JP3096011B2 - 透明性生分解性樹脂組成物 - Google Patents

透明性生分解性樹脂組成物

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JP3096011B2 JP09143187A JP14318797A JP3096011B2 JP 3096011 B2 JP3096011 B2 JP 3096011B2 JP 09143187 A JP09143187 A JP 09143187A JP 14318797 A JP14318797 A JP 14318797A JP 3096011 B2 JP3096011 B2 JP 3096011B2
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彰一 樋口
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は透明性を有し、自然
環境下で分解する樹脂組成物に関する。さらに詳しく
は、例えば包装材料や医療用材料としてフィルム状で用
いることができるものである。
【0002】
【従来の技術】近年、プラスチックは膨大な量が使用さ
れているが、その廃棄物による埋立地の不足、海洋生物
の生活環境の破壊、環境汚染等の問題を引き起こしてい
る。従来、包装用などに使用される汎用樹脂としては、
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩
化ビニル、ポリエチレンテレフタレート等が使用されて
おり、これらの樹脂の処分方法として焼却、埋立が行わ
れている。
【0003】しかし、これらの処分方法にも問題があ
り、焼却では、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリス
チレン等の樹脂は、燃焼カロリーが高いために焼却炉を
痛めやすい。また、ポリ塩化ビニルは、燃焼カロリーは
低いものの焼却時に有毒ガスを発生することが知られて
いる。埋立においてもこれらの樹脂の安定性のために分
解することなく残留し、埋立地の不足化の原因のひとつ
になっている。
【0004】これらの問題を生じない分解性のポリマー
の研究が最近盛んに行われており、このポリマーは一般
のプラスチックと異なり、自然環境で容易に分解し最終
的には水と二酸化炭素になるものとして、ポリ乳酸およ
びそのコポリマーがある。このポリ乳酸は、動物の体内
で数ヶ月から1年のうちに100%生分解する。また土
壌や海水中におかれた場合、湿った環境下では数週間で
分解を始め、約1年で完全に分解する。また燃焼カロリ
ーが低いため、焼却した場合でも焼却炉を傷めることな
く、さらに燃焼時に有毒ガスを発生しない。原料となる
乳酸はコーンスターチやコーンシロップといった安価な
植物資源を利用できるため、枯渇する石油資源から脱却
できる。このような点からもポリ乳酸は汎用樹脂の代替
として期待されている。
【0005】しかし、ポリ乳酸は柔軟性がないために、
強くて硬いポリマー物性が要求される生医学の徐放性材
料、ボーンプレート、ねじ等には利用されているが、ポ
リエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等が使用
されるフィルム等の用途には適していなかった。
【0006】例えば、特開平4−335060号公報に
は、ポリ乳酸に可塑剤を添加した組成物が開示されてい
る。その中で具体的な例としてアジピン酸ジイソブチ
ル、セバシン酸ジオクチル等が可塑剤として挙げられて
いるが、その可塑効果は小さく、一般のフィルムに使用
するには柔軟性が低く、実用面で不十分である。さら
に、これらの可塑剤を用いると、成形直後または経時的
に樹脂組成物の透明性は失われ、フィルムとして使用す
ることができない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようと
する課題は、フィルム、シート、包装材料に有用な、柔
軟性、成形直後および経時的にも透明性にも優れた、生
分解性の樹脂組成物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、以上の問
題点を解決するために鋭意検討した結果、ポリ乳酸系樹
脂(A)に特定の化学構造の可塑剤、すなわち10.6
〜11.6の溶解度パラメータ値(SP値)を有し下記
一般式で表される可塑剤(B)を重量比率(A/B)1
00/10〜100/80の範囲で混合することにより
透明性を失うことなく、フィルムとしての使用に不可欠
な柔軟性を十分に発現することを見出した。
【化2】 [式中、R1とR4は炭素数1〜4のアルキル基;R2
は炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖のアルキレン基;R
3は炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖のアルキレン基、
フェニレン基またはシクロヘキシル基を示す。]
【0009】
【発明実施の形態】本発明のポリ乳酸系樹脂(A)と
は、ポリL−乳酸ホモポリマー、ポリD−乳酸ホモポリ
マー、ポリL/D−乳酸共重合物であり、L体とD体の
比(L/D)は特に限定されない。分子量は特に限定さ
れないが、フィルム形成性を有するだけの高分子量は必
要である。
【0010】これらのポリ乳酸系樹脂は、乳酸から直接
脱水縮合することによって合成した物でも良いし、ラク
タイド、またはグリコライドやε−カプロラクトン、ま
たはそれらの混合物を開環重合することによって得られ
たものでも良い。また、本発明のポリ乳酸系樹脂(A)
は、乳酸だけのホモポリマーだけでなく、物性を損なわ
ない範囲で、乳酸と共重合可能なヒドロキシカルボン
酸、例えば、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−
ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキ
シ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸等との共重合体で
あってもよい。
【0011】添加する本発明の可塑剤(B)は10.6
〜11.6、好ましくは10.7〜11.5のSP値を
有することが必要である。SP値がこの範囲外になると
ポリ乳酸系樹脂(A)に添加した場合、透明性が失われ
たり、樹脂が経時的に白化(不透明化)してしまう。な
お、本発明のSP値とはFedors法[Polym.
