JP3072051B2 - 神経細胞用培養液、その製造方法及びこれを用いる神経細胞の培養方法 - Google Patents
神経細胞用培養液、その製造方法及びこれを用いる神経細胞の培養方法Info
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Description
用いるための培養液、当該培養液の製造方法、及びこれ
を用いる神経細胞の培養方法に関する。
くから幾多の検討がなされてきた。神経成長因子(NG
F)の発見は、神経細胞に特異的に働く因子のはじめて
の発見であり、神経生物学の分野に大きな影響を与え
た。神経細胞の培養に於いても、神経繊維の成長が誘導
できるようになり、より生体内に近い条件で培養できる
ようになった。
TF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、神経栄養因
子−3(NT−3)、神経栄養因子−4(NT−4)、
神経栄養因子−5(NT−5)、グリア細胞株由来神経
栄養因子(GDNF)と、次々に新しい神経成長因子が
発見されてきた。これらは培養神経細胞によって、その
効果や作用メカニズムが検討され、更には実用化されて
いる遺伝子工学の手法により、疾病治療のための医薬と
しての利用も検討されるまでになっている。
胞の培養系で調べてみると、単一物質の添加だけで各種
の神経細胞に対して著しい効果を示すとは言いにくく、
特定の細胞に対してのみ効果を示すという場合が多い。
は別の流れとして、ホルモン(インシュリン、サイロキ
シン、プロジェステロン等)、ビタミン、不飽和脂肪
酸、細胞成長因子(塩基性繊維芽細胞増殖因子等)など
が検討され続けてきており、これらの因子を種々組み合
わせた無血清培養液が報告されている〔ジャーナル・オ
ブ・ニューロサイエンス・メソッド(Journal of Neuro
science Methods, 23:75(1988)等〕。
リア細胞等)には効果的であるが、神経細胞に対しては
安定培養ができない場合や、神経細胞には効果があるも
のの、同時にグリア細胞の増殖が促進されてしまい、い
わゆるグリア細胞との混合培養系になってしまう場合な
ど、神経細胞に対する薬理作用を検討する場合には不適
切なものが多い。例えば、ボテンシュタイン(Bottenst
ein)らのN2添加物〔インシュリン(5μg /ml)、
トランスフェリン(100μg /ml)、プロジェステロ
ン(20nM)、プトレシン(100μM )、及び亜セレ
ン酸塩(30nM)〕〔プロスィーディング・オブ・ナシ
ョナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proceeding o
f National Academy of Science, U.S.A.),76:514(19
79)〕は、株化グリア細胞の培養には適しているが、初
代神経細胞の場合は安定した細胞の生存維持が図れな
い。また、ブリュワー(Brewer)らの処方の培養液〔ブ
レイン・リサーチ(Brain.Research), 65:494(1989)〕
も、中枢神経細胞に対して短期間の培養は可能である
が、長期間に渡って培養した場合、細胞機能を安定して
維持することができない。
いしは初代グリア細胞の培養上清を用いる方法が知られ
ている。しかし、株化グリア細胞の培養上清を用いた場
合は、一般的に、神経細胞に対しても作用するが、同時
にグリア細胞にも作用し増殖が促進される。つまり神経
細胞の生存に対する効果だけでなく、それ以上にグリア
細胞に対して効果を示す。グリア細胞増殖因子と称呼さ
れる因子は、これらの培養上清より精製されている〔ジ
ャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(Jour
nal of Biological Chemistry), 268:2857(1993)な
ど〕。
化グリア細胞であるアストロサイトーマの培養上清を濃
