JP3098172U - 医薬用錠剤の成形金型 - Google Patents

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Abstract

【課題】医薬用錠剤の成形金型に関し、錆び、異物混入、破損の恐れが少ない杵金型を提供する。
【解決手段】杵1及び2の先端面は、錠剤原料と直かに接触するので、錆びず汚れないことが必要である。杵1及び2の芯材として、コバルト基合金、或いはニッケル基合金の肉盛溶接技術を利用して長尺の杵金型を製作する。
【選択図】  図1

Description

【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は、医薬用錠剤の成形金型に関連するものである。
【0002】
【従来の技術】
医薬用錠剤を成型加工する金型に対しては、強度、硬度、靭性、耐摩耗性などの機械的性能の他に、医薬用として特に衛生上の観点から異物混入防止が不可欠であり、錆びず汚れないこと、洗浄薬品に対する耐食性、更には錠剤からの離型性などの化学的、物理的性能が要求される。
従来は、これらの要求性能を満たす材料として高価なコバルト基合金、或いはニッケル基合金が用いられ、通常、原材料である粉体材料を焼結し、係る後、所望の形状に機械加工などで仕上げている。
【0003】
しかしながら、長さ方向に渡って全体を均質に焼結することは非常に困難であり、且つ多大な加工時間を費やす。その結果、更に高価なものになる。これらの問題を解決するために、杵部材の先端部のみに前記記載の焼結体をロウ付け、或いは摩擦圧接によって接合させた後、加工する製作方法が用いられているが、これは接合界面で破断するなどの重大な欠陥を生じる恐れがある。また、前記同様、焼結体の均質性の問題から、長尺のものを得ることが難しいなどの問題もある。
【0004】
【考案が解決しようとする課題】
本考案は、これらの問題を解決した医薬用錠剤の成形金型を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本考案者は、鋭意検討を重ねた結果、本考案を完成した。
すなわち、本考案は、次の通りである。
(1)医薬用錠剤を成形するための打錠機用金型において、杵の部材の芯材外周と先端面を超硬材料で肉盛溶接した後、所望の形状に加工することを特徴とする医薬用錠剤の成形金型。
(2)前記(1)記載の芯材が合金工具鋼鋼材、或いは高速度工具鋼鋼材で、超硬材料がコバルト基合金、或いはニッケル基合金であることを特徴とする請求項1記載の医薬用錠剤の成形金型。
【0006】
【考案の実施の形態】
以下、本考案の特に好ましい態様を中心に詳細を説明する。
通常、医薬用錠剤の打錠機は、図1の(1)に示すように上部の杵と呼ばれる部材1と下部の杵と呼ばれる部材2、そして臼と呼ばれる部材3から構成され、杵の全長は約100mmから200mm位である。成型加工は、臼3に錠剤原料を投入した後、杵1が下降することで錠剤として成形され、最後に杵2で錠剤を押し上げ、取り出す。効率良い生産を行うために、このような金型が幾つか円盤状に配置され、連続的に生産される仕組みになっている。ここで、杵1及び杵2は、それぞれ先端面が錠剤原料と直接的に接するのみならず、側面方向は臼3、或いは加工中に付着した錠剤原料に間接的に接する。錠剤原料は成型される過程で杵1及び杵2の先端面および側面、さらに臼3の側面など広い範囲で成形金型と接触する可能性があるが、それらの部分には、錆びず汚れないこと、洗浄薬品に対する耐食性、更には錠剤からの離型性などの化学的、物理的性能が要求される。
【0007】
従って、前記した医薬用としての要求性能、特に衛生上の観点からの異物の混入が少ないことを満足するためには、出来るだけ、その要求性能を満たす材料部分が長いほうが好ましく、少なくとも10mm以上の長さを有していることが好ましい。
【0008】
以下、円柱形状の杵の場合を例に、本願発明を図1の(2)に示す製作工程により説明する。
本考案において、先ず芯材4を準備する。通常、杵1及び杵2は、装置に固定する部分の径が大きいため、予め、最終形状に近い前加工を施していたほうが好ましい。芯材の材質としては、強度、硬度、靭性、耐摩耗性等の機械的性質に優れた鋼材を用いる事が好ましく、具体的には合金工具鋼鋼材、或いは高速度工具鋼鋼材である。これらの鋼材は、硬さがロックウェルのCスケールで50以上と優れた性質を有している。
【0009】
次に、この芯材に、前記した医薬用としての要求性能を満足する材料を用いて肉盛溶接5及び5′を行う。肉盛溶接方法は、TIG溶接、被覆アーク溶接などの通常、用いられる方法で構わない。肉盛溶接に用いられる溶加棒の材料は、コバルト基合金、ニッケル基合金、鉄基合金、タングステンカーバイト系合金等が好ましく、その中で更に好ましいものは、タングステン、クロム等の合金元素を含有し、コバルト基合金、或いはニッケル基合金である。より具体的な例としては、コバルト基合金では商標名でステライト、又は、ニッケル基合金では商標名でモネル系合金、ハステロイ合金、インコネル合金と呼ばれる合金などが好ましい。
【0010】
肉盛溶接は、芯材の円周方向、或いは、軸方向に沿って実施する。また、円周方向の肉盛溶接5と先端面の肉盛溶接5′のいずれを先に行っても構わない。
係る後、要求された図面形状に従い、最終加工が行われる。最終的な肉盛溶接部分の厚さは、前記した医薬用としての要求性能を満足するためには、少なくとも0.5mm以上有することが好ましい。
【0011】
【考案の効果】
本考案の効果を従来の技術として示した図2に従って説明する。
従来の技術は、前記したように先ず焼結体6を製作し、次に、その焼結体6を母材7にロウ付け、或いは摩擦接合などにより接合させる。この場合、焼結体6の長尺ものを作る事が甚だ困難であること、また接合界面境界が異種金属間の接合で成り立っていること、更には、接合界面が軸に対して垂直であるために、微小な破断が生じた時に、連続的な破断が生じ易く、最終的は破壊に繋がる恐れがあること等の問題がある。
【0012】
この従来技術に対して本考案は、任意の長尺ものが製作できること、接合境界が一方向でない事、更には、先端部の全てが異種材料間の接合ではなく、一部が同種材料間の接合で構成されている点が異なる。
その結果、医薬用錠剤の成型加工で、錆び、異物等の混入の恐れがある個所全てを性能の優れた材料で被覆した長尺杵の製作が容易であること、また、その被覆された材料の接合境界面が破断を呈し難い形状を有しているなどの効果がある。
従って、これらの事は、衛生的安全を第1とする医薬用錠剤の成型加工に大きく寄与するものと考える。
【図面の簡単な説明】
【図1】(1)は医薬用錠剤の成形金型概念図、(2)は本考案における製作工程。
【図2】比較としての従来技術。
【符号の説明】
1 :上部の杵
2 :下部の杵
3 :臼
4 :芯材
5 :周方向肉盛溶接
5´:先端面肉盛溶接
6 :焼結体
7 :母材

Claims (2)

  1. 医薬用錠剤を成形するための打錠機用金型において、杵の部材の芯材外周と先端面を超硬材料で肉盛溶接した後、所望の形状に加工することを特徴とする医薬用錠剤の成形金型。
  2. 請求項1記載の芯材が合金工具鋼鋼材、或いは高速度工具鋼鋼材で、超硬材料がコバルト基合金、或いはニッケル基合金であることを特徴とする請求項1記載の医薬用錠剤の成形金型。
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