JP3093974B2 - 神経細胞用培養液、その製造方法及びこれを用いる神経細胞の培養方法 - Google Patents
神経細胞用培養液、その製造方法及びこれを用いる神経細胞の培養方法Info
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Description
用いるための培養液、当該培養液の製造方法、及びこれ
を用いる神経細胞の培養方法に関する。
くから幾多の検討がなされてきた。神経成長因子(NG
F)の発見は、神経細胞に特異的に働く因子のはじめて
の発見であり、神経生物学の分野に大きな影響を与え
た。神経細胞の培養に於いても、神経繊維の成長が誘導
できるようになり、より生体内に近い条件で培養できる
ようになった。
TF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、神経栄養因
子−3(NT−3)、神経栄養因子−4(NT−4)、
神経栄養因子−5(NT−5)、グリア細胞株由来神経
栄養因子(GDNF)と、次々に新しい神経成長因子が
発見されてきた。これらは培養神経細胞によって、その
効果や作用メカニズムが検討され、更には実用化されて
いる遺伝子工学の手法により、疾病治療のための医薬と
しての利用も検討されるまでになっている。
胞の培養系で調べてみると、単一物質の添加だけで各種
の神経細胞に対して著しい効果を示すとは言いにくく、
特定の細胞に対してのみ効果を示すという場合が多い。
は別の流れとして、ホルモン(インシュリン、サイロキ
シン、プロジェステロン等)、ビタミン、不飽和脂肪
酸、細胞成長因子(塩基性繊維芽細胞増殖因子等)など
が検討され続けてきており、これらの因子を種々組み合
わせた無血清培養液が報告されている〔ジャーナル・オ
ブ・ニューロサイエンス・メソッド(Journal of Neuro
science Methods, 23:75(1988)等〕。
リア細胞等)には効果的であるが、神経細胞に対しては
安定培養ができない場合や、神経細胞には効果があるも
のの、同時にグリア細胞の増殖が促進されてしまい、い
わゆるグリア細胞との混合培養系になってしまう場合な
ど、神経細胞に対する薬理作用を検討する場合には不適
切なものが多い。例えば、ボテンシュタイン(Bottenst
ein)らのN2添加物〔インシュリン(5μg /ml)、
トランスフェリン(100μg /ml)、プロジェステロ
ン(20nM)、プトレシン(100μM )、及び亜セレ
ン酸塩(30nM)〕〔プロスィーディング・オブ・ナシ
ョナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proceeding o
f National Academy of Science, U.S.A.),76:514(19
79)〕は、株化グリア細胞の培養には適しているが、初
代神経細胞の場合は安定した細胞の生存維持が図れな
い。また、ブリュワー(Brewer)らの処方の培養液〔ブ
レイン・リサーチ(Brain.Research), 65:494(1989)〕
も、中枢神経細胞に対して短期間の培養は可能である
が、長期間に渡って培養した場合、細胞機能を安定して
維持することができない。
いしは初代グリア細胞の培養上清を用いる方法が知られ
ている。しかし、株化グリア細胞の培養上清を用いた場
合は、一般的に、神経細胞に対しても作用するが、同時
にグリア細胞にも作用し増殖が促進される。つまり神経
細胞の生存に対する効果だけでなく、それ以上にグリア
細胞に対して効果を示す。グリア細胞増殖因子と呼称さ
れる因子は、これらの培養上清より精製されている〔ジ
ャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(Jour
nal of Biological Chemistry), 268:2857(1993)な
ど〕。
化グリア細胞であるアストロサイトーマの培養上清を濃
縮したものが神経細胞の培養に30〜50%の活性増加
効果を示すことが報告されている。また、神経芽細胞腫
の増殖を抑制することが示されている。これは株化グリ
ア細胞の培養上清を用いた場合の欠点であるグリア細胞
