JP3094921B2 - クロマトグラフ用データ処理装置 - Google Patents

クロマトグラフ用データ処理装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ガスクロマトグラ
フ又は液体クロマトグラフの分析により得られたクロマ
トグラムを解析処理したデータを所定の同定テーブルと
照合し成分同定を行なうクロマトグラフ用データ処理装
置に関する。
【0002】
【従来の技術】クロマトグラフ分析において未知試料に
含まれる各成分を同定する定性分析を行なう際には、通
常図5に示すような手順で処理が進められる。まず、ク
ロマトグラフによる分析が行なわれ、その結果、横軸を
時間、縦軸を分離カラムから溶出した成分の濃度(相対
強度)で表わしたクロマトグラムが求まる(ステップS
11)。そのクロマトグラムに対してデータ処理を行な
うことによりクロマトグラムに現われるピークを検出
し、そのピーク時刻やピーク面積等の解析データを得る
(ステップS12)。次いで、解析データに含まれる各
ピーク時刻を予め作成しておいた同定テーブルと照合す
ることにより各ピークに対応する成分を同定する(ステ
ップS13)。同定テーブルは、通常、既知の物質を分
析した結果に基づいて作成され、成分、その成分に対す
る保持時間、ピーク形状(ピーク面積やピーク高さ)等
の情報が含まれている。したがってステップS13で
は、各ピーク時刻が同定テーブル内のどの保持時間と一
致するのかを調べることにより各成分を同定することが
できる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、参照し
た同定テーブルが適切なものでない場合には、数多くの
未同定成分がクロマトグラム上に存在したり或いは一致
するピーク時刻が存在しない保持時間を有する成分が同
定テーブル上で数多く残り、定性異常となる。このよう
な場合にはステップS14からS16へと進み、測定者
自らが同定テーブルを他のものに入れ替えたり修正した
りした後に、再度ピーク同定処理を行なう(ステップS
13)。そして、同定(定性)が正常に行なわれたと判
断された時点で、同定された成分の名称等を定性結果と
して出力する(ステップS15)。
【0004】従来のデータ処理装置は上記手順により成
分同定の処理を行なっているため、試料に合った適切な
同定テーブルが設定されるまでステップS13、S1
4、S16の各処理を繰り返し実行しなければならなか
った。特に、例えばガソリンのような物質は数百種類以
上もの多数の成分を含んでいる上に種類毎に(例えば供
給メーカ毎に)その成分が相違しているため、適切な同
定テーブルを選択することが難しい。このため、測定者
自らが同定テーブルを繰り返し設定し直し再同定を行な
う作業は大変面倒で時間のかかるものであった。
【0005】本発明はこのような課題を解決するために
成されたものであり、その目的とするところは、定性分
析のためにピーク同定処理を行なう際に、試料に応じた
適切な同定テーブルを自動的に選択することにより未同
定成分をなくすか又は極めて少なくすることができ、再
同定処理の回数や手間を大幅に軽減し効率的な分析を行
なうことができるクロマトグラフ用データ処理装置を提
供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に成された本発明は、クロマトグラフ分析により得られ
たクロマトグラムを解析処理したデータを所定の同定テ
ーブルと照合し成分同定を行なうクロマトグラフ用デー
タ処理装置において、 a)特定成分の含有の有無に応じてそれぞれ相違する内容
の同定テーブルを格納しておく記憶手段と、 b)クロマトグラム中の前記特定成分に対応するピークを
同定し該特定成分の含有の有無を調べる特定成分同定手
段と、 c)該特定成分同定手段による同定結果に応じて前記記憶
手段から適当な同定テーブルを選択する選択手段と、 d)選択された同定テーブルを参照して前記クロマトグラ
ムの各ピークに対応する成分を同定する同定手段と、 を備えることを特徴としている。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明に係るデータ処理装置で
は、予め、分析対象の試料の種別に応じて単数又は複数
の特定成分が選ばれ、その特定成分を含有しているか否
かに応じてそれぞれ異なる内容の同定テーブルが作成さ
れて記憶手段に格納される。ここで、特定成分として
は、分析対象の種別中の各試料をそれぞれ特徴付けるよ
うな成分が選ばれる。つまり、いずれの試料にも同程度
