JPH08191688A - 神経細胞用培養液およびその製造方法 - Google Patents

神経細胞用培養液およびその製造方法

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JPH08191688A
JPH08191688A JP6308914A JP30891494A JPH08191688A JP H08191688 A JPH08191688 A JP H08191688A JP 6308914 A JP6308914 A JP 6308914A JP 30891494 A JP30891494 A JP 30891494A JP H08191688 A JPH08191688 A JP H08191688A
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culture solution
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dme
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JP6308914A
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Yoshiaki Watanabe
芳明 渡辺
Tamotsu Orihara
保 織原
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Sumitomo Bakelite Co Ltd
Original Assignee
Sumitomo Bakelite Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 インシュリン、トランスフェリン、および亜
セレン酸塩を添加したDME/F−12混合培養液を用
いて培養し採取した、初代アストログリア細胞の培養上
清に、新しいDME/F−12混合培養液をその割合が
0〜75%の範囲になるように加え、さらに、インシュ
リン、トランスフェリン、亜セレン酸塩、プロジェステ
ロン、およびアルブミンを配合した。 【効果】 中枢神経細胞の培養を安定に行うことがで
き、低密度培養では神経突起の伸展性に優れ迅速なシナ
プス形成が可能で、高密度培養では神経ネットワークを
形成した細胞の長期安定性に優れており、神経薬理試験
や神経情報伝達試験等を確度高く実施できるので、痴呆
症、神経疾患や神経毒性の研究、病態の解明等に役立
つ。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、神経細胞の培養に用い
るための培養液、及びこれを用いる神経細胞の培養方法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】神経細胞を生体外で培養するために、古
くから幾多の検討がなされてきた。神経成長因子(NG
F)の発見は、神経細胞に特異的に働く因子のはじめて
の発見であり、神経生物学の分野に大きな影響を与え
た。神経細胞の培養に於いても、神経繊維の成長が誘導
できるようになり、より生体内に近い条件で培養できる
ようになった。
【0003】そして、最近になって、毛様体神経栄養因
子(CNTF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、神
経栄養因子−3(NT−3)、神経栄養因子−4(NT
−4)、神経栄養因子−5(NT−5)、グリア由来神
経栄養因子(GDNF)と、次々に新しい神経成長因子
が発見されてきた。これらは培養神経細胞によって、そ
の効果や作用メカニズムが検討され、さらには実用化さ
れている遺伝子工学の手法により、疾病治療のための医
薬としての利用も検討されるまでになっている。
【0004】しかし、これらの因子を通常の中枢神経細
胞の培養系で調べてみると、単一物質の添加だけで各種
の神経細胞に対して著るしい効果を示すとは言いにく
く、特定の細胞に対してのみ効果を示すという場合が多
い。
【0005】中枢神経細胞の培養に関しては、これらと
は別の流れとして、ホルモン(インシュリン、サイロキ
シン、プロジェステロン等)、ヴァィタミン、不飽和脂
肪酸、細胞成長因子(塩基性繊維芽細胞増殖因子等)な
どが検討され続けてきており、これらの因子を種々組み
合わせた無血清培養液が報告されている。〔ジャーナル
・オブ・ニューロサイエンス・メソッド(Journal of N