の増殖を抑えるため、培養上清を濃縮し一部の有効成分
をとりだしたものである。しかし神経細胞を安定に培養
するためには単一物質ではなく複数の成分による総合的
な作用が必要である。この濃縮物を用いないものに比べ
た活性増加効果が30%程度では、安定な神経細胞の培
養系を構成することはできない。
清を得るために、通常の無血清培養液ないしは血清が含
まれている培養液を用いる。しかし、通常の無血清培養
液を用いる培養上清の採取方法では、グリア細胞の生存
に対して充分な培養液とはならず、安定培養ができな
い。このため培養上清に含まれる神経細胞に作用する因
子群の量が少なく、神経細胞の培養に対して効果が低
い。また培養上清の採取には限度があり、数回程度で、
安定した効果を持つ培養上清の採取は難しくなる。血清
含有培養液を用いた場合には、安定した培養上清の採取
は行えるが、神経細胞を培養する際に、神経細胞よりも
共存するグリア細胞に対して増殖因子が作用し細胞増殖
が促進される。その結果、神経細胞の安定培養が障害さ
れる。
因子を加える方法が採られる。例えば、特開平3−66
700号公報には、ダルベッコ改変イーグル培地(以下
DMEMと略す)培養液にインシュリン(5μg /m
l)、トランスフェリン(1μg/ml)、ハイドロコーチ
ゾン(20nM)、及び3,3′,5−トリヨード−L−
チロニン(0.3nM)を添加する培養法が開示されてい
る。しかしこの培養上清を用いて神経細胞を培養しても
数日間の培養しか行えず安定した培養を行うことができ
ない。また、同じく神経突起伸展因子として明示されて
いるα2−マクログロブリンは、中枢神経の培養におい
ては安定培養の効果が低く、主要な役割を果たすもので
はなく補助的役割を果たすにすぎないものである。
は、ミクログリア細胞の産生する因子が、神経細胞の突
起伸展に効果があることが示されている。ミクログリア
細胞は、マクロファージ(貧食細胞)のような免疫系細
胞の機能を示すといわれ、組織が障害を受けたときに活
性化の度合いが高くなる。しかし、一般的に生体内で
は、アストログリア細胞を含むマクログリア細胞の比率
が高く、炎症などの場合を除き、主としてマクログリア
細胞が恒常性を維持していると考えられている。
養液群を中枢神経細胞の培養に用いた場合、その効果は
低く、神経細胞の安定した培養を行うことができない。
すなわち、神経薬理試験等を行った場合に於いて、期待
する充分な結果が得られない。従って本発明は、神経細
胞の培養におけるこのような現状に鑑みてなされたもの
で、神経細胞を長期間安定に培養できる培養液を提供す
ることを目的とするものである。
安定に培養するためには種々の栄養因子が必要であると
考え、これらの栄養因子に関して神経細胞の培養に与え
る効果を検討した。初代アストログリア細胞の培養上清
も栄養因子の一つとし検討したが、これらの栄養素は単
独の使用ではその効果が低い。特に、初代アストログリ
ア細胞の培養上清は、神経細胞の安定培養に対して、こ
れまで報告されて来た程の効果がない事が明らかになっ
た。そこで本発明者らは、栄養因子を複数を用いること
による複合効果、相乗効果の検討をすすめ、種々の培養
効果について鋭意研究を進めた結果、本発明を完成する
に至ったものである。
びトランスフェリンを添加した栄養培地中で初代アスト
ログリア細胞を培養して採取した培養上清に、(B)ア
ルブミンを配合したことを特徴とする神経細胞用培養液
を提供するものである。
動物血清を添加した培地中で培養、増殖させた後、イン
シュリン及びトランスフェリンを添加した栄養培地中で
培養し、その上清を採取し、得られた培養上清にアルブ
ミンを添加することを特徴とする上記の神経細胞用培養
液の製造方法を提供するものである。
液中で神経細胞を培養することを特徴とする神経細胞の
培養方法を提供するものである。
するには、まず動物の脳よりアストログリア細胞を採取
し、初代アストログリア細胞を増殖させて充分量の初代
アストログリア細胞を得る。動物の脳よりアストログリ
ア細胞を採取するには、動物の新生仔(1〜2日)の大
脳より採取するのがよい。ここでアストログリア細胞採
取用の動物としては、ラット、マウス、ウシ、ウマ、ブ
タ、サル、ウサギ、ニワトリ等が挙げられるが、ラット