に共通に含まれる成分ではなく、試料毎に含有量が比較
的大きく相違する(又は全く含まれない)ような成分が
適当である。同定テーブルは、その特定成分の含有の有
無により区別される各試料(1種類とは限らない)毎に
その試料に含まれる全成分が同定できるように作成され
る。
【0008】試料のクロマトグラフ分析の際には、まず
特定成分同定手段が、クロマトグラムのピークを特定成
分用の同定テーブルと照合することによりその試料中に
特定成分が含まれるか否かを調べる。選択手段は、この
特定成分の含有結果に応じて記憶手段に格納されている
複数の同定テーブルの中から適当な同定テーブルを選択
する。同定手段は、クロマトグラムの各ピークを選択さ
れた同定テーブルの値と照合することにより各ピークに
対応する成分を同定する。
【0009】なお、上記データ処理装置において、その
含有量の多少をもって各試料を特徴付ける特定成分を用
いるときには、クロマトグラムにて少量の含有を示すピ
ークが存在している場合であっても、特定成分同定手段
はその特定成分が含まれていないと看做すようにすると
よい。
【0010】
【発明の効果】本発明に係るクロマトグラフ用データ処
理装置によれば、予め記憶させておいた複数の同定テー
ブルの中から最適な同定テーブルが自動的に選択され、
その同定テーブルを用いてクロマトグラムのピークが同
定される。このため、ピーク同定の確実性が向上し、未
同定成分がなくなるか又は未同定成分が残ったとしても
その数は極めて少なくなる。したがって、同定異常が生
じ再同定処理を繰り返すという手間や時間を大幅に削減
でき、定性分析を効率的に行なうことができる。
【0011】
【実施例】本発明に係るクロマトグラフ用データ処理装
置の一実施例を図1〜図4を参照して説明する。図1
は、本実施例のデータ処理装置を用いたガスクロマトグ
ラフ分析装置の全体構成図である。ガスクロマトグラフ
分析装置10は、移動相であるキャリアガスの供給源1
1、試料気化室12、試料気化室12へ自動的に試料を
注入するオートインジェクタ13、キャピラリカラム1
4、キャピラリカラム14の出口に設けられた検出器1
5、検出器15からの検出信号Sdを解析処理するデー
タ処理部16、処理結果を出力するプリンタ17等から
構成されている。一般にデータ処理部16としてはパー
ソナルコンピュータが使用され、パーソナルコンピュー
タに種々の解析処理用ソフトウェアを組み込んでこれを
実行することにより後述のようなデータ処理が行なわれ
る。
【0012】クロマトグラフ分析を行なう際は、まず、
所定流量のキャリアガスをキャリアガス供給源11から
試料気化室12を介してキャピラリカラム14へ流して
おく。オートインジェクタ13から試料気化室12へ液
体試料を瞬間的に注入すると、試料気化室12内で気化
した試料はキャリアガスに乗ってキャピラリカラム14
に運ばれる。試料中の各成分はキャピラリカラム14を
通過する間に時間的に分離され、それぞれの保持時間を
もってキャピラリカラム14から溶出する。検出器15
は溶出した各成分の濃度を順次検出し、検出信号Sdを
データ処理部16へ送る。データ処理部16は検出信号
Sdを基にクロマトグラムを作成した後に、そのクロマ
トグラムに対し後述の如き解析処理を行なうことにより
試料の定性分析及び定量分析を実行する。
【0013】図2は本発明の特徴であるデータ処理部1
6の要部の構成を機能的に示した図である。データ処理
部16は、検出信号Sdを基にクロマトグラムを作成す
るクロマトグラム作成部161、クロマトグラムに対し
所定の基準でピークを検出し各ピークに関する解析デー
タScを得るピーク検出部162、解析データScを所
定の同定テーブルと照合して各ピークに対応する成分を
同定するピーク同定部163、後述のような複数の同定
テーブルが予め格納されている記憶部164、及び、ピ
ーク同定に用いられる同定テーブルを選択するテーブル
選択部165から構成されている。
【0014】1つの同定テーブルは図3に示すような構
成となっており、試料に含まれる成分に対する保持時間
及びその検出窓幅が格納されている。図3の例では、例
えば、成分aの保持時間は10±1分つまり9〜11分
の範囲である。1つの同定テーブルに含むことのできる
成分の数は任意であるが、通常、ガソリン等の成分分析
では数百種類程度の成分を調べる必要があるから、同定
テーブルとしては千種類程度の成分を含むことができる
ような構成としておくことが好ましい。
【0015】データ処理部16においては、分析対象の
試料の種別(類似の組成を有する試料群)に応じて予め
複数の特定成分が選定される。例えば分析対象のひとつ
