JP3105239B2 - 磁気共鳴イメージング装置 - Google Patents

磁気共鳴イメージング装置

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JP3105239B2 JP02331663A JP33166390A JP3105239B2 JP 3105239 B2 JP3105239 B2 JP 3105239B2 JP 02331663 A JP02331663 A JP 02331663A JP 33166390 A JP33166390 A JP 33166390A JP 3105239 B2 JP3105239 B2 JP 3105239B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、該磁気共鳴(以下「NMR」と略記する)現
象を利用して被検体の所望部位の断層画像を得るための
磁気共鳴イメージング装置に係り、特に被検体の特定の
血管を3次元画像として抽出することの可能な選択的3
次元血管撮像の可能な磁気共鳴イメージング装置に関す
る。
〔従来の技術〕
磁気共鳴イメージング装置は、NMR現象を利用して被
検体中の所望の検査部位における原子核スピン(以下単
にスピンと称す)の密度分布,緩和時間分布等を計測
し、その計測データを処理装置により処理して被検体の
任意の断面の画像を再構成し、表示するものである。第
2図は磁気共鳴イメージング装置の構成を示すもので、
静磁場発生磁石2は永久磁石,常電導あるいは超電導コ
イルで構成され、被検体1の周りに0.02〜2テスラ程度
の静磁場を発生し、これと磁場勾配発生系3から発生さ
れた傾斜磁場とが重畳されて被検体1に印加される。こ
こで磁場勾配発生系3は、X,Y,Zの三軸方向に巻かれた
傾斜磁場コイル9とこれを駆動する傾斜磁場電源10とか
らなり、シーケンサ7により制御される。磁場勾配発生
系3からの傾斜磁場がないとすると、被検体1中のスピ
ンは静磁場の強さH0によって決まる周波数ν(=ω0/
2π,ω0:角周波数)で静磁場の方向を軸として才差運
動を行なう。この周波数νまたは角速度ωはラーモ
ア周波数と呼ばれ、式(1)で与えられる; ω=2πν=γH0 ……(1) ここにγは磁気回転比で、原子核の種類ごとに固有の
値をもっている。ここで送信系4にて、高周波発信器11
から上記ラーモア周波数νに等しい出力周波数を出力
し、これを増幅器13で増幅したのちシーケンサ7出力の
パルスシーケンスで変調器12において変調し、その変調
出力を高周波照射コイル14aから高周波磁場(電磁波)
として出力すると、ラーモア周波数νで才差運動して
いる原子核はそのスピンが励起され高いエネルギー状態
に遷移する。その後高周波磁場を打ち切ると、スピンは
それぞれの状態に応じた時定数でもとの低いエネルギー
状態に戻るが、この時に放出される電磁波(エコー信
号)は受信系5内の高周波受信コイル14bで受信され、
増幅器15で増幅され、位相検波器16で検波された後、A/
D変換器17でディジタル化されてCPU8に送られる。CPU8
では、このデータを基に画像を再構成演算し、被検体1
の断層画像をディスプレイ20に表示する。磁気ディスク
18,磁気テープ19は処理データやプログラムを格納す
る。磁場勾配発生系3の傾斜磁場コイル9から磁場強度
が空間的に変化する傾斜磁場が出力されると、これは静
磁場H0に重畳され、ラーモア周波数νを空間的に変化
させる。これにより空間的位置情報を得ることができ
る。
以上に概略を示した磁気共鳴イメージング装置の撮像
方法を説明する。まず、第4図(a)に示すようにZ方
向の静磁場H0中に置かれた原子核は、古典物理学的に見
ると1個の棒磁石のように振舞い、先に述べたラーモア
周波数νでZ軸の周りに才差運動を行っており、その
周波数は式(1)で示したように静磁場の強度H0に比例
している。一般には測定対象の原子核は膨大な数にのぼ
り、それぞれが勝手な位相で回転しているために、全体
で見るとX−Y面内の成分は打ち消し合い、Z方向成分
のみの巨視的磁化が残る。この状態で第4図(b)に示
すように、X方向にラーモア周波数νに等しい周波数