縮したものが神経細胞の培養に30〜50%の活性増加
効果を示すことが報告されている。また、神経芽細胞腫
の増殖を抑制することが示されている。これは株化グリ
ア細胞の培養上清を用いた場合の欠点であるグリア細胞
の増殖を抑えるため、培養上清を濃縮し一部の有効成分
をとりだしたものである。しかし神経細胞を安定に培養
するためには単一物質ではなく複数の成分による総合的
な作用が必要である。この濃縮物を用いないものに比べ
た活性増加効果が30%程度では、安定な神経細胞の培
養系を構成することはできない。
清を得るために、通常の無血清培養液ないしは血清が含
まれている培養液を用いる。しかし、通常の無血清培養
液を用いる培養上清の採取方法では、グリア細胞の生存
に対して充分な培養液とはならず、安定培養ができな
い。このため培養上清に含まれる神経細胞に作用する因
子群の量が少なく、神経細胞の培養に対して効果が低
い。また培養上清の採取には限度があり、数回程度で、
安定した効果を持つ培養上清の採取は難しくなる。血清
含有培養液を用いた場合には、安定した培養上清の採取
は行えるが、神経細胞を培養する際に、神経細胞よりも
共存するグリア細胞に対して増殖因子が作用し細胞増殖
が促進される。その結果、神経細胞の安定培養が障害さ
れる。
因子を加える方法が採られる。例えば、特開平3−66
700号公報には、ダルベッコ改変イーグル培地(以下
DMEMと略す)培養液にインシュリン(5μg /m
l)、トランスフェリン(1μg/ml)、ハイドロコーチ
ゾン(20nM)、及び3,3′,5−トリヨード−L−
チロニン(0.3nM)を添加する培養法が開示されてい
る。しかしこの培養上清を用いて神経細胞を培養しても
数日間の培養しか行えず安定した培養を行うことができ
ない。また、同じく神経突起伸展因子として明示されて
いるα2−マクログロブリンは、中枢神経の培養におい
ては安定培養の効果が低く、主要な役割を果たすもので
はなく補助的役割を果たすにすぎないものである。
は、ミクログリア細胞の産生する因子が、神経細胞の突
起伸展に効果があることが示されている。ミクログリア
細胞は、マクロファージ(貧食細胞)のような免疫系細
胞の機能を示すといわれ、組織が障害を受けたときに活
性化の度合いが高くなる。しかし、一般的に生体内で
は、アストログリア細胞を含むマクログリア細胞の比率
が高く、炎症などの場合を除き、主としてマクログリア
細胞が恒常性を維持していると考えられている。
養液群を中枢神経細胞の培養に用いた場合、その効果は
低く、神経細胞の安定した培養を行うことができない。
すなわち、神経薬理試験等を行った場合に於いて、期待
する充分な結果が得られない。従って本発明は、神経細
胞の培養におけるこのような現状に鑑みてなされたもの
で、神経細胞を長期間安定に培養できる培養液を提供す
ることを目的とするものである。
安定に培養するためには種々の栄養因子が必要であると
考え、これらの栄養因子に関して神経細胞の培養に与え
る効果を検討した。初代アストログリア細胞の従来の培
養上清も栄養因子の一つとし検討したが、従来の初代ア
ストログリア細胞の培養上清は、神経細胞の安定培養に
対して、これまで報告されて来た程の効果がない事が明
らかになった。そこで本発明者らは、初代アストログリ
ア細胞の培養条件について鋭意研究を進めた結果、ある
特定の添加剤を加えて培養して得た培養上清に優れた効
果があることを見出し、本発明を完成するに至ったもの
である。
スフェリン、亜セレン酸若しくはその塩、アルブミン、
プロジェステロン、スーパーオキシドジスムターゼ及び
カタラーゼ、又はインシュリン、トランスフェリン、亜
セレン酸若しくはその塩、プロジェステロン、アルブミ
ン及びα−トコフェロール類を添加した栄養培地中で初
代アストログリア細胞を培養して採取した培養上清を含
有することを特徴とする神経細胞用培養液を提供するも
のである。
動物血清を添加した培地中で培養、増殖させた後、プロ
ジェステロン、スーパーオキシドジスムターゼ及びカタ