又はマウスが好ましい。具体的には、新生仔の脳より大
脳を切り出し、脳膜を除いた後、トリプシン、ディスパ
ーゼ、コラゲナーゼ、パパイン等の酵素を用いて細胞を
分散させる。これらの中でも特にトリプシン0.05〜
0.35w/v%(以下、単に%で示す)を用いるのが
好ましい。この酵素に更に、デオキシリボヌクレアーゼ
0.01%(100〜500U/ml)や、エチレンジア
ミン−N,N,N′,N′−四酢酸(EDTA)0.0
1%を加える方法も効果的である。
殖は動物血清を添加した培地中で行うのが好ましい。こ
こで用いられる動物血清としては、ウシ血清が好まし
く、ウシ胎児血清、仔ウシ血清、新生仔ウシ血清が特に
好ましい。また、動物血清の添加量は5〜20%となる
量が好ましい。また、培地としては、動物細胞培養用の
栄養培地であれば特に制限されず、イーグルの最小必須
培地(以下MEMと略す)、ダルベッコ改変イーグル培
地(以下DMEMと略す)、DMEM/ハムのF−12
培地(以下、F−12と略す)、F−12、ハムのF−
10培地(以下F−10と略す)などの培地を用いるこ
とができる。DMEM/F−12混合培地は混合比を各
種変えたものが用いられるが、両培地の特徴を合わせ持
つ、60/40〜40/60(重量比)程度の範囲の混
合培地が特に好ましい。
細胞培養用のフラスコ、ディッシュ、プレート、もしく
はポリリジンコートを施したフラスコ、ディッシュ、プ
レートやマイクロキャリアーなどを用いて、コンフルエ
ントに(培養面全体に密に)なるまで培養し、増殖させ
る。培養面積は、新生仔1に対して10〜100cm2と
するのが好適である。そして、更に継代培養を行うが培
養面積は2〜10倍程度が適当である。同様にコンフル
エントになるまで培養する。このコンフルエントになっ
た細胞は主として1型アストログリア(又は1型アスト
ロサイト)に分類されるものである。1型アストログリ
アであることは免疫細胞化学染色を行うことにより確認
できる。この細胞は抗GFAP(グリア繊維性酸性蛋白
質)抗体で染色され、抗A2B5抗体(抗シアル酸含有
糖蛋白質抗体)で染色されない。
で培養液を除去し、リン酸塩緩衝液等で洗浄する。
を、インシュリン及びトランスフェリンを添加した栄養
培地中で培養し、その上清を採取する。ここで用いられ
る栄養培地としては、MEM、DMEM、F−10及び
F−12から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる
が、MEM、DMEM、DMEM/F−10又はDME
M/F−12が好ましく、DMEM/F−12が特に好
ましい。更にDMEM/F−12は60/40〜40/
60(重量比)の混合比のものが好ましい。
ランスフェリンを添加するが、更に亜セレン酸又はその
塩を添加するのがより好ましい。ここでインシュリンは
1〜100μg /ml、好ましくは3〜20μg /mlの濃
度となるように添加される。トランスフェリンは1〜1
00μg /ml、好ましくは3〜20μg /mlの濃度とな
るように添加される。また、亜セレン酸の塩としては、
亜セレン酸ナトリウム、亜セレン酸カリウム等が挙げら
れる。亜セレン酸又はその塩は1〜100nM、特に3〜
50nMの濃度となるように添加するのが好ましい。イン
シュリン、トランスフェリン、亜セレン酸塩はいずれも
水溶性であり、そのまま添加してもよいが、各成分を混
合した高濃度溶液を調製しておき、その一定量加えるの
も好ましい方法である。
た後、再び新しい培地及び添加剤を加えて培養を行え
ば、上清を繰り返し採取することが出来る。このように
して1日毎に上清を採取すれば、初代アストログリア細
胞の1回の準備操作で、10回以上、15回程度まで上
清を採取することが可能である。
45μm のフィルターにより濾過滅菌し、細胞片などを
除いて用いるのが好ましい。
神経細胞の安定培養はできない。アルブミンを添加する
ことにより安定培養が可能となる。当該アルブミンに加
えてプロジェステロンを添加するのがより好ましい。こ
こでアルブミンは0.5〜2.5mg/mlの濃度となるよ
うに添加するのが好ましく、プロジェステロンは1〜1
00nMの濃度となるように添加するのが好ましい。
スフェリン及び亜セレン酸又はその塩の濃度が低い場合