euroscience Methods),23巻,75〜(1988)等〕
【0006】しかしこれらのものは、株化細胞(株化グ
リア細胞等)には効果的であるが、神経細胞に対しては
安定培養ができない場合や、神経細胞には効果があるも
のの、同時にグリア細胞の増殖が促進されてしまい、い
わゆるグリア細胞との混合培養系になってしまう場合な
ど、神経細胞に対する薬理作用を検討する場合には不適
切なものが多い。例えば、ボテンシュタイン(Bottenst
ein)らのN2添加物〔インシュリン(5μg/ml)、ト
ランスフェリン(100μg/ml)、プロジェステロン
(20nM)、プトレシン(100μM)、及び亜セレン
酸塩(30nM)〕〔プロスィーディング・オブ・ナショ
ナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proceeding of
National Academy of Science. U.S.A.), 76巻,514〜
(1979)〕は、株化グリア細胞の培養には適しているが、
初代神経細胞の場合は安定した細胞の生存維持が図れな
い。また、ブリュワー(Brewer) らの処方の培養液〔ブ
レイン・リサーチ(Brain.Research),65巻,494〜(198
9)〕も、中枢神経細胞に対して短期間の培養は可能であ
るが、長期間に渡って培養した場合、細胞機能を安定し
て維持することができない。
【0007】また、神経細胞の培養に株化グリア細胞な
いしは初代グリア細胞の培養上清を用いる方法が知られ
ている。しかし、株化グリア細胞の培養上清を用いた場
合は、一般的に、神経細胞に対しても作用するが、同時
にグリア細胞にも作用し増殖が促進される。つまり神経
細胞の生存に対する効果だけでなく、それ以上にグリア
細胞に対して効果を示す。グリア細胞増殖因子と呼称さ
れる因子は、これらの培養上清より精製されている。
〔ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー
(Journal of Biological Chemistry),268巻,2857(19
93) など〕
【0008】初代グリア細胞を用いる方法では、培養上
清を得るために、通常の無血清培養液ないしは血清が含
まれている培養液を用る。しかし、通常の無血清培養液
を用いる培養上清の採取方法では、グリア細胞の生存に
対して充分な培養液とはならず、安定培養ができない。
このため培養上清に含まれる神経細胞に作用する因子群
の量が少なく、神経細胞の培養に対して効果が低い。ま
た培養上清の採取には限度があり、数回程度で、安定し
た効果を持つ培養上清の採取は難しくなる。血清含有培
養液を用いた場合には、安定した培養上清の採取は行え
るが、神経細胞を培養する際に、神経細胞よりも共存す
るグリア細胞に対して増殖因子が作用し細胞増殖が促進
される。その結果、神経細胞の安定培養が障害される。
このため増殖阻害剤を使用しないで培養を行なうことは
実際的ではない。
【0009】そこで無血清培養液にホルモン等の添加物
を加える方法が採られる。例えば、特開平3−6670
0号公報には、DMEM培養液にインシュリン(5μg
/ml)、トランスフェリン(1μg/ml)、ハイドロコ
ーチゾン(20nM)、及び3,3′,5−トリヨード−
L−チロニン(0.3nM)を添加する培養法が開示され
ている。しかしこの組成は、グリア細胞を分化増殖傾向
に誘導するもので、培養上清に分泌される因子も、神経
細胞よりむしろグリア細胞に対して作用するものが多く
なってしまう。また、同じく神経突起伸展因子として明
示されているα2−マクログロブリンは、中枢神経の培
養においては安定培養の効果が低く、主要な役割を果た
すものではなく補助的役割を果たすものである。
【0010】さらに、特開平3−155777号公報に
は、ミクログリア細胞の産生する因子が、神経細胞の突
起伸展に効果があることが示されている。ミクログリア
細胞は、マクロファージ(貧食細胞)のような免疫系細
胞の機能を示すといわれ、組織が障害を受けたときに活
性化の度合いが高くなる。しかし、一般的に生体内で
は、アストログリア細胞を含むマクログリア細胞の比率
が高く、炎症などの場合を除き、主としてマクログリア
が恒常性を維持していると考えられている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】上記のような従来の培
養液群を中枢神経細胞の培養に用いた場合、その効果は
低く、神経細胞の安定した培養を行うことができない。