ラーゼ、又はインシュリン、トランスフェリン、亜セレ
ン酸若しくはその塩、プロジェステロン、アルブミン及
びα−トコフェロール類を添加した栄養培地中で培養
し、その上清を採取することを特徴とする上記の神経細
胞用培養液の製造方法を提供するものである。
液中で神経細胞を培養することを特徴とする神経細胞の
培養方法を提供するものである。
するには、まず動物の脳よりアストログリア細胞を採取
し、初代アストログリア細胞を増殖させて充分量の初代
アストログリア細胞を得る。動物の脳よりアストログリ
ア細胞を採取するには、動物の新生仔(1〜2日)の大
脳より採取するのがよい。ここでアストログリア細胞採
取用の動物としては、ラット、マウス、ウシ、ウマ、ブ
タ、サル、ウサギ、ニワトリ等が挙げられるが、ラット
又はマウスが好ましい。具体的には、新生仔の脳より大
脳を切り出し、脳膜を除いた後、トリプシン、ディスパ
ーゼ、コラゲナーゼ、パパイン等の酵素を用いて細胞を
分散させる。これらの中でも特にトリプシン0.05〜
0.35w/v%(以下、単に%で示す)を用いるのが
好ましい。この酵素に更に、デオキシリボヌクレアーゼ
0.01%(100〜500U/ml)や、エチレンジア
ミン−N,N,N′,N′−四酢酸(EDTA)0.0
1%を加える方法も効果的である。
殖は動物血清を添加した培地中で行うのが好ましい。こ
こで用いられる動物血清としては、ウシ血清が好まし
く、ウシ胎児血清、仔ウシ血清、新生仔ウシ血清が特に
好ましい。また、動物血清の添加量は5〜20%となる
量が好ましい。また、培地としては、動物細胞培養用の
栄養培地であれば特に制限されず、イーグルの最小必須
培地(以下MEMと略す)、ダルベッコ改変イーグル培
地(以下DMEMと略す)、DMEM/ハムのF−12
培地(以下、F−12と略す)、F−12、ハムのF−
10培地(以下F−10と略す)などの培地を用いるこ
とができる。DMEM/F−12混合培地は混合比を各
種変えたものが用いられるが、両培地の特徴を合わせ持
つ、60/40〜40/60(重量比)程度の範囲の混
合培地が特に好ましい。
細胞培養用のフラスコ、ディッシュ、プレート、もしく
はポリリジンコートを施したフラスコ、ディッシュ、プ
レートやマイクロキャリアーなどを用いて、コンフルエ
ントに(培養面全体に密に)なるまで培養し、増殖させ
る。培養面積は、新生仔1に対して10〜100cm2と
するのが好適である。そして、更に継代培養を行うが培
養面積は2〜10倍程度が適当である。同様にコンフル
エントになるまで培養する。このコンフルエントになっ
た細胞は主として1型アストログリア(又は1型アスト
ロサイト)に分類されるものである。1型アストログリ
アであることは免疫細胞化学染色を行うことにより確認
できる。この細胞は抗GFAP(グリア繊維性酸性蛋白
質)抗体で染色され、抗A2B5抗体(抗シアル酸含有
糖蛋白質抗体)で染色されない。
で培養液を除去し、リン酸塩緩衝液等で洗浄する。
を、インシュリン、トランスフェリン、亜セレン酸若し
くはその塩、プロジェステロン、アルブミン、スーパー
オキシドジスムターゼ及びカタラーゼ、又はインシュリ
ン、トランスフェリン、亜セレン酸若しくはその塩、プ
ロジェステロン、アルブミン及びα−トコフェロール類
を添加した栄養培地中で培養し、その上清を採取する。
ここで、本発明においては、初代アストログリア細胞
を、インシュリン、トランスフェリン、亜セレン酸若し
くはその塩、プロジェステロン、アルブミン、スーパー
オキシドジスムターゼ、カタラーゼ及びα−トコフェロ
ール類を添加した栄養培地中で培養し、その上清を採取
するのがより好ましい。
M、DMEM、F−10及びF−12から選ばれる1種
又は2種以上が挙げられるが、MEM、DMEM、DM
EM/F−10又はDMEM/F−12が好ましく、D
MEM/F−12が特に好ましい。更にDMEM/F−
12は60/40〜40/60(重量比)の混合比のも
のが好ましい。
の塩としては、亜セレン酸ナトリウム、亜セレン酸カリ