には、インシュリン1〜100μg /ml、トランスフェ
リン1〜100μg /ml、亜セレン酸又はその塩1〜1
00nMとなるように添加するのが好ましい。
ドジスムターゼとカタラーゼの組み合わせ、及び/又は
α−トコフェロール類を添加するのがより好ましい。こ
れらの添加剤の好ましい濃度は、スーパーオキシドジス
ムターゼ1〜100μg /ml、カタラーゼ1〜100μ
g /ml、α−トコフェロール類1〜100μg /mlであ
る。ここでα−トコフェロール類としてはα−トコフェ
ロール、酢酸トコフェロール、コハク酸トコフェロール
等のα−トコフェロールエステルが挙げられる。
その他の添加剤を加えた培養液では、神経細胞を安定に
培養することが可能で、従来の培養液に見られた低密度
培養時の不安定性も改善され、高い安定性を示す。
源として新たに前記の培地を添加してもよく、より好ま
しい培地としてはDMEM/F−12混合培地が挙げら
れる。新たに加える培地の添加量は0〜75%、特に
0.1〜50%になる量が好ましい。
は、アルブミン、プロジェステロン、インシュリン、ト
ランスフェリン及び亜セレン酸又はその塩;当該5種と
α−トコフェロール類との組み合わせ;当該5種とスー
パーオキシドジスムターゼ及びカタラーゼとの組み合わ
せ;当該5種とα−トコフェロール類、スーパーオキシ
ドジスムターゼ及びカタラーゼとの組み合わせ;並びに
これらの組み合わせにDMEM/F−12混合培地を添
加したもの、等が挙げられる。
プロジェステロンとして水溶性プロジェステロン、α−
トコフェロールとして水溶性α−トコフェロールを用い
れば、前記と同様に各成分を混合した高濃度溶液として
添加する方法が適用できる。また、非水溶性プロジェス
テロン、非水溶性α−トコフェロールを用いる場合は、
エタノールにあらかじめ溶解したものを用いればよい。
することが可能である。そこで前記のように1日毎に繰
り返して上清を採取する場合は、その都度インシュリン
等の添加剤を加えるのでなく、凍結して保存しておき、
複数回分の上清の採取が終わった時点で凍結した培養上
清を融解し、全体を均一に混合し、これと上記の添加剤
を混合すれば、より均質な神経細胞用培養液を得ること
ができる。この添加剤はあらかじめ溶液状に溶解したも
のを加える方がよい。
の水溶液に溶解し凍結保存すれば安定に使用が可能であ
る。プロジェステロン、α−トコフェロールなどの、非
水溶性の成分はエタノール等に溶解し同様に凍結保存す
ればよい。また、このようにして調製した本発明の培養
液も凍結して安定に保存することができる。培養上清、
上記の添加剤、混合した培養液いずれも凍結保存温度は
−10〜−80℃が適しており、冷蔵温度(4〜8℃)
では長期間の安定保存は難しい。また凍結融解の操作は
繰り返さないことが好ましい。
行うには、この培養液に神経細胞を添加し常法に従い、
培養すればよい。神経細胞は、初代アストログリア細胞
と同様の動物から細胞を調製することが可能である。生
後の個体を用いても培養は可能であるが、一般的に胎児
を用いた方が神経細胞の生存率は高くなる。ラットでは
胎生15〜20日程が好適であるが、より未熟な胎児を
使用することも可能である。脳の特定領域、例えば、海
馬、線条体、中隔野あるいは中脳、小脳などに限定して
の培養も可能である。小脳の場合は神経細胞の分化にあ
わせた生後1週間ほどの個体を用いると効果的な培養が
可能である。
は、通常、神経細胞の他にグリア細胞等(初代アストロ
グリア細胞など)が混入してくる。初代アストログリア
細胞には1型と2型があるが、血清添加培養液の場合に
は、このなかで1型アストログリア細胞が増殖し問題と
なる。しかし本発明の培養液にはこの細胞の増殖を抑え
る効果がある。初代アストログリア細胞の形態からの1
型、2型の判別は確実とはいえず、免疫細胞化学染色法
による判別方法を用いる。抗GFAP抗体では1型、2
型両方が染色されるが、抗A2B5抗体では2型のみが
染色される。この染色性の違いにより1型と2型の判別
が可能である。
の比率が高くなる。本発明の培養液は、この未分化な幹
細胞の一つであるオリゴデンドログリア(又はオリゴデ
ンドロサイト)−2型アストログリア(又は2型アスト