すなわち、神経薬理試験を行った場合等に於いて、期待
する充分な結果が得られない。本発明は、神経細胞の培
養におけるこのような現状に鑑みてなされたもので、神
経細胞を長期間安定培養できる培養液を提供することを
目的としたものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、初代アス
トログリア細胞を用いて採取した無血清培養上清が、神
経細胞の培養に効果のあることを見出し、さらに安定な
無血清培養上清の採取方法、神経細胞に対する培養効果
等について、鋭意研究を進めた結果、本発明を完成する
に至ったものである。
【0013】即ち本発明は、インシュリン、トランスフ
ェリン、および亜セレン酸塩を添加したDME/F−1
2混合培養液を用いて培養し採取した、初代アストログ
リア細胞の培養上清に、新しいDME/F−12混合培
養液をその割合が0〜75%の範囲になるように加え、
さらに、インシュリン、トランスフェリン、亜セレン酸
塩、プロジェステロン、およびアルブミンを配合してな
ることを特徴とする神経細胞用培養液であり、さらには
その製造方法である。
【0014】初代アストログリア細胞の培養方法として
はいくつかの方法が報告されているが、本発明の目的に
は、次の方法で行なうのがよい。即ち、先ずラット、も
しくはマウスの新生仔(1〜2日)の大脳を用いて、ア
ストログリア細胞を調製する。ラットもしくはマウスの
胎児を用いてもよく、また、ウシ、ウマ、ブタ、サル、
ウサギ、ニワトリなど他の動物の使用も可能である。
【0015】具体的には、新生仔の脳より大脳を切り出
し、脳膜を除いた後、トリプシン、ディスパーゼ、コラ
ゲナーゼ、パパイン(いずれもシグマ社製)等の酵素を
用いて細胞を分散させる。これらの中でも特にトリプシ
ン0.05〜0.35%を用いるのが好ましい。この酵
素に更に、デオキシリボヌクレアーゼ100〜500U
/mlや、エチレンジアミン−N,N,N′,N′−四酢
酸(EDTA)0.01%を加える方法も効果的であ
る。
【0016】培養には、5〜20%のウシ血清を添加し
たMEM、DME、DME/F−12、F−12、F−
10などの培養液を用いることができる。ウシ血清とし
ては、ウシ胎児血清、子ウシ血清、新生子ウシ血清等が
使用可能である。DME/F−12混合培養液は混合比
を各種変えたものが用いられるが、両培養液の特徴を合
わせ持つ、60/40〜40/60程度の範囲の混合培
養液が好ましい。
【0017】培養液に分散した細胞は、細胞培養用のフ
ラスコ、ディッシュ、プレート、もしくはポリリジンコ
ートを施したフラスコ、ディッシュ、プレートやマイク
ロキャリアーなどを用いて、コンフルエントに(培養面
全体に密に)なるまで培養し、増殖させる。培養面積
は、新生仔1に対して10〜100cm2とするのが好適
である。そして、更に継代培養を行なってもよく、同様
にコンフルエントになるまで培養する。
【0018】細胞がコンフルエントの状態になった時点
で培養液を除去し、リン酸塩緩衝液で洗浄する。ここ
で、前記と同じインシュリン、トランスフェリン、およ
び亜セレン酸塩を含むDME/F−12混合培養液(但
し、ウシ血清は含まない)を加えて、1〜3日間培養を
行なった後、上清を採取する。このとき培養液には、多
種類のアミノ酸、ヴァィタミン、無機物等を添加するの
が好ましい。
【0019】各添加物の濃度は、インシュリン(1〜1
00μg/ml)、トランスフェリン(1〜100μg/
ml)、亜セレン酸塩(1〜100nM)の範囲で使用する
ことができるが、好ましくはインシュリン(3〜20μ
g/ml)、トランスフェリン(3〜20μg/ml)、亜
セレン酸塩(3〜50nM)の範囲とするのが良い。亜セ
レン酸塩は、ナトリウム塩ないしはカリウム塩が好適で
ある。インシュリン、トランスフェリン、亜セレン酸塩
はいずれも水溶性であり、そのまま添加してもよいが、
各成分を混合した高濃度溶液を調製しておき、その一定
量加えるのも好ましい方法である。
【0020】培養期間は1日程度でよく、上清を採取し
た後、再び新しい培養液を加えて培養を行なえば、上清
を繰り返し採取することが出来る。このようにして1日
毎に上清を採取すれば、初代アストログリア細胞の1回
の準備操作で、10回以上、15回程度まで上清を採取
することが可能である。
【0021】採取した培養上清は、0.02〜0.45μ
mのフィルターにより濾過滅菌し、細胞片などを除く。
これに新しいDME/F−12混合培養液を、その割合