の高周波磁場H1を印加すると、上記の巨視的磁化はY方
向に倒れ始める。この倒れる角度は上記高周波磁場H1
振幅と印加時間の積に比例する。そしてパルス印加前に
対しスピンを90゜倒すような高周波磁場H1は90゜パル
ス、180゜倒すような高周波磁場H1は180゜パルスと呼ば
れる。なお、第4図(a),(b)におけるX,Y,Z三軸
は、それぞれ直交したデカルト座標軸である。
このような磁気共鳴を用いた撮像で一般的に用いられ
る方法には、2次元フーリエイメージング法がある。第
5図は上記2次元フーリエイメージング法のうち代表的
なスピンエコー法のパルスシーケンスを示したタイミン
グチャートで、これら各種のパルス状磁場のシーケンス
は、シーケンサ7出力によって高周波発信器11の出力高
周波を変調器12で変調し、あるいはシーケンサ7出力に
よって傾斜磁場発生電源10を制御することにより生成さ
れる。同図において、まず90゜パルスを印加すると巨視
的磁化は第4図(b)のY軸方向まで回転し高エネルギ
ー状態となる。その後90゜パルス印加が終わると各スピ
ン波それぞれの状態に応じてばらばらに様々な経路を通
ってZ軸方向へ戻り始める。90゜パルス印加後Te/2経過
した時点に180゜パルスが加えられると、各スピンはX
軸に対称に反転され、その後90゜パルス印加終了後と同
じ速度及び方向で回転を続けるために、第5図に示す時
刻Teに各スピンは一Y軸方向に収束してエコー信号Eが
形成される。
上記のように形成されたエコー信号Eは検出されて断
層画像の構成に用いられるが、そのためにはエコー信号
Eが所望の位置でのみ形成される必要があり、このため
に傾斜磁場を静磁場H0に重畳し、空間的な磁場勾配を形
成する。即ち、前述のように各スピンの回転周波数ν
は磁場強度に比例するから、傾斜磁場が印加されると各
スピンの回転周波数νは空間的に異なってくる。従っ
て傾斜磁場が例えばX方向に傾斜していれば、周波数f
の高周波磁場で励起されるスピンはXの1つの値に対す
る位置にあるもののみであり、周波数がΔfの幅をもっ
た高周波磁場で励起されるスピンはXのある位置で一定
の幅ΔXの中にあるものとなり、かつそれらの回転位相
は位置により少しづつ変化する。このような共鳴するス
ピンの位置とその位相は各傾斜磁場の値が判っていれば
知ることができる。この目的のために、第5図に示すス
ライス方向傾斜磁場Gz、位相エンコード方向傾斜磁場Gy
及び周波数エンコード方向傾斜磁場Gxが用いられてい
る。
以上に述べたパルスシーケンスを基本単位として、位
相エンコード方向傾斜磁場Gyの強度を毎回変えながら一
定の繰り返し時間Tr毎に、所定回数、例えば256回繰り
返す。こうして得られた計測信号を2次元逆フーリエ変
換することで第4図(a)に示す巨視的磁化の空間的分
布が求められる。以上の説明において、3種類の傾斜磁
場は互いに重複しなければ、X,Y,Zのいずれであっても
よく、あるいはそれらの複合されたものであっても構わ
ない。なお、以上の磁気共鳴イメージングの基本原理に
ついては、「NMR医学(基礎と臨床)」(核磁気共鳴医
学研究会編・丸善株式会社・昭和59年1月20日発行)に
おいて詳述されている。
次に、核磁気共鳴イメージング装置において、本発明
に係る血管像の撮像原理について説明する。磁気共鳴イ
メージング装置においては、エコー信号(NMR信号)の
計測にあたって上述のように数種類の傾斜磁場を印加す
るが、それらの傾斜磁場の印加により励起されたスピン
は、位置及び移動速度に依存した位相回転を受ける。即
ち、第6図に示すように、例えば時刻TaにおいてX0の位
置に2個のスピンS1,S2が存在するとし、一方のスピンS
1は静止しており、他方のスピンS2は速度vでX方向に
移動しているとする。このとき時刻TaからTbまでの周波
数エンコード方向の傾斜磁場Gxの印加により、それぞれ
次式に示す位相変化Φsを受ける。
この様子は第7図に示されており、Φはtb−taに比
例するが、Φはさらに(tb 2−ta 2)に比例する項が付
け加わる。式(2),(3)から a=γ・Gx/2であり、静止スピンS1と移動スピンS2との
位相差は、移動速度vに比例していることがわかる。そ