ロサイト)幹細胞(以下O−2A幹細胞)の増殖分化を
誘導する効果がある。培養を継続すると、培養系に、当
初認められなかったオリゴデンドログリアを認めること
ができるようになる。これはO−2A幹細胞が増殖、分
化したものである。オリゴデンドログリアであること
は、アストログリア細胞を判別する場合と同様の免疫細
胞化学染色の方法で適用できる。例えば抗GC(ガラク
トセレブロシド)抗体、抗MBP(ミエリン塩基性蛋白
質)抗体などを用いて染色すると明確な判別が可能であ
る。
と同様にして脳を切り出す。そしてトリプシン、パパイ
ン、ディスパーゼなどの酵素を用いて神経細胞分散液を
調製する。好ましくはパパイン(10〜50U/ml)を
用いる方がよい。パパインを溶解したリン酸塩緩衝液に
L−システイン(0.5〜5mM)、グルコース(5〜5
0mM)を加え、37℃で30〜120分、脳組織を酵素
処理する。分散酵素液を丁寧に攪拌、混和することによ
り神経細胞を分散させる。デオキシリボヌクレアーゼ
(0.01%)を更に添加した方が漏出した核酸による
細胞の凝集を防ぐことができる。
記のように調製した本発明の培養液を用いて10,00
0〜2,000,000cells/mlの細胞液を調製し、
培養用のプレート、ディッシュなどを用いて、37℃の
5%炭酸ガスインキュベーターで培養する。培養に用い
るプレート、ディッシュ等は、ガラス、プラスチック等
材質は問わないが、ポリリジシン、ポリオルニチン、ポ
リアリルアミン、プロタミン、ラミニン、コラーゲン、
ゼラチン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、テネイ
シン、及びこれらを混和したものを、単層ないしは複層
コートしたものを用いるのが良い。
明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものでは
ない。
大脳を切り出し、0.25%のトリプシン/リン酸塩緩
衝液(フロウ・ラボラトリー社製)を用いて37℃で3
0分酵素処理した。酵素液を除き、10%牛胎児血清
(ハイクローン社製)及びゲンタマイシン(シグマ社
製)50μg /mlを含むDMEM/F−12等比混合培
養液(ライフ・テクノロジー社製)で組織を分散させ、
細胞分離用遠心機(クボタ社製)により900回転、5
分の条件で細胞を遠心分離した。
え75cm2 の培養フラスコ(住友ベークライト社製)を
用いて、37℃、5%の炭酸ガスインキュベーター内で
10日間培養した。培養液を除き、フラスコ内にコンフ
ルエントに増殖した細胞を、リン酸塩緩衝液で洗浄した
後、0.25%のトリプシン/リン酸塩緩衝液で、37
℃で5分間酵素処理した。ここで再び同じ培養液150
mlを加えて細胞を分散させ、同様に遠心分離し150ml
の培養液に再分散させた後、これを225cm2の培養フ
ラスコ(住友ベークライト社製)3個に分けて、10日
間培養した。なお、培養液は2〜3日に1回新しいもの
と交換した。
浄した後、インシュリン(5μg /ml)、トランスフェ
リン(5μg /ml)、亜セレン酸ナトリウム(5nM)
(いずれもシグマ社製)を添加したDMEM/F−12
等比混合培養液を加えて、1日間培養し、その培養上清
を全量採取して、再び同じ培養液を加えた。同様の操作
を10日間(10回)繰り返した。比較例1として、上
記の添加物を加えずに、同様に操作して培養上清を採取
した。尚、培養液の量は、培養器の形態により適宜増減
することが可能であるが、プレート、フラスコ、ディッ
シュ、トレーなどでは、培養面積当たりでは0.15〜
0.35ml/cm2 の範囲とするのが適切である。
ター(ミリポア社製)で濾過滅菌して凍結保存し、10
回分の上清を採取した後、解凍し全体をまとめて均一に
混合した。これに、アルブミン(ALBUMAXTMI、
ライフ・テクノロジー社製、2.5mg/ml)を加え、−
70℃で保存した。
切り出し、1mMシステイン、25mMグルコース、1mg/
mlアルブミン(各シグマ社製)を含有するリン酸塩緩衝
液で、20U/mlに調製した、パパイン(ワージントン
社製)を用いて37℃で45分酵素処理した。酵素液を
除き、DMEM/F−12混合培養液で細胞を分散させ
た後、700回転、5分の遠心分離条件で細胞を分離し