が0〜75%、好ましくは0〜50%の範囲になるよう
に加え、さらにその全体量に対して、インシュリン(1
〜100μg/ml)、トランスフェリン(1〜100μ
g/ml)、亜セレン酸塩(1〜100nM)、プロジェス
テロン(1〜100nM)、およびアルブミン(0.5〜
2.5mg/ml)を加えて、本発明における神経細胞用の
培養液が得られる。添加の方法は、プロジェステロンと
して水溶性プロジェステロンを用いれば、前記と同様に
各成分を混合した高濃度溶液として添加する方法が適用
できる。また、非水溶性プロジェステロンを用いる場合
は、エタノールにあらかじめ溶解したものを用いればよ
い。
【0022】培養上清は凍結することにより安定に保存
することが可能である。そこで前記のように1日毎に繰
り返して上清を採取する場合は、その都度インシュリン
等の添加剤を加えるのでなく、凍結して保存しておき、
複数回分の上清の採取が終った時点で凍結した培養上清
を融解し、全体を均一に混合し、これに前記の添加剤を
混和すれば、より均質な神経細胞用培養液を得ることが
できる。また、このようにして調製した培養液も凍結し
て安定に保存することができる。培養上清、培養液いず
れも凍結保存温度は−10〜−80℃が適しており、冷
蔵温度(4〜8℃)では長期間の安定保存は難しい。
【0023】本発明の培養液を用いて神経細胞の培養を
行う場合も、初代アストログリア細胞と同様の動物から
細胞を調製することが可能である。ただし、胎児を用い
たほうが神経の生存率が高くなる。また、海馬、線条
体、中隔野、中脳、小脳など脳の部位を特定して培養を
することも可能である。
【0024】先ず、前記と同様にして大脳を切り出し、
トリプシン、パパイン、ディスパーゼなどの酵素を用い
て神経細胞分散液を調製する。好ましくはパパイン(1
0〜50U/ml)を用いて37℃で30〜120分、リ
ン酸塩緩衝液にL−システイン(0.5〜5mM)、グ
ルコース(5〜50mM)を加えた液中で脳組織を酵素
処理してから、分散酵素液をやや強めに撹拌、混和する
ことにより神経細胞を分散させる。
【0025】次に、遠心分離機により細胞を分離し、上
記のように調製した本発明の培養液を用いて10,00
0〜1,000,000c/mlの細胞液を調製し、培養用
のプレート、ディッシュなどを用いて、37℃の5%の
炭酸ガスインキュベーターで培養する。培養用のプレー
ト、ディッシュ等は、ガラス、プラスチック等材質は問
わないが、ポリリジシン、ポリオルニチン、ポリアリル
アミン、プロタミン、ラミニン、コラーゲン、フィブロ
ネクチン、テネイシン、およびこれらを混和したもの
を、単層ないしは複層コートしたものを用いるのが良
い。
【0026】
【実施例】以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説
明する。 〔実施例1、比較例1〜2〕ウイスター系ラットの新生
仔(生後1日)3匹の脳より大脳を切り出し、0.25
%のトリプシン/リン酸塩緩衝液(フロウ・ラボラトリ
ー社製)を用いて37℃で30分酵素処理した。酵素液
を除き、10%牛胎児血清(ハイクローン社製)を含む
DME/F−12等比混合培養液(ライフ・テクノロジ
ー社製)で組織を分散させ、細胞分離用遠心機(クボタ
社製)により900回転、5分の条件で細胞を遠心分離
した。
【0027】分離した細胞は、15mlの同じ培養液を加
え75cm2の培養フラスコ(住友ベークライト社製)を
用いて、37℃、5%の炭酸ガスインキュベーター内で
10日間培養した。培養液を除き、フラスコ内にコンフ
ルエントに増殖した細胞を、リン酸塩緩衝液で洗浄した
後、0.15%のトリプシン/リン酸塩緩衝液で、37
度で5分間酵素処理した。ここで再び同じ培養液150
mlを加えて細胞を分散させ、これを225cm2の培養フ
ラスコ(住友ベークライト社製)3個に分けて、10日
間継代培養した。
【0028】培養液を除去し、リン酸塩緩衝液で2回洗
浄した後、インシュリン(5μg/ml)、トランスフェ
リン(5μg/ml)、亜セレン酸ナトリウム(5nM)
(いずれもシグマ社製)を添加したDME/F−12等
比混合培養液を加えて、1日間培養し、その培養上清を
全量採取して、再び同じ培養液を加えた。同様の操作を
10日間(10回)繰り返した。比較例1として、上記
の添加物を加えずに、同様に操作して培養上清を採取し
た。尚、培養液の量は、培養器の形態により適宜増減す
ることが可能であるが、プレート、フラスコ、ディッシ
ュ、トレーなどでは、培養面積当たりでは0.15〜0.