こで今第8図に示すように標準的スピンエコーシーケン
スを印加したときの動作を考える。スピン(図中破線で
示す)は位置X0に固定しているが、移動スピン(図中実
線で示す)の位置Xは時間tに対して傾斜vでもってX0
より直線的に増大している。傾斜磁場Gxを時刻t1〜t2
間印加するとΔΦ=a・v・(tb 2−ta 2)の位相差が
時刻t2に生じ、これが180゜パルスによって反転され、
さらに時刻t4よりも傾斜磁場Gxの印加により位相Φ
印加時間に比例して増大し、位相Φは印加時間及びそ
の二乗に比例した項に従って増大する。このためにエコ
ー信号Eの計測時点tEにおいては静止スピンの位相Φ
と移動スピンの位相Φとが揃わないことがある。ここ
で、上記標準スピンエコーシーケンスにおける傾斜磁場
に対して、第9図に示すように負方向の傾斜磁場A,Bを
傾斜磁場Gxのシーケンスに追加することにより、エコー
信号Eのピーク時刻tEに一致して静止スピンと移動スピ
ンとの位相が揃うようにすることができる。以下、第8
図に示すパルスシーケンス(高周波磁場RF及び傾斜磁場
Gxのシーケンス)を位相感応型(Phase sinsitive)シ
ーケンスと呼び、第9図に示すパルスシーケンスを位相
不感型(Phase insensitive)シーケンスと呼ぶ。位相
不感型シーケンスを用いると静止部分については位相感
応型シーケンスで得られる信号強度と等強度の信号が得
られ、移動磁化の存在部位では、位相拡散による信号の
欠損を抑え、位相感応型シーケンスより高い信号が得ら
れる。従って、第10図に示すように、位相感応型シーケ
ンスで計測した位相感応画像I1と、位相感応型シーケン
スで計測した位相不感画像I2との差をとって差分画像I3
を得ることにより、例えば静止部分22を消去して血管21
内の血流のような移動部分のみを画像化することができ
る。このような位相感応型シーケンス及び位相不感型シ
ーケンスによって得られた画像間の差から血管像を得る
手法については、「Cerebral MR Angioimaging(脳血管
磁気共鳴画像法)の研究−第1報−」(福井啓二他、CT
研究10(2)1988年)の第133頁から第142頁に詳述され
ている。
一方、3次元の血管像を取得するためには、血管撮像
パルスシーケンスとして3次元フーリエ変換法を応用し
たシーケンスを用いる。3次元フーリエ変換法の原理
は、特開昭58−200145号「3次元NMRイメージング法」
で開示されており、選択された3次元の厚みある領域か
ら得られた計測データに対して、3次元フーリエ変換を
行なうことで、複数枚の2次元像を得ることができる。
端的に言えば、スライス方向に対しても前述の位相エン
コードパルスを導入し、スライスの位置に応じた位相回
転を与え、スライス方向の1次元フーリエ変換を追加す
ることにより、ボリュームを複数のスライスに分割する
手法である。この原理に基づいて、従来の磁気共鳴イメ
ージング装置における3次元血管撮像の実際のパルスシ
ーケンスは、第11図に示すようになっていた。即ち、パ
ルスシーケンスを区間I〜VII及びVIII〜XIVに区間分け
し、区間I〜VIIから成る位相不感型シーケンス部と、
区間VIII〜XIVから成る位相感応型シーケンス部とを交
互に組み合わせたパルスシーケンスとなっている。この
ような構成とした場合は、両シーケンス部で得られる画
像間で被検体1の動きなどによる画像ずれは防止するこ
とができる。そして傾斜磁場Gz,Gyの双方の値を変化さ
せながら図示のシーケンスを繰り返すことにより、上記
のように3次元的なスピンの分布が得られる。
また、差分法を用いずに血管像検出例には、「ラピッ
ド・ライン・スキャン・NMR・アンギオグラフィ(Rapid
Line Scan NMR Angiography)」(J.Frahm他著。Magne
tie Rosonance in Medicine,Vol.17,P.79〜P.87,1988。
Academic Press Inc,San Diego)がある。この従来例
は、差分法を用いず、血管を横断するラインの計測を行
なう。その際、事前に同一のラインをプリサチュレーシ
ョンし、静止部分の信号を抑制しておく。従って、血流