であるガソリンには、主たる成分は同一であって他の幾
つかの成分の含有量が大きく相違するような多数のガソ
リンが存在する。そこで、試料毎に含有量が比較的大き
く相違する成分を特定成分として適当に選ぶことによ
り、その特定成分の含有の有無の組合せによりいずれの
ガソリンであるのか(例えばいずれのメーカのどのガソ
リンであるのか)を特定することが可能になる。具体的
には、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の添加物
を特定成分とすることができる。
【0016】更に、上記複数の特定成分の含有の有無の
組合せにより特定されるガソリンに含まれる全ての成分
を含む同定テーブルを作成する。例えば、いまA、B、
Cの3種類の特定成分が定められているとき、その3種
類の特定成分の含有の有無には2=8通りの組合せが
存在する。これらの特定成分は試料の相違を特徴付ける
成分であるから、8通りの組合せ毎にその試料が含有す
る(又は含有すると想定される)成分から構成されるそ
れぞれ相違する同定テーブルが作成される。ここで、
A、B、Cの各特定成分を含むことを”1”含まないこ
とを”0”と表わすとき、特定成分の含有パターン
〔A、B、C〕に対応する同定テーブルを次のように呼
ぶこととする。 〔A、B、C〕=〔0、0、0〕 : 第1同定テーブル(ID1) 〔A、B、C〕=〔0、0、1〕 : 第2同定テーブル(ID2) 〔A、B、C〕=〔0、1、0〕 : 第3同定テーブル(ID3) 〔A、B、C〕=〔0、1、1〕 : 第4同定テーブル(ID4) 〔A、B、C〕=〔1、0、0〕 : 第5同定テーブル(ID5) 〔A、B、C〕=〔1、0、1〕 : 第6同定テーブル(ID6) 〔A、B、C〕=〔1、1、0〕 : 第7同定テーブル(ID7) 〔A、B、C〕=〔1、1、1〕 : 第8同定テーブル(ID8)
【0017】このように作成された第1〜第8の8種類
の同定テーブルID1〜ID8が予め記憶部164に格
納される。またこれとは別に、上記特定成分A、B、C
をそれぞれ同定するための基準同定テーブルIDSが作
成され記憶部164に格納される。基準同定テーブルI
DSは、特定成分とそれに対する保持時間及び検出窓幅
のみから構成されている。
【0018】上述のように記憶部164に予め複数の同
定テーブルが用意されているデータ処理部16におい
て、実際のクロマトグラフ分析の際の処理動作を図4の
フローチャートに沿って以下に説明する。まず分析対象
の試料のクロマトグラフ分析が実行されると、クロマト
グラム作成部161においてクロマトグラムが作成され
る(ステップS1)。ピーク検出部162はクロマトグ
ラムを構成するデータを受け、クロマトグラムに現われ
ているピークを検出する(ステップS2)。このピーク
検出の方法としては、例えばクロマトグラムカーブの傾
斜が所定の開始傾斜値以上となった時点でピーク開始と
判断し、その後傾斜が零となった時点を経過して傾斜値
が負となり、その絶対値が所定の終了傾斜値以下となっ
た時点でピーク終了と判定する方法とすることができ
る。この場合、ピーク内で傾斜が零となった時点をピー
クトップとする。ピーク検出部162は、各ピークトッ
プの現われる時刻(ピーク時刻)、ピーク高さ、ピーク
面積等を求め、これらの解析データScをピーク同定部
163へ与える。
【0019】ピーク同定部163は、まず解析データS
cに含まれる各ピークのピーク時刻を記憶部164に記
憶している基準同定テーブルIDSと照合し、3種類の
特定成分A、B、Cの成分同定を行なう(ステップS
3)。すなわち、入力された各ピーク時刻が基準同定テ
ーブルIDS内の保持時間と一致するか否かを調べ、3
種の定性成分の含有の有無を判断する。この結果、その
試料における特定成分の含有パターン〔A、B、C〕が
得られる(ステップS4)。
【0020】なお、上記ステップS3の特定成分の同定
の際には、成分の含有の有無を判断するための閾値を上
げ、その特定成分を微量に含有しているときでも”含有
していない”と判断するようにしてもよい。具体的に
は、ピークが存在すると認識するピーク高さ又はピーク
面積の値を通常(後述の成分全体の同定時)よりも大き
く設定しておき、小さなピークは同定されないようにす
ることができる。このように特定成分の同定条件を変更
するように構成しておけば、特定成分を予め選ぶ際にそ
の選択の幅を広げることができると共に、不純物が混入
する等のノイズ要因を排除することができるので特定成
分の同定ミスを少なくすることができる。