た。
て、600,000c/mlの細胞濃度の溶液を調製し、
ポリリジンコート24ウェルプレート(住友ベークライ
ト社製)を用いて0.5ml/ウェルで培養した。比較例
2としては、本発明の培養液を加えないDMEM/F−
12液等比混合培養を用いて、同じ条件で培養を行っ
た。
を観察した。本発明の培養液を用いたものは、良好な生
存と長い神経突起の伸展が観察され、シナプスを形成す
る突起間のコンタクトがたいへん多く認められた。しか
し、比較例1の培養液を用いたものでは、神経突起の伸
展が著しく劣っており、死細胞と思われる形態をしてい
るものが多く認められた。また、比較例2の培養液で
は、生存細胞は認められなかった。
め、リン酸塩緩衝液に溶解し培養液に加えた二酢酸フル
オレセイン(シグマ社製)10μg /mlと、ヨウ化プロ
ピジウム(シグマ社製)15μg /mlとを反応させた。
蛍光顕微鏡(オリンパス光学社製)で異なった蛍光を発
する生細胞と死細胞の比率を測定したところ、本発明の
培養液で培養したサンプルでは、生存率は80%以上の
良好な値を示した。
し、培養上清を採取した。得られた培養上清を用いて、
培養上清とDMEM/F−12等比混合培養液の比率が
75/25、50/50、25/75、及び10/90
になるようにそれぞれ調製し、その全体量に対して、プ
ロジェステロン(20nM)及びアルブミン(2.5mg/
ml)(いずれもコラボレイティブ・リサーチ社製)の添
加物を、各溶液に加えて培養液を調製した。更に、比較
例3として、DMEM/F−12等比混合液にウシ胎児
血清(ハイクローン社製)10%を加えたものを用い
た。実施例1と同様にして神経細胞液を500,000
c/mlの濃度に調製し、実施例1と同様にして培養を行
った。
ころ、培養上清とDMEM/F−12混合液の比を75
/25、及び50/50とした培養液では、神経細胞の
良好な生存維持と神経突起の伸展が観察された。25/
75の培養液では、生存細胞数がやや少なく、10/9
0の培養液では、生存細胞、神経突起の伸展のいずれも
劣っていた。また、比較例3のウシ胎児血清を用いた培
養液では、生存している神経細胞の数が少なく、グリア
細胞の存在が多く認められた。
が75/25の培養液で培養したもの、及び比較例3の
血清添加で培養したものについて、神経細胞であること
を確認するため、抗MAP2抗体(ベーリンガーマンハ
イム社製)による免疫組織化学染色を行った。培養液を
除きリン酸塩緩衝液で洗浄した後パラフォルムアルデヒ
ド(和光純薬社製)4%のリン酸塩緩衝液で20分、ト
リトンX−100(ベーリンガーマンハイム社製)の
0.1%リン酸塩緩衝液を20分、ヒツジ血清1%のリ
ン酸塩緩衝液を20分、順次反応させ、更に、抗MAP
2抗体をリン酸塩緩衝液で5μg /mlに調製し、30分
間反応させた。なお、反応はいずれも室温で行い、各反
応後にはリン酸塩緩衝液で洗浄した。
社製)、及びDAB基質キット(ベクター社製)で染色
を行った。その結果、前記の形態観察から神経細胞と判
断された細胞は大半が染色され、神経細胞であることが
確認された。しかし、比較例3の血清添加で培養した方
の細胞は染色される細胞が少なく、形態からグリア細胞
と判断されるものは染色されなかった。
料となる神経細胞は、ウイスター系ラットの胎児(胎生
16日)の海馬より、実施例1と同様にして調製した。
24ウェルラミニンコートプレート(住友ベークライト
社製)に250,000c/ウェルの細胞を加え、14
日間培養した。培養3〜5日の間は、シトシンアラビノ
フラノシド(シグマ社製)を5μM 加えた。培養液の交
換は1/2量を週2度交換した。また、比較例4とし
て、DMEM/F−12等比混合培養液に、インシュリ
ン(5μg /ml)、トランスフェリン(5μg /ml)、
プロジェステロン(20nM)、及び亜セレン酸ナトリウ
ム(20nM)を加えたが、アルブミンを加えないものを
用いて、同様にして培養を行った。
例4の培養液を用いた方は細胞が全て死滅していたが、
本発明の培養液を用いた場合では、神経細胞間の緊密な
ネットワーク形成が観察された。
し、培養上清を採取した。これに、インシュリン5μg
/ml、トランスフェリン5μg /ml、スーパーオキシド