は励起されていないフレッシュなスピンとして高信号と
なる。このラインを順次隣のラインへとスキャンする。
これらを並べることにより投影像としての血管像が得ら
れる。
〔発明が解決しようとする課題〕
上記第1の従来例では、差分法を用いて被検体中の静
止部分を除去し移動しているスピンのみを画像化するた
め、動脈及び静脈が同時に抽出されることになり、例え
ば動脈の狭窄や閉塞が疑われる際に、関心領域に静脈が
重なり診断を阻害する場合もあった。3次元的な血管像
の場合は、その投影方向により、動脈と静脈の重なりを
避けることも可能であるが、その場合関心領域が一番望
ましい状態で投影されているとは限らず、不要な静脈に
より画像が煩雑になることは避けられなかった。
更に第2の従来例は、ラインの撮像はできるが面の撮
像はできない。従って、3次元化は不可能である。また
静止部分を抑制するやり方をとっているため、血流のみ
の移動を考慮しての抽出法はとっていない。
本発明の目的は、差分法を用いずに、更にはライン走
査法を用いずに、所望の血管系のみの画像を容易にかつ
確実に取り出すことのできる磁気共鳴イメージング装置
を提供するにある。
〔課題を解決するための手段〕
本発明のシーケンスは、被検体内の血流の存在する部
位の内、血流の流れ方向によって指定した血管系の撮像
領域の上流の予備励起領域を第1励起高周波パルスで選
択励起し、上記撮像領域に、この励起した血流が移動し
てきた時に該血流を再び励起可能なように、上記撮像領
域を第2励起高周波パルスで選択励起し、両者の励起を
受けた血管内血流のエコー信号を発生可能にせしめた構
成とした(請求項1)。
更に本発明のシーケンスは、第1励起高周波パルスと
第2励起高周波パルスは、それぞれの対応領域を選択励
起可能な相異なるスライシング周波数に設定してなる
(請求項2)。
更に本発明では、上記各スライシング周波数には、ス
ライス選択幅を決定する周波数帯域幅を含んでなる(請
求項3)。
更に本発明のシーケンスは、選択励起時のスライシン
グ周波数及び周波数帯域幅が第1励起高周波パルスと第
2励起高周波パルスで互いに独立に設定されるように構
成された(請求項4)。
更に本発明のシーケンスは、第1励起高周波パルスの
スライシング周波数帯域と第2励起高周波パルスのスラ
イシング周波数帯域が一切重ならないように構成された
(請求項5)。
更に本発明のシーケンスは、上記第2励起高周波パル
スによる選択励起及びエコー信号計測に続いて、第2励
起高周波パルスと同一のスライシング周波数帯域を有す
る第3以降1個以上の励起高周波パルスによる選択励起
と、第2以降1個以上のエコー信号計測とを行なうよう
に構成された(請求項6)。
更に本発明のシーケンスは、上記第2励起高周波パル
スによる選択励起及びエコー信号計測に続いて、傾斜磁
場の反転により、第2以降1個以上のエコー信号計測を
行なうように構成された(請求項7)。
更に本発明によるシーケンスにおいては、第1タイミ
ングにおいて、被検体内の撮像対象領域へ移動して流入
する原子核の上流部に設けた予備励起領域内で上記移動
原子核が励起されるような第1周波数をもつ高周波磁場
パルスと上記傾斜磁場パルスとが被検体に印加され、そ
の後の第2タイミングにおいて、上記予備励起領域で励
起された原子核が上記撮像対象領域へ移動してきたとき
に該原子核を再び励起するような第2周波数を持つ高周
波磁場パルス及び傾斜磁場パルスが被検体に印加され、
さらに上記第1タイミングと第2タイミングの間の時間
だけ上記第2タイミングより経過した第3タイミングに
おいて上記第1及び第2タイミングに励起された原子核
が同一方向に揃ってエコー信号を発生するような傾斜磁
場パルスが上記第1及び第2タイミングの間と上記第3
タイミングとに被検体に印加されるようにした(請求項
8)。
更に本発明のシーケンスにおいては、前記第3のタイ
ミングに発生したエコー信号を第1エコー信号とし、該
信号発生後に、再びエコー信号が発生するような前記第
2周波数をもつ高周波磁場パルス及び傾斜磁場パルスが
被検体に1回または複数回印加されるように前記高周波
磁場発生手段及び傾斜磁場発生手段を制御して第2及び
第3以後のエコー信号を発生させ、前記信号処理手段