ウム等が挙げられる。ここでインシュリンは1〜100
μg/ml、特に3〜20μg /mlの濃度となるように添
加するのが好ましい。トランスフェリンは1〜100μ
g /ml、特に3〜20μg /mlの濃度となるように添加
するのが好ましい。また、亜セレン酸又はその塩は1〜
100nM、特に3〜50nMの濃度となるように添加する
のが好ましい。また、アルブミンは0.5〜2.5mg/
mlの濃度となるように添加するのが好ましい。プロジェ
ステロンは1〜100nMの濃度となるように添加するの
が好ましい。またスーパーオキシドジスムターゼの好ま
しい濃度は1〜100μg /ml、カタラーゼの好ましい
濃度は1〜100μg /ml、α−トコフェロール類の好
ましい濃度は1〜100μg /mlである。ここでα−ト
コフェロール類としてはα−トコフェロール、酢酸トコ
フェロール、コハク酸トコフェロール等のα−トコフェ
ロールエステルが挙げられる。
ン酸塩はいずれも水溶性であり、そのまま添加してもよ
いが、各成分を混合した高濃度溶液を調製しておき、そ
の一定量加えるのも好ましい方法である。またプロジェ
ステロンとして水溶性プロジェステロン、α−トコフェ
ロールとして水溶性α−トコフェロールを用いれば、前
記と同様に各成分を混合した高濃度溶液として添加する
方法が適用できる。また、非水溶性プロジェステロン、
非水溶性α−トコフェロールを用いる場合は、エタノー
ルにあらかじめ溶解したものを用いればよい。
た後、再び新しい培地及び添加剤を加えて培養を行え
ば、上清を繰り返し採取することが出来る。このように
して1日毎に上清を採取すれば、初代アストログリア細
胞の1回の準備操作で、20〜25回程度まで上清を採
取することが可能であるが、好ましくは10〜15回で
ある。
45μm のフィルターにより濾過滅菌し、細胞片などを
除いて用いるのが好ましい。
することが可能である。そこで前記のように1日毎に繰
り返して上清を採取する場合は、凍結して保存してお
き、複数回分の上清の採取が終わった時点で凍結した培
養上清を融解し、全体を均一に混合すれば、より均質な
神経細胞用培養液を得ることができる。培養上清の凍結
保存温度は−10〜−80℃が適しており、冷蔵温度
(4〜8℃)では長期間の安定保存は難しい。また凍結
融解の操作は繰り返さないことが好ましい。
源として新たに前記の培地を添加してもよく、より好ま
しい培地としてはDMEM/F−12混合培地が挙げら
れる。新たに加える培地の添加量は0〜75%、特に
0.1〜50%になる量が好ましい。
行うには、この培養液に神経細胞を添加し常法に従い、
培養すればよい。神経細胞は、初代アストログリア細胞
と同様の動物から細胞を調製することが可能である。生
後の個体を用いても培養は可能であるが、一般的に胎児
を用いた方が神経細胞の生存率は高くなる。ラットでは
胎生15〜20日程が好適であるが、より未熟な胎児を
使用することも可能である。脳の特定領域、例えば、海
馬、線条体、中隔野あるいは中脳、小脳などに限定して
の培養も可能である。小脳の場合は神経細胞の分化にあ
わせた生後1週間ほどの個体を用いると効果的な培養が
可能である。
は、通常、神経細胞の他にグリア細胞等(初代アストロ
グリア細胞など)が混入してくる。初代アストログリア
細胞には1型と2型があるが、血清添加培養液の場合に
は、このなかで1型アストログリア細胞が増殖し問題と
なる。しかし本発明の培養液にはこの細胞の増殖を抑え
る効果がある。初代アストログリア細胞の形態からの1
型、2型の判別は確実とはいえず、免疫細胞化学染色法
による判別方法を用いる。抗GFAP抗体では1型、2
型両方が染色されるが、抗A2B5抗体では2型のみが
染色される。この染色性の違いにより1型と2型の判別
が可能である。
の比率が高くなる。本発明の培養液は、この未分化な幹
細胞の一つであるオリゴデンドログリア(又はオリゴデ
ンドロサイト)−2型アストログリア(又は2型アスト