Eng.Sci.14(2)152,(1974)]に
よって算出される値である。
【0012】また本発明の可塑剤(B)として、さら
に、下記一般式で表されるエステル化合物(B1)が好
ましい。
【0013】
【0014】[式中、R1とR4は炭素数1〜4のアル
キル基;R2は炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖のアル
キレン基;R3は炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖のア
ルキレン基、フェニレン基またはシクロヘキシル基を示
す。]
【0015】式中、R1とR4は炭素数1〜4のアルキ
ル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピ
ル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブ
チル基、tert−ブチル基等である。R2は、炭素数
1から6の直鎖または分岐鎖のアルキレン基(メチレン
基、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基、
n−ペンチレン基、n−ヘキシレン基、iso−プロピ
レン基、iso−ブチレン基、2−メチルプロピレン
基、iso−ペンチレン基、2−メチルブチレン基、
1,2ジメチルプロピレン基、1,3−ジメチルプロピ
レン基、1,1−ジメチルプロピレン基、2,2−ジメ
チルプロピレン基、iso−ヘキシレン基、2−メチル
ペンチレン基、3−メチルペンチレン基等)である。R
3は、R2で例示した炭素数1〜6のアルキレン基、お
よびフェニレン基、シクロヘキシレン基である。これら
のうち好ましいのはフェニレン基である。
【0016】本発明の可塑剤(B)の具体例としては、
例えばメチルフタリルメチルグリコレート(R1、R4
メチル基、R2がメチレン基、R3がフェニレン基)、エ
チルフタリルエチルグリコレート(R1、R4がエチル
基、R2がメチレン基、R3がフェニレン基)等が挙げら
れる。
【0017】添加する可塑剤(B)は、ポリ乳酸系樹脂
(A)に対して(A)/(B)=100/10〜100
/80の重量比で含まれる。好ましくは(A)/(B)
=100/15〜100/60の重量比であり、さらに
好ましくは(A)/(B)=100/20〜100/4
0の重量比である。(B)の量が多すぎると透明性が失
われ、少なすぎると可塑効果が十分でない。
【0018】混合方法は任意でよく、溶融状態や溶液状
態で機械的撹拌等で混合してもよく、粉末状体や粒子状
で混合して溶融または溶解しても良い。
【0019】また、本発明の樹脂組成物は、可塑剤の他
に安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、顔料、
各種無機粒子、撥水剤、親水剤、離型剤などの他の添加
剤を含んでいてもかまわない。
【0020】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに説明する
が、本発明はこれに限定されない。以下において、
「部」は重量部を表す。
【0021】実施例1および比較例1〜3 ポリ乳酸(島津製作所製「ラクティ」)100部を18
0℃にて溶融し、各種可塑剤を表1の比率で5分間混合
した。その後射出成形を行い、62×12×2.5mm
の試験片を得た。なお、表1中の添加量はポリ乳酸10
0部に対しての量である。
【0022】
【表1】
【0023】各試験片の可塑効果の評価は、以下の4段
階で評価した。すなわち20℃でも可塑効果が著しくみ
られたもの◎、20℃でも相当の可塑効果がみられたも
の○、30℃以上で可塑効果がみられたもの△、30℃
以上でも可塑効果がなかったもの×とした。
【0024】透明性は目視で以下の3段階で評価した。
すなわち可塑剤未添加のポリ乳酸と比較して透明性に差
がみられないもの○、成形直後は透明性があるが、1週
間後に白化したもの△、成形直後から白化したもの×と
した。
【0025】得られた各樹脂組成物の可塑性、透明性の
結果を表2に示す。表2にみるように本発明の樹脂組成
物の可塑性、透明性は、共に比較例よりも優れている。
【0026】
【表2】
【0027】
【発明の効果】本発明によって、良好な柔軟性と透明性
を持ったポリ乳酸を主成分とする透明性生分解性樹脂組
成物が得られる。本発明組成物が好適である成型品の例
としては、繊維、編物、不織布、網、ロープ、フィル
ム、シート、板、棒、各種容器、チューブ、各種部品、
その他各種の成型品があげられる。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリ乳酸系樹脂(A)および10.6〜
    11.6の溶解度パラメータ値(SP値)を有し下記一
    般式で表される可塑剤(B)を(A)/(B)=100
    /10〜100/80の重量比で含むことを特徴とする
    生分解性樹脂組成物。 【化1】 [式中、R1とR4は炭素数1〜4のアルキル基;R2
    は炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖のアルキレン基;R
    3は炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖のアルキレン基、
    フェニレン基またはシクロヘキシル基を示す。]
  2. 【請求項2】 該可塑剤(B)がアルキルフタリルアル
    キルグリコレートである請求項1 記載の生分解性樹脂
    組成物。
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