は、上記第1エコー信号,第2エコー信号及び第3以後
のエコー信号ごとに画像を生成し、該生成した各画像を
重畳して被検体の3次元撮像画像を構成する(請求項
9)。
更に本発明のシーケンスにおいては、前記第3のタイ
ミングに発生したエコー信号を第1エコー信号とし、該
信号発生後に、再びエコー信号が発生すべく被検体に1
回または複数回印加されるように前記傾斜磁場発生手段
を制御して第2及び第3以後のエコー信号を発生させ、
前記信号処理手段は、上記第1エコー信号,第2エコー
信号及び第3以後のエコー信号ごとに画像を生成し、該
生成した各画像を重畳して被検体3次元撮像画像を構成
する(請求項10)。
更に本発明は、スライス面毎に第1,第2周波数をずら
し、各スライス面に与えられた第1,第2周波数に従って
上記シーケンスを動作させて、スライス面毎にエコー信
号を得、該エコー信号を配列して3次元撮像画像を得る
ようにした(請求項11)。
〔作 用〕
本発明によれば、被検体内の血流の存在する部位の
内、血流の流れ方向に沿って指定した血管系のみを抽出
でき、更に3次元的な描画も可能にする(請求項1〜7,
11)。
更に本発明によれば、シーケンサによるパルスシーケ
ンスの制御によって、下記の如く指定された血管系のみ
を描画することができる。即ち、目的とする血管系の上
流部を含む断面において、第1タイミングに血液内のス
ピンを励起し横磁化を生成し、続く第2タイミングに撮
像対象領域内に移動してきたスピンを再励起して位相反
転させる。この2回の励起を共に受けるのは目的とする
血管系に沿って移動した血流スピンのみであり、このス
ピンのみが第3タイミングで収束されてエコー信号を発
生するから、目的とする血管系のみの撮像が可能となる
(請求項8〜10,11)。
〔実施例〕
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。本発明の装
置の全体構成は、ブロック図では第2図に示したものと
同じである。異なるのは3次元血管撮像のためのシーケ
ンサ7の動作と、その制御によって発生される高周波磁
場及び傾斜磁場のシーケンスである。第1図は本発明の
特徴とする3次元血管撮像のためのパルスシーケンスの
一実施例を示すもので、このシーケンスは区間I〜XXII
に区間分けされている。高周波磁場RFはは高周波印加の
タイミングを示すエンベローブとその周波数F1,F2等が
示されている。第3図は撮像対象例としての血管系と高
周波磁場RFによる励起領域を示したもので、動脈を上向
き(Z方向)、静脈は下向きに流れているとする。以下
この例を用いて上記実施例の動作を述べる。
第1図において、区間Iでは周波数F1±ΔF1(但し、
F1が中心周波数、±ΔF1がスライス選択幅を決定する周
波数帯域)のα゜(例えば90゜)パルス(選択励起パ
ルス)及びスライス方向傾斜磁場パルスGz1の印加によ
り、第3図の傾斜を施した第1励起領域が励起される。
ここでZ軸は血流の方向としている。続いて区間IIで
は、傾斜磁場パルスGz2,Gy1及びGx1を印加する。傾斜磁
場Gz2,Gy1の印加によりZ軸及びY軸方向に沿って直線
的に変化する値の位相回転が与えられ、傾斜磁場Gx1
印加によりX方向に配列したスピンの位相が0次,1次と
もに拡散する。ここでスライス方向の傾斜磁場Gz2は0
レベルを中心としたステップ変化をせず、負のオフセッ
ト(強度Gz0)を中心としたステップ変化となる。区間I
IIでは、傾斜磁場Gy1の印加を継続すると共に、傾斜磁
場Gz3,Gx2を印加する。傾斜磁場Gz3の印加は、区間IVの
Gz4印加終了時点で、スライス方向(Z方向)に配列さ
れたスピンの位相を、0次,1次ともに揃える(移動して
いるスピンの位相も揃える)ためのもので、この値は各
傾斜磁場パルスGziによる位相回転が式(4)の形で与
えられるので、 Gz1(t1 2−t0 2)/2−Gz0(t2 2−t1 2)/2 +Gz3(t3 2−t2 2)/2−Gz4(t4 2−t3 2)/2 −Gz4(t5 2−t4 2)/2=0 ……(5) により定められる。この式でGzi(i=0,1等)は各傾斜
磁場の勾配の絶対値、ti(i=0,1,…)は第1図に示し