ロサイト)幹細胞(以下O−2A幹細胞)の増殖分化を
誘導する効果がある。培養を継続すると、培養系に、当
初認められなかったオリゴデンドログリアを認めること
ができるようになる。これはO−2A幹細胞が増殖、分
化したものである。オリゴデンドログリアであること
は、アストログリア細胞を判別する場合と同様の免疫細
胞化学染色の方法で適用できる。例えば抗GC(ガラク
トセレブロシド)抗体、抗MBP(ミエリン塩基性蛋白
質)抗体などを用いて染色すると明確な判別が可能であ
る。
と同様にして脳を切り出す。そしてトリプシン、パパイ
ン、ディスパーゼなどの酵素を用いて神経細胞分散液を
調製する。好ましくはパパイン(10〜50U/ml)を
用いる方がよい。パパインを溶解したリン酸塩緩衝液に
L−システイン(0.5〜5mM)、グルコース(5〜5
0mM)を加え、37℃で30〜120分、脳組織を酵素
処理する。分散酵素液を丁寧に攪拌、混和することによ
り神経細胞を分散させる。デオキシリボヌクレアーゼ
(0.01%)を更に添加した方が漏出した核酸による
細胞の凝集を防ぐことができる。
記のように調製した本発明の培養液を用いて10,00
0〜2,000,000cells/mlの細胞液を調製し、
培養用のプレート、ディッシュなどを用いて、37℃の
5%炭酸ガスインキュベーターで培養する。培養に用い
るプレート、ディッシュ等は、ガラス、プラスチック等
材質は問わないが、ポリリジシン、ポリオルニチン、ポ
リアリルアミン、プロタミン、ラミニン、コラーゲン、
ゼラチン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、テネイ
シン、及びこれらを混和したものを、単層ないしは複層
コートしたものを用いるのが良い。
明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものでは
ない。
大脳を切り出し、0.25%のトリプシン/リン酸塩緩
衝液(フロウ・ラボラトリー社製)を用いて37℃で3
0分酵素処理した。酵素液を除き、10%牛胎児血清
(ハイクローン社製)及びゲンタマイシン(シグマ社
製)50μg /mlを含むDMEM/F−12等比混合培
養液(ライフ・テクノロジー社製)で組織を分散させ、
細胞分離用遠心機(クボタ社製)により900回転、5
分の条件で細胞を遠心分離した。
え75cm2 の培養フラスコ(住友ベークライト社製)を
用いて、37℃、5%の炭酸ガスインキュベーター内で
10日間培養した。培養液を除き、フラスコ内にコンフ
ルエントに増殖した細胞を、リン酸塩緩衝液で洗浄した
後、0.25%のトリプシン/リン酸塩緩衝液で、37
℃で5分間酵素処理した。ここで再び同じ培養液150
mlを加えて細胞を分散させ、同様に遠心分離し150ml
の培養液に再分散させた後、これを225cm2の培養フ
ラスコ(住友ベークライト社製)3個に分けて、10日
間培養した。なお、培養液は2〜3日に1回新しいもの
と交換した。
浄した後、インシュリン(5μg /ml)、トランスフェ
リン(5μg /ml)、亜セレン酸ナトリウム(100n
M)、スーパーオキシドジスムターゼ(2.5μg /m
l)、カタラーゼ(2.5μg /ml)、プロジェステロ
ン(20nM)、酢酸トコフェロール(1μg /ml)(い
ずれもシグマ社製)及びアルブミン(ALBUMAXTX
I,ライフテクノロジー社製、2.5mg/ml)を添加し
たDMEM/F−12等比混合培養液を加えて、1日間
培養し、その培養上清を全量採取して、再び同じ培養液
を加えた。同様の操作を10日間(10回)繰り返し
た。比較例1として、上記の添加物を加えずに、同様に
操作して培養上清を採取した。尚、培養液の量は、培養
器の形態により適宜増減することが可能であるが、プレ
ート、フラスコ、ディッシュ、トレーなどでは、培養面
積当たりでは0.15〜0.35ml/cm2 の範囲とする
のが適切である。
ター(ミリポア社製)で濾過滅菌して凍結保存し、10
回分の上清を採取した後、解凍し全体をまとめて均一に