35ml/cm2の範囲とするのが適切である。
【0029】採取した培養上清は、0.22μmフィル
ター(ミリポア社製)で濾過滅菌して凍結保存し、10
回分の上清を採取した後、解凍し全体をまとめて均一に
混合した。これに、インシュリン(5μg/ml)、トラ
ンスフェリン(5μg/ml)、亜セレン酸ナトリウム
(5nM)、プロジェステロン(20nM)(いずれもシグ
マ社製)、およびアルブミン(ALBUMAXTM I 、ライフ・
テクノロジー社製、2.5 mg/ml)を加え、−70℃
で保存した。
【0030】〔神経細胞の培養試験〕試料となる神経細
胞は、胎生17日のラットより大脳を切り出し、1mM
システイン、25mMグルコース、1mg/mlアルブミン
(各シグマ社製)を含有するリン酸塩緩衝液で、20U
/mlに調製した、パパイン(ワージントン社製)を用い
て37℃で45分酵素処理した。酵素液を除き、DME
/F−12混合培養液で細胞を分散させた後、700回
転、5分の遠心分離条件で細胞を分離した。
【0031】インシュリン、トランスフェリン、および
亜セレン酸ナトリウムを添加した前記と同じ培養液を用
いて、40,000c/mlの細胞濃度の溶液を調製し、
ポリリジンコート24ウェルプレート(住友ベークライ
ト社製)を用いて0.5ml/ウェルで培養した。比較例
2としては、添加剤を加えないDME/F−12液等比
混合培養を用いて、同じ条件で培養を行なった。
【0032】4日間培養した後、顕微鏡下で細胞の形態
を観察した。本発明の培養液を用いたものは、良好な生
存と長い神経突起の伸展が観察され、シナプスを形成す
る突起間のコンタクトがたいへん多く認められた。しか
し、比較例1の培養液を用いたものでは、神経突起の伸
展が著しく劣っており、死細胞と思われる形態をしてい
るものが多く認められた。また、比較例2の培養液で
は、生存細胞は認められなかった。
【0033】さらに、生細胞と死細胞の比率を求めるた
め、二酢酸フルオレセイン(シグマ社製)10μg/ml
と、ヨウ化プロピジウム(シグマ社製)15μg/mlと
を、リン酸塩緩衝液に溶解して、培養液に加え、20分
間反応させた。蛍光顕微鏡(オリンパス光学社製)で異
なった蛍光を発する生細胞と死細胞の比率を測定したと
ころ、本発明の培養液で培養したサンプルでは、生存率
は90%以上の良好な値を示した。
【0034】〔実施例2、比較例3〕実施例1と同様に
して初代アストログリアを培養し、培養上清を採取し
た。得られた培養上清を用いて、培養上清とDME/F
−12等比混合培養液の比率が、75/25、50/5
0、25/75、および10/90になるようにそれぞ
れ調製し、その全体量に対して、インシュリン(5μg
/ml)、トランスフェリン(5μg/ml)、亜セレン酸
ナトリウム(5nM)、およびプロジェステロン(20n
M)、アルブミン(2.5mg/ml)(いずれもコラボレ
イティブ・リサーチ社製)の添加物を、各溶液に加えて
培養液を調製した。さらに、比較例3として、DME/
F−12等比混合液にウシ胎児血清(ハイクローン社
製)10%を加えたものを用いた。実施例1と同様にし
て神経細胞液を100,000c/mlの濃度に調製し、
実施例1と同様にして培養を行なった。
【0035】4日間培養した後、顕微鏡下で観察したと
ころ、培養上清とDME/F−12混合液の比を75/
25、および50/50とした培養液では、神経細胞の
良好な生存維持と神経突起の伸展が観察された。25/
75の培養液では、生存細胞数がやや少なく、10/9
0の培養液では、生存細胞、神経突起の伸展いずれも劣
っていた。また、比較例3のウシ胎児血清を用いた培養
液では、生存している神経細胞の数が少なく、グリア細
胞の存在が多く認められた。
【0036】培養上清とDME/F−12混合液の比が
75/25の培養液で培養したもの、及び比較例3の血
清添加で培養したものについて、神経細胞であることを
確認するため、抗MAP2抗体(ベーリンガーマンハイ
ム社製)による免疫組織化学染色を行った。培養液を除
きリン酸塩緩衝液で洗浄した後パラフォルムアルデヒド
(和光純薬社製)4%のリン酸塩緩衝液で20分、トリ
トンX−100(ベーリンガーマンハイム社製)の0.
