非常に高い回収率で金属アルミニウム
を箔スクラップから得ている。これは、溶融塩電解によ
って酸化物等のアルミニウム分が金属状態に還元され、
金属アルミニウムとして回収されることに由来する。ま
た、溶融塩に箔スクラップが溶融するまでの過程でアル
ミニウムの酸化消耗が抑制されることも、高い回収率の
一因である。
【0018】実施例4:(硼化物処理の影響) 金属アルミニウム分71%及びγ−アルミナ分29%の
組成をもち、厚み70μmの化成箔を、スクラップ原料
として使用した。化成箔は、93℃の硼酸化成処理液中
で陽極酸化により製造した。化成箔表面に、B換算で
0.3%の硼酸が付着していた。硼酸処理後の化成箔
を、実施例1と同様に溶融電解炉のフッ化物浴に1日3
回投入した。投入量は、各過程50kgに設定した。こ
のようにして箔スクラップを溶融塩電解したとき、次の
組成をもつアルミニウム溶湯が得られた。また、箔スク
ラップからの金属アルミニウムの回収率は、80%であ
った。得られたアルミニウム溶湯の組成 Al:99.88重量% Cu:0.003重量% Si:0.04重量% B:0.04重量% Fe:0.04重量%
【0019】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明において
は、リサイクル資源としての箔スクラップを溶融塩電解
炉に投入し、金属アルミニウムを回収している。炉内に
投入された箔スクラップのうち、金属アルミニウム分は
そのまま溶融塩を沈降してメタルプールに送り込まれ、
酸化物等の化合状態にあるアルミニウム分は溶融塩電解
によって金属状態に還元され、メタルプールに送り込ま
れる。そのため、箔スクラップに含まれている酸化アル
ミニウム等も回収源として消費され、高い回収率で金属
アルミニウムが回収される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明で使用する溶融塩電解炉の一例
【符号の説明】
10 溶融塩電解炉 14 トッププレート
20 溶融塩 22 メタルプール 30 箔スクラップ 32 露出した電解浴表面 33 押し込まれている箔スクラップ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 朝来野 修一 静岡県庵原郡蒲原町蒲原161 日本軽金 属株式会社蒲原電解工場内 (72)発明者 金野 健一 静岡県庵原郡蒲原町蒲原161 日本軽金 属株式会社蒲原電解工場内 (72)発明者 南波 正敏 東京都港区三田3丁目13番12号 日本軽 金属株式会社内 (56)参考文献 特開 昭59−64703(JP,A) 特表 平2−503695(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C25C 1/00 - 7/08

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 コイル状に巻き取ったアルミニウム箔ス
    クラップ又は塊状に加圧成形したアルミニウム箔スクラ
    ップを溶融塩電解炉の電解浴に押し込み、電解浴中で酸
    化アルミニウム分を溶解後電気分解し、箔中金属アルミ
    ニウム分と共に溶融金属アルミニウムとして回収するこ
    とを特徴とする箔スクラップからのアルミニウム回収方
    法。
  2. 【請求項2】 フッ化物系の電解浴を使用する請求項1
    記載のアルミニウム回収方法。
  3. 【請求項3】 アルミニウム箔スクラップが硼酸処理さ
    れたものである請求項1記載のアルミニウム回収方法。
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