た各傾斜磁場パルスの印加開始,終了等の時刻である。
また傾斜磁場Gx2の印加によりX方向のスピンの位相が
0次に関してのみ揃う(移動していないスピンの位相の
みが揃う)。区間IVでは、スライシング周波数f2±Δf2
(f2が中心周波数、±Δf2がスライス選択幅を決定する
周波数帯域)のα゜パルス(選択励起パルス)及びス
ライス方向の傾斜磁場パルスGz4の印加により第3図の
第2励起領域が励起される。α゜パルスを例えば180
゜パルスとすることにより、第2励起領域内の静止部分
のスピンは横磁化を生じず、区間VIIのエコー信号計測
時に、静止部分からは如何なる信号も発しない。この励
起でエコー信号を発生するのは、区間Iで第1励起領域
に存在してα゜パルスにより励起され、かつ区間IVで
第2励起領域に存在するスピンのみであり、第3図に示
す動脈内を流れる血液中のスピンに相当する。区間Vで
は、なんらのパルスも印加しない。区間VIでは、周波数
エンコード方向に負の傾斜磁場パルスGx3を印加する。
区間VIIでは正の傾斜磁場パルスGx4を印加しながらエコ
ー信号E1の計測を行なう。この時、エコー信号E1のピー
クにおいてX方向に配列したスピンの位相が揃うよう
に、傾斜磁場パルスGx1〜Gx4の印加時間及び傾斜磁場強
度が式(6)を満たすように調整しておく。
−Gx1(t2 2−t1 2)/2+Gx2(t3 2−t2 2)/2 +Gx3(t7 2−t6 2)/2−Gx4(t8 2−t7 2)/2=0…(6) 以上の区間I〜VIIにより、第9図で説明した位相不
感型シーケンスによるエコー信号E1の計測が終わる。こ
れが終わると1つの軸に集中していたスピンは再びばら
ばらにZ軸方向へ戻り始め、区間IIと同様な状態になる
から、再び区間VIIIで負の傾斜磁場パルスGx5を印加
し、区間IXでは、これに加えてスライス方向の傾斜磁場
Gz5を印加する。これらの傾斜磁場Gx5,Gz5の印加は次に
述べる第2のエコー信号E2のピークにおいて0次,1次の
位相を揃えるためである。区間X〜XIではスライス方向
に傾斜磁場Gz6を印加しておき、区間XIでスライシング
周波数f2±Δf2のα゜パルスを印加する。これにより
第3図の第2励起領域が再び励起される。ここでα
パルスを例えば180゜パルスとすることにより、第2励
起領域内の静止部分のスピンは横磁化を生じず、第2エ
コー信号E2には何等寄与しない。この励起でエコー信号
を発生するのは、区間Iで第1励起領域に存在し、区間
IV及び区間XIで第2励起領域に存在するスピンのみであ
り、第1エコー信号E1と同じく第3図に示す動脈内を流
れる血液中のスピンに相当する。このとき区間IV終了時
と同じく区間XIの終了時点においてZ方向に配列したス
ピンの位相が揃うようにするために傾斜磁場パルスGz5
〜Gz6の印加時間及び傾斜磁場強度を、次の式を満たす
ように調整しておく。
Gz5(t11 2−t10 2)/2+Gz6(t12 2−t11 2)/2 +Gz6(t13 2−t12 2)/2=0 ……(7) 続いて区間XIIではなんらかのパルスも印加せず、区
間XIIIで正の傾斜磁場パルスGx6を印加する。区間XIVで
は、正の傾斜磁場パルスGx7を印加するとともに、エコ
ー信号E2の計測を行なう。このとき、エコー信号E2のピ
ークにおいて、X方向に配列したスピンの位相が揃うよ
うにするために、傾斜磁場パルスGx4〜Gx7の印加時間及
び傾斜磁場強度を次式を満たすように調整しておく。
−Gx4(t9 2−t8 2)/2+Gx5(t11 2−t9 2)/2 +Gx6(t15 2−t14 2)/2 −Gx7(t16 2−t15 2)/2=0 …(8) なお区間XIVでは、区間XIIと異なりエコー信号計測時
の傾斜磁場Gxの極性が反転しており、画像再構成時には
周波数方向の画像反転を要する。以上の区間VIII〜XIV
と区間Iがやはり位相不感型シーケンスを構成して第2
エコー信号E2が計測される。続く区間XV〜XXIでは、区
間VIII〜区間XIVと傾斜磁場Gxの極性が反転することを
除いて全く同一の動作を行い、第3のエコー信号E3が計
測される。区間XXIIではなんらのパルスも印加せず、次