混合し、−70℃で保存した。
切り出し、1mMシステイン、25mMグルコース、1mg/
mlアルブミン(各シグマ社製)を含有するリン酸塩緩衝
液で、20U/mlに調製した、パパイン(ワージントン
社製)を用いて37℃で45分酵素処理した。酵素液を
除き、DMEM/F−12混合培養液で細胞を分散させ
た後、700回転、5分の遠心分離条件で細胞を分離し
た。
て、250,000c/mlの細胞濃度の溶液を調製し、
ポリリジンコート24ウェルプレート(住友ベークライ
ト社製)を用いて0.5ml/ウェルで培養した。比較例
2としては、本発明の培養液を加えないDMEM/F−
12液等比混合培養を用いて、同じ条件で培養を行っ
た。
を観察した。本発明の培養液を用いたものは、良好な生
存と長い神経突起の伸展が観察され、シナプスを形成す
る突起間のコンタクトがたいへん多く認められた。しか
し、比較例1の培養液を用いたものでは、神経突起の伸
展が著しく劣っており、死細胞と思われる形態をしてい
るものが多く認められた。また、比較例1、2の培養液
では、生存細胞は認められなかった。
め、リン酸塩緩衝液に溶解し培養液に加えた二酢酸フル
オレセイン(シグマ社製)10μg /mlと、ヨウ化プロ
ピジウム(シグマ社製)15μg /mlとを反応させた。
蛍光顕微鏡(オリンパス光学社製)で異なった蛍光を発
する生細胞と死細胞の比率を測定したところ、本発明の
培養液で培養したサンプルでは、生存率は90%以上の
良好な値を示した。
し、培養上清を採取した。得られた培養上清を用いて、
培養上清とDMEM/F−12等比混合培養液の比率が
75/25、50/50、25/75、及び10/90
になるようにそれぞれ調製した。更に、比較例3とし
て、DMEM/F−12等比混合液にウシ胎児血清(ハ
イクローン社製)10%を加えたものを用いた。実施例
1と同様にして神経細胞液を200,000c/mlの濃
度に調製し、実施例1と同様にして培養を行った。
ころ、培養上清とDMEM/F−12混合液の比を75
/25、及び50/50とした培養液では、神経細胞の
良好な生存維持と神経突起の伸展が観察された。25/
75の培養液では、生存細胞数がやや少なく、10/9
0の培養液では、生存細胞、神経突起の伸展のいずれも
劣っていた。また、比較例3のウシ胎児血清を用いた培
養液では、生存している神経細胞の数が少なく、グリア
細胞の存在が多く認められた。
が75/25の培養液で培養したもの、及び比較例3の
血清添加で培養したものについて、神経細胞であること
を確認するため、抗MAP2抗体(ベーリンガーマンハ
イム社製)による免疫組織化学染色を行った。培養液を
除きリン酸塩緩衝液で洗浄した後パラフォルムアルデヒ
ド(和光純薬社製)4%のリン酸塩緩衝液で20分、ト
リトンX−100(ベーリンガーマンハイム社製)の
0.1%リン酸塩緩衝液を20分、ヒツジ血清1%のリ
ン酸塩緩衝液を20分、順次反応させ、更に、抗MAP
2抗体をリン酸塩緩衝液で5μg /mlに調製し、30分
間反応させた。なお、反応はいずれも室温で行い、各反
応後にはリン酸塩緩衝液で洗浄した。
ー社製)、及びDAB基質キット(ベクター社製)で染
色を行った。その結果、前記の形態観察から神経細胞と
判断された細胞は大半が染色され、神経細胞であること
が確認された。しかし、比較例3の血清添加で培養した
方の細胞は染色される細胞が少なく、形態からグリア細
胞と判断されるものは染色されなかった。
料となる神経細胞は、ウイスター系ラットの胎児(胎生
16日)の海馬より、実施例1と同様にして調製した。
24ウェルラミニンコートプレート(住友ベークライト
社製)に250,000c/ウェルの細胞を加え、14
日間培養した。培養3〜5日の間は、シトシンアラビノ
フラノシド(シグマ社製)を5μM 加えた。培養液の交
換は1/2量を週2度交換した。また、比較例4とし
て、DMEM/F−12等比混合培養液に、インシュリ
ン(5μg /ml)、トランスフェリン(5μg /ml)、