1%リン酸塩緩衝液を20分、ヒツジ血清1%のリン酸
塩緩衝液を20分、順次反応させ、さらに、抗MAP2
抗体をリン酸塩緩衝液で5μg/mlに調製し、30分間
反応させた。なお、反応はいずれも室温で行ない、各反
応後にはリン酸塩緩衝液で洗浄した。
【0037】次に、ABC免疫組織化学キット(ベクタ
ー社)、及びDAB基質キット(ベクター社製)で染色
を行った。その結果、前記の形態観察から神経細胞と判
断された細胞は大半が染色され、神経細胞であることが
確認された。しかし、比較例3の血清添加で培養した方
の細胞は染色される細胞が少なく、形態からグリア細胞
と判断されるものは染色されなかった。
【0038】〔実施例3、比較例4〕実施例1と同様に
して神経細胞用培養液を調製した。試料となる神経細胞
は、ウィスター系ラットの胎児(胎生16日)の海馬よ
り、実施例1と同様にして調製した。24ウェルラミニ
ンコートプレート(住友ベークライト社製)に250,
000c/ウェルの細胞を加え、14日間培養した。培
養3〜5日の間は、シトシンアラビノフラノシド(シグ
マ社製)を5μM加えた。培養液の交換は1/2量を週
2度交換した。また、比較例4として、DME/F−1
2等比混合培養液に、インシュリン(5μg/ml)、ト
ランスフェリン(5μg/ml)、プロジェステロン(2
0nM)、および亜セレン酸ナトリウム(20nM)を加え
たのもを用いて、同様にして培養を行なった。
【0039】培養14日の時点で観察したところ、比較
例4の培養液用いた方は細胞が全て死滅していたが、本
発明の培養液を用いた場合では、神経細胞間の緊密なネ
ットワーク形成が観察さた。
【0040】
【発明の効果】本発明による神経細胞用培養液を用いる
ことにより、中枢神経細胞の培養を安定に行なうことが
でき、低密度培養においては神経突起の伸展性に優れ迅
速なシナプス形成が可能であり、高密度培養においては
神経ネットワークを形成した細胞の長期安定性に優れて
いる。これにより神経薬理試験、神経情報伝達試験等を
確度高く実施することができ、神経薬理、衛生化学など
の分野で痴呆症、神経疾患、神経毒性などの研究、病態
の解明等に役立つ。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 インシュリン、トランスフェリン、およ
    び亜セレン酸塩を添加したDME/F−12混合培養液
    を用いて培養し採取した、初代アストログリア細胞の培
    養上清に、新しいDME/F−12混合培養液をその割
    合が0〜75%の範囲になるように加え、さらに、イン
    シュリン、トランスフェリン、亜セレン酸塩、プロジェ
    ステロン、およびアルブミンを配合してなることを特徴
    とする神経細胞用培養液。
  2. 【請求項2】 初代アストログリア細胞を、ウシ血清5
    〜20%を添加した培養液を用いて培養、増殖させた
    後、さらに、インシュリン、トランスフェリン、および
    亜セレン酸塩を添加したDME/F−12混合培養液を
    用いて培養して、その上清を採取し、該上清に新しいD
    ME/F−12混合培養液をその割合が0〜75%の範
    囲になるように加え、さらにその全体量に対して、イン
    シュリン1〜100μg/ml、トランスフェリン1〜1
    00μg/ml、亜セレン酸塩1〜100nM、プロジェス
    テロン1 〜100 nM、およびアルブミン0.5 〜2.5 mg/ml
    を添加して、均一に混和することを特徴とする神経細胞
    用培養液の製造方法。
  3. 【請求項3】 培養、増殖させた初代アストログリア細
    胞を、インシュリン、トランスフェリン、および亜セレ
    ン酸塩を添加したDME/F−12混合培養液を用いて
    培養し上清を採取した後、再び同じ混合培養液を加えて
    培養し、このような操作を複数回繰り返して上清を採取
    することを特徴とする、請求項2記載の神経細胞用培養
    液の製造方法。
  4. 【請求項4】 各回毎に採取した上清を凍結して保存
    し、培養と上清の採取を複数回繰り返した後、前記の凍
    結した上清を解凍して全体を均一に混合し、神経細胞用
    培養液の調製に供することを特徴とする、請求項3記載
    の神経細胞用培養液の製造方法。
  5. 【請求項5】 初代アストログリア細胞が、ラットもし
    くはマウスの新生仔もしくは胎児の大脳に由来する細胞
    であることを特徴とする、請求項2ないし請求項4のい
    ずれかに記載の神経細胞用培養液の製造方法。
  6. 【請求項6】 DME/F−12混合培養液の、DME
    /F−12混合比が60/40〜40/60の範囲であ
    ることを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれか
    に記載の神経細胞用培養液の製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006223300A (ja) * 2005-01-21 2006-08-31 Sumitomo Bakelite Co Ltd ミクログリアの調製方法
JP2014150734A (ja) * 2013-02-05 2014-08-25 Osaka City Univ 神経細胞の遊走障害を伴う疾患の判定方法及びその利用

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