ジスムターゼ2.5μg /ml、カタラーゼ2.5μg /
ml、亜セレン酸ナトリウム100nM、プロジェステロン
20nM、酢酸トコフェロール1μg /ml、アルブミン
2.5mg/ml(いずれもシグマ社製)で各栄養因子を加
え培養液を調製し、−70℃で保存した。
清に栄養因子を加えないもの(前記比較例1と同じ)
を、また培養上清に栄養因子としてインシュリン5μg
/ml、トランスフェリン5μg /ml、プロジェステロン
20nM及び亜セレン酸ナトリウム100nMを添加した
が、アルブミンを加えない培養液(前記比較例4と同
じ)を調製した。
切り出し、1mMシステイン、25mMグルコース、1mg/
mlアルブミン(各シグマ社製)を含有するリン酸塩緩衝
液で、20U/mlに調製したパパイン(ワージントン社
製)液5mlを用いて37℃で45分酵素処理した。酵素
液を除き、50μg /mlのゲンタマイシンを含むDME
M/F−12混合培養液で細胞を分散させた後、700
回転、5分の遠心分離条件で細胞を分離した。上記実施
例、比較例培養液で調製した神経細胞は、500cells
/mm2の培養密度で、ポリリジンコート48ウェルプレ
ート(住友ベークライト社製)を用いて培養した。
を観察した。本発明の培養液を用いたものは、生細胞数
が多く、また長い神経突起の伸展が観察された。しかし
比較例1の培養液で神経突起を伸長した良好な生存状態
の細胞は認められず、比較例2の培養液では、一部の細
胞が認められるのみであった。MTT(臭化3−(4,
5−ジメチル−2−チアゾリル)−2,5−ジフェニル
−2Hテトラゾリウム)細胞増殖測定キット(ケミコン
・インターナショナル社製)を用いて神経細胞の生存度
合いを測定した。実施例の培養液と比較例の培養液との
比率は比較例1/実施例4は5%以下で、比較例2/実
施例4は20%程であり、本発明の培養液に比べ、比較
例の培養液は、著しく効果が劣っていた。
し、培養上清を採取した。得られた培養上清を用いて、
培養上清とDMEM/F−12等比混合培養液の比率
が、75/25、50/50、25/75、及び10/
90になるようにそれぞれ調製し、その全体量に対し
て、インシュリン5μg /ml、トランスフェリン5μg
/ml、スーパーオキシドジスムターゼ2.5μg /ml、
カタラーゼ2.5μg /ml、亜セレン酸ナトリウム10
0nM、プロジェステロン20nM、酢酸トコフェロール1
μg /ml、アルブミン2.5mg/ml(いずれもシグマ社
製)の添加物を、各溶液に加えて培養液を調製した。更
に、比較のためにDMEM/F−12等比混合液にウシ
胎児血清(ハイクローン社製)10%を加えたもの(前
記比較例3と同じ)を用いた。実施例1と同様にして神
経細胞液を調製し、300cells/mlの培養密度でポリ
リジンコート24ウェルプレート(住友ベークライト社
製)で培養した。
ころ、培養上清とDMEM/F−12混合液の比を75
/25、50/50、とした培養液では、75/25の
方がより優っていたが、いずれも良好な生存維持と神経
突起の伸展が観察された。25/75では生存細胞は認
められたが数が少なかった。10/90の培養液では、
生存細胞は認められなかった。また、比較例のウシ胎児
血清を用いた培養液では、生存している神経細胞の数が
少なく、グリア細胞の存在が多く認められた。
比較例3の培養液を使用した。実施例1と同様に神経細
胞液を調製し1,200cells/mm2の培養密度でラミニ
ンコート12ウェルプレート(住友ベークライト社製)
を用い、8日間培養した。
養された神経細胞の他に、形態からオリゴデンドログリ
アと判断される細胞が認められた。また比較例の方は神
経細胞はわずかであり、形態からアストログリア細胞と
判断される細胞が大半であった。
抗体(ベーリンガーマンハイム社製、5μg /mlに調
製)、抗GFAP抗体(ベーリンガーマンハイム社製、
8μg/mlに調製)、抗A2B5抗体(ベーリンガーマ
ンハイム社製、5μg /mlに調製)を用いて免疫細胞化
学染色を行った。培養液を除きリン酸塩緩衝液で洗浄し
た後パラフォルムアルデヒド(和光純薬社製)4%のリ
ン酸塩緩衝液で20分、トリトンX−100(ベーリン
ガーマンハイム社製)の0.1%リン酸塩緩衝液を20