プロジェステロン(20nM)、及び亜セレン酸ナトリウ
ム(20nM)を加えたが、アルブミンを加えないものを
用いて、同様にして培養を行った。
例4の培養液を用いた方は細胞が全て死滅していたが、
本発明の培養液を用いた場合では、神経細胞間の緊密な
ネットワーク形成が観察された。
比較例3の培養液を使用した。実施例1と同様に神経細
胞液を調製し1,200cells/mm2の培養密度でラミニ
ンコート12ウェルプレート(住友ベークライト社製)
を用い、8日間培養した。
養された神経細胞の他に、形態からオリゴデンドログリ
アと判断される細胞が認められた。また比較例の方は神
経細胞はわずかであり、形態からアストログリア細胞と
判断される細胞が大半であった。
抗体(ベーリンガーマンハイム社製、5μg /mlに調
製)、抗GFAP抗体(ベーリンガーマンハイム社製、
8μg/mlに調製)、抗A2B5抗体(ベーリンガーマ
ンハイム社製、5μg /mlに調製)を用いて免疫細胞化
学染色を行った。培養液を除きリン酸塩緩衝液で洗浄し
た後パラフォルムアルデヒド(和光純薬社製)4%のリ
ン酸塩緩衝液で20分、トリトンX−100(ベーリン
ガーマンハイム社製)の0.1%リン酸塩緩衝液を20
分、ヒツジ血清1%のリン酸塩緩衝液を20分、順次反
応させ、更に上記抗体をそれぞれ30分間反応させた。
各抗体の反応は比較例、実施例各1ウェルずつ計6ウェ
ル、いずれも室温で行い、各反応液にはリン酸塩緩衝液
で洗浄した。
ー社製)、及びDAB(3,3′−ジアミノベンジジ
ン)基質キット(ベクター社製)で染色を行った。本発
明の培養液を用いたもので、形態からオリゴデンドログ
リアと判断される細胞はこの細胞と反応する抗GC抗体
で染色された。一方、比較例の形態からアストログリア
細胞と判断される細胞は、抗GFAP抗体で染色され、
抗A2B5抗体には染色されないことから1型アストロ
グリア細胞と判断された。
ことにより、中枢神経細胞の培養を安定に行うことがで
き、低密度培養においては神経突起の伸展性に優れ迅速
なシナプス形成が可能であり、高密度培養においては神
経ネットワークを形成した細胞の長期安定性に優れてい
る。これにより神経薬理試験、神経情報伝達試験等を確
度高く実施することができ、神経薬理、衛生化学などの
分野で痴呆症、神経疾患、神経毒性などの研究、病態の
解明等に役立つ。
Claims (7)
- 【請求項1】 インシュリン、トランスフェリン、亜セ
レン酸若しくはその塩、プロジェステロン、アルブミ
ン、スーパーオキシドジスムターゼ及びカタラーゼ、又
はインシュリン、トランスフェリン、亜セレン酸若しく
はその塩、プロジェステロン、アルブミン及びα−トコ
フェロール類を添加した栄養培地中で初代アストログリ
ア細胞を培養して採取した培養上清を含有することを特
徴とする神経細胞用培養液。 - 【請求項2】 栄養培地中に、インシュリン、トランス
フェリン、亜セレン酸若しくはその塩、プロジェステロ
ン、アルブミン、スーパーオキシドジスムターゼ、カタ
ラーゼ及びα−トコフェロール類を添加するものである
請求項1記載の神経細胞用培養液。 - 【請求項3】 栄養培地が、イーグルの基本培地(ME
M)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、ハム
のF−12培地及びハムのF−10培地から選ばれる1
種又は2種以上である請求項1又は2記載の神経細胞用
培養液。 - 【請求項4】 初代アストログリア細胞を動物血清を添
加した培地中で培養、増殖させた後、インシュリン、ト
ランスフェリン、亜セレン酸若しくはその塩、プロジェ
ステロン、アルブミン、スーパーオキシドジスムターゼ
及びカタラーゼ、又はインシュリン、トランスフェリ
ン、亜セレン酸若しくはその塩、プロジェステロン、ア
ルブミン及びα−トコフェロール類を添加した栄養培地
中で培養し、その上清を採取することを特徴とする神経
細胞用培養液の製造方法。 - 【請求項5】 栄養培地中に、インシュリン、トランス