のα゜パルス印加から始まるシーケンスの繰り返しま
での待ち時間となる。
以上に示した区間I〜XXIIのパルスシーケンスを、ス
ライス方向の傾斜磁場Gz2と傾斜磁場Gy1の磁場強度をそ
れぞれn1回,n2回づつ値を変えながら繰り返すと、n1×n
2×(1回のシーケンスでのエコー信号の数=n3)個の
計測データが得られる(第1図ではn3=3)。そこで第
2図のCPU8によりこのデータの3次元フーリエ変換を行
えば、n1×n3個の2次元画像が得られる。1シーケンス
中のエコー信号E1,E2,…から得た画像は、第1励起時か
らの時間遅れが各々異なり、これらを各々のスライス
(1つのGz値ごと)について加算することにより、広範
囲の流速の変化にも対応した血管像が得られる。こうし
て得られた2次元画像は流血のみの画像であり、これら
をスライス方向(Z方向)に順に積み重ねたものが第3
図の第2励起領域中の選択された血管(動脈)の3次元
データとなり、移動スピンをもつ静脈は撮像されない。
この3次元血管データは、第12図に示す投影処理を行え
ば、任意の2次元撮影像に変換される。
なお、第1図の実施例では第2,第3のエコー信号生成
のために傾斜磁場Gz及びGxの双方と180゜パルスを印加
したが、これを傾斜磁場Gxのみで行なうこともできる
(グランジェントエコー法)。第13図はその実施例を示
しており、区間VIIまでは第1図と同じである。しかし
区間VIII以後では傾斜磁場Gxのみを印加してZ,X方向に
配列されたスピンの位相が0次,1次ともにエコー信号ピ
ーク時に揃えて動脈のみの像を得るようにしている。ま
た第1図,第13図の実施例では、3エコー取得のパルス
シーケンスについて説明したが、エコーの数n3は繰り返
し時間(TR)に応じて自由に増減可能である。
尚、本実施例において、第1励起高周波パルスと第2
励起高周波パルスとで、選択励起時のスライシング周波
数と周波数帯域幅とは、互いに独立に設定するようにす
るとよい場合がある。即ち、スライシング周波数に関し
ては以下の観点で設定する。αで励起された血流のス
ピンをαで励起するためには速い速度の血流はα
αまでの移動距離が長くなるので、αでは正しくそ
の移動場所を励起する必要がある。そこで、速度の速い
血流に対しては(f2−f1)を大きく、遅い血流に対して
は(f2−f1)を小さくすることが必要となる。
一方、周波数帯域幅(スライス幅)Δfに関しては以
下の観点で設定する。着目血流において、その最大速度
をVmax,最小速度をVminとし、その差分ΔVを考える。
静脈では、心相周期の収縮期と拡張期との流速差ΔVは
小さい。一方、動脈では、流速差分ΔVは極めて大き
い。そこで、動脈抽出か静脈抽出かでΔVが異なり、そ
れぞれの抽出対象によって別々にΔfを設定することが
望ましい。
更に、第1励起高周波パルスと第2励起高周波パルス
とで、スライシング周波数帯域が空間的に一切重ならな
いように構成してもよい。これは、重なった部分がある
と、血管以外の部位が励起されて撮像されてしまうため
である。
更に、第1図の実施例では、α1の後にα3
を加えるようにしたがこれはいわゆるマルチエコー法を
利用したものであり、αとαとだけ1個のエコー
のみを得るようにしてもよい。但し、流速の異なる血流
がつかまえにくいとの問題はある。
尚、動脈検出例としたが、静脈のみの検出にも適用で
きることは言うまでもない。
〔発明の効果〕
本発明によれば、シーケンサ7によるパルスシーケン
スの制御によって、所望の血管系のみを3次元画像とし
て描画できる効果があり、特に動脈系の瘤,狭窄,閉塞
などを、静脈系に邪魔されることなく観察でき、診断の
精度向上に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の特徴とする3次元血管撮像パルスシー
ケンスの一実施例を示すタイムチャート、第2図は核磁
気共鳴イメージング装置の全体構成を示すブロック図、
第3図は第1図の3次元血管撮像パルスシーケンスによ
る励起領域と血管系の関係を示す図、第4図は原子核ス
ピンの挙動の説明図、第5図はスピンエコー法で用いる
パルスシーケンスのタイミングチャート、第6図及び第
7図はスピンが移動したときに傾斜磁場から受ける影響