分、ヒツジ血清1%のリン酸塩緩衝液を20分、順次反
応させ、更に上記抗体をそれぞれ30分間反応させた。
各抗体の反応は比較例、実施例各1ウェルずつ計6ウェ
ル、いずれも室温で行い、各反応液にはリン酸塩緩衝液
で洗浄した。
ー社製)、及びDAB(3,3′−ジアミノベンジジ
ン)基質キット(ベクター社製)で染色を行った。本発
明の培養液を用いたもので、形態からオリゴデンドログ
リアと判断される細胞はこの細胞と反応する抗GC抗体
で染色された。一方、比較例の形態からアストログリア
細胞と判断される細胞は、抗GFAP抗体で染色され、
抗A2B5抗体には染色されないことから1型アストロ
グリア細胞と判断された。
ことにより、中枢神経細胞の培養を安定に行うことがで
き、低密度培養においては神経突起の伸展性に優れ迅速
なシナプス形成が可能であり、高密度培養においては神
経ネットワークを形成した細胞の長期安定性に優れてい
る。これにより神経薬理試験、神経情報伝達試験等を確
度高く実施することができ、神経薬理、衛生化学などの
分野で痴呆症、神経疾患、神経毒性などの研究、病態の
解明等に役立つ。
Claims (9)
- 【請求項1】 インシュリン、トランスフェリン及び亜
セレン酸又はその塩を添加した栄養培地中で初代アスト
ログリア細胞を培養して採取した培養上清に、アルブミ
ン、プロジェステロン、インシュリン、トランスフェリ
ン、亜セレン酸又はその塩、スーパーオキシドジスムタ
ーゼ及びカタラーゼを配合したことを特徴とする神経細
胞用培養液。 - 【請求項2】 インシュリン、トランスフェリン及び亜
セレン酸又はその塩を添加した栄養培地中で初代アスト
ログリア細胞を培養して採取した培養上清に、アルブミ
ン、プロジェステロン、インシュリン、トランスフェリ
ン、亜セレン酸又はその塩及びα−トコフェロール類を
配合したことを特徴とする神経細胞用培養液。 - 【請求項3】 インシュリン、トランスフェリン及び亜
セレン酸又はその塩を添加した栄養培地中で初代アスト
ログリア細胞を培養して採取した培養上清に、アルブミ
ン、プロジェステロン、インシュリン、トランスフェリ
ン、亜セレン酸又はその塩、スーパーオキシドジスムタ
ーゼ、カタラーゼ及びα−トコフェロール類を配合した
ことを特徴とする神経細胞用培養液。 - 【請求項4】 更に栄養培地を培養上清に配合するもの
である請求項1〜3のいずれか1項記載の神経細胞用培
養液。 - 【請求項5】 初代アストログリア細胞を動物血清を添
加した培地中で培養、増殖させた後、インシュリン、ト
ランスフェリン及び亜セレン酸又はその塩を添加した栄
養培地中で培養し、その上清を採取し、得られた培養上
清にアルブミン、プロジェステロン、インシュリン、ト
ランスフェリン、亜セレン酸又はその塩、スーパーオキ
シドジスムターゼ及びカタラーゼを添加することを特徴
とする神経細胞用培養液の製造方法。 - 【請求項6】 初代アストログリア細胞を動物血清を添
加した培地中で培養、増殖させた後、インシュリン、ト
ランスフェリン及び亜セレン酸又はその塩を添加した栄
養培地中で培養し、その上清を採取し、得られた培養上
清にアルブミン、プロジェステロン、インシュリン、ト
ランスフェリン、亜セレン酸又はその塩及びα−トコフ
ェロール類を添加することを特徴とする神経細胞用培養
液の製造方法。 - 【請求項7】 初代アストログリア細胞を動物血清を添
加した培地中で培養、増殖させた後、インシュリン、ト
ランスフェリン及び亜セレン酸又はその塩を添加した栄
養培地中で培養し、その上清を採取し、得られた培養上
清にアルブミン、プロジェステロン、インシュリン、ト
ランスフェリン、亜セレン酸又はその塩、スーパーオキ
シドジスムターゼ、カタラーゼ及びα−トコフェロール
類を添加することを特徴とする神経細胞用培養液の製造
方法。 - 【請求項8】 更に栄養培地を培養上清に配合するもの
である請求項5〜7のいずれか1項記載の神経細胞用培
養液の製造方法。 - 【請求項9】 請求項1〜4のいずれか1項記載の神経
細胞用培養液中で神経細胞を培養することを特徴とする
神経細胞の培養方法。
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