【0021】上述のように得られた特定成分の含有パタ
ーン〔A、B、C〕はテーブル選択部165へ入力さ
れ、テーブル選択部165はその含有パターンに対応し
た第1〜第8のいずれかの同定テーブル(以下、選択さ
れた同定テーブルを「選択同定テーブルIDX」とい
う)を記憶部164から読み出す(ステップS5)。
【0022】次に、ピーク同定部163は、今度は、入
力された解析データScに含まれる各ピークのピーク時
刻を選択同定テーブルIDXと照合し、各ピーク時刻が
その選択同定テーブルIDX内のどの保持時間と一致す
るのかを調べる。これにより試料に含まれる全ての成分
が同定される(ステップS6)。そして、同定された成
分の名称等が定性結果としてプリンタ17から出力され
る(ステップS7)。
【0023】なお、前述のように同定テーブル内の保持
時間は幅を持っているため、分析条件の変動や不純物の
混入等により解析データScのピーク時刻に多少の変動
があっても同定が可能なようになっている。しかしなが
ら、分析条件の大きな変動等があった場合、選択同定テ
ーブルIDXとの照合によっても同定できない未同定成
分が残ることがある。このような場合には、従来のよう
に同定テーブルを修正する等の方法により未同定成分の
同定を行なう。また、本出願人が既に提案している特開
平7−239326号公報に記載の定性処理装置を用い
るようにしてもよい。すなわち、ステップS6の同定処
理の後に未同定成分のピーク時刻等を選択同定テーブル
IDXと共にディスプレイの画面上に表示し、測定者が
この画面を見ながらマウス操作等により同定情報を与え
ることにより未同定成分を同定できるようにする。
【0024】ところで、上記実施例の説明では、ステッ
プS3の特定成分の同定処理を1回のみ実行し、その結
果得た特定成分の含有パターンに応じて同定テーブルを
選択するようにしていたが、最適な同定テーブルを選択
するために更に複雑な処理を行なうようにすることもで
きる。例えば、同一の同定テーブルに対し異なる特定成
分の含有パターンを複数対応させるようにしておく。具
体的には、第1〜第8の同定テーブルID1〜ID8に
対し、上記のようなA、B、Cの3種の特定成分の含有
パターン〔A、B、C〕の他に、A、B、Cとは異なる
D、E、Fの3種の特定成分の含有パターン〔D、E、
F〕をそれぞれ対応させておく。そして、A、B、Cと
いう3種の特定成分の同定処理を行なった後に、D、
E、Fの3種の特定成分の同定処理を行ない、この2回
の同定処理の結果が同一の同定パターンを示すときには
その同定テーブルを選択し、2回の同定処理の結果が相
違する同定パターンを示すときには特定成分の同定条件
を修正して再度特定成分の同定を行なうようにしてもよ
い。
【0025】なお、以上説明した実施例は一例であって
本発明の趣旨に沿って適宜変形や修正を行なえることは
明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るデータ処理装置の一実施例を備
えたガスクロマトグラフ分析装置の全体構成図。
【図2】 データ処理部の要部の機能的構成図。
【図3】 同定テーブルの構成を示す図。
【図4】 データ処理部の処理動作を示すフローチャー
ト。
【図5】 従来のクロマトグラフによる定性分析の処理
手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
16…データ処理部 161…クロマトグ
ラム作成部 162…ピーク検出部 163…ピーク同定
部 164…記憶部 165…テーブル選
択部

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 クロマトグラフ分析により得られたクロ
    マトグラムを解析処理したデータを所定の同定テーブル
    と照合し成分同定を行なうクロマトグラフ用データ処理
    装置において、 a)特定成分の含有の有無に応じてそれぞれ相違する内容
    の同定テーブルを格納しておく記憶手段と、 b)クロマトグラム中の前記特定成分に対応するピークを
    同定し該特定成分の含有の有無を調べる特定成分同定手
    段と、 c)該特定成分同定手段による同定結果に応じて前記記憶
    手段から適当な同定テーブルを選択する選択手段と、 d)選択された同定テーブルを参照して前記クロマトグラ
    ムの各ピークに対応する成分を同定する同定手段と、 を備えることを特徴とするクロマトグラフ用データ処理
    装置。
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