フェリン、亜セレン酸若しくはその塩、プロジェステロ
ン、アルブミン、スーパーオキシドジスムターゼ、カタ
ラーゼ及びα−トコフェロール類を添加するものである
請求項4記載の神経細胞用培養液の製造方法。 - 【請求項6】 栄養培地が、イーグルの基本培地(ME
M)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、ハム
のF−12培地及びハムのF−10培地から選ばれる1
種又は2種以上である請求項4又は5記載の神経細胞用
培養液の製造方法。 - 【請求項7】 請求項1〜3のいずれか1項記載の神経
細胞用培養液中で神経細胞を培養することを特徴とする
神経細胞の培養方法。
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Applications Claiming Priority (1)
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2016501472A (ja) * | 2012-11-15 | 2016-01-18 | フラウンホーファー−ゲゼルシャフト・ツール・フェルデルング・デル・アンゲヴァンテン・フォルシュング・アインゲトラーゲネル・フェライン | 空間オーディオ信号の異なる再生スピーカ設定に対するセグメント毎の調整 |
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JP2649880B2 (ja) * | 1991-10-22 | 1997-09-03 | 株式会社バイオマテリアル研究所 | 中枢神経細胞用培地 |
JPH07227278A (ja) * | 1994-02-18 | 1995-08-29 | Kyorin Pharmaceut Co Ltd | 成熟中枢神経細胞用の無血清培地 |
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- 1996-06-10 JP JP8147159A patent/JP3072051B2/ja not_active Expired - Fee Related
- 1996-06-26 WO PCT/JP1996/001765 patent/WO1997047733A1/ja active Application Filing
Non-Patent Citations (2)
Title |
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Brain Res.,594(2),215−220(1992) |
J.Biol.Chem.,268(4),2857−2864(1993) |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2016501472A (ja) * | 2012-11-15 | 2016-01-18 | フラウンホーファー−ゲゼルシャフト・ツール・フェルデルング・デル・アンゲヴァンテン・フォルシュング・アインゲトラーゲネル・フェライン | 空間オーディオ信号の異なる再生スピーカ設定に対するセグメント毎の調整 |
KR101828138B1 (ko) * | 2012-11-15 | 2018-02-09 | 프라운호퍼 게젤샤프트 쭈르 푀르데룽 데어 안겐반텐 포르슝 에. 베. | 상이한 재생 라우드스피커 셋업에 대한 공간 오디오 신호의 세그먼트-와이즈 조정 |
Also Published As
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JPH09322765A (ja) | 1997-12-16 |
WO1997047733A1 (fr) | 1997-12-18 |
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