の説明図、第8図は位相感応型シーケンスの動作説明
図、第9図は位相不感型シーケンスの動作説明図、第10
図は位相不感画像と位相感応画像との差分から血管像を
得る処理の説明図、第11図は従来の3次元血管撮像パル
スシーケンスのタイムチャート、第12図は3次元画像の
2次元への投影の説明図、第13図は本発明の特徴とする
3次元血管撮像パルスシーケンスの別の実施例を示すタ
イムチャートである。 1……被検体、2……磁場発生装置、3……磁場勾配発
生系、4……送信系、5……受信系、6……信号処理
系、7……シーケンサ、8……CPU、9……傾斜磁場コ
イル、10……傾斜磁場電源、14a……送信側の高周波コ
イル、14b……受信側の高周波コイル。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−186639(JP,A) 特開 平2−149251(JP,A) 特開 平1−166750(JP,A) 特開 昭63−111845(JP,A) 特開 平2−63437(JP,A) 特開 平4−129528(JP,A) 特開 平4−156825(JP,A) 特開 平3−106339(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A61B 5/055

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】被検体に静磁場を与えて被検体内の原子核
    スピンに才差運動を発生させる静磁場発生手段と、上記
    静磁場にその強度が空間的に変化する傾斜磁場を重畳し
    て上記才差運動の回転周波数に空間的に変化を与える傾
    斜磁場発生手段と、上記才差運動している原子核スピン
    を励起して高エネルギー状態へ励起するための高周波数
    磁場を発生する高周波磁場発生手段と、上記傾斜磁場及
    び高周波磁場の被検体への印加がパルス的に行われるよ
    うに制御し、これにより被検体からエコー信号を発生す
    るように制御するシーケンスを持つシーケンサと、上記
    エコー信号を受信する受信系と、該受信系で得たエコー
    信号の信号処理を行って被検体の構造を示す画像を再構
    成する信号処理手段と、この処理結果を表示する表示手
    段と、を備えたことを磁気共鳴イメージング装置におい
    て、上記シーケンスは、上記被検体内の血流の存在する
    部位の内、血液の流れ方向によって指定した血管系の撮
    像領域の上流の予備励起領域を、第1励起高周波パルス
    で励起し、上記撮像領域にこの励起した血流が移動して
    きた時に該血流を再び励起可能なように、上記撮像領域
    を第2励起高周波パルスで励起し、両者の励起を受けた
    血管内血流のエコー信号を発生可能にし、次いで撮像領
    域を血流の流れ方向に移動してエコー信号を発生可能に
    し、上記信号処理手段は、前記エコー信号から3次元の
    血流画像を再構成することを特徴とする磁気共鳴イメー
    ジング装置。
  2. 【請求項2】被検体中の空間に静磁場を発生する静磁場
    発生手段と、被検体に傾斜磁場を印加する傾斜磁場発生
    手段と、被検体を構成する原子の原子核を励起するため
    の高周波パルスを照射する高周波パルス発生手段と、励
    起により発生した核磁気共鳴信号を検出する信号検出手
    段と、核磁気共鳴信号から画像を再構成する再構成手段
    と、再構成された画像を表示する表示手段と、前記傾斜
    磁場及び高周波パルスを所定のシーケンスで印加させる
    制御手段とを有する磁気共鳴イメージング装置におい
    て、 前記制御手段は、血流を含む撮像領域の上流の領域を励
    起し、この上流の励起に基づいて撮像領域のエコー信号
    を血流方向に順次取得し、3次元の血流画像を得ること
    を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
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